以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
実施形態1に係る圧縮機(1)は回転式圧縮機であり、図1に示すように、ケーシング(10)内に、2つの圧縮機構部(第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30))が駆動軸(53)の軸方向に積み重ねられた圧縮機構(40)と、駆動機構としての電動機(50)とが収納され、全密閉型に構成されている。この圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒(作動流体)を圧縮して凝縮器へ吐出するために用いられる。上記第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の間には、後述するミドルプレート(25)が配置されている。
上記ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、該胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。胴部(11)には、詳細について後述する第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)のシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)に冷媒を導くための吸入管(60,61,62,63)と、シリンダ室(23b,23c,23d,33b,33c,33d)において圧縮された冷媒を吐出するための吐出管(64,65,66)とが貫通して設けられている。また、上部鏡板(12)にも、シリンダ室(23a,33a)において圧縮された冷媒を吐出するための吐出管(67)が貫通して設けられている。
電動機(50)は、ケーシング(10)内における上部鏡板(12)寄りに配置されている。電動機(50)は、ステータ(51)とロータ(52)と駆動軸(53)とを備えている。ステータ(51)は、ケーシング(10)の胴部(11)の内周面に固定されている。一方、ロータ(52)には駆動軸(53)が一体となって回転するように連結されている。
駆動軸(53)は、ロータ(52)から下方に延伸し、下部には第1偏心部(53a)及び第2偏心部(53b)が形成されている。第1偏心部(53a)は、該第1偏心部(53a)の上方の主軸部分よりも大径に形成され、駆動軸(53)の軸心から所定量だけ偏心している。一方、第2偏心部(53b)は、第1偏心部(53a)と同径に形成され、第1偏心部(53a)と同じ量だけ駆動軸(53)の軸心から偏心している。第1偏心部(53a)と第2偏心部(53b)とは、駆動軸(53)の軸心を中心として互いに180°位相がずれている。
第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)は、ケーシング(10)内において電動機(50)よりも下方に配置されている。第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)は、上下二段に重ねられて、ケーシング(10)に固定されたフロントヘッド(14)からリアヘッド(17)までの間に構成されている。第1圧縮機構部(20)が電動機(50)側(図1の上側)に配置され、第2圧縮機構部(30)がケーシング(10)の底部側(図1の下側)に配置されている。なお、フロントヘッド(14)の上側には、該フロントヘッド(14)の上面との間にマフラー空間(27a)を形成するためのマフラー部材(27)が取り付けられている。
第1圧縮機構部(20)は、図2から図5に示すように、ケーシング(10)の胴部(11)の内周面に固定された第1シリンダ(21)と、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)に取り付けられて第1シリンダ(21)に対して偏心回転をする第1ピストン(22)と、これら第1シリンダ(21)と第1ピストン(22)との間に形成される4つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d)を高圧室(23aH,23bH,23cH,23dH)と低圧室(23aL,23bL,23cL,23dL)とに区画する第1ブレード(24)とを備えている。
第1シリンダ(21)は、内部にシリンダ空間(S1)を形成し上下方向に開口する円筒状のシリンダ本体部(21c)と、該シリンダ本体部(21c)の上側の開口部を閉塞するヘッド部としてのフロントヘッド(14)と、環状に形成され駆動軸(53)の回転軸と同心上に配置される複数のシリンダ部(21a,21b,21c)と、前記シリンダ本体部(21c)の下側の開口部に配置される上記ミドルプレート(25)とを備えている。
フロントヘッド(14)は、シリンダ空間側ヘッド部としてのシリンダ空間側フロントヘッド(15)と、軸受部側ヘッド部としての軸受部側フロントヘッド(16)とを備えている。
シリンダ空間側フロントヘッド(15)は、シリンダ本体部(21c)の上側の開口部を覆う円板状に形成される閉塞部(15a)を備えている。シリンダ空間側フロントヘッド(15)は、シリンダ本体部(21c)と一体に形成されている。閉塞部(15a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(15b)が形成されている。この貫通孔(15b)は、駆動軸(53)よりも僅かに大径となるように形成されている。
軸受部側フロントヘッド(16)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)とは別体に形成され、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の上側に配置されている。軸受部側フロントヘッド(16)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の上面に重ねられる円板状の積層部(16a)と、該積層部(16a)と一体に形成される軸受部(16b)とを備えている。積層部(16a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(16c)が形成されている。軸受部(16b)は、積層部(16a)の貫通孔(16c)の開口端部から上方へ延びる円筒状に形成されている。軸受部(16b)の内周面には、駆動軸(53)を回転自在に支持するための円筒状の軸受メタル(16d)が挿通固定されている。
複数のシリンダ部(21a,21b,21c)は、シリンダ空間側フロントヘッド(15)の下面に、該シリンダ空間側フロントヘッド(15)と一体に形成されている。この複数のシリンダ部は、最内側に形成される環状の内側シリンダ部(21a)と、該内側シリンダ部(21a)よりも径方向外方に形成される環状の外側シリンダ部(21b)と、該外側シリンダ部(21b)の外側に位置し該外側シリンダ部(21b)の外周部から下方に延伸する円筒状の最外側シリンダ部(21c)とで構成されている。内側シリンダ部(21a)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。内側シリンダ部(21a)の分断箇所にはスライド溝(21g)が形成されている。最外側シリンダ部(21c)は、前記シリンダ本体部(21c)で構成されている。
ミドルプレート(25)は、駆動軸(53)の軸方向に並ぶ2つの部材によって形成されている。具体的には、ミドルプレート(25)は、シリンダ本体部(21c)の下側の開口部を覆うやや肉厚な円板状の本体部(25a)と、該本体部(25a)の下面に重ねられる円板状の蓋部(25b)とを備えている。ミドルプレート(25)の中心部には、駆動軸(53)が貫通する貫通孔(25c)が形成されている。この貫通孔(25c)は、駆動軸(53)の第1偏心部(53a)及び第2偏心部(53b)の直径よりも内径が少し大きな孔である。なお、ミドルプレート(25)は、第2圧縮機構部(30)の一部も構成している。
第1ピストン(22)は、筒状のシリンダ本体部(21c)の内部に形成されるシリンダ室(S1)に収容されている。第1ピストン(22)は、第1偏心部(53a)に嵌合して該第1偏心部(53a)と同心上に位置する内側ピストン部(22a)と、該内側ピストン部(22a)の外周側に該内側ピストン部(22a)と同心上に位置する外側ピストン部(22b)と、該2つのピストン部(22a,22b)の下端部を連結するとともに外周面が内側ピストン部(22a)及び外側ピストン部(22b)と同心上に位置するピストン側鏡板部(22c)とを備えている。内側ピストン部(22a)は、内側シリンダ部(21a)の内部に配置され、外側ピストン部(22b)は、内側シリンダ部(21a)と外側シリンダ部(21b)との間に配置され、ピストン側鏡板部(22c)は、最外側シリンダ部(21c)の内部に配置されている。内側ピストン部(22a)は、外周面に切欠部(n1)が形成され、外側ピストン部(22b)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。また、ピストン側鏡板部(22c)の外周部には切欠部(n2)が形成されている(図3(B)参照)。
上述のようにシリンダ空間(S1)に配置された第1ピストン(22)は、第1シリンダ(21)との間に複数のシリンダ室を形成する。具体的には、内側ピストン部(22a)と内側シリンダ部(21a)との間には最内側シリンダ室(23a)が形成され、外側ピストン部(22b)と内側シリンダ部(21a)との間には内側シリンダ室(23b)が形成され、外側ピストン部(22b)と外側シリンダ部(21b)との間には外側シリンダ室(23c)が形成され、ピストン側鏡板部(22c)と最外側シリンダ部(21c)との間には最外側シリンダ室(23d)が形成されている。つまり、第1圧縮機構部(20)内には、径方向内側から径方向外側に向かって順に、最内側シリンダ室(23a)、内側シリンダ室(23b)、外側シリンダ室(23c)最外側シリンダ室(23d)が形成されている。
このように、第1圧縮機構部(20)は、4つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d)を有するように構成されている。
第2圧縮機構部(30)は、第1圧縮機構部(20)の下側に配置されている。第2圧縮機構部(30)は、図2から図5に示すように、ケーシング(10)の胴部(11)の内周面に固定された第2シリンダ(31)と、駆動軸(53)の第2偏心部(53b)に取り付けられて第2シリンダ(31)に対して偏心回転をする第2ピストン(32)と、これら第2シリンダ(31)と第2ピストン(32)との間に形成される4つのシリンダ室(33a,33b,33c,33d)を高圧室(33aH,33bH,33cH,33dH)と低圧室(33aL,33bL,33cL,33dL)とに区画する第2ブレード(34)とを備えている。
第2シリンダ(31)は、内部にシリンダ空間(S2)を形成し上下方向に開口する円筒状のシリンダ本体部(31c)と、該シリンダ本体部(31c)の下側の開口部を閉塞するヘッド部としてのリアヘッド(17)と、環状に形成され駆動軸(53)の回転軸と同心上に配置される複数のシリンダ部(31a,31b,31c)と、前記シリンダ本体部(31c)の上側の開口部に配置されるミドルプレート(25)とを備えている。
リアヘッド(17)は、シリンダ空間側ヘッド部としてのシリンダ空間側リアヘッド(18)と、軸受部側ヘッド部としての軸受部側リアヘッド(19)とを備えている。
シリンダ空間側リアヘッド(18)は、シリンダ本体部(31c)の下側の開口部を覆う円板状に形成される閉塞部(18a)を備えている。シリンダ空間側リアヘッド(18)は、シリンダ本体部(31c)と一体に形成されている。閉塞部(18a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(18b)が形成されている。この貫通孔(18b)は、駆動軸(53)よりも僅かに大径となるように形成されている。
軸受部側リアヘッド(19)は、シリンダ空間側リアヘッド(18)とは別体に形成され、シリンダ空間側リアヘッド(18)の下側に配置されている。軸受部側リアヘッド(19)は、シリンダ空間側リアヘッド(18)の下面に重ねられる円板状の積層部(19a)と、該積層部(19a)と一体に形成される軸受部(19b)とを備えている。積層部(19a)の中央部には、駆動軸(53)が挿通される貫通孔(19c)が形成されている。軸受部(19b)は、積層部(19a)の貫通孔(19c)の開口端部から下方へ延びる円筒状に形成されている。軸受部(19b)の内周面には、駆動軸(53)を回転自在に支持するための円筒状の軸受メタル(19d)が挿通固定されている。
複数のシリンダ部(31a,31b,31c)は、シリンダ空間側リアヘッド(18)の上面に、該シリンダ空間側リアヘッド(18)と一体に形成されている。この複数のシリンダ部は、最内側に形成される環状の内側シリンダ部(31a)と、該内側シリンダ部(31a)よりも径方向外方に形成される環状の外側シリンダ部(31b)と、該外側シリンダ部(31b)の外側に位置し該外側シリンダ部(31b)の外周部から上方に延伸する円筒状の最外側シリンダ部(31c)とで構成されている。内側シリンダ部(31a)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。内側シリンダ部(31a)の分断箇所にはスライド溝(31g)が形成されている。最外側シリンダ部(31c)は、前記シリンダ本体部(31c)で構成されている。
第2ピストン(32)は、筒状のシリンダ本体部(31c)の内部に形成されるシリンダ室(S2)に収容されている。第2ピストン(32)は、第2偏心部(53b)に嵌合して該第2偏心部(53b)と同心上に位置する内側ピストン部(32a)と、該内側ピストン部(32a)の外周側に該内側ピストン部(32a)と同心上に位置する外側ピストン部(32b)と、該2つのピストン部(32a,32b)の上端部を連結するとともに外周面が内側ピストン部(32a)及び外側ピストン部(32b)と同心上に位置するピストン側鏡板部(32c)とを備えている。内側ピストン部(32a)は、内側シリンダ部(31a)の内部に配置され、外側ピストン部(32b)は、内側シリンダ部(31a)と外側シリンダ部(31b)との間に配置され、ピストン側鏡板部(32c)は、最外側シリンダ部(31c)の内部に配置されている。内側ピストン部(32a)は、外周面に切欠部(n1)が形成され、外側ピストン部(32b)は円環の一部分が分断されている(図3(A)参照)。また、ピストン側鏡板部(32c)の外周部には切欠部(n2)が形成されている(図3(B)参照)。
上述のようにシリンダ空間(S2)に配置された第2ピストン(32)は、第2シリンダ(31)との間に複数のシリンダ室を形成する。具体的には、内側ピストン部(32a)と内側シリンダ部(31a)との間には最内側シリンダ室(33a)が形成され、外側ピストン部(32b)と内側シリンダ部(31a)との間には内側シリンダ室(33b)が形成され、外側ピストン部(32b)と外側シリンダ部(31b)との間には外側シリンダ室(33c)が形成され、ピストン側鏡板部(32c)と最外側シリンダ部(31c)との間には最外側シリンダ室(33d)が形成されている。つまり、第2圧縮機構部(30)内には、径方向内側から径方向外側に向かって順に、最内側シリンダ室(33a)、内側シリンダ室(33b)、外側シリンダ室(33c)最外側シリンダ室(33d)が形成されている。
このように、第2圧縮機構部(30)は、4つのシリンダ室(33a,33b,33c,33d)を有するように構成されている。
そして、第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)は、シリンダ(第1シリンダ(21)及び第2シリンダ(31))と、該シリンダ(21,31)に対して偏心回転可能に構成されるとともに上記ミドルプレート(25)に面する鏡板部(ピストン側鏡板部(22c,32c))を有するピストン(第1ピストン(21)及び第2ピストン(22))と、シリンダ(第1シリンダ(21)及び第2シリンダ(31))とピストン(第1ピストン(21)及び第2ピストン(22))との間に形成された複数のシリンダ室(23a,23b,23c,23d)(33a,33b,33c,33d)とを備えている。
次に、第1、第2圧縮機構部(20,30)の内部構造について詳しく説明するが、第1、第2圧縮機構部(20,30)は、第1,第2ピストン(22,32)の軸方向長さ寸法とそれに対応するシリンダ(21,31)の軸方向長さ寸法も含めて互いに実質的に同一の構成であるため、第1圧縮機構部(20)を代表例として説明する。
第1ブレード(24)は、図4及び図5に示すように、厚みを有する板状の長尺部(24a)及び短尺部(24b)と、断面形状が略半円形状の一対の揺動ブッシュ部(24c)とを有している。これら3つの部分(24a,24b,24c)は一体に形成されている。
長尺部(24a)は、シリンダ空間側ヘッド部(15)の閉塞部(15a)とピストン側鏡板部(22c)との間において径方向に延びるように配置されている。長尺部(24a)は、該長尺部(24a)における径方向内側の部分を構成する内側ブレード部(B1)と、該内側ブレード部(B1)よりも外側の部分を構成する外側第1ブレード部(B2)とで構成されている。内側ブレード部(B1)は、内側シリンダ部(21a)の分断箇所に形成されているスライド溝(21g)に径方向へ摺動可能に挿入され、外側第1ブレード部(B2)の外端部は、外側シリンダ部(21b)に形成された溝(スライド溝)(21f)に径方向へ摺動自在に収容されている。内側ブレード部(B1)によって、最内側シリンダ室(23a)及び内側シリンダ室(23b)が、それぞれ、吸入側と吐出側とに区画され、外側第1ブレード部(B2)によって、外側シリンダ室(23c)が吸入側と吐出側とに区画される。内側ブレード部(B1)の内端部は、内側ピストン部(22a)の切欠部(n1)にミクロンオーダーの微細隙間を挟んで対向している(図5参照)。
短尺部(24b)は、長尺部(24a)とミドルプレート(25)との間において径方向に延びるように配置されている。短尺部(24b)は、外側第2ブレード部(B3)で構成されている。短尺部(24b)における径方向外側の部分は、最外側シリンダ部(21c)に形成された溝(スライド溝)(21f)に径方向に摺動自在に収容されている。この短尺部(24b)によって、後述する最外側シリンダ室(23d)が吸入側と吐出側とに区画される。短尺部(24b)の内端は、ピストン側鏡板部(22c)の切欠部(n2)にミクロンオーダーの微細隙間を挟んで対向している(図5参照)。
一対の揺動ブッシュ部(24c)は、長尺部(24a)の長手方向の中央部付近において、長尺部(24a)の両側に膨出するように形成されている。一対の揺動ブッシュ部(24c)の外周面は、所定半径の円筒の外周面の一部を構成している。そして、一対の揺動ブッシュ部(24c)は、外側ピストン部(22b)の分断箇所に形成されたブッシュ溝(C1,C2)に揺動自在に収容されている。一対の揺動ブッシュ部(24c)は、外側ピストン部(22b)が第1ブレード(24)に対して揺動するように構成されている。
図5において、切欠部(n1)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする内側ブレード部(B1)の相対的な揺動動作を許容する第1揺動許容面を構成している。この第1揺動許容面(n1)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする内側ブレード部(B1)の相対的な揺動動作の軌跡よりもわずかに大きい径寸法の円弧形状を基準にして形成され、内側ブレード部(B1)が揺動動作をする際にその先端が描く軌跡と第1揺動許容面(n1)との間に微細隙間が形成されるようになっている。なお、図5では微細隙間を誇張して表している。
また、切欠部(n2)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする外側第2ブレード部(B3)の相対的な揺動動作を許容する第2揺動許容面を構成している。この第2揺動許容面(n2)は、揺動ブッシュ部(24c)を中心とする外側第2ブレード部(B3)の相対的な揺動動作の軌跡よりもわずかに小さい径寸法の円弧形状を基準にして形成され、外側第2ブレード部(B3)が揺動動作をする際にその先端が描く軌跡と第2揺動許容面(n2)との間に微細隙間が形成されるようになっている。なお、図5では微細隙間を誇張して表している。
上述のような構成により、第1ピストン(22)は、第1偏心部(53a)の偏心回転に伴って、第1ブレード(24)に対して一対の揺動ブッシュ部(24c)の中心点を揺動中心として揺動すると共に、上記溝(21f)及び上記内側シリンダ部(21a)のスライド溝(21g)に対する第1ブレード(24)の長手方向への摺動に伴って同方向に進退する。
第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の内側ピストン部(22a,32a)と内側シリンダ部(21a,31a)は、内側ピストン部(22a,32a)の外周面と内側シリンダ部(21a,31a)の内周面とが1点(第1接点)で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、内側シリンダ部(21a,31a)の外周面と外側ピストン部(22b,32b)の内周面とが1点(第2接点)で実質的に接し、その接点と位相が180°異なる位置(第1接点と位相が同じ位置)で、外側ピストン部(22b,32b)の外周面と外側シリンダ部(21b,31b)の内周面とが1点(第3接点)で実質的に接すると共に、ピストン側鏡板部(22c,32c)の外周面と最外側シリンダ部(21c,31c)の内周面とが1点(第4接点)で実質的に接するようになっている。
以上の構成において、駆動軸(53)が回転すると、第1ピストン(22)は、揺動ブッシュ部(24c)の中心点を揺動中心として揺動し、第1ブレード(24)と共に該第1ブレード(24)の長手方向へ進退する。また、駆動軸(53)が回転すると、第2ピストン(32)は、揺動ブッシュ部(34c)の中心点を揺動中心として揺動し、第2ブレード(34)と共に該第2ブレード(34)の長手方向へ進退する。
上記動作により、第1ピストン(22)と第1シリンダ(21)の各接点(第1接点〜第4接点)がそれぞれ図6(A)〜(D)、図7(A)〜(D)へ順に移動する。一方、第2ピストン(32)と第2シリンダ(31)の各接点(第1接点〜第4接点)は、第1ピストン(22)と第1シリンダ(21)の対応する接点に対して駆動軸(53)の軸心回りに180°ずれている。つまり、駆動軸(53)の上側から見て、第1圧縮機構部(20)の動作状態が図6(A)及び図7(A)のとき、第2圧縮機構部(30)の動作状態は図6(C)及び図7(C)となる。
また、本実施形態では、圧縮機構(40)は、8つのシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)において冷媒を4段階に圧縮する4段圧縮機構に構成されている。
具体的には、第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(23d,33d)によって第1段圧縮機構のシリンダ室が形成されている。また、第2圧縮機構部(30)の外側シリンダ室(33c)と内側シリンダ室(33b)とによって第2段圧縮機構のシリンダ室が形成され、第1圧縮機構部(20)の外側シリンダ室(23c)と内側シリンダ室(23b)とによって第3段圧縮機構のシリンダ室が形成されている。さらに、第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(23a,33a)によって第4段圧縮機構のシリンダ室が形成されている。本実施形態では、第1、第2圧縮機構部(20,30)の外側ピストン部(22,32)の軸方向長さ寸法とそれに対応するシリンダ(21,31)の軸方向長さ寸法が互いに同一であるため、上記第2段圧縮機構のシリンダ容積と第3段圧縮機構のシリンダ容積は実質的に等しい。
このように、本実施形態1の圧縮機(1)は、環状のシリンダ空間を有するシリンダ(21,31)と、該シリンダ(21,31)に対して偏心して配置された環状のピストン(22,32)とを有し、該シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間に複数のシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)が形成されるとともに、下記のように各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)に連通する吸入ポートと吐出ポートが一つずつ形成された圧縮機構(20,30)を有する回転式圧縮機であって、一組のシリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間に4つのシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)が形成され、これらのシリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)により、低圧冷媒を第1段圧縮する第1段圧縮機構のシリンダ室(23d,33d)、第1段圧縮機構の吐出冷媒を第2段圧縮する第2段圧縮機構のシリンダ室(33c,33b)、第2段圧縮機構の吐出冷媒を第3段圧縮する第3段圧縮機構のシリンダ室(23c,23b)、及び第3段圧縮機構の吐出冷媒を第4段圧縮する第4段圧縮機構のシリンダ室(23a,33a)が形成されているものである。なお、冷媒回路は、第1段圧縮機構と第2段圧縮機構の間、第2段圧縮機構と第3段圧縮機構の間、そして第3段圧縮機構と第4段圧縮機構の間において、冷媒を冷却機構で冷却できるように構成するとよい。
圧縮機構(40)には、吸入管(60〜63)からの冷媒を各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)へ案内するための第1から第4の吸入流路(71〜74)が形成されている。第1から第4の吸入流路(71〜74)は、それぞれ、第1段圧縮機構から第4段圧縮機構の吸入流路を構成している。これらの吸入流路(71〜74)は、互いに交わらないように、且つ、圧縮機構(40)内に形成される他の部品(各ブレード(24,34)や、吐出弁(88)等)と干渉しないように、圧縮機構(40)に形成されている。
第1吸入流路(71)は、流入端が吸入管(62)と接続し、吸入ポート(P1,P1)で構成される流出端が第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)に接続している。第2吸入流路(72)は、流入端が吸入管(63)と接続し、吸入ポート(P2)で構成される流出端が第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)及び外側シリンダ室(33c)に接続している。第3吸入流路(73)は、流入端が吸入管(60)と接続し、吸入ポート(P2)で構成される流出端が第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)及び外側シリンダ室(23c)に接続している。第4段圧縮機構の吸入部である第4吸入流路(74)は、流入端が吸入管(61)と接続し、吸入ポート(P3,P3)で構成される流出端が第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に接続している。
前記第4吸入流路(74)は、圧縮機構(40)内を上下方向に延びる吸入管側流路(74a)と、圧縮機構(40)内を水平方向に延びる吸入ポート側流路(74b)とで形成されている。この吸入ポート側流路(74b)は、軸受部側フロントヘッド(16)の積層部(16a)におけるシリンダ空間側フロントヘッド(15)の対向面、及び軸受部側リアヘッド(19)の積層部(19a)におけるシリンダ空間側リアヘッド(18)の対向面を溝状に切り欠くことにより、容易に形成できる。
また、圧縮機構(40)には、各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)で圧縮された冷媒を圧縮機構(40)の外部へ案内するための第1から第4の吐出流路(81〜84)が形成されている。第1から第4の吐出流路(81〜84)は、それぞれ、第1段圧縮機構から第4段圧縮機構の吐出流路を構成している。これらの吐出流路(81〜84)は、互いに交わらないように、且つ、圧縮機構(40)内に形成される他の部品(各ブレード(24,34)や、吐出弁(88)等)と干渉しないように、圧縮機構(40)に形成されている。
第1段圧縮機構の吐出部である第1吐出流路(81)は、吐出ポート(P11,P11)で構成される流入端が第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)に接続し、流出端が吐出管(65)に接続している。第2吐出流路(82)は、吐出ポート(P12,P13)で構成される流入端が第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)及び外側シリンダ室(33c)に接続し、流出端が吐出管(66)に接続している。第3吐出流路(83)は、吐出ポート(P12,P13)で構成される流入端が第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)及び外側シリンダ室(23c)に接続し、流出端が吐出管(64)に接続している。第4吐出流路(84)は、吐出ポート(P14,P14)で構成される流入端が第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に接続している。
第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)に接続される第4吐出流路(84)からの冷媒は、マフラー空間(27a)を通じてケーシング(10)内を上方へ流れ、吐出管(67)を通ってケーシング(10)外へ吐出される。第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に接続される第4吐出流路(84)からの冷媒は、圧縮機構(40)に形成された吐出合流通路(29)を通ってマフラー空間(27a)に流入し、第1圧縮機構部(20)の吐出冷媒と合流して吐出管(67)からケーシング(10)外へ吐出される。
圧縮機構(40)は、複数の吐出弁(88,88,…)を備えている。吐出弁は、例えばリード弁で構成されている。この吐出弁(88,88,…)は、各吐出ポート(P11,P11,…P14,P14)を覆っており、各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)内の圧力が所定値よりも低い場合には吐出ポート(P11,P11,…P14,P14)を閉塞する一方、各シリンダ室(23a,…,23d,33a,…,33d)内の圧力が所定値よりも高くなった場合には吐出ポート(P11,P11,…P14,P14)を開放する。
図2に示すように、上記ミドルプレート(25)には、中間圧の冷媒が流れる流体通路である第4吸入流路(74)と第1吐出流路(81)とが開示されている。第4吸入流路(74)は、第4段圧縮機構のシリンダ室(第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(23a,33a))に対する冷媒吸入側の流体通路である。第1吐出流路(81)は、第1段圧縮機構のシリンダ室(第1圧縮機構部(20)及び第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(23d,33d))に対する冷媒吐出側の流体通路である。第4吸入流路(74)と第1吐出流路(81)には、第4段圧縮機構の前と第1段圧縮機構の後とで互いに圧力が異なる中間圧の冷媒が流れるようになっている。
上記ミドルプレート(25)と各ピストン側鏡板部(22c,32c)との間には、作動流体の圧力でピストン(22,32)をシリンダ(21,31)に押し付ける押し付け機構(90)が設けられている。この押し付け機構(90)は、上記ピストン(22,32)の回転中心の周りに配置された第1シールリング(91)と、該第1シールリング(91)よりも大径で該第1シールリング(91)の外周側に配置された第2シールリング(92)と、第1シールリング(91)と第2シールリング(92)の間に形成されて作動流体が導入される環状部(環状溝)(93a,93b)とを有している。この環状部(93a,93b)は、ミドルプレート(25)の本体部(25a)の上面において第1シールリング(91)と第2シールリング(92)の間に形成された第1環状部(93a)と、ミドルプレート(25)の蓋部(25b)の下面において第1シールリング(91)と第2シールリング(92)の間に形成された第2環状部(93b)とを含んでいる。
この圧縮機構(40)では、上述したように、上記ミドルプレート(25)に、中間圧の冷媒が流れる流体通路として、第4吸入流路(74)と第1吐出流路(81)が形成されている。また、ミドルプレート(25)には、これらの流体通路(74,81)を流れる冷媒の一部を上記環状部(93a,93b)に導入する中間圧導入路(96a,96b)が形成されている。この中間圧導入路(96a,96b)には、第1圧縮機構部(20)において第4段圧縮機構の吸入部である第4吸入流路(74)と第1環状部(93a)とに連通する第1中間圧導入路(96a)と、第2圧縮機構部(30)において第1段圧縮機構の吐出部である第1吐出流路(81)と第2環状部(93b)とに連通する第2中間圧導入路(96b)とが含まれている。
第1段圧縮機構の吐出冷媒の圧力が第4段圧縮機構の吸入冷媒の圧力よりも低いため、本実施形態では、第1環状部(93a)の面積を第2環状部(93b)の面積よりも小さくすることにより、各押し付け機構(90)で得られる押し付け力に大きな差が生じないか、またはほぼ同じになるようにしている。また、第1環状部(93a)に連通する第1中間圧導入路(96a)に絞り(図示せず)を設けて冷媒の圧力を調整し、各押し付け機構(90)による押し付け力のバランスを取るようにしてもよい。上記第1環状部(93a)と第2環状部(93b)は、いずれも押し付け力と離反力がバランスするように、その面積が定められている。
ここで、本願明細書の背景技術で説明した特許文献1の回転式圧縮機を比較例とするとこの比較例の圧縮機では、4段圧縮を行う構成において、ピストンの鏡板部の背面に設置する1本のシールリングの内部面積(An)と内部圧力(Pn)の調整により、シリンダに対するピストンの押付け力を調整するようにしている。そして、図9(A)に示すように、スラスト力Fs、押し付け力Ft、離反力Fu、圧力Pn(Pa=高圧)、面積Anの関係が、
Fs=Ft−Fu
=(Pa・Aa+Pb・Ab)−(Pc・Ac+Pd・Ad)>0
になるようにして、Ft>Fuの関係においてピストンとシリンダの摺動損失を極力小さくしながら、ピストンが離反しない適切な押付け力を得ようとしている。
しかし、押付け力は冷凍サイクルの高圧圧力と低圧圧力のみでほぼ決定されてしまうため,中間圧(第2段と第3段の吸入圧力/吐出圧力)が設計点から外れた運転状態になると、離反力が増大してピストンがシリンダから離脱し、両者の隙間が増大して各圧縮(吸入)室間での漏れが増大して性能低下を招いてしまったり、逆に離反力が減少して押し付け過多となってピストンとシリンダの接触面圧が上昇してスラスト損失が増大してしまい、大きな性能低下が生じたり、焼付が発生して信頼性が低下したりする。
例えば図9(B)に示すように、
Fs=Ft−Fu
=(Pa・Aa+Pb・Ab)−(Pc・Ac+Pd・Ad)<0
になってしまい、Ft<Fuの関係で押し付け力不足によりピストンがシリンダから離反する状態となってしまう。
これに対して、本実施形態では、図10に示すように、シールリングを第1シールリング(91)と第2シールリング(92)の2本で構成し、その間の環状部(93a,93b)に中間圧(Pb)の冷媒を導入するようにしている。したがって、運転状態が変化して中間圧力が設計ポイントから外れても、その運転状態に応じて、Ft>Fuの関係を満たす最適の押し付け力を押し付け機構(90)で得ることが可能になる。なお、実際には第2シールリング(92)の外側には冷媒の低圧圧力も作用する。
なお、第1中間圧導入路(96a)及び第2中間圧導入路(96b)は、図2に示した例とは逆に、第1圧縮機構部(30)において第1段圧縮機構の吐出部と第1環状部(93a)とに連通し、第2圧縮機構部(20)において第4段圧縮機構の吸入部と第2環状部(93b)とに連通するように構成してもよい。
上記流体通路(71,84)の詳細な構成について、ミドルプレート(25)の本体部(25a)の横断面図である図8を用いて説明する。第1吐出流路(81)は、図2及び図8に示すように、ミドルプレート(25)の本体部(25a)と蓋部(25b)とに跨って形成された直方体形状の吐出空間(81a)を有し、この第1段圧縮機構の吐出空間(81a)と吐出管(65)とが連通している。吐出空間(81a)は、第1段圧縮機構のシリンダ室(23d,33d)に吐出ポート(P11,P11)を介して連通している。また、ミドルプレート(25)の蓋部(25b)には、第1吐出流路(吐出部)(81)の一部を構成する第1段吐出空間(81a)と第2環状部(93b)に連通する上記第2中間圧導入路(96b)が形成されている。
第4吸入流路(74)の吸入管側流路(74a)は、第4段圧縮機構の吸入管(61)の位置に対して周方向に所定角度変位した位置に形成されている。そして、上記吸入管(61)と吸入管側流路(74a)とは、湾曲した連通路(74c)により接続されている。ミドルプレート(25)には、この連通路(74c)を介して第4段圧縮機構の吸入部(74)と第1環状溝(93a)とに連通する上記第1中間圧導入路(96a)が形成されている。なお、第4段圧縮機構の吸入管(61)と第1段圧縮機構の吸入管(62)は、実際には図1及び図2において同じ高さに形成されているが、図1,2では各流体通路(74,81)の接続関係を明瞭に示すために、吸入管(61)と吸入管(62)の位置を上下にずらして表し、且つ通路形状を簡略化して表している。
図2に示すように、第3吐出流路(83)は、軸受け部側フロントヘッド(16)に形成された第3段圧縮機構の吐出空間(83a)を含み、この吐出空間(83a)及び第3吐出流路(83)と吐出管(64)とが連通している。また、第4吐出流路(84)は、軸受け部側フロントヘッド(16)に形成された第4段圧縮機構の吐出空間(84a)を含んでいる。そして、本実施形態では、第4段圧縮機構に対して低段の圧縮機構である第3段圧縮機構の吐出空間(83a)が、リリーフ機構(100)を介してマフラー空間(27a)と連通し、最高段圧縮機構である第4段圧縮機構の吐出空間(84a)もマフラー空間(27a)と連通している。したがって、この実施形態では第3段圧縮機構の吐出空間(83a)と第4段圧縮機構の吐出空間(84a)とが互いに連通している。
上記ミドルプレート(25)と、ミドルプレート(25)を挟んで上側に配置された第1圧縮機構部(20)及び下側に配置された第2圧縮機構部(30)とを備えている上記圧縮機構(40)において、上記リリーフ機構(100)は、上側に位置する第1圧縮機構部(20)に設けられている。
このリリーフ機構(100)は、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)とマフラー空間(27a)とに連通するリリーフポート(101)と、このリリーフポート(101)に装着されたリリーフ弁(102)とから構成されている。リリーフ弁(102)には、例えばリード弁を用いることができる。このリリーフ弁(102)は、冷媒回路の高圧圧力が低下して、その高圧圧力よりも第3段圧縮機構の吐出圧力の方が高くなるような運転条件では開放されることになる。
したがって、本実施形態では、第3段圧縮機構の吐出圧力がシステム(冷媒回路)の高圧圧力を超えるような運転条件のときには、第4段圧縮機構では吐出弁(88)が常に開いた状態になるので、第4段圧縮機構では冷媒は通過するだけで圧縮されなくなる。そして、第3段圧縮機構の吐出圧力が冷媒回路の高圧圧力に均圧化してそれ以上は上昇しなくなるので、圧縮機(1)の吐出圧力が上昇しすぎるのを防止できる。
−運転動作−
次に、圧縮機(1)の運転動作について説明する。ここで、第1、第2圧縮機構部(20,30)の動作は、位相が互いに180°異なる状態で行われる。
電動機(50)を起動すると、第1圧縮機構部(20)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)の第1偏心部(53a)を介して第1ピストン(22)に伝達され、該第1ピストン(22)は、揺動ブッシュ部(24c)の中心点を揺動中心として揺動すると共に、第1ブレード(24)と共に該第1ブレード(24)の長手方向へ進退する。これにより、第1ピストン(22)が第1シリンダ(21)に対して揺動しながら公転し、第1圧縮機構部(20)の4つのシリンダ室(23a,23b,23c,23d)において所定の圧縮動作が行われる。
このとき、内側ブレード部(B1)の先端と内側ピストン部(22a)の切欠部(n1)の表面との間には、ミクロンオーダーの微細隙間が形成される状態となり、両者は非接触となる。また、外側第2ブレード部(B3)の先端とピストン側鏡板部(22c)の切欠部(n2)の表面との間にも、ミクロンオーダーの微細隙間が形成される状態となり、両者は非接触となる。上記の微細隙間には、潤滑油の油膜が形成される。したがって、シリンダ室(C1,C2)の高圧側から低圧側への冷媒の漏れは、実質的に問題にはならない。
最内側シリンダ室(23a)及び外側シリンダ室(23c)では、図6(A)の状態から駆動軸(53)が図の右回りに回転して図6(B)〜図6(D)の状態へ変化するのに伴い、低圧室(23aL,23cL)の容積が増大し、冷媒が吸入ポート(P3,P2)から低圧室(23aL,23cL)にそれぞれ吸入される。また、駆動軸(53)が一回転して再び図6(A)の状態になると、低圧室(23aL,23cL)への冷媒の吸入が完了する。そして、低圧室(23aL,23cL)は冷媒が圧縮される高圧室(23aH,23cH)となり、第1ブレード(24)を隔てて新たな低圧室(23aL,23cL)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、低圧室(23aL,23cL)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(23aH,23cH)の容積が減少し、該高圧室(23aH,23cH)で冷媒が圧縮される。高圧室(23aH,23cH)の圧力が所定値となって吐出流路(84,83)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(23aH,23cH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88,88)が開き、冷媒が第4吐出流路(84)及び第3吐出流路(83)から第1圧縮機構部(20)の外部へ吐出される。
また、最外側シリンダ室(23d)では、図7(A)の状態から駆動軸(53)が図の右回りに回転して図7(B)〜図7(D)の状態へ変化するのに伴い、低圧室(23dL)の容積が増大し、冷媒が吸入ポート(P1)から低圧室(23dL)に吸入される。また、駆動軸(53)が一回転して再び図7(A)の状態になると、低圧室(23dL)への冷媒の吸入が完了する。そして、低圧室(23dL)は冷媒が圧縮される高圧室(23dH)となり、第1ブレード(24)を隔てて新たな低圧室(23dL)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、低圧室(23dL)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(23dH)の容積が減少し、該高圧室(23dH)で冷媒が圧縮される。高圧室(23dH)の圧力が所定値となって吐出流路(81)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(23dH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88)が開き、冷媒が第1吐出流路(81)から第1圧縮機構部(20)の外部へ吐出される。
一方、内側シリンダ室(23b)では、図6(C)の状態から駆動軸(53)が図の右回りに回転して図6(D)〜図6(B)の状態へ変化するのに伴い、低圧室(23bL)の容積が増大し、冷媒が吸入ポート(P2)から低圧室(23bL)に吸入される。また、駆動軸(53)が一回転して再び図6(C)の状態になると、低圧室(23bL)への冷媒の吸入が完了する。そして、低圧室(23bL)は冷媒が圧縮される高圧室(23bH)となり、第1ブレード(24)を隔てて新たな低圧室(23bL)が形成される。駆動軸(53)がさらに回転すると、低圧室(23bL)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(23bH)の容積が減少し、該高圧室(23bH)で冷媒が圧縮される。高圧室(23bH)の圧力が所定値となって吐出流路(83)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(23bH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88)が開き、冷媒が吐出流路(83)から第1圧縮機構部(20)の外部へ吐出される。
なお、外側シリンダ室(23c)と内側シリンダ室(23b)とでは、冷媒の吸入開始のタイミング及び吐出開始のタイミングがほぼ180°異なる。このことにより、吐出脈動が小さくなり、振動や騒音が低減される。
一方、第2圧縮機構部(30)では、ロータ(52)の回転が駆動軸(53)の第2偏心部(53b)を介して第2ピストン(32)に伝達され、該第2ピストン(32)は、揺動ブッシュ部(34c)の中心点を揺動中心として揺動すると共に、第2ブレード(34)と共に該第2ブレード(34)の長手方向へ進退する。これにより、第2ピストン(32)が第2シリンダ(31)に対して揺動しながら公転し、第2圧縮機構部(30)の4つのシリンダ室(33a,33b,33c,33d)において所定の圧縮動作が行われる。
第2圧縮機構部(30)における圧縮動作は、実質的に第1圧縮機構部(20)の圧縮動作と同じであり、冷媒が各シリンダ室(33a,33b,33c,33d)内で圧縮される。各シリンダ室(33a,33b,33c,33d)において、高圧室(33aH,33bH,33cH,33dH)の圧力が所定値となって各吐出流路(84,83,83,81)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(33aH,33bH,33cH,33dH)の冷媒の圧力によって吐出弁(88,88,88,88)が開き、冷媒が各吐出流路(84,82,82,81)から第2圧縮機構部(30)の外部へ吐出される。
圧縮機構(40)の動作中に、冷媒は、吸入管(62)から第1段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)と第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)に吸入されて圧縮され、第1段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(65)を通って吐出される。例えば冷房運転中は、図10(A)に示すように、第1段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、冷却された後、吸入管(63)から第2段圧縮機構のシリンダ室である第2圧縮機構部(30)の外側シリンダ室(33c)と内側シリンダ室(33b)に吸入されてさらに圧縮され、第2段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(66)を通って吐出される。第2段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、冷却された後、吸入管(60)から第3段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の外側シリンダ室(23c)と内側シリンダ室(23b)に吸入されてさらに圧縮され、第3段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(64)を通って吐出される。第3段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、冷却された後、吸入管(61)から第4段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)と第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)に吸入されてさらに圧縮され、第4段圧縮機構のシリンダ室から吐出管(67)を通って吐出される。
第4段圧縮機構のシリンダ室から吐出された冷媒は、図示していない冷媒回路の放熱器、膨張機構、蒸発器を順に流れ、再び圧縮機(1)に吸入される。そして、圧縮機(1)における圧縮行程、放熱器における放熱行程、膨張機構における膨張行程、蒸発器における蒸発行程を順に繰り返すことにより、冷凍サイクルが行われる。
一方、多段圧縮の各段の間に中間冷却機構を設けて冷房運転を行うことを基準に各段圧縮機構のシリンダ容積を決定した場合、暖房運転時は外気による冷却が行われて中間冷却が行われないため、圧縮機(1)の吐出圧力が上昇しすぎることがある。
具体的には、圧縮機(1)の運転中に冷媒回路の運転条件が変化して高圧圧力が低下すると、圧縮機(1)のケーシング(10)内の圧力も冷媒回路の高圧圧力まで低下していくので、第4吐出流路(84)及びマフラー空間(27a)の圧力も低下していく。ここで、冷媒回路の高圧圧力が第3段圧縮機構の吐出圧力よりも低くなる運転条件では、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)の圧力が、第4段圧縮機構の吐出空間(84a)の圧力よりも高いことになる(図12(A)の破線参照)。図12(B)において、第3段圧縮機構で第4段圧縮機構の吸入容積(Vc4)まで冷媒を圧縮しようとするからである。
一方、本実施形態において、このような運転条件ではリリーフ弁(102)が開き、第3段圧縮機構の吐出圧力がケーシング内の圧力、つまり冷媒回路の高圧圧力に均圧化していく。また、第4段圧縮機構に吸入される冷媒の圧力もケーシング(10)内の圧力と実質的に等しくなる。したがって、第4段圧縮機構では、吐出弁(88)が開いたままになり、冷媒が圧縮されずにシリンダ室(22a,33a)からケーシング(10)内へ冷媒が流出する。
このように、本実施形態では、第3段圧縮機構の吐出圧力が冷媒回路の高圧圧力よりも高くなるような運転条件のときには、リリーフ弁(102)が開くとともに第4段圧縮機構の吐出弁(88)も開いた状態に保つことにより、圧縮機構(40)から吐出される冷媒の圧力が上昇しすぎるのを抑えるようにしている。
また、上記圧縮機構(40)の運転中には、上記ミドルプレート(25)に形成されている流体通路(74,81)から各環状部(93a,93b)へ中間圧の冷媒が供給される。具体的には、第4段圧縮機構の吸入部である第4吸入流路(74)から第1中間圧導入路(96a)を介して第1環状部(93a)へ第4段圧縮機構の吸入冷媒の一部が導入される。また、第1段圧縮機構の吐出部である第1吐出流路(81)から第2中間圧導入路(96b)を介して第2環状部(93b)へ第1段圧縮機構の吐出冷媒の一部が導入される。
第1段圧縮機構の吐出冷媒の圧力が第4段圧縮機構の吸入冷媒の圧力よりも低いのに応じて、本実施形態では、第1環状部(93a)の面積を第2環状部(93b)の面積よりも小さくしているので、各押し付け機構(90)の押し付け力に第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)で大きな差は生じない。また、本実施形態では第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)のいずれにおいても、押し付け力と離反力が図10に示すようにバランスするので、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間から冷媒が漏れたり、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)とが焼き付いたりすることも防止できる。
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、ミドルプレート(25)に形成された第4吸入通路(74)と第1吐出通路(81)を通る中間圧の流体を各環状部(93a,93b)に導入することにより押し付け力が発生するようにしている。このように中間圧を利用して押し付け力が発生するようにしているので、運転状態が変化して中間圧が変動すると押し付け力もそれに応じて変化する。したがって、運転状態に応じた最適な押付け力を容易に得ることができるから、押し付け力不足でシリンダ室(23a〜23d,33a〜33d)から冷媒が漏れて性能が低下したり、押し付け過剰による摩擦損失で信頼性が低下したりするのを防止できる。
また、本実施形態では、中間圧の冷媒で押し付け力を発生させる構成を、ミドルプレート(25)に流体通路(74,81)と中間圧導入路(96a,96b)を形成し、中間圧導入路(96a,96b)を環状部(93a,93b)に接続するだけで実現しているので、構造が複雑化することはなく、ひいてはコスト上昇や信頼性低下も防止できる。
また、本実施形態では、それぞれ4つのシリンダ室を有する第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)において、最内側シリンダ室(23a,33a)に接続される第4吸入通路(74)と最外側シリンダ室(23d,33d)に接続される第1吐出通路(81)をミドルプレートに形成するようにしており、第2段圧縮機構と第3段圧縮機構の吸入通路(72,73)や吐出通路(82,83)はフロントヘッド(14)及びリアヘッド(17)に形成するようにしているので、流体通路(74,81)の構造を簡単にすることができ、圧縮機構(40)の構成が複雑になるのを防止できる。
さらに、本実施形態によれば、リリーフ機構(100)を第3段圧縮機構の吐出空間(83a)に設けるだけで、システムの高圧圧力が低下してきたときに第3段圧縮機構の吐出空間(83a)から第4段圧縮機構の吐出空間(84a)へ冷媒が流れていき、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)の圧力がシステムの高圧圧力とほぼ同じ圧力になる。したがって、圧縮機(1)の吐出圧力が上昇しすぎるのを防止できるから、サイクルの効率が低下するのを簡単な構成で防止でき、漏れ損失も抑えられる。
また、本実施形態では、第2段圧縮機構のシリンダ容積と第3段圧縮機構のシリンダ容積が等しくして、第2段吐出体積と第3段吸入体積が適度にバランスするようにしているため、第3段圧縮機構にリリーフ機構(100)を設けるだけで、圧縮機の吐出圧力が上昇しすぎるのを防止できる構成を容易に実現できる。
また、本実施形態では、ミドルプレート(25)の上側の第1圧縮機構部(20)にリリーフ機構(100)を設けて、冷媒を圧縮機構(40)から上向きに吐出する構成を採用している。ここで、圧縮機(1)のケーシングの底部には潤滑油を溜める油溜まりが設けられており、第3段圧縮機構をミドルプレート(25)の下側の第2圧縮機構部(30)に設けて冷媒を下向きに吐出する場合は、リアヘッド(17)側に吐出カバーを設けたり圧縮機構(40)の中に冷媒の吐出通路を設けたりする必要が生じて構成が複雑になるおそれがあるが、本実施形態によれば構成が複雑になるのを防止できる。
−参考例−
(参考例1)
図13に示している参考例1は、中間圧導入路(96a,96b)の構成が図2の実施形態とは異なる例である。この参考例1では、第1中間圧導入路(96a)は、第1圧縮機構部(20)において第1段圧縮機構の吐出部である第1吐出流路(81)と第1環状部(93a)とに連通し、第2中間圧導入路(96b)は、第2圧縮機構部(30)において第1段圧縮機構の吐出部である第1吐出流路(81)と第2環状部(93b)とに連通している。
この参考例1では、第1中間圧導入路(96a)と第2中間圧導入路(96b)のいずれも、流れる冷媒の圧力が同じであるため、第1環状部(93a)及び第2環状部(93b)の面積を調整したり、各中間圧導入路(96a,96b)の何れかに絞りを設けたりしなくてもよい。
また、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)にリリーフ機構(100)を設けている点を含めて、その他の構成は、図2の実施形態と同じである。
この参考例1においても、第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の両方で押し付け力と離反力が図9(A)に示すようにバランスするので、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間から冷媒が漏れたり、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)が焼き付いたりするのを防止できる。したがって、圧縮機(1)の性能が低下するのを抑えられるし、圧縮機(1)の信頼性が低下するのも防止できる。
また、ミドルプレート(25)に中間圧の冷媒が流れる流体通路(81)を形成し、この流体通路(81)から2本のシールリング(91,92)の間の環状部(93a,93b)へ中間圧導入路(96a,96b)で中間圧冷媒を導入するようにしていて、複雑な機構は不要であるから、構成が複雑になるのも抑えられる。
また、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)にリリーフ機構(100)を設けているので、システムの高圧圧力が第3段圧縮機構の吐出圧力よりも低くなるような運転条件であっても、圧縮機(1)の吐出圧力が上昇しすぎるのを防止できる。
(参考例2)
図14に示している参考例2は、中間圧導入路(96a,96b)の構成が図2の実施形態及び図13の参考例1とは異なる例である。この参考例2では、第1中間圧導入路(96a)は、第1圧縮機構部(20)において第4圧縮機構の吸入部である第4吸入流路(74)と第1環状部(93a)とに連通し、第2中間圧導入路(96b)は、第2圧縮機構部(30)において第4段圧縮機構(40)の吸入部である第4吸入流路(74)と第2環状部(93b)とに連通している。
この参考例2では、参考例1と同様に、第1中間圧導入路(96a)と第2中間圧導入路(96b)のいずれも、流れる冷媒の圧力が同じであるため、第1環状部(93a)及び第2環状部(93b)の面積を調整したり、各中間圧導入路(96a,96b)の何れかに絞りを設けたりしなくてもよい。
また、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)にリリーフ機構(100)を設けている点を含めて、その他の構成は、図2の実施形態及び図13の参考例1と同じである。
この参考例2においても、第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の両方で押し付け力と離反力が図10に示すようにバランスするので、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間から冷媒が漏れたり、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)が焼き付いたりするのを防止できる。したがって、圧縮機(1)の性能が低下するのを抑えられるし、圧縮機(1)の信頼性が低下するのも防止できる。
また、ミドルプレート(25)に中間圧の冷媒が流れる流体通路(74)を形成し、この流体通路(74)から2本のシールリング(91,92)の間の環状部(93a,93b)へ中間圧導入路(96a,96b)で中間圧冷媒を導入するようにしていて、複雑な機構は不要であるから、構成が複雑になるのも抑えられる。
また、第3段圧縮機構の吐出空間(83a)にリリーフ機構(100)を設けているので、システムの高圧圧力が第3段圧縮機構の吐出圧力よりも低くなるような運転条件であっても、圧縮機(1)の吐出圧力が上昇しすぎるのを防止できる。
(参考例3)
図15に示している参考例3について説明する。この参考例3は、3段圧縮を行う圧縮機構に関する例である。
この参考例3では、最外側シリンダ部(21c,31c)の内径がピストン側鏡板部(22c,32c)の外形よりも大きく、その間に形成される空間が、実施形態1では冷媒を圧縮する最外側シリンダ室(23d,33d)になっているのに対して、この参考例3では冷媒を圧縮しない無効空間(23e,33e)になっている。そして、ミドルプレート(25)には、図2に示している第1吸入通路(71)が形成されておらず、吸入管(62)も接続されていない。
また、この参考例3では、図2において最外側シリンダ室(23d,33d)になっている空間が無効空間(23e,33e)であるため、ミドルプレート(25)には、図2に示している吐出ポート(P11,P11)及び第1吐出流路(81)が形成されておらず、吐出管(65)も接続されていない。
図2のミドルプレート(25)が本体部(25a)と蓋部(25b)の2つの部材で構成されているのに対して、本参考例3では、図2に示している吐出ポート(P11,P11)とそれよりも容積の大きな内部空間である第1吐出流路(81)がミドルプレート(25)に形成されていない。そこで、この参考例3のミドルプレート(25)は1つの部材で構成されている。
第1段圧縮機構のシリンダ室は、第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)と外側シリンダ室(33c)により構成されている。第2段圧縮機構のシリンダ室は、第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)と外側シリンダ室(23c)により構成されている。第3段圧縮機構のシリンダ室は、第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)と第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)とから構成されている。
このように、本参考例3では、図2の実施形態1で説明した第1段圧縮機構は用いられておらず、実施形態1の第2段圧縮機構、第3段圧縮機構及び第4段圧縮機構が、それぞれ第1段圧縮機構、第2段圧縮機構及び第3段圧縮機構を構成している。
この参考例3では、説明の便宜上、図2における第2吸入流路(72)、第3吸入流路(73)及び第4吸入流路(74)を、それぞれ第1吸入流路(71)、第2吸入流路(72)及び第3吸入流路(73)と称する。また、図2における第2吐出流路(82)、第3吐出流路(83)及び第4吐出流路(84)を、それぞれ第1吐出流路(81)、第2吐出流路(82)及び第3吐出流路(83)と称する。
第1段圧縮機構のシリンダ室である第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)と外側シリンダ室(33c)には、吸入管(63)が第1吸入流路(71)を介して接続され、吐出管(66)が第1吐出流路(81)を介して接続されている。第2段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)と外側シリンダ室(23c)には、吸入管(60)が第2吸入流路(72)を介して接続され、吐出管(64)が第2吐出流路(82)を介して接続されている。第3段圧縮機構のシリンダ室である第1圧縮機構部(20)の最内側シリンダ室(23a)と第2圧縮機構部(30)の最内側シリンダ室(33a)は、吸入管(61)が第3吸入流路(73)を介して接続され、第3吐出流路(83)と吐出合流通路(29)を介してケーシング(10)内の空間に連通している。
第1中間圧導入路(96a)は、第1圧縮機構部(20)において第3段圧縮機構の吸入部である第3吸入流路(73)と第1環状部(93a)とに連通し、第2中間圧導入路(96b)は、第2圧縮機構部(30)において第3段圧縮機構の吸入部である第3吸入流路(73)と第2環状部(93b)とに連通している。第1中間圧導入路(96a)と第2中間圧導入路(96b)は1本の通路で構成され、この通路と第3吸入流路(73)とが連通路(96c)で接続されている。
この参考例3では、参考例1及び参考例2と同様に、第1中間圧導入路(96a)を流れる冷媒と第2中間圧導入路(96b)を流れる冷媒の圧力が同じであるため、第1環状部(93a)及び第2環状部(93b)の面積を調整したり、各中間圧導入路(96a,96b)の何れかに絞りを設けたりしなくてもよい。
また、リリーフ機構(100)は、ミドルプレート(25)の上側に配置されている第1圧縮機構部(20)に設けられている。このリリーフ機構(100)は、第2段圧縮機構の吐出空間(82a)とマフラー空間(27a)とに連通するリリーフポート(101)と、このリリーフポート(101)に装着されたリリーフ弁(102)とから構成されている。このリリーフ弁(102)は、冷媒回路の高圧圧力が低下して、第2段圧縮機構の吐出圧力が冷媒回路の高圧圧力を超えるような運転条件になったときに開放される。
したがって、この参考例3では、第2段圧縮機構の吐出圧力がシステム(冷媒回路)の高圧圧力を超えるような条件のときには、第3段圧縮機構は吐出弁(88)が常に開いた状態になるので、第3段圧縮機構では冷媒は通過するだけで圧縮されなくなり、冷媒の高圧圧力が上昇しすぎるのを防止できる。
そして、この参考例3においても、押し付け機構(90)を上記のように構成したことにより、第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の両方で押し付け力と離反力が図10に示すようにバランスするので、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間から冷媒が漏れたり、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)が焼き付いたりすることもない。したがって、圧縮機(1)の性能が低下するのを抑えられるし、圧縮機(1)の信頼性が低下するのも防止できる。
また、ミドルプレート(25)に中間圧の冷媒が流れる流体通路(74)を形成し、この流体通路(74)から2本のシールリング(91,92)の間の環状部(93a,93b)へ中間圧導入路(96a,96b)で中間圧冷媒を導入するようにしていて、複雑な機構は不要であるから、構成が複雑になるのも抑えられる。
また、リリーフ機構(100)を上記のように構成したことにより、圧縮機(1)の運転中に冷媒回路の運転条件が変化して高圧圧力が低下すると、圧縮機(1)のケーシング(10)内の圧力も冷媒回路の高圧圧力まで低下しようとするので、第3吐出流路(83)及びマフラー空間(27a)の圧力も低下していく。ここで、冷媒回路の高圧圧力が第2段圧縮機構の吐出圧力よりも低くなると、第2段圧縮機構の吐出空間(82a)の圧力が第4吐出流路(83)及びマフラー空間(27a)の圧力よりも高くなる。
したがって、この運転条件ではリリーフ弁(102)が開き、第2段圧縮機構の吐出圧力がケーシング(10)内の圧力、つまり冷媒回路の高圧圧力と等しくなる。また、第3段圧縮機構に吸入される冷媒の圧力もケーシング(10)内の圧力と実質的に等しくなるので、第3段圧縮機構は吐出弁(88)が開いたままになる。したがって、第3段圧縮機構では冷媒が圧縮されずにシリンダ室(23a,33a)からケーシング(10)内へ冷媒が流出する。
このように、本参考例3では、第2段圧縮機構の吐出圧力が冷媒回路の高圧圧力よりも高くなるような条件のときには、リリーフ弁(102)が開くとともに第3段圧縮機構の吐出弁(88)も開いた状態に保たれるので、圧縮機構(40)から吐出される冷媒の圧力がが上昇しすぎるのを抑えられる。
その他の構成、作用及び効果は実施形態1と同様である。
(参考例4)
図16に示している参考例4では、最外側シリンダ室(23d,33d)、外側シリンダ室(23c,33c)及び内側シリンダ室(23b,33b)は、図2の実施形態1と同様に構成されている。
第1段圧縮機構のシリンダ室は、第1圧縮機構部(20)の最外側シリンダ室(23d)と第2圧縮機構部(30)の最外側シリンダ室(33d)とから構成されている。第2段圧縮機構のシリンダ室は、第2圧縮機構部(30)の内側シリンダ室(33b)と外側シリンダ室(33c)により構成されている。第3段圧縮機構のシリンダ室は、第1圧縮機構部(20)の内側シリンダ室(23b)と外側シリンダ室(23c)により構成されている。
また、内側シリンダ部(21a,31a)の内径が内側ピストン部(22a,32a)の外形よりも大きく、その間に形成される空間が、実施形態1では冷媒を圧縮する最内側シリンダ室(23a,33a)になっているのに対して、この参考例4では、冷媒を圧縮しない無効空間(23f,33f)になっている。
図2の実施形態1では最内側シリンダ室(23a,33a)であった空間がこの参考例4では無効空間(23f,33f)であるため、ミドルプレート(25)には、図2の第4吸入通路(74)が形成されておらず、吸入管(61)も接続されていない。また、図2に示している第4吐出流路(84)も形成されていない。
このように、この参考例4では、図2の実施形態1の第4段圧縮機構は用いられず、実施形態1の第1段圧縮機構、第2段圧縮機構及び第3段圧縮機構だけが用いられている。
この参考例4では、第1段圧縮機構、第2段圧縮機構及び第3段圧縮機構の吸入流路(71,72,73)や吐出流路(81,82,83)の構成は実施形態1とほぼ同じであるが、第3吐出流路(83)とマフラー空間(27a)の間に図2のリリーフ機構(100)は設けられておらず、第3吐出流路(83)がマフラー空間(27a)を介してケーシング(10)の内部空間と連通している。また、第1中間圧導入路(96a)と第2中間圧導入路(96b)は、図16に示している参考例1と同様に構成されている。
この参考例4においても、第1中間圧導入路(96a)と第2中間圧導入路(96b)のいずれも流れる冷媒の圧力が同じであるため、第1環状部(93a)及び第2環状部(93b)の面積を調整したり、各中間圧導入路(96a,96b)の何れかに絞りを設けたりしなくてもよい。
その他の構成は、図1〜図12の実施形態1及び図15の参考例3と同様である。
この参考例4においても、第1圧縮機構部(20)と第2圧縮機構部(30)の両方で押し付け力と離反力が図10に示すようにバランスするので、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)の間から冷媒が漏れたり、シリンダ(21,31)とピストン(22,32)が焼き付いたりすることもない。したがって、圧縮機(1)の性能が低下するのを抑えられるし、圧縮機(1)の信頼性が低下するのも防止できる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態1では4段圧縮機構について説明し、参考例3では3段圧縮機構について説明したが、本発明の適用対象は3段圧縮機構や4段圧縮機構に限定されるものではない。
また、実施形態1の4段圧縮機構では、中間圧冷媒が流れる2本の流体通路(74,81)を設けているが、押し付け機構(90)に用いる中間圧の冷媒は、第1段圧縮機構の吐出冷媒や第4段圧縮機構の吸入冷媒に限定されるものではなく、場合によっては第2段圧縮機構の吐出冷媒(第3段圧縮機構の吸入冷媒)などを用いてもよい。
また、例えば、図13に示した参考例1において、ミドルプレート(25)に設ける流体通路を第1吐出流路(81)だけにして、第4吸入流路(74)は軸受部側フロントヘッド(16)や軸受部側リアヘッド(19)に設けるようにしてもよいし、図14に示した参考例4において、ミドルプレート(25)に設ける流体通路を第4吸入流路(74)だけにして、第1吐出流路(81)はシリンダ空間側フロントヘッド(15)やシリンダ空間側リアヘッド(18)に設けるようにしてもよい。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。