JP5663922B2 - 鋼材熱処理炉用搬送ロール - Google Patents

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Description

本発明は、鋼材熱処理炉内の鋼材搬送用ロールに関する。
鋼板熱処理炉では、鋼板は多数の搬送ロールに支持されて、連続的に搬送され、加熱帯、均熱帯を経て、所定の温度(例えば900〜1000℃程度)まで加熱される。
このような、高温環境で使用される搬送ロールとして、従来、高温でのクリープ強度に優れた高Cr−Ni系の耐熱鋳鋼等の材質を用いて、遠心鋳造によるパイプ材の両端に軸材を溶接した中空ロール(図2)が使用されてきた。
しかし、鋼板搬送時に被熱処理材である鋼板の酸化スケールがロール表面に凝着、堆積するビルドアップ現象が発生し、被熱処理材表面の押し込み疵の原因となる。そこで、耐ビルドアップ性に優れたロールとして、特許文献1には、耐熱鋳鋼性のロール芯材の外周にCr:17〜21mass%、Al:0.1〜4.0mass%を含有する耐熱合金鋼製のスリーブを被覆固定した搬送ロールが開示されている。
特許文献2には、耐ビルドアップ性に優れたカーボンあるいはセラミックのスリーブをハースロールの表面に使用した搬送ロールが開示されている。
特許文献3には、アルミナ系セラミックスリーブとして、アルミナと20〜80mass%のクロミアとの混合固溶体からなるアルミナ系複合セラミック製のスリーブ、またはアルミナと50mass%以下の炭化珪素との混合物からなるアルミナ系複合セラミック製のスリーブが開示されている。
特開昭61−037950号公報 特開平08−295948号公報 特開平04−009424号公報
いずれの特許文献にもスリーブ付搬送ロールが記載されているが、スリーブを取付ける目的は、いずれも耐ビルドアップ性の向上を目的としたものである。また、被搬送材は、金属帯板や金属ストリップなど、単位荷重(被搬送材が搬送ロールに及ぼす荷重の軸方向単位長さあたりの荷重)が軽い、いわゆる薄板を対象とした技術が中心である。このような、単位荷重が軽い場合には、後述の厚鋼板熱処理炉の場合とは異なり、搬送ロールにおけるヒートクラックの発生や伝播はあまり問題とならない。
一方、鋼材熱処理炉、特に厚鋼板熱処理炉では薄板搬送の場合と比べて、次のような違いがある。まず、搬送速度が薄板の場合に比べて遅いため、ロールにかかる熱応力が大きくなる。このため、いわゆるヒートクラックと呼ばれる亀甲状の熱疲労亀裂が発生しやすい。
また、鋼材、特に厚鋼板などを加熱する場合、被加熱材の単重が大きいので、搬送時に搬送ロールが受ける衝撃も大きいため、ヒートクラックが伝播し易く、ロールの折損に至るという問題がある。
さらに、被加熱材の単重が大きいことは、それだけ熱容量が大きいことを意味するので、これもロール寿命にとっては好ましくない要因である。すなわち、例えば冷片である厚鋼板が加熱帯に搬送される場合、炉温近くの温度(例えば700〜800℃)に加熱された搬送ロールに冷えた厚鋼板が搬送されると、搬送ロールの表面は鋼材に抜熱されて急冷されるが、その後、厚鋼板が通過してロールから離れると、ロール表面は炉の雰囲気により急加熱される。この急冷・急加熱の繰り返しにより、搬送ロールの表面にはヒートクラックが発生・進展しやすく、最終的には、その亀裂が進展してロールの折損を生じ易い、という懸念がある。
しかしながら、こうした熱疲労クラックの発生に起因する表面劣化、および、それに伴うロールの折損を回避・抑制可能な搬送ロールに関する先行技術は見当たらないのが現状であった。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、ヒートクラックの伝播による折損を防止する搬送ロールを提供することを目的とする。
発明者は、被熱処理材である鋼材、特に厚鋼板が搬送ロールに及ぼす荷重が、搬送ロールの軸長さ1m当たり50kg以上である場合に、上述したヒートクラックの発生、およびこれに起因するロールの折損が生じやすいことを知見し、検討を重ねた。その結果、内筒である中空ロールの胴部の外側に、スリーブ状の外筒パイプを被せた2重構造のロールとすることにより、たとえヒートクラックが発生してもその進展は外筒(スリーブ)内に留め、内筒である中空ロールには伝播させずにすむと同時に、ロールの強度自体は、内筒である中空ロールで確保できることを想到した。
本発明の要旨は、以下の通りである。
第一の発明は、ロール軸長さ1m当たり50kg以上の荷重を及ぼす鋼材を搬送する鋼材熱処理炉用搬送ロールであって、着脱可能な耐熱鋼製のヒートクラック伝播停止用スリーブが、中空ロールの胴部外周面に焼嵌方式により装着されており、前記スリーブおよび中空ロールの材質はFe−(12〜48mass%)Ni−(25〜28mass%)Cr系耐熱鋼であり、かつ、スリーブのNi含有量は中空ロールより低いことを特徴とする鋼材熱処理炉用搬送ロールである。
第二の発明は、被熱処理材である鋼材が板厚6mm以上の厚鋼板であることを特徴とする第一の発明に記載の鋼材熱処理炉用搬送ロールである。
従来の搬送ロールは、一体ロールであったので、ロール表面で発生したヒートクラックが徐々に進展し折損するのを防ぐため、例えば経験的に知見した寿命に達する前にロール全体を取り替えていた。これに対して、本発明においては、ヒートクラックが着脱可能な外筒スリーブの範囲に留まり、内筒である中空ロールには進展しないので、外筒のスリーブを適宜交換することにより、ロール折損を防ぎながら、従来に比べて約2倍の期間に亘り、同一の中空ロールを内筒として使用することが可能となった。
本発明例のロール断面を示す図である。 従来例のロール断面を示す図である。
本発明における鋼材熱処理炉用搬送ロールとは、熱処理炉内において、被熱処理材である鋼材を搬送するテーブルに用いるロールを意味し、ハースロールと称されることもある。
本発明に係る熱処理とは、鋼材の焼入れ・焼戻し・焼ならしなどの熱処理を対象とし、例えば、いわゆるオフライン熱処理炉に適用することが可能である。
本発明の鋼材熱処理炉用搬送ロールを厚鋼板の熱処理に適用する場合には、従来ロールの場合にヒートクラックの発生やこれに伴うロールの折損が生じやすくなる、板厚が6mm以上の厚鋼板の熱処理に適用することが好適である。
なお、被熱処理材である鋼材が形鋼、棒鋼や鋼管の場合にも本発明の鋼材熱処理炉用ロールを適用することが可能である。
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。
図2に示した搬送ロールは従来例のロールであり、遠心鋳造で作製した耐熱鋼製の円筒状パイプ1に対して鍛造した軸材2を溶接して使用するものである。
これに対して、本発明では、図1に示すように、遠心鋳造で作製した円筒状のスリーブ3を、遠心鋳造で作製した耐熱鋼製の円筒状パイプ1、すなわち中空ロールの胴部外面に装着して2重構造とすることで、ヒートクラックはスリーブ3内だけに留まり内筒である中空ロールには進展しないので、搬送ロールが折損することはない。
ロール外径の変更は、周辺機器・設備の変更・改造を必要とするので、本発明を適用してスリーブ3を装着する際は、スリーブ3を装着した状態でのロール外径は従来と同じにして、内筒である中空ロールの外径を小さくして対応するのが良い。
例えば、搬送ロール胴部外径が360mmで従来ロールの胴部厚みが30mmである場合に、本発明のスリーブ方式を適用する場合は、軸材の中空ロールの胴部外径は320mm、胴部厚30mmとし、スリーブ3の厚みを20mmとして、ロール胴部外径を従来ロールの場合と同じく360mm一定とするのがよい。
本発明に用いるロールの材質としては、従来と同一の耐熱鋼を用いることができ、例えば、Fe−(12〜48mass%)Ni−(25〜28mass%)Cr系耐熱鋼を用いるのが良い。JIS規格としては、例えば、SCH13(15%Ni−25%Cr)、SCH22(20%Ni−25%Cr)、SCH24(35%Ni−28%Cr)などを使用することができる。
内筒である中空ロールの胴部である円筒状パイプ1の材料と、外筒であるスリーブ3の材料とは、同一成分系の材料を使用することもできるが、Ni含有量が増えるほど耐熱性は向上するが靭性は低下する傾向があるので、靭性の観点からは、スリーブ3の材質を内筒である中空ロールの材質よりも低Ni鋼種とすることが好ましい。
内筒である中空ロールの胴部である円筒状パイプ1の外側にスリーブ3を装着するには、焼嵌方式を用いるのが簡便である。焼嵌方式を用いる場合でもスリーブ3の回転防止のためにキーを入れておくと、さらに安全である。
もちろん、焼嵌を用いないで機械的に固定する機構を用いてもかまわない。
このようにして、本発明においては、スリーブ3を、内筒である中空ロールの胴部である円筒状パイプ1の外側に、着脱可能に装着することができる。外筒のスリーブ3を適宜交換することにより、同一の中空ロールを内筒として繰り返して使用することが可能であり、ロール折損を防ぎながら、内筒の中空ロールの長寿命化が達成される。
1 円筒状パイプ
2 軸材
3 スリーブ

Claims (2)

  1. ロール軸長さ1m当たり50kg以上の荷重を及ぼす鋼材を搬送する鋼材熱処理炉用搬送ロールであって、
    着脱可能な耐熱鋼製のヒートクラック伝播停止用スリーブが、中空ロールの胴部外周面に焼嵌方式により装着されており、
    前記スリーブおよび中空ロールの材質はFe−(12〜48mass%)Ni−(25〜28mass%)Cr系耐熱鋼であり、かつ、スリーブのNi含有量は中空ロールより低いことを特徴とする鋼材熱処理炉用搬送ロール。
  2. 被熱処理材である鋼材が板厚6mm以上の厚鋼板であることを特徴とする請求項1記載の鋼材熱処理炉用搬送ロール。
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