JP2019055419A - 冷間圧延用ロール - Google Patents
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Abstract
【課題】熱衝撃によるクラックの発生を抑制できる冷間圧延用ロールを提供する。【解決手段】本実施形態による冷間圧延用ロールは、胴部と軸部とを備える。胴部において、胴部の表面から廃棄径までの厚さをt(mm)と定義したとき、胴部の表面からt/4深さ位置までの領域でのショア硬さHS0〜t/4は、胴部の表面からt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2よりも低く、胴部の廃棄径位置でのショア硬さHStは、胴部の表面からt/2深さ位置での前記ショア硬さHSt/2よりも低く、胴部の表面でのショア硬さHS0は、胴部の廃棄径位置でのショア硬さHSt以上である。【選択図】図6
Description
本発明は、ロールに関し、さらに詳しくは、冷間圧延用ロールに関する。
冷間圧延用ロールの製造工程では、焼入れ及び焼戻しを実施することにより、冷間圧延用ロールの胴部表層の硬さを調整する。
特開昭61−284526号公報(特許文献1)では、従前の冷間圧延用ロールの焼入れ及び焼戻し処理の問題点を次のとおり指摘している。ロールに対して焼入れを実施すれば、ロールの胴部表面から深さ方向に硬さが徐々に低下する硬さ分布が得られる。そして、焼入れ後に焼戻しを実施すれば、焼入れ時に形成された硬さ分布の形は維持されたまま、全体の硬さが低下する(特許文献1の図1中の曲線(a)及び鎖線(b)参照)。この場合、廃棄径の基準硬さ(特許文献1ではショア硬さHS90)を有する表層範囲が浅くなり、硬化深度が損なわれる。そこで、特許文献1では、焼入れ後、ロールの表面層のみに焼戻し効果を与えて、硬化深度を損なうことなく、胴部表面の硬さを表層内の硬さとほぼ同じとする(特許文献1の図1の曲線(c)参照)。
ところで、冷間圧延用ロールの使用初期において、表面にクラックが発生する場合がある。この場合、クラックが進展してスポーリングが発生する場合がある。本発明者らが冷間圧延用ロールの使用初期でのクラックの発生及び進展の原因について調査した結果、このクラック発生のメカニズムは、使用初期において圧延対象材である鋼材から受ける熱衝撃に起因して発生することがわかった。
特許文献1では、焼戻しによる硬度深化の阻害を抑制することを課題とするが、熱衝撃に起因したクラック発生の抑制については、なんら検討していない。
本発明の目的は、熱衝撃によるクラックの発生を抑制できる冷間圧延用ロールを提供することである。
本実施形態による冷間圧延用ロールは、胴部と軸部とを備える。胴部において、胴部の表面から廃棄径までの厚さをt(mm)と定義したとき、胴部の表面からt/4深さ位置までの領域でのショア硬さHS0〜t/4は、胴部の表面からt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2よりも低く、胴部の廃棄径位置でのショア硬さHStは、胴部の表面からt/2深さ位置での前記ショア硬さHSt/2よりも低く、胴部の表面でのショア硬さHS0は、胴部の廃棄径位置でのショア硬さHSt以上である。
本実施形態による冷間圧延用ロールは、熱衝撃によるクラックの発生を抑制できる。
本発明者らは、冷間圧延用ロールの熱衝撃によるクラック発生の原因について、調査及び検討を行った。
冷間圧延用ロールはたとえば、冷間圧延工程での冷間圧延機に用いられる。より具体的には、冷間圧延用ロールはたとえば、冷間圧延機のうち、仕上げ圧延工程で利用される仕上げ圧延機に用いられる。仕上げ圧延機は、一列に並んだ複数の圧延スタンドを備える。各圧延スタンドは、一対のワークロールと、一対のワークロールをバックアップするための複数のバックアップロールとを備える。冷間圧延用ロールはたとえば、ワークロールである。
ところで、鋼帯に対して冷間圧延を実施する場合、溶接により、鋼帯の端部を他の鋼帯の端部と接続し、連続的に冷間圧延を実施する場合がある。このとき、鋼帯と鋼帯とのつなぎ目である溶接部は、圧延方向に対して垂直な方向に延びており、鋼帯に対して若干凸形状となっている。そのため、仕上げ圧延機のうち、特に、先頭に配列された圧延スタンド(以下、先頭圧延スタンドという)のワークロールは、冷間圧延時において、鋼帯の溶接部と衝突する。衝突時に加工発熱が発生するため、先頭圧延スタンドのワークロールは、熱衝撃を受ける。さらに、圧延中に圧延板のスリップや異物噛みこみにより熱衝撃が発生する場合もある。本発明者らは、冷間圧延用ロールをワークロールとして利用する場合、これらの熱衝撃により、冷間圧延用ロールの表面にクラックが発生すると考えた。
そこで、本発明者らは、熱衝撃によるクラック発生のメカニズムについてさらに検討を行った。
冷間圧延用ロールでは、胴部の表層に対して、焼入れを実施した後、焼戻しを実施する。焼戻し温度はたとえば、100〜200℃である。この場合、焼入れにより冷間圧延用ロールの胴部表層に形成されたマルテンサイトが、低温で焼き戻しされた状態となっている。冷間圧延用ロールの使用初期において、熱衝撃により、冷間圧延用ロールの胴部表層に、上記焼戻し温度以上の熱が加われば、熱が加わった表層部分のマルテンサイトがさらに焼戻しされ、収縮する。この収縮により、局所的な引張応力が発生し、その結果、クラックが発生すると考えられる。
以上の考察に基づいて、本発明者らはさらに、焼戻し温度と、クラック深さとの関係について、次の熱衝撃試験を行って調査した。具体的には、質量%で、C:0.9%、Si:0.3%、Mn:0.4%、Ni:1.0%、Cr:5.0%、Mo:0.4%を含有し、残部はFe及び不純物からなる複数の供試材を準備した。供試材の長さは60mmであり、幅は40mmであり、厚さは25mmであった。供試材の接触面は60mm×40mmであった。各供試材を、誘導加熱装置を用いて、供試材の表面が995℃となるように加熱し、30分保持した。その後、供試材を水冷した(水焼入れ)。さらに、各供試材に対して、100〜400℃の範囲内の異なる焼戻し温度で焼戻しを実施した。以上の工程により製造した複数の供試材を用いて、図1に示す熱衝撃試験を実施した。
図1を参照して、熱衝撃試験では、まず、円盤材100を準備した。円盤材100の直径は500mmであり、幅は30mmであった。材質はJIS規格のSCM440に相当した。円盤材100を軸周りに回転させ、円盤材100の周面に、供試材200の接触面を押し当てたまま、15秒保持した。このとき、供試材200を円盤材100の周面に押し当てるときの荷重を150kgとした。また、円盤材100の回転速度を1000rpmとした。さらに、供試材200を回転する円盤材100に押し当てている間、供試材200と円盤材100との接触部分201に、水冷装置300により水を噴射して水冷した。円盤材100の回転終了後(15秒後)、さらに、上記接触部分201を15秒水冷した。
水冷後の供試材200の接触表面において、クラックの有無を確認した。クラックが発生している場合、接触表面のクラックのうち、クラックの最大深さを次の方法により測定した。発生したクラックの長手方向の中央部を、長手方向に垂直な方向に切断した。切断面を研磨後、切断面でのクラックの最大深さを求めた。以上の試験により、図2の焼戻し温度(℃)と最大クラック深さ(mm)との関係図を得た。
図2を参照して、焼戻し温度(℃)の増加に伴い、最大クラック深さ(mm)は減少した。したがって、図2の結果から、冷間圧延用ロールの胴部の表層の焼戻し温度を高めれば、熱衝撃によるクラック発生を抑制できることが考えられる。
しかしながら、焼戻し温度を高めれば、冷間圧延用ロールの胴部の表層全体の硬さが低下してしまう。図3は、冷間圧延用ロールの胴部における、表面からの深さ(径方向における表面からの距離)と、ショア硬さとの関係を示す図である。図3は次の方法で得られた。
質量%で、C:0.9%、Si:0.3%、Mn:0.4%、Ni:1.0%、Cr:5.0%、Mo:0.4%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、胴部での外径が600mmの冷間圧延用ロールを2つ準備した。2つの冷間圧延用ロールの胴部表層に対して、高周波焼入れを実施した。焼入れ温度は995℃であった。冷却は水冷とした(水焼入れ)。その後、一方の冷間圧延用ロールに対して、焼戻し温度145℃で17時間保持する焼戻しを実施した。さらに、他方の冷間圧延用ロールに対して、焼戻し温度160℃で17時間保持する焼戻しを実施した。
得られた2つの冷間圧延用ロールの胴部表面の任意の1箇所において、深さ方向(表面から径方向)にショア硬さを測定した。具体的には、各冷間圧延用ワークロールの胴部を、冷間圧延用ワークロールの軸方向に対して垂直な方向に切断した。切断面において、胴部表面から深さ方向に5mmピッチで深さ60mmまで、JIS Z 2246(2000)に準拠したショア硬さ試験を実施して、各深さ位置でのショア硬さHSを測定した。各冷間圧延用ワークロールで得られたショア硬さHSをプロットして、図3を得た。
図3中の実線は、焼戻し温度を145℃とした場合のショア硬さHSのプロットを示す。図3中の破線は、焼戻し温度を160℃とした場合のショア硬さHSのプロットを示す。図3を参照して、焼戻し温度が145℃、160℃のいずれの場合においても、胴部表層の深さ方向において、表面が最も硬さが高かった。そして、表面から深さ方向に進むにつれ、硬さが急激に低下した。その後、深さ方向において、硬さがほぼ一定の状態が続いた。さらに深くなると、硬さが急激に低下した。以下、表面から硬さが一定になるまでの領域を「最表層領域」R1、最表層領域よりも深く、硬さが一定状態となる領域を「硬さ安定領域」R2、硬さ安定領域R2よりも深い領域(深くなるに従い硬さが急速に低下する領域)を「芯部領域」R3と称する。
周知のとおり、冷間圧延用ロールでは、胴部の表面に微小クラックが入ったり、表面粗さが粗くなったりした場合、胴部の表面を研削して微小クラックを除去し、かつ、表面粗さを調整した後、再使用する。この研削−再使用は複数回繰り返されるが、冷間圧延用ロールの胴部の外径がある程度小さくなれば、冷間圧延用ロールの寿命と判断して、廃棄する。本明細書では、廃棄の基準となるロール径を、「廃棄径」と称する。
図3において、冷間圧延用ロールに要求されるショア硬さHSが90であると仮定する。この場合、廃棄径までのショア硬さHSが90であることが要求される。この場合、焼戻し温度が145℃であれば、表面から40mm深さ位置に至るまで、ショア硬さHSを90以上に維持できる。しかしながら、焼戻し温度が145℃の場合、最表層領域R1の同じ深さ位置における硬さが、焼戻し温度が160℃の場合よりも高い。そのため、冷間圧延用ロールの使用初期において、熱衝撃によるクラックの発生及び進展が発生しやすい。一方、焼戻し温度が160℃の場合、焼戻し温度が145℃の場合と比較して、最表層領域R1のショア硬さが低い。そのため、使用初期における熱衝撃によるクラックの発生及び進展は発生しにくくなる。しかしながら、焼戻し温度が160℃の場合、焼戻し温度が145℃の場合と比較して、胴部表層全体の硬さが低下してしまう。そのため、表面から深さ40mmよりも浅い深さ位置において、ショア硬さHSが90未満となってしまう。この場合、ロール寿命が低下する。
さらに、最表層領域R1での硬さが、硬さ安定領域R2での硬さと同等である場合であっても、熱衝撃によりクラックが発生する可能性はある。したがって、最表層領域R1での硬さが廃棄径での硬さよりも低くなるのは好ましくないが、使用初期の熱衝撃によるクラック発生を抑制するためには、最表層領域R1において、収縮がなるべく起こりにくくすべきである。
以上の知見に基づいて、本発明者らは、使用初期に熱衝撃によるクラックの発生及び進展を抑制しつつ、ロール寿命を維持するために、冷間圧延用ロール全体の硬さも高く維持できる技術について、さらに検討を行った。その結果、次の知見を得た。
焼入れ及び焼戻し後の従来の冷間圧延用ロールの最表層領域R1に対して、誘導加熱による焼戻しをさらに実施する。このとき、誘導加熱による焼戻し工程の温度を、前工程の焼戻し工程(以下、基本焼戻し工程という)の焼戻し温度よりも高い温度にする。この場合、図4に示すとおり、最表層領域R1の硬さが硬さ安定領域R2の硬さよりも低くなる。その結果、使用初期において、冷間圧延用ロールの胴部表面に熱衝撃が加わっても、最表層領域R1においてマルテンサイトの分解に起因した熱収縮が起こりにくい。そのため、熱衝撃に起因したクラックの発生及び進展が抑制される。さらに、最表層領域R1以外の領域(硬さ安定領域R2及び芯部領域R3)の硬さは従前の硬さ(つまり、従前の焼入れ工程及び基本焼戻し工程後の冷間圧延用ロールで得られる硬さ)を実質的に維持できる。そのため、廃棄径における硬さも維持できる。したがって、この場合、使用初期におけるクラックの発生及び進展を抑制でき、かつ、ロール寿命も維持できる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による冷間圧延用ロールは、胴部と軸部とを備える。胴部において、胴部の表面から廃棄径までの厚さをt(mm)と定義したとき、胴部の表面からt/4深さ位置までの領域でのショア硬さHS0〜t/4は、胴部の表面からt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2よりも低く、胴部の廃棄径位置でのショア硬さHStは、胴部の表面からt/2深さ位置での前記ショア硬さHSt/2よりも低く、胴部の表面でのショア硬さHS0は、胴部の廃棄径位置でのショア硬さHSt以上である。
上記冷間圧延用ロールにおいて、胴部の表面からt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2から胴部の廃棄径位置でのショア硬さHStを差し引いた値は2.0以上であってもよい。
上記冷間圧延用ロールにおいて、胴部の表面からt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2から胴部の表面でのショア硬さHS0を差し引いた値が2.0以上であってもよい。
上記冷間圧延用ロールであって、胴部の少なくとも表面から深さt位置までの領域での化学組成は、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.0%、Mn:0.3〜1.5%、Ni:0〜1.5%、Cr:2.5〜6.5%、Mo:0.3〜0.9%、V:0〜1.0%及び、Fe:90.0%以上を含有してもよい。
以下、本実施形態の冷間圧延用ロールについて説明する。
[冷間圧延用ロールの構成]
図5は本実施形態の冷間圧延用ロール1の正面図である。図5を参照して、本実施形態の冷間圧延用ロール1は、軸部10と、胴部20とを備える。軸部10は、冷間圧延用ロール1の中心軸線C1上に配置される。好ましくは、軸部10の中心軸線は、冷間圧延用ロール1の中心軸線C1と実質的に一致する。
図5は本実施形態の冷間圧延用ロール1の正面図である。図5を参照して、本実施形態の冷間圧延用ロール1は、軸部10と、胴部20とを備える。軸部10は、冷間圧延用ロール1の中心軸線C1上に配置される。好ましくは、軸部10の中心軸線は、冷間圧延用ロール1の中心軸線C1と実質的に一致する。
胴部20は、一対の端面20Eと、一対の端面20Eの間に配置される表面20S(ロール表面)とを含む。表面20Sは圧延対象材である鋼材と接触する。圧延対象材である鋼材はたとえば、鋼板、棒鋼又は線材、鋼管、形鋼等である。鋼材の形状は特に限定されない。本実施形態の冷間圧延用ロールはたとえば、冷間圧延用ワークロールである。
本実施形態の冷間圧延用ロール1は、単体ロールであってもよいし、外層及び内層(芯材)を含む複合一体ロールであってもよい。
[冷間圧延用ロールの表層の硬さ分布]
図6は、図5中の胴部20の表面20Sから廃棄径近傍までの深さと、硬さとの関係を示す図である。なお、本明細書において、廃棄径とは、冷間圧延用ロールを廃棄するときの胴部の直径を意味する。廃棄径は冷間圧延用ロールの顧客の要望に応じて設定される値である。そのため、製品である冷間圧延用ロールでは、廃棄径が予め決められている。
図6は、図5中の胴部20の表面20Sから廃棄径近傍までの深さと、硬さとの関係を示す図である。なお、本明細書において、廃棄径とは、冷間圧延用ロールを廃棄するときの胴部の直径を意味する。廃棄径は冷間圧延用ロールの顧客の要望に応じて設定される値である。そのため、製品である冷間圧延用ロールでは、廃棄径が予め決められている。
図6を参照して、冷間圧延用ロール1において、胴部20の表面20Sから廃棄径までの深さをt(mm)と定義する。ここで、深さとは、表面20Sから冷間圧延用ロール1の中心軸線C1に向かう径方向の距離を意味する。
冷間圧延用ロール1の胴部20の表層は、最表層領域R1と、硬さ安定領域R2と、芯部領域R3とを含む。最表層領域R1は、表面20Sを含み、胴部20の最表層の領域である。硬さ安定領域R2は、最表層領域R1と芯部領域R3との間の領域であって、最表層領域R1よりも深い位置の領域である。芯部領域R3は、硬さ安定領域R2よりも深い位置の領域である。
ここで、本実施形態の冷間圧延用ロール1において、各領域又は深さ位置でのショア硬さを、次のとおり定義する。
・胴部20の表面20Sからt/4深さ位置までの範囲のショア硬さ:HS0〜t/4
・胴部20の表面20Sからt/2深さ位置でのショア硬さ:HSt/2
・胴部20の表面20Sでのショア硬さ:HS0
・胴部20の表面20Sからt深さ位置(つまり廃棄径)でのショア硬さ:HSt
・胴部20の表面20Sからt/4深さ位置までの範囲のショア硬さ:HS0〜t/4
・胴部20の表面20Sからt/2深さ位置でのショア硬さ:HSt/2
・胴部20の表面20Sでのショア硬さ:HS0
・胴部20の表面20Sからt深さ位置(つまり廃棄径)でのショア硬さ:HSt
各ショア硬さを図6にも示す。ショア硬さHS0〜t/4は、最表層領域R1内の硬さに相当する。ショア硬さHSt/2は、硬さ安定領域R2内の硬さに相当する。
図6を参照して、本実施形態の冷間圧延用ロール1では、胴部20の表面20Sからt/4深さ位置までのショア硬さHS0〜t/4が、胴部20の表面20Sからt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2よりも低い。
さらに、胴部20の表面20Sからt深さ位置(つまり廃棄径位置)でのショア硬さHStはショア硬さHSt/2よりも低い。そして、胴部20の表面20Sでのショア硬さHS0は、廃棄径位置でのショア硬さHSt以上である。
ショア硬さHSt/2から胴部20の表面20Sでのショア硬さHS0を差し引いた差分値はたとえば、2.0以上である。また、ショア硬さHSt/2からショア硬さHStを差し引いた差分値はたとえば、2.0以上である。これらの差分値に特別な技術的特徴はないが、後述の製造方法(基本焼戻し工程及び誘導加熱による焼戻し工程を含む製造工程)を実施することにより、鋼材圧延用のロールの技術分野における通常の知識を有する者(以下、当業者という)であれば、ショア硬さHSt/2から胴部20の表面20Sでのショア硬さHS0を差し引いた差分値を2.0以上に容易に調整できるし、ショア硬さHSt/2からショア硬さHStを差し引いた差分値を2.0以上に容易に調整できる。
図6中の破線は、従来の冷間圧延用ロールの胴部表層の硬さ分布である。図6に示すとおり、従来の冷間圧延用ロールでは、最表層領域R1内のショア硬さHS0〜t/4が、硬さ安定領域R2内のショア硬さHSt/2よりも高いのに対して、本実施形態の冷間圧延用ロール1(図6中の実線)では、最表層領域R1内のショア硬さHS0〜t/4が、硬さ安定領域R2内のショア硬さHSt/2よりも低い点で大きく異なる。
上述のとおり、従前の冷間圧延用ロールでは、使用初期において、胴部の表面にクラックが発生し、さらに、クラックが深さ方向に進展する場合があった。特に、冷延鋼板用の冷間圧延機のうち、仕上げ圧延機の先頭の冷間圧延スタンドに組み込まれるワークロールでは、鋼材(鋼板)との接触時の衝撃が大きく、その結果、大きな熱衝撃を受ける。そのため、従前の冷間圧延用ロールが、仕上げ圧延機の先頭圧延スタンドに組み込まれた場合、使用初期において、胴部表面にクラックが発生及び進展する場合がある。この原因としては、上述のとおり、熱衝撃により胴部表層に、焼戻し温度よりも高い温度が加わったため、胴部表層において局部的な収縮が発生し、その結果、胴部表層に引張応力が生じてクラックが発生したと考えられる。
これに対して、本実施形態の冷間圧延用ロール1では、後述のとおり、ロール胴部全体に対して焼戻しを実施(基本焼戻し工程)した後、最表層領域R1に対して、誘導加熱による焼戻し工程を実施する。このとき、誘導加熱による焼戻し工程での焼戻し温度を、基本焼戻し工程の焼戻し温度よりも高くする。その結果、上述のとおり冷間圧延用ロール1では、最表層領域R1内のショア硬さHS0〜t/4が、硬さ安定領域R2内のショア硬さHSt/2よりも低くなる。
この場合、冷間圧延用ロールの最表層領域に、熱衝撃により熱が加わっても、最表層領域R1は従前の焼戻し温度よりも高い温度で高周波焼戻しされているため、収縮が発生しにくい。そのため、従前の冷間圧延用ロールと比較して、熱衝撃によるクラックの発生及び進展が抑制される。本実施形態では、最表層領域R1内のショア硬さHS0〜t/4を、硬さ安定領域R2内のショア硬さHSt/2よりも低くし、かつ、廃棄径でのショア硬さHSt以上とすることにより、最表層領域R1内のショア硬さHS0〜t/4をロール寿命の指標となる基準値であるHSt以上としつつ、なるべく低い硬さとする。これにより、熱衝撃によるクラック発生を可能な限り抑制しつつ、ロール寿命も維持する。
冷間圧延用ロール1において、胴部20の表層での硬さの関係が上述のとおりであれば、胴部20の表面20Sから少なくとも廃棄径(表面20Sから深さt位置)までの領域(以下、胴部表層ともいう)の化学組成は特に限定されない。つまり、冷間圧延用ロール1の胴部20において、ショア硬さHS0〜t/4が、ショア硬さHSt/2よりも低く、廃棄径でのショア硬さHStがショア硬さHSt/2よりも低く、胴部20の表面でのショア硬さHS0がショア硬さHSt以上であれば、胴部表層での化学組成は特に限定されない。冷間圧延用ロール1の胴部20の胴部表層での化学組成の一例は、たとえば、次のとおりである。
[胴部20の化学組成の一例]
胴部20の表面20Sから少なくとも廃棄径(表面20Sから深さt位置)までの領域(胴部表層)の化学組成はたとえば、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.0%、Mn:0.3〜1.5%、Ni:0〜1.5%、Cr:2.5〜6.5%、Mo:0.3〜0.9%、V:0〜1.0%、及び、Fe:90.0%以上を含有する。以下、元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
胴部20の表面20Sから少なくとも廃棄径(表面20Sから深さt位置)までの領域(胴部表層)の化学組成はたとえば、質量%で、C:0.7〜1.2%、Si:0.2〜1.0%、Mn:0.3〜1.5%、Ni:0〜1.5%、Cr:2.5〜6.5%、Mo:0.3〜0.9%、V:0〜1.0%、及び、Fe:90.0%以上を含有する。以下、元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
C:0.7〜1.2%
炭素(C)は、胴部の表層の硬さを高める。一方、C含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化する場合がある。C含有量が0.7〜1.2%であれば、胴部20の表層の硬さを顕著に高めることができる。したがって、C含有量は0.7〜1.2%である。C含有量の好ましい下限は0.8%であり、さらに好ましくは0.85%である。C含有量の好ましい上限は1.0%であり、さらに好ましくは0.95%である。
炭素(C)は、胴部の表層の硬さを高める。一方、C含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化する場合がある。C含有量が0.7〜1.2%であれば、胴部20の表層の硬さを顕著に高めることができる。したがって、C含有量は0.7〜1.2%である。C含有量の好ましい下限は0.8%であり、さらに好ましくは0.85%である。C含有量の好ましい上限は1.0%であり、さらに好ましくは0.95%である。
Si:0.2〜1.0%
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Siはさらに、焼入れ性を高める。一方、Si含有量が高すぎれば、十分に高い靱性が維持しにくい場合がある。Si含有量が0.2〜1.0%であれば、鋼を十分に脱酸でき、焼入れ性を十分に高め、かつ、靱性も十分に維持できる。したがって、Si含有量は0.2〜1.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.3%であり、さらに好ましくは0.4%である。Si含有量の好ましい上限は1.0%であり、さらに好ましくは0.9%である。
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Siはさらに、焼入れ性を高める。一方、Si含有量が高すぎれば、十分に高い靱性が維持しにくい場合がある。Si含有量が0.2〜1.0%であれば、鋼を十分に脱酸でき、焼入れ性を十分に高め、かつ、靱性も十分に維持できる。したがって、Si含有量は0.2〜1.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.3%であり、さらに好ましくは0.4%である。Si含有量の好ましい上限は1.0%であり、さらに好ましくは0.9%である。
Mn:0.3〜1.5%
マンガン(Mn)は焼入れ性を有効に高める。一方、Mn含有量が高すぎれば、十分に高い靱性が維持しにくい場合がある。Mn含有量が0.3〜1.5%であれば、焼入れ性を有効に高め、かつ、靱性も十分に維持できる。したがって、Mn含有量は0.3〜1.5%である。Mn含有量の好ましい下限は0.4%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mn含有量の好ましい上限は1.4%であり、さらに好ましくは1.3%である。
マンガン(Mn)は焼入れ性を有効に高める。一方、Mn含有量が高すぎれば、十分に高い靱性が維持しにくい場合がある。Mn含有量が0.3〜1.5%であれば、焼入れ性を有効に高め、かつ、靱性も十分に維持できる。したがって、Mn含有量は0.3〜1.5%である。Mn含有量の好ましい下限は0.4%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mn含有量の好ましい上限は1.4%であり、さらに好ましくは1.3%である。
Ni:0〜1.5%
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは焼入れ性を高める。一方、Ni含有量が高すぎれば、残留オーステナイトが過剰に形成され、高い硬さを維持しにくくなる場合がある。したがって、Ni含有量は0〜1.5%である。Niを含有する場合、Ni含有量の好ましい下限は0.5%であり、さらに好ましくは0.7%である。Ni含有量の好ましい上限は1.2%であり、さらに好ましくは1.0%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは焼入れ性を高める。一方、Ni含有量が高すぎれば、残留オーステナイトが過剰に形成され、高い硬さを維持しにくくなる場合がある。したがって、Ni含有量は0〜1.5%である。Niを含有する場合、Ni含有量の好ましい下限は0.5%であり、さらに好ましくは0.7%である。Ni含有量の好ましい上限は1.2%であり、さらに好ましくは1.0%である。
Cr:2.5〜6.5%
クロム(Cr)は炭化物を形成して耐摩耗性を高める。一方、Cr含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化する場合がある。Cr含有量が2.5〜6.5%であれば、耐摩耗性を有効に高めることができる。したがって、Cr含有量は2.5〜6.5%である。Cr含有量の好ましい下限は2.6%であり、さらに好ましくは2.7%である。Cr含有量の好ましい上限は6.4%であり、さらに好ましくは6.3%である。
クロム(Cr)は炭化物を形成して耐摩耗性を高める。一方、Cr含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化する場合がある。Cr含有量が2.5〜6.5%であれば、耐摩耗性を有効に高めることができる。したがって、Cr含有量は2.5〜6.5%である。Cr含有量の好ましい下限は2.6%であり、さらに好ましくは2.7%である。Cr含有量の好ましい上限は6.4%であり、さらに好ましくは6.3%である。
Mo:0.3〜0.9%
モリブデン(Mo)は、Crと同様に炭化物を形成して耐摩耗性を高める。一方、Mo含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化する場合がある。Mo含有量が0.3〜0.9%であれば、耐摩耗性を有効に高めることができる。したがって、Mo含有量は0.3〜0.9%である。Mo含有量の好ましい下限は0.4%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mo含有量の好ましい上限は0.8%であり、さらに好ましくは0.7%である。
モリブデン(Mo)は、Crと同様に炭化物を形成して耐摩耗性を高める。一方、Mo含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化する場合がある。Mo含有量が0.3〜0.9%であれば、耐摩耗性を有効に高めることができる。したがって、Mo含有量は0.3〜0.9%である。Mo含有量の好ましい下限は0.4%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mo含有量の好ましい上限は0.8%であり、さらに好ましくは0.7%である。
V:0〜1.0%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。VはCrやMoと同様に炭化物を形成して耐摩耗性を高める。しかしながら、V含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化して、冷間圧延ロール1の胴部20の表面の研削性が低下する場合がある。したがって、V含有量は0〜1.0%である。耐摩耗性効果をより有効に得るためのV含有量の好ましい下限は0.3%である。V含有量の好ましい上限は0.7%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。VはCrやMoと同様に炭化物を形成して耐摩耗性を高める。しかしながら、V含有量が高すぎれば、炭化物が粗大化して、冷間圧延ロール1の胴部20の表面の研削性が低下する場合がある。したがって、V含有量は0〜1.0%である。耐摩耗性効果をより有効に得るためのV含有量の好ましい下限は0.3%である。V含有量の好ましい上限は0.7%である。
Fe:90.0%以上
胴部20の化学組成は主としてFeからなる。Fe含有量は90.0%以上である。Fe含有量は95.0%以上であってもよい。
胴部20の化学組成は主としてFeからなる。Fe含有量は90.0%以上である。Fe含有量は95.0%以上であってもよい。
胴部20の化学組成の一例は、上述の元素を含有する。胴部20の化学組成は、上記以外の元素及び不純物を含有してもよい。ただし、上記元素の総含有量は少なくとも94.0%以上になる。上記以外の他の元素が含有されても、冷間圧延用ロール1の胴部20において、ショア硬さHS0〜t/4がショア硬さHSt/2よりも低く、ショア硬さHStがショア硬さHSt/2よりも低く、ショア硬さHS0がショア硬さHSt以上であれば、胴部表層の化学組成は特に限定されない。
[冷間圧延用ロールの製造方法]
上述の冷間圧延用ロール1の製造方法は、熱処理前ロールを準備する熱処理前ロール準備工程と、焼入れ工程と、胴部20の少なくとも最表層領域R1及び硬さ安定領域R2に対して焼戻しを実施する基本焼戻し工程と、基本焼戻し工程後に、胴部20の最表層領域R1を対象とした誘導加熱による焼戻しを実施する誘導加熱による焼戻し工程とを含む。熱処理前ロール準備工程、焼入れ工程及び基本焼戻し工程は、従前の冷間圧延用ロールの製造方法と同じであり、周知である。以下、それぞれの工程について説明する。
上述の冷間圧延用ロール1の製造方法は、熱処理前ロールを準備する熱処理前ロール準備工程と、焼入れ工程と、胴部20の少なくとも最表層領域R1及び硬さ安定領域R2に対して焼戻しを実施する基本焼戻し工程と、基本焼戻し工程後に、胴部20の最表層領域R1を対象とした誘導加熱による焼戻しを実施する誘導加熱による焼戻し工程とを含む。熱処理前ロール準備工程、焼入れ工程及び基本焼戻し工程は、従前の冷間圧延用ロールの製造方法と同じであり、周知である。以下、それぞれの工程について説明する。
[熱処理前ロール準備工程]
熱処理前ロール準備工程では、周知の方法により製造された熱処理前ロールを準備する。たとえば、冷間圧延用ロール1が単体ロールである場合、周知の鋳造法により熱処理前ロールを製造する。鋳造後に熱間鍛造を実施して、熱処理前ロールを製造してもよい。冷間圧延用ロール1が複合一体ロールである場合、たとえば、周知の鋳掛法又は遠心鋳造法により、外層及び内層を備える複合一体ロールを製造する。他の周知の方法(エレクトロスラグ再溶解法(ESR)等)により、熱処理前ロールを準備してもよい。以上の工程により、熱処理前ロールを準備する。
熱処理前ロール準備工程では、周知の方法により製造された熱処理前ロールを準備する。たとえば、冷間圧延用ロール1が単体ロールである場合、周知の鋳造法により熱処理前ロールを製造する。鋳造後に熱間鍛造を実施して、熱処理前ロールを製造してもよい。冷間圧延用ロール1が複合一体ロールである場合、たとえば、周知の鋳掛法又は遠心鋳造法により、外層及び内層を備える複合一体ロールを製造する。他の周知の方法(エレクトロスラグ再溶解法(ESR)等)により、熱処理前ロールを準備してもよい。以上の工程により、熱処理前ロールを準備する。
[焼入れ工程]
準備された熱処理前ロールの胴部表層に対して、周知の焼入れ工程を実施する。焼入れ工程は、周知の方法で実施すれば足りる。焼入れはたとえば、周知の誘導加熱装置により実施する。焼入れ温度は、胴部20の表層の化学組成や狙いの硬さ値に応じて、周知の方法で適宜設定する。焼入れ温度はたとえば920〜1020℃であり、焼入れ温度での保持時間はたとえば3分〜60分である。これらの焼入れ温度範囲、及び、保持時間は、周知の数値範囲であり、鋼材用のロールの技術分野における通常の知識を有する者(当業者)であれば、焼入れ温度及び保持時間を調整して、狙いの硬さとすることは、適宜設計可能であり、自明である。また、残留オーステナイトが多い場合には、ロールの胴部表層に対して、さらに周知のサブゼロ処理を行ってもよい。
準備された熱処理前ロールの胴部表層に対して、周知の焼入れ工程を実施する。焼入れ工程は、周知の方法で実施すれば足りる。焼入れはたとえば、周知の誘導加熱装置により実施する。焼入れ温度は、胴部20の表層の化学組成や狙いの硬さ値に応じて、周知の方法で適宜設定する。焼入れ温度はたとえば920〜1020℃であり、焼入れ温度での保持時間はたとえば3分〜60分である。これらの焼入れ温度範囲、及び、保持時間は、周知の数値範囲であり、鋼材用のロールの技術分野における通常の知識を有する者(当業者)であれば、焼入れ温度及び保持時間を調整して、狙いの硬さとすることは、適宜設計可能であり、自明である。また、残留オーステナイトが多い場合には、ロールの胴部表層に対して、さらに周知のサブゼロ処理を行ってもよい。
[基本焼戻し工程]
焼入れ工程後のロールに対して、周知の基本焼戻し工程を実施し、ロール胴部の表面から所定の深さに発生したマルテンサイト、ベイナイトを焼戻す。基本焼戻し工程は、雰囲気炉(例えば、電気炉やガス炉、ソルトバス、油槽)にて1回又は複数回実施する。基本焼戻し工程では、焼戻し温度及び焼戻し温度での保持時間は、胴部20の表層の化学組成や狙いの硬さ値に応じて、周知の方法で適宜設定する。焼戻し温度はたとえば100〜200℃であり、焼戻し温度での保持時間は7〜30時間である。これらの焼戻し温度及び保持時間は周知の数値範囲であり、当業者であれば、焼戻し温度及び保持時間を調整して、狙いの硬さにすることは、適宜設計可能であり、自明である。
焼入れ工程後のロールに対して、周知の基本焼戻し工程を実施し、ロール胴部の表面から所定の深さに発生したマルテンサイト、ベイナイトを焼戻す。基本焼戻し工程は、雰囲気炉(例えば、電気炉やガス炉、ソルトバス、油槽)にて1回又は複数回実施する。基本焼戻し工程では、焼戻し温度及び焼戻し温度での保持時間は、胴部20の表層の化学組成や狙いの硬さ値に応じて、周知の方法で適宜設定する。焼戻し温度はたとえば100〜200℃であり、焼戻し温度での保持時間は7〜30時間である。これらの焼戻し温度及び保持時間は周知の数値範囲であり、当業者であれば、焼戻し温度及び保持時間を調整して、狙いの硬さにすることは、適宜設計可能であり、自明である。
以上の工程により製造された冷間圧延用ロールは、従前の冷間圧延用ロールと同じである。したがって、胴部20の表層の硬さは、図6の破線に示す分布(HS0〜t/4>HSt/2)となる。次工程において誘導加熱による焼戻し工程を実施することにより、図6の実線に示す硬さ分布を有する本実施形態の冷間圧延用ロール(HS0〜t/4<HSt/2)とする。
[誘導加熱による焼戻し工程]
基本焼戻し工程後の誘導加熱による焼戻し工程では、基本焼戻し工程のように焼入れにより得られた硬化層全体を焼戻しするのではなく、硬化層の一部(最表層部分)をさらに高温短時間で焼戻す。この工程は、従前の冷間圧延用ロールの製造工程にはない。
基本焼戻し工程後の誘導加熱による焼戻し工程では、基本焼戻し工程のように焼入れにより得られた硬化層全体を焼戻しするのではなく、硬化層の一部(最表層部分)をさらに高温短時間で焼戻す。この工程は、従前の冷間圧延用ロールの製造工程にはない。
より具体的には、本工程では、誘導加熱装置を用いて、胴部20の最表層領域R1に対して、焼戻しを実施する。このとき、誘導加熱による焼戻し工程での焼戻し温度を、焼入れ直後の基本焼戻し工程の焼戻し温度よりも高く設定する。好ましくは、誘導加熱による焼戻し工程での焼戻し温度での保持時間を、基本焼戻し工程での焼戻し温度の保持時間よりも短く設定する。本工程では、最表層領域R1の硬さを低下させ、かつ、硬さ安定領域R2での硬さはなるべく維持することを目的とするためである。
焼戻し温度が高い方が、硬さが低下することは当業者に自明の事項である。さらに、胴部20の表面からどの程度の深さ範囲までの硬さを下げるか、及び、どの程度の範囲で硬さを下げるか、について、焼戻し温度及び保持時間、及び誘導加熱装置の周波数を調整すれば、狙いの範囲を狙いの硬さの値にすることができることは、当業者に自明であり、単なる設計事項である。つまり、冷間圧延用ロール1の上述の技術着想を持ってさえいれば、冷間圧延用ロール1の胴部20において、ショア硬さHS0〜t/4がショア硬さHSt/2よりも低く、ショア硬さHStがショア硬さHSt/2よりも低く、ショア硬さHS0がショア硬さHSt以上とすること自体は、基本焼戻し工程及び誘導加熱による焼戻し工程の焼戻し温度及び保持時間、周波数の調整を適宜調整することにより、当業者が容易に実現できる。本発明は、上述の技術着想(技術思想)自体が新規の冷間圧延用ロールであって、技術着想さえ得られれば、上記製造工程の説明に基づいて当業者が冷間圧延用ロール1を十分に製造可能である。
以上の製造工程により、本実施形態の冷間圧延用ロール1が製造できる。
上述の実施形態では、基本焼戻し工程後に誘導加熱による焼戻し工程を実施することにより、冷間圧延用ロール1を製造する。しかしながら、他の製造方法により冷間圧延用ロール1を製造してもよい。冷間圧延用ロール1の胴部20において、ショア硬さHS0〜t/4がショア硬さHSt/2よりも低く、ショア硬さHStがショア硬さHSt/2よりも低く、ショア硬さHS0がショア硬さHSt以上とすれば、冷間圧延用ロール1の製造方法は特に限定されない。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
1 冷間圧延用ロール
10 軸部
20 胴部
20S 表面
R1 最表層領域
R2 硬さ安定化領域
R3 芯部領域
10 軸部
20 胴部
20S 表面
R1 最表層領域
R2 硬さ安定化領域
R3 芯部領域
Claims (4)
- 胴部と軸部とを備え、
前記胴部において、
前記胴部の表面から廃棄径までの厚さをt(mm)と定義したとき、
前記胴部の表面からt/4深さ位置までの領域でのショア硬さHS0〜t/4は、前記胴部の表面からt/2深さ位置でのショア硬さHSt/2よりも低く、
前記胴部の廃棄径位置でのショア硬さHStは、前記胴部の表面からt/2深さ位置での前記ショア硬さHSt/2よりも低く、
前記胴部の表面でのショア硬さHS0は、前記胴部の廃棄径位置でのショア硬さHSt以上である、冷間圧延用ロール。 - 請求項1に記載の冷間圧延用ロールであって、
前記胴部の表面からt/2深さ位置での前記ショア硬さHSt/2から前記胴部の廃棄径位置での前記ショア硬さHStを差し引いた値が2.0以上である、冷間圧延用ロール。 - 請求項1又は請求項2に記載の冷間圧延用ロールであって、
前記胴部の表面からt/2深さ位置での前記ショア硬さHSt/2から前記胴部の表面での前記ショア硬さHS0を差し引いた値が2.0以上である、冷間圧延用ロール。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷間圧延用ロールであって、
前記胴部の化学組成は、質量%で、
C:0.7〜1.2%、
Si:0.2〜1.0%
Mn:0.3〜1.5%、
Ni:0〜1.5%
Cr:2.5〜6.5%、
Mo:0.3〜0.9%、
V:0〜1.0%、及び、
Fe:90.0%以上、
を含有する、冷間圧延用ロール。
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JP2017182073A JP2019055419A (ja) | 2017-09-22 | 2017-09-22 | 冷間圧延用ロール |
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CN112391582A (zh) * | 2020-11-18 | 2021-02-23 | 宝钢轧辊科技有限责任公司 | 超深淬硬层锻钢冷轧工作辊及其制造方法 |
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-
2017
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CN112391582A (zh) * | 2020-11-18 | 2021-02-23 | 宝钢轧辊科技有限责任公司 | 超深淬硬层锻钢冷轧工作辊及其制造方法 |
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