JP5661203B2 - ベーン型圧縮機 - Google Patents

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Description

本発明は、ベーン型圧縮機に関する。
従来、ローターシャフト(シリンダー内で回転運動する円柱形のローター部と、ローター部に回転力を伝達するシャフトとが一体化されたものをローターシャフトという)のローター部内に一箇所又は複数箇所形成されたベーン溝内にベーンが嵌入され、そのベーンの先端がシリンダーの内周面と当接しながら摺動する構成の一般的なベーン型圧縮機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ローターシャフトの内側を中空に構成しその中にベーンの固定軸を配し、ベーンはその固定軸に回転可能に取り付けられ、さらに、ローター部の外周部付近に半円棒形状の一対の挟持部材(ブッシュ)を介してベーンがローター部に対して回転自在に保持されているベーン型圧縮機が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−252675号公報(第4頁、第1図) 特開2000−352390号公報(第6頁、第1図)
特許文献1に記載の従来の一般的なベーン型圧縮機は、ベーン先端の曲率半径とシリンダーの内周面の曲率半径が大きく異なるため、シリンダーの内周面とベーン先端との間に油膜は形成されず、流体潤滑状態にはならずに境界潤滑状態となる。一般に潤滑状態による摩擦係数は、流体潤滑状態においては0.001〜0.005程度であるのに対し、境界潤滑状態においては非常に大きくなり、概ね0.05以上となる。
このため、従来の一般的なベーン型圧縮機の構成では、ベーン先端とシリンダーの内周面とが境界潤滑状態で摺動することによって摺動抵抗が大きくなり、機械損失の増大による圧縮機効率の大幅な低下が発生してしまうという問題点があった。それと同時に、ベーン先端及びシリンダーの内周面が摩耗しやすく、長期の寿命を確保することが困難であるという問題点もあった。
そこで、上記の問題点を改善するものとして、ローター部の内部を中空にし、その中にベーンをシリンダーの内周面の中心にて回転可能に支持する固定軸を有し、かつ、ベーンがローター部に対し回転可能となるようにローター部の外周部近傍で狭持部材(ブッシュ)を介してベーンを保持する方法(例えば、上記特許文献2)が提案された。
この構成によって、ベーンはシリンダー内周面の中心にて回転支持されることになる。これにより、ベーンの長手方向は常にシリンダー内周面の中心に向かうため、ベーン先端はシリンダーの内周面に沿うように回転することとなる。このため、ベーン先端とシリンダーの内周面との間に微小な隙間を保ち、非接触にして運転することが可能となり、ベーン先端での摺動による損失が発生せず、また、ベーン先端及びシリンダーの内周面が摩耗することのないベーン型圧縮機を得ることができる。
しかしながら、ブッシュとシリンダーとが接触しないようにブッシュ全体をローター部の内側に収納させる必要があるが、特許文献2の図に記載の方法では、ブッシュが半円柱状であるため、ローター部の半径を、ブッシュ外径端とロータ部中心との距離よりも小さくすることはできないという問題点があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、ベーンの先端部の摩耗を抑制し、かつ、ブッシュとシリンダーとの接触を回避するベーン型圧縮機を得ることを目的とする。
本発明に係るベーン型圧縮機は、密閉容器と、該密閉容器内に収容された電動要素と、冷媒を圧縮する圧縮要素とを有し、該圧縮要素が、円筒状の内周面が形成されたシリンダーと、該シリンダーの内部において、前記内周面の中心軸と所定の距離ずれた回転軸を中心に回転する円筒形状のローター部、及び、該ローター部に前記電動要素からの回転力を伝達する回転軸部を有したローターシャフトと、前記シリンダーの前記内周面の一方の開口部を閉塞し、主軸受部によって前記回転軸を支承するフレームと、前記シリンダーの前記内周面の他方の開口部を閉塞し、主軸受部によって前記回転軸を支承するシリンダーヘッドと、前記ローター部に設けられ、前記ローター部内から突出する先端部が外側に凸となる円弧形状に形成された少なくとも1枚のベーンと、を備えたベーン型圧縮機において、前記ベーンの前記先端部の前記円弧形状の法線と、前記シリンダーの前記内周面の法線とが常にほぼ一致する状態で、前記ベーン、前記ローター部の外周部、及び前記シリンダーの前記内周面によって囲まれる空間で冷媒を圧縮するように前記ベーンを支持し、前記ベーンを前記ローター部に対して回転可能かつ移動可能に支持するベーン支持手段を備え、該ベーン支持手段は、前記ローター部の外周部近傍に、前記ローター部の中心軸方向に垂直な断面が略円形となるように該中心軸方向に貫通したブッシュ保持部と、該ブッシュ保持部の中に挿入される一対の略半円柱状物であり、前記ブッシュ保持部内で前記ベーンを挟持するブッシュと、前記ベーンにおける前記シリンダーの前記内周面の中心側の端面が、前記ローター部に接触しないように、前記ローター部において該ローター部の中心軸方向に貫通したベーン逃がし部と、によって構成され、前記ベーンの前記先端部の前記円弧形状の曲率半径は、前記シリンダーの前記内周面の曲率半径と略同一であり、前記ブッシュは、その前記ローター部の中心側及び外周側の両端部のうち、少なくとも該外周側の端部を、冷媒の圧縮動作中に前記シリンダーの前記内周面に接触しないように切り欠いて形成された切り欠き面を有するものである。
本発明によれば、ベーンのベーン先端部の円弧形状の曲率半径を、シリンダーの内周面の曲率半径と略同一となるように形成したので、ベーン先端部とシリンダーの内周面との間において流体潤滑状態を形成することができ、摺動抵抗を抑制し、機械損失を低減することができる。また、ブッシュにおいて、そのローター部の中心側及び外周側の両端部のうち、少なくとも外周側の端部を、冷媒の圧縮動作中にシリンダーの内周面に接触しないように切り欠いて切り欠き面を形成したので、ブッシュは、圧縮動作中に、シリンダーの内周面との接触を回避することができる。
本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の縦断面図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の圧縮要素101の分解斜視図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン5及び第2ベーン6の平面図及び正面図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200のブッシュ7、8の斜視図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200における図1のI−I断面図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の圧縮動作を示す図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200のベーンアライナー部5c、6cの回転動作を示す図1におけるJ−J断面図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200における「角度0°」における図1のI−I断面図である。 図9における第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。 本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の別形態の第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。 本発明の実施の形態2に係るベーン型圧縮機200の角度7hが最大となる場合の第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。 本発明の実施の形態3に係るベーン型圧縮機200の「角度0°」における第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。 本発明の実施の形態4に係るベーン型圧縮機200の「角度0°」における第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。 本発明の実施の形態5に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン5及び第2ベーン6の平面図である。 本発明の実施の形態5に係るベーン型圧縮機200の圧縮動作を示す図である。 本発明の実施の形態6に係るベーン型圧縮機200の圧縮要素101の分解斜視図である。 本発明の実施の形態6に係るベーン型圧縮機200において「角度0°」における図1のI−I断面図である。 本発明の実施の形態6に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン部16周りの要部断面図である。
実施の形態1.
(ベーン型圧縮機200の構造)
図1は、本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の縦断面図であり、図2は、同ベーン型圧縮機200の圧縮要素101の分解斜視図である。また、図3は、同ベーン型圧縮機200の第1ベーン5及び第2ベーン6の平面図及び正面図であり、図4は、同ベーン型圧縮機200のブッシュ7、8の斜視図である。このうち、図1において、実線で示す矢印はガス(冷媒)の流れ、そして、破線で示す矢印は冷凍機油25の流れを示している。以下、図1〜図4を参照しながら、ベーン型圧縮機200の構造について説明する。
本実施の形態に係るベーン型圧縮機200は、外形を形成する密閉容器103、その密閉容器103内に収納された圧縮要素101、その圧縮要素101の上部に位置し、圧縮要素101を駆動する電動要素102、及び、密閉容器103内の底部に設けられ、冷凍機油25を貯溜する油溜め104によって構成されている。
密閉容器103は、ベーン型圧縮機200の外形を形成するものであり、その内部に、圧縮要素101及び電動要素102を収納し、冷媒及び冷凍機油を密閉するものである。密閉容器103の側面には、冷媒を密閉容器103内部に吸入する吸入管26が設置され、密閉容器103の上面には、圧縮された冷媒を外部に吐出するための吐出管24が設置されている。
圧縮要素101は、吸入管26から密閉容器103内に吸入された冷媒を圧縮するものであり、シリンダー1、フレーム2、シリンダーヘッド3、ローターシャフト4、第1ベーン5、第2ベーン6、及び、ブッシュ7、8によって構成されている。
シリンダー1は、全体形状が略円筒状で、軸方向に円筒状の円の中心とは偏心した位置が中心となるように略円形状の貫通部1fが形成されている。また、その貫通部1fの内周面であるシリンダー内周面1bの一部に、貫通部1fの中心から外側に向かってR形状に抉られた切欠き部1cが設けられ、その切欠き部1cには吸入ポート1aが開口している。この吸入ポート1aは、吸入管26に連通しており、この吸入ポート1aから貫通部1f内に冷媒が吸入されることになる。また、後述する最近接点32を挟んで吸入ポート1aと反対側に位置し、その最近接点32の近傍、かつ、後述するフレーム2に面した側に吐出ポート1dが切り欠いて設けられている(図2参照)。また、シリンダー1の外周部には軸方向に貫通し、貫通部1fの中心と対称となる位置に2つの油戻し穴1eが設けられている。
フレーム2は、縦断面形状が略T字状で、シリンダー1に接する部分が略円板形状であり、シリンダー1の貫通部1fの一方の開口部(図2における上側)を閉塞するものである。また、フレーム2の中央部は円筒形状になっており、この円筒形状部は中空であり、ここに主軸受部2cが形成されている。また、フレーム2のシリンダー1側の端面、かつ、主軸受部2c部分には、外周面がシリンダー内周面1bと同心円の凹部2aが形成されている。この凹部2aに、後述する第1ベーン5のベーンアライナー部5c、及び、第2ベーン6のベーンアライナー部6cが嵌入される。このとき、ベーンアライナー部5c、6cは、凹部2aの外周面であるベーンアライナー軸受部2bで支承される。また、フレーム2において、シリンダー1に設けた吐出ポート1dと連通し、軸方向に貫通した吐出ポート2dが設けられており、この吐出ポート2dのシリンダー1と反対側の開口部には、吐出弁27及びその吐出弁27の開度を規制するための吐出弁押え28が取り付けられている。
シリンダーヘッド3は、縦断面形状が略T字状で、シリンダー1に接する部分が略円板形状であり、シリンダー1の貫通部1fの他方の開口部(図2では下側)を閉塞するものである。また、シリンダーヘッド3の中央部は円筒形状になっており、この円筒形状は中空であり、ここに主軸受部3cが形成されている。また、シリンダーヘッド3のシリンダー1側の端面、かつ、主軸受部3c部分には、外周面がシリンダー内周面1bと同心円の凹部3aが形成されている。この凹部3aに、後述する第1ベーン5のベーンアライナー部5d、及び、第2ベーン6のベーンアライナー部6dが嵌入される。このとき、ベーンアライナー部5d、6dは、凹部3aの外周面であるベーンアライナー軸受部3bで支承される。
ローターシャフト4は、シリンダー1内でシリンダー1の貫通部1fの中心軸とは偏心した中心軸上に回転運動を行う略円筒形状のローター部4a、そのローター部4aの上面である円の中心からその上面の垂直上向きに延設された回転軸部4b、及び、ローター部4aの下面である円の中心からその下面の垂直下向きに延設された回転軸部4cが一体となった構造となっている。この回転軸部4bは、フレーム2の主軸受部2cに挿通して支承され、回転軸部4cは、シリンダーヘッド3の主軸受部3cに挿通して支承されている。ローター部4aには、円筒形状のローター部4aの中心軸方向に対して垂直の断面が略円形でその軸方向に貫通してブッシュ保持部4d、4e及びベーン逃がし部4f、4gが形成されている。ブッシュ保持部4d、4eは、それぞれ、ローター部4aの中心に対して対称となる位置に形成されており、ブッシュ保持部4d、4eの外側方向にそれぞれ、ベーン逃がし部4f、4gが形成されている。すなわち、ローター部4a、ブッシュ保持部4d、4e、及び、ベーン逃がし部4f、4gの中心は略直線状に並ぶように形成されている。また、ブッシュ保持部4dとベーン逃がし部4fとは連通しており、ブッシュ保持部4eとベーン逃がし部4gとは連通している。また、ベーン逃がし部4f、4gの軸方向端部は、フレーム2の凹部2a及びシリンダーヘッド3の凹部3aに連通している。また、ローターシャフト4の回転軸部4cの下端部には、例えば、特開2009−264175号公報に記載されているようなローターシャフト4の遠心力を利用した油ポンプ31が設けられている。この油ポンプ31は、ローターシャフト4の回転軸部4cの下端の軸中央部に設けられ、回転軸部4cの下端からローター部4a及び回転軸部4bの内部にかけて上方向に延在する給油路4hと連通している。また、回転軸部4bには、給油路4hと凹部2aとを連通させる給油路4i、そして、回転軸部4cには、給油路4hと凹部3aとを連通させる給油路4jが設けられている。さらに、回転軸部4bの主軸受部2cの上方の位置には、密閉容器103内部空間に連通させる排油穴4kが設けられている。
第1ベーン5は、略四角形の板形状の部材であるベーン部5a、このベーン部5aのフレーム2側、かつ、回転軸部4b側の上端面に設けられた円弧形状、すなわち部分リング形状のベーンアライナー部5c、及び、ベーン部5aのシリンダーヘッド3側、かつ、回転軸部4c側の下端面に設けられた円弧形状、すなわち部分リング形状のベーンアライナー部5dによって構成されている。また、ベーン部5aのシリンダー内周面1b側の端面であるベーン先端部5bは、外側に凸の円弧形状に形成され、その円弧形状の曲率半径は、シリンダー内周面1bの曲率半径と略同一となるように形成されている。また、第1ベーン5は、図3で示されるように、ベーン部5aの長さ方向及びベーン先端部5bの円弧の法線方向が、ベーンアライナー部5c、5dの円弧の中心を通るように形成されている。
第2ベーン6は、略四角形の板形状の部材であるベーン部6a、このベーン部6aのフレーム2側、かつ、回転軸部4b側の上端面に設けられた円弧形状、すなわち部分リング形状のベーンアライナー部6c、及び、ベーン部6aのシリンダーヘッド3側、かつ、回転軸部4c側の下端面に設けられた円弧形状、すなわち部分リング形状のベーンアライナー部6dによって構成されている。また、ベーン部6aのシリンダー内周面1b側の端面であるベーン先端部6bは、外側に凸の円弧形状に形成され、その円弧形状の曲率半径は、シリンダー内周面1bの曲率半径と略同一となるように形成されている。また、第2ベーン6は、図3で示されるように、ベーン部6aの長さ方向及びベーン先端部6bの円弧の法線方向が、ベーンアライナー部6c、6dの円弧の中心を通るように形成されている。
ブッシュ7、8は、それぞれ略半円柱状に形成された一対の物体で構成されている。ブッシュ7は、その半円柱状の円弧部7bがブッシュ保持部4dの内周面に沿うようにブッシュ保持部4dに嵌入され、その一対のブッシュ7の内側に板形状のベーン部5aが挟持される。このときベーン部5aは、図4で示されるブッシュ中心7aを回転中心としてローター部4aに対して回転自在、かつ、その長さ方向に移動可能に保持される。ブッシュ8は、その半円柱状の円弧部8bがブッシュ保持部4eの内周面に沿うようにブッシュ保持部4eに嵌入され、その一対のブッシュ8の内側に板形状のベーン部6aが挟持される。このときベーン部6aは、図4で示されるブッシュ中心8aを回転中心としてローター部4aに対して回転自在、かつ、その長さ方向に移動可能に保持される。また、一対のブッシュ7は、その両端が平面状に切り欠かれ、かつ、その平面がベーン部5aを挟持する面と垂直となるように切り欠き面7c、7dが形成されている。同様に、一対のブッシュ8は、その両端が平面状に切り欠かれ、かつ、その平面がベーン部6aを挟持する面と垂直となるように切り欠き面8c、8dが形成されている。また、ブッシュ7、8の切り欠き面7c、8cがローター部4aの外周側、切り欠き面7d、8dがローター部4aの中心軸側に配置される。
なお、ブッシュ保持部4d、4e、ベーン逃がし部4f、4g及びブッシュ7、8は、本発明の「ベーン支持手段」に相当する。
電動要素102は、例えば、ブラシレスDCモーターで構成され、図1で示されるように、密閉容器103の内周に固定される固定子21、及び、その固定子21の内側に配置され、永久磁石によって形成された回転子22によって構成されている。固定子21は、密閉容器103の上面に固定されたガラス端子23から電力が供給され、この電力によって回転子22が回転駆動する。また、この回転子22には、前述のローターシャフト4の回転軸部4bが挿通して固定されており、回転子22が回転することによって、その回転力が回転軸部4bに伝達し、ローターシャフト4全体が回転駆動することになる。
(ベーン型圧縮機200の圧縮動作)
図5は、本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200における図1のI−I断面図であり、図6は、同ベーン型圧縮機200の圧縮動作を示す図である。以下、図5及び図6を参照しながら、ベーン型圧縮機200の圧縮動作について説明する。
この図5においては、ローターシャフト4のローター部4aが、シリンダー内周面1bの一箇所(最近接点32)において最近接している状態が示されている。ここで、ベーンアライナー軸受部2b、3bの半径をra(後述する図7参照)、そして、シリンダー内周面1bの半径をrcとした場合、第1ベーン5のベーンアライナー部5c、5dの外周側とベーン先端部5bとの間の距離rv(図3参照)は、下記の式(1)で表される。
rv=rc−ra−δ (1)
ここで、δはベーン先端部5bとシリンダー内周面1bとの間の隙間を表すものであり、式(1)のようにrvを設定することで、第1ベーン5のベーン先端部5bはシリンダー内周面1bに接触することなく、回転することとなる。ここで、δが極力小さくなるようにrvを設定すると、ベーン先端部5bからの冷媒の漏れが極力少なくなる。また、式(1)の関係は、第2ベーン6においても同様で、第2ベーン6のベーン先端部6bとシリンダー内周面1bとの間は狭い隙間を保ちつつ、第2ベーン6は回転することとなる。
以上の構成によって、シリンダー内周面1bと近接する最近接点32、第1ベーン5のベーン先端部5b、及び、第2ベーン6のベーン先端部6bによって、シリンダー1の貫通部1f内に、3つの空間(吸入室9、中間室10及び圧縮室11)が形成される。吸入室9には、切欠き部1cの吸入ポート1aを介して、吸入管26から吸入されてくる冷媒が入り込む。この切欠き部1cは、図5(このローターシャフト4の回転角の位置を90°とする)で示されるように、最近接点32の近傍から、第1ベーン5のベーン先端部5bとシリンダー内周面1bとの近接点Aの範囲まで形成されている。圧縮室11は、シリンダー1の吐出ポート1dを介して、冷媒の吐出時以外は吐出弁27によって閉塞されるフレーム2に設けた吐出ポート2dに連通している。したがって、中間室10は、回転角度90°までは吸入ポート1aと連通するが、その後、吸入ポート1a及び吐出ポート1dのいずれとも連通しない回転角度範囲において形成される空間であり、その後、吐出ポート1dと連通して、圧縮室11となる。また、図4において、ブッシュ中心7a、8aは、それぞれ、ブッシュ7、8の回転中心であり、ベーン部5a、6aの回転中心でもある。
次に、ベーン型圧縮機200のローターシャフト4の回転動作について説明する。
ローターシャフト4の回転軸部4bが電動要素102の回転子22からの回転力を受け、ローター部4aは、シリンダー1の貫通部1f内で回転する。このローター部4aの回転に伴い、ローター部4aのブッシュ保持部4d、4eは、ローターシャフト4の中心を中心とする円の円周上を移動する。そして、ブッシュ保持部4d、4e内にそれぞれ保持されている一対のブッシュ7、8、並びに、その一対のブッシュ7、8それぞれの間に回転可能に挟持されている第1ベーン5のベーン部5a、及び、第2ベーン6のベーン部6aもローター部4aの回転と共に回転する。第1ベーン5及び第2ベーン6は、ローター部4aの回転による遠心力を受け、ベーンアライナー部5c、6c及びベーンアライナー部5d、6dは、ベーンアライナー軸受部2b、3bにそれぞれ押し付けられて摺動しながら、ベーンアライナー軸受部2b、3bの中心を回転中心として回転する。ここで、ベーンアライナー軸受部2b、3bとシリンダー内周面1bとは同心であるため、第1ベーン5及び第2ベーン6はシリンダー内周面1bの中心を回転中心として回転することになる。そうすると、第1ベーン5のベーン部5a、及び、第2ベーン6のベーン部6aの長さ方向がシリンダー内周面1bの中心を通るように、ブッシュ7、8が、それぞれブッシュ保持部4d、4e内で、ブッシュ中心7a、8aを回転中心として回転することになる。すなわち、ベーン先端部5b、6bの円弧形状及びシリンダー内周面1bの法線が常にほぼ一致する状態で、ローター部4aが回転することになる。
以上の動作において、ブッシュ7及び第1ベーン5のベーン部5aの側面は、互いに摺動を行い、ブッシュ8及び第2ベーン6のベーン部6aの側面も、互いに摺動を行う。また、ローターシャフト4のブッシュ保持部4d及びブッシュ7は、互いに摺動を行い、ローターシャフト4のブッシュ保持部4e及びブッシュ8も、互いに摺動を行う。
次に、図6を参照しながら、吸入室9、中間室10及び圧縮室11の容積が変化する様子を説明する。なお、図6においては簡単のため、吸入ポート1a、切欠き部1c及び吐出ポート1dの図示を略し、吸入ポート1a及び吐出ポート1dを矢印でそれぞれ吸入及び吐出として示している。まず、ローターシャフト4の回転に伴い、吸入管26を経由して低圧のガス冷媒が吸入ポート1aから流入する。ここで、図6における回転角度を、ローターシャフト4のローター部4aとシリンダー内周面1bとが最近接している最近接点32と、ベーン部5aとシリンダー内周面1bとが相対する一箇所とが一致するときを、「角度0°」と定義する。図6では、「角度0°」、「角度45°」、「角度90°」及び「角度135°」の場合におけるベーン部5a及びベーン部6aの位置、並びに、それぞれの場合における吸入室9、中間室10及び圧縮室11の状態を示している。また、図6の「角度0°」の図においては、ローターシャフト4の回転方向(図6では時計方向)を矢印で示している。ただし、他の角度の図においては、ローターシャフト4の回転方向を示す矢印は略している。なお、「角度180°」以降の状態を示していないのは、「角度180°」になると、「角度0°」において、第1ベーン5と第2ベーン6が入れ替わった状態と同じになり、それ以降は「角度0°」から「角度135°」までと同じ圧縮動作を示すためである。
図6における「角度0°」では、最近接点32と第2ベーン6のベーン部6aとで仕切られた右側の空間は中間室10であり、切欠き部1cを介して吸入ポート1aと連通しており、ガス冷媒を吸入する。最近接点32と第2ベーン6のベーン部6aとで仕切られた左側の空間は吐出ポート1dに連通した圧縮室11となる。
図6における「角度45°」では、第1ベーン5のベーン部5aと最近接点32とで仕切られた空間は吸入室9となる。第1ベーン5のベーン部5aと第2ベーン6のベーン部6aとで仕切られた中間室10は、切欠き部1cを介して吸入ポート1aと連通しており、中間室10の容積は「角度0°」のときより大きくなるので、ガス冷媒の吸入が継続される。また、第2ベーン6のベーン部6aと最近接点32とで仕切られた空間は圧縮室11であり、圧縮室11の容積は「角度0°」のときより小さくなり、ガス冷媒は圧縮されて徐々にその圧力が高くなる。
図6における「角度90°」では、第1ベーン5のベーン先端部5bがシリンダー内周面1b上の近接点Aと重なるので、中間室10は吸入ポート1aと連通しなくなる。これによって、中間室10へのガス冷媒の吸入は終了する。また、この状態で、中間室10の容積は略最大となる。圧縮室11の容積は「角度45°」のときよりさらに小さくなり、ガス冷媒の圧力は上昇する。吸入室9の容積は「角度45°」のときより大きくなり、切欠き部1cを介して吸入ポート1aと連通して、ガス冷媒が吸入される。
図6における「角度135°」では、中間室10の容積は「角度90°」のときより小さくなり、冷媒の圧力は上昇する。また、圧縮室11の容積も「角度90°」のときより小さくなり、冷媒の圧力は上昇する。吸入室9の容積は「角度90°」のときより大きくなるので、ガス冷媒の吸入が継続される。
その後、第2ベーン6のベーン部6aが吐出ポート1dに近づくが、圧縮室11内のガス冷媒の圧力が、冷凍サイクルの高圧(吐出弁27を開くのに必要な圧力も含む)を上回ると、吐出弁27が開く。そして、圧縮室11内のガス冷媒は、吐出ポート1d及び吐出ポート2dを通って、図1で示されるように、密閉容器103内に吐出される。密閉容器103内に吐出されたガス冷媒は、電動要素102を通過して、密閉容器103の上部に固定された吐出管24を通って、外部(冷凍サイクルの高圧側)に吐出される。したがって、密閉容器103内の圧力は高圧である吐出圧力となる。
また、第2ベーン6のベーン部6aが吐出ポート1dを通過すると、圧縮室11には高圧のガス冷媒が若干残る(ロスとなる)。そして、「角度180°」(図示せず)で圧縮室11が消滅したとき、この高圧のガス冷媒は吸入室9において低圧のガス冷媒に変化する。なお、「角度180°」において、吸入室9が中間室10に移行し、中間室10が圧縮室11に移行して、以後、上記の圧縮動作を繰り返すことになる。
このように、ローターシャフト4のローター部4aの回転によって、吸入室9は徐々に容積が大きくなり、ガス冷媒の吸入を継続する。以後、吸入室9は中間室10に移行するが、途中まで(吸入室9と中間室10とを仕切るベーン部(ベーン部5a又はベーン部6a)が近接点Aと相対するまで)徐々に容積が大きくなり、さらにガス冷媒の吸入が継続される。その途中において、中間室10の容積は最大となり、吸入ポート1aに連通しなくなるので、ここでガス冷媒の吸入が終了する。以後、中間室10の容積は徐々に小さくなり、ガス冷媒を圧縮することになる。その後、中間室10は圧縮室11に移行して、ガス冷媒の圧縮が継続される。所定の圧力まで圧縮されたガス冷媒は、吐出ポート1d及び吐出ポート2dを通って吐出弁27を押し上げて、密閉容器103内に吐出される。
図7は、本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200のベーンアライナー部5c、6cの回転動作を示す図1におけるJ−J断面図である。
図7の「角度0°」の図においては、ベーンアライナー部5c、6cの回転方向(図7では時計方向)を矢印で示している。ただし、他の角度の図においては、ベーンアライナー部5c、6cの回転方向を示す矢印は略している。ローターシャフト4の回転により、第1ベーン5のベーン部5a及び第2ベーン6のベーン部6aがシリンダー内周面1bの中心を回転中心として回転する。これによって、ベーンアライナー部5c、6cは、図7で示されるように、凹部2a内を、ベーンアライナー軸受部2bに支持されてシリンダー内周面1bの中心を回転中心として回転する。また、同様に、ベーンアライナー部5d、6dは、凹部3a内を、ベーンアライナー軸受部3bに支持されてシリンダー内周面1bの中心を回転中心として回転する。
(冷凍機油25の挙動)
以上の動作において、図1で示されるように、ローターシャフト4の回転によって、油ポンプ31により油溜め104から冷凍機油25が吸い上げられ、給油路4hに送り出される。この給油路4hに送り出された冷凍機油25は、給油路4iを通ってフレーム2の凹部2aに、かつ、給油路4jを通ってシリンダーヘッド3の凹部3aに送り出される。凹部2a、3aに送り出された冷凍機油25は、ベーンアライナー軸受部2b、3bを潤滑すると共に、凹部2a、3aと連通したベーン逃がし部4f、4gに供給される。ここで、密閉容器103内の圧力は高圧である吐出圧力になっているため、凹部2a、3a及びベーン逃がし部4f、4g内の圧力も吐出圧力となる。また、凹部2a、3aに送り出された冷凍機油25の一部は、フレーム2の主軸受部2c及びシリンダーヘッド3の主軸受部3cに供給され潤滑する。
図8は、本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。
図8で示されるように、実線の矢印は冷凍機油25の流れを示している。ベーン逃がし部4f内の圧力は吐出圧力であり、吸入室9及び中間室10内の圧力よりも高いため、冷凍機油25は、ベーン部5aの側面とブッシュ7との間の摺動部を潤滑しながら、圧力差及び遠心力によって吸入室9及び中間室10に送り出される。また、冷凍機油25は、ブッシュ7とローターシャフト4のブッシュ保持部4dとの間の摺動部を潤滑しながら、圧力差及び遠心力によって吸入室9及び中間室10に送り出される。また、中間室10に送り出された冷凍機油25の一部は、ベーン先端部5bとシリンダー内周面1bとの間の隙間をシールしながら吸入室9に流入する。
また、上記では、第1ベーン5のベーン部5aで仕切られる空間が吸入室9及び中間室10である場合について示したが、ローターシャフト4の回転が進んで、第1ベーン5のベーン部5aで仕切られる空間が中間室10及び圧縮室11である場合でも同様である。すなわち、圧縮室11内の圧力がベーン逃がし部4fの圧力と同じ吐出圧力に達した場合でも、遠心力によって、冷凍機油25は、圧縮室11に向かって送り出されることになる。
なお、以上の動作は第1ベーン5に対して示したが、第2ベーン6においても同様である。
また、図1で示されるように、主軸受部2cに供給された冷凍機油25は、主軸受部2cと回転軸部4bとの隙間を通って、フレーム2の上方の空間に吐き出された後、シリンダー1の外周部に設けた油戻し穴1eを通って、油溜め104に戻される。また、主軸受部3cに供給された冷凍機油25は、主軸受部3cと回転軸部4cとの隙間を通って、油溜め104に戻される。また、ベーン逃がし部4f、4gを介して吸入室9、中間室10及び圧縮室11に送り出された冷凍機油25も、最終的にガス冷媒と共に吐出ポート2dからフレーム2の上方の空間に吐出された後、シリンダー1の外周部に形成された油戻し穴1eを通って、油溜め104に戻される。また、油ポンプ31により給油路4hに送り出された冷凍機油25のうち、余剰な冷凍機油25は、ローターシャフト4の上方の排油穴4kから、フレーム2の上方の空間に吐き出された後、シリンダー1の外周部に形成された油戻し穴1eを通って、油溜め104に戻される。
(ローター部4aの半径とブッシュ7、8の構造との関係)
図9は、本発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機200における「角度0°」における図1のI−I断面図であり、図10は、図9における第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。
図9及び図10で示されるように、ブッシュ7の円弧部7bの曲率半径(ブッシュ保持部4dの半径)をrb、ブッシュ中心7aとローター部4aの中心との距離をa、ローター部4aの半径をrrとしたとき、下記の式(2)の関係となるように構成されている。
rr<rb+a (2)
同様に、ブッシュ8においても、ブッシュ7とローター部4aとの場合と同様に、上記の式(2)の関係が成り立つ。
このような構造によって、ブッシュ7、8は、ローターシャフト4が回転している場合において、シリンダー内周面1bとの接触を回避することができる。また、ブッシュ7、8に切り欠き面7c、8cを設けない場合と比較して、ローター部4aの半径rrを小径化することが可能となる。
なお、ブッシュ7の切り欠き面7c、7d、及び、ブッシュ8の切り欠き面8c、8dは、それぞれベーン部5a、6aを挟持する面と垂直となるように形成するものとしたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図11で示されるように、切り欠き面7c、7d、及び、切り欠き面8c、8dのうちいずれかを、それぞれベーン部5a、6aを挟持する面に対して斜め方向となるように形成するものとしてもよい。また、切り欠き面7c、7d、8c、8dは、平面としているが、これに限定されるものではなく曲面としてもよい。
(実施の形態1の効果)
以上の構成のように、上記の式(1)の関係を有するように、ベーン先端部5b、6bとシリンダー内周面1bとの間に所定の適正な隙間δを設けることによって、ベーン先端部5b、6bからの冷媒の漏れを抑制しつつ、機械損失の増大による圧縮機効率の低下を抑制し、かつ、ベーン先端部5b、6bの摩耗を抑制できる。
また、第1ベーン5のベーン先端部5b及び第2ベーン6のベーン先端部6bの円弧形状の曲率半径を、シリンダー内周面1bの曲率半径と略同一となるように形成したので、ベーン先端部5b、6bとシリンダー内周面1bとの間において流体潤滑状態を形成することができ、摺動抵抗を抑制し、機械損失を低減することができる。
また、ベーン先端部5b、6bの円弧形状及びシリンダー内周面1bの法線が常にほぼ一致するように圧縮動作を行うために必要なベーン(第1ベーン5、第2ベーン6)がシリンダー内周面1bの中心を回転中心として回転運動する機構を、ローター部4aと回転軸部4b、4cとを一体にした構成で実現できる。このため、回転軸部4b、4cを小径で支持できることで軸受摺動損失を低減し、かつローター部4aの外径及び回転中心の精度を向上させることができ、ローター部4aとシリンダー内周面1bとの間を狭い隙間で形成して漏れ損失を低減することが可能となる。
さらに、ブッシュ7、8にそれぞれ切り欠き面7c、8cを形成し、上記の式(2)を満たすように、ブッシュ7、8及びローター部4aを構成することによって、ブッシュ7、8は、ローターシャフト4が回転している場合において、シリンダー内周面1bとの接触を回避することができる。また、ブッシュ7、8に切り欠き面7c、8cを設けない場合と比較して、ローター部4aの半径rrを小径化することが可能となる。
なお、本実施の形態において、ローターシャフト4のローター部4aに設置されるベーンとして第1ベーン5及び第2ベーン6の2枚としているが、これに限定されるものではなく、1枚又は3枚以上のベーンが設置される構成としてもよい。
また、図5、図6及び図8で示されるように、ベーン逃がし部4f、4gの断面を略円形状としているが、これに限定されるものではなく、ベーン部5a、6aがそれぞれ、ベーン逃がし部4f、4gの内周面に接触しなければ、任意の形状(例えば、長穴形状又は矩形状等)にしてもよい。
また、図1で示されるように、フレーム2及びシリンダーヘッド3に、それぞれの外周面であるベーンアライナー軸受部2b、3bがシリンダー内周面1bと同心円の凹部2a、3aが形成される構成としているがこれに限定されるものではない。すなわち、ベーンアライナー軸受部2b、3bがシリンダー内周面1bと同心円であり、かつ、ベーンアライナー部5c、6c、5d及び6dが嵌入できるのであれば任意の形状としてもよく、例えば、ベーンアライナー部5c、6c、5d及び6dが嵌入できるようなリング状の溝で形成するものとしてもよい。
実施の形態2.
本実施の形態に係るベーン型圧縮機200について、実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と相違する点を中心に説明する。
(ベーン部5a、6a周りの構成)
図12は、本発明の実施の形態2に係るベーン型圧縮機200の角度7hが最大となる場合の第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。
図12で示される状態は、ローター部4aの中心とブッシュ7の中心7aを結ぶ直線7fと、シリンダー内周面1bの中心とブッシュ中心7aとを結ぶ直線7gとの成す角度7hが、ローターシャフト4の一回転中で最大となっている状態である。この状態において、切り欠き面7c、7dの端部が、ブッシュ保持部4dの内周面と最も近接するが、摺動はしないように形成されている。したがって、ローターシャフト4の回転角度がその他の角度においても、切り欠き面7c、7dの端部は、ブッシュ保持部4dの内周面とは摺動しないことになる。
なお、ブッシュ8の切り欠き面8c、8d及びブッシュ保持部4eの構成は、上記のようなブッシュ7の切り欠き面7c、7d及びブッシュ保持部4dの構成と同様である。
(実施の形態2の効果)
以上のような構成によって、実施の形態1と同様の効果を得ながら、実施の形態1よりもブッシュ保持部4d、4eの損傷の可能性がより軽減されるため、信頼性を向上することができる。
実施の形態3.
本実施の形態に係るベーン型圧縮機200について、実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と相違する点を中心に説明する。
(ベーン部5a、6a周りの構成)
図13は、本発明の実施の形態3に係るベーン型圧縮機200の「角度0°」における第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。
図13で示されるように、ブッシュ7の切り欠き面7c、7dは、上に凸となる円弧形状の曲面としている。したがって、切り欠き面7c、7dの端部が、実施の形態1の場合と比較して、丸みを帯びた形状となるので、ブッシュ保持部4dの内周面と摺動しても、ブッシュ保持部4dに対する損傷の可能性が軽減される。
なお、ブッシュ8の構成は、上記のようなブッシュ7の構成と同様である。
(実施の形態3の効果)
以上のような構成によって、実施の形態1と同様の効果を得ながら、実施の形態1よりもブッシュ保持部4d、4eの損傷の可能性がより軽減されるため、信頼性を向上することができる。
実施の形態4.
本実施の形態に係るベーン型圧縮機200について、実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と相違する点を中心に説明する。
(ベーン部5a、6a周りの構成)
図14は、本発明の実施の形態4に係るベーン型圧縮機200の「角度0°」における第1ベーン5のベーン部5a周りの要部断面図である。
図14で示されるように、本実施の形態に係るベーン型圧縮機200のブッシュ7は、実施の形態1と異なり、ローター部4aの中心軸側の切り欠き面7d(図5参照)は形成されておらず、ローター部4aの外周側の切り欠き面7cのみが形成されている。これによって、実施の形態1の場合と比較して、ブッシュ7とベーン部5aとの接触面積が大きくなり、したがって、ブッシュ7とベーン部5aとの接触面圧を低減することができる。
なお、ブッシュ8の構成は、上記のようなブッシュ7の構成と同様である。
(実施の形態4の効果)
以上のような構成によって、実施の形態1と同様の効果を得ながら、ブッシュ7とベーン部5a、及び、ブッシュ8とベーン部6aとの接触面圧を低減することができるので、ブッシュ7、8及びベーン部5a、6aの摩耗を低減することが可能となり、信頼性を向上することができる。
なお、本実施の形態に係るブッシュ7、8の構成は、実施の形態2及び実施の形態3にも適用することができる。
実施の形態5.
本実施の形態に係るベーン型圧縮機200について、実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と相違する点を中心に説明する。
(ベーン型圧縮機200の構造)
図15は、本発明の実施の形態5に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン5及び第2ベーン6の平面図であり、図16は、同ベーン型圧縮機200の圧縮動作を示す図である。
図15で示されるように、Bは、ベーン部5a、6aの長さ方向を示す線であり、Cは、ベーン先端部5b、6bの円弧形状の法線である。したがって、ベーンアライナー部5c、5d、6c、6dに対して、ベーン部5a、6aは、Bの方向に傾いて取り付けられている。また、ベーン先端部5b、6bの円弧の法線Cは、線Bに対して傾いており、ベーンアライナー部5c、5d、6c、6dを形成する円弧の中心を通るように形成されている。
また、本実施の形態においては、ローター部4a及びブッシュ保持部4d、4eの中心は略直線状に並ぶように形成されているが、図16の「角度0°」の図で示されるように、ベーン逃がし部4fは、その直線の右寄りに、ベーン逃がし部4gは、その直線の左寄りに形成されている。
(ベーン型圧縮機200の圧縮動作)
以上のような構成においても、図6で示される実施の形態1と同様に、ベーン先端部5b、6bの円弧形状及びシリンダー内周面1bの法線が常にほぼ一致する状態で圧縮動作を行うことができ、ベーン先端部5b、6bとシリンダー内周面1bとは常に微小な隙間を保ちつつ、非接触で回転することが可能である。
(実施の形態5の効果)
本実施の形態においても、ベーン先端部5b、6bの円弧形状及びシリンダー内周面1bの法線が常にほぼ一致する状態で圧縮動作を行うことができ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態に係るベーン型圧縮機200の構成は、実施の形態2〜実施の形態4にも適用することもできる。
実施の形態6.
本実施の形態に係るベーン型圧縮機200について、実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と相違する点を中心に説明する。実施の形態1に係るベーン型圧縮機200においては、ベーン先端部5b、6bが、シリンダー内周面1bに接触しない構成について説明したが、本実施の形態においては、ベーン先端部5b、6bが、シリンダー内周面1bに接触する構成について説明する。
図17は、本発明の実施の形態6に係るベーン型圧縮機200の圧縮要素101の分解斜視図であり、図18は、同ベーン型圧縮機200において「角度0°」における図1のI−I断面図である。
図17及び図18で示されるように、本実施の形態に係るベーン型圧縮機200は、実施の形態1に係るベーン型圧縮機200における第1ベーン5の代わりに、ベーンアライナー部12、13及び第1ベーン部16を備え、第2ベーン6の代わりに、ベーンアライナー部14、15及び第2ベーン部17を備えている。
ベーンアライナー部12、14は、円弧形状すなわち部分リング形状をしており、シリンダーヘッド3側に設けられ、その円弧形状の軸方向、かつ、ローター部4a側に向かって、それぞれ板形状のベーン保持部12a、14aが立設している。
なお、このベーンアライナー部12、14は、実施の形態1におけるベーンアライナー部5d、6dに相当するものである。
ベーンアライナー部13、15は、円弧形状すなわち部分リング形状をしており、フレーム2側に設けられ、その円弧形状の軸方向、かつ、ローター部4a側に向って、それぞれ板形状のベーン保持部13a、15aが立設している。
なお、このベーンアライナー部13、15は、実施の形態1におけるベーンアライナー部5c、6cに相当するものである。
第1ベーン部16は、略四角形の板形状の部材であり、そのシリンダー内周面1b側の端面であるベーン先端部16aは、外側に凸の円弧形状に形成され、その円弧形状の曲率半径は、シリンダー内周面1bの曲率半径と略同一となるように形成されている。また、第1ベーン部16のシリンダー内周面1bの中心側の端面には、ベーン保持部12a、13aがそれぞれ嵌入する背面溝16bが形成されている。
なお、この背面溝16bは、第1ベーン部16のシリンダー内周面1bの中心側の端面において、その中心軸方向全長にわたって形成するものとしてもよい。また、第1ベーン部16及びベーン先端部16aは、それぞれ実施の形態1におけるベーン部5a及びベーン先端部5bに相当するものである。
第2ベーン部17は、略四角形の板形状の部材であり、そのシリンダー内周面1b側の端面であるベーン先端部17aは、外側に凸の円弧形状に形成され、その円弧形状の曲率半径は、シリンダー内周面1bの曲率半径と略同一となるように形成されている。また、第2ベーン部17のシリンダー内周面1bの中心側の端面には、ベーン保持部14a、15aがそれぞれ嵌入する背面溝17bが形成されている。
なお、この背面溝17bは、第2ベーン部17のシリンダー内周面1bの中心側の端面において、その中心軸方向全長にわたって形成するものとしてもよい。また、第2ベーン部17及びベーン先端部17aは、それぞれ実施の形態1におけるベーン部6a及びベーン先端部6bに相当するものである。
以上のように、第1ベーン部16の背面溝16bに、ベーン保持部12a、13aが嵌入し、第2ベーン部17の背面溝17bに、ベーン保持部14a、15aが嵌入することによって、ベーン先端部16a、17aの円弧形状及びシリンダー内周面1bの法線がほぼ一致するように第1ベーン部16、17の方向が規制される。
図19は、本発明の実施の形態6に係るベーン型圧縮機200の第1ベーン部16周りの要部断面図である。
図19で示されるように、実線の矢印は冷凍機油25の流れを示している。ベーン逃がし部4f内の圧力は吐出圧力であり、吸入室9及び中間室10内の圧力よりも高いため、冷凍機油25は、第1ベーン部16の側面とブッシュ7との間の摺動部を潤滑しながら、圧力差及び遠心力によって吸入室9及び中間室10に送り出される。また、冷凍機油25は、ブッシュ7とローターシャフト4のブッシュ保持部4dとの間の摺動部を潤滑しながら、圧力差及び遠心力によって吸入室9及び中間室10に送り出される。
ここで、第1ベーン部16は、ベーン逃がし部4fと、吸入室9及び中間室10との圧力差及び遠心力によって、シリンダー内周面1bに押し付けられることになる。また、これは、第1ベーン部16がベーンアライナー部12、13によって固定されていないことによるものである。そして、これによって、第1ベーン部16のベーン先端部16aは、シリンダー内周面1bに沿って摺動することになる。しかし、ベーン先端部16aの円弧形状の曲率半径は、シリンダー内周面1bの曲率半径と略同一であり、かつ、ベーン先端部16a、17aの円弧形状及びシリンダー内周面1bの法線がほぼ一致するようにローター部4aは回転するので、ベーン先端部16aとシリンダー内周面1bとの間に十分な油膜が形成され流体潤滑状態となる。この流体潤滑状態によって、ベーン先端部16aとシリンダー内周面1bとの摺動損失は低減され、さらに、圧縮動作においてベーン先端部16aとシリンダー内周面1bとの間からの冷媒の漏れも少なくなる。
なお、以上の動作は第1ベーン部16に対して示したが、第2ベーン部17においても同様である。
(実施の形態6の効果)
以上の構成のように、第1ベーン部16のベーン先端部16a及び第2ベーン部17のベーン先端部17aが、シリンダー内周面1bと摺動する動作となるが、流体潤滑状態となるので、ベーン先端部16a、17aとシリンダー内周面1bとの摺動損失は低減される。また、これによって、圧縮動作においてベーン先端部16a、17aとシリンダー内周面1bとの間からの冷媒の漏れも少なくなる。
また、実施の形態1と同様に本実施の形態においてもブッシュ7、8は、それぞれ切り欠き面7c、8cが形成されているので、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態に係るベーン型圧縮機200の構成は、実施の形態2〜実施の形態5にも適用することもできる。
また、実施の形態1〜実施の形態6において、ローターシャフト4の遠心力を利用した油ポンプ31について説明したが、油ポンプ31の形態はいずれでもよく、例えば、特開2009−62820号公報に記載の容積形ポンプを油ポンプ31として用いてもよい。
また、実施の形態1〜実施の形態6において、部分リング形状のベーンアライナー部がベーン部に一体に取り付けられる場合について示したが、例えば、ローターシャフト4の内側を中空に構成しその中にベーンの固定軸を配し、ベーンはその固定軸に回転可能に取り付けられている場合(例えば、特許文献2参照)においても、同様の効果が得られる。
1 シリンダー、1a 吸入ポート、1b シリンダー内周面、1c 切欠き部、1d _吐出ポート、1e 油戻し穴、1f 貫通部、2 フレーム、2a 凹部、2b ベーンアライナー軸受部、2c 主軸受部、2d 吐出ポート、3 シリンダーヘッド、3a _凹部、3b ベーンアライナー軸受部、3c 主軸受部、4 ローターシャフト、4a _ローター部、4b、4c 回転軸部、4d、4e ブッシュ保持部、4f、4g ベーン逃がし部、4h〜4j 給油路、4k 排油穴、5 第1ベーン、5a ベーン部、5b ベーン先端部、5c、5d ベーンアライナー部、6 第2ベーン、6a ベーン部、6b ベーン先端部、6c、6d ベーンアライナー部、7 ブッシュ、7a ブッシュ中心、7b 円弧部、7c、7d 切り欠き面、7f、7g 直線、7h 角度、8_ ブッシュ、8a ブッシュ中心、8b 円弧部、8c、8d 切り欠き面、9 吸入室、10 中間室、11 圧縮室、12 ベーンアライナー部、12a ベーン保持部、13 _ベーンアライナー部、13a ベーン保持部、14 ベーンアライナー部、14a ベーン保持部、15 ベーンアライナー部、15a ベーン保持部、16 第1ベーン部、16a ベーン先端部、16b 背面溝、17 第2ベーン部、17a ベーン先端部、17b 背面溝、21 固定子、22 回転子、23 ガラス端子、24 吐出管、25 _冷凍機油、26 吸入管、27 吐出弁、28 吐出弁押え、31 油ポンプ、32_ 最近接点、101 圧縮要素、102 電動要素、103 密閉容器、104 油溜め、200 ベーン型圧縮機。

Claims (7)

  1. 密閉容器と、該密閉容器内に収容された電動要素と、冷媒を圧縮する圧縮要素とを有し、
    該圧縮要素が、
    円筒状の内周面が形成されたシリンダーと、
    該シリンダーの内部において、前記内周面の中心軸と所定の距離ずれた回転軸を中心に回転する円筒形状のローター部、及び、該ローター部に前記電動要素からの回転力を伝達する回転軸部を有したローターシャフトと、
    前記シリンダーの前記内周面の一方の開口部を閉塞し、主軸受部によって前記回転軸を支承するフレームと、
    前記シリンダーの前記内周面の他方の開口部を閉塞し、主軸受部によって前記回転軸を支承するシリンダーヘッドと、
    前記ローター部に設けられ、前記ローター部内から突出する先端部が外側に凸となる円弧形状に形成された少なくとも1枚のベーンと、
    を備えたベーン型圧縮機において、
    前記ベーンの前記先端部の前記円弧形状の法線と、前記シリンダーの前記内周面の法線とが常にほぼ一致する状態で、前記ベーン、前記ローター部の外周部、及び前記シリンダーの前記内周面によって囲まれる空間で冷媒を圧縮するように前記ベーンを支持し、前記ベーンを前記ローター部に対して回転可能かつ移動可能に支持するベーン支持手段を備え、
    該ベーン支持手段は、
    前記ローター部の外周部近傍に、前記ローター部の中心軸方向に垂直な断面が略円形となるように該中心軸方向に貫通したブッシュ保持部と、
    該ブッシュ保持部の中に挿入される一対の略半円柱状物であり、前記ブッシュ保持部内で前記ベーンを挟持するブッシュと、
    前記ベーンにおける前記シリンダーの前記内周面の中心側の端面が、前記ローター部に接触しないように、前記ローター部において該ローター部の中心軸方向に貫通したベーン逃がし部と、
    によって構成され、
    前記ベーンの前記先端部の前記円弧形状の曲率半径は、前記シリンダーの前記内周面の曲率半径と略同一であり、
    前記ブッシュは、その前記ローター部の中心側及び外周側の両端部のうち、少なくとも該外周側の端部を、冷媒の圧縮動作中に前記シリンダーの前記内周面に接触しないように切り欠いて形成された切り欠き面を有した
    ことを特徴とするベーン型圧縮機。
  2. 前記ブッシュ保持部は、該ブッシュ保持部の半径と、前記ベーンの回転中心と前記ローター部の中心との距離との和が、前記ローター部の半径よりも大きくなるように形成された
    ことを特徴とする請求項1記載のベーン型圧縮機。
  3. 前記ブッシュの前記切り欠き面は、冷媒の圧縮動作中、常に、該切り欠き面の端部が、前記ブッシュ保持部に摺動しないように形成された
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のベーン型圧縮機。
  4. 前記ブッシュの前記切り欠き面は、上に凸となる円弧形状の曲面となるように形成された
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のベーン型圧縮機。
  5. 前記ブッシュの前記切り欠き面は、前記ブッシュの前記ローター部の外周側の端部のみに形成された
    ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のベーン型圧縮機。
  6. 前記ベーンは、前記フレーム側かつ前記ローター部の中心側の端面近傍、及び、前記シリンダーヘッド側かつ前記ローター部の中心側の端面近傍に設けられた一対の部分リング形状のベーンアライナー部を有し、
    前記フレーム及び前記シリンダーヘッドの前記シリンダー側の端面に、前記シリンダーの前記内周面と同心の凹部又は溝部が形成され、
    前記ベーンアライナー部は、前記凹部又は前記溝部内に嵌入され、該凹部又は該溝部の外周面であるベーンアライナー軸受部で支承された
    ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のベーン型圧縮機。
  7. 前記ローターシャフトは、前記ローター部と前記回転軸とが一体に形成されて構成された
    ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のベーン型圧縮機。
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