実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るベーン型圧縮機を示す縦断面図である。図2は、このベーン型圧縮機の圧縮要素を示す分解斜視図である。図3は、この圧縮要素のベーンを示す図面であり、図3(a)がベーンの平面図、図3(b)がベーンの正面図を示している。図4は、図1のI−I線に沿った断面図である。また、図5は、図2及び図4における矢視A図である。なお、図1において、実線で示す矢印はガス(冷媒)の流れ、破線で示す矢印は冷凍機油25の流れを示している。また、図4は、図6で後述するようにロータシャフト4のロータ部4aの回転位相が90°の状態を示している。以下、これら図1〜図5を参照しながら、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200について説明する。
ベーン型圧縮機200は、密閉容器103内に、圧縮要素101と、この圧縮要素101を駆動する電動要素102とが収納されている。圧縮要素101は、密閉容器103の下部に配置されている。電動要素102は、密閉容器103の上部(より詳しくは、圧縮要素101の上方)に配置されている。また、密閉容器103内の底部には、冷凍機油25を貯溜する油溜め104が設けられている。また、密閉容器103の側面には吸入管26、上面には吐出管24が取り付けられている。
圧縮要素101を駆動する電動要素102は、例えば、ブラシレスDCモータで構成される。電動要素102は、密閉容器103の内周に固定された固定子21と、固定子21の内側に配設され、永久磁石を使用した回転子22とを備える。密閉容器103に溶接等で固定されたガラス端子23を介して固定子21のコイルに電力が供給されると、固定子21に発生した磁界によって回転子22の永久磁石に駆動力が付与され、回転子22が回転する。
圧縮要素101は、吸入管26から低圧のガス冷媒を圧縮室に吸入して圧縮し、圧縮した冷媒を密閉容器103内に吐出するものである。密閉容器103内に吐出されたこの冷媒は、電動要素102を通過して密閉容器103の上部に固定(溶接)された吐出管24から外部(冷凍サイクルの高圧側)に吐出される。この圧縮要素101は、以下に示す要素を有する。なお、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、ベーン枚数が2枚(第1のベーン部5、第2のベーン部6)のものについて示している。
(1)シリンダ1:全体形状が略円筒状で、中心軸方向の両端部が開口している。つまり、シリンダ1は、内周面が円筒状で両端が開口した穴を有している。また、略円筒状に形成されたシリンダ内周面1b(上記穴の内周面)の一部には、軸方向(内周面の軸方向、後述するロータ部4a及び回転軸部4cの回転軸方向と同方向)に貫通し、外側に抉られた切欠き部1cが設けられている。そして、切欠き部1cには、吸入管26と連通した吸入ポート1aが開口している。また、後述する最近接点32(図4に図示)を挟んで吸入ポート1aと反対側となる位置のシリンダ内周面1bには、シリンダ1を径方向に貫通する第1の吐出ポート1eが形成されている。第1の吐出ポート1eの径方向長さが短くなるように、第1の吐出ポート1eの出口部は大きく抉られている。この切欠き部分は、後述するフレーム2、シリンダヘッド3及び密閉容器103に囲まれて吐出空間41(図4に図示)を形成している。また、第1の吐出ポート1eは、軸方向に2箇所設けられており、第1の吐出ポート1eの断面形状(つまり、シリンダ内周面1b側の開口部形状)は長穴状となっている。ここで、第1の吐出ポート1eの周方向の幅は、後述する第1のベーン部5のベーン5a及び第2のベーン部6のベーン6aの先端部の幅よりも小さくなっている。これら第1の吐出ポート1eの出口部には、第1の吐出弁44、及び第1の吐出弁44の開度を規制するための第1の吐出弁押え45が取付けられている。また、シリンダ1の外周部には軸方向に貫通した油戻し穴1fが設けられている。
(2)フレーム2:略円板状部材の上部に円筒状部材が設けられたものであり、縦断面が略T字形状となっている。略円板状部材は、シリンダ1の穴の一方の開口(図2では上側)を閉塞する(塞ぐ)ものである。この略円板状部材のシリンダ1側端面(図2では下面)には、シリンダ1のシリンダ内周面1bと同心である有底円筒形状の凹部2aが形成されている。凹部2aには後述する第1のベーン部5のベーンアライナ5c及び第2のベーン部6のベーンアライナ6cが挿入され、凹部2aの外周面であるベーンアライナ軸受部2bで支承(回転及び摺動自在に支持)される。また、フレーム2は、略円板状部材のシリンダ1側端面から略円筒状部材を貫通するように、貫通孔が形成されている。この貫通孔には、主軸受部2cが設けられている。主軸受部2cは、後述するロータシャフト4の回転軸部4bを支承するものである。
また、フレーム2には、後述するロータ内部流路301と特定の回転位相において連通する位置に(図2、図4、図6に図示)、例えば軸方向に貫通したフレーム内部流路302が設けられている。さらに、フレーム2には、吐出空間41に連通した連通路2eが軸方向に貫通して設けられている。ここで、ロータ内部流路301がこの発明の第1流路に相当し、フレーム内部流路302がこの発明の第2流路に相当する。
なお、フレーム内部流路302の貫通方向は、軸方向に貫通している必要は必ずしもなく任意である。フレーム内部流路302は、一方がシリンダ1側の面(ロータ内部流路301が形成された側のロータ部4aの端面と対向する面)に開口し、他方が圧縮要素101の圧縮空間の外部となる密閉容器103の内部に開口していればよい。
また、凹部2aは、シリンダ内周面1bと同心となる外周面(ベーンアライナ軸受部2b)を有していればよく、有底円筒形状に限定されるものではない。例えば、凹部2aを、シリンダ内周面1bと同心となる外周面(ベーンアライナ軸受部2b)を有するリング状の溝に形成してもよい。
(3)シリンダヘッド3:略円板状部材の下部に円筒状部材が設けられたものであり、縦断面が略T字形状となっている。略円板状部材は、シリンダ1の穴の他方の開口(図2では下側)を閉塞する(塞ぐ)ものである。この略円板状部材のシリンダ1側端面(図2では上面)には、シリンダ1のシリンダ内周面1bと同心である有底円筒形状の凹部3aが形成されている。凹部3aには、後述する第1のベーン部5のベーンアライナ5d及び第2のベーン部6のベーンアライナ6dが挿入され、凹部3aの外周面であるベーンアライナ軸受部3bで支承される。また、シリンダヘッド3は、略円板状部材のシリンダ1側端面から略円筒状部材を貫通するように、貫通孔が形成されている。この貫通孔には、主軸受部3cが設けられている。主軸受部3cは、後述するロータシャフト4の回転軸部4cを支承するものである。
なお、凹部3aは、シリンダ内周面1bと同心となる外周面(ベーンアライナ軸受部2b)を有していればよく、有底円筒形状に限定されるものではない。例えば、凹部3aを、シリンダ内周面1bと同心となる外周面(ベーンアライナ軸受部2b)を有するリング状の溝に形成してもよい。
(4)ロータシャフト4:シリンダ1内でシリンダ1(より詳しくはシリンダ内周面1b)の中心軸とは偏心した(ずれた)中心軸で回転運動を行う略円筒形状のロータ部4a、ロータ部4aと同心となるようにロータ部4aの上部に設けられた回転軸部4b、及び、ロータ部4aと同心となるようにロータ部4aの下部に設けられた回転軸部4cを備えている。回転軸部4b及び回転軸部4cは、上述のように、主軸受部2c及び主軸受部3cに支承されるものである。また、ロータ部4aには、軸方向に貫通する複数の略円筒状(断面が略円形)の貫通孔(ブッシュ保持部4d,4e及びベーン逃がし部4f,4g)が形成されている。これら貫通孔のうち、ブッシュ保持部4dとベーン逃がし部4fとが側面部において連通しており、ブッシュ保持部4eとベーン逃がし部4gとが側面部において連通している。また、ブッシュ保持部4d及びブッシュ保持部4eは、その側面部がロータ部4aの外周部側に開口している。また、ベーン逃がし部4f及びベーン逃がし部4gの軸方向端部はフレーム2の凹部2a及びシリンダヘッド3の凹部3aと連通している。また、ブッシュ保持部4dとブッシュ保持部4e、ベーン逃がし部4fとベーン逃がし部4gとは、ロータ部4aの回転軸に対してほぼ対称の位置に配置されている(図4参照)。
また、ロータシャフト4の下端部には、例えば特開2009−264175号公報に記載されているような油ポンプ31(図1にのみ図示)が設けられている。この油ポンプ31は、ロータシャフト4の遠心力を利用して油溜め104内の冷凍機油25を吸引するものである。この油ポンプ31はロータシャフト4の軸中央部に設けられ軸方向に延在する給油路4hと連通しており、給油路4hと凹部2a間には給油路4i、給油路4hと凹部3a間には給油路4jが設けられている。また、回転軸部4bの主軸受部2cの上方の位置に排油穴4k(図1にのみ図示)が設けられている。
さらに、本実施の形態1に係るロータ部4aには、ベーンよりも回転方向側(圧縮行程の下流側)に、ロータ部4aのフレーム2側の端面と外周面とを連通するロータ内部流路301が形成されている。本実施の形態1では2つのベーンを備えているため、各ベーンに対応して2つのロータ内部流路301が形成されている。詳しくは、後述する第1のベーン部5のベーン5aに対応して、該ベーン5a(換言するとブッシュ保持部4d)よりも回転方向側に第1のロータ内部流路301aが設けられている。また、後述する第2のベーン部6のベーン6aに対応して、該ベーン6a(換言するとブッシュ保持部4e)よりも回転方向側に第2のロータ内部流路301bが設けられている。
(5)第1のベーン部5:ベーン5a、ベーンアライナ5c及びベーンアライナ5dが一体形成されて構成されている。ベーン5aは、側面視略四角形の板状部材であり、シリンダ1のシリンダ内周面1b側に位置するベーン先端部5b(ロータ部4aから突出する側の先端部)は、平面視において外側に円弧形状に形成されている。このベーン先端部5bの円弧形状の半径は、シリンダ1のシリンダ内周面1bの半径とほぼ同等の半径で構成されている。また、ベーン5aのベーン先端部5bと反対側の端部(以下、内周側端部と称する)近傍には、上面(フレーム2との対向面)に、ベーン5aを支持する部分リング形状(リング形状の一部分の形状、円弧形状)のベーンアライナ5cが設けられている。同様に、ベーン5aの内周側端部近傍には、下面(シリンダヘッド3との対向面)に、ベーン5aを支持する部分リング形状のベーンアライナ5dが設けられている。ここで、ベーン5a、ベーンアライナ5c及びベーンアライナ5dは、ベーン5aのベーン長手方向及びベーン先端部5bの円弧の法線方向がベーンアライナ5c,5dを形成する円弧形状部の中心を通るように形成されている。
(6)第2のベーン部6:ベーン6a、ベーンアライナ6c及びベーンアライナ6dが一体形成されて構成されている。ベーン6aは、側面視略四角形の板状部材であり、シリンダ1のシリンダ内周面1b側に位置するベーン先端部6b(ロータ部4aから突出する側の先端部)は、平面視において外側に円弧形状に形成されている。このベーン先端部6bの円弧形状の半径は、シリンダ1のシリンダ内周面1bの半径とほぼ同等の半径で構成されている。また、ベーン6aのベーン先端部6bの内周側端部近傍には、上面(フレーム2との対向面)に、ベーン5aを支持する部分リング形状のベーンアライナ6cが設けられている。同様に、ベーン6aの内周側端部近傍には、下面(シリンダヘッド3との対向面)に、ベーン5aを支持する部分リング形状のベーンアライナ6dが設けられている。ここで、ベーン6a、ベーンアライナ6c及びベーンアライナ6dは、ベーン6aのベーン長手方向及びベーン先端部6bの円弧の法線方向がベーンアライナ6c,6dを形成する円弧形状部の中心を通るように形成されている。
(7)ブッシュ7,8:略半円柱状の部材を一対として構成される。ブッシュ7は、第1のベーン部5のベーン5aを挟持した状態で、ロータ部4aのブッシュ保持部4dに回転自在に挿入される。また、ブッシュ8は、第2のベーン部6のベーン6aを挟持した状態で、ロータ部4aのブッシュ保持部4eに回転自在に挿入される。つまり、第1のベーン部5のベーン5aがブッシュ7の間を摺動することにより、第1のベーン部5はロータ部4aに対して略法線方向(シリンダ1のシリンダ内周面1bの中心に対して略法線方向)に移動(スライド)することができる。また、ブッシュ7がロータ部4aのブッシュ保持部4d内で回転することにより、第1のベーン部5は揺動することができる(回転可能となる)。同様に、第2のベーン部6のベーン6aがブッシュ8の間を摺動することにより、第2のベーン部6はロータ部4aに対して略法線方向に移動(スライド)することができる。また、ブッシュ8がロータ部4aのブッシュ保持部4e内で回転することにより、第2のベーン部6は揺動することができる(回転可能となる)。なお、図4に示す7a,8aはブッシュ中心で、それぞれブッシュ7,8の回転中心である。
(動作説明)
続いて、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の動作について説明する。
図4に示すように、ロータシャフト4のロータ部4aとシリンダ1のシリンダ内周面1bは一箇所(図4に示す最近接点32)において最近接している。
ここで、ベーンアライナ軸受部2b,3bの半径をra(後述する図8参照)、シリンダ内周面1bの半径をrc(図4参照)としたとき、第1のベーン部5のベーンアライナ5c,5dの外周面側とベーン先端部5b間の距離rv(図3参照)は、下式(1)のように設定している。
rv=rc−ra−δ…(1)
δはベーン先端部5bとシリンダ内周面1b間の隙間であり、式(1)のようにrvを設定することで、第1のベーン部5はシリンダ内周面1bに接触することなく、回転することとなる。ここで、δが極力小さくなるようにrvを設定し、ベーン先端部5bからの冷媒の漏れを極力少なくしている。なお、式(1)の関係は、第2のベーン部6においても同様で、第2のベーン部6のベーン先端部6bとシリンダ内周面1b間は狭い隙間を保ちつつ、第2のベーン部6は回転することとなる。
以上のように、第1のベーン部5とシリンダ内周面1b、第2のベーン部6とシリンダ内周面1bとがそれぞれ狭い隙間を保つことにより、シリンダ1のシリンダ内周面1bとロータ部4aとの間に形成された圧縮空間は、最近接点32、第1のベーン部5のベーン5a及び第2のベーン部6のベーン6aで仕切られて、3つの空間(吸入室9、中間室10、圧縮室11)が形成される(図4に図示)。吸入室9には、切欠き部1cを介して、冷凍サイクルの低圧側に連通する吸入ポート1aが開口している。切欠き部1cは、図4(回転角度90°)において、最近接点32の近傍から、第1のベーン部5のベーン先端部5bとシリンダ内周面1bが相対する点Bの範囲まで設けられている。
まず、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の回転動作について説明する。
ロータシャフト4の回転軸部4bが駆動部である電動要素102からの回転動力を受けると、ロータ部4aは、シリンダ1内で回転する。ロータ部4aの回転に伴い、ロータ部4aの外周付近に配置されたブッシュ保持部4d,4eは、ロータシャフト4を回転軸(中心軸)とした円周上を移動する。そして、ブッシュ保持部4d,4e内に保持されている一対のブッシュ7,8、及びその一対のブッシュ7,8の間に摺動可能に保持されている第1のベーン部5のベーン5a及び第2のベーン部6のベーン6aもロータ部4aとともに回転する。
第1のベーン部5及び第2のベーン部6は、回転による遠心力を受け、ベーンアライナ5c,6c及びベーンアライナ5d,6dがベーンアライナ軸受部2b,3bにそれぞれ押付けられて摺動しながら、ベーンアライナ軸受部2b,3bの中心軸まわりに回転する。ここで、上述のように、ベーンアライナ軸受部2b,3bとシリンダ内周面1bとは同心である。このため、第1のベーン部5及び第2のベーン部6はシリンダ内周面1bの中心まわりに回転することになる。そうすると、第1のベーン部5のベーン5a及び第2のベーン部6のベーン6aの長手方向がシリンダ中心に向かうように、ブッシュ7,8がブッシュ保持部4d,4e内で、ブッシュ中心7a,8aまわりに回転することになる。
以上の動作において、回転に伴って、ブッシュ7と第1のベーン部5のベーン5aの側面、及び、ブッシュ8と第2のベーン部6のベーン6aの側面は互いに摺動を行う。また、ロータシャフト4のブッシュ保持部4dとブッシュ7、ブッシュ保持部4eとブッシュ8も互いに摺動することになる。
図6は、この発明の実施の形態1に係る圧縮要素の圧縮動作を示す説明図である。この図6は、図1のI−I線に沿った断面図である。以下、この図6を参照しながら、ロータ部4a(ロータシャフト4)の回転に伴い吸入室9、中間室10及び圧縮室11の容積が変化する様子、及び、ガスの吸入および吐出の状況を説明する。
先ず、ロータシャフト4の回転に伴い、吸入管26から低圧のガスが吸入ポート1aに流入する。ここで、各空間(吸入室9、中間室10、圧縮室11)の容積変化を説明するにあたり、ロータ部4a(ロータシャフト4)の回転位相を次のように定義する。まず、第1のベーン部5のベーン5aとシリンダ1のシリンダ内周面1bとの相対する一箇所(対向する一箇所)が最近接点32と一致する状態を、「角度0°」と定義する。図6では、「角度0°」、「角度45°」、「角度90°」、「角度135°」の状態において、第1のベーン部5のベーン5a及び第2のベーン部6のベーン6aの位置と、そのときの吸入室9、中間室10及び圧縮室11の状態を示している。
なお、図6の「角度0°」の図に示す矢印は、ロータシャフト4の回転方向(図6では時計方向)である。但し、他の図では、ロータシャフト4の回転方向を示す矢印は省略している。また、図6において「角度180°」以降の状態を示していないのは、「角度180°」になると、「角度0°」において第1のベーン部5と第2のベーン部6が入れ替わった状態と同じになり、以降は「角度0°」から「角度135°」までと同じ圧縮動作となるためである。
図6における「角度0°」では、最近接点32と第2のベーン部6のベーン6aで仕切られた右側の空間は中間室10で、切欠き部1cを介して吸入ポート1aと連通しており、ガス(冷媒)を吸入する。最近接点32と第2のベーン部6のベーン6aで仕切られた左側の空間は、第1の吐出ポート1eに連通した圧縮室11となる。なお、「角度0°」では、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bは、フレーム内部流路302と連通していない。
図6における「角度45°」では、第1のベーン部5のベーン5aと最近接点32で仕切られた空間は、切欠き部1cを介して吸入ポート1aと連通している吸入室9となる。また、第1のベーン部5のベーン5aと第2のベーン部6のベーン6aで仕切られた空間は中間室10となる。この状態では、吸入室9及び中間室10が、切欠き部1cを介して吸入ポート1aと連通している。中間室10の容積は「角度0°」のときより大きくなるので、ガスの吸入を続ける。また、第2のベーン部6のベーン6aと最近接点32で仕切られた空間は圧縮室11で、圧縮室11の容積は「角度0°」のときより小さくなり、ガスは圧縮されて徐々にその圧力が高くなる。
ここで、圧縮室11内の圧力が冷凍サイクルの高圧を上回ると、第1の吐出弁44が開き、圧縮室11内のガスは、第1の吐出ポート1eから吐出空間41及び連通路2eを通って密閉容器103内に吐出される。一方で、「角度45°」では、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bはフレーム内部流路302と連通していないため、これらを介してガスが吐出されることはない。
密閉容器103内に吐出されたガスは、電動要素102を通過して密閉容器103の上部に固定(溶接)された吐出管24から外部(冷凍サイクルの高圧側)に吐出される(図1に実線で図示)。したがって、密閉容器103内の圧力は高圧である吐出圧力となる。なお、図6においては、「角度45°」において、圧縮室11内の圧力が高圧を上回った場合を示している。
図6における「角度90°」では、第1のベーン部5のベーン5aのベーン先端部5bがシリンダ1のシリンダ内周面1b上の点Bと重なるので、中間室10は吸入ポート1aと連通しなくなる。これにより、中間室10でのガスの吸入は終了する。また、この状態で、中間室10の容積は略最大となる。吸入室9の容積は「角度45°」のときより大きくなり、吸入を続ける。圧縮室11の容積は「角度45°」のときより更に小さくなるので、圧縮室11内のガスは、第1の吐出ポート1eから吐出空間41及び連通路2eを通って密閉容器103内に吐出される。さらに、「角度90°」では、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302が連通しているため、これらを介した経路からも、圧縮室11から密閉容器103へガスが吐出される。つまり、「角度45°」のときと異なり、圧縮室11内から密閉容器103へガスが吐出される経路は2つとなる。
図6における「角度135°」では、中間室10の容積は「角度90°」ときより小さくなり、ガスの圧力は上昇する。また、吸入室9の容積は「角度90°」のときより大きくなり、吸入を続ける。ここで、第2のベーン部6のベーン6aは、第1の吐出ポート1eを通過しており、第1の吐出ポート1eは中間室10に開口するため、第1の吐出弁44は圧力差によって閉じる。一方、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302は連通したままで、圧縮室11の容積は「角度90°」のときより更に小さくなるので、第2のロータ内部流路301b及びフレーム内部流路302を介して圧縮室11内のガスが吐出されることになる。つまり、「角度135°」では、「角度90°」のときと異なり、圧縮室11内から密閉容器103へガスが吐出される経路は1つとなる。
その後、第2のロータ内部流路301bがフレーム内部流路302を通過すると(第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302との連通が終了すると)、圧縮室11には高圧の冷媒が若干残る(ロスとなる)。そして、「角度180°」(図示せず)で、圧縮室11が消滅したとき、この高圧の冷媒は吸入室9にて低圧の冷媒に変化する。なお、「角度180°」では吸入室9が中間室10に移行し、中間室10が圧縮室11に移行して、以降圧縮動作を繰り返す。
このように、ロータ部4a(ロータシャフト4)の回転により、吸入室9は徐々に容積が大きくなり、ガスの吸入を続ける。以後中間室10に移行するが、途中まで容積が徐々に大きくなり、更にガスの吸入を続ける。途中で、中間室10の容積は最大となり、吸入ポート1aに連通しなくなるので、ここでガスの吸入を終了する。以後、中間室10の容積は徐々に小さくなり、ガスを圧縮する。その後、中間室10は圧縮室11に移行して、ガスの圧縮を続ける。所定の圧力まで圧縮されたガスは、第1の吐出ポート1eを通って第1の吐出弁44を押し上げて、密閉容器103内に吐出される。さらに、所定の圧力まで圧縮された圧縮室11内のガスは、第2のロータ内部流路301bがフレーム内部流路302と連通すると、第2のロータ内部流路301bからもフレーム内部流路302を介して密閉容器103内に吐出される。その後、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1eを通過すると、第1の吐出弁44は閉じ、圧縮されたガスは第2のロータ内部流路301bからのみ密閉容器103内に吐出されることになる。以上、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302の関係について示したが、第1のロータ内部流路301aとフレーム内部流路302においても同様の動作を行う。
図8は、この発明の実施の形態1に係るベーンアライナの回転動作を説明するための説明図であり、図1のII−II線に沿った断面図である。なお、図8では、ベーンアライナ5c,6cの回転動作を示している。また、図8の「角度0°」の図に示す矢印は、ベーンアライナ5c,6cの回転方向(図8では時計方向)である。但し、他の図では、ベーンアライナ5c,6cの回転方向を示す矢印は省略している。
ロータシャフト4の回転によって、第1のベーン部5のベーン5a及び第2のベーン部6のベーン6aがシリンダ1の中心軸周りに回転する(図6参照)。これにより、ベーンアライナ5c,6cは、図8に示すように、ベーンアライナ軸受部2bに支持されて、凹部2a内をシリンダ内周面1bの中心軸周りに回転する。なお、この動作は凹部3a内をベーンアライナ軸受部2bに支持されて回転するベーンアライナ5d,6dについても同様である。
上記のガス圧縮動作においてロータシャフト4が回転することにより、図1に破線矢印で示すように、油ポンプ31によって油溜め104から冷凍機油25が吸い上げられ、給油路4hに送り出される。給油路4hに送り出された冷凍機油25は、給油路4iを通ってフレーム2の凹部2a、給油路4jを通ってシリンダヘッド3の凹部3aに送り出される。
凹部2a,3aに送り出された冷凍機油25は、ベーンアライナ軸受部2b,3bを潤滑するとともに、その一部は凹部2a,3aと連通したベーン逃がし部4f,4gに供給される。ここで、密閉容器103内の圧力は高圧である吐出圧力になっているため、凹部2a,3a及びベーン逃がし部4f,4g内の圧力も吐出圧力となる。また、凹部2a,3aに送り出された冷凍機油25の一部は、フレーム2の主軸受部2c及びシリンダヘッド3の主軸受部3cに供給される。
ベーン逃がし部4f,4gに送り出された冷凍機油25は、次のように流れることとなる。
図9は、この発明の実施の形態1に係るベーン部のベーン近傍を示す要部拡大図である。なお、図9は、図4における第1のベーン部5のベーン5a近傍を示す要部拡大図となっており、図中に実線で示す矢印は冷凍機油25の流れを示している。
上述のようにベーン逃がし部4fの圧力は吐出圧力であり、吸入室9及び中間室10の圧力より高いため、冷凍機油25は、ベーン5aの側面とブッシュ7間の摺動部を潤滑しながら、圧力差及び遠心力によって吸入室9及び中間室10に送り出される。また、冷凍機油25は、ブッシュ7とロータシャフト4のブッシュ保持部4d間の摺動部を潤滑しながら、圧力差及び遠心力によって吸入室9及び中間室10に送り出される。また、中間室10に送り出された冷凍機油25の一部は、ベーン先端部5bとシリンダ1のシリンダ内周面1b間の隙間をシールしながら吸入室9に流入する。
なお、図9では、第1のベーン部5で仕切られる空間が吸入室9と中間室10である場合について示したが、回転が進んで、第1のベーン部5で仕切られる空間が中間室10と圧縮室11となる場合でも同様である。また、圧縮室11内の圧力がベーン逃がし部4fの圧力と同じ吐出圧力に達した場合でも、遠心力によって、冷凍機油25は圧縮室11に向かって送り出されることになる。なお、以上の動作は第1のベーン部5に対して示したが、第2のベーン部6においても同様の動作を行う。
上記の給油動作において、図1に示すように、主軸受部2cに供給された冷凍機油25は主軸受部2cの隙間を通ってフレーム2の上方の空間に吐き出された後、シリンダ1の外周部に設けた油戻し穴1fより、油溜め104に戻される。また、主軸受部3cに供給された冷凍機油25は主軸受部3cの隙間を通って油溜め104に戻される。また、ベーン逃がし部4f,4gを介して吸入室9、中間室10及び圧縮室11に送り出された冷凍機油25も、最終的にガスとともに、第1の吐出ポート1e及び連通路2e介して、あるいはロータ内部流路301及びフレーム内部流路302を介してフレーム2の上方の空間に吐き出された後、シリンダ1の外周部に設けた油戻し穴1fより、油溜め104に戻される。また、油ポンプ31により給油路4hに送り出された冷凍機油25のうち、余剰な冷凍機油25はロータシャフト4の上方の排油穴4kから、フレーム2の上方の空間に吐き出された後、シリンダ1の外周部に設けた油戻し穴1fより、油溜め104に戻される。
以上に示したような動作において、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、吐出行程における圧力損失を低減でき、かつ、最近接点32におけるシール性を確保しつつ残留ガスの異常昇圧を抑制することができるという効果を得ることができる。以下、当該効果が容易に理解できるように、圧縮室11からガスを吐出する動作について、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と、ロータ内部流路301及びフレーム内部流路302を備えていないベーン型圧縮機と、を比較しながら説明する。
なお、以下では、図6と後述の図7を用い、第2のベーン部6に着目して、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と、ロータ内部流路301及びフレーム内部流路302を備えていないベーン型圧縮機と、を比較する。なお、第1のベーン部5についても、第2のベーン部6と同様となる。
図7は、比較例であるベーン型圧縮機における圧縮要素の圧縮動作を示す説明図である。この図7は、図1のI−I線に沿った断面図に相当する位置を示している。図7に示す比較例であるベーン型圧縮機は、本実施の形態1に係る第1の吐出ポート1eに相当する吐出ポート1dを備えているが、本実施の形態1に係るロータ内部流路301及びフレーム内部流路302を備えていない構成となっている。このため、図7に示すベーン型圧縮機は、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200と比べ、残留ガスの異常昇圧による損失が発生しやすいので、吐出ポート1dが位相角度の大きい位置(圧縮行程の下流側となる位置)に形成されている。また、吐出ポート1dの出口部には、吐出弁42、及び吐出弁42の開度を規制するための吐出弁押え43が取付けられている。
まず、第2のベーン部6のベーン6aが吐出ポートを通過するまでの状態について比較する。
上述のように、図7に示す比較例のベーン型圧縮機の吐出ポート1dは、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の第1の吐出ポート1eと比べ、位相角度の大きい位置に形成されている。このため、図7に示す比較例のベーン型圧縮機は、吐出ポート1dの位置における圧縮室11の流路幅(径方向の長さ)が極めて小さくなっており、流路面積も僅かである。そうすると、圧縮室11内のガスは吐出ポート1dに流入する前に、流速が速くなり、吐出ポート1dの大きさに関わらず、圧力損失が大きくなってしまう。一方、図6に示すように、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200の第1の吐出ポート1eは、後述のように残留ガスの異常昇圧を抑制できるため、吐出ポート1dよりも位相角度の小さい位置(圧縮行程の上流側となる位置)に設けられている。つまり、第1の吐出ポート1eの位置における圧縮室11の流路幅(流路面積)は大きくなっている。このため、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、圧縮室11内のガスが第1の吐出ポート1eに流入する前の流速も遅くなるので、圧力損失を小さくすることができる。
次に、第2のベーン部6のベーン6aが吐出ポートを通過してからの状態について比較する。
図6の「角度135°」に示すように、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1eを通過した時点で、第1の吐出ポート1eからの吐出は終了し、圧縮室11のガスは第2のロータ内部流路301bからフレーム内部流路302を介してのみ、密閉容器103へ吐出される。このとき、吐出経路が2経路から1経路に切り替わるが、第2のロータ内部流路301bからフレーム内部流路302を介した経路には吐出弁が無いため、吐出弁が有る場合に比べてスムーズに切り替えることができる。
さらに、この時点においても、図7に示す比較例のベーン型圧縮機に比べて、圧縮室11の流路幅(径方向の長さ)が大きい領域で吐出流路を確保することができるため、流路面積を大きく設定することができ、圧力損失を低減することができる。
そして、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200においては、第2のロータ内部流路301b及びフレーム内部流路302を介しての圧縮室11からのガスの吐出は、第2のロータ内部流路301bがフレーム内部流路302を通過するまで継続する。そのため、この間は圧縮室11が密閉されることによる異常昇圧は生じない。
その後、第2のロータ内部流路301bがフレーム内部流路302を通過する回転位相から、第2のベーン部6のベーン6aが最近接点32を通過するまでの回転位相においては、圧縮室11が密閉空間となるため残留ガスの昇圧が生じる。但し、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200においては、ロータ部4aに形成された第2のロータ内部流路301bとフレーム2に形成されたフレーム内部流路302とによって、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1eを通過した後の圧縮室11からガスを吐出する構成となっている。つまり、特許文献2に開示されたベーン型圧縮機と異なり、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200においては、シリンダ内周面以外の場所に形成された流路によって、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1eを通過した後の圧縮室11からガスを吐出する構成となっている。このため、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、第2のロータ内部流路301bの配置を第2のベーン部6の近傍に、また、フレーム内部流路302の配置を最近接点32の近傍に配置し、第2のベーン部6のベーン6aが最近接点32を通過する直前まで第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302とが連通する構成としても、最近接点32におけるシール性を確保することができる。つまり、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、最近接点32におけるシール性を確保しつつ、残留ガスの容積を微小にすることができ、残留ガスの異常昇圧を抑制することができる。
なお、第2のロータ内部流路301bが最近接点32を通過する際に、第2のロータ内部流路301bが圧縮室11と吸入室9を連通する漏れ経路となるが、前述した通り、この時点での圧縮室11の残留ガスの容積を微小にできるため、漏れによる損失を限りなく軽微にできる。
以上、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、第1の吐出ポート1eを位相角度の小さい位置に形成できる。また、第2のロータ内部流路301b及びフレーム内部流路302によって、最近接点32におけるシール性を確保しつつ、残留ガスの容積を微小にすることができる。このため、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、吐出行程における圧力損失を低減でき、かつ、最近接点32におけるシール性を確保しつつ残留ガスの異常昇圧を抑制することができるという効果を得ることができる。
つぎに、圧縮室11からガスを吐出する動作において、第2のベーン部6が第1の吐出ポート1eを通過するときのガスの挙動について説明する。
図10は、ベーンが第1の吐出ポートを通過するときのガスの挙動を説明するための説明図である。この図10は、第2のベーン部6のベーン先端部6bが第1の吐出ポート1eの位置にあるときの第2のベーン部6のベーン6aまわりの要部断面図である。より詳しくは、図10(a)は、ベーン先端部6bの形状が本実施の形態1で示した形状(ベーン先端部6bの円弧形状の半径がシリンダ内周面1bの半径とほぼ同等の半径)となっている場合を示している。また、図10(b)は、ベーン先端部6bの形状が一般的なベーン型圧縮機(例えば特許文献1や特許文献2に記載されているベーン型圧縮機のように、ベーンがロータ部に形成されたベーン溝に摺動自在に設けられているもの)の形状となっている場合を示している。
図10(a)に示すように、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200は、第2のベーン部6のベーン先端部6bの円弧形状の半径がシリンダ内周面1bの半径とほぼ同等の半径となっている。このため、第2のベーン部6のベーン先端部6bとシリンダ内周面1bとの間の隙間は、ベーン先端部6bの幅全体にわたって微小隙間δとなっている(式(1)参照)。一方、第1の吐出ポート1eの周方向の幅は、第2のベーン部6のベーン先端部6bの幅よりも小さくなっている。このため、第2のベーン部6が第1の吐出ポート1eを通過する場合でも、ベーン先端部6bとシリンダ内周面1bとの間の隙間はδのままである。したがって、ベーン先端部6bとシリンダ内周面1b間の隙間を通って圧縮室11から中間室10へ漏れるガスの量を極めて少なく抑えることができる。
一方、図10(b)に示すように、ベーン先端部6bの形状が一般的なベーン型圧縮機の形状となっている場合、第2のベーン部6のベーン先端部6bの円弧形状の半径は、シリンダ内周面1bの半径よりもかなり小さく構成されている。このため、ベーン先端部6bとシリンダ内周面1bとの隙間は、ベーン先端部6bとシリンダ内周面1b間の接触位置51(シリンダ内周面1bの第1の吐出ポート1eが設けられていない軸方向の箇所とベーン先端部6bとの接触位置)から離れるにしたがって大きくなる。このため、第1の吐出ポート1eの周方向の幅を第2のベーン部6のベーン先端部6bの幅より小さく形成しても、図に破線で示すように、第1の吐出ポート1eを介して、圧縮室11から中間室10への漏れ経路ができる。したがって、ベーン先端部6bとシリンダ内周面1b間の隙間を通って圧縮室11から中間室10へ漏れるガスの量が増大することになる。
上記のベーン先端部6bとシリンダ内周面1b間の隙間を通って圧縮室11から中間室10へ漏れるガスの量の差は、以下の理由によって生じるものである。つまり、特許文献1や特許文献2に記載されているような一般的なベーン型圧縮機の場合、ベーン先端部6b(及び5b)を構成する円弧形状の半径をシリンダ内周面1bの半径よりも小さく構成せざるを得ない。これは、特許文献1や特許文献2に記載されているような一般的なベーン型圧縮機においてはロータ部4aの中心とシリンダ内周面1bの中心が偏心しており、ベーンがロータ部4aの中心を回転軸として回転しているためである。つまり、ベーン先端部6b(及び5b)の円弧形状部分とシリンダ内周面1bが常に摺動するためには、ベーン先端部6b(及び5b)の円弧形状の半径をシリンダ内周面1bの半径より小さくする必要があるためである。一方、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200においては、第1のベーン部5及び第2のベーン部6がシリンダ内周面1bの中心を回転軸として回転するように構成しているので(換言すると、ベーン先端部5b,6bの円弧形状の法線とシリンダ内周面1bの法線が常に略一致して圧縮動作を行うことができるので)、ベーン先端部6b(及び5b)の円弧形状の半径とシリンダ内周面1bの半径を同等または同等近くに設定することができる。
したがって、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200のような形状に第1のベーン部5のベーン先端部5b及び第2のベーン部6のベーン先端部6bを形成することにより、第1のベーン部5及び第2のベーン部6が第1の吐出ポート1eを通過する際のガス漏れを抑制できるので、損失の極めて少ない高効率のベーン型圧縮機200を得ることができる。
なお、本実施の形態1においては、第1の吐出ポート1eの周方向の幅を第1のベーン部5のベーン先端部5bの幅及び第2のベーン部6のベーン先端部6bの幅よりも小さく形成したが、第1の吐出ポート1eの周方向の幅は、第1のベーン部5のベーン先端部5bの幅及び第2のベーン部6のベーン先端部6bの幅と同等までは大きくすることが可能である。
以上、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機200を説明してきたが、上述したベーン型圧縮機200の構成はあくまでも一例である。例えば、本実施の形態1では第1の吐出ポート1eを2つ設けたが、これはあくまでも一例であり、第1の吐出ポート1eの構成は上記の構成に限定されるものではない。
図11は、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機の第1の吐出ポートの別の一例を示す説明図である。この図11は、図2及び図4における矢視A図である。
例えば図11に示すように、第1の吐出ポート1eを1つとしてもよい。また、第1の吐出ポート1eを3つ以上設けても勿論よい。また、第1の吐出ポート1eの断面形状も長穴状に限定されるものではなく、周方向の幅が第1のベーン部5のベーン先端部5bの幅及び第2のベーン部6のベーン先端部6bの幅以下であれば任意の形状でよい。
また、本実施の形態1ではロータ内部流路301及びフレーム内部流路302の断面形状については特に言及しなかったが、ロータ内部流路301及びフレーム内部流路302の断面形状によってこの発明が限定されることはなく、ロータ内部流路301及びフレーム内部流路302は種々の断面形状で形成することができる。
図12は、本実施の形態1に係るベーン型圧縮機のロータ内部流路の断面形状一例を示す説明図である。この図12は、ロータ内部流路301及びフレーム内部流路302近傍の縦断面図を示している。
例えば図12(a)に示すように、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bを、底部が円弧状となるように形成してもよい。第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bに流入したガスは、円弧状の底部に沿ってフレーム内部流路302に流入することとなるので、ガスが第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bを通過する際の圧力損失を抑制できる。また例えば、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bの加工性等を考慮して、図12(b)に示すように、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bを断面四角形状に形成してもよい。また例えば、図12(c)に示すように、ロータ部4aの外周面から形成された孔とロータ部4aの端面から形成された孔とを連通させ、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bを形成してもよい。このように第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bを形成することにより、第1のロータ内部流路301a及び第2のロータ内部流路301bが最近接点32を通過する際に形成される漏れ経路(圧縮室11と吸入室9を連通する漏れ経路)を小さくすることができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、第1の吐出ポート1eのみが形成されたベーン型圧縮機200について説明した。これに限らず、位相角度の異なる複数の位置に吐出ポートを形成してもよい。なお、本実施の形態2で特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
図13は、本実施の形態2に係るベーン型圧縮機の圧縮要素を示す断面図である。この図13は、図1のI−I線に沿った断面図であり、図6における回転位相が90°の状態を示している。
図13に示すように、本実施の形態2に係るベーン型圧縮機200は、実施の形態1で示した構成に加え、第2の吐出ポート1gを備えている。第2の吐出ポート1gは、第1の吐出ポート1eよりも位相角度の小さい位置に径方向に貫通して設けられている。また、第2の吐出ポート1gの周方向の幅は、第1のベーン部5のベーン先端部5bの幅及び第2のベーン部6のベーン先端部6bの幅よりも小さくなっている。また、第2の吐出ポート1gの出口部には、第2の吐出弁46、及び第2の吐出弁46の開度を規制するための第2の吐出弁押え47が取付けられている。
また、本実施の形態2に係るベーン型圧縮機200は、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1e(吐出ポートのうち、最も位相角度の大きい吐出ポート)と対向する前の回転位相で、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302とが連通し始め、第2のベーン部6のベーン6aが最近接点32を通過する回転位相となる前に、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302との連通が終了する構成となっている。なお、第1のロータ内部流路301aとフレーム内部流路302との関係も、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302との関係と同様である。
以上、本実施の形態2においては、第2の吐出ポート1gを第1の吐出ポート1eよりも位相角度の小さい位置に設けたので、第2の吐出ポート1gの位置における圧縮室11の流路幅(流路面積)は第1の吐出ポート1eの位置における圧縮室11の流路幅(流路面積)よりもさらに大きくなっている。このため、圧縮室11内のガスが第2の吐出ポート1gに流入する前のガスの流速は、実施の形態1において説明した第1の吐出ポート1eに流入する前のガスの流速よりも遅く、このため圧力損失をより小さくすることができる。
なお、本実施の形態2では、位相角度の異なる2箇所に吐出ポート(第1の吐出ポート1e、第2の吐出ポート1g)を形成したが、位相角度の異なる3箇所以上の位置に吐出ポートを形成しても、上記と同様の効果を得ることができる。
実施の形態3.
実施の形態1及び実施の形態2では、第1のベーン部5のベーン5aが第1の吐出ポート1eと対向する前の回転位相で、第1のロータ内部流路301aとフレーム内部流路302とが連通し始め、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1eと対向する前の回転位相で、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302とが連通し始める構成となっていた。しかしながら、ロータ内部流路301(第1のロータ内部流路301a、第2のロータ内部流路301b)とフレーム内部流路302で形成される経路は、残留ガスの異常昇圧を抑制するための経路である。このため、ロータ内部流路301とフレーム内部流路302との連通開始タイミングは、実施の形態1及び実施の形態2で示したタイミングに限定されず、例えば以下のようなタイミングでもよい。なお、本実施の形態3で特に記述しない項目については実施の形態1又は実施の形態2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
図14は、本実施の形態3に係るベーン型圧縮機の圧縮要素を示す断面図である。この図14は、図1のI−I線に沿った断面図であり、第2のベーン部6のベーン6a(より詳しくはベーン先端部6b)が第1の吐出ポート1eの位置にある状態を示している(図6における回転角度90°と回転角度135°の間の回転位相に相当)。
図14に示すように、本実施の形態3に係るベーン型圧縮機200は、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302とが連通する回転位相を、第2のベーン部6のベーン6aが第1の吐出ポート1eの位置にある回転位相と同じとしている。換言すると、第2のベーン部6のベーン6aと第1の吐出ポート1eとが対向する位置で、第2のロータ内部流路301bとフレーム内部流路302とが連通し始める構成となっている。なお、第1のロータ内部流路301aとフレーム内部流路302との連通開始タイミングも同様であり、第1のベーン部5のベーン5aと第1の吐出ポート1eとが対向する位置で、第1のロータ内部流路301aとフレーム内部流路302とが連通し始める。
すなわち、本実施の形態3に係るベーン型圧縮機200は、実施の形態1及び実施の形態2で示したベーン型圧縮機200に比べて、フレーム内部流路302の周方向長さを短く設定している。これにより、本実施の形態3に係るベーン型圧縮機200は、実施の形態1及び実施の形態2に比べて、ロータ部4aの端面の微小隙間を介して発生する、常に高圧となっているフレーム内部流路302から高圧に達する前の回転位相における圧縮室11へのガス漏れによる損失を低減することができる。
実施の形態4.
実施の形態1〜実施の形態3では、ベーン(第1のベーン部5及び第2のベーン部6)がシリンダ内周面1bの中心を回転軸として回転する圧縮要素101を備えたベーン型圧縮機200について説明した。これに限らず、ベーンがロータ部の中心を回転軸として回転する圧縮要素を備えたベーン型圧縮機にロータ内部流路及びフレーム内部流路を設けても、この発明を実施することができる。なお、本実施の形態4で特に記述しない項目については実施の形態1〜実施の形態3と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
図15は、この発明の実施の形態4に係るベーン型圧縮機の圧縮要素を示す横断面図である。
図15に示すように、本実施の形態4に係るベーン型圧縮機200の圧縮要素400は、シリンダ401、ロータシャフト404(図15ではロータ部404aのみ図示)、2枚のベーン(第1のベーン405、第2のベーン406)等を備えている。
シリンダ401は、全体形状が略円筒状で、中心軸方向の両端部が開口している。また、本実施の形態4に係るベーン型圧縮機200は、吐出ポートに連通する圧縮室411が2つ形成される構成となっているので、シリンダ401のシリンダ内周面401bは略楕円形状となっている。そして、略楕円形状に形成されたシリンダ内周面401bの内側に、ロータシャフト404のロータ部404aが配置されている。このため、シリンダ内周面401bとロータ部404aとの最近接点432は、略楕円形状のシリンダ内周面401bにおける短軸上の2箇所に形成されている(最近接点432a,432b)。そして、シリンダ401内には、ロータ部404aの両側に2つの圧縮空間が形成されている。
ロータ部404aの両側に形成された2つの圧縮空間のそれぞれには、最近接点432a,432bの近傍(より詳しくは、ロータ部404aの回転方向側)に、シリンダ401に形成された吸入ポート401aが開口している。また、ロータ部404aの両側に形成された2つの圧縮空間のそれぞれには、最近接点432a,432bの近傍(より詳しくは、ロータ部404aの回転方向の逆側)に、シリンダ401を径方向に貫通する第1の吐出ポート401eが形成されている。そして、これら第1の吐出ポート401eの出口部は、第1の吐出ポート401eの径方向長さが短くなるように、大きく抉られている。この切欠き部分は、実施の形態1〜実施の形態3で示した吐出空間41に相当する吐出空間441となっている。また、これら第1の吐出ポート401eの出口部には、第1の吐出弁444、及び第1の吐出弁444の開度を規制するための第1の吐出弁押え445が取付けられている。
また、シリンダ401には、少なくともシリンダ401の外周面側に開口したベーン溝が形成されている。2枚のベーン(第1のベーン405、第2のベーン406)のそれぞれは、シリンダ401に形成されたベーン溝に摺動自在に設けられている。このため、2枚のベーン(第1のベーン405、第2のベーン406)は、ロータ部404aの中心を回転軸として回転することとなる。そして、ロータ部404aの両側に形成された2つの圧縮空間のそれぞれは、第1のベーン405及び第2のベーン406で仕切られて、3つの空間(吸入室409、中間室410、圧縮室411)が形成される。
また、シリンダ401の穴の一方の開口を閉塞するフレームには、後述するロータ内部流路501と特定の回転位相において連通する位置に、フレーム内部流路502が設けられている。本実施の形態4では、ロータ部404aの両側に形成された2つの圧縮空間に対応して、2つのフレーム内部流路502(第1のフレーム内部流路502a、第2のフレーム内部流路502b)が形成されている。これら第1のフレーム内部流路502a及び第2のフレーム内部流路502bは、一方がシリンダ401側の面(ロータ内部流路501が形成された側のロータ部404aの端面と対向する面)に開口し、他方が圧縮要素400の圧縮空間の外部となる密閉容器103の内部に開口している。
ロータ内部流路501は、ベーンよりも回転方向側(圧縮行程の下流側)に、ロータ部404aのフレーム側の端面と外周面とを連通するように形成されている。本実施の形態4では2つのベーンを備えているため、各ベーンに対応して2つのロータ内部流路501(第1のロータ内部流路501a、第2のロータ内部流路501b)が形成されている。詳しくは、第1のベーン405に対応して、第1のベーン405よりも回転方向側に第1のロータ内部流路501aが設けられている。また、第2のベーン406に対応して、該第2のベーン406よりも回転方向側に第2のロータ内部流路501bが設けられている。
ここで、ロータ内部流路501がこの発明の第1流路に相当し、フレーム内部流路502がこの発明の第2流路に相当する。
次に、図15を参照しながら、ロータ部404aの回転に伴い吸入室409、中間室410及び圧縮室411の容積が変化する様子、及び、ガスの吸入および吐出の状況を説明する。
先ず、ロータシャフト404の回転に伴い、低圧のガスが2箇所の吸入ポート401aに流入する。ここで、各空間(吸入室409、中間室410、圧縮室411)の容積変化を説明するにあたり、ロータ部404aの回転位相を次のように定義する。まず、第1のベーン405と吸入ポート401aとが対向する状態を、「角度0°」と定義する。図15では、「角度0°」、「角度45°」、「角度90°」、「角度135°」の状態において、第1のベーン405及び第2のベーン406の位置と、そのときの吸入室409、中間室410及び圧縮室411の状態を示している。
なお、図15の「角度0°」の図に示す矢印は、ロータ部404aの回転方向(図15では時計方向)である。但し、他の図では、ロータシャフト4の回転方向を示す矢印は省略している。また、図15において「角度180°」以降の状態を示していないのは、「角度180°」になると、「角度0°」において第1のベーン405と第2のベーン406が入れ替わった状態と同じになり、以降は「角度0°」から「角度135°」までと同じ圧縮動作となるためである。
図15における「角度0°」の時点で、最近接点432bと第1のベーン405で仕切られた中間室410と吸入ポート1aとは連通しなくなり、ガスの圧縮を開始する。最近接点432aと第1のベーン405で仕切られた吸入室409は、吸入ポート401aと連通しており、ガスの吸入を続ける。なお、「角度0°」では、第1のロータ内部流路501aと第1のフレーム内部流路502aは連通していない。
同様に、図15における「角度0°」の時点では、最近接点432aと第2のベーン406で仕切られた中間室410と吸入ポート401aとは連通しなくなり、ガスの圧縮を開始する。最近接点432bと第2のベーン406で仕切られた吸入室409は、吸入ポート1aと連通しており、ガスの吸入を続ける。なお、「角度0°」では、第2のロータ内部流路501bと第2のフレーム内部流路502bは連通していない。
図15における「角度45°」では、第1のベーン405と最近接点432bで仕切られた空間は圧縮室411となり、「角度0°」のときより更に小さくなるので、第1の吐出ポート401eから圧縮室411内のガスが吐出される。一方で、「角度45°」では、第1のロータ内部流路501aと第1のフレーム内部流路502aは連通していないため、これらを介して吐出されることはない。さらに、第1のベーン405と最近接点432aで仕切られた吸入室409は、「角度0°」のときより更に大きくなるので、ガスの吸入を続ける。なお、図15においては、「角度45°」において、圧縮室411内の圧力が吐出圧力を上回った場合を示している。
同様に、図15における「角度45°」では、第2のベーン406と最近接点432aで仕切られた空間は圧縮室411となり、「角度0°」のときより更に小さくなるので、第1の吐出ポート401eから圧縮室411内のガスが吐出される。一方で、「角度45°」では、第2のロータ内部流路501bと第2のフレーム内部流路502bは連通していないため、これらを介して吐出されることはない。さらに、第2のベーン406と最近接点432bで仕切られた吸入室409は、「角度0°」のときより更に大きくなるので、ガスの吸入を続ける。なお、図15においては、「角度45°」において、圧縮室411内の圧力が吐出圧力を上回った場合を示している。
図15における「角度90°」では、第1のベーン405と最近接点432bで仕切られた圧縮室411は、「角度45°」のときより更に小さくなるので、第1の吐出ポート401eから圧縮室411内のガスが吐出される。一方で、「角度90°」では、第1のロータ内部流路501aと第1のフレーム内部流路502aとが連通しているため、これらを介した経路からも、圧縮室411からガスが吐出される。さらに、第1のベーン405と最近接点432aで仕切られた吸入室409は、「角度45°」のときより更に大きくなるので、ガスの吸入を続ける。つまり、「角度45°」のときと異なり、圧縮室411内からガスが吐出される経路は2つとなる。
同様に、図15における「角度90°」では、第2のベーン406と最近接点432aで仕切られた圧縮室411は、「角度45°」のときより更に小さくなるので、第1の吐出ポート401eから圧縮室411内のガスが吐出される。一方で、「角度90°」では、第2のロータ内部流路501bと第2のフレーム内部流路502bとが連通しているため、これらを介した経路からも、圧縮室411からガスが吐出される。さらに、第2のベーン406と最近接点432bで仕切られた吸入室409は、「角度45°」のときより更に大きくなるので、ガスの吸入を続ける。つまり、「角度45°」のときと異なり、圧縮室411内からガスが吐出される経路は2つとなる。
図15における「角度135°」では、第1のベーン405と最近接点432bで仕切られた圧縮室411は、「角度135°」のときより更に小さくなる。しかし、圧縮室411は第1の吐出ポート401eと連通していないため、第1の吐出ポート401eからガスは吐出されない。一方で、「角度90°」と同様にして、第1のロータ内部流路501aと第1のフレーム内部流路502aとが連通しているため、これらを介した経路からガスが吐出される。さらに、第1のベーン405と最近接点432aで仕切られた吸入室409は、「角度90°」のときより更に大きくなるので、ガスの吸入を続ける。つまり、「角度90°」のときと異なり、圧縮室411内からガスが吐出される経路は1つとなる。
同様に、図15における「角度135°」では、第2のベーン406と最近接点432aで仕切られた圧縮室411は、「角度135°」のときより更に小さくなる。しかし、圧縮室411は第1の吐出ポート401eと連通していないため、第1の吐出ポート401eからガスは吐出されない。一方で、「角度90°」と同様にして、第2のロータ内部流路501bと第2のフレーム内部流路502bとが連通しているため、これらを介した経路からガスが吐出される。さらに、第2のベーン406と最近接点432bで仕切られた吸入室409は、「角度90°」のときより更に大きくなるので、ガスの吸入を続ける。つまり、「角度90°」のときと異なり、圧縮室411内からガスが吐出される経路は1つとなる。
その後、第1のロータ内部流路501aが第1のフレーム内部流路502aを通過すると、圧縮室411に高圧のガスが若干残る(ロスとなる)。そして、「角度180°」(図示せず)で、圧縮室411が消滅したとき、この高圧のガスは吸入室409にて低圧のガスに変化する。同様に、第2のロータ内部流路501bが第2のフレーム内部流路502bを通過すると、圧縮室411に高圧のガスが若干残る(ロスとなる)。そして、「角度180°」(図示せず)で、圧縮室411が消滅したとき、この高圧のガスは吸入室409にて低圧のガスに変化する。なお、「角度180°」では吸入室409が中間室410に移行して、以降圧縮動作を繰り返す。
したがって、本実施の形態4に係るベーン型圧縮機200においても、第1の吐出ポート401eを位相角度の小さい位置に形成できる。また、ロータ内部流路501及びフレーム内部流路502によって、最近接点432におけるシール性を確保しつつ、残留ガスの容積を微小にすることができる。このため、本実施の形態4に係るベーン型圧縮機200も、吐出行程における圧力損失を低減でき、かつ、最近接点432におけるシール性を確保しつつ残留ガスの異常昇圧を抑制することができるという効果を得ることができる。
なお、実施の形態1〜実施の形態3ではベーン先端の曲率とシリンダ内壁の曲率とがほぼ同等の構成である。一方で、実施の形態4ではベーン先端の曲率がシリンダ内壁の曲率よりも小さい構成である。このため、ベーンが第1の吐出ポートを通過する際に発生するベーン先端を跨いだガスの漏れは、実施の形態1〜実施の形態3の方が実施の形態4に比べて小さくなる。すなわち、ベーンが第1の吐出ポートを通過する際に発生するベーン先端を跨いだガスの漏れを抑制する効果は、実施の形態1〜実施の形態3の方が実施の形態4に比べて大きい。
以上、上記の実施の形態1〜実施の形態4では、ベーン枚数が2枚の場合について示したが、ベーン枚数が1枚の場合でも3枚以上の場合でも同様の構成であり、同様の効果が得られる。
また、上記の実施の形態1〜実施の形態4ではロータシャフト4の遠心力を利用した油ポンプ31について示したが、油ポンプの形態はいずれでもよく、例えば特開2009−62820号公報に記載の容積形ポンプを油ポンプ31として用いてもよい。
また、上記の実施の形態1〜実施の形態4では、ロータ内部流路がフレーム内部流路と連通する場合について示したが、シリンダヘッドにシリンダ内部流路を設けてもよい。詳しくは、一方がシリンダ側の面に開口し、他方が圧縮要素の圧縮空間の外部となる密閉容器103の内部に開口しているシリンダ内部流路をシリンダヘッドに形成し、当該シリンダ内部流路とロータ内部流路とが特定の回転位相において連通する構成としてもよい。この場合、シリンダ内部流路がこの発明の第2流路に相当する。また、フレーム内部流路及びシリンダ内部流路の双方を設け、特定の回転位相において、フレーム内部流路及びシリンダ内部流路の双方とロータ内部流路とが連通する構成としてもよい。
このように構成しても、上記と同様の効果を得ることができる。
また、上記の実施の形態1〜実施の形態3ではベーンアライナ5c,5d,6c,6dを部分リング形状に形成したが、ベーンアライナ5c,5d,6c,6dをリング形状に形成してもよい。なお、ベーンアライナ5c,5d,6c,6dを部分リング形状に形成した場合、同一平面内に複数のベーンアライナを配置できるため、ベーン型圧縮機200を高さ方向にコンパクト化することができる。
また、上記の実施の形態1〜実施の形態3で説明したベーン角度調整手段(ベーンアライナ5c,5d,6c,6d、凹部2a,3aのベーンアライナ軸受部2b,3b、ブッシュ保持部4d,4e、及びブッシュ7,8)は一例であり、ベーン角度調整手段はこの構成に限定されるものではない。公知のベーン角度調整手段を用いてこの発明を実施することも可能であり、例えば特開2000−352390号公報に記載のベーン型圧縮機のように、ロータ部の内部を中空にし、その中にベーンをシリンダの内周面の中心にて回転可能に支持する固定軸を配置し、ベーンがロータ部に対して揺動可能となるようにロータ部の外周部近傍でブッシュを介してベーンを保持する構成としてもよい。このようなベーン角度調整手段においても、ベーンはシリンダの内周面の中心まわりに回転することになるので、ベーン先端部の円弧形状の半径とシリンダ内周面の半径を同等に設定することができ、実施の形態1〜実施の形態3と同様の効果が得られる。
また、上記の実施の形態1〜実施の形態4では、吐出ポートをシリンダ内周面に開口する構成としたが、吐出ポート(複数有る場合はその一部)をフレーム及びシリンダヘッドのうちの少なくとも一方に開口するものとしてもよい。
また、上記の実施の形態1〜実施の形態3では、ベーン5aとベーンアライナ5c,5dとを一体で形成し、ベーン6aとベーンアライナ6c,6dとを一体で形成した。しかしながら、ベーン5a,6aの長手方向とベーンアライナ5c,5d,6c,6fの外周面の法線とが一定の角度を保てる構成となっていれば、これらを別体で形成しても勿論よい。例えば図16に示すように、ベーン5a,6aに相当するベーン105と、ベーンアライナ5c,5d,6c,6dに相当するベーンアライナ106とを別々に形成すればよい。そして、ベーン105の凸部105aをベーンアライナ106の凹部106aに挿入し、ベーン105とベーンアライナ106とを一体に取り付けてもよい。このとき、ベーンアライナ106に対してベーン105がその長手方向に摺動自在となるように両者を接続してもよい。