JP5660716B2 - 電線保護チューブ - Google Patents

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Description

本発明は、自動車ワイヤーハーネスに使用される電線保護チューブに関するものである。
自動車ワイヤーハーネスの電線保護チューブは、被覆電線を束ねると共に他の自動車部品との接触に伴う衝撃や摩擦摩耗から被覆電線を保護する役目を担っているが、これまで主として軟質ポリ塩化ビニル(PVCともいう)から成形されていた。しかし、最近の地球環境対策を考慮して、ポリ塩化ビニルに代えてハロゲンフリー材料が使用されるようになっている。従来のハロゲンフリー材料は、耐熱性、耐摩耗性を重視して、オレフィン系エラストマー、例えばプロピレン−(エチレン−プロピレン)共重合体に難燃剤として金属水酸化物を添加した組成物が使用されている。
一方、自動車用ワイヤーハーネスの電線保護チューブには、近年、益々高い難燃性が要求されるようになっているが、上記のオレフィン系エラストマーと金属水酸化物を含む組成物では、要求される難燃性を満たすことができなくなっている。又、環境対策の一環として、自動車を軽量化して燃費を改善することが提起されているが、そのためには、ワイヤーハーネスなどの部品の軽量化も重要である。しかしながら、ポリ塩化ビニルや、オレフィン系エラストマーと金属水酸化物を含む組成物の比重は1.3以上あり、軽量化の妨げともなっている。
高度な難燃性と軽量化を目的として、臭素系難燃剤を配合させた樹脂組成物を用いることが提案されている。例えば、ポリプロピレンと、プロピレン単量体に基づく成分とエチレン単量体に基づく成分とを特定比率で有するプロピレン系ブロック共重合体とを混合してなる樹脂成分に、臭素系難燃剤及び難燃助剤を配合した樹脂組成物からなる電線保護チューブが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、断熱性や緩衝性を与えることを目的として、熱収縮性を有しない外層の内側に、熱発泡性を有する内層を積層するか、または熱収縮性を有する外層の内側に、熱発泡性を有する内層を積層した発泡被覆チューブが開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、発泡性ポリマーの内側層、及び前記内側層を密接に包囲する非発泡性−非熱収縮性ポリマーの外側層で構成され、外側層は内側層の融点よりも少なくとも60℃高い融点を有し、外側層の厚さ及び機械的強度は、内側層に発泡を生じさせるのに十分な温度でもシースが実質的に一定の外側寸法を有するように設計された二層被覆シースが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2002−356591号公報 特開平8−197665号公報 特表2003−534945号公報
特許文献1の電線保護チューブは難燃剤として臭素系難燃剤等を多量に含有する樹脂組成物であり、材料比重が大きいため、製品質量が重くなってしまうおそれがあり、近年の軽量化に対する要求に対して充分に対応できない場合がある。また、特許文献2,3のチューブは、緩衝性に優れるものの自動車ワイヤーハーネスの電線保護チューブとして用いるには耐摩耗性が十分ではない。
本発明は、前述した問題に鑑みてなされたものであり、軽量で耐摩耗性に優れ、しかも柔軟性を有して電線の組込み作業を容易に行うことができる特に自動車ワイヤーハーネスに使用される電線保護チューブを提供しようとするものである。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂を発泡させて得られる発泡層と特定の曲げ弾性率を有するポリアミド樹脂からなる層を含む中空チューブとすることにより、かかる課題を全て解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(1)〜()により達成される。
(1) 複数の樹脂層で構成された多層構造を有し、熱可塑性樹脂を発泡させて得られる発泡層と、該発泡層の外側に位置するポリアミド樹脂からなる層とを含み、該ポリアミド樹脂の曲げ弾性率が1.0〜2.7Gpaであり、該発泡層の発泡倍率が1.2〜3.0倍であり、該発泡層の平均気泡径が1.0〜100μmであることを特徴とする電線保護チュ一ブ。
(2) 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーであることを特徴とする上記(1)に記載の電線保護チューブ。
(3) 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系共重合体、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の電線保護チューブ。
(4) 前記ポリアミド樹脂からなる層が、チューブ全体の厚さの1〜30%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の電線保護チューブ。
本発明は、発泡層と特定の曲げ弾性率を有するポリアミド樹脂からなる層とを備えたチューブとすることで、軽量で、耐摩耗性に優れ、かつ柔軟な電線保護チューブを得ることができる。また、柔軟性を有することにより、電線の組み込み作業を容易に行うことができる。
本発明の電線保護チューブについて詳細に説明する。
本発明の電線保護チューブは、複数の樹脂層で構成された多層構造を有する中空チューブであって、内層に熱可塑性樹脂を発泡させて得られた発泡層を有し、外層に特定の曲げ弾性率を有するポリアミド樹脂からなる層を有するものである。
上記熱可塑性樹脂は、内部発泡層を構成するものであり、該発泡層は電線保護チューブの最内層を構成し、電線保護チューブを軽量化するとともに、外部からの衝撃を緩衝してワイヤーハーネスを保護することができる。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーが挙げられ、オレフィン系共重合体、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。前記群より選択された1種の中には、ポリアミド樹脂からなる層との接着性を考慮し、無水マレイン酸などで酸変性された樹脂を含んでいてもよい。また、酸変性された樹脂は中間層として単独で使用してもよい。
本発明において使用されるオレフィン系共重合体は、ポリプロピレン又はプロピレンと炭素数が2個以上のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数が2個以上のα−オレフィンの具体例としてはエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等がある。
又、上記ポリオレフィン系共重合体以外に、例えば、エチレン−エチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリクロロプレン、ハロゲン化ポリエチレン、ハロゲン化ポリプロピレン、フッ素樹脂、アクリロニトリルーブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリブタジエンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等を更に配合しても良い。
本発明に使用するオレフィン系エラストマーは、ソフトセグメントであるゴム成分と、ハードセグメントであるオレフィン系樹脂(エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂など)とを主成分として有するエラストマーであれば特に限定されない。例えば、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴムなどの合成ゴム;エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、ポリブテン、塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
本発明に使用するスチレン系エラストマーは、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体であるが、スチレン・エチレンブテン・スチレン共重合体、スチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・エチレンプロピレン・スチレン共重合体、スチレン・ブチレン・スチレン共重合体等が挙げられ、これらの水素添加ポリマーや部分水素添加ポリマーを例示できる。また無水マレイン酸等のカルボン酸を導入したものを適宜ブレンドして使用することもできる。
この中でも、スチレンとゴム成分のブロック共重合エラストマーを使用すると、押出加工性が向上することに加え、引張破断伸びが向上し、また耐衝撃性が向上するなどの点で好ましい。
熱可塑性樹脂を発泡させる手段としては、内層(発泡層)が所望の発泡倍率及び平均気泡径を有すれば特に限定されない。例えば、マイクロセルラーフォームのように溶融した樹脂に炭酸ガスや窒素ガスを溶融させて、物理的放圧によるガスの膨張を利用した物理発泡や、溶融した樹脂内で発泡剤が分解して発生するガスを大気中に放圧することで膨張して気泡になることを利用した化学発泡などが挙げられ、どちらを用いても構わない。また、発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても構わない。
内層に添加される化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物が挙げられる。
化学発泡剤の添加量は、通常、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内で添加するのが好ましく、0.2〜5質量部の範囲内で添加するのがより好ましい。化学発泡剤の添加量が上記範囲であると、熱可塑性樹脂を所望の発泡倍率及び平均気泡径となるように発泡させることができるとともに、電線への密着力も十分である。
化学発泡剤を用いて発泡層を形成するには、公知の方法を用いればよく、発泡剤を熱可塑樹脂に混練して加熱等により発泡させて連続空孔を形成させる方法が挙げられる。
物理発泡剤としては、窒素ガス、炭酸ガス、ブタン、イソブタン、プロパン等が挙げられる。
物理発泡剤の添加量は、通常、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部の範囲内で添加するのが好ましく、0.2〜5質量部の範囲内で添加するのがさらに好ましい。物理発泡剤の添加量が上記範囲であると、熱可塑性樹脂を所望の発泡倍率及び平均気泡径となるように発泡させることができるとともに、電線への密着力も十分である。
物理発泡剤を用いて発泡層を形成するには、公知の方法を用いればよく、押出機側に物理発泡剤を外部から熱可塑性樹脂に注入して発泡させる方法が挙げられる。
発泡層は、軽量化のため発泡倍率が1.2〜3.0倍であることが好ましく、1.2〜2.0倍がより好ましい。また、破断強度を考慮すると、平均気泡径は1.0〜100μmであることが好ましく、10〜50μmがより好ましい。発泡倍率が1.2倍以上であると、十分な緩衝性が得られ、3.0倍以下であると、十分な伸び、破断強度が得られるため好ましい。また、平均気泡径が1.0μm以上であると、十分な緩衝性が得られ、100μm以下であると、十分な伸び、破断強度が得られるため好ましい。
なお、発泡体の平均気泡径は、例えば、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定することが出来る。具体的には、発泡層をMD方向(押出方向)及びTD方向(押出方向に直交する方向)に沿って切断し、それぞれの切断面の中央部を走査型電子顕微鏡を用いて10倍〜200倍に拡大して撮影し、気泡径を測定する。
発泡倍率は発泡前後の発泡層(発泡体)の密度を測定し、下式により算出する。
発泡倍率={(発泡前の密度−発泡後の密度)}/発泡前の密度
発泡層には、発泡剤の発泡温度を下げて、当該発泡層の発泡を効率よく行うために、たとえば尿素化合物、亜鉛華、三塩基性硫酸鉛、ステアリン酸亜鉛等の発泡助剤を添加してもよい。
本発明の内層(発泡層)には、本発明の目的を損なわない限り、耐熱性や耐候性の向上又は増量などを目的として、その他の添加剤、例えば、無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなど)、無機又は有機繊維状物(ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維など)、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤)、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤などを含んでいてもよい。
本発明において、発泡体となる内層表面にホットメルト接着剤層を設けることにより、被覆される被覆体(すなわち、ワイヤーハーネス)との密着性を高めることができる。ホットメルト接着剤は、内層の発泡温度以下の融点を有し、発泡が進行する間に、溶融軟化し得る材料を選択すべきである。このようなホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂などを挙げることができる。
次に、外層を構成するポリアミド樹脂について説明する。
上記ポリアミド樹脂は、電線保護チューブに柔軟性を与えると共に耐摩擦性を高めるために設けられる層であり、電線保護チューブの外層を構成するものである。ポリアミド樹脂は、重縮合反応で合成されるn−ナイロンと、共縮重合反応で合成されるn,m−ナイロンのいずれを用いても構わない。また、両者を共重合させて得られるポリアミド(ナイロン)が使用される。
ポリアミド樹脂としては、6−ナイロン樹脂、12−ナイロン樹脂、6,6−ナイロン樹脂、6,12−ナイロン樹脂等が好ましく使用できる。特に共重合ナイロン樹脂は押出加工性が良いため好ましく使用できる。これらの樹脂は単独で添加しても良いが、ポリアミド樹脂のポリマーアロイとして市販されている樹脂を使用することもできる。
本発明において、ポリアミド樹脂の曲げ弾性率は1.0〜2.7GPaであり、1.5〜2.7GPaが好ましく、2.0〜2.7GPaがより好ましい。ポリアミド樹脂の曲げ弾性率が1.0GPa以上であると十分に磨耗性を得ることができ、2.7GPa以下であると十分に柔軟性を得ることができる。
本発明のポリアミド樹脂に添加する可塑剤は、スルホンアミド系可塑剤等を使用することができる。スルホンアミド系可塑剤の具体例としては、ブチルベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、N−エチル−p−トルエンスルホンアミド、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
また、ポリアミド樹脂成分には、臭素系難燃剤、窒素系難燃剤及び難燃助剤を配合してもよい。
臭素系難燃剤の種類は特に限定されず、従来より樹脂やゴム等の難燃剤として使用されている臭素系難燃剤が使用できるが、中でもテトラブロモビスフェノールA−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールS−ビス(2,3−ジブロモプロピル)エーテル及びトリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートを好適に用いることができる。
窒素系難燃剤の具体例としては、シアヌル酸またはその誘導体(例えばトリメチルシアヌレート)、イソシアヌル酸またはその誘導体(トリエチルイソシアヌレート)、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)またはその誘導体(例えばメラミンシアヌレート、メラミントリイソシアヌレート、N−フェニルメラミン)、シアングアニジン(ジシアンジアミド)、アミド化合物(例えば、マロン酸ジアミド、シアノアセトアミド、アジピン酸アセトアミド)、ジオキシキノキサリン、尿素などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に用いられる難燃助剤としては、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、ホウ酸亜鉛及びホウ砂等のホウ素化合物を挙げることができる。
本発明のポリアミド樹脂からなる層には酸化防止剤を配合することが好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン酸系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤及びヒドロキノン誘導体等から選ばれる1種以上を使用することができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−sec−ブチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2′−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ヒンダートフェノール系の化合物としては、例えば、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、ヒンダート・ビスフェノール等が挙げられる。
リン酸系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ及び/あるいはジノニルフェニル)ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジブチルハイドロゲンホスファイト、ジステアリル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、亜リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル・チオジプロピオネート、ジステアリル・チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3′−チオジプロピオネート、ジトリデシル−3,3′−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリル−チオプロピオネート)、チオジプロピオン酸ジラウリル、β−アルキルチオエステル・プロピオネート、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジオクタデシルスルフィド等が挙げられる。
アミン系酸化防止剤は、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエン・スルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4′−(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、4,4′−ジオクチル・ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、ジオクチル化ジフェニルアミン、p,p′−ジオクチル−ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
ヒドロキノン誘導体としては、例えば、2,5−ジ−(t−アミル)ヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ヒドロキノン=モノメチルエーテル等が挙げられる。
電線保護チューブに熱収縮性を付与するため、例えば、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、テトラメチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチラウムモノサルファイド等のチラウム系化合物、ジンクメチルジチオカーバメート、ジチオカーバメート等のジチオカルバミン酸塩素化合物等の架橋剤を使用することが出来る。
本発明の配合樹脂組成物を、通常の成形方法、例えば押出成形などを使用してチューブ状に成形することができる。ここで成形条件は特に限定されず、従来の成形方法の場合と同様の条件を採用することができる。
本発明の熱可塑性樹脂を発泡させて得られた発泡層(すなわち、内層)とポリアミド樹脂からなる層(すなわち、外層)とからなる電線保護チューブを製造する方法としては、例えば、(1)発泡体層、非発泡体層およびホットメルト接着剤層を多層押出機で同時押出する方法、(2)発泡体層とホットメルト接着剤層を同時押出し、その上に非発泡体層を押出被覆する方法、あるいは(3)発泡体層を押出機で押出して発泡させた後、非発泡体層とホットメルト接着剤層を同時押出する方法等があり、任意の方法が採用できる。製造工程を少なくするためには、全層を同時押出する方法が好ましい。
このようにして得られた多層チューブは、チューブ内径方向の径大化(膨張)を行なうことにより、熱収縮性を付与し、発泡体熱収縮チューブとする。径大化処理は、通常、加熱下に、チューブ内にエアー圧を加えるか、チューブ外部に真空圧を加えるか、あるいは両者を組み合わせることにより内径方向に膨張させることにより行なう。所定の内径寸法まで膨張したら、冷却して形状を固定する。得られた発泡体熱収縮チューブは、再加熱すると、元の形状にまで収縮する。
本発明の電線保護チューブの外径及び内径は、特に限定されず、用途に応じて選択できる。また、各層の厚みの割合は、使用目的に応じて適宜定めることができる。軽量性、柔軟性を考慮すると、ポリアミド樹脂からなる外層の占める割合は、チューブの全体厚さの1〜30%であることが好ましく、2〜15%がより好ましく、5〜10%がさらに好ましい。1%以上であると十分な磨耗性が得られ、30%以下であると十分な柔軟性が得られる。
尚、本発明の電線保護チューブには、発泡層である内層とポリアミド樹脂からなる外層の間に必要に応じて中間層を設けてもよい。中間層は、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体をもつ変性エチレン・α−オレフィン共重合体からなり、内外層との接着力を有する特徴を示すものが好適である。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はそれらに限定されるものではない。
実施例および比較例において採用した測定方法と試験方法は次のとおりである。
[曲げ弾性率]
射出成形により作成した1/8インチ曲げ試験片を用い、ASTM D−790に準拠して測定した。
[耐摩耗性試験]
長さ約10cmの電線保護チューブに直径5mmの金属棒を挿通してサンプルホルダーに載置して固定する。太さが0.45mm±0.01mmのスプリングワイヤーを電線保護チューブに接しさせて、10N±Nの加重を加えて往復させた(往復距離14mm)。チューブ層が摩耗してスプリングワイヤーが貫通するまでの往復回数を測定した。
[軽量性試験]
外径11mm、内径10mm、長さ1mの電線保護チューブの重量を測定した。一般的な電線保護チューブの材料であるオレフィン系エラストマーに難燃剤として金属水酸化物を添加した組成物の重量:15g/mを基準として、重量が15g/m未満のものを「O」、15g/m以上のものを「×」とした。
[屈曲柔軟性]
各々10個ずつ作製した実施例および比較例の試供品を、それぞれ先端側領域の中心の位置で90°に折り曲げ、座屈が生じるかどうかを試験した。座屈が生じなかったものを「○」、座屈数が1/10以上であったものを「×」とした。
[発泡倍率]
発泡体を約100mm(押出方向)×50mm(幅方向)×5mm(厚み方向)の直方体形状に切り出して重量を測定するとともに、ノギスで縦、横、高さ寸法を測定した。測定された各寸法から発泡体密度を求め、単位をkg/mに換算した。
発泡倍率は発泡前後の発泡体の密度を測定し、下式により算出した。
発泡倍率={(発泡前の密度−発泡後の密度)}/発泡前の密度
[平均気泡径]
押出発泡体を幅方向(押出方向と直交する水平方向)に沿って垂直(厚さ方向)に切断した断面においてサンプリングし、そのサンプルを走査型電子顕微鏡にて30倍に拡大して写真撮影した。得られた写真から平均気泡径をASTMD−3576に準じて測定した。写真撮影した範囲の実寸法は約5mm×5mmであった。サンプリングの位置は押出発泡体の端部の特殊な気泡構造の部分を除けば、押出発泡体の何処でサンプリングしてもよいが、本実施例では、押出発泡体(厚さ:20〜40mm、幅:約150mm)の幅方向の中央の位置で、厚さの中心及び上下対称位置の3点をサンプリングした。気泡径(μm)は3点の各サンプリング部位で得られた値の平均値とした。
<熱可塑性樹脂組成物の調製>
電線保護チューブの内層用の熱可塑性樹脂として、ノバテックHB332R(日本ポリエチレン株式会社製,密度0.95,MI0.30)、ノバテックLV113(日本ポリエチレン株式会社製,EV含量4質量%,MI0.30)、タフテックH1062(旭化成株式会社製)、タフテックM1943(旭化成株式会社製)及びR110E(株式会社プライムポリマー製)を表1に示す配合比に従って溶融混練りし、二軸押出機(スクリュー径37mm)を使用してペレット化して、熱可塑性樹脂組成物a1〜a7を調製した。
Figure 0005660716
<実施例1〜12>
外層として、表2に記載のポリアミド樹脂(A)〜(C)を用い、内層として、表1の配合物から得られた熱可塑性樹脂組成物と発泡剤を用いて、表2に示す構成で単軸押出機(スクリュー径40mm、L/D=25)にて外形11mm、内径10mmの多層チューブ(電線保護チューブ)を成形した。なお、実施例1〜7、9、11は、外層厚みは0.1mm、内層厚みは0.4mmであり、実施例8は、内層厚みを0.35mmとし、その上に中間層として厚みが0.05mmの変性オレフィン樹脂層を設け、実施例10は、外層厚みは0.15mm、内層厚みは0.35mmであり、実施例12は、外層厚みは0.2mm、内層厚みは0.3mmである。内層の押出温度は190℃、外層の押出温度は220℃であった。
最後に、保護チューブにエアー圧を加え、所定の内径にした後、冷却して形状を固定した。
耐摩耗性、軽量性、屈曲柔軟性、発泡倍率および平均気泡径について測定し、その結果を表2に示す。
<比較例1〜4>
外層として、表3に記載のポリアミド樹脂(A)またはHDPE(高密度ポリエチレン)を用い、内層として、表1の配合物から得られた熱可塑性樹脂組成物と発泡剤を用いて、表3に示す構成で単軸押出機(スクリュー径40mm、L/D=25)にて外形11mm、内径10mmの多層チューブ(電線保護チューブ)を成形した。なお、比較例1は、外層厚みは0.15mm、内層厚みは0.35mmであり、比較例2は、外層厚みは0.25mm、内層厚みは0.25mmであり、比較例3、4は、外層厚みは0.1mm、内層厚みは0.4mmである。内層の押出温度は190℃、外層の押出温度は220℃であった。
最後に、保護チューブにエアー圧を加え、所定の内径にした後、冷却して形状を固定した。
耐摩耗性、軽量性、屈曲柔軟性、発泡倍率および平均気泡径について測定し、その結果を表3に示す。
Figure 0005660716
Figure 0005660716
表2及び表3の結果から、実施例1〜10の電線保護チューブは、軽量で、耐摩耗性に優れ、且つ柔軟性にも優れていることがわかった。また、実施例11、12の電線保護チューブは、柔軟性はやや劣るものの、軽量性および耐摩耗性に優れるものであった。また、比較例1、2の電線保護チューブは、発泡層を含み軽量性は優れるものの、耐摩耗性に劣るものであり、比較例3、4の電線保護チューブは、軽量性に劣り、柔軟性も満足できるものではなかった。このことから、本発明の電線保護チューブは、熱可塑性樹脂を発泡させた発泡層を含むため、チューブの柔軟性、軽量性を向上できることがわかった。また、曲げ弾性率が1.0〜2.7GPaのポリアミド樹脂からなる層を含むことで、チューブの柔軟性、軽量性を保持したまま摩耗性を向上できることがわかった。
本発明は、軽量で耐摩耗性に優れ、難燃性が十分に高く、柔軟性を有しているので電線の組込み作業を容易に行うことができ、自動車等の過酷な条件で使用される電線保護チューブの薄肉化を図ることが可能となった。従って、特に自動車ワイヤーハーネスに使用される電線保護チューブとしての利用が期待される。

Claims (4)

  1. 複数の樹脂層で構成された多層構造を有し、熱可塑性樹脂を発泡させて得られる発泡層と、該発泡層の外側に位置するポリアミド樹脂からなる層とを含み、該ポリアミド樹脂の曲げ弾性率が1.0〜2.7Gpaであり、該発泡層の発泡倍率が1.2〜3.0倍であり、該発泡層の平均気泡径が1.0〜100μmであることを特徴とする電線保護チュ一ブ。
  2. 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の電線保護チューブ。
  3. 前記熱可塑性樹脂が、オレフィン系共重合体、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電線保護チューブ。
  4. 前記ポリアミド樹脂からなる層が、チューブ全体の厚さの1〜30%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電線保護チューブ。
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