JP5660595B2 - 導電紙とその製造方法、導電性セルロース組成物とその製造方法、物品、電子デバイス - Google Patents
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Description
例えば、下記特許文献1には、導電性高分子を内添した紙パルプを抄紙して導電性高分子複合紙を得ることが提案されている。
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、電子デバイスにも十分適用できる優れた導電性を備えた導電紙、及び導電性セルロース組成物と、それらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の導電紙は、セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質がカーボンナノチューブであることを特徴とする。
本発明の導電紙は、セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、イオン液体を含むことを特徴とする。
本発明の導電性セルロース組成物は、セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質が導電性ポリマーであることを特徴とする。
本発明の導電性セルロース組成物は、セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質がカーボンナノチューブであることを特徴とする。
本発明の導電性セルロース組成物は、セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、イオン液体を含むことを特徴とする。
本発明の導電紙の製造方法は、イオン液体と導電性物質との混合物を調製する工程1と、前記混合物にセルロースを分散させることにより、前記セルロースと前記導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態となった導電性セルロースを含む分散液を調製する工程2と、前記分散液を乾燥させる工程3と、を有することを特徴とする。
本発明の導電性セルロース組成物の製造方法は、イオン液体と導電性物質との混合物を調製する工程1と、前記混合物にセルロースを分散させることにより、前記セルロースと前記導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態となった導電性セルロースを含む分散液を調製する工程2と、を有することを特徴とする。
この導電紙は、セルロースと導電性物質とが互いに絡み合って相互に均一に分散した構造を有する。本発明の導電紙によれば、セルロースと導電性物質との混和物である導電性セルロースが絡み合って固体を構成しているため、内部に導電性物質のネットワークが形成され、良好な導電性を呈する。
セルロースと導電性物質の混和の程度は、これらの混和物を分散媒に分散させたときに相分離しない程度であればよい。さらにセルロースと導電性物質とが相互に分離不可能な程度に混合されていると、より良好な導電性が得られ、またリサイクル性にも優れた導電紙となる。
また上記導電紙は、導電性物質が導電性ポリマーであることも好ましい。
本発明の導電紙を構成する導電性物質として、カーボンナノチューブ又は導電性ポリマーを用いることで、優れた導電率を有する導電紙を構成することができる。
また本発明の電子デバイスは、本発明の導電紙、又は本発明の導電性セルロース組成物を備える。
この製造方法によれば、イオン液体の作用により導電性物質とイオン液体とが均一に分散した混合物を得ることができ、さらにこの混合物にセルロースを加えたときにも、イオン液体の作用によってセルロースと導電性物質とイオン液体とが均一に分散した分散液を得ることができる。これにより、セルロースと導電性物質とが混和した導電性セルロースを含む分散液を得ることができる。そして、分散液を乾燥させることで、導電性セルロースを有する導電紙を製造することができる。
また本発明によれば、導電性紙の高い導電率を利用した物品及び電子デバイスを提供することができる。
本発明の製造方法によれば、高い導電率を有する導電紙及び導電性セルロース組成物を容易に製造することができる。
本発明の導電性セルロース組成物は、セルロースと導電性物質とが混和した導電性セルロースを有するものであり、場合によっては、導電性セルロースに吸蔵されたイオン液体を含むものである。そして、本発明の導電性セルロース組成物は、イオン液体の有無、水や有機溶剤等の分散媒の有無や特性に応じて、例えば、液体状、ゲル状、固体状、紙状などの種々の形態を採りうる。
図1(a)に示すように、本発明に係る導電性セルロース組成物は、多数の導電性セルロース10を含む。個々の導電性セルロース10は、図1(b)に示すように、セルロース繊維11の周囲に導電性物質であるカーボンナノチューブ12が多数絡みついた構造を有している。
セルロース繊維11とカーボンナノチューブ12は、繊維同士が複雑に絡み合い、水や有機溶剤などの分散媒に導電性セルロース10を分散させてもセルロース繊維11とカーボンナノチューブ12とが相分離しない程度にまで混ざり合っている。このような状態を、本発明ではセルロースと導電性物質とが「混和した」状態と定義している。なお、混和しているセルロース繊維11とカーボンナノチューブ12とは、これらを損傷することなく分離することは不可能であり、分離不可能に混ざり合った状態ということもできる。
なお、図1に示す導電性セルロース10は、本発明に係る導電性セルロース組成物の一例を示したものであり、詳細は後述するが、導電性物質はカーボンナノチューブ12に限定されるものではなく、例えば金属ナノチューブや導電性ポリマーを用いることもできる。
また、セルロース(セルロース繊維11)と導電性物質(カーボンナノチューブ12)とが混和した導電性セルロース10により構成されるため、導電紙中に導電性物質の複雑なネットワークが形成されている。そのため、従来から知られている導電性物質を紙に含浸させた導電紙では到底得られなかった高い導電率を得ることができる。本発明に係る導電紙及び導電性セルロース組成物の好適な導電率に上限はないが、導電材料自体の導電率を凌駕する導電性を得ることはできない。導電率が1S/cm以上であれば、電子回路の配線として用いることができ好適である。
さらに、通常の紙が水に溶かすだけで容易にリサイクルできるのと同様に、本発明の導電紙は、水や溶剤に容易に再分散させることができる。したがって、熱などの高エネルギーを与えることなく容易にリサイクルすることができる。
なお、本発明に係る導電紙の導電性や曲げ耐性、リサイクル性については、後段の実施例において詳細に説明している。
まず、導電性セルロース10を構成する導電性物質としては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWNT)を含むカーボンナノチューブ12に限らず、銀をはじめとした金属ナノチューブ(金属ナノファイバー)、導電性ポリマーなど、導電性を有する材料であればいかなる導電性物質も用いることができる。
ただし、導電性物質はセルロースと混和させることができる形態である必要がある。そのため、導電性物質の種類は問わないが、セルロースの繊維と同等以下のサイズに製造又は加工された導電性物質が用いられる。
これは、導電性セルロース組成物中のカーボンナノチューブのネットワーク(編み目構造)が長いカーボンナノチューブにより構成された場合、より電気を通す経路が多く形成でき、かつ折り曲げた場合においてもネットワークがより破壊されにくいためである。
走査型原子間力顕微鏡で測定したカーボンナノチューブのバンドルの長さと、バンドルを構成するカーボンナノチューブの長さには相関性があり、長いカーボンナノチューブにより構成されるバンドルは長くなる。これにより、カーボンナノチューブの長さを評価可能である。
スーパーグロース法によるカーボンナノチューブの製造方法は、例えば、国際公開第06/011655号パンフレットに記載されている。スーパーグロース法は、水分添加CVD法によりカーボンナノチューブを合成する技術であり、長く高純度の単層カーボンナノチューブが得られる。スーパーグロース法では、成長基板上に垂直配向したカーボンナノチューブ配向集合体を成長させることができ、このカーボンナノチューブ配向集合体を成長基板から剥離して用いることができる。本発明においてこの剥離したカーボンナノチューブ配向集合体を用いる場合には、カーボンナノチューブ配向集合体の高さをカーボンナノチューブの長さとして規定することができる。
ここでいう純度とは、炭素純度であり、カーボンナノチューブの重量の何パーセントが炭素で構成されているかを示す。高導電性、高い伸長率を得る上での純度に上限はないが、製造上の都合から、99.9999%以上のカーボンナノチューブを得ることは困難である。金属などの不純物を含んで炭素純度が90%に満たないと、金属不純物が製造プロセス中に凝集し、カーボンナノチューブがセルロースの繊維に絡みづらくなって混和が不十分になるため、高導電性、高い曲げ耐性を得ることが困難となる。これらの点から、カーボンナノチューブの純度は90%以上であることが好ましい。
これは、高比表面積のカーボンナノチューブは、表面が多いため、導電性セルロース組成物の製造プロセスで用いるイオン液体との界面が多くなり相互作用しやすいためである。また、高比表面積のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ以外の炭素不純物、金属等の炭素以外の不純物の含有が少なく、上記した理由で好適である。比表面積が600m2/gに満たない単層カーボンナノチューブは、金属などの不純物もしくは炭素不純物を重量の数十パーセント(40%程度)含んでおり、単層カーボンナノチューブ本来の機能を発現することができず、不適である。
単層カーボンナノチューブの比表面積は、液体窒素の77Kでの吸脱着等温線の計測によって求めることができる。その一例として、単層CNT配向集合体30mgについて、BELSORP−MINI(株式会社日本ベル製)を用いて計測した吸脱着等温曲線から求めることができる(吸着平衡時間は600秒とした)。本発明で用いた、単層カーボンナノチューブの吸脱着等温曲線からBrunauer,Emmett,Tellerの方法で比表面積を計測したところ、1100m2/gであった。
なお、開口処理温度を350℃から600℃に変化させることにより、1000m2/g〜2300m2/gの範囲で単層カーボンナノチューブの比表面積を変化させることができ、かかる単層カーボンナノチューブは高い導電性を有する本発明のセルロース組成物を実現するのに好適である。
またセルロースとしては、天然セルロース、再生セルロース、綿セルロース、リンター、レイヨン、非晶セルロースなど、あらゆるセルロースを用いることができる。さらには、これらのパルプ、セルロースに限らず、水素結合を生じる繊維であれば原料として使用できるため、草・藁・竹などの原料からパルプを抽出したものでもかまわない。
例えば導電性物質としてカーボンナノチューブを用いる場合、本発明の導電性セルロース組成物においては、カーボンナノチューブが組成物内に均一分散されているほど高い導電性が得られる。つまり、高導電性及びしなやかさを兼ね備える本発明の導電性セルロース組成物を実現するためには、長く、純度が高く、比表面積が高いカーボンナノチューブを、その機能を損なわずに、如何にセルロース中に均一分散するかが肝要となる。
一般的には、カーボンナノチューブは非常に溶解性が低い材料で、セルロースとの親和性は低く、セルロース内に分散しない。そのために、カーボンナノチューブを均一分散し、高導電性及びしなやかさを兼ね備えた導電性セルロース組成物及び導電紙の実現は著しく困難であった。
例えば、特開2005−176428号公報に記述されているように、カーボンナノチューブとイオン液体は親和性が高く、カーボンナノチューブをイオン液体中に分散処理することで、ゲル状になる。このようにカーボンナノチューブとイオン液体のゲル状組成物が形成される詳しい機構は現時点では不明であるが、イオン液体が一本一本のカーボンナノチューブに吸着し、カーボンナノチューブ同士をくっつけているファンデルワールス力を弱めていると考えられる。その結果、通常容易にバンドル化するカーボンナノチューブが、イオン液体中で分散し、ゲル状組成物を形成する。いわば、カーボンナノチューブの分散剤としてイオン液体が機能すると考えられる。
混和により、導電性セルロース組成物が形成される詳しい機構は現時点では不明であるが、導電性物質に吸着したイオン液体が、セルロースとも親和性を持ち混和することで、導電性物質をセルロース中に溶け込ませることを可能にし、通常ではセルロース中に分散が困難なカーボンナノチューブなどの導電性物質がセルロース中に均一に分散するものと考える。
また本発明の導電紙の製造法は、上記知見に基づき成されたものであり、イオン液体と導電性物質との混合物を調製する工程1と、前記混合物にセルロースを分散させて分散液を調製する工程2と、前記分散液を乾燥させる工程3と、を有することを特徴とする。
図2は、本発明の一実施形態である導電紙の製造方法を示すフロー図である。図2に示すように、本発明の導電紙の製造方法は、導電性物質とイオン液体との混合物を調製する混合物調製工程S1と、得られた混合物にセルロースを分散させて分散液を調製する分散液調製工程S2とにより導電性セルロース組成物を作製する工程を含み、さらに得られた導電性セルロース組成物を乾燥させて導電紙を作製する乾燥工程S3を含む。導電紙からイオン液体を回収するイオン液体回収工程S4は、必要に応じて実施される工程である。
また、特に制限されるものではないが、導電性物質及びセルロースと親和性が高く、分散処理をした際にゲル状となるイオン液体は、本発明に係る導電性セルロース組成物の製造に有用である。
親水性のイオン液体を用いている場合には、水を好適な分散媒として用いることができる。一方、疎水性のイオン液体を用いている場合には、親水性有機溶剤を用いることが好ましい。有用な親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ギ酸、酢酸、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミドを挙げることができ、典型的な例はエタノールである。
なお、有機溶剤は、上記に限定されるものではなく、用いるセルロースを分散、溶解する溶剤を適宜選択して用いることができる。具体的にはトルエン、キシレン、四塩化炭素等も用いることが可能である。
なお、分散媒及びセルロースには混和可能な組み合わせを選択する。例えば、ミクロフィブリルセルロースはエタノールやメタノールなどの極性を持つ溶媒(上述した親水性有機溶剤)に溶解することができるため、これらの組み合わせは疎水性導電紙の製造に好適に用いることができる。
ただし、導電性セルロース組成物の成形加工は、分散液の状態で行う場合に限られない。すなわち、乾燥工程S3で導電性セルロース組成物を固化した後、得られた導電紙を所望の形状に機械加工してもよい。例えば、プレス加工などによって導電紙の厚みを薄くすることもできる。
イオン液体が除去された導電紙の導電性は、イオン液体を含む導電紙よりも低下する。しかしその一方で、導電紙から除去したイオン液体を回収し、図2に示すように、混合物調製工程S1で再利用することができる。これにより、製造コストを大幅に低減することができる。
そして、セルロースと導電性物質とが混和してなる導電性セルロースを均一に分散させた分散液から水や有機溶剤等を除去することで、導電性セルロースが絡み合い、内部に形成された導電性物質のネットワークによって高い導電性を発現する本発明の導電紙を得ることができる。
さらに、本発明の導電紙は、容易にリサイクルすることができる。図2に示すように、乾燥工程S3又はイオン液体回収工程S4を経て作製された導電紙は、溶解工程S5において液体に溶かすことで、導電性セルロースが均一に分散した分散液(導電性セルロース組成物)にすることができる。そして、導電紙を溶解して得られた分散液は、必要に応じて成形加工した後、再度乾燥工程S3に供することで、導電紙として再生することができる。
図3は、導電性物質としてカーボンナノチューブを用いた導電紙の製造プロセスの一例を示す図である。図3中、Step1、Step2、及びStep3は、本発明の導電紙の製造方法における混合物調製工程S1、分散液調製工程S2、及び乾燥工程S3にそれぞれ対応する。
また、イオン液体として、テトラフルオロホウ酸N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEMEBF4)を用いた。
次に、導電性物質として、高導電性ポリマーを用いた例を、図4を参照しつつ説明する。
図4は、導電性物質としてPEDOTを用いた導電紙の製造プロセスの一例を示す図である。図4中、Step1、Step2、及びStep3は、本発明の導電紙の製造方法における混合物調製工程S1、分散液調製工程S2、及び乾燥工程S3にそれぞれ対応する。
また、イオン液体として、テトラフルオロホウ酸N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(DEMEBF4)を用いた。
さらに、PEDOTの導電性を向上させる添加剤としてジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。
次に、上記カーボンナノチューブ及び高導電性ポリマーを用いた導電紙の導電率評価を行った結果について説明する。評価に際しては、上記に説明した各製造プロセスにより、セルロース含有量5〜66wt%の範囲で代えた複数種類の導電紙を作製し、それらについて導電率の測定を行った。導電率測定は高精度電源測定ユニットを用いた四端子法により行なった。
図7は、本実施例で作製したカーボンナノチューブ導電紙及びPEDOT−PSS導電紙を曲げたときの曲げ半径に対する抵抗値の変化を示すグラフである。測定は、正確な機械式ステージを備えた応力装置を用いて導電紙を曲げ、曲げた後の抵抗値を測定することにより行った。
図8は、本実施例で作製したカーボンナノチューブ導電紙及びPEDOT−PSS導電紙の伝送特性を測定した結果を示すグラフである。銅配線における測定結果も比較のために示してある。
測定は、ネットワーク分析装置(Agilent社製4395A)を用いて行なった。測定に用いたカーボンナノチューブ導電紙及びPEDOT−PSS導電紙の長さ、幅、厚さは、それぞれ、30mm、5mm、70μmとした。
本発明の導電紙の別の重要な利点は、紙の中を流れる電流がイオンではなく電子に依存していることにある。これにより、図示のようにMHz領域で優れた電気的特性を実現することができる。
図9(a)に示すように、カーボンナノチューブ導電紙を通じて伝送できる最大電力は35Wであり、PEDOT−PSS導電紙を通じて伝送できる最大電力は38Wであった。伝送特性の測定は、13.56MHzの電力発生装置(ULVAC社製RGN−1302)と、伝送される電力を測定するためのスペクトル分析装置(Agilent社製4395A)を用いて行なった。
また、図9(b)に示すように、ばらつきはあるものの、カーボンナノチューブ導電紙、PEDOT−PSS導電紙のいずれも、300℃まで加熱した後も優れた導電率を保持しており、耐熱性にも優れていることが確認された。
カーボンナノチューブ導電紙及びPEDOT−PSS導電紙は、いずれも水を用いてリサイクルすることができる。これらの導電紙を水に浸すと、導電性セルロース間の水素結合が水によって弱くなる。その結果、紙を形成している導電性セルロースが急速に水に溶解し、導電性セルロースが分散した分散液に戻る。その後、得られた分散液を乾燥させることで、精製などの追加の工程を経ることなしに導電紙を形成することができる。かかる導電紙の再生は、印刷により形成された回路パターンに対しても、全く同様にして行うことができる。
リサイクル方法は、まず、カーボンナノチューブ導電紙及びPEDOT−PSS導電紙を、30℃の水中で1時間攪拌してこれらの導電紙を溶解させ、カーボンナノチューブ分散水溶液及びPEDOT−PSS分散ゲル水溶液とする。その後、得られた分散液をドロップキャスティングによって再びPTFEプレートの上に注ぎ、24時間かけて風乾させ、それぞれカーボンナノチューブ導電紙及びPEDOT−PSS導電紙として再生する。以上の工程を1サイクルとして、図10に示すように10回のリサイクルを行い、リサイクルする度に導電率の測定を行った。
このように、極めて容易に、かつ、極めて多数回にわたってリサイクルが可能であることは、省資源、環境保護の観点からばかりでなく、電気・電子回路の作成効率の観点からも極めて多大な利点をもたらすものである。また、このように加熱プロセスまたは高エネルギープロセスを必要としないリサイクル可能な導体はこれまで報告されていない新規な導電性材料である。
導電紙は、親水性イオン液体を用いて作製すると親水性となり、親水性イオン液体の代わりに疎水性イオン液体を用いると疎水性となる。
また同様にして、先のPEDOT−PSS導電紙の製造工程において、DEMETFSIを疎水性イオン液体として使用し、分散媒としてエタノールを使用して疎水性のPEDOT−PSS導電紙を作製した。
図13に示すように、疎水性のカーボンナノチューブ導電紙は、水に浸しても抵抗値がまったく変化しなかった。これに対して、親水性のカーボンナノチューブ導電紙は、浸漬直後から抵抗値が上がり始める。これは、親水性のカーボンナノチューブ導電紙はセルロースが数秒のうちに水に溶け始めるためである。
図14は、導電性物質としてスーパーグロース法で作製した単層カーボンナノチューブを用いたカーボンナノチューブ導電紙(図中に「SG」と示す)と、市販のHiPco法で作製された単層カーボンナノチューブを用いたカーボンナノチューブ導電紙(図中に「HiPco」と示す)との比較を示す図である。
図15及び図16は専ら紙からなるタッチセンサシステムを示す図である。
図15(a)は紙配線によって鉛直方向と水平方向に接続された8×8個の導電紙キャパシタを含む紙のみからなるタッチセンサの写真である。図15(b)はタッチセンサの回路図である。図16(a)は、図15に示すタッチセンサの2×2セルの概略図である。図16(b)は時間の関数としてのタッチセンサのセルの容量変化を示す説明図である。
また本発明の導電紙は、通常の紙と同様に容易にリサイクルが可能であり、省資源、環境保護の観点からばかりでなく、電気・電子回路の作成効率の観点からも極めて多大な利点をもたらすものである。
Claims (23)
- セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質が導電性ポリマーであることを特徴とする導電紙。
- セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質がカーボンナノチューブであることを特徴とする導電紙。
- セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、イオン液体を含むことを特徴とする導電紙。
- 液体に溶かして再生可能である請求項1から3のいずれか1項に記載の導電紙。
- 導電率が1S/cm以上である請求項1から4のいずれか1項に記載の導電紙。
- 前記導電性物質がカーボンナノチューブである請求項3から5のいずれか1項に記載の導電紙。
- 前記カーボンナノチューブの長さが1μm以上10cm以下である請求項6に記載の導電紙。
- 前記導電性物質が導電性ポリマーである請求項3から5のいずれか1項に記載の導電紙。
- 前記イオン液体が親水性である請求項3から8のいずれか1項に記載の導電紙。
- 前記イオン液体が疎水性である請求項3から8のいずれか1項に記載の導電紙。
- 他の導電性物質が混在している請求項1から10のいずれか1項に記載の導電紙。
- セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質が導電性ポリマーであることを特徴とする導電性セルロース組成物。
- セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、前記導電性物質がカーボンナノチューブであることを特徴とする導電性セルロース組成物。
- セルロースと導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態で混和した導電性セルロースを有し、イオン液体を含むことを特徴とする導電性セルロース組成物。
- 他の導電性物質が混在している請求項12から14のいずれか1項に記載の導電性セルロース組成物。
- ペースト状、又はゲル状、又は液状であることを特徴とする請求項12から15のいずれか1項に記載の導電性セルロース組成物。
- 請求項1から11のいずれか1項に記載の導電紙、又は請求項12から16のいずれか1項に記載の導電性セルロース組成物を備えた物品。
- 請求項1から11のいずれか1項に記載の導電紙、又は請求項12から16のいずれか1項に記載の導電性セルロース組成物を備えた電子デバイス。
- イオン液体と導電性物質との混合物を調製する工程1と、
前記混合物にセルロースを分散させることにより、前記セルロースと前記導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態となった導電性セルロースを含む分散液を調製する工程2と、
前記分散液を乾燥させる工程3と、
を有することを特徴とする導電紙の製造方法。 - 前記分散液の乾燥物から、前記イオン液体を除去する工程4、をさらに有する請求項19に記載の導電紙の製造方法。
- 前記イオン液体が親水性である場合に、前記分散液を調製する工程で分散媒として水を添加する請求項19又は20に記載の導電紙の製造方法。
- 前記イオン液体が疎水性である場合に、前記分散液を調製する工程で水以外の分散媒を添加する請求項19又は20に記載の導電紙の製造方法。
- イオン液体と導電性物質との混合物を調製する工程1と、
前記混合物にセルロースを分散させることにより、前記セルロースと前記導電性物質とが互いに絡み合い又は吸着し、分散媒中でも相分離しない状態となった導電性セルロースを含む分散液を調製する工程2と、
を有することを特徴とする導電性セルロース組成物の製造方法。
Applications Claiming Priority (3)
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PCT/JP2009/052322 WO2009101985A1 (ja) | 2008-02-11 | 2009-02-12 | 導電紙とその製造方法、導電性セルロース組成物とその製造方法、物品、電子デバイス |
Publications (2)
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