JP5646879B2 - カーボンナノチューブを含む物品 - Google Patents

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Description

本発明は、カーボンナノチューブを含む物品に関し、さらに詳しく言えば、カーボンナノチューブ複合紙を用いた色素増感太陽電池、半導体素子および室内用壁材に関するものである。
カーボンナノチューブ(CNT)は、1991年に飯島澄男氏により発見された物質であり、炭素原子が六角形の各頂点に存在する蜂の巣構造のシートを丸めた円筒状を呈している。
その特徴として、強靱な機械的強度(引っ張り強度;〜150GPa,ヤング率;〜1000GPa)、高い熱伝導性(数百〜数千W/m・K)、高い電子移動度(金属的の場合;10万cm/Vs)、それに金属的・半導体的性質を持つ、アスペクト比が高い(直径方向;数nm,軸方向;数μm)等多くの機能・特徴を有している。
現在、各研究機関等でカーボンナノチューブの応用について研究がなされているところであるが、本発明者は、その応用素材の一つとしてカーボンナノチューブを紙の原料であるパルプ繊維に分散・担持させたカーボンナノチューブ複合紙を提案している(非特許文献1参照)。
カーボンナノチューブ複合紙は、きわめてシンプルな手法、すなわちパルプ懸濁液とカーボンナノチューブ分散液とを混ぜ合わせ、紙漉き技術により作製でき工業化しやすいため、今後の発展が期待できる。
T.Oya and T.Ogino,CARBON,46,pp.169−171(2008)
したがって、本発明の課題は、カーボンナノチューブ複合紙を構成要素として備える物品、特には半導体素子を提供することにある。
請求項に記載の発明に係る半導体素子、絶縁基板上に所定の間隔をもって配置されたドレイン電極およびソース電極と、上記絶縁基板上で上記ドレイン電極と上記ソース電極との間に配置された半導体層と、上記半導体層上に配置された絶縁層と、上記絶縁層上に配置されたゲート電極とを有する半導体素子における上記ドレイン電極,上記ソース電極および上記ゲート電極の各電極が、紙原料のパルプ繊維内に金属的性質を有するカーボンナノチューブが分散されている金属的カーボンナノチューブ複合紙からなり、上記半導体層が、紙原料のパルプ繊維内に半導体的性質を有するカーボンナノチューブが分散されている半導体的カーボンナノチューブ複合紙からなり、上記絶縁層が、パルプ繊維を原料とする絶縁紙からなることを特徴としている。
請求項に記載の発明は、請求項の半導体素子において、上記絶縁基板が、上記絶縁層と同じくパルプ繊維を原料とする絶縁紙からなることを特徴としている。
本発明によれば、カーボンナノチューブが有する金属的性質と半導体的性質とを利用することにより、半導体素子であるペーパートランジスタ(例えば、電界効果トランジスタ)が容易に得られる。
本発明で用いられるカーボンナノチューブ複合紙の製造工程を説明するための模式図。 本発明による色素増感太陽電池を示す模式的な断面図。 (a)本発明による半導体素子を示す平面図,(b)そのA−A線断面図。 上記半導体素子の電圧−電流特性の一例を示すグラフ。 本発明による室内用壁材の空調作用を示す模式図。
次に、図1ないし図5により、本発明のいくつかの実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
まず、図1の模式図を参照して、カーボンナノチューブ複合紙の製造工程について説明する。工程(1)として、紙材料,紙片(和紙,洋紙のいずれでも可),パルプ材を好ましくは細かく裁断し、工程(2)として、水に溶かして紙原料の分散液(パルプ懸濁液)を用意する。具体的には、適当量の純水にパルプ繊維を入れ、十分に撹拌することによりパルプ懸濁液を得る。
これとは別に、工程(3)として、カーボンナノチューブを所定の分散剤(界面活性剤)とともに適当量の純水に投入し、カーボンナノチューブ分散液を得る。このとき、カーボンナノチューブ同士が凝集しないように超音波発生器により超音波振動を与えることが好ましい。
なお、市販されているカーボンナノチューブ分散液を使用してもよい。その一例として次の商品名のものがある。これらはすべて単層カーボンナノチューブである。
(金属的と半導体的とが分離されているもの)
・NanoIntegris社製,IsoNanotubes−M(金属的分散液)
・NanoIntegris社製,IsoNanotubes−S(半導体的分散液)
(金属的と半導体的とが分離されていないもの)
・名城ナノカーボン社製,MeijoArcFH精製タイプ
次に、工程(4)として、パルプ懸濁液とカーボンナノチューブ分散液とを混合し十分に撹拌してパルプ繊維とカーボンナノチューブとを絡み合わせ、工程(5)として、その混合溶液を紙漉きし、工程(6)として、乾燥させることにより、カーボンナノチューブ複合紙を得る。
次に、図2を参照して、本発明の第1実施形態(参考実施形態)に係る色素増感太陽電池について説明する。この色素増感太陽電池10は、基本的な構成として、カーボンナノチューブ複合紙11と、増感色素12と、電解液13とから構成され、従来の色素増感太陽電池が必須としている透明電極基板や光電極としてのTiOは特に必要としない。
カーボンナノチューブは、半導体的性質を持つものと、金属的性質を持つものとに分けることができるが、半導体的性質を持つものを利用し、これに増感色素を添加することにより、色素増感太陽電池を構成できる。
カーボンナノチューブは、広い表面積を有していることから、TiOと同等もしくはそれ以上の増感色素を担持することができるため、色素増感太陽電池にとって有用な素材となり得る。
また、金属的性質を有するカーボンナノチューブは、電極材として利用することができるため、光電極だけでなく透明電極基板の導電膜やその対極もカーボンナノチューブで構成することができる。次に、その製造方法の一例を説明する。
第1の工程として、紙原料であるパルプ繊維の重さに対して、0.8〜1.2wt%(中心値1wt%)の単層カーボンナノチューブ(例えば、名城ナノカーボン社製,MeijoArcFH精製タイプ)を用意し、単層カーボンナノチューブを純水中に投入してカーボンナノチューブの分散液を得る。この例において、分散剤は特に必要としない。この分散液を得るにあたって、超音波処理を30分間程度行うことが好ましい。
第2の工程として、紙原料の分散液(パルプ懸濁液)を用意する。これは、適当量の純水にパルプ繊維を投入し、十分に撹拌して得る。第1の工程と第2の工程は、並行して行うことが好ましい。
次に、第3の工程として、第1の工程で得られたカーボンナノチューブ分散液と、第2の工程で得られたパルプ懸濁液とを手早く混合し撹拌して、パルプ繊維にカーボンナノチューブを付着させる。
しかる後、第4の工程として、第3の工程で得られた混合溶液を紙漉きし、乾燥させて図2に示すカーボンナノチューブ複合紙11を得る。厚さは0.3mm程度とする。
次に、第5の工程として、カーボンナノチューブ複合紙11の一方の面(上面)から増感色素を添加し染み込ませる。ただし、他方の面(下面)にまで達するほどに添加することは好ましくない。実験では、増感色素として、セブラ社製の水性顔料マーカー商品名紙用マッキー(赤)を使用した。これとは別に、インクジェットプリンタ等の印刷機器による着色も可能である。
次に、第6の工程として、こうして得た片面着色済みのカーボンナノチューブ複合紙11に対して、その両面に少なくとも1箇所ずつリード線14,14を接続する。この接続には、はんだ付けが不可能なので、導電性ペースト(例えば、藤倉化成社製,品番ドータイトXA602N等)を用いる。
最後に、第7の工程として、カーボンナノチューブ複合紙11に適当な濃度の電解液(例えば、臭化カリウム水溶液)13を含浸させる。なお、リード線の接続工程(上記第6の工程)を最後に行ってもよい。
このようにして試作した色素増感太陽電池(カーボンナノチューブ複合紙11の大きさは縦30mm,横20mm)に15cmの距離から40ワットの白熱電灯より光りを照射したところ、36mVの発電が得られた。
次に、図3により、本発明の第2実施形態に係る半導体素子について説明する。この半導体素子20は、絶縁基板21上に所定の間隔をもって配置されたドレイン電極22およびソース電極23と、絶縁基板21上でドレイン電極22とソース電極23との間に配置された半導体層(チャネル層)24と、半導体層24上に配置された絶縁層25と、絶縁層25上に配置されたゲート電極26とを有する電界効果トランジスタである。
この第2実施形態によると、ドレイン電極22,ソース電極23およびゲート電極26が金属的カーボンナノチューブがリッチな複合紙からなり、半導体層24が半導体的カーボンナノチューブがリッチな複合紙からなり、絶縁基板21と絶縁層25がパルプ繊維を原料とする絶縁紙からなる。次に、その製造方法の一例を説明する。
第1の工程として、紙原料であるパルプ繊維の重さに対して、それぞれ0.8〜1.2wt%(中心値1wt%)の金属的カーボンナノチューブと、半導体的カーボンナノチューブとを用意し、その各々を純水中に投入して金属的カーボンナノチューブ分散液と半導体的カーボンナノチューブ分散液とを得る。これらの分散液を得るにあたっては、超音波処理を30分間程度行うことが好ましい。
粉状のカーボンナノチューブの入手が困難な場合には、上記に一例として挙げたNanoIntegris社製のIsoNanotubes−M(金属的分散液)と、IsoNanotubes−S(半導体的分散液)を用いればよい。
第2の工程として、紙原料であるパルプ繊維を純水中に投入し、撹拌してパルプ懸濁液を得る。そして、このパルプ懸濁液を、絶縁紙用と、金属的カーボンナノチューブ用と、半導体的カーボンナノチューブ用とに、おおよそのところ5:3:1の比で3つに分ける。第1の工程と第2の工程は、並行して行うことが好ましい。
第3の工程として、第1の工程で得られた金属的カーボンナノチューブ分散液と半導体的カーボンナノチューブ分散液とに、それぞれ、第2の工程で得られたパルプ懸濁液を混合し撹拌して、パルプ繊維に各単層カーボンナノチューブを付着させる。
第4の工程として、第3の工程で得られた金属的カーボンナノチューブ分散液とパルプ懸濁液との混合溶液、半導体的カーボンナノチューブ分散液とパルプ懸濁液との混合溶液および第2の工程で得られたパルプ懸濁液の各々を個別に紙漉きして、金属的カーボンナノチューブ複合紙、半導体的カーボンナノチューブ複合紙およびパルプ繊維を原料とする絶縁紙を得る。この紙漉きは、紙漉き技術の漉き合わせ手法をそのまま適用できる。
この紙漉き工程で、絶縁紙により絶縁基板21を形成し、絶縁基板21の上に、半導体的カーボンナノチューブ複合紙により半導体層24を形成するとともに、金属的カーボンナノチューブ複合紙によりドレイン電極22とソース電極23とを形成し、これらの上に、絶縁紙により絶縁層25を形成したのち、絶縁層25の上に、金属的カーボンナノチューブ複合紙によりゲート電極26を形成することにより、ペーパートランジスタが得られる。
各層の厚さは最大0.3mm程度で、半導体層24のチャネル長は最大で1mm程度であることが好ましい。チャネル幅は最大5mm程度がよい。各電極へのリード線の接続は、はんだ付けが不可能なので、導電性ペースト(例えば、藤倉化成社製,品番ドータイトXA602N等)を用いる。参考までに、上記のように作成されたヘーパートランジスタの電圧−電流特性の一例を図4のグラフに示す。
上記第2実施形態では、半導体素子の全体を紙漉き工程で形成しているが、絶縁基板をシリコン基板とし、その上に、各複合紙と絶縁紙からそれぞれ切り出された紙片を重ね合わせて半導体素子を形成することもできる。
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態(参考実施形態)に係る室内用壁材(空調シート)について説明する。この室内用壁材は、上記カーボンナノチューブ複合紙からなることを特徴とし、その製造方法の一例について説明する。この第3実施形態では、半導体的と金属的とが分離されていない、本明細書で、単にカーボンナノチューブ複合紙と記す複合紙が好ましく採用される。
第1の工程として、紙原料であるパルプ繊維の重さに対して、0.8〜1.2wt%(中心値1wt%)のカーボンナノチューブを用意し、このカーボンナノチューブを純水中に投入してカーボンナノチューブの分散液を得る。この分散液を得るにあたっては、超音波処理を30分間程度行うことが好ましい。
第2の工程として、パルプ繊維を純水中に投入し、撹拌してパルプ懸濁液を得る。
第3の工程として、第1の工程で得られたカーボンナノチューブ分散液と、第2の工程で得られたパルプ懸濁液とを混合し撹拌して、パルプ繊維に上記カーボンナノチューブを付着させる。
第4の工程として、第3の工程で得られた混合溶液を紙漉きし、乾燥させて上記半導体的・金属的カーボンナノチューブ複合紙を得る。
カーボンナノチューブは、高い熱伝導性(数百〜数千W/m・K)を有している。これは、銅の熱伝導率(400W/m・K)より数倍高い。
したがって、第3実施形態に係る室内用壁材は高い熱伝導性を持つため、例えば、この室内用壁材を図4に示す室内の天井面,壁面および床面にかけて一連に貼着することにより、上記半導体的・金属的カーボンナノチューブ複合紙の高い熱伝導性を利用して、天井付近が高温で床面付近が低温であるという室内の温度不均衡を解消することができる。
この場合、天井付近の熱と床面の熱を効率よく熱交換するために、壁面部分はフィルム等によりコーティングすることが好ましい。
このように、本発明の室内用壁材は空調シートとして作用することから、サーキュレータ等の室内空気撹拌装置が不要となり、電気エネルギーの節約にもなる。また、カーボン材料は腐食に強く軽量でもあるため、熱伝導性のよい金属を用いるよりも住居重量をより軽くすることができる。また、この室内用壁材は、床材や建物外壁下地として使用されてもよい。建物外壁下地として使用される場合には、日向で受ける熱を日陰側に逃す効果がある。
10 色素増感太陽電池
11 カーボンナノチューブ複合紙
12 増感色素
13 電解液
14 リード線
20 半導体素子
21 絶縁基板
22 ドレイン電極
23 ソース電極
24 半導体層
25 絶縁層
26 ゲート電極

Claims (2)

  1. 絶縁基板上に所定の間隔をもって配置されたドレイン電極およびソース電極と、上記絶縁基板上で上記ドレイン電極と上記ソース電極との間に配置された半導体層と、上記半導体層上に配置された絶縁層と、上記絶縁層上に配置されたゲート電極とを有する半導体素子における上記ドレイン電極,上記ソース電極および上記ゲート電極の各電極が、紙原料のパルプ繊維内に金属的性質を有するカーボンナノチューブが分散されている金属的カーボンナノチューブ複合紙からなり、上記半導体層が、紙原料のパルプ繊維内に半導体的性質を有するカーボンナノチューブが分散されている半導体的カーボンナノチューブ複合紙からなり、上記絶縁層が、パルプ繊維を原料とする絶縁紙からなることを特徴とする半導体素子としてのカーボンナノチューブを含む物品。
  2. 上記絶縁基板が、上記絶縁層と同じくパルプ繊維を原料とする絶縁紙からなることを特徴とする半導体素子としての請求項に記載のカーボンナノチューブを含む物品。
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