JP5659343B2 - パルスデトネーション溶射装置及び溶射方法 - Google Patents

パルスデトネーション溶射装置及び溶射方法 Download PDF

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Description

本発明は、爆発燃焼を利用したパルスデトネーション溶射装置及び溶射方法に係り、特に20Hz以上の高周波数で運転されるパルスデトネーション溶射装置及び溶射方法に関する。
物品の表面に金属やセラミックの皮膜を設け、その硬度、耐摩耗性、耐熱性等を向上させる表面処理方法の一つに溶射法がある。この溶射法には、爆発溶射法(パルスデトネーション溶射法)、高速フレーム溶射法、プラズマ溶射法がある。これらの溶射法において、プラズマ溶射法は高温度低流速処理法、高速フレーム溶射法は低温度高流速処理法とされ、爆発溶射法はプラズマ溶射法と高速フレーム溶射法の中間に位置する処理法であるとされる。しかしながら、爆発溶射法は、セラミックスを溶融するのに充分な高温度を得ることができ、また、高速フレーム溶射法以上の流速を溶射粒子に付与できる性能を有しており、その有用性は高く利用促進のための研究、開発が進められている。
例えば、特許文献1に、複層の溶射被覆層を形成されるための爆発溶射装置が提案されている。すなわち、異なる燃料ガスを複数の燃料ガス供給系から燃焼室に供給することができる爆発溶射装置、または、複数の溶射用の粉体が供給でき、かつ、それぞれに好適な燃料ガスを燃焼室に供給することができる爆発溶射装置が提案されている。
特許文献2に、一般の爆発溶射法がアセチレンなどの炭化水素を燃料ガスとして使用していることから溶射皮膜中に炭素が混入する問題を解決するため、燃料ガスを水素に替えるとともに、アセチレンを使用する燃焼筒(デトネーション管)の長さに抑えた溶射装置が提案されている。すなわち、燃焼室であって、該燃焼室の内側面に一体的に乱流形成構造体が形成された燃焼室を備えるデトネーション管と、前記デトネーション管に燃料および酸化剤を供給する手段と、供給された前記燃料および酸化剤の混合気に着火するための着火手段と、溶射材料を供給するための溶射材料供給部とを備える溶射装置が提案されている。そして、明細書に、燃料および酸化剤を供給する手段には、ソレノイド式の噴射バルブを使用することができるとの記載がある。また、運転周波数を5Hzとし酸素の噴射は運転中連続的に行い、先ず各サイクルの最初に水素の噴射を行ってその直後に着火するというタイミングで実験装置を制御したとの記載がある。
特許文献3には、デトネーション波のフロントからのエネルギーを利用して粉体被覆材料を下流方向へ被加工物に適用するガスデトネーション装置であって、燃料および酸素供給装置、点火源、粉体を供給する手段、およびバレルを有し、さらに、バレルの上流に位置し、点火源と通じている燃焼チャンバーを含み、かつ、燃焼チャンバーは、デトネーション波のフロントから分散したデトネーシヨンセルを破壊し、かつ燃料と酸素の供給源と通じるために、その側壁に配置された少なくとも一つの複雑に入り組んだガスのパスを有するガスデトネーション装置が提案されている。そして、明細書に、典型的なデトネーション・ガンにおいて、スパーク・プラグは、6〜10回/秒の最大速度で着火されるとの記載があり、また、燃料と酸素の混合物は、ガスのパス(ラビリンス)を経由して燃焼チャンバーの中に流れ込むので、バックファイヤの発生が防止され、ラビリンスは燃料と酸素の燃焼チャンバーへの流入を防止するバルブとして機能するとの記載がある。
特開平7-75749号公報 特2008-272622号公報 特表2000-502285号公報
爆発溶射法は、上述のように、優れた特性を有し利用促進のための研究、開発が進められているが、その数は多くはなく、その実用化もあまり進んでいないという問題がある。これは、従来のパルスデトネーション溶射装置におけるガン(燃焼筒)がプラズマ溶射ガンなどと比較して大きすぎるという問題が関係していると推測される。
また、特許文献1に提案された爆発溶射装置は、複数の燃料ガス供給手段を設けなければならないという問題がある。特許文献2に提案された溶射装置は、燃焼室の内側面に設けられた乱流形成構造体の損傷、耐久性の問題がある。特許文献3に提案されたガスデトネーション装置は、燃焼チャンバーの外殻を形成する複雑に入り組んだガスのパスが設けられた構造体が必須であるという問題がある。
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、爆発溶射法の有意な特性を十分に発揮させることができ、コンパクトで、耐久性があり作業効率の高いパルスデトネーション溶射装置及び溶射方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、爆発溶射法において従来見過ごされてきた、パルスデトネーション溶射装置の運転周波数に着目して各種試験を行い、溶射された溶射皮膜の特性は運転周波数と関係が深いという知見を得て本発明を完成させた。
本発明に係るパルスデトネーション溶射装置は、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒と、その燃焼筒の閉塞端部に燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスを供給するガス供給手段と、供給された燃料ガスと酸素ガスの混合気に所定の運転周波数で点火を行う点火手段と、その点火手段の下流に溶射用の粉体を供給する粉体供給手段とを有し、燃料ガスと酸素ガスは対向噴射され、不活性ガスは前記燃焼筒の閉塞端部に向けて噴射されるようになっている。
また、本発明に係るパルスデトネーション溶射装置は、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒と、その燃焼筒の閉塞端部に燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスを供給するガス供給手段と、供給された燃料ガスと酸素ガスの混合気に点火を行う点火手段と、その点火手段の下流に溶射用の粉体を供給する粉体供給手段とを有し、運転周波数が20Hz以上で使用されるパルスデトネーション溶射装置である。
上記発明において、運転周波数の調整は、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスの流量と供給圧力の調整及び点火時期の調整により行うことができる。
燃焼筒は、その端末に延長バレルを有することができ、延長バレルは、脱着可能にすることができる。
また、溶射に供される粉体は、点火手段の下流の複数位置から供給することができるようにすることができる。
溶射温度の調整は、運転周波数の調整によりなされるようになっており、燃焼温度は、3200〜3700℃の範囲で調整することができるようになっている。
また、上記発明において、燃料ガスはエチレンガスであるのがよく、不活性ガスは単原子ガスであるのがよい。
本発明に係るパルスデトネーション溶射方法は、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒内に燃料ガスと酸素ガスを供給し、その混合気を所定間隔で点火して爆発燃焼させ、その燃焼ガスに溶射用の粉体を搬送させて所定の運転周波数で溶射を行うパルスデトネーション溶射方法であって、同一圧で連続的に供給される燃料ガスと酸素ガスの混合気にそれらの供給圧より高い圧力で不活性ガスを連続的に供給し、生じるパルスデトネーションにより所定の運転周波数で溶射を行うことによって実施される。
また、本発明に係るパルスデトネーション溶射方法は、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒内に燃料ガスと酸素ガスを供給し、その混合気を所定間隔で点火して爆発燃焼させ、その燃焼ガスに溶射用の粉体を搬送させて溶射を行うパルスデトネーション溶射方法であって、燃焼筒内、または燃焼筒とこれに付加された延長バレル内に、高温の燃焼ガス層が低温の不活性ガス層に分断された状態を形成し、次々に到来するパルス状の燃焼ガス層により、溶射用の粉体にサイクリックな加熱及び加速を行いつつ溶射を行うことによって実施される。
上記発明において、燃焼筒内、または燃焼筒とこれに付加された延長バレル内の燃焼ガス層と不活性ガス層の占める比率を変化させて溶射温度を調整することができる。
本発明によれば、爆発溶射法の特性を十分に発揮させることができ、コンパクトで、耐久性があり作業効率の高いパルスデトネーション溶射装置及び溶射方法を提供することができる。また、本発明に係るパルスデトネーション溶射装置は、多量又は多種の粉体を供給しながらも安定に動作し、溶射用の粉体を高エネルギー及び高速度で溶射することができる。また、本パルスデトネーション溶射装置は、皮膜の酸化等による変質を防止することができ、特殊なシステムを用いることなくセラミックス等の高融点材料の溶射ができる。
本発明に係るパルスデトネーション溶射装置の構成概要を示す模式図である。 図1のパルスデトネーション溶射装置の作動中の燃焼筒及び延長バレル内のガス分布を説明する模式図である。 図1に示すパルスデトネーション溶射装置をバルブ開放モードで運転する場合の説明図である。 溶射試験装置の構成概要を示す模式図である。 溶射試験結果を示すグラフである。 溶射試験による溶射皮膜断面部の金属顕微鏡写真である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。図1は、本発明に係るパルスデトネーション溶射装置の構成概要を示す模式図である。本パルスデトネーション溶射装置10は、図1に示すように、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒11と、その燃焼筒11の閉塞端部に燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスを供給するための燃料ガス供給手段13、酸素ガス供給手段14及び不活性ガス供給手段15を有し、供給された燃料ガスと酸素ガスの混合気に所定の運転周波数で点火を行う点火手段16と、その点火手段16の下流に溶射用の粉体を供給する粉体供給手段18とを有している。そして、燃焼筒11内に燃料ガス供給手段13により供給される燃料ガスと、酸素ガス供給手段14により供給される酸素ガスは対向噴射されるようになっており、不活性ガス供給手段15により供給される不活性ガスは燃焼筒11の閉塞端部に向けて噴射されるようになっている。
本パルスデトネーション溶射装置10の燃焼筒11は、一端が閉塞され他端が開口された筒状の形状をしており、その内部は空洞になっている。すなわち、本発明においては、爆発燃焼を促進させるための乱流形成構造体のような特別な手段を要しない。また、本発明においては、逆火防止のため、あるいは、燃料噴射用の電磁バルブ等のないバルブなし運転を可能にするための複雑に入り組んだガスのパスが設けられた構造体を要さない。
また、本発明に係るパルスデトネーション溶射装置は、従来の爆発溶射装置と異なり、運転周波数が20Hz以上の高周波数で使用される。このため、燃焼筒11の長さが短くても所定の爆発燃焼を生じさせることができるので、例えば、50cm以下の長さにすることができる。また、燃焼筒11の内径を2cm以下にすることができる。
本パルスデトネーション溶射装置10の燃料ガス供給手段13、酸素ガス供給手段14及び不活性ガス供給手段15は、それぞれガス源、圧力調整部、流量調整部、開閉弁を有しており、所要のガスを所定の圧力及び流量で供給することができるようになっている。
ところで、本発明においては、以下に説明するように、パルスデトネーション溶射装置10を高周波数運転する場合は、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスは開閉弁を開けたままで、常に供給できる様態になっている制御方法(バルブ開放モード)が好ましい。しかし、パルスデトネーション溶射装置10を低周波数運転する場合は、運転の操作性、安定性を考慮すれば、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスの噴射、供給停止を電磁弁で制御する制御方法(バルブ制御モード)が好ましい。このため、バルブ制御モードで運転することができるように、燃料ガス供給手段13、酸素ガス供給手段14及び不活性ガス供給手段15には、それぞれ図1に示す電磁弁131、141、151を設けるのが好ましい。なお、運転周波数が50Hz以下の場合、特に低い運転周波数においては、バルブ制御モードが好ましい。
上述のように、本パルスデトネーション溶射装置10においては、燃料ガス供給手段13により供給される燃料ガスと、酸素ガス供給手段14により供給される酸素ガスは、対向噴射されるようになっている。この燃料ガス及び酸素ガスが燃焼筒11内に供給される位置は、燃焼筒11の閉塞端に近い位置がよい。これにより燃料ガスと酸素ガスの混合及び燃焼筒11の開口端への流動が促進される。
燃料ガスは、水素ガス、アセチレンガス、エチレンガス等を使用することができるが、エチレンガスが好ましい。エチレンガスの場合は、容易にパルスデトネーション溶射装置10を安定した状態で運転をすることができる。
酸素ガスは、使用される燃料ガスの所定の当量比で供給することができる。しかしながら、本パルスデトネーション溶射装置10においては、燃料リッチの状態がよく、10%程度の燃料リッチの状態で運転されるが好ましい。
不活性ガス供給手段15は、燃焼ガスが燃焼筒11から排気されやすいように、不活性ガスが燃焼筒11の閉塞端に向けて噴射されるようになっているのがよい。本発明において使用される不活性ガスは、窒素ガスのような多原子ガスではなくアルゴンガスのような単原子ガスが好ましく、ヘリウムガス、ネオンガス等も使用することができる。なお、不活性ガスは、常温状態で供給することができる。
点火手段16は、公知の点火プラグによる点火手段を使用することができる。未燃ガスの発生や未燃ガスの下流への流出を防止するため、図1に示すように、複数の点火プラグを設けることができる。
粉体供給手段18は、溶射に使用される所要の粉体を所定の流量で燃焼筒11内に供給できるようになっている。燃焼筒11内に供給される溶射用の粉体供給口は、図1に示すように複数設けることができる。また、溶射用の粉体の供給に、アルゴンガス等のキャリアガスを使用することができる。
また、本パルスデトネーション溶射装置10は、図1に示すように、延長バレル20を設けることができる。延長バレル20は脱着可能になっているのがよい。溶射し難い溶射用の粉体を使用する場合などに、延長バレル20を燃焼筒11に付加することによって所望の溶射皮膜を得ることができるようになるからである。
以上、本パルスデトネーション溶射装置10の構成について説明した。本パルスデトネーション溶射装置10は、上述のように、燃焼ガスを排気するために不活性ガスを使用している。本発明においては、この不活性ガス供給手段15を設けたことにより、以下に説明するバルブ開放モードによるパルスデトネーション溶射装置10の高周波数運転が可能になる。また、パルスデトネーション溶射装置10の運転周波数の広い範囲の調整が可能になり、溶射温度の調整が可能になる。例えば、燃焼温度は3200〜3700℃の範囲で調整することができる。
このパルスデトネーション溶射装置10の広範囲な運転周波数の調整機能により、各種溶射用の粉体に適切な運転周波数を設定することができる。そして、パルスデトネーション溶射装置10は、例えば、航空・発電用ガスタービン動静翼におけるボンドコート層の形成、さらには、半導体製造部品の絶縁皮膜形成、貫通気孔をなくすとともに原料粉末の酸化を防止しなければならない環境遮蔽型の耐食性合金皮膜の形成等に利用することができる。
図2に、本パルスデトネーション溶射装置10の燃焼筒11及び延長バレル20内のガスの分布状況を模式的に示す。図2に示すように、本パルスデトネーション溶射装置10においては、燃焼筒11及び延長バレル20内は燃焼ガスGと不活性ガスAが交互に積層された状態になっている。この交互に積層された燃焼ガスGと不活性ガスAにより、燃焼筒11内に供給された溶射用の粉体Pは下流側へ搬送される。下流側へ搬送される溶射用の粉体Pは、そのサイズ及び比重に応じて次々に到来するパルス状の燃焼ガスGによりサイクリックな加熱及び加速が行われるとともに、次々に到来するパルス状の不活性ガスAによりサイクリックな冷却を受ける。すなわち、本発明においては、燃焼筒内又は燃焼筒と延長バレル内の燃焼ガス層と不活性ガス層の厚さの比率、パルスデトネーション溶射装置の運転周波数を調整することにより、燃焼温度(平均燃焼温度)、溶射用の粉体に付与することができる溶射温度や流速を調整することができる。なお、本発明において溶射用の粉体の流速を変えることができる範囲は小さい。
本パルスデトネーション溶射装置10は、上述のように、バルブ開放モードで高周波数運転することが可能であるが、バルブ開放モード運転は、図3に示すように行われる。すなわち、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスを燃焼筒11に常時噴出状態にする。そして、燃料ガス及び酸素ガスの供給圧力に対し、不活性ガスの供給圧力を高く設定する。燃料ガス及び酸素ガスは、低い圧力で充分の流量のガス量が供給できるのが好ましく、不活性ガスは、高圧及び高速で供給できるのが好ましい。なお、燃料ガスと酸素ガスの供給圧力は同じであるのがよい。
先ず、供給された燃料ガス及び酸素ガスが所定の状態になると、その混合気は点火手段16に点火され、燃焼ガスが生じる。図3に示すように、燃焼筒11の燃料ガス及び酸素ガス噴出口付近の燃焼ガスの圧力は、急速に上昇し時間とともに下降してくる。燃焼ガスの圧力が不活性ガスの供給圧力よりも高い時間帯は、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスの燃焼筒11内への供給は停止される。しかし、燃焼ガスの圧力が不活性ガスの供給圧力よりも低くなると、不活性ガスの燃焼筒11内への噴出が始まり不活性ガスにより燃焼ガスの排気が始まる。燃焼ガスの圧力がさらに低下して燃料ガス及び酸素ガスの供給圧力以下になると、燃料ガス及び酸素ガスの燃焼筒11内への噴出が始まる。この時間差によって、高温の燃焼ガスと未燃の爆発性ガスとの間に不活性ガスの層が自動的に形成される。そして、供給された燃料ガス及び酸素ガスが所定の状態になると、その混合気は点火手段16に点火され、次の運転サイクルが始まる。
このようにバルブ開放モードにおいて、本パルスデトネーション溶射装置10は、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスの燃焼筒11内への供給が電磁弁制御によらないで行われる。また、本パルスデトネーション溶射装置10は、爆発燃焼後の燃焼ガスを不活性ガスにより自動的に排気することができる。そして、不活性ガスによる排気は、燃焼ガスが燃焼筒10の下流側に押しやられるように排気されるので、確実な排気が行われる。また、燃焼ガス層の上流側に不活性ガス層が介在することとなるので、新たに燃焼筒内に供給された燃料と酸素との混合気は、直接に高温度の燃焼ガスに接触することがなく、異常燃焼を防止することができる。
以上、バルブ開放モードについて説明したが、バルブ開放モードにおいては以下のように溶射が行われる。すなわち、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒内に燃料ガスと酸素ガスを供給し、その混合気を所定間隔で点火して爆発燃焼させ、その燃焼ガスに溶射用の粉体を搬送させて所定の運転周波数で溶射を行うパルスデトネーション溶射方法において、燃料ガスと酸素ガスを同一圧で連続的に供給するとともに、それらの供給圧より高い圧力で不活性ガスを連続的に供給し、生じるパルスデトネーションにより所定の運転周波数で溶射が行われる。
また、一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒内に燃料ガスと酸素ガスを供給し、その混合気を所定間隔で点火して爆発燃焼させ、その燃焼ガスに溶射用の粉体を搬送させて溶射を行うパルスデトネーション溶射方法において、燃焼筒内、または燃焼筒とこれに付加された延長バレル内に、高温の燃焼ガス層が低温の不活性ガス層に分断された状態を形成し、次々に到来するパルス状の燃焼ガス層により、溶射用の粉体にサイクリックな加熱及び加速を行いつつ溶射が行われる。
上記溶射方法において、燃焼筒内、または燃焼筒とこれに付加された延長バレル内の燃焼ガス層と不活性ガス層の占める比率を変化させることにより溶射温度を調整することができる。
以上、本発明に係るパルスデトネーション溶射装置及び溶射方法について説明した。本発明に係るパルスデトネーション溶射装置は、上述のものに限定されるものではない。例えば、本パルスデトネーション溶射装置は、バルブ制御モードにおいても、燃料ガス、酸素ガス及不活性ガスの燃焼筒内への供給を電磁弁で調整することにより、バルブ開放モードと同様の燃焼ガスの排気機能、異常燃焼の防止機能を発揮させる運転をすることができる。また、溶射用の粉体が限定され、パルスデトネーション溶射装置の運転周波数を50Hz以上にできる場合は、高速応答性の電磁弁は必要でなく、運転の開始及び停止を制御する開閉弁で足りる。このため、高速で稼働する装置部分がなくなって故障の確立が大幅に低下し、維持管理が容易なパルスデトネーション溶射装置を提供することができる。
また、パルスデトネーション溶射装置の運転状態を監視するためのセンサ等、例えば、図1に示す振動センサ31、あるいは熱電対などを設けることができる。
図4に示す試験装置を用いて、試験片に溶射用の粉体(NiCr合金)を溶射する溶射試験を行った。図4に示す試験装置は、図1のパルスデトネーション溶射装置と同様のものにテストチャンバ40を付設したものである。燃焼筒の長さは400mm、内径は16mmであった。延長バレルの長さは200mm、燃料ガスはエチレンガスを使用した。不活性ガスはアルゴンガスを使用した。溶射試験は、延長バレルを使用する場合と使用しない場合について行った。試験片は、表面をブラスト処理したSS400鋼板を使用し、延長バレルの有無にかかわらず延長バレルの端面から100mmの相当位置に設置した。溶射時間は、試験片No.7(10秒間)を除いて15秒間とした。溶射用の粉体の供給は、燃焼筒の燃料ガス又は酸素ガスの噴出口から150mm又は300mmの下流位置より行った。溶射用の粉体は、Ni/Cr=4/1のNiCr合金、粒径20〜53μmであった。溶射皮膜の酸化度はX線回折装置によって評価し、溶射皮膜の気孔率と厚さは金属顕微鏡による断面観察によって評価した。
運転周波数の調整は、運転周波数が25Hzの場合はバルブ制御モードにより調整し、運転周波数が100Hz、200Hzの場合はバルブ開放モードにより調整した。バルブ開放モードにおいて運転周波数の調整は、アルゴンガスの供給圧力を一定圧力に固定し、アルゴンガスの流量の調整と、エチレンガス及び酸素ガスの供給圧力と流量の調整を行うことにより調整した。
試験結果を図5に示す。図5において、棒グラフは溶射皮膜の膜厚、実線は空孔率、波線は酸化度を示す。図6は、試験片No.1、No.2、No.5、No.6の溶射皮膜断面の電子顕微鏡写真を示す。図5の酸化度と膜厚の結果によると、酸化度も膜厚も運転周波数と関係があり、運転周波数が低い場合は酸化度も膜厚も大きくなり、運転周波数が高い場合は酸化度も膜厚も小さくなる傾向があることが分かる。また、運転周波数が25Hzの場合は、溶射用粉体の供給位置及び延長バレルの有無が、酸化度や膜厚の大きさに与える影響が大きいことが分かる。すなわち、溶射用の粉体が酸化しやすいものであるときに、運転周波数が25Hzで運転される場合は、延長バレルを使用し、溶射用の粉体は燃焼ガス及び酸素ガスの供給口より離れた位置(下流側)から供給するのがよい。運転周波数が100又は200Hzで運転される場合は、溶射用の粉体の酸化のおそれがほとんどないことが分かる
また、運転周波数が100Hz、200Hzの場合は、溶射用の粉体の供給位置は膜厚に余り影響しないことが分かる。しかしながら、運転周波数が高くなると溶射皮膜の厚さが減少しやすくなるので、所定の膜厚を確保するためには延長バレルを使用するのがよい。
溶射皮膜の組織を観察すると、図6に示す(a)と(b)を比較するとよく分かるように、運転周波数が25Hzの場合は溶射用の粉体の供給位置が下流側にあるものほど(図6(a))均質な組織をしていることが分かる。これに対して、運転周波数が100Hz、200Hzの場合(図6(c)、(d))は、溶射用の粉体の供給位置による組織の相違は明確でない。運転周波数が100Hz、200Hzの場合と、運転周波数が25Hzの場合を比較すると、運転周波数が100Hz、200Hzの場合は粒界が明確になっており、溶射温度が低下したことが推測される。
一方、図5に示す空孔率を観察すると、運転周波数が25Hzの場合は溶射用の粉体の供給位置及び延長バレルの有無が関係していることが分かる。これに対し、運転周波数が100Hz、200Hzの場合は、空孔率は、運転周波数が25Hzの場合より高くなっている。これは、図6に示す運転周波数が100Hz、200Hzの場合の溶射皮膜の組織と合わせて判断すると、使用した溶射用の粉体の粒径(20〜53μm)が大きすぎた可能性が考えられ、溶射用の粉体は最適な粒径のものが存在することが推測される。
10 パルスデトネーション溶射装置
11 燃焼筒
13 燃料ガス供給手段
14 酸素ガス供給手段
15 不活性ガス供給手段
16 点火手段
18 粉体供給手段
20 延長バレル
31 振動センサ
40 テストチャンバ
131、141、151 電磁弁

Claims (13)

  1. 一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒と、その燃焼筒の閉塞端部に燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスを供給するガス供給手段と、供給された燃料ガスと酸素ガスの混合気に所定の運転周波数で点火を行う点火手段と、その点火手段の下流に溶射用の粉体を供給する粉体供給手段とを有し、
    燃料ガスと酸素ガスは対向噴射され、不活性ガスは前記燃焼筒の閉塞端部に向けて噴射されるようになっているパルスデトネーション溶射装置。
  2. 一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒と、その燃焼筒の閉塞端部に燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスを供給するガス供給手段と、供給された燃料ガスと酸素ガスの混合気に点火を行う点火手段と、その点火手段の下流に溶射用の粉体を供給する粉体供給手段とを有し、
    バルブ開放モードで使用されるパルスデトネーション溶射装置。
  3. 運転周波数の調整が、燃料ガス、酸素ガス及び不活性ガスの流量と供給圧力の調整及び点火時期の調整により行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  4. 燃焼筒は、その端末に延長バレルを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  5. 延長バレルは、脱着可能になっていることを特徴とする請求項4に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  6. 溶射に供される粉体は、点火手段の下流の複数位置から供給することができるようになっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  7. 溶射温度の調整が、運転周波数の調整によりなされるようになっていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  8. 燃焼温度は、3200〜3700℃の範囲で調整することができるようになっていることを特徴とする請求項7に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  9. 燃料ガスは、エチレンガスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  10. 不活性ガスは、単原子ガスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のパルスデトネーション溶射装置。
  11. 一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒内に燃料ガスと酸素ガスを供給し、その混合気を所定間隔で点火して爆発燃焼させ、その燃焼ガスに溶射用の粉体を搬送させて所定の運転周波数で溶射を行うパルスデトネーション溶射方法であって、
    同一圧で連続的に供給される燃料ガスと酸素ガスの混合気にそれらの供給圧より高い圧力で燃焼筒閉塞端に向けて不活性ガスを連続的に供給し、生じるパルスデトネーションにより所定の運転周波数で溶射を行うパルスデトネーション溶射方法。
  12. 一端が閉塞され他端が開口された燃焼筒内に燃料ガスと酸素ガスを供給し、その混合気を所定間隔で点火して爆発燃焼させ、その燃焼ガスに溶射用の粉体を搬送させて溶射を行うパルスデトネーション溶射方法であって、
    燃焼筒内、または燃焼筒とこれに付加された延長バレル内に、高温の燃焼ガス層が低温の燃焼筒閉塞端に向けて供給される不活性ガス層に分断された状態を形成し、次々に到来するパルス状の燃焼ガス層により、溶射用の粉体にサイクリックな加熱及び加速を行いつつ溶射を行うパルスデトネーション溶射方法。
  13. 燃焼筒内、または燃焼筒とこれに付加された延長バレル内の燃焼ガス層と不活性ガス層の占める比率を変化させて溶射温度を調整することを特徴とする請求項12に記載のパルスデトネーション溶射方法。
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