JP5659177B2 - 紫外線遮蔽能を有するガラス物品 - Google Patents

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本発明は、ガラス板とその上に形成された紫外線遮蔽膜と、さらにその上に形成された保護膜とを備えたガラス物品に関する。
ガラス板には可視光線を透過させながら紫外線を遮蔽する特性が求められている。特に窓ガラス用途では、日焼け防止などの観点から、紫外線を遮蔽する機能(紫外線遮蔽能)を付加したガラス板への需要が高まっている。このため、酸化鉄(III;Fe23)など紫外線を吸収する無機成分の比率を高めた組成を有するガラス板が製造され、販売されている。
ガラス板の組成の調整のみでは紫外線の遮蔽に限界があるため、ガラス板の上に紫外線遮蔽能を有する膜(紫外線遮蔽膜)を形成することが提案されている。例えば2011−136846号公報(特許文献1)には、ガラス板上に、酸化ケイ素(シリカ)とともに、常温で固体である有機化合物の微粒子であって、平均粒径が150nm以下のものを含む紫外線遮蔽膜を形成する技術が開示されている。特許文献1の紫外線遮蔽膜は、紫外線遮蔽効果の持続性に優れている。
特開2011−136846号公報
図2は、特許文献1のガラス物品20をドアガラスとして用いるときの形態を示す部分断面である。図2に示すように、紫外線遮蔽膜12を備えたガラス板11を自動車用窓ガラスに用いると、紫外線遮蔽膜12がガラスラン13と擦れたときに異音(「ビビリ」とも記す)が発生したり、紫外線遮蔽膜12に擦りキズがついたりするという問題がある。この問題の原因として、紫外線遮蔽膜12の表面の滑り性が悪いことと、ガラスラン13の素材がゴム製であることから摩擦係数が著しく高いこととがあると考えられる。そこで、本発明の目的は、上記問題を解消するために、紫外線遮蔽膜上に滑り性に優れた保護膜を形成したガラス物品を提供することにある。
本発明は、その一側面から、
ガラス板と、前記ガラス板上に形成された紫外線遮蔽膜と、前記紫外線遮蔽膜上に形成された保護膜と、を有し、
前記紫外線遮蔽膜が、酸化ケイ素を主成分として含むとともに、紫外線遮蔽成分として有機化合物Aの微粒子を含み、
前記保護膜が、後述する式(1)により示されるシリコーンオイルを含む、紫外線遮蔽能を有するガラス物品、を提供する。
本発明は、その別の一側面から、
ガラス板と、前記ガラス板上に形成された紫外線遮蔽膜と、前記紫外線遮蔽膜上に形成された保護膜と、を有し、
前記紫外線遮蔽膜が、酸化ケイ素を主成分として含むとともに、紫外線遮蔽成分として有機化合物Aの微粒子を含み、
前記保護膜は、撥水機能または防曇機能を有し、かつ微粒子を含まない、紫外線遮蔽能を有するガラス物品、を提供する。
本発明によれば、摩擦係数の高い部材と接触しても滑らかに動作する保護膜を備え、当該保護膜が紫外線遮蔽膜と強固に密着したガラス物品を提供することができる。
本発明によるガラス物品をドアガラスとして用いるときの形態を示す部分断面である。 特許文献1のガラス物品をドアガラスとして用いるときの形態を示す部分断面である。 本発明によるガラス物品の一例を示す模式図である。
以下の説明では、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されない。
(ガラス物品)
図1に例示した本発明によるガラス物品10は、ガラス板1と、その表面に直接形成された紫外線遮蔽膜2と、さらにその表面に直接形成された保護膜4と、を備えている。本発明のガラス物品10は、保護膜4を備えることにより、ガラスラン3と擦れても滑らかに動作するため、異音(ビビリ)が発生しないし、紫外線遮蔽膜2に擦りキズも生じにくい。上記紫外線遮蔽膜2は、酸化ケイ素を主成分として含むとともに、紫外線遮蔽成分として有機化合物Aの微粒子を含む。紫外線遮蔽膜2については後述することとし、まずは保護膜4を説明する。
(保護膜)
保護膜4は、下記式(1)により示されるシリコーンオイルを含むか、または撥水機能または防曇機能を有し、かつ微粒子を含まない。
Figure 0005659177
ここで、式(1)中、R1はアミノ基(モノアミノアルキル基およびジアミノアルキル基を含む)であり、R2およびR3はそれぞれ独立に、メトキシ基またはエトキシ基であり、mは0または1以上の整数であり、nは1または2以上の整数である。
このようにシリコーンオイルの分子内に、アミノ基を含むことにより、摩擦係数が低い保護膜4となる。つまり、シリコーンオイルそのものが滑り性を付与する材料であるが、それに加えてアミノ基を有することにより、保護膜4の滑り性の向上が顕著となる。さらに、シリコーンオイルの分子内にメトキシ基またはエトキシ基(以下、総称して「アルコキシ基」とも記す)を含むことにより、当該アルコキシ基が、紫外線遮蔽膜2の表面の一部を構成するSi−OHと脱アルコール反応を起こし、紫外線遮蔽膜2と化学的に強固に密着する。このようにして、紫外線遮蔽膜2との密着性に優れた保護膜4を得ることができる。R2およびR3がアルキル基である場合は、紫外線遮蔽膜との密着性を向上させることができないため好ましくない。
また、保護膜4の別の構成は、撥水機能または防曇機能を有し、かつ微粒子を含まない膜である。異音発生の原因となっていた微粒子を含まないことにより、異音を発生しにくくすることができ、さらに保護膜4に撥水機能または防曇機能を付与し得る。保護膜4に撥水機能または防曇機能を付与するための材料は特に限定されない。保護膜4は、防曇機能を有し、かつ界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤を含むことにより、保護膜4に防曇機能を容易に付与し得る。
保護膜に含まれる界面活性剤は、陰イオン性のものを用いることが好ましい。陽イオン性または両性の界面活性剤は、空気側に界面活性剤の疎水性部が向くことが多いため、物品表面の親水性が低くなって、防曇性能が低下する傾向があるからである。非イオン系の界面活性剤は、分子量が大きいため、物品表面の親水性が低くなって、防曇性能が低下するので好ましくない。
陰イオン性界面活性剤としては、スルホコハク酸ジアルキルナトリウムのようなスルホコハク酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような硫酸エステル塩等が例示される。これらのうち、スルホコハク酸ジアルキルナトリウム、例えば、スルホコハク酸ジブチルナトリウム、スルホコハク酸ジヘキシルナトリウム、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム等が、防曇性能や防曇持続性が良好であり、好ましく用いられる。これら界面活性剤は、一種のみまたは二種以上を混合して用いることができる。
保護膜の膜厚は、5nm以上500μm以下、さらには10nm以上100μm以下、特に50nm以上10μm以下が好ましい。膜が薄すぎると、保護膜表面の滑らかさが持続しない恐れがあり、膜が厚すぎると膜の透過率が低下して物品の透明性を損なうことがある。
保護膜4の形成方法としては、紫外線遮蔽膜2上にシリコーンオイルを含む処理液を直接塗布してもよいし、処理液を含浸させた不織布などを用いて塗り付けてもよい。このようにして処理液を塗布した後に、加熱処理を施してもよいし、加熱処理を施さずに放置してもよい。上記の処理液が界面活性剤を含む場合は、紫外線遮蔽膜に由来するSi−OHと界面活性剤に由来する官能基とを反応させるために加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の温度は100℃以上200℃以下であることが好ましい。
保護膜4は、紫外線遮蔽膜2の膜面のすべてを覆うように形成してもよいし、紫外線遮蔽膜2の膜面の一部のみを覆うように形成してもよい。後者の場合は、図3に示すように、ガラスラン3と接触する紫外線遮蔽膜2の膜面7,8に保護膜4を形成し、ガラスラン3と接触しない膜面5には保護膜4を形成しないこととするとよい。膜面5に保護膜4を形成しなくても、ガラスラン3との接触に伴う異音を防止し、紫外線遮蔽膜2の擦りキズを防止することは可能である。自動車のドアの窓ガラスの場合、膜面7,8は、窓ガラスとして嵌め込まれた状態で上端および側端に位置することになる。
図3に示したガラス物品(フロントドア窓ガラス)10は、窓の開閉のために図示上下方向に移動する。このため、ガラス物品10の上端部近傍の紫外線遮蔽膜3の膜面7は、窓が閉じている状態ではガラスラン3に覆われて視認できないが、窓ガラスが下降して窓が開いた状態では露出して視認できる。他方、ガラス物品10の両側端部近傍の紫外線遮蔽膜3の膜面8は、窓が開いた状態および窓が閉じた状態の両方において、言い換えれば窓の開閉によらず、基本的にガラスラン3に覆われている。このため、紫外線遮蔽膜3に生じた擦りキズは、膜面8よりも膜面7においてより目立つこととなる。したがって、擦りキズ防止のみに配慮すればよい場合、保護膜4は、窓ガラスの開閉の動きに応じてガラスラン3に着脱する膜面7のみに形成するとよい。膜面7は、窓ガラスの上下動による開閉する窓に嵌め込まれた状態で上端に位置することになる。ただし、窓ガラスが左右にスライドして開閉する窓では、膜面7は側端部に位置することになる。保護膜4は、少なくとも膜面7に形成することが好ましく、さらに膜面8に形成してもよいが、窓ガラスとして嵌め込まれたときにガラスラン3に接触しない膜面5には形成しなくても構わない。
保護膜4を部分的に形成すると、原材料費を節減できるばかりでなく、保護膜4の形成によって膜の形成時または膜の形成後に生じうる膜の欠陥を防止できる。また、保護膜4の種類によっては、保護膜4の形成に伴う光学干渉によって発生する窓ガラスの外観低下を防止することもできる。
(紫外線遮蔽膜)
紫外線遮蔽膜2は、酸化ケイ素を主成分として含むとともに、紫外線遮蔽成分として有機化合物Aの微粒子を含み、好ましくは有機化合物B(詳細は後述するが、例えばポリエーテルおよび/またはポリオールに相当する化合物)をさらに含む。紫外線遮蔽膜2は、有機物として、シランカップリング剤またはシランカップリング剤に由来する構造単位をさらに含んでいてもよい。「シランカップリング剤に由来する構造単位」とは、具体的には、シランカップリング剤が他の有機物または無機物と反応して生成した構造(シランカップリング剤誘導体)を指す。
有機化合物Aは、常温で固体であるとともに分子量が5000以下であり、平均粒径が150nm以下となるように粉砕できるものであることが好ましく、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、ポリメチン系、イミダゾリン系など従来から公知の紫外線吸収剤を用いることができる。また、紫外線遮蔽能を有する限り、後述するベンゼンチオール銅錯体誘導体のように、従来は他の用途で用いられてきた有機化合物を使用してもよい。
有機化合物Aの分子量は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1500以下がさらに好ましく、場合によっては1300以下、さらに1200以下、特に900以下、とりわけ800以下であってもよい。ただし、有機化合物Aの分子量が低すぎると常温で固体を維持することが困難となる。したがって、有機化合物Aの分子量は、200以上が好ましく、300以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。
また、有機化合物Aは、分子中に、重合可能な炭素−炭素二重結合を含まないことが好ましい。重合可能な炭素−炭素二重結合としては、ビニル基、ビニレン基、ビニリデン基などの重合性官能基に含まれる二重結合が挙げられる。有機化合物Aは、分子中にこれらの官能基を含まないことが好ましい。
有機化合物Aの好ましい一例は、下記式(2)により示される官能基を2つ以上、例えば2〜8個、好ましくは2〜4個を、分子中に有する有機化合物αである。
Figure 0005659177
ここで、A1〜A5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基、または下記式(3)により示される官能基である。ただし、A1〜A5の少なくとも1つは、下記式(3)により示される官能基である。
Figure 0005659177
有機化合物αは、分子中に少なくとも2つのベンゾトリアゾール構造(式(3)参照)を含むベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。1分子中に少なくとも2つ存在するベンゾトリアゾール構造は、有機化合物αによる紫外線遮蔽効果に貢献し、有機化合物αが常温で固体状態となる程度に分子量を大きく保つことにも寄与する。周知のとおり、化合物の融点は分子量のみによって定まるわけではないが、分子量は融点を大きく左右する因子である。有機化合物αは、紫外線遮蔽効果の持続性に優れ、ガラス物品の場合には特に重視される特性であるヘイズ率が低い紫外線遮蔽膜の形成に適した化合物である。
式(1)により示される官能基は、例えば、A1〜A5のうち、1つが水酸基であり、1つが上記で規定したアルキル基であり、1つが式(3)により示される官能基であり、残り2つが水素原子であってもよい。具体的には、有機化合物αは、以下の式(4)で示される官能基を2つ以上分子中に有することが好ましい。式(4)において、R4は、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。
Figure 0005659177
なお、有機化合物αに含まれるアルキル基の炭素数は、多いほど分子全体の疎水性が高くなる傾向があるため、分散媒を水とする分散液から作製する膜において、微粒子として存在させることが容易となる。ただし、炭素数が多くなりすぎると、立体障害などの影響によって有機化合物αの融点が下がる傾向がある。
本発明の好ましい一形態において、有機化合物αは、式(4)により示される2つの官能基がアルキレン基により結合されている構造単位を有する。アルキレン基を構成する炭素数は、好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。
有機化合物αは、以下の式(5)で示される化合物であってもよい。
Figure 0005659177
ここで、R4およびR5は、互いに独立して、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20、好ましくは炭素数5〜15、より好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。
有機化合物Aの別の好ましい一例は、下記式(6)により示される構造単位を分子中に有する有機化合物βである。有機化合物βは、ベンゼンチオール銅錯体誘導体である。
Figure 0005659177
ベンゼンジチオール銅錯体は、式(6)に示された構造に由来する共鳴効果により、波長400nm程度の光線の吸収に寄与する。共鳴効果により吸収される波長はCuが他の金属原子に置換すればシフトする(例えば、CuをZnやAlに置換すればより短い波長域において共鳴効果が得られる)。波長400nm程度の光線の吸収能を重視すべき場合は、金属原子としてはCuが最適である。
ガラス板の紫外線遮蔽特性への要求の高まりにより、その遮蔽の程度のみならず、紫外域の光線をより長波長側に至るまで遮蔽することが期待されるようになっている。近年では、紫外域というよりは可視域の短波長域(400nm程度の波長域)の波長を有する光線まで遮蔽することが要求されることもある。式(6)に示す構造を有する有機化合物βの使用は、紫外域のみならず、400nm程度の波長域における光線の遮蔽にも効果がある。
有機化合物βは、以下の式(7)で示される構造を有することが好ましく、式(8)で示される構造を有することがさらに好ましく、例えば式(12)の化合物であってよい。
Figure 0005659177
Figure 0005659177
ここで、LおよびMは、それぞれ独立に、以下の式(9)、(10)、(11)のいずれかにより示される基である。また、Aは第四級アンモニウム塩である。第四級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトライソプロピルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラフェニルアンモニウム塩、テトラベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩を例示できる。
Figure 0005659177
ここで、R6、R7は、それぞれ独立に、炭素数が1〜4の直鎖のまたは分岐を有するアルキル基を指す。
Figure 0005659177
ここで、nは3〜5の整数である。
Figure 0005659177
Figure 0005659177
ここで、Buは直鎖のまたは分岐を有するブチル基である。
有機化合物Aは常温において固体である。本明細書において、「常温」は25℃を意味する用語として使用する。従来、溶液から形成される紫外線遮蔽膜には常温で液体である紫外線吸収剤が用いられてきた。このような紫外線吸収剤をエマルション化して得た溶液を用いて形成された紫外線遮蔽膜には、紫外線吸収剤が微細な液体として分散している。一方、本発明では、紫外線遮蔽膜中に、平均粒径が150nm以下の微粒子として有機化合物Aが分散していることが好ましい。平均粒径が150nm以下となる程度にまで有機化合物Aを細かく砕いてから膜に導入することにより、その膜は、透明性を損なうことなく紫外線遮蔽能の持続性に優れたものとなり得る。このようにして膜中に導入された有機化合物Aは、好ましくは、膜中においても結晶状態を保持している。膜中の有機化合物Aが結晶状態を保持していることはX線回折により確認できる。
有機化合物Aは、ボールミルなど公知の乾式または湿式の粉砕装置を用いて細かく砕き、分散媒に分散させた状態の分散液(微粒子分散組成物)として調製し、これを別途調製した膜の形成溶液と混合することにより、膜に導入するとよい。分散媒としては、水、低級アルコールが適しているが、水が最も適している。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど炭素数1〜3のアルコールが好適である。分散液には、必要に応じ、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、消泡剤、安定化剤などを添加してもよい。また、分散液は、有機化合物B、シランカップリング剤など有機化合物Aとともに紫外線遮蔽膜に添加してもよい他の成分を含んでいてもよく、膜中の酸化ケイ素を供給するシリコン含有化合物を含んでいても構わない。シリコン含有化合物を含む分散液は、そのまま膜の形成溶液として用いることができる。
有機化合物Aが粉砕されて所定の平均粒径に到達する時間は、粉砕装置の種類、投入量、さらには回転数などの粉砕条件に依存する。このため、量産に際しては、予め、粉砕装置による粉砕を適宜中断してサンプリングした粉砕物の平均粒径を確認することを繰り返しながら、所定の平均粒径が得られるまでの時間を定めておくとよい。なお、粉砕に際しては、粉砕するべき有機化合物Aに、界面活性剤、水溶性樹脂などを適宜添加してもよい。
有機化合物Aは、平均粒径が150nm以下、好ましくは10〜150nm、より好ましくは50〜140nm、特に好ましくは70〜140nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。微粒子分散液(微粒子分散組成物)の調製においても、この範囲の平均粒径を有するように有機化合物Aを粉砕しておくことが好ましい。微粒子の平均粒径は、大きすぎると膜の透明性を低下させるが、小さすぎると紫外線吸収能が劣化したり、その持続性が低下したりおそれがある。なお、上記「平均粒径」は、後述する実施例の測定値も含め、光子相関法の一種である動的光散乱法による測定値に基づく数値であり、具体的には、球相当径の体積基準による分布において累積頻度が50%となる粒子径である。「平均粒径」は、例えば、日機装社製「マイクロトラック超微粒子粒度分布計9340−UPA150」を用いて測定することができる。
膜中に分散した有機化合物Aの微粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察すれば、その存在を確認できる。SEMまたはTEMを用いて観察した膜断面に存在する各微粒子の最大長さの上位10%の平均値Aは、上述の定義による「平均粒径」の値を下回ることはない。したがって、上記平均値Aが150nm以下であれば「平均粒径」を150nm以下とみなすことができる。また、上記膜断面に存在する各微粒子の最大長さを規定する方向と直交する方向についての長さの下位10%の平均値Bは、上述の定義による「平均粒径」の値を上回ることはない。したがって、例えば上記平均値Bが50nm以上であれば「平均粒径」を50nm以上とみなしてもよい。
有機化合物Aは、これを溶かしうる有機溶媒に溶解させた溶質として膜に導入することもできるが、このような導入法は、紫外線遮蔽能の持続性の十分な向上をもたらさない。有機化合物Aを微粒子として膜に導入することにより、膜の紫外線遮蔽能の持続性は向上する。さらに、有機化合物Aを微粒子として添加することにより、溶質としての添加よりも好ましい分光吸収特性が得られる。
具体的には、微粒子として添加することにより、溶解させた場合よりも、分光吸光度曲線における有機化合物Aによる吸収ピークを長波長側にシフトさせることが可能になる。これを利用することにより、可視域に極めて近い紫外域、具体的には波長380〜390nm程度の紫外線を効果的に遮蔽することができる。本発明の好ましい一形態によれば、紫外線遮蔽膜を形成するための分散液(微粒子分散組成物)であって、紫外線遮蔽成分(微粒子である有機化合物A)の含有率を0.002質量%、光路長を1cmとして測定した吸光度が、波長390nmにおいて0.20以上であり、波長400nmにおいて0.18以下である分散液を提供できる。波長390nmにおける吸光度は、0.21以上がより好ましい。波長400nmにおける吸光度は、0.15以下、さらには0.10以下、特に0.08以下がより好ましい。また、波長380nmにおける吸光度は、0.40以上、さらには0.50以上、特に0.60以上が好ましい。
紫外域の長波長側における吸収特性に優れた紫外線吸収剤を用いたとしても、波長390nm程度の光線を遮蔽しながら波長400nm程度の光線が十分透過するように、分光吸収特性を調整するのは容易でない。波長400nm程度の光線は、上記のとおり遮蔽が求められることもあるが、この波長近傍の光線の遮蔽による膜の着色が問題を引き起こすことがある。膜の着色防止を優先するべき場合、波長400nmにおける吸光度が低下するように紫外線吸収剤の含有率を低下させると、380〜390nm程度の波長域における吸光度も低下する。波長380nm近傍で大きな吸光度を示すとともに波長380nmから400nmにかけて吸光度が大きく低下する理想的な紫外線吸収剤は知られていない。しかし、紫外線吸収剤を平均粒径が150nm以下である微粒子として添加することによりその吸収剤による吸収ピークを長波長側にシフトさせれば、既存の紫外線吸収剤を用いて、波長390nmにおける吸光度が高く波長400nmにおける吸光度が低い紫外線遮蔽膜を得ることが可能となる。
有機化合物Aによる吸収ピークのシフトの程度は、有機化合物Aの種類によって相違する。本発明者の検討によると、特に大きなシフトが得られるのは有機化合物αである。上記測定条件(含有率0.002質量%、光路長1cm)を適用して測定した分散液の分光吸光度曲線において、微粒子として添加した有機化合物αによる吸収ピークを、溶質として添加した有機化合物αによる吸収ピークよりも、8nm以上長い波長に位置させることが可能である。これに止まらず、微粒子として添加した有機化合物αによる吸収ピークにおける吸光度は、溶質として添加した有機化合物αによる吸収ピークにおける吸光度よりも、0.05以上、さらには0.07以上大きくなることがある。
なお、含有率が上記測定条件(0.002質量%)から外れた分散液を試料として吸光度を測定する場合は、含有率を下げるべきときにはその分散液が含む分散媒を試料に添加して、含有率を上げるべきときには試料から分散媒の一部を除去して有機化合物Aの含有率を調整し、測定を実施すればよい。含有率が上記程度に低い条件で測定することとしたのは、350〜400nmの範囲におけるトップピークの吸光度を考慮したためである。
有機化合物Aは、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対しては、質量%により表示して、1〜80%、さらには5〜60%、特に5〜50%、とりわけ7〜30%の範囲で含まれていることが好ましい。これを考慮すると、有機化合物Aは、膜の形成溶液の液量に対しては、同じく質量%により表示して、0.5〜25%、より好ましくは0.5〜15%となるように添加することが好ましい。
有機化合物Bは、有機化合物A(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)との相互作用によって、有機化合物Aの膜中における分散性の向上に寄与し、この化合物による光線遮蔽能を高め、さらにはこの化合物の劣化を抑制する成分である。紫外線遮蔽膜2をゾルゲル法などの液相成膜により比較的厚く(例えば300nmを超える厚さ、さらには500nm以上の厚さ)形成する際には、膜の形成溶液に含まれる液体成分の蒸発に伴ってクラックが発生することがある。有機化合物Bは、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする成分でもある。
有機化合物Bは、好ましくはポリエーテル化合物、ポリオール化合物、ポリビニルピロリドン類およびポリビニルカプロラクタム類から選ばれる少なくとも1種である。有機化合物Bは、ポリエーテル型の界面活性剤などのポリエーテル化合物であってもよいし、ポリカプロラクトンポリオール、ビスフェノールAポリオールなどのポリオール化合物であってもよい。有機化合物Bは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどであっても構わない。ポリエーテル化合物は2以上のエーテル結合を含む化合物、ポリオール化合物はジオール、トリオールを含む多価アルコールをそれぞれ意味する。ポリビニルピロリドン類は、具体的には、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体を指し、ポリビニルカプロラクタム類は、具体的には、ポリビニルカプロラクタムおよびその誘導体を指す。
有機化合物Bは、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、質量%で表示して、0〜75%、さらには0.05〜50%、特に0.1〜40%、とりわけ1〜30%、場合によっては10%以下、必要に応じて7%以下となるように、膜に添加することが好ましい。なお、有機化合物Aが多い場合は、その量に応じて有機化合物Bを減らしてもよい。
シランカップリング剤は、その種類が特に制限されるものではないが、RSiX3(Rは、ビニル基、グリシドキシ基、メタクリル基、アミノ基およびメルカプト基から選ばれる少なくとも1種を含む有機官能基であり、Xは、ハロゲン元素またはアルコキシル基である)で示される有機化合物が好ましい。シランカップリング剤は、そのR基が有機物とX基が無機物とそれぞれ反応する。この反応を通じて、シランカップリング剤は、有機化合物Aの膜中における分散性の向上に寄与し、クラックの発生を抑制しながら厚膜の形成を可能にする効果を奏する。シランカップリング剤は、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、モル%で表示して、0〜40%、好ましくは0.1〜20%、より好ましくは1〜10%となるように、膜に添加することが好ましい。
本発明による紫外線遮蔽膜には、有機化合物A,Bおよびシランカップリング剤以外の機能性成分を含んでいてもよい。例えば、近赤外線の吸収剤として知られているインジウム錫酸化物(ITO)微粒子は紫外線遮蔽膜への添加が好ましい成分の一つである。
ITO微粒子は、平均粒径が200nm以下、好ましくは5〜150nm、の微粒子として膜に分散させるとよい。有機化合物Aの微粒子と同様、粒径が大きすぎると膜の透明性を低下させ、小さすぎると添加による効果が十分得られない。ITO微粒子も予め分散液を調製しておいて、これを膜の形成溶液に添加するとよい。
紫外線遮蔽膜2は、無機成分として酸化ケイ素を含む。ただし、紫外線遮蔽膜2は、酸化ケイ素以外の無機成分を含んでいてもよい。酸化ケイ素以外の無機成分としては、上記ITO微粒子に加え、ゾルゲル法で用いた酸触媒に由来する成分(例えば、塩素、窒素、硫黄原子)などが挙げられる。紫外線遮蔽膜2に含まれる酸化ケイ素は、シリコンアルコキシドなどのシリコン含有化合物(シリコン化合物)として膜の形成溶液に添加される。
紫外線遮蔽膜2は、酸化ケイ素を主成分とし、Si−O結合のネットワーク中に有機化合物Aの微粒子やその他の成分が分散している形態を有する。このような形態を有する膜は、窓ガラスなどとしての屋外での使用に適している。上記「主成分」とは、紫外線遮蔽膜2における含有率が最大の成分をいい、当該含有率は典型的には50重量%以上であり、60重量%以上が好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。
以下、紫外線遮蔽膜2をゾルゲル法により成膜する場合の好ましい方法について説明する。
ゾルゲル法に用いる有機溶媒は、シリコンアルコキシドや水との相溶性が高く、ゾルゲル反応を進行させることができる溶媒であることが必要であり、炭素数が1〜3の低級アルコールが適している。シリコンアルコキシドとしては、特に制限はないが、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド(TEOS)、シリコンテトライソプロポキシドなどを用いればよい。シリコンアルコキシドの加水分解物をシリコン原料として用いてもよい。ゾルゲル法による形成溶液におけるシリコンアルコキシドの濃度は、シリコンアルコキシドをSiO2換算したときのSiO2濃度により表示して、3〜15質量%、特に3〜13質量%が好ましい。この濃度が高すぎると、膜にクラックが発生することがある。
水は、シリコンアルコキシドに対し、モル比により表示して、4倍以上、具体的には4〜40倍、好ましくは4〜35倍が好適である。加水分解触媒としては、酸触媒、特に塩酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの強酸を用いることが好ましい。酸触媒に由来する有機物は膜硬度を低下させることがあるため、酸触媒としては無機酸が好ましい。塩酸は、揮発性が高く、膜に残存しにくいため、最も好ましい酸触媒である。酸触媒の濃度は、酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜2mol/kgの範囲とすることが好ましい。
上記程度に水を過剰に加え、上記程度の濃度となるように酸触媒を加えると、ゾルゲル法により、有機物の分解を防ぐことができる温度域で比較的厚い膜を容易に形成できる。
上記に挙げた成分を含むゾルゲル法による膜の形成溶液を、有機化合物Aの微粒子を分散させた分散液と混合し、さらに必要に応じて有機化合物Bなどを添加すれば、紫外線遮蔽膜の形成溶液を準備できる。ただし、紫外線遮蔽膜の形成溶液の調製方法がこれに限られるわけではなく、微粒子分散液にゾルゲル法による成膜に必要な成分を順次添加してもよいし、ゾルゲル法以外の方法により膜を形成することとして有機化合物Aの微粒子とともにその方法に必要な成分(例えばポリシラザン)を含む形成溶液を調製しても構わない。
形成溶液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
形成溶液の乾燥工程は、塗布環境下における風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むように実施することが好ましい。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に形成溶液の塗布膜を曝すことにより、実施するとよい。加熱乾燥工程では、加水分解により生成したシラノール基の縮重合反応が進行するとともに、膜に残存する液体成分の除去、特に水の除去、が進行し、酸化ケイ素のマトリックス(Si−O結合のネットワーク)が発達する。加熱乾燥工程では、300℃以下、例えば100〜200℃の雰囲気に、塗布膜を曝すことにより、実施するとよい。
以上説明した一連の工程、すなわち、a)有機化合物Aの微粒子その他を含む紫外線遮蔽膜の形成溶液の調製工程、b)形成溶液のガラス板上への塗布工程、c)形成溶液の乾燥工程を順次実施することにより、液相成膜法により、紫外線遮蔽膜を形成することができる。
この製造方法は、シリコンアルコキシドなどのシリコン含有化合物を溶質として含み、有機化合物Aを平均粒径150nm以下の微粒子として含む紫外線遮蔽膜の形成溶液を調製する工程と、この形成溶液をガラス板上に塗布する工程と、このガラス板上において上記形成溶液を乾燥させて紫外線遮蔽膜を形成する工程と、を含む、紫外線遮蔽膜を有するガラス物品の製造方法である。この製造方法は本発明の別の一側面を構成する。この製造方法では、本発明による微粒子分散組成物(微粒子分散液)を用いて膜の形成溶液を調製することができる。また、この製造方法は、固体である有機化合物Aを粉砕して平均粒径150nm以下の微粒子とする工程をさらに含んでいてもよい。
紫外線遮蔽膜の膜厚は、300nmを超え15μm以下、さらには500nm以上10μm以下、特に1000nm以上5000nm以下、が好ましい。膜が薄すぎると十分な紫外線遮蔽能が得られないことがあり、膜が厚すぎると膜の透過率が低下して物品の透明性を損なうことがある。
(ガラス板)
ガラス板1は、特に制限されないが、Fe23の濃度を高め、必要に応じてTiO2、CeO2などその他の紫外線吸収成分を添加した組成を有するソーダ石灰珪酸塩ガラス板を用いることが好ましい。
ガラス板1としては、0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、のFe23を含むガラス組成を有し、波長380nmにおける光線透過率が70%以下、好ましくは50%以下、波長550nmにおける光線透過率が75%以上であるソーダ石灰珪酸塩ガラス板が好適である。もっとも、Fe23の含有量が0.1質量%以下、好ましくは0.02%〜0.06%であるソーダ石灰珪酸塩ガラス板を用いることもできる。なお、上記において、Fe23濃度は、ガラス板に含まれる全酸化鉄(酸化鉄はFeOとしてもガラス中に存在する)をFe23に換算して算出される数値である。
ただし、ガラス板1は、上記に限らず、可視域における光線透過率が低いものであってもよい。このようなガラス板としては、車両の窓ガラス用として製造されている波長550nmにおける光線透過率が20〜60%のガラス板が挙げられる。ガラス板を構成する成分のみでは、特に長波長域の紫外域を十分に遮蔽することが困難であるから、可視光透過率が低いガラス板についても、上記で説明した紫外線遮蔽膜2の適用は有用である。
本発明の好ましい一形態によれば、ISO9050(1990年度版)に基づく紫外線透過率(TUV380)が5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下である、紫外線遮蔽能を有するガラス物品を提供できる。また、波長400nm付近における遮蔽能に優れた有機化合物Aを用いることにより、あるいは有機化合物Aを微粒子として添加することによる吸収ピークのシフトを利用することにより、ISO13837(convention A)に従って算出した紫外線透過率TUV400が5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下である、紫外線遮蔽能を有するガラス物品を提供することも可能である。さらに、本発明の好ましい一形態によれば、上記程度の紫外線遮蔽能を有しながらも、波長550nmにおける光線透過率(T550)が70%を超えるガラス物品、さらには可視光透過率YAも70%を超えるガラス物品を提供できる。本発明の好ましい一形態によれば、例えば、紫外線透過率(TUV380)が2%以下であり、かつ波長550nmにおける光線透過率(T550)が70%を超えるガラス物品を提供することが可能であり、また例えば、紫外線透過率(TUV380)および光線透過率(T550)が上記範囲にあり、ヘイズ率が4%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1.5%以下であるガラス物品、を提供することが可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。
(実施例1、比較例1)
式(5)において、R4およびR5がともに1,1,3,3−テトラメチルブチル基であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製「TINUVIN360」;有機化合物A)を分散質として含み、水を分散媒とする分散液(紫外線吸収剤含有率10重量%、平均粒径110nm)を準備した。上記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、予め、平均粒径が100nmとなるように、ペイントコンディショナーを用い、ジルコニアビーズとともに混合して粉砕したものを用いた。この紫外線吸収剤分散液39.5質量%、純水17.2質量%、エチルアルコール(片山化学製)12.6質量%、グリセリンにプロピレンオキシドが付加したトリオール(ADEKA製G−300;平均分子量300;有機化合物B)0.45質量%、テトラエトキシシラン(TEOS;信越化学工業製)30.2質量%、濃塩酸(関東化学製;35質量%)0.025質量%を混合、攪拌し、紫外線遮蔽膜の形成溶液を得た。
次いで、洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス基板(日本板硝子製UVカットグリーンガラス100×100mm、厚さ3.1mm)上に、湿度30%、室温下でこの形成溶液をフローコート法にて塗布した。そのまま、室温で約5分程度乾燥した後、予め200℃に昇温したオーブンに投入し15分加熱し、その後冷却し、紫外線遮蔽膜を形成した。なお、用いたUVカットグリーンガラスは、波長380nmにおける光線透過率(T380)が40%、波長550nmにおける光線透過率(T550)が77%である。このUVカットグリーンガラス板は、Fe23に換算した全酸化鉄を0.9質量%程度含有している。上記と同様にして紫外線遮蔽膜付きガラス基板をもう1枚準備した。1枚は以下の方法によりさらに保護膜を形成し(実施例1)、もう1枚は保護膜を形成することなくそのまま用いた(比較例1)。
次に、アルコール混合溶媒(日本アルコール販売社製「ソルミックスAP−7」)に対し、濃塩酸およびシリコーンオイル(信越化学工業社製「KF−8001」)を溶解させることにより処理液を調製した。この処理液は、塩酸の濃度が0.1質量%で、シリコーンオイルの濃度が0.2質量%であった。この処理液をベンコットに染み込ませた上で、当該ベンコットを、湿度30%室温下で上記紫外線遮蔽膜に対して20秒程度塗り込んだ。このようにして紫外線遮蔽膜上に保護膜を形成した。かかる保護膜の膜厚は、10nmであった。
<摩擦試験>
摩擦試験は、まず、往復摩耗試験機に自動車のインナーサイドのウェザーストリップを取り付けた上で、当該ウェザーストリップを9Nの荷重で、実施例1および比較例1のガラスサンプルに押し付けて、1〜1.5mmのたわみ量に調整した。そして、ガラスサンプルに対してウェザーストリップを前後に約20cm往復させて、1000往復終了後、3000往復終了後、5000往復終了後にそれぞれ、ガラスサンプルの表面を目視観察することにより、擦りキズの本数を確認した。その結果を以下の表1に示す。
また、摩擦試験前後のガラスサンプルに対し、接触角計(協和界面科学社製「CA−V150」)を用いて水接触角を測定することにより、摩擦試験前後の表面状態を確認した。この結果も併せて表1に示す。なお、摩擦試験中に異音(ビビリ)が発生したかどうかも確認し、その結果を表1に示した。
Figure 0005659177
表1に示されるように、実施例1では、5000往復摩擦試験をした後も、擦りキズは発生しなかった。これに対し、比較例1では、3000往復摩擦試験をした後に擦りキズが発生した。これは、実施例1のガラスサンプルに保護膜が形成されたことにより、ウェザーストリップとの擦れが滑らかになり、擦りキズが生じにくくなったことによるものと考えられる。実施例1では、摩擦試験中に異音(ビビリ)が発生しなかった結果からも、ウェザーストリップとの擦れが滑らかになっていると考えるのが妥当と言える。
また、実施例1では、摩擦試験終了後においても水接触角が84°であったことから、5000往復の摩擦試験終了後においても、紫外線遮蔽膜上に保護膜が残っているものと推察される。
(実施例2)
処理液の配合を変えたこと、および処理液を染み込ませた後に120℃で10分間加熱処理を追加したことを除いては、実施例1と同様にしてガラスサンプルを作製した。つまり、実施例2では、処理液として、アルコール混合溶媒(日本アルコール販売社製「ソルミックスAP−7」)と界面活性剤(日油社製「ラピゾールA−30」)との混合比が99:1となるように混合したものを用いた。実施例2で作製した保護膜の膜厚は、50nmであった。
<摩擦係数測定>
JIS K7125に準じて、動摩擦係数および静止摩擦係数を測定した。具体的には、トヨタ社製のクラウン車のインナーウェザーストリップの触毛部分を50mmに切断し、これを200gの冶具に貼り付けた。そして、100mm×100mmのガラスサンプルに接触するように、冶具に貼り付けられたインナーウェザーストリップ(摩擦子)を搭載した。次に、冶具の上に800gの重りを載せた(つまり、摩擦子にかかる全荷重が1kg(9.8N)となるようにした)。そして、引張り試験機(島津製作所製「オートグラフAGS−Jシリーズ」)を用いて、100mm/minの引張り速度で冶具を引っ張ることにより、摩擦子を75mm移動させた。移動終了までの引っ張り荷重の最大値を測定した。さらに摩擦子の移動終了までの引っ張り荷重の平均値から動摩擦係数を算出した。これらの結果を以下の表2に示す。なお、引っ張り荷重の最大値および動摩擦係数の値が小さいほど、表面が滑らかであることを示している。
Figure 0005659177
表2に示されるように、保護膜を備える実施例2は、保護膜を備えない比較例1に比して、引っ張り最大荷重および動摩擦係数のいずれも小さかった。このことから、ガラス物品の表面に微粒子を含まない保護膜を備えることにより、保護膜が他の部材と接触しても滑らかに動作し得る性能を付与し得ることが示された。本実施例では、保護膜が界面活性剤を含むことにより、保護膜の滑り性が顕著に高まっているものと考えられる。
以上の各実施例および比較例1の結果から、本発明のガラス物品は、摩擦係数の高い部材と接触しても滑らかに動作する保護膜を備え、当該保護膜が紫外線遮蔽膜と強固に密着していることが明らかである。
1、11 ガラス板
2、12 紫外線遮蔽膜
3、13 ガラスラン
4 保護膜
5 ガラスランと接触しない膜面
7、8 ガラスランと接触する紫外線遮蔽膜の膜面
10、20 ガラス物品

Claims (5)

  1. ガラス板と、前記ガラス板上に形成された紫外線遮蔽膜と、前記紫外線遮蔽膜上に形成された保護膜と、を有し、
    前記紫外線遮蔽膜が、酸化ケイ素を主成分として含むとともに、紫外線遮蔽成分として有機化合物Aの微粒子を含み、
    前記保護膜が、下記式(1)により示されるシリコーンオイルを含み、
    前記保護膜は、少なくとも、開閉移動時にガラスランに接触する前記紫外線遮蔽膜の表面に形成されている、紫外線遮蔽能を有する窓ガラス
    Figure 0005659177
    ここで、式(1)中、R1はアミノ基であり、R2およびR3はそれぞれ独立に、メトキシ基またはエトキシ基であり、mは0または1以上の整数であり、nは1以上の整数である。
  2. ガラス板と、前記ガラス板上に形成された紫外線遮蔽膜と、前記紫外線遮蔽膜上に形成された保護膜と、を有し、
    前記紫外線遮蔽膜が、酸化ケイ素を主成分として含むとともに、紫外線遮蔽成分として有機化合物Aの微粒子を含み、
    前記保護膜は、防曇機能を有し、かつ界面活性剤を含み、かつ微粒子を含まず、
    前記保護膜は、少なくとも、開閉移動時にガラスランに接触する前記紫外線遮蔽膜の表面に形成されている、紫外線遮蔽能を有する窓ガラス
  3. 前記保護膜は、開閉移動時に前記ガラスランに接触する前記紫外線遮蔽膜の表面にのみ形成されている、請求項1又は2に記載の窓ガラス
  4. 前記有機化合物Aは、常温で固体であるとともに分子量が5000以下であり、
    前記微粒子の平均粒径が150nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の窓ガラス
  5. 前記有機化合物Aが、下記式(2)により示される官能基を2つ以上分子中に有する、請求項4に記載の窓ガラス
    Figure 0005659177
    ここで、A1〜A5は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、直鎖のもしくは分岐を有する炭素数1〜20のアルキル基、または下記式(3)により示される官能基であり、A1〜A5の少なくとも1つは、下記式(3)により示される官能基である。
    Figure 0005659177
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