JP5656681B2 - 植物栽培用フィルム - Google Patents
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Description
[1]ポリビニルアルコール(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」と略称する場合がある)フィルム層と防根剤を含む層(以下、「防根剤を含む層」を「防根剤層」と略称する場合がある)とを有する植物栽培用フィルム、
[2]前記防根剤層がPVAをさらに含む、上記[1]の植物栽培用フィルム、
[3]前記防根剤が2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)脂肪酸ポリグリコールエステルである、上記[1]または[2]の植物栽培用フィルム、
[4]PVAフィルム層/防根剤層の層構成を有する2層構造の積層体であるか、または、PVAフィルム層/防根剤層/PVAフィルム層の層構成を有する3層構造の積層体である、上記[1]〜[3]のいずれか1つの植物栽培用フィルム、
[5]上記[1]〜[4]のいずれか1つの植物栽培用フィルムの製造方法であって、PVAフィルム層上に、防根剤層を形成するための原液をコートする工程を含む、製造方法、
[6]植物と上記[1]〜[4]のいずれか1つの植物栽培用フィルムとが直接接触するように植物を栽培する、植物栽培方法、
に関する。
本発明の植物栽培用フィルムは、PVAフィルム層と防根剤層の少なくとも2層を有する。ここでPVAフィルム層とはPVAフィルムからなる層を意味し、PVA繊維を用いた布帛やこれにPVA以外の樹脂を含浸させたシートは包含しない。
特に前記した他の単量体が、(メタ)アクリル酸、不飽和スルホン酸などのように、得られるPVAの水溶性を促進する可能性のある単量体である場合には、得られる植物栽培用フィルムにおいてPVAフィルム層が溶解するのを防止するために、ポリビニルエステルにおけるこれらの単量体に由来する構造単位の割合は、ポリビニルエステルを構成する全構造単位のモル数に基づいて、5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましい。
PVAフィルム層において、PVA、可塑剤および界面活性剤の合計の占める割合としては、植物栽培用フィルムとしての性能やPVAフィルムの成形性の観点から、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%の範囲内であることがより好ましく、90〜100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
防根剤層における可塑剤の含有量は、それに含まれるPVA100質量部に対して、0〜20質量部の範囲内であることが好ましく、0〜12質量部の範囲内であることがより好ましく、0〜8質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
界面活性剤を配合する場合、原液または防根剤層におけるその含有量は、それらが含むPVA100質量部に対して、0.01〜0.5質量部の範囲内であることが好ましく、0.02〜0.3質量部の範囲内であることがより好ましく、0.05〜0.1質量部の範囲内であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.01質量部以上であることにより、製膜性および剥離性を向上させることができる。一方、界面活性剤の含有量がPVA100質量部に対して0.5質量部以下であることにより、得られる防根剤層の表面に界面活性剤がブリードアウトしてブロッキングが生じるのを抑制することができる。
(1)PVAフィルム層上に防根剤層を形成するための原液をコートし、必要に応じてさらに乾燥することにより植物栽培用フィルムを製造する方法;
(2)防根剤層上にPVAフィルム層を形成するための原液をコートし、必要に応じてさらに乾燥することにより植物栽培用フィルムを製造する方法;
(3)PVAフィルム層となるPVAフィルムと、防根剤層となるフィルムとをそれぞれ公知の方法等を利用して予め製膜しておき、これらを接着剤を使用したり熱融着したりするなどして貼り合わせて植物栽培用フィルムを製造する方法;
などが挙げられる。これらの方法においては、所望の層構成を有する植物栽培用フィルムを得るために、さらに他の操作を組み合わせることもでき、例えば、上記(1)の方法において、PVAフィルム層上に防根剤層を形成するための原液をコートした後に、そのコート面に別のPVAフィルム層を貼り合わせて、必要に応じてさらに乾燥すれば、PVAフィルム層/防根剤層/PVAフィルム層の層構成を少なくとも有する植物栽培用フィルムを得ることができる。また上記の各方法において、PVAフィルム層および防根剤層以外の他の層をさらに貼り合わせたり、1つまたは複数の操作を繰り返すこともできる。
上記の方法の中でも、(1)の方法が、本発明の植物栽培用フィルムを容易にかつ円滑に製造することができることから好ましい。
また、上記した防根剤層を形成するための原液としては、例えば、防根剤および必要に応じてさらにPVA等のバインダー樹脂、接着剤、可塑剤、界面活性剤、これら以外の上記した他の成分等が液体媒体中に溶解した溶液や、防根剤、液体媒体および必要に応じてさらにPVA等のバインダー樹脂、接着剤、可塑剤、界面活性剤、これら以外の上記した他の成分等が溶融した溶融物などが挙げられる。
なお、上記の各原液(溶液、溶融物等)において、一部の成分が溶解または溶融せずに分散していてもよい。
なお以下の製造例、実施例および比較例において採用された、フィルムの膨潤度、養分透過性および植物栽培試験の各測定または評価方法を以下に示す。
以下の製造例、実施例または比較例で得られたフィルムを約1.5gにカットし、30℃の1000gの蒸留水中に浸漬した。30分間浸漬後にフィルムを取り出し、ろ紙で表面の水を取り、質量「X」を測定した。続いてそのフィルムを105℃の乾燥機で16時間乾燥した後、質量「Y」を測定し、下記式(1)により膨潤度を算出した。
膨潤度(%) = 100 × X/Y (1)
ボウルの内側にざるを配置し、ざるの上に以下の実施例または比較例で得られたフィルムを配置した。次にボウルとフィルムの間に濃度5%のグルコース水溶液を150g加え、フィルムの上には蒸留水を150g加えることで、グルコース水溶液と蒸留水とがフィルムによって隔離されるようにした。続いて水分の蒸発を防ぐため、全体をポリ塩化ビニリデンフィルムで包んだ。これを23℃で24時間放置後、ボウル側の液(当初のグルコース水溶液)と、ざる側の液(当初の蒸留水)のそれぞれについて、グルコースの濃度を測定し、両濃度の差を算出した。両濃度の差が2.0%未満の場合を「○」(良好)と評価し、2.0%以上の場合を「×」(不良)と評価した。なお、上記評価においてグルコースの濃度はサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製デジタル屈折計「AR200」を用いて測定したBrix濃度を意味する。
ボウルに養液(株式会社ハイポネックスジャパン製「ハイポネックス」EC=2を200倍に希釈したもの)200gを入れ、養液に片面が接触するように以下の実施例または比較例で得られたフィルムを配置した。フィルムの上に、土壌としてヤシガラチップ50gを置き、芝の種(タキイ種苗株式会社製 西洋芝「ベントグラス・ハイランド」)を蒔き、霧吹きで充分給水し、乾燥を防ぐため、全体をポリ塩化ビニリデンフィルムで包んだ。これを15〜25℃の室内におき、人工灯を用いて栽培した。なお、芝が生長しポリ塩化ビニリデンフィルムに接触してからは、ポリ塩化ビニリデンフィルムを除いた。当該試験において「生長」および「貫通」を評価項目とした。「生長」の評価項目では、蒔いた種の50%以上が発芽したものを「○」(良好)と評価し、50%未満の場合を「×」(不良)と評価した。「貫通」の評価項目では、根がフィルムを貫通した日が栽培してから150日以上の場合を「○」(良好)と評価し、150日未満の場合を「×」(不良)と評価した。
PVAフィルムの製造
酢酸ビニルの単独重合体をけん化して得られたPVA(重合度2400、けん化度99.9モル%)100質量部、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.1質量部および水からなる揮発分率90質量%の水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚み20μmのPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムを枠に固定して、膨潤度が160%になるように熱処理をした。このようにして得られたPVAフィルムを、以下、「PVAフィルム−1」という。
上記と同様にして、厚み30μm、膨潤度160%のPVAフィルム(以下、「PVAフィルム−2」という)、および、厚み40μm、膨潤度160%のPVAフィルム(以下、「PVAフィルム−3」という)を製造した。
上記の製造例で得られたPVAフィルム−1の片面に、酢酸ビニルの単独重合体をけん化して得られたPVA(重合度2400、けん化度99.9モル%)を4質量%含むとともに、防根剤として2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)プロピオン酸ポリグリコールエステル(ランクセス株式会社製、「プリベントール B2」)が6質量%分散された水溶液をバーコーターにより塗工し、その上に別のPVAフィルム−1を配置して風乾することにより、PVAフィルム層(20μm)/防根剤層(1μm)/PVAフィルム層(20μm)の層構成を有する積層体のフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、上記した方法により膨潤度の測定、養分透過性の評価、および植物栽培試験における各評価を行った。結果を表1に示した。
上記の製造例で得られたPVAフィルム−2の片面に、酢酸ビニルの単独重合体をけん化して得られたPVA(重合度2400、けん化度99.9モル%)を9質量%含むとともに、防根剤として2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)プロピオン酸ポリグリコールエステル(ランクセス株式会社製、「プリベントール B2」)が1質量%分散された水溶液をバーコーターにより塗工し、風乾することにより、PVAフィルム層(30μm)/防根剤層(10μm)の層構成を有する積層体のフィルムを得た。得られたフィルムを用いて、上記した方法により膨潤度の測定、養分透過性の評価(PVAフィルム層を上に向けて評価した)、および植物栽培試験における各評価(PVAフィルム層を上に向けて評価した)を行った。結果を表1に示した。
上記の製造例で得られたPVAフィルム−3を単独で用いて、上記した方法により養分透過性の評価、および植物栽培試験における各評価を行った。結果を表1に示した。
酢酸ビニルの単独重合体をけん化して得られたPVA(重合度2400、けん化度99.9モル%)100質量部および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム0.1質量部を含むとともに、防根剤として2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)プロピオン酸ポリグリコールエステル(ランクセス株式会社製、「プリベントール B2」)が2質量部分散された揮発分率90質量%の水溶液を60℃の金属ロール上で乾燥して、厚み40μmのPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムを枠に固定して、膨潤度が160%になるように熱処理をした。得られたフィルムを単独で用いて、上記した方法により養分透過性の評価、および植物栽培試験における各評価を行った。結果を表1に示した。
Claims (5)
- ポリビニルアルコールフィルム層と防根剤を含む層とを有する植物栽培用フィルムであって、ポリビニルアルコールフィルム層/防根剤を含む層/ポリビニルアルコールフィルム層の層構成を有する3層構造の積層体である、植物栽培用フィルム。
- 前記防根剤を含む層がポリビニルアルコールをさらに含む、請求項1に記載の植物栽培用フィルム。
- 前記防根剤が2−(4−クロロ−2−メチルフェノキシ)脂肪酸ポリグリコールエステルである、請求項1または2に記載の植物栽培用フィルム。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物栽培用フィルムの製造方法であって、ポリビニルアルコールフィルム層上に、防根剤を含む層を形成するための原液をコートする工程を含む、製造方法。
- 植物と請求項1〜3のいずれか1項に記載の植物栽培用フィルムとが直接接触するように植物を栽培する、植物栽培方法。
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