JP2008193980A - 植物栽培システムおよび植物栽培方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物体の根に酸素供給を容易に行う栽培システムを提供する。
【解決手段】水または養液(以降、養液等と言う)上のフィルム面またはフィルム上の植物栽培用支持体とその上方に配置された蒸発抑制部材との間に空気層を持たせる空隙を設け、植物を栽培することにより根に酸素を供給することで、根をフィルムに均一に張らせる。また、潅水手段により植物栽培用支持体が一度に吸収可能な量の養液等を潅水し、植物栽培用支持体が乾燥してから次の潅水を行う、間歇的な潅水により、根をフィルムに均一に張らせる。
【選択図】図1

Description

本発明は植物栽培システムおよび植物栽培方法に関する。より詳しくは、本発明は、水または養液(以降、養液等と言う)上のフィルム面またはフィルム上の植物栽培用支持体とその上方に配置された蒸発抑制部材との間に空気層を持たせる空隙を設け、植物を栽培する植物栽培システムおよび植物栽培方法である。
本発明によれば、潅水手段により植物栽培用支持体に養液等を潅水することもできる。養液等の潅水量は一度の潅水を植物栽培用支持体が吸収できる範囲であれば良い。また、潅水間隔は栽培ステージ毎に変えることができ、特に根をフィルムに密着させ均一に張らせるためには、植物栽培用支持体が吸収可能な限り多くの量を潅水した後、次の潅水までの間隔を開けて根に酸素を供給する必要がある。
本発明によれば、フィルムへの養液等の供給は該フィルムへ直接供給するか、不織布のような保水力のある材料を経由してフィルムへ水槽中の養液等を供給することができる。また、水槽中にフロート部材を配置し、フィルムを乗せることができる。
前記フィルムは無孔性親水性フィルムが好適に用いられるが、フィルム面またはフィルム上に植物栽培用支持体が配置された場合は該植物栽培用支持体面と蒸発抑制材(マルチング部材)が密着すると、蒸発抑制剤に結露した水または上部から潅水された養液等が根の周囲に長期にわたって存在し、根に酸素不足が生じる。
本発明は、上記の問題を解消することができる。
また本発明の栽培システムにより、栽培すべき植物を水分抑制状態として、該植物を高品質化することが容易になる。
無孔性親水性フィルムの下から養液を供給し、フィルム上で植物体を栽培することができる。水と養分は無孔性親水性フィルムの下側からフィルムに吸収されるがフィルムの上には水としては放出されない。植物体の根はフィルムに張り付いて水と養分を吸収し生長する。植物体の根には酸素が必要であるが、フィルムの根が存在する側にあり、酸素を十分に摂れる。
上記栽培手段では、植物体に水ストレスを制御して加えることができ、植物体内に糖や抗酸化物質、アミノ酸といった光合成成分を高めることができる。
一方、水を吸収したフィルムの上面からは水は放出されないが、水蒸気が蒸発するので、この水蒸気を結露させ、フィルム上の植物栽培用支持体に供給するために、水蒸気の蒸発を抑制する蒸発抑制材(マルチング部材)で植物栽培用支持体を被覆することがある。また、制御された量の水や養液を植物栽培用支持体に供給することも出来る。
このようなケースでは、特に水分が多く植物栽培用支持体に供給されると、根は酸素不足になりフィルム面における根の発生が減少し、酸素を求めてフィルムの端に向かう。したがって、フィルム全体に均一に根が張らず、酸素の多いフィルムの端に根が集中し、植物体の生長を妨げると同時に場合によっては、端に集中した根がフィルムを突き破り養液側に入ることがある。
根が養液に直接入れば、水ストレスがかかりにくくなり、光合成成分の蓄積は少なくなる。
本発明の目的は、上記した欠点を解消した植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。より詳しくは、本発明の目的は、栽培ベッドである水槽からフィルムに水と養分を供給し、フィルム上の植物栽培用支持体と植物栽培用支持体の上に配置された蒸発抑制材(マルチング部材)との間に空隙を設け、植物体をフィルム上で栽培する植物栽培システムおよび植物栽培方法を提供することである。
本発明の他の目的は、植物栽培用支持体に上部から養液等の潅水可能な潅水手段を配置し、栽培ステージ毎に潅水方法を変えて植物体を栽培する植物栽培システムおよび植物栽培方法を提供することである。
本発明の他の目的は、水槽に熱水または冷却水を通すチューブを配置することにより水槽の少量の養液を効率的に加温または冷却できるため、生長空間全体の厳密な温度・湿度制御すなわち空調を行わずに植物栽培を行う、植物栽培システムおよび栽培方法を提供することである。
本発明の他の目的は、大量の水や肥料を使用しない植物栽培システムおよび栽培方法を提供することである。
本発明の他の目的は、大容量の養液タンクや養液を搬送するまたは常時循環する大容量のポンプを必要としない栽培システムおよび栽培方法を提供することである。
本発明の他の目的は、極少量の培土を用いることもでき、栽培毎に汚染の無い培土を使用でき、土壌中の病原菌や線虫といった連作障害の害を与えない植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、残留農薬などで汚染されている土壌を使用することのない植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、使用済みの水および肥料の排出が極少量で、環境負荷の少ない植物栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、養液等に接触するように配置したフィルム上で栽培することにより、経済的であると同時に高品質の植物を得る栽培システムおよび栽培方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、水または養液を収容するための水槽と、前記水槽からフィルム底面に水または養液が供給され、フィルム上の植物栽培用支持体と植物栽培用支持体の上に配置された蒸発抑制材(マルチング部材)との間に空隙を設け、該フィルム上で植物を栽培することを特徴とする植物栽培システムが上記課題の解決に有効であることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、フィルム上に植物栽培用支持体を配置した植物栽培システムが提供される。
本発明によれば、更に、植物栽培用支持体上に水分の蒸発抑制部材(マルチング部材)を配置した植物栽培システムが提供される。
本発明によれば、植物栽培用支持体に上部より潅水手段により水または養液を潅水することができる植物栽培システムが提供される。
さらに本発明者らは、特定の無孔性親水性フィルム(例えば高分子製フィルム)
が、植物の根と実質的に一体化するという全く新たな現象を見出した。このような知見に基づいて更に研究を進めた結果、該フィルムと実質的に一体化した植物の根が、フィルムを介して、フィルムに接触した養液中の肥料成分および水を植物の成長に必要な程度、吸収する現象をも見出した。さらに、根がフィルムと一体化し、フィルムを介して水および肥料成分を吸収しようとするために、膨大な数の根毛が生起されことによって、根の近傍にある水、肥料成分、空気などを効率良く吸収できることも見出した。
本発明によれば、前記フィルムとして、上記特定の無孔性親水性フィルムを使用した植物栽培システムが提供される。
本発明の植物栽培システムによれば、前記フィルムを養液等の水面に配置し、フィルム上の植物栽培用支持体と植物栽培用支持体の上に配置された蒸発抑制材(マルチング部材)との間に空隙を設ける植物栽培システムおよび植物栽培方法が提供される。
また、潅水手段(例えば、点滴チューブ)からの潅水も、栽培ステージが進むに従って潅水する液の組成、量、および潅水間隔を変化させる植物栽培方法が提供される。
同様に自然光ならびに人工的な光の種類や量も栽培ステージ毎に変化させる植物栽培方法が提供される。
また、水槽に熱水または冷却水を通すチューブを配置することにより水槽の少量の養液を効率的に加温または冷却できるため、生長空間全体の厳密な温度・湿度制御すなわち空調を行わずに植物栽培を行う、植物栽培システムおよび栽培方法が提供される。
上記構成を有する本発明の植物栽培システムおよび植物栽培方法においては、植物体の根がフィルム上の特定場所に局在することなく均一に張り、植物体の生育が良好であり、同時に特定場所に根が集中することによる、根がフィルムを突き破ることが無い植物栽培を行うことができる。
本発明の植物栽培システムによれば、植物の根はフィルムに密着しているため、フィルムの下にある養液等を加温または冷却することにより、植物体の根圏域温度を効率的に制御することができる。そのため、生長空間全体の厳密な温度・湿度制御すなわち空調を行わずに植物栽培を行うことができる。
本発明の植物栽培システムによれば、フィルムにより、植物の根が水槽中の養液等に浸漬することが無く、植物の根に十分な酸素が供給される。そのため、養液等に溶存酸素を与える必要が無いため、養液を常時循環する必要が無く、養液等の使用量が極めて少なくでき、設備投資および運転経費を少なくできる。
更に、本発明によれば、極少量の培土を用いることもでき、栽培毎に汚染の無い培土を使用でき、連作障害、土壌の農薬汚染、土壌への塩の蓄積などの影響を受けない。
更に、本発明によれば、フィルム下の養液等に供給される水および養分は、極めて少量であり排出量が少なく、環境負荷が低く、更には、貴重な水資源の有効利用、肥料使用量の低減などといった栽培コスト面で極めて有利である。
更に、本発明の植物栽培システムにおいて、特定の無孔性親水性フィルムを使用することにより、栽培すべき植物に対する水分ストレスの制御が極めて容易となり、該植物を高品質化することができる。
また、本発明の植物栽培システムにおいて、特定の無孔性親水性フィルムを使用した場合、植物の根はフィルム下の養液等と直接には接触していないため、該養液が病原微生物、病原菌で汚染されていても、微生物、細菌は該フィルムを透過できないため、根に触れることがなく、植物汚染を回避できる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ本発明を更に具体的に説明する。以下の記載において量比を表す「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準とする。
(植物栽培システム)
本発明の植物栽培システムは、水または養液(以降、養液等と言う)上のフィルム面またはフィルム上の植物栽培用支持体とその上方に配置された蒸発抑制部材との間に空気層を持たせる空隙を設け、植物を栽培する植物栽培システムである。
図1は、本発明の植物栽培システムの基本的な一態様を示す模式図である。図1を参照して、この態様の植物栽培システムは、水槽1中の養液等3に配置されるフィルム2に植物栽培用支持体4と蒸発抑制材(マルチング部材)6の間に空隙10を設けるために、蒸発抑制材(マルチング部材)6を浮かせる蒸発抑制材の支え5を配置する。
蒸発抑制材(マルチング部材)6には植物体植付け孔7および潅水手段9から潅水できるように潅水用孔8を設ける。これらの孔は丸や多角形の穴またはスリット形状でも良い。
養液中に配置できる他の手段としては、養液等をフィルムに供給する不織布からなる揚水布が乗ったフロート部材をフィルム下に配置することも可能である。
また、養液等3を加温または冷却するために、加熱媒体または冷却媒体を通すチューブを水槽1に配置することもできる。
(植物栽培用支持体)
本発明で用いられる植物栽培用支持体としては、一般に用いられる植物栽培用支持体を特に制限なく、用いることができる。例えば、土耕栽培に用いられる土壌、および水耕栽培に用いられる培地が挙げられる。
例えば、無機系では天然の砂、れき、パミスサンドなど、加工品(高温焼成等)では、ロックウール、バーミキュライト、パーライト、セラミック、籾殻くん炭など。有機系では天然のピートモス、ココヤシ繊維、樹皮培地、籾殻、ニータン、ソータンなど、合成品の粒状フェノール樹脂などがある。
合成繊維の布あるいは不織布も使用可能である。不織布にはポリエステル、親水性ポリエステル、ポリオレフィン、およびナイロンなどからなる不織布が使用可能であり、目付け(不織布1m2当たりの重量(g))は2〜500g、好ましくは5〜400g、より好ましくは10〜300gである。これらを単独で、あるいは組み合わせて用いても良い。また、植物栽培用支持体4として、不織布または布の上に、無機系、有機系の培土を組み合わせて用いることができる。必要最小限の肥料および微量要素を、これらの土壌ないし培地に加えてもよい。
(揚水布)
フィルムの下側に使われる揚水布は、養液等を保持しフィルムに養液等を供給する役割を果たす。揚水布には不織布または布が好適に用いられ、不織布にはポリエステル、親水性ポリエステル、ポリオレフィン、およびナイロンなどからなる不織布が使用可能であり、目付け(不織布1m2当たりの重量(g))は2〜500g、好ましくは5〜400g、より好ましくは10〜300gである。
(フロート部材)
フロート部材の材質、厚さ等も、特に制限されず、基本的には養液等3に浮かべることのできる材料(すなわち、養液等3より比重が小さい材料)から適宜選択することが可能である。
必要に応じて、養液3とフィルムの接触を容易にする手段を採用しても良い。このような手段としては、例えば、フロート部材にはスリット状または円、楕円、多角形、星形その他の形状の穴を1個以上開けることができる。または、フィルム上にかかる荷重を考慮して養液等3に浮いている状態でフロート部材表面のレベルが養液等3の表面レベルに近くなるようにフロート部材の浮力を調節すること等も可能である。
例えば、フロート部材の材質としては、軽量化、易成形性および低コストの点からはポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の汎用プラスチックの発泡体あるはこれらプラスチックの板状の製品が好適に使用可能である。
(無孔性親水性フィルム)
本発明で用いられるフィルムとして、無孔性親水性フィルムを好ましく用いることができる。本発明において特に好ましく用いられる無孔性親水性フィルムは、「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムであることが特徴である。本発明において「植物体の根と実質的に一体化」できるか否かは、例えば、後述する「一体化試験」によって判断できる。
本発明者らの知見によれば、「植物体の根と実質的に一体化し得る」フィルムとしては、以下のような水分透過性/イオン透過性のバランスを有する無孔性親水性フィルムが好ましいことが見出されている。
本発明者らの知見によれば、このような水分/イオン透過性のバランスを有するフィルムにおいては、栽培すべき植物の生長(特に、根の生長)に好適な水分/養分透過性のバランスが容易に実現できるため、根と実質的に一体化が可能となると推定される。
本発明において、植物は無孔性親水性フィルムを通して肥料をイオンとして吸収するが、このように使用するフィルムの塩類(イオン)透過性が、植物に与えられる肥料成分の量に影響すると推定される。該フィルムを介して水と塩水を対向して接触させた際に、下記に示す測定開始4日後の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のイオン透過性を有する無孔性親水性フィルムを好適に用いることができる。このようなフィルムを用いた際には、根に対する好適な水あるいは肥料溶液を供給し、該フィルムと根との一体化を促進することが容易となる。
この無孔性親水性フィルムは、耐水圧として10cm以上の水不透性を有することが好ましい。このようなフィルムを用いた際には、根とフイルムの一体化を促進することができる。又、根に対する好適な酸素供給および該フィルムを介しての病原菌汚染を防止することが容易となる。
(耐水圧)
耐水圧はJIS
L1092(B法)に準じた方法によって測定することができる。本発明のフィルムの耐水圧としては10cm以上、好ましくは20cm以上、より好ましくは30cm以上である。
(水分/イオン透過性)
本発明においては、上記無孔性親水性フィルムは、該フィルムを介して水と塩水(0.5質量%)とを対向して接触させた際に、測定開始4日後の水/塩水の栽培温度において測定した電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、更には3.5dS/m以下であることが好ましい。特に、2.0dS/m以下であることが好ましい。この電気伝導度の差は、以下のようにして測定することが好ましい。
<実験器具等>
なお、本明細書の以降の部分(実施例も含む)において用いた実験器具、装置および材料は、(特に指定がない限り)後述する「実施例」の前の部分に示した通りである。
<電気伝導度の測定方法>
肥料は、通常イオンの形で吸収されるため、液中に溶けている塩類(あるいはイオン)量を把握することが望ましい。このイオン濃度を測定する手段として電気伝導度(EC、イーシー)を用いる。ECは比導電率ともいい、断面積1cm2の電極2枚を1cmの距離に離したときの電気伝導度の値を使用する。単位はシーメンス(S)が使われ、S/cmとなるが肥料養液のECは小さいので、1/1000のmS/cmを使う(国際単位系ではdS/m(dはデシ)と表示する)。
実際の測定においては、上記した電気伝導度の測定部位(センサー部)にスポイトを用いて試料(例えば溶液)を少量乗せ、導電率を測定する。
<フィルムの塩/水の透過試験>
市販の食塩(例えば、後述する「伯方の塩」)10gを水2000mlに溶解して、0.5%塩水を作製する(EC:約9dS/m)。
「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記の塩水150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、塩水側のECを測定する。
本発明においては、フィルムを介する植物の根の養分(有機物)吸収を容易とする点からは、上記フィルムは、所定のグルコース透過性を示すことが好ましい。このグルコース透過性は、下記の水/グルコース溶液の透過試験により好適に評価できる。本発明においては、上記フィルムは、該フィルムを介して水とグルコース溶液とを対向して接触させた際に、測定開始後3日目(72時間)の水/グルコース溶液の栽培温度において測定した濃度(Brix%)の差が4以下であることが好ましい。この濃度(Brix%)の差は、更には、3以下、より好ましくは2以下(特に1.5以下)であることが好ましい。
<フィルムの水/グルコース溶液透過試験>
市販のグルコース(ブドウ糖)を用いて5%グルコース溶液を作製する。上記塩水試験と同様の「ざるボウルセット」を使い、ざる上に試験すべきフィルム(サイズ:200〜260×200〜260mm)を乗せ、該フィルム上に水150gを加える。他方、ボウル側に上記のグルコース溶液150gを加え、得られた系全体を食品用ラップ(ポリ塩化ビニリデンフィルム、商品名:サランラップ、旭化成社製)で包んで、水分の蒸発を防ぐ。この状態で、常温で放置して、24hrs毎に水側、グルコース溶液側の糖度(Brix%)を糖度計で測定する。
(根とフィルムの一体化)
後述する実施例1の条件(バーミキュライト使用)で、試験を行う。すなわち、サニーレタス(本葉1枚強)を2本用いて、35日間、植物の生育試験を行う。
得られた植物−フィルムの系において、植物苗の根元で茎葉を切断する。根の密着したフィルムの茎がほぼ中心になるように、該フィルムを巾5cm(長さ:約20cm)に切断して試験片とする。
ばね式手秤に市販のクリップを付け、上記で得た試験片の一方をクリップで固定して、ばね式手秤の示す重量(試験片の自重に対応=Aグラム)を記録する。次いで試験片の中心にある茎を手で持ち、下方に緩やかに引き下げて、根とフィルムが離れる(または切断される)際の重量(荷重=Bグラム)をばね式手秤の目盛りから読み取る。この値から初期の重量を差し引き、得られた(B−A)グラムを巾5cmの引き剥がし荷重とする。
本発明においては、このようにして測定された剥離強度において、前記植物体の根に対して10g以上の剥離強度を示すフィルムが好適に使用可能である。この剥離強度は、更には30g以上、特に100g以上であることが好ましい。
(フィルム材料)
上述した「根と実質的に一体化し得る」性質を満足する限り、本発明において、使用可能な無孔性親水性フィルム材料は、特に制限されず、公知の材料から適宜選択して使用することが可能である。このような材料は、通常フィルムないし膜の形態で用いることができる。
より具体的には、このようなフィルム材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、セロファン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、エチルセルロース、ポリエステル等の親水性材料が使用可能である。
上記フィルムの厚さも特に制限されないが、通常は、300μm以下程度、更には200〜5μm程度、特に100〜20μm程度であることが好ましい。
本発明者らの知見によれば、植物の根がフィルムと一体化するまでの養分は、フィルム上の植物栽培用支持体に加えておくことが望ましい。
(養液)
本発明において使用可能な養液(ないし肥料溶液)は特に制限されない。例えば、従来の土耕栽培ないし養液土耕栽培において使用されてきた養液は、本発明においていずれも使用可能である。
一般には、水または養液として植物の生育にとって必要不可欠な無機成分としては、主要な成分として:窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)、微量成分として:鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)が挙げられる。
さらにこの他に、副成分として、珪素(Si)、塩素(Cl)、アルミニウム(Al)、ナトリウム(Na)等がある。必要に応じて、本発明の効果を実質的に阻害しない限り、その他の生理活性物質も加えることができる。更に、グルコース(ブドウ糖)などの糖質、アミノ酸等を添加することも可能である。
(潅水手段)
潅水手段9は培土または不織布などの植物栽培用支持体4に、水あるいは養液を間歇的に少量ずつ供給するために用いることができ、植物栽培用支持体4のもつ緩衝機能を活かしながら栽培するためのものである。例えば、噴霧灌水や、水が貴重なイスラエルで開発された点滴チューブ(例えば、「ドリップチューブ」とも称される)であるが、植物栽培用支持体の上部からの潅水で作物の生育に必要な水および肥料をできるだけ少量供給する手段として用いることができる。
(蒸発抑制材・マルチング部材)
本発明においては、いわゆる「マルチング」を、好適に使用することができる。ここに、「マルチング」とは、植物の生長を助けるため、防寒・乾燥防止などを根元や幹などに施すために使用されるフィルム状あるいは板状などの材料を言う。このようなマルチングを用いた場合には、水分の有効利用性が高まるというメリットを得ることができる。
すなわち、本発明によるシステムでは、養液等3からフィルム2中に移動した水や養分が、フィルム2と一体化した植物の根によって直接吸収される以外に、フィルム2の表面から水蒸気として蒸発する傾向がある。このように蒸発する水蒸気を大気中に出来る限り逃がさないようにするために、植物栽培用支持体4を蒸発抑制材(マルチング部材)6で覆うことができる。
蒸発抑制材(マルチング部材)6で覆うことにより、フィルム2の上の蒸発抑制材(マルチング部材)6の裏面あるいは植物栽培用支持体4表面に水蒸気を凝結させ、水として利用することができる。
(蒸発抑制材の支え)
植物栽培用支持体4と蒸発抑制材(マルチング部材)6の間に空隙を設けるために、蒸発抑制材(マルチング部材)の支え5を水槽1の壁近くに配置する。支えの材料はフィルムに乗せて沈まない限り限定されず、プラスチック材料、金属材料、無機材料などから選ぶことが出来る。配置の場所も水槽の壁側に限らず、植物栽培用支持体4と蒸発抑制材6の間に空隙を持たせることが出来れば中央に有っても良い。
(栽培システム)
本発明においては、上記した構成を有する限り、これと組み合わせて使用すべき栽培システムは特に制限されない。本発明の栽培システムの特徴である、植物体の根をフィルム全体に均一に張らせ、植物体の生育を良好にし、フィルムの特定箇所への根の局在化を防ぐとこにより、根がフィルムを突き破ることが無く、栽培植物の高品質化を達成するための好適な栽培システムの態様を以下に述べる。
(好適なシステム)
図1を参照して、
水槽1に養液等3を加え、フィルム2を養液等3に接触させる。フィルム2に植物栽培用支持体4と蒸発抑制材(マルチング部材)6を配置し、その間に空隙10を確保するために、蒸発抑制材(マルチング部材)6を浮かせる蒸発抑制材の支え5を配置する。蒸発抑制材(マルチング部材)6には植物体を植付け用孔7、および潅水手段9から養液等を潅水可能にする潅水用孔8を設ける。これらの孔は丸や多角形の穴またはスリット形状でも良い。
実施例5に示すように、マトリックスとマルチング部材が密着した場合とマトリックスとマルチング部材の間に空隙を設けた場合の差は明白で、空隙を設けることで根がフィルム全体に均一に張り、植物体の生育が良好で、根によるフィルムの貫通が生じない栽培が行える。また、実施例6に示すように、潅水量としてマトリックスが一度に吸収できる量を供給した後、この潅水量を消費するまで次の潅水を止めることで、根がフィルム全体に均一に張ることがわかる。
潅水手段9からの潅水する養液組成や量および潅水間隔は植物体の種類や栽培環境によって、栽培ステージ毎に変化させることが出来る。常時多めに潅水し植物栽培用支持体4に根を張らせる方法、植物栽培用支持体が一度に吸収できる最大限の量を潅水し、植物栽培用支持体4の水分が乾燥状態になるまで次の潅水を控える方法、および比較的短い間隔で少量の潅水を続け、植物栽培用支持体4の水分をやや乾燥気味に保つ潅水方法などを栽培ステージ毎に使い分けることができる。
(本発明の利点)
上記構成を有する本発明の栽培システムを用いることにより、養液等3に接触するフィルム2の上の植物栽培用支持体4と蒸発抑制材6の間に空隙が確保され、植物栽培用支持体4に潅水したときに生じる根の近傍の酸素不足を防ぐことができる。このため、根をフィルム全体に均一に張らせることができ、植物の生育を良好に保つと同時にフィルム2の一部に根が局在化することを防ぎ、根によるフィルム2の貫通を防止できる。
また、フィルム2下の養液等3に供給される水および養分、フィルム2上に供給される水および養分の量は、栽培ベッド1という閉じられた領域にあるため、地下水汚染、大地土壌の表層への塩の蓄積といった環境面で、更には、いずれも使用量は極めて少量ないしゼロであり、貴重な水資源の有効利用、肥料使用量の低減などといった栽培コスト面で極めて有利である。
また、本発明の植物栽培システムおよび植物栽培方法により、栽培すべき植物に対する水分ストレスの制御が極めて容易となり、該植物を高品質化することができる。
(各部の構成)
以下、本発明の栽培方法における各部の構成について詳細に説明する。このような構成(ないしは機能)に関しては、必要に応じて、本発明者による文献(WO 2004/064499号)の「発明の詳細な説明」、「実施例」等を参照することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
以下で用いた実験方法は、上述したものの他は、以下の通りである。
<pHの測定>
pHの測定は後述のpHメーターによって行った。標準液(pH7.0)で校正したpHメーターのセンサー部分を測定すべき溶液につけ、本体を軽く揺らし、値が安定するのを待ち、LCD(液晶)表示部に表示される値を読み取った。
<Brix%の測定>
Brix%測定は後述の糖度計(屈折計)を用いて行った。測定溶液をスポイトでサンプリングし、糖度計のプリズム部分に滴下し測定後、LCDの値を読み取った。
<実験器具等>
1.使用器具および装置
1)ざるボウルセット:ざるの半径6.4cm(底面の面積約130cm2)
2)発泡スチロール製トロ箱:サイズ55×32×15cm等
3)上皿電子天秤:Max.1Kg、(株)タニタ
4)ばね式天秤:Max.500g、(株)鴨下精衡所
5)ポストスケール:ポストマン100、丸善(株)
6)電気伝導度計:TwinCond
B−173、(株)堀場製作所
7)pHメーター:pHパル TRANSInstruments、グンゼ産業(株)、
コンパクトpHメーター(TwinpH)B-212 (株)堀場製作所
8)糖度計(屈折計):PR201
、(株)アタゴ
2.使用材料
(土壌)
1)スーパーミックスA:水分約70%、微量肥料入り、(株)サカタのタネ
2)ロックファイバー:栽培用粒状綿66R(細粒)、日東紡(株)
3)バーミキュライト:タイプGS、ニッタイ株式会社
(フィルム)
4)ポリビニルアルコール(PVA):アイセロ化学(株)、厚さ40μm
5)二軸延伸PVA:ボブロン、日本合成化学工業(株)
6)親水性ポリエステル:デュポン社(株)、厚さ12μm
7)浸透セロファン:(燻製作製用フィルム)((株)東急ハンズ)
8)セロファン:二村化学工業(株)、厚さ35μm
9)微孔性ポリプロピレンフィルム:PH−35、(株)トクヤマ
10)不織布:シャレリア(超極細繊維不織布)、旭化成(株)
(苗用種)
11)サニーレタス:レッドファイヤー、タキイ種苗(株)
(肥料)
12)原液ハイポネックス:(株)ハイポネックスジャパン
13)大塚ハウス1号、2号、5号: 大塚化学(株)
(その他)
14)伯方の塩:伯方塩業(株)
15)ブドウ糖:ブドウ糖100、(株)イーエスNA
実施例1
(根とフィルムの一体化現象)
肥料濃度の根のフィルムとの一体化現象に与える効果を調べた。養液として、ハイポネックス100倍希釈液、1000倍希釈液、および水(水道水)を用いて、その効果を比較した。
約20cm×20cmの無孔性親水性フィルム(PVA)上に土壌として、バーミキュライト、またはロックファイバーを約300ml配置した。この土壌内に、植物の苗として、サニーレタスの幼苗(本葉1枚強)を2本植え付けた。土壌として2種類、養液として3種類の合計6種類の系を作製した。養液量は各300mlであった。フィルム(PVA)上には約2cmの厚さの土壌を載せた。実験はハウス内で行い、自然光を使用した。栽培期間中の気温は0〜25℃、湿度は50〜90%RHであった。
水分蒸発量および養液のEC値を、栽培開始13日後、および35日後にそれぞれ測定した。35日後には、前述したように、根とフィルムの一体化現象の目安である「引き剥がし試験」を行った。
上記実験条件を纏めると、以下の通りである。
1.実験
1)フィルム:PVA40μm(アイセロ化学)
200×200mm
2)苗:サニーレタス幼苗(本葉1枚強)
3)土壌:バーミキュライト(細粒)、ロックファイバー66R
4)溶液:水、ハイポネックス原液、100倍希釈水溶液、1000倍希釈水溶液
5)器具:ざるとボウルのセット
6)置き場所:ハウス(温度湿度制御無し)
7)実験方法:
ざる上のフィルム(200×200mm)上にバーミキュライト150g(水分73%、乾燥重量40g)あるいはロックファイバー200g(水分79%、乾燥重量40g)を載せ、苗を2本植え付ける。該ざるを、240〜300gの養液または水が張られたボール中に設置し、該フイルムを該養液あるいは水と接触させ、幼苗を栽培する。
8)栽培期間:10月29日〜12月4日
上記実験により得られた結果を、表1に示す。
EC:液肥追加前/追加後
(実験結果に対する記述)
上記した表1からわかるように、フイルム下に水を使用した場合に比較して、養液を使用した方が、植物の生育のみならず、根とフイルムの接着強度が著しく向上する。これは、植物がフィルムを介して、水のみならず肥料成分をも吸収していることを示している。更に、フイルムを介して水および肥料成分を効率良く吸収するためには、根がフイルム表面に強く密着することが必須であり、その結果として根とフイルムが一体化することになるものと考えられる。
実施例2
(塩水透過試験)
前述の<フィルムの塩/水透過試験>方法に従って、各種フィルムの塩透過試験を行った。フィルムはPVA、ボブロン(二軸延伸PVA)、親水性ポリエステル、セロファン、PH−35、超極細繊維不織布(シャレリア)の6種類である。
上記実験により得られた結果を表2に示す。
(実験結果に対する記述)
6種類のフィルムのうち、塩の透過性が大きなものは、超極細繊維不織布(シャレリア)、PVA、親水性ポリエステルおよびセロファンであった。塩の透過性が小さいものがボブロンであった。塩の透過性が全く認められなかったものが微孔性ポリプロピレンフイルム(PH−35)であった。本発明に好適に用いられるフイルムの塩透過性の観点から、微孔性ポリプロピレンフイルム(PH−35)は不適であることがわかった。
実施例3
(ブドウ糖透過試験)
前述の<グルコース(ブドウ糖)透過試験>方法に従って、各種フィルムのブドウ糖透過試験を行った。フィルムはPVA、ボブロン(二軸延伸PVA)、セロファン、浸透セロファン、PH−35の5種類である。
上記実験により得られた結果を表3に示す。
(実験結果に対する記述)
5種類のフィルムのうち、PVA、セロファンおよび浸透セロファンはブドウ糖の透過性は良好であったが、ボブロンではブドウ糖透過性はほとんど認められなかった。又、PH−35では透過性は全く見られなかった。この結果から、ブドウ糖透過性という観点からは、本発明に好適に使用されるフイルムはPVAとセロファンであることがわかった。
実施例4
(耐水圧試験)
前述したように、JISL1092(B法)に準じた試験により、200cmH2Oの耐水圧試験を行った。
(実験結果)
フィルム種 耐水圧(cmH2O)
PVAフィルム(40μm) 200以上
二軸延伸PVA(ボブロン) 200以上
セロファン 200以上
親水性ポリエステル 200以上
超極細繊維不織布 0
(実験結果に対する記述)
良好な耐水性を有するフイルムの、本発明における重要な役割は、該フイルム下の水がフイルムを通過してフイルム上に浸透した結果、植物が該フイルム中の水または養液を吸収する必要がなく、根とフイルムの一体化が損なわれることを防止すると同時に、フイルム下の微生物、細菌類、ウイルス類による植物の汚染を防止することである。
本実験結果から、フイルムの耐水圧という観点から、本発明に好適に使用できるフイルムとして、超極細繊維不織布のように孔を有する不織布、織布は不適であることがわかった。
前述した実施例1、2、3に示すように、塩とブドウ糖の好適な透過性と同時に好適な耐水性を有するフイルムはPVA,セロファン、親水性ポリエステルなどの素材からなる無孔性親水性フイルムに限定され、該無孔性親水性フイルムによって、はじめて根とフイルムの一体化が生じることがわかった。
実施例5
無孔性親水性フィルムを用いた栽培において、収量のアップと根のフィルム貫通を防ぐ目的で、フィルムに密着する根をフィルムの一部に偏在させないこと、および根の量を多くするための試験を行った。根に空気(酸素)を供給するために、マトリックスの上面に空間を設けること、あるいは蒸発抑制材(マルチング材)に孔およびスリットを入れた。
(1)試験
1)ハウス試験条件
光:蛍光灯(昼白色 40W 東芝)6本/棚
温度:20℃
CO2:制御なし
点灯:4:00〜22:00
消灯:22:00〜4:00
2)栽培試験
水槽:育苗用トレー サイズ34×54×8cm
フィルム:Hymec40μm(メビオール(株)) 54×74cm
マトリックス:25S(不織布、メビオール(株))、MC−1(ピートモス系培土、兼弥産業(株))
蒸発抑制材(マルチング材)支え:塩ビパイプ(径13mm)で四角の枠作製
蒸発抑制材(マルチング材):白黒マルチフィルム(大倉工業(株))、
発泡板(エスレンウッドパネル厚み10mm(積水化成品工業(株)) 32×52cmの長手方向中心に幅10mmのスリット(端から7cm、4cm)および15cm間隔に15mmφの定植穴(端から11cm(長)8.5cm(短))を開けた
苗:小松菜(明菜2号、横浜植木(株))播種後20日の苗
養液:大塚ハウス1号、2号標準処方(大塚化学(株))EC=2.5 10L
潅水:水 点滴チューブ(ネタフィム社(イスラエル))
トレーに養液10Lを加え、フィルムを浮かべ、フィルムの上にマトリックスを乗せた。マトリックスと蒸発抑制材(マルチング部材)が密着のケースでは、マルチング部材として白黒マルチフィルムを使用した。マトリックスと蒸発抑制材(マルチング材)の間に空隙を設けるケースでは、マルチング材として発泡板を塩ビパイプの枠に乗せた。マルチング部材の孔ないしスリットから小松菜の苗6本をトレー毎に植付け、人工光の棚に設置し栽培した。潅水は発泡板の中心に開けたスリットの上に点滴チューブを設置し、1〜3回/日の頻度で1株あたり5mLを潅水した。
(2)結果
表4にマトリックスとして不織布の25Sおよび培土とマルチング部材が密着した場合、および空隙を設けた場合について、1トレー6本の収穫重量(g)と同様条件のトレー数の中で根がフィルムを破った数を示す。
収穫重量と根の貫通数 *印は根の貫通あり
図2〜5に表4の収穫重量を測定したサンプルについて、フィルム裏側から観察した根の写真を示す。
1)マトリックス25S(不織布)とマルチングフィルムが密着した場合
図2 フィルムの裏からの写真(25S)
2)マトリックス培土とマルチングフィルムが密着した場合
図3 フィルムの裏からの写真(培土)
3)マトリックス25Sの上面に空隙を設けた場合
図4フィルム裏からの写真(25S)
4)マトリックス(培土)の上面に空隙を設けた場合
図5 フィルムの裏からの写真(培土)
(3)実験結果に対する記述
図2は潅水によりマトリックスの25Sとマルチングフィルムが密着し、フィルム上の空気層が無くなるために、根がフィルムの中心部を避けて酸素を求めフィルムの端(壁)に向かって偏在、集中している。このため根がフィルムを貫通するケースが多い。図3はマトリックスの培土とマルチングフィルムが密着した場合で、やはりフィルムの中心の根が少なく、端に集中している。
図4(マトリックス:25S)、図5(マトリックス:培土)は、フィルムを抑える塩ビパイプの枠の上に10mm厚みの発泡板を置き、マトリックスの上面に空気層を設けた。フィルムの端に根が集中することなく、フィルム全体に均一に根が生長している。表4に示すように、マルチング部材とマトリックスの間に空隙を設け、空気層を持たせることで、収穫量も増え(根の貫通による収穫量アップは別にして)、根によるフィルム貫通も全く無かった。
以上の結果より、根が端に集中するのは酸素不足の場合に、酸素を求めてフィルムの端(壁)に集中し、フィルム面の根が不均一となること、および根のフィルム貫通を引き起こす。一方、マトリックスの上面に空隙を設けて根に酸素を供給することで、フィルム全体に根が均一に生成し、端に局在化することもなく、植物の生育と根によるフィルムの貫通も生じないことがわかる。
実施例6
無孔性親水性フィルムを使用した植物栽培において、水ストレスをかけた状態で収量をアップするために、根の量を増やすことが重要である。根は径が100μmオーダーの親根(1次根、2次根・・・)と10μm程度の根毛の両者を増やすため以下の試験を行った。
フィルムの一部に根を偏在させないため、潅水が培土全体に行き渡るように、一度の潅水量を多くした。根毛を増す方法として、酸素が根に供給されるよう、潅水間隔をあけて3〜7日間隔とした。
1)試験
容器:プラスチック容器 サイズ20×13×5.5cm
養液:大塚化学(株)大塚ハウス1号、2号標準処方 EC=2、水600ml
フィルム:ハイメックフィルム厚み40μm(メビオール(株) 22×30cm
培土:MC−1(兼弥産業(株))500ml(深さ2cm)
マルチング:白黒マルチ(大倉工業(株))
潅水:大塚化学(株)標準処方 養液EC=2、水
苗:小松菜(明采2号(横浜植木(株))播種後16日
人工光:蛍光灯(昼白色40W(東芝(株))照度約5000Lx
試験期間:12.15〜.1.12(28日間)
2)試験条件
注 養液潅水には数字に枠、水潅水は枠無(単位:mL)
容器に養液600mlを加え、フィルムを浮かせた。フィルム上に培土500mlを乗せ、スタート時の養液または水を160ml加え、小松菜の苗を植えつけた。白黒マルチフィルムに切り目をいれ、苗の周囲の培土を被覆し、容器を人工光の棚上で栽培した。
3)結果
4週間栽培した後収穫した結果を表5に、No.2のフィルムの裏から見た根の写真を図6に示す。

( )内の数値は水(潅水)/養液(下)を100とした値。
4)実験結果に対する記述
フィルム下を養液として、養液の潅水は水だけの潅水より僅か10%しか収量が増えない。また、フィルム下を水としてフィルム上から養液を潅水した場合、下を養液として上から水を潅水したときの半分となる。この結果から、フィルム下の養液の植物の生育に対する効果が非常に大きいことを示している。
図6のフィルムの裏側から見た根の広がりを見ると、フィルム全体に均一に張っており、実施例5の結果も合わせ考えると間歇的な潅水が根の均一な生長に効果があることを示している。
また、水ストレスにより植物に蓄積される糖などの光合成生成物量を表すBrix値が高いものが得られた。
植物体の根に酸素を十分供給することにより、健全な生育と根がフィルムを破るトラブルを防ぐことが出来、農産物生産の安定に寄与する。
は、本発明の植物栽培システムの基本的な概念を示す模式断面図である。 は、実施例5においてマトリックス25S(不織布)とマルチングフィルムが密着した場合におけるフィルムの裏からの写真(25S)である。 は、実施例5においてマトリックス培土とマルチングフィルムが密着した場合におけるフィルムの裏からの写真(培土)である。 は、実施例5においてマトリックス25Sの上面に空隙を設けた場合におけるフィルム裏からの写真(25S)である。 は、実施例5においてマトリックス(培土)の上面に空隙を設けた場合におけるフィルムの裏からの写真(培土)である。 は、実施例6の表6中No.2のフィルム裏からの写真である。
符号の説明
1 水槽(栽培ベッド)
2 フィルム
3 養液または水
4 植物栽培用支持体
5 蒸発抑制材(マルチング部材)の支え
6 蒸発抑制材(マルチング部材)
7 植物体植付け孔
8 潅水用孔
9 潅水手段(点滴チューブ)
10 空隙

Claims (9)

  1. 水または養液を収容するための水槽と、前記水槽からフィルム底面に水または養液を供給しつつ該フィルム上で植物体を栽培するにあたり、フィルム面またはフィルム上の植物栽培用支持体とその上方に配置された蒸発抑制部材との間に空気層を持つ空隙を設ける栽培システム。
  2. 前記植物栽培用支持体に上部より潅水手段により水または養液を潅水することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培システム。
  3. 前記フィルムが無孔性親水性フィルムであることを特徴とする請求項1〜2に記載の植物栽培システム。
  4. 前記無孔性親水性フィルムが、該フィルムを介して水と塩水とを対向して接触させた際に、測定開始後4日目(96時間)の水/塩水の電気伝導度(EC)の差が4.5dS/m以下のフィルムである請求項3に記載の植物栽培システム。
  5. 前記無孔性親水性フィルムが、該フィルムを介して水とグルコース溶液とを対向して接触させた際に、測定開始後3日目(72時間)の水/グルコース溶液の濃度(Brix%)の差が4以下のフィルムである請求項3または4のいずれかに記載の植物栽培システム。
  6. 前記無孔性親水性フィルムが、該フィルム上に植物体を配置して栽培を開始した35日後に、前記植物体の根に対して10g以上の剥離強度を示すフィルムである請求項3〜5のいずれかに記載の植物栽培システム。
  7. 前記無孔性親水性フィルムが、耐水圧として10cm以上の水不透性を有する請求項3〜6のいずれかに記載の植物栽培システム。
  8. 該水槽中に収容されるべき水または養液に浮かぶことができるフロート部材と、該フロート部材上に配置された無孔性親水性フィルムを少なくとも含む、請求項1〜7のいずれかに記載の植物栽培システム。
  9. 該水槽中の水または養液上に配置された無孔性親水性フィルムを少なくとも含む、請求項1〜8のいずれかに記載の植物栽培システムを用いて、前記植物体を栽培する植物栽培方法。
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