JP5655470B2 - エポキシ化合物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エポキシ化合物の新規な製造方法に関するものであり、さらに詳細には、ジオールやポリオール等の原料として工業的に有用なエポキシ化合物をオレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を反応することにより、高活性かつ高選択的に安全に製造する方法に関するものである。
エポキシ化合物の製造方法、特にプロピレンオキシドの製造方法については、いくつかの方法が知られている。
例えばプロピレンからクロルヒドリンを経由するクロルヒドリン法が知られているが、該クロルヒドリン法は、クロルヒドリンを石灰乳で脱塩化水素することから多量の塩化カルシウムが副生し、この副生塩化カルシウムの処理や排水負荷が高くなる等の課題がある。
また、過酸化物であるエチルベンゼンヒドロペルオキシドを酸化剤として用いプロピレンを酸化するハルコン法が知られている。この方法によれば、エポキシ化合物の酸素元素源は過酸化物中の酸素原子に由来するものである。
従って、該ハルコン法は、生成するエポキシ化合物に対し当モル以上の過酸化物を必要とする。このため、多量の過酸化物の使用により、安全性や経済性の面で課題がある。更に、副生1−フェニルエタノールは、一般的にはスチレンに転換して副生品を販売することが必要となる。
そして、多量の副生品処理や販売を必要としない方法として、過酸化物として過酸化水素を用いるエポキシ化合物の製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。この方法は、エポキシ化合物の他、副生する化合物は水であり、クリーンな方法として知られている。
しかし、特許文献1に提案の方法においては、生成エポキシ化合物に対して過酸化水素を当モル以上必要とすることから、多量の過酸化物の使用が必要であり、高価な過酸化物の使用により安全性や経済性に課題を有していた。
そこで、エポキシ化合物の製造において、高価かつ危険性の高い過酸化物の使用を必要としないエポキシ化合物の製造方法が望まれ、提案されてきた。
例えば、周期律表第8〜10族の貴金属とチタノシリケートからなる触媒を用い、酸素と水素によりオレフィンを直接酸化してエポキシ化合物を製造する方法(例えば特許文献2参照。)、ヘテロポリ化合物の過酸化物と貴金属化合物からなる触媒を用い、プロピレンと分子状酸素によりアルコール溶媒中でエポキシ化合物を製造する方法(例えば特許文献3参照。)、チタン化合物で修飾した多孔性金属酸化物とパラジウムを含有した触媒を用い、アルコール溶媒中でプロピレンを分子状酸素で直接酸化し、エポキシ化合物を製造する方法(例えば特許文献4参照。)、等が提案されている。
特開平04−005028号公報(第1頁参照。) 特開平04−352771号公報(第2頁参照。) 特開2006−068622号公報(第4頁参照。) 特許4002971号公報(第2頁参照。)
しかし、特許文献2に提案の方法は、高価な過酸化物を必要としない点で優れている反面、エポキシ化合物への反応効率が低い上に、水素と酸素が共存する反応系であるため、爆発に対する安全対策を施す必要があり、安全性の面でも課題を有するものであった。また、特許文献3に提案の方法においては、触媒を構成するヘテロポリ化合物の過酸化物は、熱的安定性に乏しいことから、触媒の安定性に課題を有する。さらに、特許文献4に提案の方法においては、エポキシ化合物の選択率が低いため、工業的利用にはまだまだ改良の余地を有するものであった。
そこで、安全性が高く、しかも高活性で高選択的なエポキシ化合物の新規な製造方法が望まれてきた。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のパラジウム化合物と結晶性チタノシリケートの存在下、オレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を反応することからなる新規なエポキシ化合物の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、パラジウム錯体及び結晶性チタノシリケートの存在下、オレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を反応することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法に関するものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、パラジウム錯体及び結晶性チタノシリケートの存在下、反応を行うものである。ここで、パラジウム錯体又は結晶性チタノシリケートのいずれか一方のみの存在下で反応を行っても活性等に優れるエポキシ化合物の製造方法とはならない。
該パラジウム錯体としては、パラジウム錯体の範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばパラジウム化合物と配位子を誘導する化合物より調製することが可能である。
該パラジウム化合物としては、パラジウム化合物の範疇に属するものであれば如何なるものも用いることができ、例えば塩化パラジウム、臭化パラジウム、よう化パラジウム、水酸化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム等の無機パラジウム塩;テトラクロロパラジウム酸アンモニウム、ヘキサクロロパラジウム酸アンモニウム、ジアンミンジクロロパラジウム、亜硝酸ジアンミンパラジウム等の無機パラジウム錯塩;ビス(アセチルアセトナート)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、塩化アリルパラジウム、ジクロロ(テトラメチルエチレンジアミン)パラジウム、ジクロロビス(ピリジン)パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム等の有機パラジウム錯塩;酢酸パラジウム、シュウ酸パラジウム等の有機酸パラジウム塩、等が挙げられ、その中でも、触媒活性および選択性が高く、エポキシ化合物製造時の反応性に優れることから、有機酸パラジウム塩が好ましく、特に酢酸パラジウムが好ましい。
配位子を誘導する化合物としては、該パラジウム化合物とからパラジウム錯体を誘導する化合物であれば如何なるものも用いることが可能であり、例えば、芳香族系複素環化合物、脂肪族系アミン化合物、芳香族系アミン化合物、リン酸系化合物、酸素系化合物、等を挙げることができる。
芳香族系複素環化合物としては、具体的にはビピリジン、メチルビピリジン、エチルビピリジン、プロピルビピリジン、ブチルビピリジン、ペンチルビピリジン、ヘキシルビピリジン、ジメチルビピリジン、ジエチルビピリジン、ジプロピルビピリジン、ジブチルビピリジン、ジペンチルビピリジン、ジヘキシルビピリジン、トリメチルビピリジン、トリエチルビピリジン、トリプロピルビピリジン、トリブチルビピリジン、トリペンチルビピリジン、トリヘキシルビピリジン、テトラメチルビピリジン、テトラエチルビピリジン、テトラプロピルビピリジン、テトラブチルビピリジン、テトラペンチルビピリジン、テトラヘキシルビピリジン、ペンタメチルビピリジン、ペンタエチルビピリジン、ペンタプロピルビピリジン、ペンタブチルビピリジン、ペンタペンチルビピリジン、ペンタヘキシルビピリジン、フェニルビピリジン、ジフェニルビピリジン、トリフェニルビピリジン、ペンタフェニルビピリジン、ヘキサメチルビピリジン、メチルエチルビピリジン、メチルプロピルビピリジン、メチルブチルビピリジン、メチルペンチルビピリジン、メチルヘキシルビピリジン、メチルフェニルビピリジン等の二座配位となるビピリジン系化合物;ビキノリン、メチルビキノリン、エチルビキノリン、プロピルビキノリン、ブチルビキノリン、ペンチルビキノリン、ヘキシルビキノリン、ジメチルビキノリン、ジエチルビキノリン、ジプロピルビキノリン、ジブチルビキノリン、ジペンチルビキノリン、ジヘキシルビキノリン、トリメチルビキノリン、トリエチルビキノリン、トリプロピルビキノリン、トリブチルビキノリン、トリペンチルビキノリン、トリヘキシルビキノリン、テトラメチルビキノリン、テトラエチルビキノリン、テトラプロピルビキノリン、テトラブチルビキノリン、テトラペンチルビキノリン、テトラヘキシルビキノリン、ペンタメチルビキノリン、ペンタエチルビキノリン、ペンタプロピルビキノリン、ペンタブチルビキノリン、ペンタペンチルビキノリン、ペンタヘキシルビキノリン、フェニルビキノリン、ジフェニルビキノリン、トリフェニルビキノリン、ペンタフェニルビキノリン、ヘキサメチルビキノリン、メチルエチルビビキノリン、メチルプロピルビビキノリン、メチルブチルビビキノリン、メチルペンチルビビキノリン、メチルヘキシルビビキノリン、メチルフェニルビビキノリン等の二座配位となるビキノリン系化合物;フェナントロリン、メチルフェナントロリン、エチルフェナントロリン、プロピルフェナントロリン、ブチルフェナントロリン、ペンチルフェナントロリン、ヘキシルフェナントロリン、ジメチルフェナントロリン、ジエチルフェナントロリン、ジプロピルフェナントロリン、ジブチルフェナントロリン、ジペンチルフェナントロリン、ジヘキシルフェナントロリン、トリメチルフェナントロリン、トリエチルフェナントロリン、トリプロピルフェナントロリン、トリブチルフェナントロリン、トリペンチルフェナントロリン、トリヘキシルフェナントロリン、テトラメチルフェナントロリン、テトラエチルフェナントロリン、テトラプロピルフェナントロリン、テトラブチルフェナントロリン、テトラペンチルフェナントロリン、テトラヘキシルフェナントロリン、ペンタメチルフェナントロリン、ペンタエチルフェナントロリン、ペンタプロピルフェナントロリン、ペンタブチルフェナントロリン、ペンタペンチルフェナントロリン、ペンタヘキシルフェナントロリン、フェニルフェナントロリン、ジフェニルフェナントロリン、トリフェニルフェナントロリン、ペンタフェニルフェナントロリン、ヘキサメチルフェナントロリン、メチルフェニルフェナントロリン、ジメチルフェニルフェナントロリン、ジメチルジフェニルフェナントロリン、バソフェナントロリンジスルホン酸等の二座配位となるフェナントロリン系化合物;ピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、ペンチルピリジン、ヘキシルピリジン、ジメチルピリジン、ジエチルピリジン、ジプロピルピリジン、ジブチルピリジン、ジペンチルピリジン、ジヘキシルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、トリプロピルピリジン、トリブチルピリジン、トリペンチルピリジン、トリヘキシルピリジン、テトラメチルピリジン、テトラエチルピリジン、テトラプロピルピリジン、テトラブチルピリジン、テトラペンチルピリジン、テトラヘキシルピリジン、ペンタメチルピリジン、ペンタエチルピリジン、ペンタプロピルピリジン、ペンタブチルピリジン、ペンタペンチルピリジン、ペンタヘキシルピリジン、フェニルピリジン、ジフェニルピリジン、トリフェニルピリジン、ペンタフェニルピリジン、ヘキサフェニルピリジンメチルフェニルピリジン、メチルエチルピリジン、メチルプロピルピリジン、メチルブチルピリジン、メチルペンチルピリジン、メチルヘキシルピリジン、メチルフェニルピリジン等の単座配位となるピリジン系化合物;キノリン、メチルキノリン、エチルキノリン、プロピルキノリン、ブチルキノリン、ペンチルキノリン、ヘキシルキノリン、ジメチルキノリン、ジエチルキノリン、ジプロピルキノリン、ジブチルキノリン、ジペンチルキノリン、ジヘキシルキノリン、トリメチルキノリン、トリエチルキノリン、トリプロピルキノリン、トリブチルキノリン、トリペンチルキノリン、トリヘキシルキノリン、テトラメチルキノリン、テトラエチルキノリン、テトラプロピルキノリン、テトラブチルキノリン、テトラペンチルキノリン、テトラヘキシルキノリン、ペンタメチルキノリン、ペンタエチルキノリン、ペンタプロピルキノリン、ペンタブチルキノリン、ペンタペンチルキノリン、ペンタヘキシルキノリン、フェニルキノリン、ジフェニルキノリン、トリフェニルキノリン、ペンタフェニルキノリン、ヘキサフェニルキノリンメチルフェニルキノリン、メチルエチルキノリン、メチルプロピルキノリン、メチルブチルキノリン、メチルペンチルキノリン、メチルヘキシルキノリン、メチルフェニルキノリン等の単座配位となるキノリン系化合物;ベンゾキノリン、メチルベンゾキノリン、エチルベンゾキノリン、プロピルベンゾキノリン、ブチルベンゾキノリン、ペンチルベンゾキノリン、ヘキシルベンゾキノリン、ジメチルベンゾキノリン、ジエチルベンゾキノリン、ジプロピルベンゾキノリン、ジブチルベンゾキノリン、ジペンチルベンゾキノリン、ジヘキシルベンゾキノリン、トリメチルベンゾキノリン、トリエチルベンゾキノリン、トリプロピルベンゾキノリン、トリブチルベンゾキノリン、トリペンチルベンゾキノリン、トリヘキシルベンゾキノリン、テトラメチルベンゾキノリン、テトラエチルベンゾキノリン、テトラプロピルベンゾキノリン、テトラブチルベンゾキノリン、テトラペンチルベンゾキノリン、テトラヘキシルベンゾキノリン、ペンタメチルベンゾキノリン、ペンタエチルベンゾキノリン、ペンタプロピルベンゾキノリン、ペンタブチルベンゾキノリン、ペンタペンチルベンゾキノリン、ペンタヘキシルベンゾキノリン、フェニルベンゾキノリン、ジフェニルベンゾキノリン、トリフェニルベンゾキノリン、ペンタフェニルベンゾキノリン、ヘキサフェニルベンゾキノリンメチルフェニルベンゾキノリン、メチルエチルベンゾキノリン、メチルプロピルベンゾキノリン、メチルブチルベンゾキノリン、メチルペンチルベンゾキノリン、メチルヘキシルベンゾキノリン、メチルフェニルベンゾキノリン等の単座配位となるベンゾキノリン系化合物;アクリジン、メチルアクリジン、エチルアクリジン、プロピルアクリジン、ブチルアクリジン、ペンチルアクリジン、ヘキシルアクリジン、ジメチルアクリジン、ジエチルアクリジン、ジプロピルアクリジン、ジブチルアクリジン、ジペンチルアクリジン、ジヘキシルアクリジン、トリメチルアクリジン、トリエチルアクリジン、トリプロピルアクリジン、トリブチルアクリジン、トリペンチルアクリジン、トリヘキシルアクリジン、テトラメチルアクリジン、テトラエチルアクリジン、テトラプロピルアクリジン、テトラブチルアクリジン、テトラペンチルアクリジン、テトラヘキシルアクリジン、ペンタメチルアクリジン、ペンタエチルアクリジン、ペンタプロピルアクリジン、ペンタブチルアクリジン、ペンタペンチルアクリジン、ペンタヘキシルアクリジン、フェニルアクリジン、ジフェニルアクリジン、トリフェニルアクリジン、ペンタフェニルアクリジン、ヘキサフェニルアクリジンメチルフェニルアクリジン、メチルエチルアクリジン、メチルプロピルアクリジン、メチルブチルアクリジン、メチルペンチルアクリジン、メチルヘキシルアクリジン、メチルフェニルアクリジン等の単座配位となるアクリジン系化合物、等が挙げられる。
脂肪族アミン化合物としては、具体的にはトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリペンチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等の単座配位となる三級脂肪族アミン系化合物、等が挙げられ、芳香族系アミン化合物としては、具体的にはトリフェニルアミン、トリス(メチルフェニル)アミン、トリス(エチルフェニル)アミン、トリス(プロピルフェニル)アミン、トリス(ブチルフェニル)アミン、トリス(ペンチルフェニル)アミン、トリス(ヘキシルフェニル)アミン等の単座配位となる三級芳香族アミン系化合物、等が挙げられる。
リン酸系化合物としては、具体的にはトリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(メチルフェニル)ホスフィン、トリス(エチルフェニル)ホスフィン、トリス(プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(ペンチルフェニル)ホスフィン、トリス(ヘキシルフェニル)ホスフィン、トリフリルホスフィン等の単座配位となるホスフィン系化合物、等が挙げられる。
酸素系化合物としては、具体的にはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、オキサシクロブタン、オキサシクロペンタン、オキサシクロヘキサン、オキサシクロヘプタン、ジオキサン等の単座配位となるエーテル系化合物、等が挙げられる。
そして、この中でも特にエポキシ化合物製造時の反応が高活性かつ高選択的に進行することから、窒素系化合物からなる配位子であることが好ましく、特に芳香族系複素環化合物からなる配位子であることが好ましい。また、パラジウム錯体の安定性に優れることから、二座配位子となる化合物であることが好ましく、中でも、ビピリジン系化合物、ビキノリン系化合物、フェナントロリン系化合物が好ましく、特にフェナントロリン系化合物からなる配位子であることが好ましい。
本発明の製造方法で用いられるパラジウム錯体は、特に高活性かつ高選択的にエポキシ化合物の製造を行うことが可能となることから、2価のパラジウム錯体であることが好ましい。該2価のパラジウム錯体は、価数を持つため結合可能な置換基を有するものであり、該置換基としては、例えば塩酸基、硝酸基、硫酸基、アセテート基、アセチルアセトナート基等が挙げられ、その中でも安定的に高活性かつ高選択性を発揮するものとなることから、アセテート基、アセチルアセトナート基であることが好ましく、さらにアセテート基であることが好ましい。そして、特に下記一般式(1)で示されるパラジウム錯体であることが好ましい。
Pd(OAc)L (1)
(式中、OAcはアセテート基を表し、Lはフェナントロリン系配位子を示す。)
また、パラジウム錯体としては、反応の際の安定性が高く、しかもエポキシ化合物の生産性が高い製造方法となることから、後述する1級アルコールに溶解するものであることが好ましい。
本発明に用いられるパラジウム錯体の調製法としては、パラジウム錯体を調製することが可能であれば如何なる方法でもよく、例えば、該パラジウム化合物と配位子を誘導する化合物を溶媒中で撹拌する方法が挙げられ、この際の溶媒としては、製造反応の際の溶媒として後述する溶媒を用いることができる。また、その際のパラジウム化合物と配位子を誘導する化合物の割合としては、パラジウム錯体が得られる限りにおいて制限はなく、例えば、二座配位子を誘導する化合物である場合、パラジウム化合物1モルに対し1〜1000モルであることが好ましく、特にパラジウム錯体の安定性が優れ、触媒活性および選択性に優れる製造方法となることから、2〜100モルであることが好ましく、さらに2〜50モルであることが好ましい。単座配位子を誘導する化合物である場合、パラジウム化合物1モルに対し2〜2000モルであることが好ましく、特にパラジウム錯体の安定性に優れ、触媒活性および選択性に優れる製造方法となることから、4〜200モルであることが好ましく、さらに4〜100モルであることが好ましい。
本発明で用いられる結晶性チタノシリケ−トは、ゼオライト構造を有する結晶性SiO(シリカライトと称されることもある。)の結晶格子を形成するケイ素の一部をチタニウムで置き換えた一般式nSiO・(1−n)TiOで表される合成ゼオライト物質である。ここで、nは通常0.8〜0.999である。該結晶性チタノシリケートの構造は、特に限定するものではなく結晶性チタノシリケートと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば国際ゼオライト学会の構造コードで示されるBEA型、DON型、ITQ型、MFI型、MOR型、MWW型等の構造を挙げることができ、その中でも、高活性かつ高選択的にエポキシ化合物を製造することが可能となることから、MFI型の構造であることが好ましい。
該結晶性チタノシリケートの合成法としては、特に限定されないが、例えば特開昭56−96720号公報、特開昭60−127217号公報等に記載の方法により合成することが可能である。
特開昭56−96720号公報によれば、結晶性チタノシリケートはテトラアルキルオルトシリケートとテトラアルキルオルトチタネートを水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液で加水分解し、次いで水熱合成して合成される。この際のテトラアルキルオルトシリケートとしては、例えばテトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、テトラペンチルオルトシリケート、テトラヘキシルオルトシリケート、テトラヘプチルオルトシリケート、テトラオクチルオルトシリケート、トリメチルエチルシリケート、ジメチルジエチルシリケート、メチルトリエチルシリケート、ジメチルジプロピルシリケート及びエチルトリプロピルシリケート等が挙げられ、これらのうち入手の容易さから、テトラエチルオルトシリケートが好ましい。
また、テトラアルキルオルトチタネートとしては、例えばテトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラプロピルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネート、テトラオクチルオルトチタネート、トリメチルエチルチタネート、ジメチルジエチルチタネート、メチルトリエチルチタネート、ジメチルジプロピルチタネート及びエチルトリプロピルチタネート等が挙げられ、これらのうち入手の容易さから、テトラエチルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネートが好ましい。
さらに、水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられ、これらのうち入手の容易さから、水酸化テトラプロピルアンモニウムが好ましい。
該結晶性チタノシリケートを合成する際のこれら反応原料の仕込み比率に制限はなく、例えばテトラアルキルオルトシリケートの使用量は、テトラアルキルオルトチタネート1モルに対して通常1〜100当量であり、好ましくは5〜35当量である。水酸化テトラアルキルアンモニウムの使用量は、テトラアルキルオルトシリケート1モルに対して通常0.1〜1当量であり、好ましくは0.2〜0.6当量である。また、水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液の濃度は、通常3〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%である。
該結晶性チタノシリケートを合成する際の加水分解の温度に制限はなく、例えば−20〜60℃、好ましくは−10〜40℃である。反応時間としては、通常10分〜100時間、好ましくは30分〜50時間である。また、加水分解時に必要であれば溶媒を用いてもよく、該溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、等を挙げることができる。加水分解反応は、均一な加水分解生成物を得ることができれば、テトラアルキルオルトシリケート、テトラアルキルオルトチタネート及び水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液の反応原料の混合順序と混合方法は特に限定するものではなく、例えば前記化合物の全てを一度に混合しても良いし、テトラアルキルオルトシリケートとテトラアルキルオルトチタネートの混合物に水酸化アルキルアンモニウム水溶液を滴下してもよい。また、テトラアルキルオルトシリケートに水酸化アルキルアンモニウム水溶液を、次いでテトラアルキルオルトチタネートを加えても良い。また、加水分解によって副生したアルコールは、必ずしも除去する必要はないが、予め加熱によってその量を減ずることが好ましい。
以上のようにして得られた加水分解生成物は、必要に応じて水を添加して水熱合成に付される。水熱合成に使用する水量に制限はなく、例えば加水分解反応時に添加した水と合わせ、ケイ素原子1モルに対して通常15〜100当量であり、好ましくは25〜80当量となるように調整する。水熱合成反応は、この混合液を密閉容器内にて通常60〜300℃、好ましくは100〜200℃の温度条件下に加熱し、通常1〜100時間、好ましくは6〜50時間、この温度を保持することによって実施される。この際、圧力は自圧もしくは加圧下のいずれかの方法で行うことができるが、通常は自圧下で行える。反応系の攪拌は必ずしも行う必要はなく、静置状態でも結晶化は十分進行する。このように水熱合成処理され結晶化した固体粉末は、イオン交換水で十分に洗浄後、焼成処理に付される。焼成処理の温度に制限はなく、例えば通常300〜700℃であり、好ましくは350〜600℃である。焼成時間は、通常1〜50時間、好ましくは2〜20時間焼成処理をすることにより、結晶性チタノシリケートを製造することができる。
本発明で用いる結晶性チタノシリケートには、必要に応じて、ホウ素、アルミニウム、リン、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム等が含まれてもよく、これら金属の酸化物源を加えて、異元素含有の結晶性チタノシリケートとしてもよい。また、該結晶性チタノシリケートは、そのまま使用してもよく、成型して使用してもよい。成型して使用する場合には、一般にはバインダーを用いるが、該バインダーとしては、例えばシリカ、アルミナ等を挙げることができる。
本発明の製造方法においては、該パラジウム錯体と該結晶性チタノシリケートを用いることにより、エポキシ化合物の選択性、生産効率に優れた製造方法となるものである。その中でも特に反応活性が高く、経済性、生産性に優れるエポキシ化合物の製造方法となることから、2価のパラジウム錯体と結晶性チタノシリケートを用いることが好ましい。
本発明の製造方法における該結晶性チタノシリケートの使用量は反応形式により適宜選択することが可能であり、例えば固定床連続流通式でエポキシ化合物の製造を行う場合には、反応速度や熱収支によりその使用量を決定すればよく、その中でも製造の際の反応が効率的に進行することから、重量時間空間速度(WHSV)として、0.01〜1000hr−1であることが好ましく、特に0.1〜100hr−1であることが好ましい。ここで、重量時間空間速度(WHSV)とは、単位触媒重量当たりの単位時間(hr)に対するオレフィンの供給量の合計重量を表すものである。また、懸濁床の回分式、または、半回分式でエポキシ化合物の製造を行う場合には、溶媒に対して0.0001〜30重量%であることが好ましく、特に0.001〜10重量%であることが好ましい。
本発明の製造方法における該パラジウム錯体の使用量は反応形式により適宜選択することが可能であり、例えば固定床連続流通式でエポキシ化合物の製造を行う場合には、反応速度や熱収支によりその使用量を決定すればよく、その中でも製造の際の反応が効率的に進行することから、溶媒に対して0.000001〜30重量%であることが好ましく、特に0.00001〜10重量%であることが好ましい。また、結晶性チタノシリケートとの比は適宜選択することが可能であり、例えば固定床連続流通式でエポキシ化合物の製造を行う場合には、反応速度や熱収支によりその使用量を決定すればよく、結晶性チタノシリケートの重量に対し、0.0001〜1000重量%、反応が効率的に進行することから、好ましくは0.001〜100重量%である。
本発明の製造方法におけるオレフィンは、エポキシ化合物を生成するものであり、該オレフィンとしては、オレフィンと称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、メチルシクロペンテン、エチルシクロペンテン、プロピルシクロペンテン、ブチルシクロペンテン、メチルシクロヘキセン、エチルシクロヘキセン、プロピルシクロヘキセン、ブチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、トリメチルシクロヘキセン、シクロペンチルプロペン、シクロペンチルブテン、シクロペンチルペンテン、シクロヘキシルプロペン、シクロヘキシルブテン、スチレン、フェニルプロペン、フェニルブテン等が挙げられ、反応が効率的に進行することから、好ましくは、炭素数3〜10のオレフィンである。
本発明の製造方法における1級アルコールとしては、1級アルコールの範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばメタノール、エタノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ヘキサノール、3−メチル−1−ヘキサノール、2−メチル−1−オクタノール、3−メチル−1−オクタノール、4−メチル−1−オクタノール、5−メチル−1−オクタノール、6−メチル−1−オクタノール、ベンジルアルコール、2−フェニル−1−プロパノール、3−フェニル−1−プロパノール等を挙げることができ、特に製造の際の反応が効率的に進行することから炭素数1〜10の1級アルコールが好ましい。更に、入手の容易さから、特にメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、ベンジルアルコールが好ましい。
また、1級アルコールの使用量としては、本発明の製造方法が実施できる限りにおいて制限を受けることはなく、特に製造の際の反応が効率的に進行することから、オレフィン1モルに対し0.1〜1000モルが好ましく、特に1〜100モルで用いることが好ましい。
本発明の製造方法における分子状酸素としては、分子状酸素の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば酸素ガスからなる純酸素;窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈された酸素はもとより、空気であってもよい。また、該分子状酸素の使用量としては、本発明の製造方法が実施できる限りにおいて如何なる制限を受けることもなく、特にエポキシ化合物を製造する際の反応が効率的に進行することから、オレフィン1モルに対し0.01〜100モルが好ましく、特に0.1〜50モルが好ましい。また、反応時の酸素圧は、特に制限はなく、例えば常圧〜10MPa、高活性、高選択的かつ触媒の安定性が高いことから、0.2〜5MPaであることが好ましく、さらに0.2〜2MPaであることが好ましい。
本発明の製造方法により得られるエポキシ化合物としては、特に制限はなく、例えばプロピレンオキシド、ブテンオキシド、ペンテンオキシド、ヘキセンオキシド、ヘプテンオキシド、オクテンオキシド、ノネンオキシド、デセンオキシド、ドデセンオキシド、シクロプロペンオキシド、シクロブテンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロヘプテンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロノネンオキシド、シクロデセンオキシド、メチルシクロペンテンオキシド、エチルシクロペンテンオキシド、プロピルシクロペンテンオキシド、ブチルシクロペンテンオキシド、メチルシクロヘキセンオキシド、エチルシクロヘキセンオキシド、プロピルシクロヘキセンオキシド、ブチルシクロヘキセンオキシド、ジメチルシクロヘキセンオキシド、トリメチルシクロヘキセンオキシド、シクロペンチルプロペンオキシド、シクロペンチルブテンオキシド、シクロペンチルペンテンオキシド、シクロヘキシルプロペンオキシド、シクロヘキシルブテンオキシド、スチレンオキシド、フェニルプロペンオキシド、フェニルブテンオキシド等が挙げられる。
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、液相で行うことが好ましく、その際の溶媒としては特に制限はなく、上記の1級アルコールを溶媒として用いることも可能である。さらに、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;エチレングリコ−ルやプロピレングリコール等のグリコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;メチルイソブチルアルデヒド等のアルデヒド類;酢酸等のカルボン酸類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン等のハロゲン化炭化水;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド等のアミド類又は水等が挙げられる。そして、製造がより効率的に行えることから、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、1級アルコールを溶媒として用いることが好ましい。
本発明のエポキシ化合物の製造方法を行う際の反応温度に制限はなく、その中でも副反応を抑制しつつ高い反応速度でのエポキシ化合物の製造が可能となることから0〜200℃であることが好ましく、特に20〜150℃、さらに40〜100℃であることが好ましい。また、反応圧力としては、常圧〜20MPaが好ましく、特に常圧〜5MPaであることが好ましい。なお、本発明の製造方法においては、オレフィンは気体又は液体のいずれの状態でも用いることができ、液体状態で用いる場合には加圧下で反応すればよい。
本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、パラジウム錯体及び結晶性チタノシリケートの存在下、オレフィン、1級アルコール及び分子状酸素との反応が可能であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えばオレフィン、1級アルコール、分子状酸素、パラジウム錯体及び結晶性チタノシリケートを一括して反応装置に仕込む回分式、反応装置にオレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を連続的に供給する半回分式、オレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を連続的に供給するとともに、未反応ガス及び反応液を連続的に抜き出す固定床又は懸濁床の連続式、等のいずれの方法でも実施できる。また、製造されたエポキシ化合物は、反応混合物を順次蒸留するなど公知の方法により分離回収することができ、本発明の製造方法は、このような付随工程を設けることも可能である。
本発明の製造方法は、エポキシ化合物と同時にアルデヒド化合物をも製造することが可能であり、該アルデヒド化合物は、水素化することにより容易に原料である1級アルコールに戻すことが可能であり、該1級アルコールは原料として再生利用することができる。
パラジウム錯体と結晶性チタノシリケートの存在下、オレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を反応することで、エポキシ化合物を高活性かつ高選択的に製造することができ、更に過酸化物を使用しないことから、安全な製造方法とすることが可能な、新規なエポキシ化合物の製造方法を提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例1(結晶性チタノシリケートの調製)
特許第3697737号公報に準拠し結晶性チタノシリケートを調製した。
温度計及び攪拌装置を備えた内容積1000mlの四つ口フラスコにテトラエチルオルトチタネート44.1g、次いでテトラエチルオルトシリケート198gを窒素気流下で入れ混合した。この混合溶液を0℃に冷却後、25重量%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液345gをフィードポンプにより1時間かけて滴下した。さらにこの液を室温で1時間攪拌して熟成処理を行った。攪拌後、混合物は均一溶液になった。この四つ口フラスコを油浴で約90℃に加熱し、加水分解によって生じたエタノール及び水を蒸留除去した。
蒸留除去された混合物にイオン交換水604gを加えた後、その400mlを温度計及び攪拌装置を備えた内容積500mlのハステロイ製耐圧反応容器に入れ、自圧下、170℃まで2時間で昇温させ、48時間攪拌して水熱合成を行った。オートクレーブの内容物を遠心分離し、60℃のイオン交換水で十分洗浄した。得られた白色粉末を90℃で15時間乾燥後、550℃にて5時間焼成して結晶性チタノシリケート21.5gを得た。得られた結晶性チタノシリケートは、X線回折装置(XRD)よりMFI型構造であることを確認した。
(反応評価)
反応評価は、200mlのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業社製、(商品名)TPR−1型)を用いて行った。反応液およびガスの分析は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−14A)で行い、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC−FFAP、60m×0.25mm(内径)、膜厚0.25μm)を使用し、水素炎イオン化検出器(FID)、および、パックドカラム(GLサイエンス社製、(商品名)PorapakQ、3m×3mm(内径))を使用し、熱伝導度検出器(TCD)を用い反応生成物を定量した。
(エポキシ化合物の選択率および収率)
エポキシ化合物の選択率は、生成したエポキシ化合物とオレフィン由来の副生成物で表し、下記式(2)を用い計算した。
エポキシ化合物の収率は、生成したエポキシ化合物と仕込オレフィン量で表し、下記式(3)を用い計算した。
Figure 0005655470
Figure 0005655470
実施例1
クロロベンゼン5mlに酢酸パラジウム0.011g(0.05mmol)及び2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(東京化成製、(商品名)バトクプロイン)0.036gを添加し、室温で撹拌し溶解させた後、一晩放置しパラジウム錯体溶液を調製した。パラジウム錯体溶液全量を200mlのオートクレーブに入れ、メタノール63g(1.9mol)、調製例1により得られた結晶性チタノシリケート0.2gを入れた。次に、オートクレーブを窒素で置換した後、酸素25mmol(0.4MPa)、プロピレン50mmol、窒素20mmol(0.3MPa)を加え、反応温度80℃で1.5時間撹拌し、プロピレンオキシドの製造を行った。
反応結果を表1に示す。プロピレンオキシドを高い生産性で製造すると同時にアルデヒド化合物の生産を確認した。
実施例2
メタノール1.9モルの代わりに、エタノール1.4モルを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりプロピレンオキシドの製造を行った。
反応結果を表1に示す。プロピレンオキシドを高い生産性で製造すると同時にアルデヒド化合物の生産を確認した。
実施例3
メタノール1.9モルの代わりに、1-プロパノール1.1モルを用いた以外は、実施例1と同様の方法によりプロピレンオキシドの製造を行った。
反応結果を表1に示す。プロピレンオキシドを高い生産性で製造すると同時にアルデヒド化合物の生産を確認した。
比較例1
酢酸パラジウム0.011gおよび2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(東京化成製、商品名;バトクプロイン)0.036gを添加しないこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。
反応結果を表1に示す。エポキシ化合物、アルデヒド化合物の生成は確認できなかった。
比較例2
メタノール1.9モルの代わりに、クロロベンゼン80mlを用いた以外は、実施例1と同様に行った。
反応結果を表1に示す。エポキシ化合物、アルデヒド化合物の生成は確認できなかった。
実施例4
クロロベンゼン5mlに酢酸パラジウム0.011g(0.05mmol)及び2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(東京化成製、(商品名)バトクプロイン)0.036gを添加し、室温で撹拌し溶解させた後、一晩放置しパラジウム錯体溶液を調製した。パラジウム錯体溶液全量を200mlのオートクレーブに入れ、メタノール63g(1.9mol)、調製例1により得られた結晶性チタノシリケート0.2gを入れた。次に、オートクレーブを窒素で置換した後、酸素16mmol(0.25MPa)、1−ヘキセン50mmol、窒素31mmol(0.5MPa)を加え、反応温度80℃で1.5時間撹拌し、ヘキセンオキシドの製造を行った。
反応結果を表1に示す。ヘキセンオキシドを高い生産性で製造すると同時にアルデヒド化合物の生産を確認した。
Figure 0005655470
本発明は、ジオール又はポリオールの原料として工業的に有用なエポキシ化合物を安全性に優れ、効率よく製造することが可能となるとともに、同時に製造されるアルデヒド化合物は再度原料として転換することが可能となる製造方法に関するものである。

Claims (5)

  1. 下式の一般式(1)で示されるパラジウム錯体及び結晶性チタノシリケートの存在下、オレフィン、1級アルコール及び分子状酸素を反応することを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
    Pd(OAc)L (1)
    (式中、OAcはアセテート基を表し、Lはフェナントロリン系配位子を示す。)
  2. 結晶性チタノシリケートが、MFI型構造を有する結晶性チタノシリケートであることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  3. オレフィンが、炭素数3〜10のオレフィンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ化合物の製造方法。
  4. 1級アルコールが、炭素数1〜10の1級アルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造方法。
  5. アルデヒド化合物を同時に製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造方法。
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