JP5481975B2 - エポキシ化合物の製造法 - Google Patents
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Description
本発明は、ジオールやポリオール等の原料として工業的に有用なエポキシ化合物の製造法に関するものであり、特にエポキシ化合物の選択率、触媒の安定性が高く、しかも、安全性、経済性、生産性に優れる製造法に関するものである。
エポキシ化合物の製造法、特にプロピレンオキシドの製造法については、いくつかの方法が知られている。
例えばプロピレンからクロルヒドリンを経由するクロルヒドリン法が知られているが、該クロルヒドリン法は、クロルヒドリンを石灰乳で脱塩化水素することから多量の塩化カルシウムが副生し、この副生塩化カルシウムの処理や排水負荷が高くなる等の課題がある。
また、下記化(1)に示すような過酸化物であるエチルベンゼンヒドロペルオキシドを酸化剤として用いプロピレンを酸化するハルコン法が知られている。該方法は、過酸化物を酸化剤として用いるものであり、エポキシ化合物の酸素元素源は、過酸化物中の酸素原子に由来するものである。
(ここで、R1は炭素数1以上のアルキル基を示す。)
従って、該ハルコン法は、生成するエポキシ化合物に対し当モル以上の過酸化物を必要とする上に、当モル以上の1−フェニルエタノールを副生する。このため、多量の過酸化物の使用、製造設備の大規模化および副生品の販売等、安全性や経済性の面で課題がある。なお、副生1−フェニルエタノールは脱水反応により、スチレンに転換され、ポリスチレン等に代表されるポリマー原料として利用される。
従って、該ハルコン法は、生成するエポキシ化合物に対し当モル以上の過酸化物を必要とする上に、当モル以上の1−フェニルエタノールを副生する。このため、多量の過酸化物の使用、製造設備の大規模化および副生品の販売等、安全性や経済性の面で課題がある。なお、副生1−フェニルエタノールは脱水反応により、スチレンに転換され、ポリスチレン等に代表されるポリマー原料として利用される。
また、エポキシ化合物の生成と同時に水が副生することから、多量の副生品処理や販売を必要としない方法として、下記化(2)に示すようなオレフィンを過酸化水素で直接酸化する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
(ここで、R2は炭素数1以上のアルキル基を示す。)
しかし、特許文献1に提案の方法においては、生成エポキシ化合物に対して過酸化水素を当モル以上必要とすることから、多量の過酸化物の使用が必要であり、高価な過酸化物の使用により安全性や経済性に課題を有していた。
そこで、エポキシ化合物の製造において、多量の副生品の処理や多量の過酸化物の使用を必要としないエポキシ化合物の製造方法が望まれ、提案されてきた。
例えば、周期律表第8〜10族の貴金属とチタノシリケートからなる触媒を用い、酸素と水素によりオレフィンを直接酸化してエポキシ化合物を製造する方法(例えば特許文献2参照。)、ヘテロポリ化合物の過酸化物と貴金属化合物からなる触媒を用い、プロピレンと分子状酸素でエポキシ化合物を製造する方法(例えば特許文献3参照。)、チタン化合物で修飾した多孔性金属酸化物とパラジウムを含有した触媒を用い、プロピレンを分子状酸素で直接酸化し、エポキシ化合物を製造する方法(例えば特許文献4参照。)、等が提案されている。
しかし、特許文献2に提案の方法は、高価な過酸化物を必要としない点で優れている反面、エポキシ化合物への反応効率が低い上に、水素と酸素が共存する反応系であるため、爆発に対する安全対策を施す必要があり、安全性の面でも課題を有するものであった。また、特許文献3に提案の方法においては、触媒を構成するヘテロポリ化合物の過酸化物は、熱的安定性に乏しいことから、触媒の安定性に課題を有する。さらに、特許文献4に提案の方法においては、エポキシ化合物の選択率が50%程度と低いため、工業的利用にはまだまだ改良の余地を有するものであった。
そこで、エポキシ化合物の選択率、触媒の安定性が高く、しかも、安全性、経済性及び生産性にも優れた新規なエポキシ化合物の製造法が望まれてきた。
そこで、本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒の存在下、過酸化物、オレフィン、2級アルコールおよび分子状酸素を接触することで、エポキシ化合物の選択率、触媒の安定性が高く、しかも、安全性、経済性及び生産性にも優れたエポキシ化合物の製造法となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、パラジウム、白金及び金からなる群より選択される少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒の存在下、過酸化物、オレフィン、2級アルコールおよび分子状酸素を接触することを特徴とするエポキシ化合物の製造法に関するものである。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の製造法においては、パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒を用いるものである。
ここで、結晶性チタノシリケ−トとは、ゼオライト構造を有する結晶性SiO2(シリカライトと称されることもある。)の結晶格子を形成するケイ素の一部をチタニウムで置き換えた一般式nSiO2・(1−n)TiO2で表される合成ゼオライト物質である。ここで、nは通常0.8〜0.999である。該結晶性チタノシリケートの構造は、特に限定するものではなく結晶性チタノシリケートと称される範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば国際ゼオライト学会の構造コードで示されるBEA型、DON型、ITQ型、MFI型、MOR型、MWW型等の構造を挙げることができ、その中でも、特にエポキシ化合物を製造する際の反応効率が高いことから、MFI型であることが好ましい。
該結晶性チタノシリケートの合成法としては、例えば特開昭56−96720号公報、特開昭60−127217号公報等に記載の方法により合成することが可能である。
例えば特開昭56−96720号公報によれば、結晶性チタノシリケートはテトラアルキルオルトシリケートとテトラアルキルオルトチタネートを水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液で加水分解し、次いで水熱合成して合成される。この際のテトラアルキルオルトシリケートとしては、例えばテトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、テトラプロピルオルトシリケート、テトラブチルオルトシリケート、テトラペンチルオルトシリケート、テトラヘキシルオルトシリケート、テトラヘプチルオルトシリケート、テトラオクチルオルトシリケート、トリメチルエチルシリケート、ジメチルジエチルシリケート、メチルトリエチルシリケート、ジメチルジプロピルシリケート及びエチルトリプロピルシリケート等が挙げられ、これらのうち入手の容易さから、テトラエチルオルトシリケートが好ましい。
また、テトラアルキルオルトチタネートとしては、例えばテトラメチルオルトチタネート、テトラエチルオルトチタネート、テトラプロピルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネート、テトラオクチルオルトチタネート、トリメチルエチルチタネート、ジメチルジエチルチタネート、メチルトリエチルチタネート、ジメチルジプロピルチタネート及びエチルトリプロピルチタネート等が挙げられ、これらのうち入手の容易さから、テトラエチルオルトチタネート、テトラブチルオルトチタネートが好ましい。
さらに、水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられ、これらのうち入手の容易さから、水酸化テトラプロピルアンモニウムが好ましい。
該結晶性チタノシリケートを合成する際のこれら反応原料の仕込み比率は特に制限するものではなく、その中でも以下の通りにすることが好ましい。テトラアルキルオルトシリケートの使用量は、テトラアルキルオルトチタネート1モルに対して通常1〜100当量であり、好ましくは5〜35当量である。水酸化テトラアルキルアンモニウムの使用量は、テトラアルキルオルトシリケート1モルに対して通常0.1〜1当量であり、好ましくは0.2〜0.6当量である。また、水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液の濃度は、通常3〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%である。
該結晶性チタノシリケートを合成する際の加水分解の温度は特に制限するものではなく、その中でも−20〜60℃、好ましくは−10〜40℃である。反応時間としては、通常10分〜100時間、好ましくは30分〜50時間である。また、加水分解時に必要であれば溶媒を用いてもよく、該溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類、等を挙げることができる。加水分解反応は、均一な加水分解生成物を得ることができれば、テトラアルキルオルトシリケート、テトラアルキルオルトチタネート及び水酸化テトラアルキルアンモニウム水溶液の反応原料の混合順序と混合方法は特に限定するものではなく、例えば前記化合物の全てを一度に混合しても良いし、テトラアルキルオルトシリケートとテトラアルキルオルトチタネートの混合物に水酸化アルキルアンモニウム水溶液を滴下してもよい。また、テトラアルキルオルトシリケートに水酸化アルキルアンモニウム水溶液を、次いでテトラアルキルオルトチタネートを加えても良い。また、加水分解によって副生したアルコールは、必ずしも除去する必要はないが、予め加熱によってその量を減ずることが好ましい。
以上のようにして得られた加水分解生成物は、必要に応じて水を添加して水熱合成に付される。水熱合成に使用する水量は、加水分解反応時に添加した水と合わせ、ケイ素原子1モルに対して通常15〜100当量であり、好ましくは25〜80当量となるように調整する。水熱合成反応は、この混合液を密閉容器内にて通常60〜300℃、好ましくは100〜200℃の温度条件下に加熱し、通常1〜100時間、好ましくは6〜50時間、この温度を保持することによって実施される。この際、圧力は自圧もしくは加圧下のいずれかの方法で行うことができるが、通常は自圧下で行える。反応系の攪拌は必ずしも行う必要はなく、静置状態でも結晶化は十分進行する。このように水熱合成処理され結晶化した固体粉末は、イオン交換水で十分に洗浄後、焼成処理に付される。焼成処理の温度は通常300〜700℃であり、好ましくは350〜600℃である。焼成時間は、通常1〜50時間、好ましくは2〜20時間焼成処理をすることにより、結晶性チタノシリケートを製造することができる。
本発明で用いる触媒を構成する結晶性チタノシリケートには、必要に応じて、ホウ素、アルミニウム、リン、カルシウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム等が含まれてもよく、これら金属の酸化物源を加えて、異元素含有の結晶性チタノシリケートとしてもよい。また、該結晶性チタノシリケートは、そのまま使用してもよく、成型して使用してもよい。成型して使用する場合には、一般にはバインダーを用いるが、該バインダーとしては、例えばシリカ、アルミナ等を挙げることができる。
本発明の製造法において用いられる触媒は、パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物、と該結晶性チタノシリケートからなるものであり、前記のパラジウム、白金および金からなる群より選ばれる元素は、それぞれ単独で使用するのみならず、パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる元素よりなる金属、金属化合物は、混合物化または合金化して使用してもよい。そして、本発明の製造法においては、使用する触媒の構成としてパラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートとを組み合わせて用いることにより、エポキシ化合物の反応原材料である過酸化物の使用量(モル量)以上のエポキシ化合物を製造することが可能となるエポキシ化合物の選択性、生産効率に優れた製造法となるものである。その中でも特に触媒活性が高く、経済性、生産性に優れるエポキシ化合物の製造法となることから、パラジウムよりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒であることが好ましい。そして、パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属化合物としては、例えば硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、無機錯塩、有機酸塩等の各種の無機金属化合物又は有機金属化合物を挙げることができ、その中でも特に触媒活性が高くなることから、無機錯塩やハロゲン化物であることが好ましく、パラジウムの場合、より具体的には硝酸パラジウム、硫酸パラジウム等の無機酸塩;塩化パラジウム等のハロゲン化物;テトラアンミンジクロロパラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム等の無機錯塩;酢酸パラジウム等の有機酸塩、等が挙げられ、特にテトラアンミンジクロロパラジウム、塩化パラジウムが好ましい。
また、該触媒における、パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物の存在位置は、特に制限するものではなく、例えば結晶性チタノシリケートに担持してもよいし、シリカ、活性炭等の担体に担持したものと結晶性チタノシリケートと混合した状態のものであっても良い。そして、パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物を結晶性チタノシリケート又は他の担体に担持する場合の担持方法に制限はなく、例えば前述の金属及び/又は金属化合物を用いて、含浸法、沈澱法、混練法、沈着法等により担持することができ、その中でも、容易に担持することが可能となることから含浸法がより好ましい。そして担持を行った後は、乾燥してもよいし、さらに所望であれば焼成してもよい。
該触媒におけるパラジウム、白金および金からなる群より選ばれる元素の原子価に、特に制限はなく、例えばパラジウムの場合は0価または2価、白金の場合は0価、2価または4価、金の場合は0価、1価または3価、さらにこれらの価数の混在状態であっても良い。また、必要に応じ、パラジウム元素、白金元素、金元素を使用前に還元処理してもよく、還元処理は、触媒調製工程で行っても、反応系中で還元しても差し支えない。この還元方法としては、例えばギ酸ナトリウム、ホルムアルデヒド、ヒドラジン等の溶液中で行う湿式還元法、又は水素や一酸化炭素等を窒素やヘリウム等の不活性ガスで希釈した還元性ガスにより気相で行う乾式還元法を用いることができる。さらに、パラジウム元素、白金元素、金元素を還元処理する場合の還元処理温度に制限はなく、通常0〜500℃であり、好ましくは5〜300℃、さらに好ましくは10〜200℃である。
該触媒におけるパラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物の量に制限はなく、その中でも反応が効率的に進行することから結晶性チタノシリケートに担持する場合、0.01〜10重量%であることが好ましく、特に0.05〜5重量%であることが好ましい。
本発明の製造法における該触媒の使用量は反応形式により適宜選択することが可能であり、例えば固定床連続流通式でエポキシ化合物の製造を行う場合には、反応速度や熱収支によりその使用量を決定すればよく、その中でも特に効率的にエポキシ化合物を製造することが可能となることから、重量時間空間速度(WHSV)として、0.01〜100hr−1であることが好ましく、特に0.1〜20hr−1であることが好ましい。ここで、重量時間空間速度(WHSV)とは、単位触媒重量当たりの単位時間(hr)に対するオレフィンの供給量の合計重量を表すものである。また、懸濁床の回分式、または、半回分式でエポキシ化合物の製造を行う場合には、溶媒に対して0.001〜30重量%であることが好ましく、特に0.002〜10重量%であることが好ましい。
本発明の製造方法における過酸化物としては、特に制限はなく、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類;ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン等のペルオキシケタール類;t−ブチルヒドロペルオキシド、テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ−t−ヘキシルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド;ジイソブチリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジ(メチルベンゾイル)ペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類;t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノネート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ヘキシルペルオキシピバレート等のペルオキシエステル類;および過酸化水素、等が用いられる。その中でも、特に反応が効率的に進行しエポキシ化合物の生産性に優れるエポキシ化合物の製造法となることから、t−ブチルヒドロペルオキシド、テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類および過酸化水素が好ましく、特にt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド及び過酸化水素からなる群より選ばれる1種以上の過酸化物であることが好ましい。
本発明の製造法における該過酸化物の使用量は、反応が効率的に進行し通常のエポキシ化合物の製造方法より効率よくエポキシ化合物を製造することが可能となることから極めて少ない量の使用で済ませることが可能である。そして、通常のエポキシ化合物の製造方法においては、過酸化物の使用モル量に対し等モル量未満でしかエポキシ化合物を製造することが出来ないのに対し、本発明の製造法においては等モルを越えるエポキシ化合物を製造することが可能となる。そして、本発明の製造法においては、特に経済性、生産性に優れた製造法となることから、過酸化物の使用モル量に対し、1.1〜100モル量のエポキシ化合物を製造することが好ましく、特に2〜20モル量のエポキシ化合物を製造することが好ましい。
本発明の製造法におけるオレフィンとしては、特に制限はなくオレフィンと称される範疇に属するものであれば如何なるものも用いることが可能であり、例えばプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、メチルシクロペンテン、エチルシクロペンテン、プロピルシクロペンテン、ブチルシクロペンテン、メチルシクロヘキセン、エチルシクロヘキセン、プロピルシクロヘキセン、ブチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、トリメチルシクロヘキセン、シクロペンチルプロペン、シクロペンチルブテン、シクロペンチルペンテン、シクロヘキシルプロペン、シクロヘキシルブテン、スチレン、フェニルプロペン、フェニルブテン等が挙げられ、効率的にエポキシ化合物を製造することが可能となることからプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセンが好ましく、特プロピレン、ヘキセンが好ましい。
本発明の製造法における2級アルコールとしては、特に制限はなく2級アルコールの範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、2−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、5−デカノール、2−トリデカノール、3−トリデカノール、4−トリデカノール、5−トリデカノール、6−トリデカノール、7−トリデカノール、2−ペンタデカノール、3−ペンタデカノール、4−ペンタデカノール、5−ペンタデカノール、6−ペンタデカノール、7−ペンタデカノール、8−ペンタデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロノナノール、シクロデカノール、1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルブタノール、1−フェニルペンタノール、1−フェニルヘキサノール、1−フェニルヘプタノール、1−フェニルオクタノール、1−フェニルノナノール、1−フェニルデカノール、ベンズヒドロール等を挙げることができ、特に水素供給源として作用することにより効率的にエポキシ化合物を製造することが可能となることから2−プロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、2−ノナノール、3−ノナノール、4−ノナノール、5−ノナノール、2−デカノール、3−デカノール、4−デカノール、5−デカノール、2−トリデカノール、3−トリデカノール、4−トリデカノール、5−トリデカノール、6−トリデカノール、7−トリデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、シクロノナノール、シクロデカノール、1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルブタノール、1−フェニルペンタノール、1−フェニルヘキサノール、1−フェニルヘプタノール、ベンズヒドロール等の炭素数3〜13の2級アルコールが好ましく、特に2−プロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、1−フェニルエタノール、ベンズヒドロールが好ましい。
また、2級アルコールの使用量としては、本発明の製造法が実施できる限りにおいて制限を受けることはなく、特に製造の際の反応が効率的に進行することから、オレフィン1モルに対し0.1〜1000モルが好ましく、特に1〜100モルで用いることが好ましい。
本発明の製造法における分子状酸素としては、分子状酸素の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば酸素ガスからなる純酸素;窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等の不活性ガスで希釈された酸素、等はもとより、空気であってもよい。また、該分子状酸素の使用量としては、本発明の製造法が実施できる限りにおいて如何なる制限を受けることはなく、特に製造の際の反応が効率的に進行することから、オレフィン1モルに対し0.1〜10モルが好ましく、特に1〜5モルが好ましい。
本発明の製造法により得られるエポキシ化合物としては、特に制限はなく、例えばプロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、シクロプロペンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド等挙げられ、効率的にエポキシ化合物を製造することが可能となることからプロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイドを製造するものであることが好ましく、特プロピレンオキサイド、ヘキセンオキサイドを製造するものであることが好ましい。
本発明のエポキシ化合物の製造法は、液相で行うことが好ましく、その際の溶媒としては如何なる制限を受けるものではなく、上記した2級アルコールを溶媒として用いることも可能である。また、他の溶媒として、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール及びオクタノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコ−ルやプロピレングリコール等のグリコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸等のカルボン酸類又は水等が挙げられる。そして、製造がより効率的に行えることから、2級アルコールを溶媒としても用いることが好ましい。
本発明の製造法における反応温度としては、副反応を抑制しつつ高い反応速度での製造が可能となることから50〜200℃であることが好ましく、特に70〜150℃であることが好ましい。また、反応圧力としては、常圧〜20MPaが好ましく、特に常圧〜5MPaであることが好ましい。なお、本発明の製造法においては、オレフィンは気体又は液体のいずれの状態でも用いることができ、液体状態で用いる場合には加圧下での製造を行えばよい。
本発明の製造法としては、例えば過酸化物、オレフィン、2級アルコール、分子状酸素および触媒を一括して反応装置に仕込む回分式、反応装置に過酸化物、オレフィン、2級アルコール及び分子状酸素を連続的に供給する半回分式、過酸化物、オレフィン、2級アルコール及び分子状酸素を連続的に供給するとともに、未反応ガス及び反応液を連続的に抜き出す固定床又は懸濁床の連続式、等のいずれの方法でも実施できる。また、過酸化物は、必要であれば、反応途中で供給を停止しても、間欠的に供給してもかまわない。また、製造されたエポキシ化合物は、反応混合物を順次蒸留するなど公知の方法により分離回収することができる。
本発明の製造法においては、2級アルコール由来の副生ケトンが発生するが、水素化することにより容易に原料である2級アルコールに戻すことが可能であり、再生利用することができる。従って、本発明の製造法では実質的に2級アルコール由来の副生成物は発生しない。
パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒の存在下、過酸化物、オレフィン、2級アルコールおよび分子状酸素を接触させることで、エポキシ化合物の選択率、触媒の安定性が高く、しかも、安全性、経済性、生産性の高い方法でエポキシ化合物を提供することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例1(結晶性チタノシリケートの調製)
特許第3697737号公報に準拠し結晶性チタノシリケートを調製した。
特許第3697737号公報に準拠し結晶性チタノシリケートを調製した。
温度計及び攪拌装置を備えた内容積1000mlの四つ口フラスコにテトラエチルオルトチタネート44.1g、次いでテトラエチルオルトシリケート198gを窒素気流下で入れ混合した。この混合溶液を0℃に冷却後、25重量%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液345gをフィードポンプにより1時間かけて滴下した。さらにこの液を室温で1時間攪拌して熟成処理を行った。攪拌後、混合物は均一溶液になった。この四つ口フラスコを油浴で約90℃に加熱し、加水分解によって生じたエタノール及び水を蒸留除去した。
蒸留除去された混合物にイオン交換水604gを加えた後、その400mlを温度計及び攪拌装置を備えた内容積500mlのハステロイ製耐圧反応容器に入れ、自圧下、170℃まで2時間で昇温させ、48時間攪拌して水熱合成を行った。オートクレーブの内容物を遠心分離し、60℃のイオン交換水で十分洗浄した。得られた白色粉末を90℃で15時間乾燥後、550℃にて5時間焼成して結晶性チタノシリケート21.5gを得た。得られた結晶性チタノシリケートは、X線回折装置(XRD)よりMFI型構造であることを確認した。
調製例2〈触媒の調製〉
100mlのなす型フラスコでテトラアンミンパラジウム塩化物・1水和物0.06gを純水24mlに溶解し、次いで調製例1で得られた結晶性チタノシリケート5.0gに含浸した。エバポレーターを用い常温常圧で1時間撹拌した後、60℃で減圧乾燥した。得られた粉末固体を窒素100ml/min通気下110℃で1時間乾燥させた後、窒素100ml/min、水素20ml/min通気下で150℃1時間処理を行い、触媒を調製した。元素分析の結果、触媒中のパラジウムは0.5wt%であった。
100mlのなす型フラスコでテトラアンミンパラジウム塩化物・1水和物0.06gを純水24mlに溶解し、次いで調製例1で得られた結晶性チタノシリケート5.0gに含浸した。エバポレーターを用い常温常圧で1時間撹拌した後、60℃で減圧乾燥した。得られた粉末固体を窒素100ml/min通気下110℃で1時間乾燥させた後、窒素100ml/min、水素20ml/min通気下で150℃1時間処理を行い、触媒を調製した。元素分析の結果、触媒中のパラジウムは0.5wt%であった。
(オレフィンのエポキシ化反応評価)
オレフィンの反応評価は、200mlのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業社製、(商品名)TPR−1型)を用いて行った。反応液の分析は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−14A)で行い、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC−FFAP、60m×0.25mm(内径)、膜厚0.25μm)を使用し、水素炎イオン化検出器(FID)を用い反応生成物を定量した。
オレフィンの反応評価は、200mlのステンレス製オートクレーブ(耐圧硝子工業社製、(商品名)TPR−1型)を用いて行った。反応液の分析は、ガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−14A)で行い、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC−FFAP、60m×0.25mm(内径)、膜厚0.25μm)を使用し、水素炎イオン化検出器(FID)を用い反応生成物を定量した。
(選択率)
選択率は、生成したエポキシ化合物とオレフィン由来の副生成物で表し、下記数(3)を用い計算した。
選択率は、生成したエポキシ化合物とオレフィン由来の副生成物で表し、下記数(3)を用い計算した。
実施例1
調製例2により得られた触媒を用い、1−ヘキセンのエポキシ化反応を行った。200mlのオートクレーブに、触媒0.2g、2−プロパノール62g、1−ヘキセン4.2g(50mmol)、80%−クメンヒドロペルオキシド−芳香族炭化水素溶液0.08g(0.4mmol)を入れた。次に、オートクレーブを窒素で置換した後、酸素0.3MPa、窒素0.6MPaを加え、反応温度100℃で3時間撹拌し、エポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
実施例2
反応温度を80℃にしたこと以外は、実施例1と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
反応温度を80℃にしたこと以外は、実施例1と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
実施例3
反応時間を6時間にしたこと以外は、実施例2と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
反応時間を6時間にしたこと以外は、実施例2と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
実施例4
調製例2により得られた触媒を用い、プロピレンのエポキシ化反応を行った。200mlのオートクレーブに、触媒0.2g、2−プロパノール62g、80%−クメンヒドロペルオキシド−芳香族炭化水素溶液0.08g(0.4mmol)を入れた。次に、オートクレーブを窒素で置換した後、酸素0.4MPa、プロピレン0.4MPa(20mmol)、窒素0.2MPaを加え、反応温度100℃で3時間撹拌してエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
調製例2により得られた触媒を用い、プロピレンのエポキシ化反応を行った。200mlのオートクレーブに、触媒0.2g、2−プロパノール62g、80%−クメンヒドロペルオキシド−芳香族炭化水素溶液0.08g(0.4mmol)を入れた。次に、オートクレーブを窒素で置換した後、酸素0.4MPa、プロピレン0.4MPa(20mmol)、窒素0.2MPaを加え、反応温度100℃で3時間撹拌してエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
実施例5
プロピレンに加え、1−ヘキセン4.2g(50mmol)を添加したこと以外は、実施例4と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
プロピレンに加え、1−ヘキセン4.2g(50mmol)を添加したこと以外は、実施例4と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。
比較例1
80%−クメンヒドロペルオキシド−芳香族炭化水素溶液を添加しないこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応結果を表1に示す。
80%−クメンヒドロペルオキシド−芳香族炭化水素溶液を添加しないこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応結果を表1に示す。
比較例2
調製例2により得られた触媒の代わりに、調製例1の結晶性チタノシリケート0.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応結果を表1に示す。
調製例2により得られた触媒の代わりに、調製例1の結晶性チタノシリケート0.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応結果を表1に示す。
比較例3
分子状酸素を添加しないこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応結果を表1に示す。
分子状酸素を添加しないこと以外は、実施例1と同様に反応を行った。反応結果を表1に示す。
実施例6
触媒量を1.0gにしたこと以外は、実施例1と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。反応後、触媒を回収し、X線回折装置(XRD)により分析した結果、回折パターンには変化はみられず、触媒の劣化は無かった。
触媒量を1.0gにしたこと以外は、実施例1と同様にエポキシ化反応を行った。反応結果を表1に示す。反応後、触媒を回収し、X線回折装置(XRD)により分析した結果、回折パターンには変化はみられず、触媒の劣化は無かった。
Claims (7)
- パラジウム、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素よりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒の存在下、過酸化物、オレフィン、2級アルコールおよび分子状酸素を接触することを特徴とするエポキシ化合物の製造法。
- パラジウムよりなる金属及び/又は金属化合物、と結晶性チタノシリケートからなる触媒であることを特徴とする請求項1に記載のエポキシ化合物の製造法。
- 結晶性チタノシリケートがMFI型構造を有する結晶性チタノシリケートであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエポキシ化合物の製造法。
- 過酸化物が、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド及び過酸化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の過酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造法。
- オレフィンがプロピレンおよび/またはヘキセンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造法。
- 2級アルコールが、2−プロパノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、1−フェニルエタノール及びベンズヒドロールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の2級アルコールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造法。
- 過酸化物モル量以上のエポキシ化合物を生成することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエポキシ化合物の製造法。
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