JP5654934B2 - プレス成形性に優れたチタン板 - Google Patents
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Description
純チタンは、不可避的不純物としてC、H、O、N、Fe等を微量に含有するが、本発明では、その中でも含有量が比較的多く、機械的性質に影響を及ぼすFeとOの含有量を規定した。
チタン板の1/4t部の圧延面における圧延方向引張時の{11−22}<11−23>双晶変形のシュミット因子(Schmid factor)を、そのチタン板の1/4t部の圧延面における圧延垂直方向引張時の{10−10}<11−20>すべり変形のシュミット因子で割った値が、1.35より小さいと、チタン板の成形時に発生する変形双晶の頻度が少なくなりすぎて、十分な延性を確保できなくなり、本発明で意図する優れたプレス成形性を得られなくなってしまう。本発明で意図する優れたプレス成形性を確保するためには、(1/4t部の圧延面における圧延方向引張時の{11−22}<11−23>双晶変形のシュミット因子)/(1/4t部の圧延面における圧延垂直方向引張時の{10−10}<11−20>すべり変形のシュミット因子)という計算式から求められる値が1.35以上でなければならない。好ましくはその計算式から求められる値が1.40以上、より好ましくは1.45以上である。一方、1/4t部の圧延面における圧延方向引張時の{11−22}<11−23>双晶変形のシュミット因子)/(1/4t部の圧延面における圧延垂直方向引張時の{10−10}<11−20>すべり変形のシュミット因子)という計算式から求められる値の最大値は、おおよそ2.00程度である。
チタン板の/4t部の平面内に存在する結晶粒の平均結晶粒径が大きくなりすぎると、プレス成形後のチタン板の肌荒れが顕著になり、プレス成形品として外観上好ましくなくなり、より厳しい条件での成形では割れが発生してしまう。従って、結晶粒の平均結晶粒径は、80μm以下とする。結晶粒の平均結晶粒径のより好ましい上限は75μm、更に好ましい下限は70μmである。一方、平均結晶粒径が小さくなりすぎると、チタン板の成形時に発生する変形双晶の頻度が少なくなりすぎて、十分な延性を確保できなくなり、本発明で意図する優れたプレス成形性を得られなくなってしまう。従って、結晶粒の平均結晶粒径は、20μm以上とする。結晶粒の平均結晶粒径のより好ましい下限は35μm、更に好ましい下限は50μmである。
次に、本発明のチタン板の製造方法について説明する。通常のチタン板は、分塊圧延→熱間圧延→中間焼鈍→冷間圧延→最終焼鈍といった各工程間に、随時ブラスト、酸洗処理を入れて製造されるが、製造するチタン板の成分組成や各工程の設定条件によって、得られる物性や組織状態は変わるので、一連の製造工程として総合的に条件を選択して決定すべきであって、個々の工程毎に条件を厳密に設定することは必ずしも適切でない。
チタン板の圧延面表面を機械研磨し、更に、バフ研磨に次いで電解研磨を行い、チタン板の表面から深さt/4部の圧延面(チタン板の表面に平行な面であって、その板厚方向の深さt/4部の面)の結晶組織が観察できるように調整し、その圧延面における圧延方向引張時の{11−22}<11−23>双晶変形のシュミット因子、並びに、同じ圧延面における圧延垂直方向引張時の{10−10}<11−20>すべり変形のシュミット因子を、前記した測定により得た。測定エリアは1mm×1mmの平面内とし、測定ピッチは1μmとした。
結晶粒(α相)の平均結晶粒径は、チタン板の圧延面表面を機械研磨し、更に、バフ研磨に次いでエッチングを行い、チタン板の表面から深さt/4部の圧延面の結晶組織が観察できるように調整し、光学顕微鏡を用いて×100にて任意の3箇所を写真撮影し、得られた写真を元にJIS G 0551の切断法により粒度番号測定を実施し、その粒度番号をもとにα相の円相当平均粒径(直径)を計算により求めた。尚、粒度番号測定に用いた光学顕微鏡による観察領域は1mm×1mmとした。
チタン板の耐力については、製造した各チタン板からJISZ2201に規定される13号試験片を作製し、この試験片について、JISZ2241に準拠する引張試験を行い、試験片の圧延方向の0.2%耐力(YS)を測定することで求めた。尚、試験片は、その長手方向(L方向)が圧延方向と一致するようにして採取した。また、試験速度(引張試験での歪み速度)は、0.3mm/minで一定とした。
プレス成形性については、図1に示すような、V字形の溝を設けたプレート式熱交換器の熱交換部分をプレス成形することを模擬したプレス成形金型を用いてチタン板(試験体)のプレス成形を実施し、その評価を行った。プレス成形金型は、図1に示すように、成形部の大きさが100mm×100mmで、その表面には、ピッチ10mm、最大高さ4mmの平面V字形の平行する稜線部が6本形成されている。その各稜線部のR形状は、図1(a)の上から下に向かって順に、R=0.4、1.8、0.8、1.0、1.4、0.6の計6種類である。
成形性スコア=F×G×ΣE(ij)/R(j)/(ΣA,C,C´,E 2/R(j)+ΣB,D 1/R(j))×100
この式において、A、C、C´、Eの場合は、E(ij)=1.0×(割れくびれなし:2、くびれ:1、割れ0)として、また、B、Dの場合は、E(ij)=0.5×(割れくびれなし:2、くびれ:1、割れ0)として算出した。また、本実施例では、温度(T)、潤滑油の粘度(μ)、試験体の板厚(t)、プレス金型の稜線の角度(α)、およびプレス金型の稜線のピッチ(p)を一定としたため、F×Gを便宜的に1として成形性スコアを算出した。
前記したプレス成形性の評価で、各試験体において、プレス成形後に割れが認められなかったV字形頂点部について、目視で肌荒れの状態を確認した。この確認により、V字形頂点部に、肌荒れが全く認められないものを○、明らかな凹凸が認められるものを×とし、○をプレス成形後も優れた外観であるとして評価した。
Claims (1)
- 質量%で、Feを0.04〜0.06%、Oを0.07〜0.20%含有し、残部がTiおよび不可避的不純物であって、
(1/4t部の圧延面における圧延方向引張時の{11−22}<11−23>双晶変形のシュミット因子)/(1/4t部の圧延面における圧延垂直方向引張時の{10−10}<11−20>すべり変形のシュミット因子)が、1.35〜2.00であると共に、
1/4t部の1mm×1mmの平面内に存在する結晶粒(α相)の平均結晶粒径が、20〜80μmであることを特徴とするプレス成形性に優れたチタン板。
但し、tはチタン板の板厚である。
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