以下、添付図面を参照して本願発明に係る誘導加熱調理器の実施の形態を説明する。各実施の形態の説明および以下の添付図面において、同様の構成部品については同様の符号を用いて参照する。
実施の形態1.
図1〜図3を参照しながら、本願発明に係る負荷検知式誘導加熱調理器の実施の形態1について以下詳細に説明する。実施の形態1に係る負荷検知式誘導加熱調理器の基本的構成は、前掲特許文献1に記載されたものと同様のものであるが、本願発明に係る入力電圧および入力電力の検出手段および検出方法について理解を容易にするために、負荷検知式誘導加熱調理器である誘導加熱調理器について以下に詳細説明する。
図1は、実施の形態1による誘導加熱調理器1の概略的な電気的構成を示す回路ブロック図である。誘導加熱調理器1は、概略、商用電源(交流入力電源)10からの交流電圧を直流電圧に整流する整流回路12と、加熱コイル22に所定の駆動周波数を有する高周波電流を供給する駆動回路14と、加熱コイル22およびこれに直列に接続された共振コンデンサ24からなるLCR誘導加熱部20とを有する。図中、加熱コイル22は、インダクタンスLと負荷抵抗Rの等価回路として図示されている。また誘導加熱調理器1は、駆動周波数を有する制御信号を生成する制御回路50を有する。制御回路50は、所望の火力または駆動電力(有効電力)でLCR誘導加熱部20を駆動するように駆動回路14を制御するものである。
また誘導加熱調理器1は、商用電源10の交流電圧(入力電圧)の正および負のピーク電圧を有するピークタイミング(ピーク時点)を検出する手段(ピーク時点検出手段)40を有する。たとえばピーク時点検出手段40は、分圧された交流電圧を基準電圧と比較してゼロクロス点を検出するコンパレータと、ゼロクロス点からピーク時点に至る所定の遅延時間を、交流電源の所定の周波数(50Hzまたは60Hz)に基づいて測定するタイマとからなるものであってもよく、当業者に広く知られた任意の回路構成を用いることができる。すなわちピーク時点検出手段40は、交流電圧のピーク電圧ではなく、ピーク電圧を与えるピーク時点のみを検出するものであり、極めて簡便な構成で実現されるものである。
整流回路12は、全波整流または半波整流するものであってもよく、直流成分を得るためのインダクタンスやコンデンサを含むフィルタ回路(ともに図示せず)を有するものであってもよい。前掲特許文献1に記載の誘導加熱調理器は、整流回路12を構成する平滑コンデンサ(図示せず)の両端の電圧VC(以下、「整流電圧VC」という)およびそのピーク電圧VPを検出する整流電圧検出手段を有し、整流電圧VCおよびピーク電圧VPから整流回路12の1周期における平均入力電力Pを求めるものである(前掲特許文献1の段落[0067]参照)。しかしながら、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1は、平滑コンデンサの両端の整流電圧VCおよびピーク電圧VPを検出する整流電圧検出手段を具備しない。詳細については後述するが、実施の形態1に係る誘導加熱調理器1は、回路構成がやや複雑な整流電圧検出手段を省略し、より簡便な手段を用いて、商用電源10の平均入力電力P(入力電源電力)を正確に検出することを可能にするものである。
駆動回路14は、IGBTなどのスイッチング素子(図示せず)を含むインバータ回路であり、インバータ駆動する回路であれば任意のものを用いることができ、たとえばハーフブリッジ式またはフルブリッジ式の駆動回路で構成することができる。
LCR誘導加熱部20は、上述のように、加熱コイル22およびこれに直列に接続された共振コンデンサ24からなり、加熱コイル22は、図中、インダクタンスLと負荷抵抗Rの等価回路として図示されている。加熱コイル22の上方に図示したものは、鍋などの被加熱体Kである。加熱コイル22に高周波電流が供給されると、その周囲に交流磁場を形成し(交流磁場が導電体からなる被加熱体Kに鎖交し)、被加熱体Kに渦電流を形成して、被加熱体K自体を加熱する。
一般に、LCR誘導加熱部20の負荷抵抗Rは、被加熱体Kの有無または載置状態(被加熱体Kに鎖交する交流磁場)に依存して変動する。すなわち負荷抵抗Rは、鍋Kが載置されていないときの加熱コイル22自体の線抵抗RCに、鍋Kを載置したことによる鍋Kの見かけ上の負荷抵抗RLを加えたものに相当する(R=RC+RL)。
さらに実施の形態1に係る誘導加熱調理器1は、図1に示すように、LCR誘導加熱部20の両端に印加される駆動電圧(出力電圧)Vを検出する駆動電圧検出手段26と、LCR誘導加熱部20に流れる駆動電流(出力電流)Iを検出する駆動電流検出手段28と、駆動電圧検出手段26および駆動電流検出手段28に電気的に接続された1次成分抽出手段30とを有する。
駆動電圧検出手段26は、LCR誘導加熱部20の両端に印加される駆動電圧(出力電圧)Vを検出するものであれば当業者により容易に想到される任意の回路構成を有するものであってもよい。同様に、駆動電流検出手段28は、LCR誘導加熱部20に流れる駆動電流(出力電流)Iを測定するものであれば任意の回路構成を有するものであってもよく、実施の形態1に係る駆動電流検出手段28として、たとえばカレントトランスが採用されている。
1次成分抽出手段30は、詳細図示しないが、駆動電圧検出手段26および駆動電流検出手段28で検出された駆動電圧Vおよび駆動電流Iのアナログ信号を、駆動周波数の整数倍(たとえば32倍)のサンプリング周波数で時分割して取り込み、デジタル信号に変換するA/D変換器を有する。また1次成分抽出手段30は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iのデジタル信号に対し、サンプリング周波数を用いて離散フーリエ変換することにより、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分(すなわち駆動周波数と同一の周波数を有する成分)だけを抽出する周波数分析器とを有する。なお周波数分析器は、複数の高次周波数成分を有するデジタル信号から1次成分のみを抽出するものであれば任意のものを採用することができ、たとえば複数の高次周波数成分を所定の周波数で離散フーリエ変換して1次成分のみを抽出する市販のソフトウェア(アルゴリズム)を実行する一般的な演算器として構成してもよい。なお、本明細書において、周波数分析器は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分を抽出するものとして説明するが、駆動周波数のn倍の周波数を有する成分のみを抽出するものであってもよく、この場合、1次成分抽出手段は「n次成分抽出手段」と読み替えるものとする。
駆動回路14は、上述のように、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのスイッチング素子を含むインバータ回路であり、IGBTを所定の駆動周波数(たとえば30kHz)を有する制御信号(ゲート信号)で駆動するとき、駆動電圧検出手段26および駆動電流検出手段28は、図2(a)に示すような高周波変調された駆動電圧Vおよび駆動電流Iを検出する。図2(a)に示すコイル駆動1周期は、たとえば駆動周波数が30kHzのとき、約33μ秒である。
このとき1次成分抽出手段30は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分、すなわち駆動電圧V1および駆動電流I1を次式のように複素表示することができる。
ここでV
1Re,I
1ReはV
1,I
1の実部を示し、V
1Im,I
1ImはV
1,I
1の虚部を示し、そしてjは虚数単位を示す。
また、LCR誘導加熱部20のインピーダンスZ、および駆動電圧V1および駆動電流I1の位相(駆動電流I1に対する駆動電圧V1の位相またはインピーダンスZの位相)θは次式で表される。
ここでIm(Z)およびRe(Z)はそれぞれインピーダンスZの虚部および実部を意味する。なお、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの位相は、arctanの代わりにarcsinまたはarccosを用いて算出してもよい。位相θが90度付近ではarctanは発散し、誤差を多く含み得るので、arcsinまたはarccosを用いて位相θを算出することが好ましい場合がある。
さらに本願発明に係る誘導加熱調理器1は、図1に示すように、駆動回路14および1次成分抽出手段30に電気的に接続された制御回路50を備える。本願発明に係る制御回路50は、上記[数2]より1次成分抽出手段30が抽出した複素表示の1次成分の駆動電圧V1および駆動電流I1から、LCR誘導加熱部20のインピーダンスZおよび駆動電圧V1および駆動電流I1の位相(偏角)θを算出し、これらに基づいて駆動回路14に適当な駆動信号(ゲート信号)を供給して、LCR誘導加熱部20で消費される有効電力値WEおよび電流実効値IEを制御するものである。
具体的には、制御回路50は、LCR誘導加熱部20の有効電力値WEおよび電流実効値IEを次式により算出することができる。
ここでI
1 *はI
1の複素共役を示す。
したがって、制御回路50は、駆動電圧V
1および駆動電流I
1から、LCR誘導加熱部20のインピーダンスZ、および有効電力値W
Eおよび電流実効値I
Eを瞬時に算出することができる。
またLCR誘導加熱部20を含む一般のLCR共振回路において、負荷抵抗R、インピーダンスZ、加熱コイル22のインダクタンスLおよび共振周波数Frは次式で表される。
ここでωは1次成分の周波数f(定義より駆動周波数と同一、ω=2πfで表される)であり、Cは共振コンデンサ24の静電容量であって、ともに既知である。したがって制御回路50は、[数2]で算出したθを用いて、[数4]から共振周波数Frと負荷抵抗R(=R
C+R
L)を求めることができる。
上説明したように、制御回路50は、駆動電圧Vおよび駆動電流Iの1次成分から共振周波数Fr(または加熱コイル22のインダクタンスL)と負荷抵抗Rを検出することができる。共振周波数FrまたはインダクタンスLは、被加熱体Kを構成する材料・材質に依存することが知られている。また負荷抵抗R(とりわけ鍋Kの見かけ上の負荷抵抗RL)は、鍋Kの載置状態(鍋Kが加熱コイル22の上方にどの程度載置されているか)により変化することが知られている。したがって、制御回路50は、共振周波数Frと負荷抵抗Rを検出することにより、鍋Kの材質および載置状態を瞬時に検出し、鍋Kの材質および載置状態に応じた最適な駆動条件で鍋Kを誘導加熱することができる(前掲特許文献1の段落[0032]参照)。
ところで、LCR誘導加熱部20で消費される有効電力値WEは、一般に、整流回路12の整流電圧VCがほぼ一定とみなせる場合、任意のタイミングで測定された電圧VCと整流回路12から出力される電流ICの積として算出することができる。しかしながら、整流電圧VCをできるだけ一定にする(直流波形とする)ためには、できるだけ大きい静電容量を有する平滑コンデンサを用いる必要があり、静電容量が大きい平滑コンデンサを用いると、整流回路12の無効電力が増えて力率が悪くなり、好ましくない。
したがって実際に用いられる全波整流用の整流回路12の両端の整流電圧VCは、LCR誘導加熱部20の負荷が小さいときには、ほぼ一定とみなせるが、負荷が大きくなるにつれて、図2(b)に示すような電圧波形から図2(c)に示すような電圧波形に変化する。とりわけ整流電圧VCは、負荷が極めて大きいときには、商用電源10とともに変動し、電源電圧を全波整流したままのような波形を有する(図2(c))。このように整流回路12の整流電圧VCが変動すると、整流回路12から出力される電流ICも変化し、上記のように、LCR誘導加熱部20で消費される有効電力値WEを、単純に電圧VCと電流ICの積で求めることはできない。
本願発明によれば、上記説明したように、駆動電圧検出手段26および駆動電流検出手段28が駆動電圧Vおよび駆動電流Iを検出し、1次成分抽出手段30がその一次成分である駆動電圧V1および駆動電流I1を抽出した後、制御回路50が[数3]を用いて、LCR誘導加熱部20の有効電力値WEおよび電流実効値IEを算出することができる。しかし、LCR誘導加熱部20で消費される有効電力値WE(火力または負荷)が特に大きい場合には(図2(c))、整流回路12の整流電圧VCおよびLCR誘導加熱部20の有効電力値WEは、駆動電圧V1および駆動電流I1(商用電源10の電圧)とともに大きく変動してしまう。
そこで実施の形態1に係る誘導加熱調理器1は、ピーク時電力算出手段52を有する。ピーク時電力算出手段52は、ピーク時点検出手段40により検出したピーク時点(図2(b)の一点鎖線で示す時点)を含むコイル駆動周期における1次駆動電圧V1および1次駆動電流I1(図2(a))に[数3]を適用して、LCR誘導加熱部20で消費されるピーク時電力WEPを求めるものである。したがってピーク時電力算出手段52は、図2(b)または図2(c)に示すように整流電圧VCの変動の大小にかかわらず、商用電源10の交流電圧がピークを有する時点、すなわち整流電圧VCのピーク時点におけるLCR誘導加熱部20で消費されるピーク時電力WEPを算出することができる。
本願発明に係る誘導加熱調理器1は、さらに入力電力算出手段54を有し、詳細後述のように、算出されたピーク時電力WEPから商用電源10の平均入力電力Pを算出するものである。
図3は、ピーク時電力WEPと平均入力電力Pとの関係を示すグラフである。図示のように、本願発明の発明者らは、LCR誘導加熱部20の負荷が小さい場合には、整流電圧VCの波形が直流電圧の波形に近似し、ピーク時電力WEPと平均入力電力Pとはほぼ同じ値を示す(P=R×WEPとしたときの線形比例係数Rが略1である)が、LCR誘導加熱部20の負荷が大きくなると、係数Rが徐々に小さくなり、特に火力が大きくなると(たとえばLCR誘導加熱部20の有効電力WEが800Wを越えると)、係数Rが1/2に漸近することを確認した。
線形比例係数Rが1/2に漸近する理論的な理由は以下の通りである。整流電圧VCは、上述のように、LCR誘導加熱部20の負荷が小さいときには、ほぼ一定とみなせるが、負荷が特に大きいときには、図2(c)に示すように、電源電圧は全波整流したままのような波形(全波波形)を有する。このとき平均入力電力Pは、一般に、整流電圧VCのピーク電圧VP(実施の形態1では測定しない)を用いて、次式により求めることができる。
(平均入力電力P)
=(整流電圧VCの二乗の平均)/(ピーク電圧VPの二乗)×(ピーク時電力WEP)
ここでピーク電力WEPは、図2(a)に示すようにピーク電圧VPを有する時のコイル駆動の1周期における有効電力である。
ここで、LCR誘導加熱部20の負荷が大きく、電源電圧が全波整流したままのような波形(全波波形)を有する場合、ピーク時電力WEPと平均入力電力Pとの間の線形比例係数Rが1/2に近似できることを検証する。
上式における全波整流された整流電圧VCの二乗の平均は次式で求められる。
したがって次式を得る。
ここで三角関数の加法定理から次式を得る。
したがって平均入力電力Pは、負荷が特に大きいときには、すなわち整流電圧V
Cが全波整流したままのような波形(全波波形)を有するときには、ピーク時電力W
EPの1/2となる。
本願発明者らは、1つの具体的な実施例において、ピーク時電力WEPに対して算出された平均入力電力P(下表)を用いて、図3に示すようにグラフを得た。
また本願発明者らは、図3のグラフにおいて、平均入力電力Pがピーク時電力WEPをパラメータとする次の一般多項式により近似されることを見出した。
すなわち本願発明に係る入力電力算出手段54は、整流電圧VCのピーク時点におけるLCR誘導加熱部20で消費されるピーク時電力WEPから、商用電源10の平均入力電力Pを算出することができる。入力電力算出手段54は、ピーク時電力WEPから[数10]の一般多項式および[表2]の係数を用いて平均入力電力Pを算出する演算回路として構成してもよい。択一的には、入力電力算出手段54は、たとえば[表1]に示すように平均入力電力Pとピーク時電力WEPとの間の対応関係(テーブル)を記憶するメモリ(図示せず)を有し、ピーク時電力算出手段52からのピーク時電力WEPに基づいて平均入力電力Pを出力するものであってもよい。
さらに択一的には、ピーク時電力WEPと平均入力電力Pとの間の線形比例係数Rが1/2と近似できるまで(図3の点aまで)、ピーク時電力WEPをいくつかの区間に分割して、それぞれの区間で平均入力電力Pをピーク時電力WEPで適当に直線近似して表してもよい。
なお、ピーク時電力WEPと平均入力電力Pとの間の線形比例係数Rが、ほぼ1である状態(LCR誘導加熱部20の負荷が小さい状態)から、1/2に近似できる状態(LCR誘導加熱部20の負荷が十分に大きい状態)に移行するときの平均入力電力Pは、整流回路12の平滑コンデンサを始め、LCR誘導加熱部20のインダクタンス等に依存する。換言すると、平均入力電力Pを計算するために用いられる[表1]に記載の係数または[表2]に記載の平均入力電力Pとピーク時電力WEPとの間の対応関係(テーブル)は、各誘導加熱調理器の回路構成によって特定することができる。
このように、実施の形態1に係る誘導加熱調理器によれば、整流電圧VCのピーク電圧VPを検出することなく、ピーク時電力算出手段52を用いてLCR誘導加熱部20でのピーク時電力WEPを算出し、入力電力算出手段54を用いることにより、平均入力電力Pを検出することができる。すなわち実施の形態1に係る誘導加熱調理器1によれば、整流電圧VCのピーク電圧VPを検出するために必要とされる整流電圧検出手段を省略し、より簡便な回路構成を有するピーク時電力算出手段52および入力電力算出手段54を用いて、平均入力電力Pを求めることができる。なお、実施の形態1において、ピーク時電力算出手段52および入力電力算出手段54は、制御回路50とは別体のものとして説明したが、制御回路50内に組み込み、一体のものとして構成することができることは云うまでもない。
実施の形態2.
図4〜図9を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態2について以下に説明する。実施の形態2による誘導加熱装置2は、概略、整流電圧検出手段15を有するとともに、駆動電圧検出手段26の代わりに駆動電圧推定手段17を用いる点を除いて、実施の形態1の誘導加熱装置1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
図4は、実施の形態2による誘導加熱調理器2の概略的な電気的構成を示す回路ブロック図である。実施の形態2による誘導加熱装置2は、整流電圧VCを検出する整流電圧検出手段15を有する。整流電圧検出手段15は、当業者により広く知られた任意の回路構成を採用することができ、たとえば整流回路12の両端の電圧を分圧した後に、整流電圧VCを検出する差動アンプであってもよい。
整流電圧検出手段15は、ピーク時点検出手段40に接続され、ピーク時点検出手段40で検出されたピーク時点における整流電圧VCを検出するものである。なお、整流電圧検出手段15は、連続する複数のピーク時点における整流電圧VCを検出して、これらの平均値を整流電圧VCとして算出するものであってもよい。
制御回路50は、上述のように、駆動回路14に所定の駆動周波数を有する制御信号を供給することにより、所望の火力(消費電力または負荷)がLCR誘導加熱部20で消費されるように駆動回路14を制御するものである。すなわち制御回路50は、駆動回路14に供給される矩形波形を有する制御信号のオン/オフのタイミング(周期、位相、またはデューティ比)を制御するものである。
実施の形態2に係る駆動電圧推定手段17は、整流電圧検出手段15で検出されたピーク時点における整流電圧VCを受け、制御回路50からの制御信号がオン状態にある時点の整流電圧VCを駆動電圧V’として推定するものである。
また実施の形態2に係る駆動電流検出手段28は、実施の形態1と同様、LCR誘導加熱部20に流れる駆動電流Iを検出するものであるが、駆動電圧推定手段17が駆動電圧V’を推定する時点と同期して、制御回路50からの制御信号がオン状態にある時点の電流を駆動電流I’として検出するものである。
実施の形態2に係る制御回路50は、駆動電圧推定手段17からの駆動電圧V’と、駆動電流検出手段28からの駆動電流I’を乗算することにより、ピーク時電力WEPを算出することができる。
したがって実施の形態2に係るピーク時電力算出手段52は、次式により平均入力電力Pを算出することができる。
(平均入力電力P)
=(整流電圧VCの二乗の平均)/(ピーク電圧VPの二乗)×(ピーク時電力WEP)
ここでピーク電力WEPは、駆動電圧V’と駆動電流I’の積である。
実施の形態2に係る入力電力算出手段54は、ピーク時電力WEPと平均入力電力Pとは、実施の形態1において上記説明したような関係を有するので、ピーク時電力算出手段52で算出されたピーク時電力WEPに基づいて、平均入力電力Pを求めることができる。すなわち実施の形態2に係る誘導加熱調理器2によれば、駆動電圧検出手段26および1次成分抽出手段30を省略し、整流電圧VCを検出することにより、より簡便な手法で商用電源10の平均入力電力Pを算出することができる。なお、実施の形態2と同様、ピーク時電力算出手段52および入力電力算出手段54は、制御回路50と一体のものとして構成してもよい。
ここで実施の形態2に係る誘導加熱調理器2の例示的な回路構成について説明する。図6は、フルブリッジ式駆動回路14およびLCR誘導加熱部20の回路構成を示すブロック回路図である。フルブリッジ式駆動回路14は、IGBT等の4つのスイッチング素子TR1,TR2,TR3,TR4を有する。フルブリッジ式駆動回路14は、高電位側に整流電圧検出手段15からの整流電圧VCが接続され、低電位側に基準電位(GND電位)が接続される。
図6において、LCR誘導加熱部20の左側をプラス(+)側、右側をマイナス(−)側とし、LCR誘導加熱部20の左側の電位が右側より高いときに流れる電流を正の電流とし、小さいときに流れる電流を負の電流とする。
図7は、制御回路50がスイッチング素子TR1,TR2,TR3,TR4のそれぞれに供給する制御信号UP,UN,VP,VNのタイミングチャートと、LCR誘導加熱部20の両端に印加される電圧の電圧波形とを示すものである。スイッチング素子TR1,TR2,TR3,TR4は、制御回路50からの制御信号UP,UN,VP,VNに基づいてスイッチング動作を行う。制御信号はスイッチング素子を制御するために必要な所定のオン電位を有するが、説明の便宜上、スイッチング素子をON制御するときの電位を1とし、スイッチング素子をOFF制御するときの電位を0として以下説明する。すなわち制御信号の電位が1のとき、スイッチング素子はON制御され(導通状態となり)、制御信号の電位が0のとき、スイッチング素子はOFF制御される(非導通状態となる)。
より具体的には、図7に示す制御信号UP,UN,VP,VNのそれぞれは、電位0および電位1をデューティ比50%で繰り返す矩形波信号である。制御信号UP,UNおよび制御信号VP,VNは、互いに逆位相を有しており(排他出力)、たとえば制御信号UPが電位1を有するとき、制御信号UNは電位0を有する。よって、制御信号UP,UNにより、スイッチング素子TR1,TR2が同時に導通状態となることはない。仮に、制御信号UP,UNがともに電位1を有し、スイッチング素子TR1,TR2が同時に導通状態となると、整流電圧VCと基準電位(GND電位)との間が短絡してしまう。同様に、制御信号VP,VNがともに電位1を有し、スイッチング素子TR3,TR4が同時に導通状態となることはない。
フルブリッジ式駆動回路14は、制御信号UP,UNと制御信号VP,VNの位相をずらすことにより、正または負の駆動電流がLCR誘導加熱部20に流れる時間(期間)を制御する。この位相を制御位相という。コイル駆動1周期を360度とすると、制御位相は0度〜180度の間で制御することができる。制御位相は360度〜180度の間で制御することも可能であるが、LCR誘導加熱部20に流れる時間(期間)は、制御位相は0度〜180度の間で制御した場合と実質的に同一波形となるので、通常、0度〜180度の間で制御位相を制御する。
フルブリッジ式駆動回路14の動作について以下説明する。制御信号UP,VNの電位が1で、制御信号VP,UNの電位が0であるとき、LCR誘導加熱部20には正(左側から右側へ)の電流が流れる。逆に、制御信号UP,VNの電位が0で、制御信号VP,UNの電位が1であるとき、LCR誘導加熱部20には負(右側から左側へ)の電流が流れる。上記以外の場合には電流は流れない。このとき、LCR誘導加熱部20に印加される駆動電圧は整流電圧VCまたは−VCを振幅とする図7に示すような電圧波形を有する。すなわちLCR誘導加熱部20の両端に印加される電圧は、1,0,−1に整流電圧VCを乗算したものである。
一方、整流電圧VCは、上述のように、とりわけLCR誘導加熱部20の負荷が大きく、電源電圧が全波整流したままのような波形(全波波形)を有する場合、電源電圧に依存して大きく変化する(図2(c))。そこで実施の形態2に係る駆動電圧推定手段17は、ピーク時点検出手段40で検出されたピーク時点を含むコイル駆動周期において、たとえば制御信号UP,VNの電位が0から1へ立ち上がった時(制御信号の所定の位相)における整流電圧VCを、LCR誘導加熱部20の正のピーク時駆動電圧V’と推定する。
図8は、ハーフブリッジ式駆動回路14およびLCR誘導加熱部20の回路構成を示すブロック回路図である。ハーフブリッジ式駆動回路14は、IGBT等の2つのスイッチング素子TR1,TR2を有する。ハーフブリッジ式駆動回路14は、同様に、高電位側に整流電圧検出手段15からの整流電圧VCが接続され、低電位側に基準電位(GND電位)が接続される。
図9は、制御回路50がスイッチング素子TR1,TR2のそれぞれに供給する制御信号UP,UNのタイミングチャートと、LCR誘導加熱部20の両端に印加される電圧の電圧波形とを示すものである。スイッチング素子TR1,TR2は、制御回路50からの制御信号UP,UNに基づいてスイッチング動作を行う。図9は、スイッチング素子をON制御する電位1とOFF制御する電位0の間隔(期間)のデューティ比を調整することにより、LCR誘導加熱部20に流れる電流を制御するデューティ制御方法を示すものである。デューティ比は、コイル駆動1周期を100%とした場合、電位1の区間が0〜50%の範囲で制御される。
図8に示すハーフブリッジ式駆動回路14を用いた場合、LCR誘導加熱部20に印加される駆動電圧は整流電圧VCを振幅とする図9に示すような電圧波形を有する。すなわちLCR誘導加熱部20に印加される電圧は、1または0に整流電圧VCを乗算したものである。
なお、デューティ制御方法の他、たとえばデューティ比を50%に固定して周波数を変えることにより、LCR誘導加熱部20に流れる電流を制御する周波数可変制御方法を用いることもできる。制御回路50は、周波数可変制御方法を用いた場合であっても、スイッチング素子のON/OFF制御する時点(タイミング、位相)を制御することができるので、LCR誘導加熱部20に印加される駆動電圧を検出することができる。
したがって、ハーフブリッジ式駆動回路14においても同様に、整流電圧VCは電源電圧に依存して大きく変化し得るが(全波波形)、駆動電圧推定手段17は、ピーク時点検出手段40で検出されたピーク時点を含むコイル駆動周期において、制御信号の所定の位相における整流電圧VCを、LCR誘導加熱部20のピーク時駆動電圧V’と推定することができる。
したがって、駆動回路14がフルブリッジ式またはハーフブリッジ式のものであるかによらず、実施の形態2に係る駆動電流検出手段28は、ピーク時点検出手段40で検出されたピーク時点を含むコイル駆動周期において、たとえば制御信号UP,VNの電位が0から1へ立ち上がった時に、駆動電圧V’が推定された時点と同期させて、LCR誘導加熱部20に流れる電流を駆動電流I’として検出することができる。
なお、上記説明では、駆動電圧推定手段17は、制御信号の所定の位相の一例として、制御信号UP,VNの電位が0から1へ立ち上がった時点を採用するものとして説明したが、制御信号UP,VNの電位が1から0へ立ち下がった時点を用いることができ、その他の任意の時点(タイミング、位相)を基準としてもよい。ただし、通常のデジタル回路においては、制御信号の電位の立ち上がり時点または立ち下がり時点の検出が容易である。
また制御信号の所定の位相は、立ち上がり時点または立ち下がり時点に限定されるものではなく、これらの時点から実際に駆動電圧が変化するまでに生じる遅延時間が無視できない程度に大きい場合には、ピーク時点検出手段40で検出されたピーク時点を含むコイル駆動周期におけるその他の時点(タイミング、位相)で同時に駆動電圧V’および駆動電流I’を検出すればよい。
こうして制御回路50は、駆動電圧V’と駆動電流I’の積からピーク時電力WEPを算出し、実施の形態2に係る入力電力算出手段54は、上述のように、駆動電圧検出手段26および1次成分抽出手段30を省略して、整流電圧検出手段15で得られた整流電圧VCおよびピーク電圧VPを用いて、より簡便な手法により平均入力電力Pを算出することができる。
ただし実施の形態2に係る誘導加熱調理器を、共振周波数Frと負荷抵抗Rを検出することにより、鍋Kの材質および載置状態を瞬時に検出し、鍋Kの材質および載置状態に応じた最適な駆動条件で鍋Kを誘導加熱するスマート誘導加熱調理器として構成する場合には、1次成分抽出手段30は、図2に示す駆動電圧Vおよび駆動電流Iの一次成分である駆動電圧V1および駆動電流I1を抽出し、制御回路50は[数4]を用いて共振周波数Frと負荷抵抗Rを算出する必要がある。したがって、この場合、実施の形態2の変形例に係るスマート誘導加熱調理器2’は、図5に示すように、実施の形態1と同様、駆動電圧検出手段26および1次成分抽出手段30を具備しなければならない。なお、実施の形態2の変形例に係る駆動電圧検出手段26および駆動電圧推定手段17は、両方の機能を有する1つのプロセッサとして一体的に構成してもよい。
実施の形態3.
図10を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態3について以下に説明する。実施の形態3による誘導加熱装置3は、概略、入力電力推定手段56と入力電力制限手段58とを追加した点を除いて、実施の形態1の誘導加熱装置1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
一般の誘導加熱調理器は、商用電源10を入力電源として用いる。通常、商用電源10の定格電圧V0は法令等により規定されているが、商用電源10の実際の入力電圧Vが定格電圧V0の95%〜105%の間で変動することが想定され、定格電圧の上記範囲の変動に対応しなければならない。通常の誘導加熱調理器は、最大火力(すなわちLCR誘導加熱部20で消費される有効電力値WEの最大値)等について、定格電圧V0および定格電流I0を基準として設計されているため、商用電源10の実際の入力電圧Vが定格電圧V0より低下したとき、制御回路50は、ユーザが所望する火力を得るために、定格電流I0を越える入力電流Iを供給しようとする場合がある。しかしながら、入力電流Iが定格電流I0を越えると、配線用遮断器(ブレーカ)が作動し、その他の家電製品への電源供給も遮断し、ユーザに不便や不都合を与えるおそれがある。そのために実施の形態1および2に係る誘導加熱調理器1,2のように、入力電力を常時モニタするために入力電力算出手段54を設け、入力電力が定格電圧V0および定格電流I0の積を越えて、配線用遮断器が作動することを事前に回避することが好ましい。
一方、実施の形態3に係る誘導加熱装置3は、より簡便な手段を用いて、商用電源10の実際の入力電圧Vを推定する手段(入力電圧推定手段)56を提案するものである。図10は、実施の形態3に係る誘導加熱装置3の概略的な電気的構成を示す回路ブロック図である。実施の形態3の誘導加熱装置3は、実施の形態1と同様、LCR誘導加熱部20の両端の電圧を検出する駆動電圧検出手段26を有する。ただし実施の形態1とは異なり、実施の形態3に係る駆動電圧検出手段26は、ピーク時点検出手段40に直接的に接続されている。
ピーク時点検出手段40は、商用電源10の実際の入力電圧Vがピーク電圧を有する時点を検出するものであるが、上記説明したように、整流電圧Vcは、LCR誘導加熱部20の負荷が大きいときには、電源電圧を全波整流したままのような波形を有し、そのピーク電圧は電源電圧(入力電圧)のピーク電圧VPと等しくなる。すなわち実施の形態3に係る誘導加熱装置3は、ピーク時点検出手段40で検出されたピーク時点において駆動電圧検出手段26が検出した電圧を、電源電圧(入力電圧)のピーク電圧VPと推定する入力電圧推定手段56を有する。なお、定格電圧V0は、交流入力電力の実効値として規定されているので、入力電圧推定手段56により推定されたピーク電圧VPを1/√2倍することにより、定格電圧V0を容易に算出することができる。
上述のように、実施の形態1および2のように、入力電力算出手段54を用いて入力電力を常時モニタすることに代えて、極めて簡便な構成を有する入力電圧推定手段56を用いて、ピーク時点における駆動電圧検出手段26の電圧を電源電圧(入力電圧)のピーク電圧VPと推定することができる。
また実施の形態3に係る誘導加熱装置3は入力電力制限手段58を有する。入力電力制限手段58は、入力電圧推定手段56に接続され、推定された入力電圧Vが定格電圧V0の所定範囲内で変動するとき、入力電圧Vに応じて入力電力を制限するものである。具体的には、入力電力制限手段58は、推定された入力電圧Vがたとえば定格電圧V0の95%より下がったとき、所望の火力を得るために、より多くの入力電流Iを供給して定格電流I0を越えることがないように制御回路50にフィードバックするものである。すなわち入力電力制限手段58は、入力電圧Vが定格電圧V0の95%以上となるまで、駆動回路14がLCR誘導加熱部20に供給する高周波電流を低減するように制御回路50を制御するものである。
なお、実施の形態3では特に説明しなかったように、入力電圧Vを推定するためには、駆動電流検出手段28、1次成分抽出手段30、ピーク時電力算出手段52、および入力電力算出手段を用いる必要はないので、実施の形態3に係る誘導加熱装置3においては、これらの構成部品を省略することもできる。
実施の形態4.
図11を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態4について以下に説明する。実施の形態4による誘導加熱装置4は、実施の形態3と同様、入力電力推定手段56および入力電力制限手段58を有するものであるが、入力電力推定手段56が駆動電圧検出手段26ではなく、1次成分抽出手段30に接続されている点を除いて、実施の形態3の誘導加熱装置3と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
図11は、実施の形態4に係る誘導加熱装置4の概略的な電気的構成を示す回路ブロック図である。上述のとおり、実施の形態4の入力電力推定手段56は、駆動電圧検出手段26の代わりに、1次成分抽出手段30に接続されている。実施の形態3の入力電力推定手段56は、駆動電圧検出手段26で検出された駆動電圧Vから入力電圧を推定したが、駆動電圧Vが外乱ノイズを含むとき、入力電圧を正確に推定できないことがある。そこで、実施の形態4の入力電力推定手段56は、1次成分抽出手段30で得られた駆動電圧の1次成分から入力電圧を推定して、外乱ノイズの影響を最小限に抑えようとするものである。
具体的に、フルブリッジ式駆動回路を用いた場合、制御位相と入力電圧ピーク電圧時における駆動電圧1次成分の実効値との関係は次式で表される。
ここでV
1Eは駆動電圧Vの1次成分であり、V
Eは入力電圧の実効値である。また、aは制御位相(図6における制御信号UP,UNと制御信号VP,VNのずれまたは時間差)であり、[数11]における単位はラジアン(rad)である。0〜180度は0〜πに対応する。
制御回路50は制御位相aを制御するものであり、駆動電圧検出手段26で検出された駆動電圧Vから駆動電圧の1次成分の実効値V1Eが得られるので、入力電圧の実効値VEは[数11]を変形して次式で求められる。
一方、ハーフブリッジ式駆動回路を用いた場合、制御位相と入力電圧ピーク電圧時における駆動電圧1次成分の実効値VEとの関係は次式で表される。
ここでデューティ比の0〜50%は0〜πラジアンに対応する。
なお、デッドタイムが設定されている場合でも、制御回路50は、駆動信号波形をどのように制御して駆動電圧を出力するものであるので、制御位相と入力電圧ピーク電圧時における駆動電圧1次成分の実効値との関係を同様に演算することができる。
実施の形態4では特に説明しなかったように、入力電圧Vを推定するためには、ピーク時電力算出手段52および入力電力算出手段を用いる必要性はないので、実施の形態4に係る誘導加熱装置4においては、これらの構成部品を省略することもできる。
実施の形態5.
図12を参照しながら、本願発明に係る誘導加熱装置の実施の形態5について以下に説明する。実施の形態5による誘導加熱装置5は、駆動電流検出手段28が共振コンデンサ24の両端の電圧を検出することによりLCR誘導加熱部20に流れる電流を検出する点を除いて、実施の形態1の誘導加熱装置1と同様の構成を有するので、その他の構成部品に関連する詳細な説明を省略する。なお図中、同一構成部品については同一の符号を用いて示す。
図12は、実施の形態5に係る誘導加熱装置5の概略的な電気的構成を示す回路ブロック図である。実施の形態5に係る駆動電流検出手段28は、図12に示すように、共振コンデンサ24の両端のコンデンサ電圧VRCを検出する手段(コンデンサ電圧検出手段、図示せず)を内蔵し、実施の形態1と同様、1次成分抽出手段30に電気的に接続されている。コンデンサ電圧VRCは、駆動電圧Vと同様、駆動周波数の整数倍の高次周波数成分を含み、1次成分抽出手段30を用いて離散フーリエ変換することにより、コンデンサ電圧VRCの1次成分VRC1(駆動周波数と同一の周波数を有する成分)だけを抽出し、複素表示することができる。なお、コンデンサ電圧VRCの1次成分VRC1と駆動電流I1は次の関係式を満たす。
ここでωは1次成分の周波数f(定義より駆動周波数と同一、ω=2πf)であり、Cは共振コンデンサ24の静電容量であって、ともに既知である。
上式より、駆動電流I
1はコンデンサ電圧V
RC1に対して位相がπ/4(90度)だけ進んでいることが明らかである。そして本願発明によれば、コンデンサ電圧V
RC1を複素表示するので、次式より極めて簡便な計算により駆動電流I
1を求めることができる。
このように実施の形態5によれば、実施の形態1〜4に係る駆動電流検出手段28で用いられていた比較的に高価なカレントトランスを省略して、より安価に駆動電流を検出する手段を採用することにより、誘導加熱装置5の製造コストを削減することができる。