JP5646900B2 - 親水化柔軟化処理されたスポンジ及びその製造方法 - Google Patents

親水化柔軟化処理されたスポンジ及びその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、柔軟なゴム弾性を有するスポンジに関するものであり、特に、反発弾性が大きく、触感がソフトで親水性を有し、用途としてはゴム製、ポリウレタン製の化粧用パフ、洗い具、クッションなど、直接肌に触れる、親水化柔軟化処理されたスポンジ及びその製造方法に関するものである。
直接肌に触れる用途のスポンジ、特に化粧用スポンジパフは、しっとりとした肌あたりの良い風合いが求められる。化粧用スポンジパフの使用方法には、スポンジパフにそのまま化粧用のファンデーションを取り、これを塗布する方法(水なし使用)の他に、一旦スポンジパフに水を含ませて軽く絞って水で湿らせてから化粧用のファンデーションを取りこれを塗布する方法(水あり使用)がある。スポンジパフを水で湿らせることによって、ひんやりとした清涼感や、スポンジがより柔軟となりしっとりとした肌あたりが好まれる他、スポンジパフを水で湿らせることによって、ファンデーションの伸びが良く化粧効果に優れたものになる。これは、スポンジパフの樹脂表面が水で濡れていることで、ファンデーションの疎水性粒子が表面に浮き上がることで、肌への移りが良好となるものである。このような特性を発揮する為、特に水あり使用専用のファンデーションが販売されている。また、多くのファンデーションは、水あり、水なしの両用タイプとして製造されている。
このような水あり使用用のスポンジパフとしては、NBRなどのゴム弾性スポンジを使用出来るが、より効果を上げる目的で、スポンジの樹脂表面を親水性モノマーでグラフト重合することにより親水性としたスポンジが提案されている。スポンジの樹脂表面を親水性とすることで、使用時に水が表面に強く、均一に保持されファンデーションの伸びが優れたものとなっている。
このようなものとして、特許文献1に示すように、パフ素材をポリエチレングリコールジメタクリレート水溶液に浸漬させ、加熱し、グラフト重合を起こさせることよりなる親水性パフ製造方法において、その重合開始剤として水溶性アゾ開始剤を上記ポリエチレングリコールジメタクリレート水溶液に予め添加すると言うものがある。
また、特許文献2に示すように、紫外線を照射することにより化粧用塗布具の表面にグラフトモノマーをグラフト重合させると言うものがある。
特開昭64−81834号公報 特開2001−95621号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載されたものでは、スポンジが湿っている時は、しっとりした感じであるが、乾燥するとカサカサした硬いものとなり、スポンジ本来の柔軟性が低下する。よって、両用タイプのファンデーションでの使用や、水なしタイプのファンデーションとの共用ができない。また、水溶液中のモノマーは、全てがスポンジ表面にグラフト重合する訳では無く、大部分は溶液中で単重合体となる。この単重合体は、粘着性があり、これがスポンジに付着し、好ましくないベトツキ感が出たり、製品に好ましくない斑状の汚れとなって付着することになる。
さらに、溶液中の単重合体や未反応のモノマーは大部分がスポンジに取り込まれずに排液として排出され、コスト増となる。また、単重合体や未反応モノマーを含む排液はそのまま河川に排出することは許されず、排水処理も必要となり、これもコスト増の原因となる。
また、上記特許文献2に記載されたものでは、ポリアルキレングリコールメタクリレートを光重合するため、光照射を行う装置が別途必要となる。また、この光照射において光の届かないスポンジ内部では重合が起こらず、均一な製品が出来ない。さらに、この方法は、最終製品の形態としてから加工することになるので、生産性及び作業性が悪い。さらに、光重合には酸素障害があり空気中での光照射では製造することが出来ず、窒素パージを行う必要があり、この為の特別な装置が必要となる。
この発明は、これらの点に鑑みて為されたもので、乾燥時、湿潤時ともにしっとりとした感触を持ち、強い親水性を有するとともに、優れた生産性と作業性を有する親水化柔軟化処理されたスポンジ及びその製造方法を提供して上記課題を解決するものである。
請求項1の発明は、重合性モノマーを含有する水溶液から成る、曇点20℃以上の処理液であって、当該曇点以下の温度状態の上記処理液にスポンジを浸し、当該処理液を上記曇点以上であって且つ80℃以下まで昇温し、上記スポンジの表面及び内部において上記重合性モノマーを析出させ、その後、絞り工程を経て熱処理を行い上記スポンジの表面及び内部に上記重合性モノマーを重合した親水化柔軟化処理されたスポンジとした。
請求項2の発明は、上記重合性モノマーを含有する処理液の曇点が20℃〜75℃であり、かつ昇温する温度を25℃〜80℃とした上記請求項1に記載の親水化柔軟化処理されたスポンジとした。
請求項3の発明、上記重合性モノマーがポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアクリレート又はポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタアクリレートである上記請求項1又は2に記載の親水化柔軟化処理されたスポンジとした。
請求項4の発明は、上記重合性モノマーの水溶液に、界面活性剤を加える上記請求項1、2又は3の何れかに記載の親水化柔軟化処理されたスポンジとした。
請求項5の発明、重合性モノマーを含有する水溶液から成る、曇点20℃以上の処理液であって、当該曇点以下の温度状態の上記処理液にスポンジを浸し、当該処理液を上記曇点以上であって且つ80℃以下まで昇温し、上記スポンジの表面及び内部において上記重合性モノマーを析出させ、その後、絞り工程を経て熱処理を行い上記スポンジの表面及び内部に上記重合性モノマーを重合した親水化柔軟化処理されたスポンジの製造方法とした。
請求項1及び5の各発明によれば、曇点以下の温度であって、処理液に重合性モノマーが溶解乃至可溶化している状態でスポンジを投入して処理液に浸すので、処理液とスポンジ気泡中の空気とを十分置換し、スポンジ奥部まで処理液を行き渡らせることが出来る。この後昇温して、このスポンジの表面及び内部において上記重合性モノマーを析出させて重合させているので、スポンジに均一な連続気泡(孔)を形成することができる。その結果、乾燥時、湿潤時ともに柔軟性があり、しっとりとした感触を持ち、強い親水性を有するとともに、優れた生産性と作業性を有する親水化柔軟化処理されたスポンジを得ることが出来た。
また、請求項2の発明によれば、上記重合性モノマーを含有する処理液の曇点が20℃〜75℃であり、かつ昇温する温度を25℃〜80℃としたので、重合性モノマーの利用効率が従来のものと比べて大きく改善され、本願出願人の実験によれば約2倍と大きくなった。
請求項3の発明によれば、上記重合性モノマーの構造をポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアクリレート又はポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタアクリレートとしたので、上記請求項1のスポンジより、さらに、乾燥時、湿潤時ともにしっとりとした感触を持ち、強い親水性、優れた生産性と作業性を有する親水化柔軟処理されたスポンジを得ることが出来た。
請求項4の発明によれば、上記重合性モノマーの水溶液に、界面活性剤を加えることとしたので、処理液の曇点温度を上げることが出来、これにより、低温では溶解し難かったモノマーも使用出来るようになり、モノマーの選択の幅が広がり、目的に合った最適なスポンジが得られた。
まず、この発明のスポンジを形成する材料について説明する。
この発明のスポンジは、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタンなどの各種スポンジが使用できるが、天然ゴム、合成ゴムの分子構造上に2重結合を持つ樹脂がより好ましい。また、連続気泡構造のものが適している。スポンジの気泡径としては、平均気泡径が50μm以上300μm以下であるスポンジにこの発明のグラフト重合を行うことにより、しっとりとした肌あたりのスポンジとすることができる。
次に、上記スポンジを浸漬する重合性モノマーの水溶液を説明する。
ここで使用する重合性モノマーとしては、スポンジにグラフト重合をしてスポンジを親水性とするモノマーであり、モノマーの分子構造中に親水基を持つモノマーである。親水基としては、ポリエチレンオキサイド、スルホニル基、カルボキシル基、硫酸エステル、リン酸エステル、水酸基、4級アンモニウム塩、ピロリドン、ポリアミドなどが使用出来る。
重合性モノマーの水溶液とは、これらの基を持つモノマーを水に溶解させた水溶液、または後述する界面活性剤と併用して可溶化した液体を言う。また、0℃〜80℃のいずれかの温度にて1%以上10%以下の濃度で水に溶解乃至は可溶化して含浸工程の処理液として使用出来るものを言う。
さらに、この発明の重合性モノマーは、曇点を持つモノマーである。この発明ではモノマーの曇点を利用してスポンジに効率良くグラフト重合を行うものである。曇点を持つ重合性モノマーとしては、モノマーの分子中にポリエチレンオキサイドのポリエーテル基又はポリアミド基を持つモノマーである。このようなモノマーとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが使用でき、好ましくはポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが使用できる。
上記(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル又はそれらの混合物である。
重合性モノマーの曇点は、20℃以上がスポンジの親水性を強くすることができ、好ましい。また、曇点は75℃以下が含浸工程での温度を低く抑えられることにより、重合開始剤の分解を防ぎ単重合体の生成を防止することができ、好ましい。
このポリエチレングリコールのエチレンオキサイド付加モル数は、2モル以上、好ましくは6モル以上のものが親水性を強くすることができる。上限は特にないが、18モル以上としても親水性を強くする効果は飽和する。
また、ポリプロピレングリコールのプロピレンオキサイド付加モル数は、6モル以下、好ましくは3モル以下が良く、親水性を強くすることができる。このようなモノマーを使用することにより、処理液の曇点を20℃〜75℃とすることができる。
またさらに、この発明の重合性モノマーは、アルキル基、アルケニル基を持つアルキルポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、又はアルケニルポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートを使用することができる。
上記アルキル基、又はアルケニル基としては、炭素数8以上のものが曇点が低くなり好ましい。アルキル基、又はアルケニル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、プロペニル、ブテニル、オクテニルなどを挙げることができる。このようなモノマーを使用することにより、処理液の曇点を20℃〜75℃とすることができる。
この発明は、上記モノマーと併用して、ジアクリシート又はジメタアクリレートモノマーを使用することができる。ジアクリレート、ジメタアクリレートモノマーとしては、ポリエチレングリコールジアクリシート、ポリエチレングリコールジメタアクリレートを使用することができる。これらを使用することにより、親水性を調整したり、感触を調整したり、製品の耐久性を向上することができる。
上記モノマーと併用して、界面活性剤を使用することによって、0℃〜25℃にて溶解しないモノマーであっても、可溶化することができ、この発明の重合性モノマーの水溶液として使用することができる。可溶化は、分子レベルで溶解し、溶液が透明となるのは勿論、極微粒子に分散し青色に色づいた状態とすることもできる。また、界面活性剤を使用することによって、25℃以上で溶解するモノマーであっても、処理液の曇点を上げることが出来、後述する溶解温度や処理温度を調整することが可能となり、作業効率が向上する。
また、上記モノマーと併用する界面活性剤に、アニオン系界面活性剤を使用することによって、製品スポンジの親水性を高めることができる。さらに、上記モノマーと併用する界面活性剤に重合性アニオン系界面活性剤を使用することによって、製品スポンジの親水性を高め、かつ耐久性を向上することができる。
界面活性剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、10〜100重量部使用することができる。
このような界面活性剤として、各種の界面活性剤が使用出来るが、特に各種の硫酸エステル塩、スルホン酸塩が好ましく使用できる。この例としては、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩、アルキル硫酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、高級アルコールのマレイン酸又はコハク酸ジエステルスルホン酸ナトリウム塩、アクリル酸又はメタアクリル酸エステルスルホン酸ナトリウム塩など、及び同アンモニウム塩、同カリウム塩などを挙げることが出来る。
この発明では、前述のモノマーと併用して、多官能モノマーを使用することが出来る。この発明で使用可能な多官能モノマーとしては、アクリル酸と多価アルコールのエステルが使用出来る。多官能モノマーの原料である多価アルコールとしては、アルカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトールなどを使用することが出来る。多官能モノマーの官能数(1分子中の反応性2重結合の数)が、2以上のモノマーが使用できる。多官能モノマーを併用することにより、親水性の耐久性を高めることができる。
この発明は、前述のモノマーの重合を行うため、開始剤を使用することができる。開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビス化合物、アゾビスアミジノプロパン・ジハイドロクロライドなどを挙げることができる。開始剤は、モノマー水溶液に溶解して使用することができる。この開始剤を使用することにより、重合温度を低く押えることができ、後述の熱処理温度を低く押えることが可能となる。
さらに、この発明では、前述のモノマー水溶液に、消泡剤を添加して使用することができる。この消泡剤を使用することにより、含浸処理中の過度な泡立ちを抑制することが出来、作業の中断を防止することが出来る。
続いて、この発明のスポンジの製造方法について説明する。
この発明の製造方法は、前述のモノマーなどの薬剤を水に溶解し、この液に処理する製品を含浸し、所定量を付着、吸着させ、昇温などによって重合し固着させる。
モノマーなどの薬剤は、モノマーの曇点以下の温度で溶解する。溶解液温としては、30℃以下で溶解することが好ましく、より好ましくは、25℃以下である。この温度の水は容易に準備できる。液温の下限は0℃であるが、モノマーが溶解する温度であれば特に制限はない。また、界面活性剤を使用することによってモノマーの曇点以上の温度で溶解、可溶化することができる。溶解させる処理液のモノマー濃度は、1〜10%が使用でき、好ましくは2〜7%である。
処理液の使用量は、スポンジが十分浸る量が好ましい。連続気泡のスポンジであれば、スポンジの見かけ容積が1Lであれば、これと同量以上が好ましい。重量では、スポンジ1重量部あたり、5重量部から10重量部である。
含浸処理は、液温が0℃〜75℃の処理液にモノマーが溶解乃至可溶化している状態でスポンジを投入し、処理液とスポンジ気泡中の空気とを十分置換し、スポンジ奥部まで処理液を行き渡らせる。次いで処理液の温度を昇温し、曇点以上とする。予め曇点以下の温度にてスポンジに処理液を行き渡らせていることにより、均一な連続気泡(孔)を有する製品となる。曇点の具体的温度は25℃以上で行うことができ、好ましくは30℃以上にて行うことが好ましく、より好ましくは35℃以上である。また、この温度は80℃を超えない温度で行うのが好ましい。温度が80℃を超えると重合開始剤の分解が始まり含浸処理液中でモノマーの重合反応が起こり、製品に斑点が生じたり、ベトツキが生じることがある。
また、加温はいきなり曇点以上とするのではなく、ゆっくり昇温しながら曇点を超えることが、均一な製品となり好ましい。
また、さらに、この時スポンジに圧縮を繰り返し与えて、スポンジ内部まで液を行き渡らせることが、均一な製品となり好ましい。
このような温度で処理することによって、曇点を越えた温度にてモノマーが析出し、これが処理するスポンジの表面及び内部において吸着されることによりモノマーの利用効率が向上する。
この結果として、処理後の処理液のモノマー濃度は、初期濃度より低下する。これにより、無駄に棄てられるモノマーを少なくすることができる。
含浸装置としては、洗濯機、回転ドラム、圧縮装置、ローラーなどを使用することができる。スポンジ内部の空気と薬液を置換することにより、スポンジ内部まで均一とすることができる。
上記温度にて含浸を行うことによって、モノマーの利用効率が高まる理由としては、モノマーの分子構造に親水基のエーテル基に水素結合する水分子が温度上昇するにつれて水素結合が外れ親水性が低下し、ついには曇点に達し析出する。この析出した分子状態のモノマーがスポンジを形成する樹脂とスポンジの全体に渡って均一に接触する。このとき、エステル基を持つモノマーは、エステル基と親和性の高いスポンジの樹脂に吸着し、高い利用効率が発現すると考えている。
モノマーを含浸したスポンジは、絞り工程において一定の含浸率とする。絞りは、遠心脱水機、ローラー絞り機などが使用できる。絞り工程の温度も含浸処理温度と同様に曇点以上の温度で行うことが好ましい。
この後、熱処理を行い、モノマーを重合する。熱処理温度は使用する開始剤の分解温度以上にて行うことが作業効率がよく好ましい。具体的には、80℃〜120℃にて30分程度である。加熱方法としては、熱風、蒸気、マイクロ波加熱、誘電加熱などの方法を使用することができる。処理温度は、低すぎれば開始剤が分解せずに長時間を要し作業効率が悪い。また、高ければ短時間の処理が可能であるが、スポンジに焼けや変色が生じ好ましくない。この後、必要に応じて水洗洗浄、乾燥を行い、この発明のスポンジとなる。
ステンレス容器に、重合性モノマーとして、NKエコノマー(商標、以下同じ)MLR―140 (曇点41℃、液状) 160g及び開始剤 V―50 1.6gを水7.84Kgに20℃にて溶解し処理液を作成した。この処理液は透明であり、モノマー、開始剤共に溶解状態であった。この処理液の10mlを試験管に取り、湯煎にてゆっくり昇温すると、41℃にて白濁した。曇点は41℃であった。
原料スポンジとして、NBRスポンジ ユキロン(商標、以下同じ)CXのピース品 (直径60mm、厚さ8mmの円盤状、約350個) 1.0Kgを洗濯ネットに入れ、上記20℃の処理液へ浸し、押圧を繰り返して気泡の空気を処理液と置換した。次いで、容器を温水槽に浸し、処理液の温度を43℃へ上昇させ、10分間維持した。この時処理液は多少濁った状態ではあったが、曇点測定時に見られるほどの濁りは生じていなかった。これは、処理液温度が曇点以上となり析出したモノマーがスポンジに吸着されているものと思われる。この後、同じく43℃とした遠心式脱水機にて処理液を絞った。この状態で含浸後のスポンジの重量は1.5Kgであった。
この後、回転ドラム式乾燥機にて熱風による加熱を行い、100℃を30分間維持した。スポンジは、水分が蒸発し乾燥したものであった。冷却後重量は、1.02Kgであった。
この後、水洗乾燥を行い、未反応のモノマー等を除去した。スポンジ重量は、1.012Kgであった。
そして、以下の算出式から、処理液含浸率50%、モノマー等付着率2%、グラフトポリマー付着率1.2%であり、グラフト化率は60%と言う数値が得られた。
これは、使用したモノマーのうち、実際に製品となったモノマーが12gであり、モノマー利用率は、7.5%であることを示すものである。
上記処理液含浸率=(含浸後のスポンジ重量÷原料スポンジ重量)−1
上記モノマー等付着率=(熱処理後スポンジ重量÷原料スポンジ重量)−1
上記グラフトポリマー付着率=(水洗乾燥後スポンジ重量÷原料スポンジ重量)−1
上記グラフト化率=グラフトポリマー付着率÷モノマー等付着率
上記モノマー利用率=(製品重量―原料スポンジ重量)÷原料モノマー重量
出来上ったスポンジは、乾燥状態では弾性が向上し、かつソフトでしっとりした感触があった。スポンジ硬度を測ると、原料スポンジが55度であったものが、43度となり柔軟化していた。
また、親水性となっていて、水を含ませるとすぐに染み込んだ。これを絞ると、全体が湿ってしっとりとしている状態であった。
このスポンジに水を染み込ませた後、手で強く押圧して水を絞った状態とし、このスポンジを水面に置くと、スポンジは水を吸収して2秒後には全体が水面下に没した。一方、上記原料スポンジを同様に行うと、数回押圧を繰り返して水を染み込ませることが出来るが、同様に絞った原料スポンジを水面に置くと、3分を超えてもスポンジの1/4が水面下に没するのみで、その後も全体が水面下へ没することはなかった。
上記実施例1で製造したスポンジの端面をアール状に加工を行い、化粧用パフとした。このパフを水で湿らせ、市販の水あり用ファンデーションを用い、実際に化粧を行うモニター試験を行った。ファンデーションの乗りがよくすっと伸び均一に塗れるとの評価結果であった。
また、乾燥状態であっても柔軟性があり、水なしでの使用にも優れていた。
実施例1と同じく、重合性モノマーとして、NKエコノマー MLR―140 及び開始剤 V―50(商標、以下同じ)を20℃にて溶解した。原料スポンジを、20℃の上記処理液へ浸し、押圧を繰り返して気泡の空気を処理液と置換した。
次いで、容器を温水槽に浸し、処理液の温度を80℃と曇点よりはるかに高温へ上昇させ、10分間維持した。この後、80℃とした遠心式脱水機にて処理液を絞った。この状態で含浸後のスポンジの重量は1.5Kgであった。
この後、回転ドラム式乾燥機にて熱風による加熱を行い、100℃を30分間維持した。スポンジは、水分が蒸発し乾燥したものであった。冷却後重量は、1.021Kgであった。
この後、水洗乾燥を行い、未反応のモノマーと単重合体を除去した。スポンジ重量は、1.013Kgであった。
以上より上記の算出式から、処理液含浸率50%、モノマー等付着率2.1%、グラフトポリマー付着率1.3%であり、グラフト化率は 61.9%であった。
また、使用したモノマーのうち、実際に製品となったモノマーは、13gであり、モノマー利用率は、8.1%であった。
実施例1と同様であるが、重合性モノマーに、曇点が26℃であるNKエコノマー MID―112 を使用した。処理液の曇点は26℃であった。薬剤を20℃にて溶解し、原料スポンジを20℃の上記処理液に含浸後、処理液を昇温し、曇点より2℃高温の28℃として10分間維持した後、同温度で遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例1と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、7.5%であった。
実施例3と同様であるが、重合性モノマーに、曇点が26℃であるNKエコノマー MID―112 を使用し、さらに界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム40gを使用した。モノマー単独の曇点は26℃であるが、処理液の曇点は32℃であった。薬剤を28℃にて溶解し、原料スポンジを28℃の上記処理液に含浸後、処理液を昇温し、曇点より6℃高温の34℃として10分間維持した後、同温度で遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例1、3と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、7.5%であった。
実施例1と同様であるが、重合性モノマーに、曇点が14℃であるNKエコノマー MID―082 を使用し、さらに界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム 40gを使用した。モノマー単独の曇点は14℃であるが、処理液の曇点は20℃であった。薬剤は15℃にて溶解した。処理液は青味を帯びた透明であった。界面活性剤を使用しているためモノマーの曇点以上であるにもかかわらず透明な溶液となっている。原料スポンジを15℃の上記処理液にて含浸後、処理液を昇温し、25℃として10分間維持した。この後、同温度にて遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例1と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、7.5%であった。
実施例1と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MLR―140 を使用したが、さらに界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム40gを使用した。モノマーの曇点は41℃であり、処理液の曇点は50℃であった。薬剤は20℃にて溶解し、原料スポンジを20℃の上記処理液にて含浸後、処理液を昇温し、60℃として10分間維持した。この後、同温度にて遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例1と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、7.5%であった。
これらを表1にまとめて示した。
Figure 0005646900
使用材料
ユキロン CX 雪ヶ谷化学工業製 パフ用NBRスポンジ 見かけ密度 140kg/m3 8mm厚 60mmφ スポンジ硬度55度 平均気泡径200μm
NKエコノマー MLR―140 新中村化学工業製 アルキルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタアクリレート 平均分子量820 曇点41℃ 室温で液状
NKエコノマー MID―112 新中村化学工業製 アルキルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタアクリレート 平均分子量720 曇点26℃ 室温で液状
NKエコノマー MID―082 新中村化学工業製 アルキルポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタアクリレート 平均分子量690 曇点14℃ 室温で液状
V−50 和光純薬工業製 水溶性アゾ化合物開始剤
比較例1
実施例1と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MLR―140 を使用した。薬品の溶解は20℃にて行い、同温度にてスポンジ1Kgの含浸を行ったが、このまま昇温せずに10分間維持した。この後、同温度で遠心式脱水機にて絞った。この状態で含浸後のスポンジの重量は1.5Kgであった。
この後、実施例1と同様に、回転ドラム式乾燥機にて熱風による加熱を行い、100℃を30分間維持した。スポンジは、水分が蒸発し乾燥したものであった。冷却後重量は、1.01Kgであった。
この後、水洗乾燥を行い、未反応のモノマーと単重合体を除去した。スポンジ重量は、1.006Kgであった。
以上より上記の算出式から、処理液含浸率50%、モノマー等付着率1%、グラフトポリマー付着率0.6%であり、グラフト化率は 60%であった。
これは、使用したモノマーのうち、実際に製品となったモノマーが、6gであり、モノマー利用率は、3.8%となっている。
出来上ったスポンジは、親水性となってはいるが、水を含ませてから全体に染み込むまでにややしばらくかかった。また、スポンジの弾性やソフト感、しっとりした感触は原料スポンジよりは向上しているが、実施例1ほどの変化はなかった。実施例1と同様に、水没試験を行ったが、スポンジが水没するに要する時間は50秒であった。
比較例2
実施例1、2と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MLR―140 を使用した。薬品の溶解は、20℃にて行い、同温度にてスポンジの含浸を行った後、実施例2よりさらに高温の85℃へ昇温し10分間維持した。処理液に白い樹脂状物の発生が見られた。これは、含浸処理中に重合反応が始まり、単重合体が生成したものである考えられる。この後、同温度で遠心式脱水機にて絞ったところ、スポンジに粘着性の汚れが付着していた。この後、実施例1、2と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。加熱後にも、粘着性の汚れは見られたが、水洗乾燥後にも見られた。出来上がったスポンジは親水性が高く、スポンジに水を含ませると直ぐに水を吸収するものであった。最終的にモノマー利用率は、12.5%であった。溶液中で生成した単重合体が含まれると考えられる。
比較例3
実施例3と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MID―112 を使用した。薬品の溶解は、20℃にて行い、同温度の溶解状態にてスポンジの含浸を行い、このまま昇温せずに10分間維持した。この温度は、処理液の曇点26℃に対して6℃低い温度である。この後、同温度で遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例3と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、3.8%であった。
比較例4
実施例5と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MID―082 を使用した。薬品の溶解は、重合性モノマーの曇点の14℃より高温である20℃にて行った。モノマーは溶解せず、処理液の撹拌を停止すると容器底にモノマーが液滴となって沈降する状態であった。同温度にてスポンジの含浸を行い、このまま昇温せずに10分間維持した。この後、同温度で遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例5と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、5.6%であった。
出来あがったスポンジは、外観にムラがあり、所々に膨れが見られた。スポンジ個々によって弾性、感触に差が見られた。乾燥したスポンジに水を含ませると部分的に染み込みの速い部分が見られた。
比較例5
実施例1、2と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MLR―140 を使用した。薬品の溶解は、重合性モノマーの曇点の41℃より高温である45℃にて行った。モノマーは溶解せず、処理液の撹拌を停止すると容器底にモノマーが液滴となって沈降する状態であった。同温度にてスポンジの含浸を行い、このまま昇温せずに10分間維持した。この後、同温度で遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例1、2と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、5.6%であった。
出来あがったスポンジは、外観にムラがあり、所々に膨れが見られた。スポンジ個々によって弾性、感触に差が見られた。乾燥したスポンジに水を含ませると部分的に染み込みの速い部分が見られた。
比較例6
実施例5と同じく、重合性モノマーに、NKエコノマー MID―082 を使用したが、界面活性剤は併用しなかった。薬品の溶解は、10℃にて行い透明に溶解した。原料スポンジを同温度にて含浸後、処理液を昇温し、16℃として10分間維持した。この後、同温度にて遠心式脱水機にて絞った。この後、実施例5と同様に100℃にて30分間加熱後、水洗乾燥を行った。最終的にモノマー利用率は、7.5%であった。
これらの実施例と比較例を比較した結果、実施例の方が比較例のものと比べ、以下の効果が得られた。
1. 親水性に優れ、水を伴う使用に優れたものであった。
2. 柔軟で肌あたりが良好であった。
3. 原料モノマーの利用効率が高い。
4. 製品に不良が少なく均一な製品が出来る。
評価方法
親水性及び水没試験については、スポンジに一旦水を含ませ、押圧してスポンジ内部の水を絞る。これを水面に静かに置き、全体が水面下に没する時間を測定した。3秒以下を優、30秒以下を良、30秒を超えるものを可、3分後にも没しないものを不可とした。
風合いは、社内テスターにより、実際に化粧に使用してもらい判断した。
曇点については、処理液の曇点の判定は次のように行う。処理液がほぼ透明であれば、溶解乃至可溶化状態にある。処理液が白濁していれば既に曇点以上であるので、冷却してほぼ透明の状態とする。この状態からゆっくり撹拌しつつ加温し、液温をゆっくり上昇させる。曇点に達すると液全体が白濁するので、この温度を曇点とする。モノマーの曇点は、モノマーの1%水溶液を作成し、上記と同様にして測定する。
スポンジ硬度については、高分子計器製のアスカー・デュロメーター F型にて測定した。
平均気泡径については、スポンジの切断面の顕微鏡写真を撮り、ここに現れた気泡断面を円近似しその平均直径を求めた。

Claims (5)

  1. 重合性モノマーを含有する水溶液から成る、曇点20℃以上の処理液であって、当該曇点以下の温度状態の上記処理液にスポンジを浸し、当該処理液を上記曇点以上であって且つ80℃以下まで昇温し、上記スポンジの表面及び内部において上記重合性モノマーを析出させ、
    その後、絞り工程を経て熱処理を行い上記スポンジの表面及び内部に上記重合性モノマーを重合したことを特徴とする、親水化柔軟化処理されたスポンジ。
  2. 上記重合性モノマーを含有する処理液の曇点が20℃〜75℃であり、かつ昇温する温度を25℃〜80℃としたことを特徴とする、上記請求項1に記載の親水化柔軟化処理されたスポンジ。
  3. 上記重合性モノマーがポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアクリレート又はポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタアクリレートであることを特徴とした、上記請求項1又は2に記載の親水化柔軟化処理されたスポンジ。
  4. 上記重合性モノマーの水溶液に、界面活性剤を加えることを特徴とした、上記請求項1、2又は3の何れかに記載の親水化柔軟化処理されたスポンジ。
  5. 重合性モノマーを含有する水溶液から成る、曇点20℃以上の処理液であって、当該曇点以下の温度状態の上記処理液にスポンジを浸し、当該処理液を上記曇点以上であって且つ80℃以下まで昇温し、上記スポンジの表面及び内部において上記重合性モノマーを析出させ、
    その後、絞り工程を経て熱処理を行い上記スポンジの表面及び内部に上記重合性モノマーを重合したことを特徴とする、親水化柔軟化処理されたスポンジの製造方法。
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