JP5646150B2 - アピゲニン含有組成物 - Google Patents

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本発明は、アピゲニンを安定に保持する組成物に関する。
アピゲニンは、カミツレ(Matricaria recutita L.)、ローマカミツレ(Anthemis nobilis L.)、ダリア(Dahlia pinnata)、フジモドキ(Daphne genkwa)、コウリョウ(Sorghum nervosum Bess)等の植物に含まれているフラボノイドであり、ウレアーゼ活性阻害作用(特許文献1)、抗酸化作用(特許文献2)、メラニン生成促進作用(特許文献3、特許文献4)、抗炎症作用(特許文献5)、及び色素沈着抑制作用(特許文献6)等を有するため、化粧品、医薬品及び医薬部外品の成分として有用である。従って、従来よりアピゲニン又はアピゲニン含有植物エキスを含む組成物が種々報告されている(特許文献2〜6)。
特開2004−91338号公報 特開2005−289880号公報 特開平9−263534号公報 特開2004−2264号公報 特開2007−8847号公報 特開2006−327988号公報
本発明者らは、アピゲニンを高濃度に含む組成物について検討する過程で、アピゲニンを含有する組成物に、抗酸化剤等として一般に使用されている物質であるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)が共存した場合、アピゲニンとBHTとが付加体を形成し、結果としてアピゲニンを組成物中で安定に維持できないという問題があることを突き止めた。
そこで本発明者らは、BHT存在下でアピゲニンを組成物中に安定に維持させるべく検討を行った。その結果、組成物中のBHTに対するアピゲニンの質量比を1以上に調整することで、当該組成物中でアピゲニンを安定に維持することができることを見出した。
すなわち、本発明は、3ppm以上のアピゲニンとジブチルヒドロキシトルエンとを含有し、ジブチルヒドロキシトルエンに対するアピゲニンの質量比が1以上であることを特徴とする組成物に係るものである。
また本発明は、3ppm以上のアピゲニンとジブチルヒドロキシトルエンとを配合することと、ジブチルヒドロキシトルエンに対するアピゲニンの質量比が1以上となるように調整することとを特徴とするアピゲニン含有組成物の製造方法に係るものである。
また本発明は、アピゲニンとジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物において、ジブチルヒドロキシトルエンに対するアピゲニンの質量比を1以上に調整することを特徴とするアピゲニンの安定化方法に係るものである。
本発明によれば、アピゲニンを安定に含有する組成物を提供することができ、有効成分としてのアピゲニンの効果を最大限に発揮し得る医薬品、医薬部外品、又は化粧料を提供することができる。
本発明において、アピゲニンとは下記式で表される化合物を意味する。
Figure 0005646150
アピゲニンは、当該分野で通常知られた方法によって得ることができる。代表的には、アピゲニンを含有する植物、例えば、カミツレ、ローマカミツレ、ダリア、フジモドキ、コウリョウ等の植物又はその抽出物、好ましくは高濃度植物抽出物から得ることができる。ここで、カミツレとは、キク科のMatricaria recutita L.を意味し、ジャーマン・カモミール、ジャーマン・カミツレとも称される。また、ローマカミツレとは、キク科のAnthemis nobilis L.を意味し、ダリアとは、キク科のDahlia pinnataを意味する。また、フジモドキとは、ジンチョウゲ科のDaphne genkwaを意味し、コウリョウとは、イネ科のSorghum nervosum Bessを意味する。
上記植物のうち、キク科植物が好ましく、高濃度のアピゲニン含有抽出物を得る点で、カミツレ及びローマカミツレがより好ましく、ローマカミツレがさらに好ましい。
アピゲニンを含有する植物としては、上記に挙げた植物の任意の部分、例えば全草、葉、茎、芽、花、蕾、木質部、樹皮、地衣体、根、根茎、仮球茎、球茎、塊茎、種子、果実、菌核若しくは樹脂等、又はそれらの組み合わせが使用できる。カミツレ及びローマカミツレの場合、花冠又は蕾を使用するのが好ましい。これらの部分は、そのまま、粉砕して、切断して又は乾燥されて、あるいはさらに抽出等の工程を経て、本発明の組成物に添加される。
アピゲニンを含有する植物の抽出物には、常法により得られる各種溶剤抽出液、又はその希釈液、その濃縮液、その乾燥末若しくはその活性炭処理したものが挙げられる。このうち、各種溶媒抽出液が好ましい。あるいは、市販される当該植物のエキスを使用することもできる。抽出方法の具体例としては、抽出原料の5〜40倍量(質量比)の抽出溶剤に植物を浸漬し、常温又は還流加熱下で1日から1ヶ月抽出した後、濾過して残渣を除去する方法が挙げられる。
抽出溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。当該抽出溶剤の具体例としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワラン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;及び二酸化炭素等が挙げられ、これらは混合物として用いることができる。これらのうち、好適な具体例としては、エタノール水溶液、ブタンジオール水溶液、プロピレングリコール水溶液が挙げられ、エタノール水溶液、ブタンジオール水溶液がより好ましく、エタノール水溶液がさらに好ましい。当該エタノール水溶液としては、5〜99.5容量%のエタノール水溶液が好ましく、10〜80容量%のエタノール水溶液がより好ましい。カミツレを使用するときは5〜55容量%のエタノール水溶液が好ましく、10〜50容量%のエタノール水溶液がより好ましい。ローマカミツレを使用するときは30〜99.5容量%のエタノール水溶液が好ましく、40〜80容量%のエタノール水溶液がより好ましい。当該溶媒の使用量は、10〜40倍(質量比)程度である。抽出時間としては、1日〜1ヶ月が好ましく、抽出温度としては、5〜80℃が好ましい。
さらに好ましくは、特願2009-004378の記載に従って、上記のとおり得られた抽出物をさらに下記の吸着工程、洗浄工程、溶出工程の3工程に付すことにより、より高濃度のアピゲニンを含有する抽出物を得ることができる。
吸着工程では、例えば、抽出物と吸着担体を接触又は接触混合させて吸着物を得る。吸着担体の好適な具体例としては、粉末セルロース、ラジオライト、セライト等が挙げられ、好ましくは粉末セルロース及びラジオライトならびにそれらの組み合わせが挙げられる。吸着担体は、アピゲニン回収率の点で、抽出液200mLあたり、2.5g〜10g程度用いるのが好ましい。また、アピゲニンの吸着担体への吸着を強化するため、上記接触等させた後に、アピゲニン含有植物の抽出物を濃縮するのが好ましい。当該濃縮は常法に従い行えばよいが、具体的手段としては減圧濃縮等が挙げられる。
洗浄工程は、例えば、前工程で得られた吸着物に2〜10倍容量の水又は20容量%以下のエタノール水溶液を接触させることにより行われる。水との接触が好ましい。
洗浄の具体的手段としては、例えば、ろ過、デカンテーションが挙げられ、好ましくはろ紙やろ布等を使用した常圧ろ過;フィルタープレス、加圧ろ紙ろ過機、リーフフィルター、ロータリープレス等を使用した加圧式ろ過;回転ドラム式連続ろ過機、真空フィルター等を使用した減圧ろ過等が挙げられる。簡便性の点で、常圧ろ過が好ましい。ろ過により洗浄する場合、アピゲニンは吸着担体中に保持され、その他のものはろ液として分離される。
溶出工程は、洗浄された吸着物に、2〜10倍容量の40〜99.5容量%のエタノール水溶液を接触させることにより行われる。溶出の具体的手段としては、上記洗浄と同様のものが挙げられる。ろ過により溶出する場合、アピゲニンはろ液として吸着担体から分離される。
上記3工程にかけることで、蒸発残分あたりアピゲニンを10〜30質量%、好ましくは15〜25質量%含有する高濃度アピゲニン含有抽出物が得られる。
得られた高濃度アピゲニン含有抽出物を、さらにクロマトグラフィー、液々分配等にかけることで、当該抽出物中の不活性な夾雑物を除去することができる。
上記の高濃度アピゲニン含有抽出物は、そのまま用いることもできるが、希釈、濃縮若しくは凍結乾燥した後、粉末又はペースト状に調製して用いてもよい。
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、抗酸化剤等として使用されている周知の物質であり、市販品(例えば、和光純薬工業株式会社、Code No. 047-29451)を購入することができる。
本発明の組成物は、アピゲニンとBHTとを配合することと、BHTに対するアピゲニンの質量比が1以上になるように調整することによって製造することができる。質量比は、好ましくは1以上であり、より好ましくは10以上である。さらに好ましくは、10〜10000の範囲内である。これによって、当該組成物中におけるBHTとアピゲニンとの付加体形成が抑制され、組成物中でアピゲニンが安定に維持される。
本発明の組成物のpHは、特に限定されず、組成物の用途等に応じて適宜調整すればよい。組成物のpH値は、7以上(例えばpH7.0、pH7.0以上、またはpH7.0より高い)であっても7未満(pH7.0より低い)であってもよい。好ましくは7未満であり、より好ましくは6.8以下であり、なお好ましくは6.5以下であり、pH4〜6.5の範囲内がさらに好ましい。組成物のpHは、pH調整剤によって調整することができる。pH調整剤としては、通常使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸類;クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、尿素、ε−アミノカプロン酸、ピロリドンカルボン酸等の有機酸類;グリシンベタイン、リジンベタイン等のベタイン類;金属水酸化物等の無機アルカリ類;グアニジン、2ーアミノー2ーメチルプロパン等の有機アミン類;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
本発明において組成物中にアピゲニンを安定に維持させる際に、組成物中のアピゲニン及びBHTの含有量(絶対量)は特に限定されず、組成物の剤型、用途等に応じて適宜調整すればよい。例えば、アピゲニンの含有量は組成物の全質量に対して1質量ppm以上であればよく、好ましくは3質量ppm以上、より好ましくは5〜50質量ppm、さらにより好ましくは7〜25質量ppmである。BHT含有量は、例えば組成物の全質量に対して0.001〜500質量ppm、好ましくは0.01〜10質量ppmの範囲であればよい。本発明の組成物の製造にアピゲニン含有抽出物を使用する場合、最終組成物中のアピゲニン含有量が上記範囲内になるように、適切な量の抽出物を本発明の組成物に配合する。
本発明の組成物は、上述したアピゲニン、BHTやpH調整剤以外にも、組成物の剤型、用途等にあわせて他の有効成分、又は任意の添加剤を適切な量で添加することができる。添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、香料、矯味剤、矯臭剤等が挙げられる。他の有効成分としては、例えば化粧料組成物の場合、アピゲニン以外の有効成分、例えば、保湿剤、美白剤、紫外線保護剤、細胞賦活剤、洗浄剤、角質溶解剤、メークアップ成分(例えば、化粧下地、ファンデーション、おしろい、パウダー、チーク、口紅、アイメーク、アイブロウ、マスカラ、その他)等の他の美容・化粧成分を含有することができる。
本発明の組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧料等、あるいはそれらの原料として利用することができる。組成物の形態は、その用途に応じて任意に選択される。例えば、医薬品、医薬部外品の場合、錠剤、丸剤、カプセル、液剤、シロップ、粉末、顆粒等の経口投与用の形態、注射、輸液、経皮、経粘膜、経鼻、経腸、吸入、坐剤、ボーラス等のための液剤、乳剤、懸濁剤等の非経口投与用の形態、ならびにクリーム、ローション、ジェル、シート、パッチ、スティック等の局所投与用の形態が挙げられる。組成物を化粧料とする場合の形態としては、クリーム、乳液、ローション、懸濁液、ジェル、パウダー、パック、シート、パッチ、スティック、ケーキ等、化粧料に使用され得る任意の形態が挙げられる。
本発明によれば、組成物中に含まれるBHTとアピゲニンとの付加体形成が抑制されるため、組成物中のアピゲニンは安定に維持される。したがって、本発明によれば、有効成分であるアピゲニンを安定的に含有し、結果としてアピゲニンの効果を最大限に発揮する組成物を提供することができる。本発明によって提供される組成物においては、アピゲニンが有する作用(例えば、ウレアーゼ活性阻害作用、抗酸化作用、メラニン生成促進作用、抗炎症作用、色素沈着抑制作用、または美白作用)が低下することなく安定に維持され、結果として当該組成物は優れた効果を発揮する。
以下の参考例、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。以下において、ppmは質量ppmを表す。
実施例1 組成物中でのアピゲニンの安定性評価
ローマカミツレ20gを50%ブタンジオール200mLで、室温下、7日間抽出した後、ろ過し、ローマカミツレエキス155mLを得た。抽出液1mL当りの蒸発残分は18.6mg、アピゲニン量は305ppmであった。このエキスを、以降の実験でアピゲニン含有抽出物として利用した。
下記表1の処方に従って異なるpH条件の溶液を作製した。各pH条件の溶液に、BHTを各々0、1、10、100、及び500ppm添加し、試験溶液(アピゲニン最終濃度 約9ppm)を作製した。各試験溶液を−5℃及び50℃の条件下で1ヶ月間保存した後、溶液中のアピゲニン量を、HPLC(ジーエルサイエンス社製 イナートシルODS3(内径3.0mm、長さ150mm、粒子径5μm);溶離液 50% 25mMリン酸二水素カリウム水溶液/50%メタノール;カラム温度 40度;検出 UV340nm)で定量した。−5℃でのアピゲニン量に対する50℃でのアピゲニン量の比をアピゲニン残存率として求めた。
Figure 0005646150
結果を下記表2に示す。アピゲニンとBHTの質量比が約1未満(BHT10ppm以上)、pH7以上の条件では、アピゲニン残存率は低下しており、アピゲニンとBHTとの付加体形成が進行したことが示された。一方、アピゲニンとBHTの質量比が約1以上の場合、又は溶液のpHが7未満の場合は、付加体形成が起こらず、長期保存の後にも高い残存率が維持された。すなわち、溶液中のアピゲニンとBHTの質量比を1以上にすることで、アピゲニンを良好に保持することができることが示された。
Figure 0005646150
アピゲニン残存率が低下した試験溶液では、下記式のアピゲニンとBHTとの付加体が形成されていた。
Figure 0005646150
Figure 0005646150
参考例 アピゲニンの美白効果
(試験サンプルの調製)
実施例1で調製したローマカミツレエキスを用いて、表4に示す組成の試験サンプルを作製し、アピゲニンの美白効果を評価した。
Figure 0005646150
(美白効果評価)
健常男女被験者10名の上腕内側部の皮膚の色を色差計(株式会社村上色彩研究所製 CMS-35FS)により測定し、得られたマンセル値から初期L*値を算出した。皮膚色を測定した部位の皮膚に、東芝株式会社製FS−20SEランプを用いて、最小紅斑量の2倍量(2MED)のUV−B領域の紫外線を単回照射した。その後、1日2回、3週間、同じ部位にサンプル(試験品1、2、比較品1)を連続塗布した。色差計により再度皮膚色の測定を行い、得られたマンセル値からL*値を算出した。試験品1、2及び比較品1塗布部皮膚のL*値の初期値に対する変化量(ΔL*)を算出した。各サンプルについて、ΔL*値の平均値(n=10)を計算した。試験品1、2塗布部皮膚のΔL*値平均値と比較品1塗布部皮膚のΔL*値平均値とで対応のあるt検定を行うことにより危険率(p値)を求め、美白評価の指標とした。結果を表5に示す。
Figure 0005646150
表2の結果より、5質量%ローマカミツレ抽出物配合品(アピゲニン15ppm含有)は、比較品(プラセボ)と比較して有意なΔL*値の抑制効果が認められ、美白効果に優れていることが示された。1質量%ローマカミツレ抽出物配合品(アピゲニン3ppm含有)の場合でも、比較品(プラセボ)と比較してΔL*値の抑制傾向が認められ、美白効果の可能性が示唆された。
調製実施例 美白組成物
以下の組成のpH6の化粧水を作成した。
(組成) (配合:質量%)
ローマカミツレエキス 5
エタノール 20
1,3-Butylene Glycol 25
BHT 0.001
精製水 バランス

Claims (2)

  1. アピゲニンとジブチルヒドロキシトルエンとを含有する組成物において、ジブチルヒドロキシトルエンに対するアピゲニンの質量比を1以上に調整することを特徴とするアピゲニンの安定化方法。
  2. さらに組成物のpHを7未満に調整することを特徴とする請求項記載の方法。
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