JP5642394B2 - フッ化ジスルフィド化合物の製造方法 - Google Patents

フッ化ジスルフィド化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハロゲン化ジスルフィド化合物からフッ化ジスルフィド化合物を製造する方法に関する。
医農薬やポリマー原料、有機合成用の触媒等として使用されるトリフルオロメタンスルホン酸(CF3SO3H)等のハロゲン化スルホン酸の合成法の一つとして、例えば、非特許文献1に、CCl3SCl等のスルフェニルハライド化合物を溶媒中で光照射することによりCCl3SSCCl3等のハロゲン化ジスルフィド化合物を製造し、次いで、有機溶媒中、NaF、KF等のアルカリ金属フッ化物と反応させてCF3SSCF3等のフッ化ジスルフィド化合物を製造し、その後、酸化、加水分解を経てCF3SO3H等のハロゲン化スルホン酸を製造する方法が開示されている。しかしながら、該製法において、CCl3SSCCl3とアルカリ金属フッ化物との反応は、例えばスルホランのような非プロトン性極性溶媒中で行われているが、フッ化ジスルフィド化合物の収率が差ほど高くない。そのため、フッ化ジスルフィド化合物の収率の向上のための改善手段が望まれている。
また、有機フルオル化合物を製造する方法として、有機ハロゲン化合物を有機溶媒中、アミンフッ酸付加塩と反応させて対応する有機フルオル化合物を製造する方法が知られている(特許文献1)。この方法では、出発ハロゲン化合物として、クロル−及び/又はブロムアルカン、α−クロル−及び/又は−ブロムエーテル、α−クロル−及び/又は−ブロムケトン、α−クロル−及び/又は−ブロム−カルボン酸エステル、カルボン酸クロリド及び/又はブロミド並びにクロル−及び/又はブロム−芳香族化合物及び/又は−複素環化合物が使用され、対応する有機フルオル化合物が合成される。しかしながら式(I)で表わされるハロゲン化ジスルフィド化合物から、式(II)で表わされるフッ化ジスルフィド化合物、特にCCl3SSCCl3からCF3SSCF3を、室温に近い反応温度で簡便に合成する方法は知られていない。
特開昭54−157503号公報
Synthesis、1972年、310頁
本発明の課題は、ハロゲン化ジスルフィド化合物を原料とするフッ化ジスルフィド化合物の製造方法において、室温に近い反応温度でフッ化ジスルフィド化合物の収率を向上させることができる新規な製造法を提供することにある。
本発明者らは、CCl3SClを原料としてCF3SO3Hを製造する研究を行う過程において、CCl3SSCCl3などのハロゲン化ジスルフィド化合物を、有機溶媒中で、アミンフッ化水素塩でフッ素化させると、CF3SSCF3を高収率で製造することができることを見い出した。本発明は、この知見に基づいて完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、
式(I)
Figure 0005642394
(式(I)中、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、na及びnbは、夫々独立して、1〜20のいずれかの整数を示す。na及びnbが、夫々2以上の場合、R2a同士、R2b同士、R3a同士及びR3b同士は同一であっても相異なっていてもよい。但し、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのうち、少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。)で表されるハロゲン化ジスルフィド化合物を、有機溶媒中、アミンフッ化水素塩と反応させることを含む、式(II)
Figure 0005642394
(式(II)中、R1a'、R2a'、R3a'、R1b'、R2b'及びR3b'は、夫々独立して、水素原子、フッ素原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、na’及びnb’は、夫々独立して、1〜20のいずれかの整数を示す。na’及びnb’が、夫々2以上の場合、R2a'同士、R2b'同士、R3a'同士及びR3b'同士は同一であっても相異なっていてもよい。但し、R1a'、R2a'、R3a'、R1b'、R2b'及びR3b'のうち、少なくとも1つはフッ素原子を示す。)で表されるフッ化ジスルフィド化合物の製造方法に関する。
また、本発明は、式(I)で表される化合物を、式(III)
Figure 0005642394
(式(III)中、R1、R2及びR3は、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜20のいずれかの整数を示す。nが2以上の場合、R2同士、R3同士は同一であっても相異なっていてもよい。但し、R1、R2及びR3のうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子を示す。)で表される化合物の少なくとも1種を光照射することによって製造する方法を包含する。
本発明では、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのすべてがフッ素原子以外のハロゲン原子である式(I)で表される化合物が好適に使用される。
また、本発明では、アミンフッ化水素塩が、式(IV)若しくは(V)で表わされる化合物であることが好ましい。
456N・(HF)m (IV)
7・(HF)m (V)
(式(IV)若しくは(V)中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し;R7は−N=または−NH−を含む炭素数4〜5の環状アミンを示し;mが、好ましくは0.6〜10、より好ましくは0.8〜3、さらに好ましくは0.8〜1.2である。)
本発明では、アミンフッ化水素塩中のアミンが、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、または環状アミンであることが好ましい。
さらに、本発明では、有機溶媒が、非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。
本発明の製造方法によれば、フッ化ジスルフィド化合物を室温に近い反応温度で収率よく製造することができる。
本発明の製造方法は、有機溶媒中、式(I)で表されるハロゲン化ジスルフィド化合物をアミンフッ化水素塩と反応させて式(II)で表されるフッ化ジスルフィド化合物に変換することを含むものである。
1)ハロゲン化ジスルフィド化合物
本発明に用いられるハロゲン化ジスルフィド化合物は、式(I)
Figure 0005642394
(式(I)中、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bは、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示す。na及びnbは、括弧内の単位の繰り返し数をそれぞれ示し、これらはそれぞれ独立に1〜20の整数である。na及びnbが、それぞれ2以上の場合、R2a同士、R2b同士、R3a同士及びR3b同士は同一であってもよいし、相異なっていてもよい。但し、R1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのうち、少なくとも1つはフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。)で表される化合物である。
式(I)における「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
式(I)における「C1−C6アルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
式(I)における「C6−C10アリール基」は、炭素原子数6〜10個の単環又は多環のアリール基である。多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環または芳香環のいずれであってもよい。C6−C10アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基等が挙げられる。
上記「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」は、置換基を有していてもよい。置換基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基等のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等のアルコキシ基;2−チエニル基、2−フリル基、2−ピロール基等の複素環基;等が挙げられる。
式(I)で表されるハロゲン化ジスルフィド化合物としては、CCl3SSCCl3、CCl2(F)SSCCl2(F)、CBr3SSCBr3、CI3SSCI3、CBr3SSCCl3、CCl3CH2SSCH2CF3、CH(Cl)2SSCH(Cl)2、CCl2(CH3)SSCCl2(CH3)、CCl2(Ph)SSCCl2(Ph)、CCl(Ph)2SSCl(Ph)2、CCl3C(CH3)(Ph)SSC(CH3)(Ph) CCl3、CH2(Cl)CH(Ph)SSCH(Ph)CH2(Cl)、CCl3CH2CH2CH2SSCH2CH2CH2CCl3、CCl3SSCH2CCl3、CCl3SSCH(Cl)2等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ここでPhはフェニル基を示す。
式(I)で表される化合物のうち、式(I)中のR1a、R2a、R3a、R1b、R2b及びR3bのすべてが、ハロゲン原子である化合物が好ましく、フッ素原子以外のハロゲン原子である化合物がより好ましく、CCl3SSCCl3やCBr3SSCBr3が特に好ましい。
〔式(I)で表される化合物の製造法〕
式(I)で表されるハロゲン化ジスルフィド化合物は、例えば、式(III)
Figure 0005642394
(式(III)中、R1、R2及びR3は、夫々独立して、水素原子、ハロゲン原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示し、Xはハロゲン原子を示す。nは、括弧内の単位の繰り返し数を示し、1〜20のいずれかの整数である。nが2以上の場合、R2同士、R3同士は同一であっても相異なっていてもよい。但し、R1、R2及びR3のうち、少なくとも1つはフッ素以外のハロゲン原子を示す。)で表されるスルフェニルハライド化合物の少なくとも1種を溶媒中で光照射によって反応させることによって得ることができる。
式(III)における「ハロゲン原子」、「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」は、上記式(I)における「ハロゲン原子」、「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」と同じのものを例示することができる。
ここで、光照射は、水銀ランプまたはタングステンランプ等を光源として反応器内に設置し行うことができる。
また、式(I)で表されるハロゲン化ジスルフィド化合物は、式(III)で表される化合物を式(VI)で表される化合物と反応させることによっても得ることができる。
C(S)Z2 (VI)
(式(VI)中、Zはフッ素原子以外のハロゲン原子を示す。)
式(III)で表されるスルフェニルハライド化合物としては、CCl3SCl、CCl2(F)SCl、CH(Cl)2SCl、CH(Cl)2CCl2SCl、CBr3SBr、CBr2(Cl)SCl、CF2(Cl)SCl、CH2(Cl)CCl2SCl、CCl3SF、CCl3SBr、CCl3SI、CCl2(Ph)SCl、CCl(Ph)2SCl、CCl3C(CH3)(Ph)SCl,CH2(Cl)CH(Ph)SCl、CCl3CH2CH2CH2SCl、CCl3CH2CH2CH2CH2CH2CH2SCl等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。式(III)で表される化合物のうち、R1,R2及びR3のすべてが、フッ素以外のハロゲン原子である化合物が好ましく、特にCCl3SClが好ましい。
式(III)で表されるスルフェニルハライド化合物と溶媒とのモル比は、特に制限されないが、1:2.5〜3.4が好ましい。また、反応温度は40〜70℃、反応時間は1〜9時間が好ましい。
2)有機溶媒
式(I)で表される化合物中のハロゲン原子をフッ素原子に置換するために有機溶剤が使用される。水が存在すると反応性が低下するので、実質的に無水の状態で行うことが望ましいが、アミンフッ化水素塩の構成にフッ化水素を用いる場合にはフッ化水素の水溶液、すなわちフッ化水素酸を用いても反応性が低下することはない。
有機溶媒としては、任意の有機溶媒が使用できる。なかでも非プロトン性極性溶媒が好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、硫黄含有溶媒、ニトリル系溶媒、環状エーテル系溶媒、鎖状エーテル系溶媒、エステル系溶媒、鎖状カーボネート系溶媒、ケトン系溶媒またはアミド系溶媒が挙げられる。これらは単独で、または2種以上併用してもよい。
硫黄含有溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルホンなど;ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど;環状エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなど;鎖状エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルモノグライム、エチルモノグライム、メチルジグライム、エチルジグライム、プロピルジグライム、ブチルジグライム、メチルトリグライム、エチルトリグライム、メチルテトラグライムなど;エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなど;鎖状カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートなど;ケトン系溶媒としては、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトンなど;アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。特に、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトンなどが好適に使用できる。有機溶媒の使用量は、特に制限されないが、式(I)で表される化合物1モルに対して、通常、0.1L〜10L、好ましくは、0.4L〜6.0Lである。
3)アミンフッ化水素塩
アミンフッ化水素塩は、アミンにフッ化水素が付加してなる塩である。アミンフッ化水素塩としては、つぎの式(IV)および(V)で表わされる化合物が、非プロトン性溶媒への溶解性が良好な点から好ましい。
456N・(HF)m (IV)
7・(HF)m (V)
(式(IV)中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。式(V)中、R7は−N=または−NH−を含む炭素数4〜5の環状アミンを示す。式(IV)もしくは式(V)中、mは好ましくは0.6〜10、より好ましくは0.8〜3、さらに好ましくは0.8〜1.2である。)
安価に製造できる点及びアミンに対するフッ化水素のモル比mの値を選択して製造できる点から式(IV)で表されるアミンフッ化水素塩が好ましい。式(IV)で表されるアミンフッ化水素塩中のアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリt−ブチルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジt−ブチルアミンなどのジアルキルアミン;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミンなどのモノアルキルアミンが挙げられる。これらのうち、トリアルキルアミン及びジアルキルアミンが好ましい。
また、式(V)で表されるアミンフッ化水素塩は、求核性が高い点から好ましい。式(V)で表されるアミンフッ化水素塩中の環状アミンとしては、シクロヘキシルアミン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、モルホリン、ピリジン、キノリンなどが挙げられる。
アミンフッ化水素塩におけるアミンに対するフッ化水素のモル比mは、特に制限されないが、フッ素化反応性が高く且つハロゲン原子(Cl、Br、I)のフッ素置換選択性が高い点から、好ましくは0.6〜10、より好ましくは0.8〜3、さらに好ましくは0.8〜1.2である。mが小さすぎると副生成物が多く生成することがあり、mが大きすぎるとフッ素化の反応性が低下することがある。
アミンフッ化水素塩におけるアミンに対するフッ化水素のモル比mは、たとえば、次の方法で調整することができる。
i)mの異なる2種以上のアミンフッ化水素塩を混合する。
たとえば、m=3のアミンフッ化水素塩1モルとm=1のアミンフッ化水素塩1モルを混合してm=2のアミンフッ化水素塩とする。
ii)アミンフッ化水素塩にアミンを加える。
たとえば、m=3のアミンフッ化水素塩1モルとアミン2モルを混合してm=1のアミンフッ化水素塩とする。アミンフッ化水素塩と併用するアミンとしては、アミンフッ化水素塩を構成するアミンと同じでも異なっていてもよいが、フッ素化の反応性が高い点から同じものの方が好ましい。併用するアミンの具体例としては、前記のアミンフッ化水素塩で例示した各種のアミンと同じアミンが例示できる。
アミンフッ化水素塩とアミンとの混合は、アミンフッ化水素塩とアミンとを予め混合した後に反応系に加えてもよいし、いずれか一方を反応系に加えた後他方を加えてもよい。
iii)アミンとフッ化水素を混合する。
たとえば、有機溶剤にアミン1モルを溶解させた溶液にフッ化水素1モルを混合してm=1のアミンフッ化水素塩を調製する。この方法では、フッ化水素は水溶液で使用することもできる。アミンとフッ化水素との混合は、フッ化水素とアミンとを予め混合した後に反応系に加えてもよいし、いずれか一方を反応系に加えた後他方を加えてもよい。
iv) 上記のi)、ii)、及びiii)の方法を適宜組み合わせる。
アミンフッ化水素塩の使用量は、式(I)で表される化合物の種類により異なるが、通常、式(I)のハロゲン原子1個に対してアミンフッ化水素塩中のフッ化水素が、好ましくは1〜10当量、より好ましくは1〜1.5当量使用される。
4)反応
本発明の製造方法では、通常、以下のようにして反応が行われる。
即ち、アミンフッ化水素塩及び/又はフッ化水素(水溶液でもよい)、mの調整に必要な量のアミン、及び有機溶媒との混合物中に、式(I)で表される化合物を滴下などの方法により添加・撹拌する。あるいは式(I)で表される化合物と有機溶媒との混合物中にアミンフッ化水素塩及び/又はフッ化水素(水溶液でもよい)及びアミンを添加してもよい。
反応開始時から反応終了時までの操作温度範囲は、使用する式(I)で表される化合物、アミンフッ化水素塩、フッ化水素、アミン、有機溶媒、などの種類と量によって適宜選択されるが、通常、−20〜60℃、好ましくは−20〜40℃の範囲に保たれる。
また、反応時間も使用する式(I)で表される化合物、アミンフッ化水素塩、フッ化水素、アミン、有機溶媒、などの種類と量、あるいは反応温度などで異なるが、通常0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間の範囲である。
5)本発明の製造方法によって、式(II)で表されるフッ素化ジスルフィド化合物を低い反応温度で高収率で得ることができる。
Figure 0005642394
式(II)中の、R1a'、R2a'、R3a'、R1b'、R2b'及びR3b'は、夫々独立して、水素原子、フッ素原子、C1−C6アルキル基又はC6−C10アリール基を示す。式(II)における「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」は、式(I)における「C1−C6アルキル基」及び「C6−C10アリール基」として例示したものと同じものを例示することができる。
na’及びnb'は、括弧内の単位の繰り返し数をそれぞれ示し、夫々独立して1〜20の整数である。na’及びnb'が、夫々2以上の場合、R2a'同士、R2b'同士、R3a'同士及びR3b'同士は同一であってもよいし、相異なっていてもよい。但し、R1a'、R2a'、R3a'、R1b'、R2b'及びR3b'のうち、少なくとも1つはフッ素原子を示す。
式(II)で表される化合物としては、CF3SSCF3、CF3CH2SSCH2CF3、CH(F)2SSCH(F)2、CF2(Ph)SSCF2(Ph)、CF(Ph)2SSF(Ph)2、CF3C(CH3)(Ph)SSC(CH3)(Ph) CF3、CH2(F)CH(Ph)SSCH(Ph)CH2(F)、CF3CH2CH2CH2SSCH2CH2CH2CF3、CF3SSCH2CF3、CF3SSCH(F)2等が挙げられる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。本発明の技術的範囲はこれら実施例によって限定されるものではない。
以下の説明で使用する略号は以下のとおりの意味である。
PCMM:trichloromethanesulfenyl chloride (CCl3SCl)
PCDS:bis(trichloromethyl)disulfide (CCl3SSCCl3
PFDS:bis(trifluoromethyl)disulfide (CF3SSCF3
TEA:triethylamine (Et3N)
TEF:triethylaminetrihydrofluoride (Et3N・3HF)
参考例1〜3 (PCDSの製造)
反応容器にPCMMとシクロへキサンとを表1に記載の量で仕込み、高圧水銀ランプ(理工科学産業株式会社製UVL−400HA、波長365nm)を用いて、表1に記載の温度および時間で光照射した。光照射終了後、減圧蒸留してPCDSを単離した。
Figure 0005642394
実施例1
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び冷却バスを備えたフラスコをN2ガスで置換後、室温下で、アセトニトリル(MeCN)、TEA、及びTEFをPCDSに対してそれぞれ4L/mol,4.2eq、及び2.1eq、をこの順序で仕込み、冷却しながら攪拌を開始した。反応開始時から反応終了時までの操作温度を6〜30℃に保ち、PCDS50mmolを滴下ロートから滴下し、2時間反応を行った。反応物をガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、反応物中のハロゲン化ジスルフィドはほとんどがPFDSであり、未反応のPCDSは認められなかった。
実施例2
アセトニトリルの代わりにジメチルフォルムアミド(DMF)を用い、反応開始時から反応終了時までの操作温度を6〜28℃に保った他は、実施例1と同じ手法にて反応を行った。その結果、反応物中のハロゲン化ジスルフィドはほとんどがPFDSであり、未反応のPCDSは認められなかった。
実施例3
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び冷却バスを備えたフラスコをN2ガスで置換後、室温下で、アセトニトリル(MeCN)、TEA、及びフッ化水素(47重量%HF水溶液)をPCDSに対してそれぞれ4L/mol,7.2eq、及び7.2eq、をこの順序で仕込み、冷却しながら攪拌を開始した。反応開始時から反応終了時までの操作温度を20〜29℃に保ち、PCDS50mmolを滴下ロートから滴下し、1時間反応を行った。反応物をGCにより分析した結果、反応物中のハロゲン化ジスルフィドはほとんどがPFDSであり、未反応のPCDSは認められなかった。
実施例4
撹拌機、温度計、還流冷却器、及び冷却バスを備えたフラスコをN2ガスで置換後、室温下で、メチルイソブチルケトン(MIBK)、DMF,TEA、及びフッ化水素(47重量%HF水溶液)をPCDSに対してそれぞれ2.5L/mol,0.5L/mol,7.2eq、及び7.2eq、をこの順序で仕込み、冷却しながら攪拌を開始した。反応開始時から反応終了時までの操作温度を0〜5℃に保ち、PCDS50mmolを滴下ロートから滴下し、1時間反応を行った。反応物をGCにより分析した結果、反応物中のハロゲン化ジスルフィドはほとんどがPFDSであり、未反応のPCDSは認められなかった。

Claims (6)

  1. CCl3SSCCl3、CCl2(F)SSCCl2(F)、CBr3SSCBr3、CI3SSCI3、CBr3SSCCl3、CCl3CH2SSCH2CF3、CH(Cl)2SSCH(Cl)2、CCl2(CH3)SSCCl2(CH3)、CCl2(Ph)SSCCl2(Ph)、CCl(Ph)2SSCl(Ph)2、CCl3C(CH3)(Ph)SSC(CH3)(Ph) CCl3、CH2(Cl)CH(Ph)SSCH(Ph)CH2(Cl)、CCl3CH2CH2CH2SSCH2CH2CH2CCl3、CCl3SSCH2CCl3、およびCCl3SSCH(Cl)2からなる群より選ばれる少なくとも1つのジスルフィド化合物を、有機溶媒中、アミンフッ化水素塩と反応させることによって前記ジスルフィド化合物中のフッ素原子以外のハロゲン原子をフッ素原子に置換することを含む、フッ化ジスルフィド化合物の製造方法。
  2. CCl 3 SCl、CCl 2 (F)SCl、CH(Cl) 2 SCl、CH(Cl) 2 CCl 2 SCl、CBr 3 SBr、CBr 2 (Cl)SCl、CF 2 (Cl)SCl、CH 2 (Cl)CCl 2 SCl、CCl 3 SF、CCl 3 SBr、CCl 3 SI、CCl 2 (Ph)SCl、CCl(Ph) 2 SCl、CCl 3 C(CH 3 )(Ph)SCl、CH 2 (Cl)CH(Ph)SCl、CCl 3 CH 2 CH 2 CH 2 SCl、およびCCl 3 CH 2 CH 2 CH 2 CH 2 CH 2 CH 2 SClからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に光照射して、ジスルフィド化合物を得、
    該ジスルフィド化合物を、有機溶媒中、アミンフッ化水素塩と反応させることによって前記ジスルフィド化合物中のフッ素原子以外のハロゲン原子をフッ素原子に置換することを含む、フッ化ジスルフィド化合物の製造方法。
  3. −20〜60℃の温度にてフッ素原子以外のハロゲン原子をフッ素原子に置換する、請求項1または2に記載のフッ化ジスルフィド化合物の製造方法。
  4. アミンフッ化水素塩が、式(IV)若しくは(V)で表わされる化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ化ジスルフィド化合物の製造方法。
    456N・(HF)m (IV)
    7・(HF)m (V)
    (式(IV)若しくは(V)中、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示し;R7は−N=または−NH−を含む炭素数4〜5の環状アミンを示し;mは0.8〜1.2である。)
  5. アミンフッ化水素塩中のアミンが、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン、または環状アミンである、請求項4に記載のフッ化ジスルフィド化合物の製造方法。
  6. 有機溶媒が、非プロトン性極性溶媒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフッ化ジスルフィド化合物の製造方法。
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