次に、本発明の実施の形態に係る潜熱熱交換器、およびその潜熱熱交換器を備えた給湯装置について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1および図2に示すように、本発明の実施の形態に係る潜熱熱交換器1のケーシング2は、上面が開口する略矩形箱状のケース本体10と、その上面の開口部16を覆うように被蓋する天板40とを有しており、これらケース本体10と天板40とで囲まれたケーシング2の内部空間には、蛇行曲成された複数(ここでは、8本)の吸熱管50が上下に重なり合った状態で収容されている。
ケース本体10は、ステンレス等の耐腐食性を有する一枚の薄肉金属板を絞り加工することによって一体形成されたものであり、背面壁11、正面壁12、底壁13、一方側壁14および他方側壁15を有している。詳述すると、一定方向に延びた平板状の底壁13の前後両側縁部から背面壁11および正面壁12が起立し、これら前後壁11,12がコーナ部を介して底壁13と一体に繋がっている。また、底壁13の左右両側縁部から一方側壁14および他方側壁15が起立し、これら左右側壁14,15がコーナ部を介して底壁13と一体に繋がっている。さらに、背面壁11および正面壁12の左右両側縁部は、それぞれコーナ部を介して一方側壁14および他方側壁15と一体に繋がっている。これにより、ケース本体10には、背面壁11、正面壁12、底壁13、一方側壁14および他方側壁15で囲まれた略矩形状の開口部16を有する内部空間が形成される。
背面壁11、正面壁12、一方側壁14および他方側壁15からなる周壁11,12,14,15の上端縁、即ち、上記開口部16の周縁には、その周縁からさらに外方へ広がるように水平に屈曲する天板載置部101が形成されている。この天板載置部101は、ケース本体10の上面全周に亘って一体形成されており、この上面に天板40が載置され、ねじ留め接合される。
因みに、本明細書では、便宜上、背面壁11と正面壁12とが対向する方向を前後方向、一方側壁14と他方側壁15とが対向する方向を左右方向、底壁13と天板40とが対向する方向を上下方向というが、これらの方向は、給湯装置に対する潜熱熱交換器1の取り付け態様によって、実際の方向と異なる場合がある。
上述したように、ケース本体10を絞り加工によって一体形成すれば、ケース本体10の製造にあたって溶接作業やロウ付け作業を行う必要がない。また、ケース本体10に溶接やロウ付け等の接合部があると、潜熱熱交換器1によって潜熱を回収する際に生成される強酸性のドレンがその接合部の隙間に浸入し、金属板であるケース本体10の腐食が進行しやすいという問題があるが、本実施の形態におけるケース本体10の下部には、溶接やロウ付けによる接合部がないから、ケーシング2内で強酸性のドレンが発生しても、その下部にドレンが滞留し難く、ケース本体10の腐食が抑えられる。さらに、上記周壁11,12,14,15や天板載置部101を絞り加工により一体で形成するから、少ない部品点数で簡易にケーシング2を製造することも可能である。尚、ケース本体10は、絞り加工によって一体形成する必要はなく、別部材を組み合わせて溶接やロウ付けにより接合形成したものであって良い。
一方側壁14の前後方向の両側端部(背面壁11側および正面壁12側の端部)にはそれぞれ、吸熱管50の上流側の管端部53を挿通させる上流端挿通孔141と、吸熱管50の下流側の管端部54を挿通させる下流端挿通孔142とが、吸熱管50の数(ここでは、各8つ)だけバーリング加工により穿設されている。これら上流端挿通孔141および下流端挿通孔142はそれぞれ、縦二列で且つ千鳥状に配列されている。尚、上流端挿通孔141および下流端挿通孔142の数や配列は、吸熱管50の数に応じて適宜設定される。
吸熱管50の両管端部53,54は、対応する各挿通孔141,142を通ってケース本体10の外部に導出され、この状態で各挿通孔141,142の周縁にロウ付け固定される。さらに、各挿通孔141,142からケース本体10の外部に導出される上流側の管端部53および下流側の管端部54はそれぞれ、一方側壁11の外部に配設された流入ヘッダ60および流出ヘッダ70に接続される。このようにして、流入ヘッダ60および流出ヘッダ70には、複数の吸熱管50が並列接続されており、これにより、吸熱管50が直列接続されたものに比べて通水抵抗の軽減が図られる。
流入ヘッダ60および流出ヘッダ70はそれぞれ、器状のヘッダ本体61,71と、ヘッダ本体61,71に内嵌する器状のヘッダ蓋体64,74とを有している。これらヘッダ本体61,71とヘッダ蓋体64,74とは、その開口側の面を相互に重ね合わせた態様でロウ付け接合される。また、ヘッダ本体61,71の底板部62,72には、吸熱管50の管端部53,54を挿通させる吸熱管接続孔160,170が、吸熱管50の数(ここでは、各8つ)だけ穿設されている。
さらに、流入ヘッダ60側のヘッダ蓋体64の底板部65には、流入ヘッダ60の内外を繋ぐ流入口164がバーリング加工により穿設されており、流出ヘッダ70側のヘッダ蓋体74の底板部75には、流出ヘッダ70の内外を繋ぐ流出口174がバーリング加工により穿設されている。これら流入口164および流出口174にはそれぞれ、水道配管等の水供給源へ繋がる給水管を接続するためのジョイント筒68、顕熱熱交換器の入水側接続口へ繋がる接続管を接続するためのジョイント筒78が装着されている。これにより、流入ヘッダ60側へ供給された被加熱流体が複数の吸熱管50を介して流出ヘッダ70側へ流れ、燃焼排気中の水蒸気が吸熱管50の表面で凝縮する際にその潜熱が回収される。
図2および図3に示すように、吸熱管50は、ステンレス等の耐腐食性を有する金属からなる一本の断面円形状のコルゲート管(谷部と山部とが軸線方向へ交互に連続する蛇腹状の管)で形成されており、ケース本体10の左右方向(一方側壁14と他方側壁15との間)に延びる直管部51と、直管部51の一端から半円弧状に曲がる折り返し部52とが同一平面状で繰り返し連続する蛇行配管構造を有している(但し、図1や図2等においては、直管部51の一部のみを蛇腹状に表している)。
直管部51は、ケース本体10の前後方向に等間隔で複数(ここでは、6本)並設されており、そのケーシング2内の最後列(背面壁11側)に配設された各直管部51の一方側壁14側の管端部(吸熱管50の上流側の管端部)53が、ケース本体10の上流端挿通孔141に挿通支持され、ケーシング2内の最前列(正面壁12側)に配設された各直管部51の一方側壁14側の管端部(吸熱管50の下流側の管端部)54が、ケース本体10の下流端挿通孔142に挿通支持される。
折り返し部52は、隣り合う直管部51の一端相互を繋ぐように複数(ここでは、5箇所)設けられており、上下に圧縮変形されて断面扁平状に形成されている(図4参照)。
また、図2および図5に示すように、各吸熱管50の折り返し部52相互は、ケース本体10の前後方向へ半ピッチずつ交互にずれた態様で当接している。即ち、吸熱管50は、その上から奇数番目の吸熱管50に対して偶数番目の吸熱管50が排気出口121側(燃焼排気の排気方向)へ半ピッチずれた位置で重なり合っている。これにより、重なり合う方向に隣接する吸熱管50相互の距離が狭くなり、ケーシング2内に吸熱管50を密に配設できる。その結果、潜熱熱交換器1の小型化を図ることが可能であるとともに、燃焼排気を吸熱管50により効率的に接触させることが可能である。尚、直管部51と一方向に折り曲げられた円弧状の折り返し部52とが連続する吸熱管50を複数用い、これらの吸熱管50をケーシング2内へ螺旋状に配置したものであっても良い。
図2に示したように、一方側壁14の前後方向の中央部(上流端挿通孔141と下流端挿通孔142との間)には、ケース本体10の外方へ向かって膨出する第1膨出部145が絞り加工により形成されている。この第1膨出部145は、前後方向の各コーナ部から一定距離離れた位置に形成された段差部とその段差部相互を繋ぐ曲面部とからなり、上流端挿通孔141および下流端挿通孔142が形成された一方側壁14の前後方向の両側端部より外方へ膨出している。従って、その膨出分だけケーシング2の内容積も大きくなっており、それに応じてケーシング2内に収容される吸熱管50の長さも長くすることが可能である。また、一方側壁14の中央部に第1膨出部145を一体形成したことで、ケーシング2全体の強度向上にも寄与している。
他方側壁15の前後方向の中央部には、ケース本体10の外方へ向かって膨出する第2膨出部155が絞り加工により形成されている。この第2膨出部155は、前後方向の各コーナ部から一定距離離れた位置に形成された段差部とその段差部相互を繋ぐ曲面部とからなり、他方側壁15の前後方向の両側端部より外方へ膨出している。このように他方側壁15の中央部に第2膨出部155を一体形成したことで、ケーシング2全体の強度がより向上する。
ところで、本実施の形態では、ケース本体10を絞り加工によって一体形成しているため、吸熱管50をケース本体10へ取り付けるにあたっては、吸熱管50の両管端部53,54をケース本体10の内側から各挿通孔141,142へ差し込み、流入ヘッダ60および流出ヘッダ70に接続させる必要がある。そのため、吸熱管50をケース本体10へ取り付けた状態において、その吸熱管50の他方側壁15側の折り返し部52と他方側壁15との間には、吸熱管50を差し込むために要する一定の大きさの余裕空間が確保されている。しかしながら、このような余裕空間があると、排気入口401からケーシング2内へ導入される燃焼排気が排気抵抗の少ないこの余裕空間へ流れてしまって吸熱管50に効率的に接触せず、熱効率が低下する虞がある。このような事情を考慮し、本実施の形態では、他方側壁15と吸熱管50の他方側壁15側の折り返し部52との間に、好ましくは、上記余裕空間への燃焼排気の流れを遮る整流板45が設けられる。この整流板45により、燃焼排気が吸熱管50側に流れて吸熱管50と接触しやすくなり、熱効率を高めることができる。
背面壁11には、ケース本体10の外方へ向かって膨出する上方視略円弧状の第3膨出部115が絞り加工により形成されている。この第3膨出部115は、左右方向の各コーナ部から中央部の外方へ向かって湾曲するように形成されており、このように構成したことで、絞り加工に伴う背面壁11の内方への反りを低減できるから、背面壁11と吸熱管50との間に、燃焼排気が円滑に流通するのに必要な空間を確保することが可能であるとともに、ケーシング2全体の強度向上にも寄与している。
図2および図5に示すように、底壁13は、ケーシング2内で発生したドレンを外部へ円滑に排出させるため、背面壁11側から正面壁12側へ向かって上方に傾斜しており、その傾斜面の最下位には、ドレンをケーシング2の外部へ排出するためのドレン排水口17が設けられている。このドレン排水口17は、図示しないドレン排水管を介して外部の中和器と接続される。
底壁13の左右方向の一方側端部(一方側壁14側の端部)には、ケース本体10の内方へ向かって膨出する第1支持凸部131が絞り加工により形成されている。この第1支持凸部131は、ケーシング2内の最下位に配設された吸熱管50の管端部53,54側の折り返し部(一方側壁14側の下段折り返し部)521を下方から当接支持可能な位置まで膨出しており、その上面は、上流端挿通孔141と下流端挿通孔142との間に亘って平面状に形成されている。
図2および図6に示すように、底壁13の左右方向の他方側端部(他方側壁15側の端部)には、ケース本体10の内方へ向かって膨出する第2支持凸部132が絞り加工により形成されている。この第2支持凸部132は、ケーシング2内の最下位に配設された吸熱管50の管端部53,54と反対側の折り返し部(他方側壁15側の下段折り返し部)522を下方から当接支持可能な位置まで膨出しており、その上面は、背面壁11と正面壁12との間に亘って平面状に形成されている。
図2に示したように、底壁13の左右方向の略中央部には、ケース本体10の内方へ向かって膨出する第3支持凸部133が絞り加工により形成されている。この第3支持凸部133は、ケーシング2内の最下位に配設された吸熱管50の直管部(下段直管部)51を下方から当接支持可能な位置まで膨出しており、背面壁11と正面壁12とが対向する前後方向へ一定幅で直線的に延びるリブ状に形成されている。
また、第3支持凸部133は、一端が底壁13の前方向のコーナ部に位置し、他端が底壁13の後方向のコーナ部から一定距離離れた位置となるよう延設されており、ケーシング2全体の強度向上にも寄与している。
正面壁12の上下左右方向の略中央部には、ケーシング2の内部空間へ導入された燃焼排気をケーシング2の外部へ導出するための排気出口121が形成されている。この排気出口121は、正面壁12の左右方向へ長い矩形状に開口している。尚、排気出口121は天板40に設けても良く、その開設位置および形状は、使用形態に合わせて適宜設定される。
図1、図2および図5に示すように、天板40は、ステンレス等の耐腐食性を有する一枚の薄肉金属板を絞り加工することによって一体形成されたものであり、略平板状の天板本体部41と、天板本体部41の外周縁から上方に屈曲する起立部42と、起立部42の上端から外方へ広がるように水平に屈曲するフランジ部43と、フランジ部43の外周縁から下方に屈曲する垂下部44とを有している。
天板本体部41の前後方向の中央部より背面壁11側は、フランジ部43へ向かって上方に傾斜している。また、その傾斜面の前後左右方向の略中央部には、給湯装置の器具本体側から供給される燃焼排気をケーシング2の内部空間へ導入するための排気入口401がバーリング加工により形成されている。この排気入口401は、天板本体部41の左右方向へ長い矩形状に開口している。従って、ケース本体10と天板40とを接合した状態において、ケーシング2の内部空間は、上記排気入口401と排気出口121とを連通する燃焼排気の通路となる。尚、排気入口401は背面壁11に設けても良く、その開設位置および形状は、使用形態に合わせて適宜設定される。
天板本体部41の外周の起立部42は、ケース本体10の開口部16の内周縁に内嵌する大きさに形成されており、フランジ部43の外周の垂下部44は、ケース本体10の天板載置部101の外周縁に外嵌する大きさに形成されている。また、フランジ部43とケース本体10の天板載置部101との間には、耐熱・耐腐食性を有する弾性樹脂によって形成された帯状のパッキング材46が狭設され、このパッキング材46によってフランジ部43とケース本体10の天板載置部101との間の気密性が確保される。尚、パッキング材46は、フランジ部43とケース本体10の天板載置部101との間の気密性を保持可能で且つ耐熱・耐腐食性を有するものであれば、樹脂以外の材質を用いて形成したものであっても良い。
図2、図5および図7に示すように、天板本体部41の下面で且つ前後方向の中央部の一方側端部(一方側壁14側の端部)には、ケーシング2内の最上位に配設された吸熱管50の管端部53,54側の折り返し部(一方側壁14側の上段折り返し部)523に上方から押圧当接する弾性押さえ部材としての第1パイプ押さえ181が配設されている。この第1パイプ押さえ181は、ステンレス等の耐腐食性を有する一枚の薄肉金属板によって形成された板バネであり、上下方向に所定の弾性を有している。
第1パイプ押さえ181は、矩形状の平板を略逆V字状に屈曲形成したものであり、その中央上部183は、天板40の左右方向へ長い平面状に形成され、天板本体部41の下面に固定されている。また、中央上部183の前後方向の両側端(背面壁11側および正面壁12側の端部)にはそれぞれ、その外側下方へ所定の角度で屈曲する弾性片184が設けられており、この弾性片184の下端部185が吸熱管50の一方側壁14側の上段折り返し部523の上面へ各別に押圧当接する。
弾性片184は、ケース本体10と天板40とを接合した際に、その下端部185が吸熱管50の一方側壁14側の上段折り返し部523に当接した状態でさらに上方へ押し曲げられるような位置まで屈曲形成されており、この弾性片184の反発力によって吸熱管50の一方側壁14側の上段折り返し部523が下方の第1支持凸部131側へ各別に押圧される。これにより、吸熱管50の一方側壁14側の下段折り返し部521はそれぞれ、底壁13の第1支持凸部131の上面へ押し付けられる。尚、第1パイプ押さえ181は、上部が天板本体部41の下面に固定され、下部が吸熱管50の一方側壁14側の上段折り返し部523に対して上方から弾性を持って当接する構成であれば、後述する第2パイプ押さえ182と同様の構成にしても良い。
図2、図6および図8に示すように、天板本体部41の下面で且つ前後方向の中央部の他方側端部(他方側壁15側の端部)には、ケーシング2内の最上位に配設された吸熱管50の管端部53,54と反対側の折り返し部(他方側壁15側の上段折り返し部)524を上方から押圧当接する弾性押さえ部材としての第2パイプ押さえ182が配設されている。この第2パイプ押さえ182は、ステンレス等の耐腐食性を有する一枚の薄肉金属板によって形成された板バネであり、上下方向に所定の弾性を有している。
第2パイプ押さえ182は、その上部に天板40の前後方向へ長い矩形平板状の固定片186を有し、この固定片186が天板本体部41の下面に固定されている。また、固定片186の一側端(天板40の中央側の端部)には、その外側下方へ所定の角度で屈曲する複数(ここでは、3つ)の弾性片187が設けられており、この弾性片187の下端部188が吸熱管50の他方側壁15側の上段折り返し部524の上面へ各別に押圧当接する。尚、第2パイプ押さえ182の弾性片187の数は、吸熱管50の他方側壁15側の上段折り返し部524の数に応じて適宜設定される。
弾性片187は、ケース本体10と天板40とを接合した際に、その下端部188が吸熱管50の他方側壁15側の上段折り返し部524に当接した状態でさらに上方へ押し曲げられるような位置まで屈曲形成されており、この弾性片187の反発力によって吸熱管50の他方側壁15側の上段折り返し部524が下方の第2支持凸部132側へ各別に押圧される。これにより、吸熱管50の他方側壁15側の下段折り返し部522がそれぞれ、底壁13の第2支持凸部132の上面へ押し付けられる。尚、第2パイプ押さえ182は、上部が天板本体部41の下面に固定され、下部が吸熱管50の他方側壁15側の上段折り返し部524に対して上方から弾性を持って当接する構成であれば、上述した第1パイプ押さえ181と同様の構成にしても良い。
次に、本実施の形態における潜熱熱交換器の作製方法の一例について、図2を参照しながら具体的に説明する。
上記潜熱熱交換器1の作製にあたっては、まず、ケース本体10の一方側壁14の上流端挿通孔141および下流端挿通孔142に、複数の吸熱管50の両管端部53,54をそれぞれ挿通させ、一方側壁14から両管端部53,54を所定長さ導出させる。このとき、吸熱管50は、その一方側壁14側の下段折り返し部521の下面が底壁13の第1支持凸部131の上面に当接し、他方側壁15側の下段折り返し部522の下面が底壁13の第2支持凸部132の上面に当接し、下段直管部51の下面が底壁13の第3支持凸部133の上面に当接した状態で、ケース本体10内に配置される。
吸熱管50の両管端部53,54と上流端挿通孔141および下流端挿通孔142との境界には、ロウ材(例えば、ペースト状のニッケルロウ材)が塗布される。尚、ロウ材は、上流端挿通孔141および下流端挿通孔142の内面や、ヘッダ本体61,71の吸熱管接続孔160,170の内面に塗布しておいても良い。
また、上記とは別に、ヘッダ蓋体64,74の流入口164および流出口174にジョイント筒68,78をはめ込み、その境界にロウ材を塗布してこれらを仮固定し、さらに、そのヘッダ蓋体64,74をヘッダ本体61,71にはめ込み、その境界にロウ材を塗布する。
そして、上述のようにロウ材が塗布されたサブアセンブリを高温の加熱炉へ投入してロウ付け処理が行われる。その結果、ロウ材の塗布された箇所で各部材がロウ付け固定される。尚、上記ロウ付け処理中、ケース本体10および吸熱管50は熱処理(固溶化処理)されるため、深絞り加工によって生じたケース本体10や折り返し部52の残留応力が除去される。従って、それらケース本体10や折り返し部52の表面に強酸性のドレンが接触しても、応力腐食割れが発生し難い。
次いで、他方側壁15と吸熱管50の他方側壁15側の折り返し部52との間に、第2膨出部155を他方側壁15の内側から覆うように整流板45を差し込み、その整流板45を他方側壁15の外側からねじ留め接合する。尚、整流板45と他方側壁15との接合は、溶接やロウ付け等の他の接合方法を用いても良い。
さらに、天板40の下面に第1パイプ押さえ181および第2パイプ押さえ182が溶接にて接合され、フランジ部43の下面に沿ってパッキング材46が貼着される。そして、ケース本体10の天板載置部101の上面に天板40のフランジ部43がパッキング材46を介して重なり合うように、ケース本体10の上部に天板40を載置し、それら天板載置部101とフランジ部43とをねじ留め接合することで、潜熱熱交換器1が作製される。尚、天板載置部101とフランジ部43との接合は、カシメ等の他の接合方法を用いても良い。
また、天板載置部101とフランジ部43とを接合した際、天板40の第1パイプ押さえ181の下端部185が、吸熱管50の一方側壁14側の上段折り返し部523の上面へ各別に押圧状態で当接し、天板40の第2パイプ押さえ182の下端部188が、吸熱管50の他方側壁15側の上段折り返し部524の上面へ各別に押圧状態で当接する。これにより、各吸熱管50の一方側壁14側の折り返し部52が、第1パイプ押さえ181と第1支持凸部131とで一まとめに上下から挟みつけられるようにして固定され、他方側壁15側の折り返し部52が、第2パイプ押さえ182と第2支持凸部132とで一まとめに上下から挟みつけられるようにして固定される。
ところで、このようにケース本体10の一方側壁14に吸熱管50の両管端部53,54を片持ち状に支持固定させた構成のものでは、吸熱管50の他方側壁15側を溶接やロウ付け固定することができないから、吸熱管50が振動しやすいし、上述したロウ付け処理の熱により吸熱管50の支持部の変形も生じやすい。それゆえ、たとえ最上位および最下位の吸熱管50がそれぞれ天板40および底壁13に当接するよう構成されていたとしても、これらの重なり部分に不要な隙間ができ、運転時にケーシング2内へ導入される燃焼排気の流れの勢いやウォーターハンマー現象等の影響を受けて吸熱管50が振動し、騒音や吸熱管50の変形を招く虞がある。
しかしながら、本実施の形態では、上述したように、複数の吸熱管50の各折り返し部52をケース本体10の底壁13に設けられた支持凸部131,132と天板40に設けられたパイプ押さえ181,182とで一まとめに上下から挟みつけて固定するように構成されているから、各吸熱管50がケース本体10に安定して固定される。また、潜熱熱交換器1を作製する際には、先に各吸熱管50とケース本体10とのロウ付け処理を行い、その後、天板40をケース本体10の上面に取り付ければ各吸熱管50が固定されるから、パイプ押さえ181,182が上記ロウ付け処理の熱に晒されて変形する虞もない。
従って、天板40をケース本体10に取り付ける前段階において、組み立て精度のばらつきやロウ付け処理後の各部品の熱変形によって、各吸熱管50の折り返し部52相互間や吸熱管50と支持凸部131,132との間の重なり部分に不要な隙間が生じていたとしても、天板40をケース本体10へ取り付けた段階で、吸熱管50の折り返し部52がパイプ押さえ181,182によって支持凸部131,132側へ押し下げられるから、各吸熱管50がケース本体10に安定して固定される。これにより、吸熱管50相互間や吸熱管50と他の部材との間の重なり部分に不要な隙間が生じ難く、運転時の吸熱管50の振動を確実に防止できる。従って、騒音や変形等が発生し難い。
また、既述従来の潜熱熱交換器のように、吸熱管50とケース本体10とのロウ付けを行う前に各吸熱管50を固定部材で一まとめに固定しておく必要もないから、組み付け作業が煩雑にならないし、潜熱熱交換器1の全体構造も簡素化できる。また、燃焼排気の通路内に吸熱管50以外の余分な別部材が配置されず、燃焼排気が吸熱管50へ効率的に接触するから、熱効率も向上する。
特に、本実施の形態では、接触状態で重なり合う各吸熱管50の折り返し部52相互が、板バネであるパイプ押さえ181,182の適切な弾性力によってその重なり合う方向へ押し付けられるから、組み立て精度のばらつきや吸熱管50自体の寸法のばらつき、ロウ付け処理後の各部品の熱変形のばらつきにかかわらず、各吸熱管50がより安定して固定される。これにより、上記隙間が一層生じ難く、運転時の吸熱管50の振動をより確実に防止できる。さらに、断面扁平状に形成された各吸熱管50の折り返し部52を上下から挟みつけるようにして固定することで、各吸熱管50がケース本体10により安定して固定されるから、吸熱管50の振動をより確実に防止できる。
また、本実施の形態では、吸熱管50の各折り返し部52を、上下方向に所定の弾性を有するパイプ押さえ181,182によって底壁13の支持凸部131,132側へ個々に押し下げるようにして固定するから、組み立て精度のばらつきやロウ付け処理後の各部品の熱変形のばらつきが大きい場合であっても、各吸熱管50が安定して固定される。これにより、上述した不要な隙間が一層生じ難く、吸熱管50の振動をより確実に防止できる。
さらに、吸熱管50が固定支持されるケース本体の一方側壁14に第1膨出部145を設けたことで、ケース本体10に対して吸熱管50を傾きの少ない状態で精度良く取り付けることが可能であるから、各吸熱管50がより安定して固定される。これにより、上述した不要な隙間が一層生じ難く、吸熱管50の振動をより確実に防止できる。
また、本実施の形態では、ケース本体10が一枚の金属板で一体形成され、ドレンの影響の少ないケース本体10上面の開口部16のみが天板40で被蓋されるように構成されているため、溶接やロウ付けを行うことなく、ねじ留めによりケース本体10と天板40とを接合するだけで、耐腐食性に優れるケーシング2が作製できる。
次に、本実施の形態に係る潜熱熱交換器を備えた給湯装置の一例について、具体的に説明する。
図9に示すように、本実施の形態に係る給湯装置は、顕熱熱交換器3と上述した潜熱熱交換器1とを有しており、顕熱熱交換器3の下部に潜熱熱交換器1が配設されている。また、顕熱熱交換器3の上部には、ガス供給管から供給されるガスを燃焼させるガスバーナ4が配設されており、さらにこのガスバーナ4を覆う缶体41の側部には、ガスバーナ4へ燃焼用の空気を送る送風ファン5が配設されている。
顕熱熱交換器3は、並設される複数のフィン332と、これらフィン332を貫通する複数の管体331とを有している。また、これらフィン332および管体331が組み込まれた空間と、潜熱熱交換器1の内部空間とは、既述した天板40によって上下に区画されているとともに、その天板40の排気入口401を介して連通している。従って、運転時、顕熱熱交換器3内に送られた燃焼排気は、排気入口401を介して潜熱熱交換器1内へ導かれ、吸熱管50の配設されたケーシング2の内部空間を通過した後、排気出口121から図示しない排気ダクトを通じて器具本体の外部へ排出される。
本実施の形態に係る給湯装置では、ガスバーナ4によりガスの燃焼排気が生成され、この燃焼排気が上述したように顕熱熱交換器3および潜熱熱交換器1へ順に供給される。そして、顕熱熱交換器3によって燃焼排気の顕熱が回収され、潜熱熱交換器によってさらにその顕熱回収後の燃焼排気から潜熱が回収される。このとき、ガスバーナ4には、送風ファン5により燃焼用の空気が強制的に供給され、上記燃焼排気はこの空気の流れに乗って潜熱熱交換器1まで導かれる。
一方、潜熱熱交換器1に設けられた流入ヘッダ60のジョイント筒68には、水道配管等の水供給源へ繋がる給水管が接続され、流入ヘッダ70のジョイント筒78には、顕熱熱交換器3の管体331の入水側接続口へ繋がる接続管が接続される。従って、給水管から供給される冷水は、潜熱熱交換器1の吸熱管50および顕熱熱交換器3の管体331を順に通過し、その間に潜熱および顕熱を吸収して温水となり、管体331の出水側接続口に接続されている出湯管から浴室や台所などの給湯端末へ送出される。
既述したように、本実施の形態では、ケース本体10の底壁13の支持凸部131,132と天板40のパイプ押さえ181,182とによって、吸熱管50がケース本体10に対して安定して固定されるため、吸熱管50相互間や吸熱管50と他の部材との間の重なり部分に不要な隙間が生じ難い。これにより、運転時の吸熱管50の振動が確実に防止され、騒音や変形等が発生し難い。また、燃焼排気が吸熱管50へ効率的に接触するから、熱効率も向上する。
[その他]
(1)上記実施の形態では、一つの加熱回路を有する給湯装置に用いられる潜熱熱交換器について説明したが、二つの加熱回路を有する給湯装置に用いられる潜熱熱交換器にも本発明を適用できる。この場合、ケーシングの内部空間を仕切壁によって二つの領域に区画し、両内部空間にはそれぞれ別の吸熱管が収容され、両側壁にはそれぞれ別の流入ヘッダおよび流出ヘッダが設けられる。
具体的には、背面壁、正面壁、底壁、一方側壁および仕切壁で囲まれた第1の内部空間に一方の吸熱管が収容され、この一方の吸熱管の両管端部が一方側壁に支持固定される。また、背面壁、正面壁、底壁、他方側壁および仕切壁で囲まれた第2の内部空間に他方の吸熱管が収容され、この他方の吸熱管の両管端部が他方側壁に支持固定される。そして、それら両吸熱管の管端部にそれぞれ流入ヘッダおよび流出ヘッダが接続される。底壁の一方側端部、他方側端部および仕切壁の左右側面下端部にはそれぞれ、支持凸部が設けられ、天板の下面で且つこれら各支持凸部に上下に対向する位置には、複数のパイプ押さえ(弾性押さえ部材)が配設される。これにより、既述潜熱熱交換器1と同様、運転時の両吸熱管の振動を確実に防止できる。
(2)上記実施の形態では、5箇所に折り返し部52を設けた吸熱管50が用いられているため、底壁13の両側壁14,15側の端部上面に支持凸部131,132が設けられ、また、天板本体部41の両側壁14,15側の端部下面にパイプ押さえ181,182が設けられたが、1箇所のみに折り返し部を有する吸熱管を用いる場合、一方側壁14側には折り返し部が設けられていないため、底壁13の他方側壁15側の端部上面にのみ支持凸部が設けられ、また、天板本体部41の他方側壁15側の端部下面にのみパイプ押さえが設けられる。