JP5641504B2 - グルコースを主成分とする糖含有液の製造方法 - Google Patents

グルコースを主成分とする糖含有液の製造方法 Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2008年12月9日出願の日本特願2008−313710号の優先権を主張し、その全記載は、ここに特に開示として援用される。
本発明は、セルロースを原料としてグルコースを主成分とする糖含有液を製造する方法に関する。
セルロースの加水分解(糖化)法としては、硫酸法、酵素法および加圧熱水法などがあるが、硫酸法では装置腐食と取扱上の危険性があり、また廃酸処理が必要となる。酵素法では酵素と生成物の分離が必要でグルコースの生産性は高くないという問題がある。加圧熱水法は、水中で発生する酸点によりセルロースを加水分解するものであり、反応後の処理が容易であるもののグルコース収率に改善の余地がある。さらに、可溶性の触媒・反応促進剤を用いた場合にはその分離が必要となる。例えば、特開平10-327900号公報(特許文献1)では、加圧熱水によるセルロース加水分解が報告されているが、主生成物は水溶性オリゴ糖でありグルコースではない。特開2002-85100号公報(特許文献2)では、ランタノイドイオンを添加すると加圧熱水でセルロース分解が促進されると報告されているが、反応後の水溶液から水溶性のランタノイドイオンの分離は容易ではない。同様に、特開2007-20555号公報(特許文献3)では、加圧熱水の反応系に塩化銅などの酸化剤を加えるとグルコース収率が増えると報告されているが、この場合も反応後の溶液から水溶性の酸化剤を分離するのは容易ではない。
最近、東工大・原(J. Am. Chem. Soc., 130, 12787 (2008) (非特許文献1))、高知大・恩田(触媒, 50, 471 (2008) (非特許文献2); Green Chem., 10, 1033 (2008) (非特許文献3))のグループは独立に、活性炭などの炭素材料の表面をスルホン化したものを酸触媒として水中100〜150℃で加水分解によりグルコースが得られることを報告している。例えば、より再現性の高いと思われる恩田の報告では、スルホン化活性炭を触媒として150℃、24時間の反応によりグルコース収率約40%(炭素基準)と記載されている。
先に本発明者らは、担持金属触媒を用いて、水中で水素5 MPa加圧下、190℃で24時間反応させることにより、セルロースが分解しソルビトールを主成分とする糖アルコールが生成することを報告した(WO2007/100052(特許文献4))。
特許文献1:特開平10-327900号公報
特許文献2:特開2002-85100号公報
特許文献3:特開2007-20555号公報
特許文献4:WO2007/100052
非特許文献1:J. Am. Chem. Soc., 130, 12787 (2008)
非特許文献2:触媒, 50, 471 (2008)
非特許文献3:Green Chem., 10, 1033 (2008)
特許文献1〜4及び非特許文献1〜3の全記載は、ここに特に開示として援用される。
特許文献1〜3に記載された先行技術は、以下の問題点を有する。
(1)加圧熱水によるセルロース分解におけるグルコース収率が低い。
(2)触媒(反応促進剤)の生成物からの分離が容易ではない。
それに対して、特許文献4に記載の方法は、触媒(反応促進剤)の生成物からの分離は容易である。しかし、この方法における反応は、セルロース加水分解によるグルコース生成とグルコース還元によるソルビトール生成の二段階から成り立っているが、後段の還元が速い。そのため、グルコースを高い収率で得ることはできなかった。
非特許文献1〜3に記載された表面をスルホン化した固体触媒は、硫酸代替として注目されているが、スルホ基(-SO3H)の溶出による触媒劣化が観測されることが多い。さらに上記の研究では、触媒調製の段階で硫酸を使用するため硫酸の処理が必要となる。
そこで本発明の目的は、セルロースからグルコースまたはグルコースを高い含有率で含む糖含有液を、生成物からの分離が容易な触媒を用いて、高いグルコース収率で製造できる方法を提供することにある。
本発明者らは、特許文献4に記載の反応の条件を詳細に検討し、その結果、担持金属触媒を用いてセルロース加水分解を行うことで、グルコースを主成分とする糖含有液を製造できることを見出して本発明を完成させた。
本発明は以下のとおりである。
[1]
固体担体に8〜11族の遷移金属が担持された触媒及び水の存在下、セルロースを加圧状態となる温度での加熱に付して、前記セルロースを加水分解してグルコースを得ることを含む、グルコースを主成分とする糖含有液の製造方法。
[2]
前記加熱の温度は110〜380℃の範囲である[1]に記載の製造方法。
[3]
前記加水分解の雰囲気は、空気、酸素、窒素、水素またはそれらの混合物である[1]に記載の製造方法。
[4]
前記加熱は、セルロースの加水分解による転化率が10〜100%の間であって、グルコースの選択率が30〜80%の間にある時点で終了する[1]に記載の製造方法。
[5]
前記加熱の終了後は、反応液を冷却する[4]に記載の製造方法。
[6]
前記反応液の冷却は、グルコースの選択率が30〜80%の間を維持する条件で行う[5]に記載の製造方法。
[7]
前記反応液の冷却は、200℃の温度まで1〜200℃/分の速度で行う[5]に記載の製造方法。
[8]
前記加熱または加熱及び冷却は、前記反応液が200℃以上の温度にある時間が15分以下になるように実施する[1]〜[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]
遷移金属が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、銀および金から成る群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]
遷移金属が、ルテニウム、白金、パラジウム及びロジウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[11]
固体担体は、少なくとも一部がアルミナ、シリカ−アルミナおよびゼオライトから成る群から選ばれる少なくとも1種である[1]〜[10]のいずれかに記載の触媒。
[12]
セルロースが結晶性を有する、または結晶性を低下させたセルロースである[1]〜[11]のいずれかに記載の製造方法。
[13]
加水分解後、反応混合物を固液分離に供し、グルコースを主成分とする糖含有液と少なくとも触媒および未反応セルロースを含む固体とを分離する[1]〜[12]のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、生成物からの分離が容易な触媒を用いて、高いグルコース収率で、セルロースからグルコースまたはグルコースを高い含有率で含む糖含有液を製造できる方法を提供することができる。
グルコースは、バイオエタノールや生分解性プラスチック原料の乳酸をはじめとする各種有用化合物の前駆体となるので、セルロースからグルコースまたはグルコースを高い含有率で含む糖含有液を製造できる本発明は、化学工業の分野で有用である。
原料としたセルロース及び4日間ボールミル処理した後のセルロースの結晶化度の粉末法X線回折法による測定結果を示す。 触媒反応に用いた高圧反応器(オーエムラボテック社のwebサイトより引用)の写真(左図)と説明図(右図)である。 反応温度の時間変化の結果を示す。 実験結果(8)における条件(i)〜(v)におけるマイクロリアクターの温度変化を示す。 実験結果(8)における条件(i)〜(v)で得られた生成物の組成を示す。
本発明は、グルコースを主成分とする糖含有液の製造方法に関し、固体担体に8〜11族の遷移金属が担持された触媒及び水の存在下、セルロースを加圧状態となる温度での加熱に付して、前記セルロースを加水分解してグルコースを得ることを含む。
本発明の製造方法では、セルロースを加水分解してグルコースを得る。この反応は以下のスキームに示すとおりである。
但し、セルロースを加水分解すると、グルコース以外にテトラマー以上のセルロース加水分解物、セロトリオース、セロビオース等が生成し、さらに、生成物であるグルコースがさらに反応して、ガラクトース、マンノース、フルクトース、レボグルコサン、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)、フルフラール等が生成する。本発明で得られる糖含有液は、これらのグルコースを含むセルロースの加水分解物および生成したグルコースからの副産物を含有するものであるが、主成分はグルコースである。主成分とは、含有する固形分(但し、反応生成物である)の中で含有質量が最も多いものをいう。
本発明者らは、上記条件におけるセルロースの加水分解を所定の条件で行うことで、例えば、セルロースの加水分解による転化率を40〜100%の範囲、好ましくは50〜100%の範囲、より好ましくは60〜100%の範囲、最も好ましくは70〜100%の範囲とし、グルコースの選択率を20〜80%の範囲、好ましくは25〜80%の範囲、より好ましくは30〜80%の範囲、最も好ましくは40〜100%の範囲とすることができる。
セルロースの加水分解は、セルロースを触媒と水の存在下、加圧状態となる温度で加熱して行う。加圧状態となる加熱の温度は110〜380℃の範囲であることが適当であり、セルロースの加水分解を迅速に行うという観点から、比較的高い温度であることが好ましく、例えば、170〜320℃、より好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜260℃、最も好ましくは220〜250℃の範囲とすることが適当である。本発明の製造方法におけるセルロースの加水分解は、通常はオートクレーブ等の密閉容器内で実施されるため、反応開始時は常圧であっても、上記温度で反応系が加熱されると加圧状態となる。
加水分解のための水の存在量は、少なくともセルロースを全量加水分解できる量とし、より好ましく、反応混合物の流動性や攪拌性等を考慮して、セルロースに対して、例えば、質量比5〜500の範囲とすることが出来る。
触媒の使用量は、触媒の活性、反応条件(例えば、温度、時間等)を考慮して、適宜決定できるが、例えば、セルロースに対して、質量比0.05〜5の範囲とすることが適当である。
前記加水分解の雰囲気は、空気であることができ、空気であることが工業上は好ましい。但し、空気に他の気体、例えば、酸素、窒素、水素またはそれらの混合物(空気以外)であってもよい。
前記加水分解のための加熱は、セルロースの加水分解による転化率が10〜100%の間であって、グルコースの選択率が30〜80%の間にある時点で終了することが、グルコースの収率を高めるために好ましい。セルロースの加水分解による転化率が10〜100%の間であって、グルコースの選択率が30〜80%の間にある時点は、加熱温度、使用する触媒の種類や量、水の量(セルロースに対する割合)、セルロースの種類、撹拌方法や条件等により変化するので、これらの条件を決めた上で、実験的に決定することができる。通常の条件では、加水分解反応のための加熱開始から、例えば、5〜60分の範囲であり、好ましくは5〜30分の範囲である。但し、この範囲に限定される意図ではない。セルロースの加水分解による転化率は、グルコースの選択率がある程度維持されている限りにおいて高いことが生産効率の観点からは適当であり、例えば、20〜100%が好ましく、30〜100%がより好ましい。
加熱の終了後は、反応液を冷却することが、グルコースの他の糖への転化を抑制して、グルコース収率を高めるという観点からは好ましい。反応液の冷却は、グルコースの選択率が30〜80%の間を維持する条件で行うことが、グルコース収率を高めるという観点からは好ましい。前記反応液の冷却は、グルコースの他の糖への転化が事実上生じない温度まで、できるだけ速く行うことが、グルコース収率を高めるという観点からは好ましく、例えば、1〜200℃/分の範囲の速度で行うことができ、好ましくは10〜100℃/分の範囲の速度である。グルコースの5−HMFなどの他の糖への転化が事実上生じない温度は、例えば、200℃以下である。従って、反応温度が200℃を超える場合、反応液の冷却は早く行うことが好ましく、200℃の温度まで10〜200℃/分の範囲、より好ましくは20〜200℃/分の範囲で行うことが特に好ましい。尚、200℃以下の温度になった後の冷却速度には特に制限はなく、例えば、150℃あるいは110℃までは、上記と同様の範囲の速度で冷却することもできる。
セルロースの加水分解にて生成したグルコースは、200℃以上の温度域において、5−HMF等へ転化する傾向がある。そこで、5−HMF等への転化を抑制してグルコースの選択率を高めるという観点から、加熱または加熱及び冷却の全期間において、200℃以上の温度範囲にある時間を15分以下にすることが好ましく、10分以下にすることがより好ましい。但し、前述のように、セルロースの加水分解を迅速に行うという観点から、反応温度は、比較的高い温度であることが好ましい(例えば、好ましくは170〜320℃、より好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは210〜260℃、最も好ましくは220〜250℃の範囲)ことから、本発明では、反応温度は比較的高い温度とし、かつその温度における滞留時間を比較的短くすることが適当である。
加水分解反応の形式は、バッチ式または連続式等のいずれでもよい。さらに、反応は、反応混合物を攪拌しながら行うことが好ましい。バッチ式または連続式のいずれにおいても、グルコースの選択率を高めるという観点からは、反応温度は比較的高い温度とし、かつその温度における滞留時間を比較的短くするように、操作条件を設定または選択することが好ましい。
本発明においては、このように、比較的高温で比較的短時間の加水分解反応により、グルコースを主成分とする糖含有液を、高いグルコース選択率で製造することができる。
[触媒]
本発明の製造方法で使用する触媒は、固体担体に8〜11族の遷移金属が担持された触媒である。
固体担体
触媒に用いられる固体担体は、少なくとも一部が多孔質材料からなるものであることが適当であり、多孔質材料の表面に遷移金属が担持されることが適当である。したがって、触媒に用いられる固体担体は、少なくとも遷移金属が担持される部分の表面が多孔質材料からなることが適当であり、固体担体全体が多孔質材料からなっていても、あるいは非多孔質材料からなる支持体の表面に多孔質材料が被覆されたものであっても良い。また、支持体が別の多孔質材料からなっていても良い。
触媒に用いられる固体担体は、少なくとも一部が、例えば、無機酸化物からなることができる。そして、無機酸化物は前記多孔質材料であることが好ましい。さらに、触媒に用いられる固体担体は、少なくとも一部が、酸性を示す固体担体であることが好ましく、酸性を示す固体担体は前記多孔質材料であることが好ましい。
固体担体の具体例としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、ジルコニア、活性炭を挙げることができる。
シリカのうち、アモルファスシリカとしては、和光純薬工業(株):ワコーゲル(C-100、C-100E、C-200、C-200E、C-300、C-300E、C-300HG、C-400HG、C-500HG、50C18、100C18、DX、FC-40、FC-40FM、G、LP-20、LP-40、LP-60、Q-12、Q-22、Q-23、Q-50、Q-63、S-1)、ワコーシル(C-200、C-300、25SIL、25C18、40SIL、40C18)、関東化学(株):シリカゲル(60、60N)、メルク(株):Silica gel (40、60、100)、シグマアルドリッチジャパン(株):Silica gel (03, 12, 15, 22, 40, 41, 62, 922, 923, high-purity grade, 70-230 mesh 60 Å, 70-270 mesh 60 Å, 130-270 mesh 60 Å, 200-400 mesh 60 Å), Silicon dioxide(particle size 0.5-10μm)、富士シリシア(株):CARiACT (Q, G, P)、Grace Davison社:Davisil (633, 634, 635, 636, 643, 644, 645, 646, 710)、デグサ社(日本アエロジル(株)):Aerosil (90, 130, 150, 200, 300, 380)、日揮化学(株):シリカ触媒(N601, N601A, N601T, N601R3, N601A3, N601T3, N602, N602A, N602T, N608R, N608A, N608T)、触媒学会:シリカ参照触媒(JRC-SIO-1、JRC-SIO-5、JRC-SIO-6、JRC-SIO-7、JRC-SIO-9A)、Riedel-de Haen社:Cabosil M-5等を挙げることができる。
メソポーラスシリカとしては、細孔径2-50 nm、表面積500-1500 m2 g-1のものでFSM-16(S. Inagaki, et al., J. Chem. Soc., Chem. Commun., 680 (1993)、MCM-41 (C. T. Kresge, et al., Nature, 359, 710 (1992); J. S. Beck, et al. J. Am. Chem. Soc., 114, 10834 (1992)).、SBA-15 (D. Zhao, et al., Science, 279, 548 (1998)、太陽化学(株):NPM(ナノポーラスマテリアル、孔径1-10nm)シグマアルドリッチジャパン(株):Silica (mesostructured, hexagonal framework, MCM-41 type)等を挙げることができる。
アルミナとしては、例えば、ガンマ-アルミナとしては、和光純薬工業(株):活性アルミナ、関東化学(株):酸化アルミニウム(α型、NanoTek、活性)、メルク(株):Alumina (90, 90(activated, acidic, activity I), 90(activated, basic, activity I), 90(activated, neutral, activity I))、シグマアルドリッチジャパン(株):Aluminum oxide (99.99%, -100 mesh 99.9%, powder <10 micron, nanopowder, nanopowder whiskers, -100 mesh 99%, pellets 3 mm, activated acidic Brockmann I, activated weakly acidic Brockmann I, activated basic Brockmann I, activated neutral Brockmann I, fused).、西尾工業(株):ガンマ-アルミナA-11、日揮化学(株):アルミナ触媒(N611N, N611N3, N612N, N613N)、触媒学会:アルミナ参照触媒(JRC-ALO-1, JRC-ALO-2, JRC-ALO-3, JRC-ALO-5, JRC-ALO-1A, JRC-ALO-5A, JRC-ALO-6, JRC-ALO-7, JRC-ALO-8)等を挙げることができる。
チタニアとしては、ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型であり、例えば和光純薬工業(株):酸化チタン(IV)(アモルファス、アナターゼ型、ルチル型、80nm)、関東化学(株):酸化チタン(IV)(ルチル型、アナターゼ型、3N、NanoTek)
シグマアルドリッチジャパン(株):Titanium(IV) oxide (99.999%, 99.99%, mesoporous 32 Å pore 99.95%, powder <5 micron 99.9+%, powder 99.9+%, -325 mesh 99+%、日本アエロジル(株):AEROXIDE TiO2 (NKT90, P25, PF2, T805)、堺化学工業(株):酸化チタン(SR-1, R-42, R-GL, R-GX, R-GX-2, R-45M, R-650, R-32, R-5N, R-5N-2, R-61N, R-62N, R-7E, R-3L, R-3L-SN, R-11P, R-21, R-25, R-310, D-918, A-110, A-150, ST-G, A-190, SA-1, SA-1L)、石原産業(株):超微粒子酸化チタン(TTO-51(A), TTO-51(C), TTO-55(A), TTO-55(B), TTO-55(C), TTO-55(D), TTO-S-1, TTO-S-2, TTO-S-3, MPT-136, TTO-V-3, TTO-V-4, TTO-F-2, TTO-F-6)、中性チタニアゾルTSK-5、触媒担体用酸化チタン(MC-50, MC-90, MC-150)、光触媒酸化チタン(ST-01, ST-21, ST-31, ST-41, ST-30L)、触媒学会:チタニア参照触媒(JRC-TIO-1, JRC-TIO-2, JRC-TIO-4, JRC-TIO-5, JRC-TIO-6, JRC-TIO-7, JRC-TIO-8, JRC-TIO-9, JRC-TIO-10, JRC-TIO-11, JRC-TIO-12, JRC-TIO-13)等を挙げることができる。
シリカ−アルミナとしては、シグマアルドリッチジャパン(株):Silica-alumina catalyst support grade 135、日揮化学(株):シリカ・アルミナ触媒(N631L, N631HN, N632L, N632HN, N633L, N633HN)、触媒学会:シリカ・アルミナ参照触媒(JRC-SAH-1、JRC-SAL-2)等を挙げることができる。
ゼオライトとしては、以下のものを例示できる。
ベータ型(構造コードBEA、以下同じ) 触媒学会:ゼオライト(ベータ)参照触媒 JRC-Z-B25(1)、JRC-Z-HB25(1)、JRC-HB150(1)、Zeolyst社:CP814N*, CP814E*, CP814C*, CP814Q*, CP811E-150, CP811C-300、東ソー(株):930NHA, 940NHA, 940HOA
Y型(FAU) シグマアルドリッチジャパン(株):Molecular sieves catalyst support, sodium Y Zeolite, powder; Molecular sieves catalyst support, ammonium Y Zeolite, powder、触媒学会:ゼオライト(Y型)参照触媒 JRC-Z-Y4.8、JRC-Z-Y5.6、JRC-Z-HY4.8(2)、JRC-Z-Y5.5、JRC-Z-Y5.3、JRC-Z-HY5.5、JRC-Z-HY5.3、UOP LLC社:Y-52(NaY), Y-64(NH4Y), Y-74(HY), Y-84(NH4Y), LZ-15(HY)、Zeolyst社:CBV100, CBV300, CBV400, CBV 600, CBV 712, CBV 720, CBV 740, CBV760, CBV780, CBV 901)、東ソー(株):320NAA, 320HOA, 331HSA, 341NHA, 350HUA, 360HUA, 385HUA, 390HUA、触媒化成工業(株):ZCP-50S, ZCP-50, ZCP-150, ZCP-300, ZCP-700, ZCP-1000, ZCP-2000, ZCE-50S, ZCE-50, ZCE-150〜2000, ZCB-50S, ZCB-2000。なお、本稿ではY型のゼオライトのうち脱アルミ処理を施したものをUSY、しないものを単にYと呼ぶことにする。従って、陽イオンがプロトンのものをそれぞれHUSY、HYと記す。Y型のうち脱アルミ処理をしたUSY型が好ましい。
ZSM-5型(MFI) 触媒学会:ゼオライト(ZSM-5)参照触媒 JRC-Z5-25H、JRC-Z5-70H、JRC-Z5-1000H、JRC-Z5-70NA、JRC-Z5-1000NA、JRC-Z5-90NA(1)、JRC-Z5-90H(1)、Zeolyst社:CBV2314, CBV3020E, CBV3024E, CBV5524G, CBV8014, CBV28014
モルデナイト型(MOR) 触媒学会:ゼオライト(モルデナイト)参照触媒 JRC-Z-M15(1), JRC-Z-M20(1), JRC-Z-HM20(5), JRC-Z-HM90(1)、Zeolyst社:CBV10A, CBV21A, CBV90A、東ソー(株):642NAA, 640HOA, 690HOA
活性炭としては
和光純薬工業(株):活性炭素(クロマトグラフ用、破砕状0.2〜1mm、破砕状2〜5mm、顆粒状、粉末、粉末酸洗浄、粉末アルカリ性、粉末中性、棒状)、関東化学(株):活性炭素(粒状、粉末)
シグマアルドリッチジャパン(株):Activated carbon granule 4-14 mesh
日本ノリット(株):PK, PKDA 10x30 MESH (MRK), ELORIT, AZO, DARCO, HYDRODARCO 3000/4000, DARCO LI, PETRODARCO, DARCO MRX, GAC, GAC PLUS, DARCO VAPURE, GCN, C GRAN, ROW/ROY, RO, ROX, RB/W, R, R.EXTRA, SORBONORIT, GF 40/45, CNR, ROZ, RBAA, RBHG, RZN, RGM, SX, SA, D 10, VETERINAIR, PN, ZN, SA-SW, W, GL, SAM, HB PLUS, A/B/C EUR/USP, CA, CN, CG, GB, CAP/CGP SUPER, S-51, S-51 A, S-51 HF, S-51 FF, DARCO GFP, HDB/HDC/HDR/HDW, GRO SAFE, DARCO INSUL, FM-1, DARCO TRS, DARCO FGD/FGL/Hg/Hg-LH, PAC 20/200
日本エンバイロケミカルズ(株):白鷺(A、C、DO-2、DO-5、DO-11、FAC-10、M、P、PHC、エレメントDC)、アルデナイト、カルボラフィン、カルボラフィンDC、ハニカムカーボ白鷺、モルシーボン、強力白鷺、精製白鷺、特製白鷺、X-7000/X7100、X7000-3/X-7100-3、LPM006、LPM007、粒状白鷺(APRC、C2c、C2x、DC、G2c、G2x、GAAx、GH2x、GHxUG、GM2x、GOC、GOHx、GOX、GS1x、GS2x、GS3x、GTx、GTsx、KL、LGK-100、LGK-400、LGK-700、LH2c、MAC、MAC-W、NCC、S2x、SRCX、TAC、WH2c/W2c、WH2x、WH5c/W5c、WHA、X2M(モルシーボン5A)、XRC、X7000H/X7100H、X7000H-3/X7100-3、LGK-700、DX7-3)
クラレケミカル(株):気相用粒状活性炭GG/GS/GA、気相用活性炭GW/GL/GLC/KW/GWC、粉末活性炭PW/PK/PDX
三菱化学カルゴン(株):ダイヤホープ(006, 006S, 007, 008, 008B, 008S, 106, 6D, 6MD, 6MW, 6W, S60, C, DX, MM, MZ, PX, S60S, S61, S70, S80, S80A, S80J, S80S, S81, ZGA4, ZGB4, ZGN4, ZGR3, ZGR4, ZS, ZX-4, ZX-7)、ダイヤソープ(F, G4-8, W 8-32, W 10-30, XCA-C, XCA-AS, ZGR4-C)、カルゴン(AG 40, AGR, APA, AP3-60, AP4-60, APC, ASC, BPL, BPL 4x10, CAL, CENTAUR 4x6, CENTAUR 8x30, CENTAUR 12x40, CENTAUR HSV, CPG 8x30, CPG 12x40, F-AG 5, Filtrasorb 300, Filtrasorb 400, GRC 20, GRC 20 12x40, GRC 22, HGR, HGR-LH, HGR-P, IVP 4x6, OL 20x50, OLC 20x50, PCB, PCB 4x10, RVG, SGL, STL 820, URC, WS 460, WS 465, WS 480, WS490, WSC 470)
味の素ファインテクノ(株):BA, BA-H, CL-H, CL-K, F-17, GS-A, GS-B, HF, HG, HG-S, HN, HP, SD, Y-180C, Y-4, Y-4S, Y-10S, Y-10SF, YF-4, YN-4, YP, ZN
(株)キャタラー: Aシリーズ、BC-9、BFGシリーズ、CTシリーズ、DSWシリーズ、FM-150、FW、FYシリーズ、GA、PGシリーズ 、WAシリーズ
キャボット社:BLACK PEARLSシリーズ、ELFTEXシリーズ、VULCANシリーズ、MOGULシリーズ、MONARCHシリーズ、EMPORERシリーズ、REGALシリーズ、UNITEDシリーズ、SPHERONシリーズ、STERLINGシリーズ、ショウブラックシリーズ
を挙げることができ、比表面積が800〜3000 m2g-1のものが好ましい。
固体担体の形状、形態は、特に制限されないが、例えば、粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状、ハニカム状、押出し型、リング状、円柱状、リブ押出し型、リブリング状を呈することができる。粉体状、粒子状、顆粒状、ペレット状の担体は、例えば、前記の多孔質材料、酸化物または酸性を呈する材料のみからなることができる。それに対してハニカム構造の担体は、非多孔質材料、例えば、コージエライト等からなる支持体の表面に前記の多孔質材料、酸化物または酸性を呈する材料が被覆されたものであっても良い。また、前述のように支持体は、別の多孔質材料からなっていても良い。
遷移金属が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、銀および金から成る群から選ばれる少なくとも1種である。これら遷移金属は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。遷移金属としては、触媒活性が高いという観点からは、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムの白金族金属から選ばれることが好ましく、セルロース転化率とグルコース選択率が高いという観点からルテニウム、白金、パラジウムおよびロジウムから選ばれることが特に好ましい。
遷移金属は、0.01〜0.95の分散度、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.3〜0.8の分散度で固体担体表面に担持されていることが適当である。分散度が低すぎると、反応速度は低下する傾向がある。遷移金属の分散度は、以下のように調整出来る。原料として用いる遷移金属化合物の量、触媒調製時に酸素焼成するときの温度条件(昇温速度、最高温度)および水素還元するときの温度条件(昇温速度、最高温度)で調整できる。
遷移金属の固体担体への担持量は、遷移金属の種類や分散度を考慮して適宜決定されるが、例えば、触媒の0.01〜50質量%、好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.01〜10質量%であることが適当である。
触媒は、通常の金属担持固体触媒の製造方法を参照して製造することが出来る。例えば、含浸法により次のように調製することができる。担体を150℃で1時間、真空乾燥する。次に水を加えて分散させ、ここに所定量の金属塩を含む水溶液を加えて15時間撹拌する。その後、減圧で水を留去して得られた固体を酸素気流下、400℃で2時間、焼成する(活性炭担体を使用する場合は、この焼成プロセスを除く)。さらに、水素気流下、400℃、2時間、還元して得られた固体を触媒とする(下のフローチャート図)。
上記本発明で用いられる触媒は、単独の金属を単独の担体に担持したものであることができるか、それに加えて、単独の担体に複数種類の金属を担持したものであることもできる。さらには、上記単独の金属を単独の担体に担持したもの、あるいは、単独の担体に複数種類の金属を担持したものを2種以上複合、例えば、混合したものを使用することもできる。2種以上を複合して使用することで、セルロース転化率とグルコース選択率をともに向上することができる場合があり、その結果、高いグルコース収率を得ることもできる場合がある。複合して使用する場合の金属および担体の組み合わせは、原料として使用されるセルロースの種類や加水分解反応の条件、さらには、組み合わせて使用する相手側の触媒の種類(金属および担体)等を考慮して適宜決定することができる。また、単独の担体に複数種類の金属を担持したものを触媒として用いる場合も同様である。
原料となるセルロースには特に制限はなく、市販されている粉末状のセルロースをそのまま用いることができる。セルロースは植物性のものであり、例えば、脱脂木粉を塩素処理で漂白して得られる化学パルプ(ホロセルロース)をアルカリ処理してヘミセルロースを除いた、水に不溶のセルロースである。
一般に、セルロースは、2本またはそれ以上のセルロース分子が水素結合により結合して、結晶性を示す。本発明では、そのような結晶性を有するセルロースを原料として使用することもできるが、そのような結晶性セルロースを、結晶性低下のための処理を施して結晶性を低下させたセルロースも用いることができる。結晶性を低下させたセルロースは、結晶性を部分的に低下させたものでも、完全にまたほぼ完全に消失したものであることもできる。結晶性低下処理の種類には特に制限はないが、上記水素結合を切断して、1本鎖のセルロース分子を少なくとも部分的に生成できる結晶性低下処理であることが好ましい。少なくとも部分的に1本鎖のセルロース分子を含むセルロースを原料とすることで、加水分解の効率を大幅に向上することができる。
原料となるセルロースの結晶性低下処理としては、ボールミル法などの、物理的にセルロース分子間の水素結合を切断して1本鎖のセルロース分子を得る方法(H. Zhao, J. H. Kwak, J. A. Franz, J. M. White, J. E. Holladay, Energy & Fuels, 20, 807 (2006)参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)や、リン酸処理などの、化学的にセルロース分子間の水素結合を切断して1本鎖のセルロースを得る方法(Y. -H. P. Zhang, J. Cui, L. R. Lynd, L. Kuang, Biomacromolecules, 7, 644 (2006) 参照、その全記載は、ここに特に開示として援用される)を挙げることができる。セルロースの結晶性低下処理では、セルロースの結晶性低下を完全に消失させるまでの処理でなくても、実施例1の表5に示すように、処理前のセルロースが有する結晶性を部分的にでも低下させたセルロースを原料とすることで、加水分解の効率を大幅に向上することができる。原料となるセルロースの結晶化度は、例えば、0〜50%の範囲、好ましくは5〜30%の範囲であることが加水分解の効率を向上するという観点からは適当である。但し、上記セルロースの結晶化度の範囲外にあるセルロースであっても本発明の製造方法で使用できることは勿論である。
さらに、原料となるセルロースの結晶性低下処理としては、例えば、加圧熱水処理(林信行、藤田修二、入江剛郎、坂本剛、柴田昌男、J. Jpn. Inst. Energy, 83, 805 (2004)、M. Sasaki, Z. Fang, Y. Fukushima, T. Adschiri, K. Arai, Ind. Eng. Chem. Res., 39, 2883 (2000)参照、それらの全記載は、ここに特に開示として援用される)を挙げることができる。
加水分解後、反応混合物を冷却した後に固液分離に供し、液相としてグルコースを主成分とする糖含有水溶液を回収し、固相として少なくとも触媒および未反応セルロースを含む固体を分離する。固液分離方法には、特に制限はなく、触媒の形状、形態等や未反応セルロースの存在量等を考慮して常法から適宜決定できる。例えば、濾過法、遠心分離法、沈降法等を利用できる。触媒および未反応セルロースを含む固体は、次の反応にそのまま供することが出来る。
触媒は、再使用に際して、特に活性する必要はない。しかし、例えば、通常の金属担持固体触媒の活性化を用いて、活性化した後に再使用することも出来る。触媒の活性化処理としては、触媒を水で洗浄して乾燥後、水素気流下、200〜500℃で1〜5時間加熱することにより、担持金属表面を還元状態に戻すとともに金属および担体上の残留有機物を熱分解して除き、使用することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
[参考例1]
触媒の調製
触媒担体としては、アモルファスシリカ(以下SiO2と表記、富士シリシア化学(株)キャリアクトQ-10)、メソポーラスシリカ(FSM-16、自作 (S. Inagaki, et al.、J. Chem. Soc., Chem. Commun.,680 (1993)))、ガンマ-アルミナ(γ-Al2O3、西尾工業(株)A-11、触媒学会参照触媒JRC-ALO-2)、チタニア(TiO2、Merck社)、ジルコニア(ZrO2、和光純薬工業(株))シリカ−アルミナ(SiO2-Al2O3、Sigma-Aldrich社grade 135)、HY(Zeolyst社CBV400(Si/Al原子比2.55)、CBV600(Si/Al原子比2.6))、HUSY(Zeolyst社CBV720(Si/Al比15)、740(同20)、760(同30)、780(同40)、HUSY(触媒化成工業(株)ZCP-2000、Si/Al比100)、ZSM-5(Zeolyst社CBV4024E、触媒学会参照触媒JRC-Z5-90(H))、H-β(触媒学会参照 触媒JRC-Z-B25(1))、HMOR(触媒学会参照 触媒JRC-Z-M15(1))、活性炭(武田薬品工業(株)(現、日本エンバイロケミカルズ(株))LPM007)を用いた。以下、HUSYを区別するためにSi/Al原子比を括弧内に入れてHUSY(40)のように記すことにする。ZSM-5は空気中550℃で8時間焼成してHZSM-5とした。担体は前処理として150℃で1時間、加熱排気を施してから触媒調製に用いた。金属原料としては、市販の塩化白金酸(H2PtCl6・xH2O)、塩化ルテニウム(RuCl3・xH2O)、塩化ヘキサアンミンルテニウム([Ru(NH3)6]Cl3)、塩化ロジウム(RhCl3・xH2O)、塩化パラジウム(PdCl2)、塩化イリジウム(IrCl3・xH2O)、塩化ニッケル(NiCl2・6H2O)を用いた。PdCl2は水に不溶性なので、少量の塩酸を加えてエバポレーターで真空蒸留し水溶性のH2PdCl4として用いた。その他の金属塩はそのまま使用した。水はイオン交換水を用いた。
触媒の調製方法としてPt/HUSY(40)の例を以下に示す。HUSY(40)粉末(200 mg)を真空ラインにより150℃で1時間加熱して乾燥した(真空度約10-3 Torr = 0.13 Pa)。室温に冷却後、水(20 ml)を加えて粉末を分散させた。これにH2PtCl6・xH2O(15 mg)の水溶液(5 ml)を加えて、室温で15時間撹拌した。その後、エバポレーターで水を蒸発させ、得られた粉末を真空ライン中、室温で2時間真空乾燥した。次に、粉末をガラスU字管に入れ、酸素ガス流通下(流量20 ml/min)、400℃で2時間加熱して焼成した(活性炭担体を使用する場合は、この焼成プロセスを除く)。室温に冷却後、窒素ガスを流して酸素を除いた後、水素ガス流通下(流量20 ml/min)、400℃で2時間加熱して還元した。室温に冷却後、窒素ガスを流して水素を除き粉末を回収した。触媒中の金属担持量はNi/SiO2-Al2O3では60質量%としたが、それ以外は2.5質量%とした。なお、HUSY(2.9)にRuを担持した触媒については[Ru(NH3)6]Cl3を原料としてイオン交換(IE)法により調製したRu/HUSY(2.9, NH3, IE)の他に、[Ru(NH3)6]Cl3の含浸担持・蒸発乾固(IMP)法によるRu/HUSY(2.9, NH3, IMP)、およびRuCl3・xH2Oの含浸担持・蒸発乾固法によるRu/HUSY(2.9, Cl, IMP)も調製して触媒活性を比較した。別途、HUSY(20)にRuCl3・xH2Oを含浸担持し蒸発乾固法で調製したRu/HUSY(20, Cl, IMP)も触媒として用いた。
パルス法による一酸化炭素吸着による分散度(CO/Pt、Quantachrome社Chembet-3000により測定)を表1に示す。
[実施例1]
実験方法
セルロースはメルク社の微粉末アビセルを用いた。セルロースのボールミル処理は、セラミックポットミルのなかに直径1 cmのジルコニア球1 kgとセルロース10 gを入れて、卓上ポットミル回転台により毎分60〜80回転で4日間(96時間)行った。原料としたセルロース及び4日間ボールミル処理した後のセルロースの結晶化度を粉末法X線回折法により測定し、図1に示す。原料としたセルロースの結晶化度は約80%であったのに対し、4日間ボールミル処理した後のセルロースの結晶化度約10%であった。
触媒調製は、参考例1に記載の方法と同様に、通常の含浸法で行った。金属前駆体としては、塩化ルテニウム(RuCl3・3H2O)と塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O)を用い、γ-アルミナ(Al2O3)担体(触媒学会参照触媒JRC-ALO-2)やゼオライトHUSY(Si/Al比40、Zeolyst社CBV780、以下HUSY(40)と記載)、シリカアルミナ(Sigma-Aldrich社grade 135)、HUSY(2.55)(Zeolyst社CBV400)、HUSY(2.6)(Zeolyst社CVB600)、HUSY(30)(Zeolyst社CBV760)、HUSY(100)(触媒化成工業(株)ZCP-2000)、H-β(触媒学会参照触媒JRC-Z-B25(1))、ZSM-5(触媒学会参照触媒JRC-Z5-90H(1))に担持した(金属担持量2.0 wt%)。Pt/Al2O3は触媒学会参照触媒JRC-PTAL-1(Pt担持量1.02 wt%、BET表面積176 m2 g-1、Pt分散度1.16)を用いた。
誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法でRu/γ-Al2O3の担持量は2.05 wt%となり、調製時の担持量と一致することが確認された。
触媒反応は、オーエムラボテック社製高圧マイクロリアクターMMJ-100(内容積100 ml、図2)に、空気下でセルロース(320 mg、C6H10O5単位で2.0 mmol)、所定量の触媒(金属原子数10〜20μg-atom、Ru/γ-Al2O3で50〜100 mg)および水(40 ml)を入れた。基質/触媒比(S/C)は、グルコース単位(C6H10O5)と全金属原子数の比で100〜200を標準とした(0.5〜1 mol%)。その後、60 rpmで撹拌し、プログラム温度調節器を用いて電気炉で室温から230℃まで約10〜20分で加熱した。230℃に到達後、すぐに電気炉をはずし、ヘアドライヤーで冷風をあてて室温に戻した。典型的な反応温度の時間変化を図3に示す。230℃から150℃までは平均で約20℃/分、230℃から110℃までは平均で約16℃/分の速度で冷却した。
冷却後、遠心分離とろ過で固体と液体を分離し、液体である生成物水溶液を高速液体クロマトグラフ(HPLC、島津LC-10ATVP、 カラムPhenomenex Rezex RPM Monosaccharide Pb++(8%) 移動相水0.6 ml/min 80℃、示差屈折率検出器)で分析した。この他に、次のHPLCカラムを装填したHPLCも併用して生成物の同定を行った(Shodex SUGAR SH1011 移動相水0.5 ml/min 50℃、東ソーTSK-GEL AMIDE-80 移動相 アセトニトリル:水(75:25)0.7 ml/min 25℃)。グルコースはHPLCで分取し、単離後に13C NMRおよび質量分析でも同定した。さらに、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS、水溶液そのものとトリメチルシリル処理後のものについて測定)でも同定した。分離後の固体は、110℃で24時間乾燥し質量を測定した。その質量から触媒の仕込質量を引いて、未反応のセルロース質量とした。
セルロースの転化率は次式から求めた:
セルロース転化率={(仕込セルロース質量−未反応セルロース質量)/仕込セルロース質量}×100(%)。
生成物の収率は、各生成物の炭素の総質量を仕込セルロースの炭素の総質量で割算して求めた(炭素基準の収率)。例えば、グルコース収率=(生成グルコース中の炭素総質量)/(仕込セルロース中の炭素総質量)×100(%)とした。
グルコース選択率は、グルコース収率をセルロース転化率で割算して求めた:
グルコース選択率=(グルコース収率)/(セルロース転化率)×100(%)
実験結果(1) セルロース分解反応における担持触媒の効果
担持触媒の効果を表2にまとめた。
Run5〜9ではRuまたはPt担持触媒および担体の効果について検討した。Run5でRu/γ-Al2O3触媒を用いると、セルロース転化率69%、グルコース収率27%、グルコース選択率39%となった。Run6のRu/HUSY(40)触媒ではセルロース転化率が51%になるものの、グルコース収率は11%と低かった。
Run5とRun6の触媒を混合した触媒をRun7で用いると、セルロース転化率89%、グルコース収率43%、グルコース選択率48%と著しく増大した。グルコース収率は、Ru/γ-Al2O3とRu/HUSY(40)をそれぞれ単独で用いたときのグルコース収率の和(32%)よりも高いので、触媒の混合により相乗効果を示すことが分かった。Run9でγ-Al2O3+Ru/HUSY(40)を用いると、グルコース収率はRun6よりも高くはなるが、16%止まりであった。高いグルコース収率を得るにはRu/γ-Al2O3とRu/HUSY(40)の混合触媒がきわめて有効であった。
その他の触媒系で反応を行った結果をRun10〜14に示す。Ru/SiO2-Al2O3を用いても促進効果は見られなかったが、Run13のPt/Al2O3(Pt 1.02 wt%)はRu/γ-Al2O3と同様高い活性を示す。そこで、Run14でPt/Al2O3+Ru/HUSY(40)混合触媒を用いると、セルロース転化率99%以上、グルコース収率47%、グルコース選択率47%となり、収率・選択率ともに高い値が得られた。
a)反応条件:セルロース 320mg(ボールミル処理4日)、水40 ml、230℃まで加熱後すぐに冷却
b)単独触媒の質量は50 mg、二種混合触媒の場合はそれぞれ50 mgずつを混合して使用、Ru担持量は2.0wt%
c)5-ヒドロキシメチルフルフラール
d)触媒量:Pt/Al2O3 192 mg、Pt担持量:1.0wt%
e)触媒量: Pt/Al2O3192 mg、Ru/HUSY(40) 50 mg
実験結果(2) セルロース分解反応における担持金属触媒の触媒量の効果
表3にRu/γ-Al2O3またはRu/HUSY(40)の単独触媒を用いて触媒量の効果を検討した結果を示す。Run15〜17でRu/γ-Al2O3で触媒量を増やすとグルコース収率が微増するが、Run5の触媒量50 mgのときを標準的な実験条件とした。このときのセルロース中のグルコース単位のモル数(S)と全金属原子数(C)の比は、S/C = 200(0.5 mol%)である。また、Run21〜22ではRu一定量としてwt%(質量%)を変化させたが、2 wt%のときにグルコース収率が高くなった。
a)反応条件は表2と同様
b)5-ヒドロキシメチルフルフラール
実験結果(3) Ru/γ-Al 2 O 3 +Ru/HUSY(40)触媒によるセルロース分解反応におけるガス雰囲気の効果
表4では、Ru/γ-Al2O3+Ru/HUSY(40)触媒を用いてガス雰囲気の効果を検討した。グルコース収率に大きなちがいはなく、常圧の空気下で反応を行うことが可能である。なお、水素加圧条件下での反応結果は後述する。
a)反応条件は表2と同様、触媒Ru/γ-Al2O3+Ru/HUSY(40)、Ru担持量2.0wt%で 50 mgずつを混合
b)5-ヒドロキシメチルフルフラール
実験結果(4) セルロース分解反応におけるセルロースボールミル処理の効果
表5では、Ru/γ-Al2O3+Ru/HUSY(40)触媒を用いてセルロースのボールミル処理の効果を検討した。ボールミル処理なしのセルロースの転化率は35%、グルコース収率は9%と低いが、ボールミル処理4日を施すと活性が大きく向上した。ボールミル処理により、セルロースの結晶構造の割合が減少してアモルファス構造の割合が増えることによると考えられる。
a)反応条件は表2と同様、触媒Ru/γ-Al2O3+Ru/HUSY(40)、Ru担持量2.0wt%で 50 mgずつを混合
b)5-ヒドロキシメチルフルフラール
実験結果(5) 水素加圧下セルロース分解反応における担持触媒の効果
水素0.9 MPa加圧下の実験も行ったので結果を表6にまとめる。Run番号は、実験結果(1)〜(4)とは異なり、新たにふり直した。尚、単独触媒の触媒量は空気下のときの2倍量を用いて反応を行った(比較するときは注意)。水素加圧下でも空気下とほぼ同様のセルロース転化率、グルコース収率、グルコース選択率となった。Ru/γ-Al2O3+Ru/HUSY(40)とPt/Al2O3+Ru/HUSY(40)のときに高いグルコース収率(43〜48%)が得られた。
a)反応条件:セルロース 320mg(ボールミル処理4日)、水40 ml、水素初圧0.9 MPa(室温)、230℃まで加熱後すぐに冷却
b)単独触媒の質量は100 mg、二種混合触媒の場合はそれぞれ50 mgずつを混合して使用、Ru担持量は2.0wt%
c)5-ヒドロキシメチルフルフラール
d)触媒量:Pt/Al2O3 383 mg、Pt担持量:1.0wt%
e)触媒量: Pt/Al2O3192 mg、Ru/γ-Al2O350 mg
f)触媒量: Pt/Al2O3192 mg、Ru/HUSY(40) 50 mg
実験結果(6) 水素加圧下セルロース分解反応での触媒量の効果
表7に水素加圧下での触媒量の効果を示す。触媒はRu/γ-Al2O3またはRu/HUSY(40)を単独で用いた。触媒量を50 mgから100 mgに増加させてもグルコース収率の大きな変化は見られなかった。
a)反応条件は表2と同様
b)5-ヒドロキシメチルフルフラール
実験結果(7) 水素加圧下セルロース分解反応における触媒混合比の効果
表8では、Ru/γ-Al2O3とRu/HUSY(40)の混合触媒における混合比の効果を検討した。60:40または50:50のときにグルコース収率と選択率が高いので、混合触媒を用いるときには上記の50:50のときのように、等量を混合することにした。簡便のために触媒を混合するときには1:1の混合比で実験することとした。
a)反応条件は表2と同様、触媒Ru/γ-Al2O3+Ru/HUSY(40)、Ru担持量2.0wt%で 合計100 mgを混合
b)5-ヒドロキシメチルフルフラール
実験結果(8) 加熱-冷却条件の影響試験
触媒として2wt% Ru/g-Al2O3 50 mgを使用し、セルロースとしてボールミル処理4日品(320 mg)を用い、触媒反応を、マイクロリアクターMMJ-100を230℃まで昇温した後に、(i)水冷、(ii)風冷、(iii)バンドヒーターなしの放冷、(iv)バンドヒーターありの放冷、または(v)230℃の10分間保持後に冷却して実施した。各条件におけるマイクロリアクター内の温度変化(図2のサーモウェル内の下端部の温度を測定)を図4に示す。さらに、各条件で得られた生成物の組成を表9、10及び図5に示す。図4中、テトラマー以上のセルロース加水分解物、セロトリオース、セロビオースをオリゴマーと分類し、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−HMF)、フルフラール、ガラクトース、マンノース、フルクトース、レボグルコサンを副生物と分類し、転化したセルロースのうちHPLCで分析できなかったもの(表9でセルロース転化率−総収率に相当する)をその他と分類した。
表9、10及び図5に示す結果から、230℃で10分間保持した場合のみ、副生物である5−HMFの割合が大幅に増え、加水分解にて製造したグルコースが分解していることが分かる。5−HMFへの分解は、200℃以上で起きやすいと予想され、上記各条件において200℃以上の温度になっている時間を「オートクレーブの温度設定」から求めると、(i)水冷(7分)、(ii)風冷(7分)、(iii)バンドヒーターなしの放冷(8分)、(iv)バンドヒーターありの放冷(8分)、(v)230℃の10分間保持後に冷却した場合(18分)となる。このことから、加水分解にて製造したグルコースの5−HMFへの分解を抑制して、グルコースの選択率を高めるという観点からは、200℃以上の温度範囲にある時間を15分以下にすることが好ましく、10分以下にすることがより好ましい。
本発明は、セルロース資源からのグルコースの製造技術分野において有用である。

Claims (11)

  1. 固体担体に8〜10族の遷移金属が担持された触媒及び水の存在下、セルロースを加圧状態となる200℃以上の温度での加熱に付して、前記セルロースを加水分解してグルコースを得ることを含み、
    前記加熱または加熱及び冷却は、前記反応液が200℃以上の温度にある時間が15分以下になるように実施し、かつ
    前記反応液の冷却は、200℃の温度まで1〜200℃/分の速度で行う、グルコースを主成分とする糖含有液の製造方法。
  2. 前記加熱の温度は200〜380℃の範囲である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記加水分解の雰囲気は、空気、酸素、窒素、水素またはそれらの混合物である請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記加熱は、セルロースの加水分解による転化率であるセルロース転化率が10〜100%の間であって、グルコースの選択率が30〜80%の間にある時点で終了する、
    但し、セルロース転化率={(仕込セルロース質量−未反応セルロース質量)/仕込セルロース質量}×100(%)であり、
    グルコース選択率=(グルコース収率(炭素基準))/(セルロース転化率)×100(%)である
    請求項1に記載の製造方法。
  5. 前記加熱の終了後は、反応液を冷却する請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記反応液の冷却は、グルコースの選択率が30〜80%の間を維持する条件で行う請求項5に記載の製造方法。
  7. 遷移金属が、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、ニッケル、コバルトおよび鉄から成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 遷移金属が、ルテニウム、白金、パラジウム及びロジウムから成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 固体担体は、少なくとも一部がアルミナ、シリカ−アルミナおよびゼオライトから成る群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の触媒。
  10. セルロースが結晶性を有する、または結晶性を低下させたセルロースである請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 加水分解後、反応混合物を固液分離に供し、グルコースを主成分とする糖含有液と少なくとも触媒および未反応セルロースを含む固体とを分離する請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
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