JP5641500B2 - 熱可塑性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は耐熱収縮性にすぐれたポリエステル樹脂成形体等の熱可塑性樹脂成形体の製造方法と該方法により得られる熱可塑性樹脂成形体に関する。
主鎖にカルボニル基を含む繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂、例えば、ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレートは、機械的特性、耐熱性、耐薬品性、耐ガスバリア性等に優れることから、繊維、フィルム等として用いられている。また、飽和ポリエステル樹脂をブロー成形した容器(ブローボトル)、特にいわゆるPETボトル(ポリエチレンテレフタレート製の容器)は、炭酸飲料、お茶、コーヒー等の飲料用、食品用、化粧品用等の容器として広く使用されている。
しかし、このようなポリエステル製容器に内容物を高温充填する場合や高温殺菌する場合には、容器本体、特に容器の底部が熱収縮、熱変形を起こしやすいという問題がある。このような高温充填時等の熱収縮、熱変形を抑える方法として、予め射出成形、圧縮成形等により作製した試験管状のプリフォーム(有底円筒状パリソン)内へ加熱圧力流体を送入して容器を作製する際、ガラス転移点温度よりも20℃以上高い温度で成形し、膨張と収縮を何度も繰り返す多段ブロー成形法が採用されている。また、ブロー成形後に比較的高温で熱固定(ヒートセット)することにより熱収縮を抑える方法も行われている。このようにして耐熱性を付与されたPETボトルは耐熱PETボトルと称される。しかし、上記の方法では、操作が煩雑である。また、容器底部の熱収縮の抑制効果は必ずしも十分とは言えない。非特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートのシートを100℃以上の高温下、高速で2倍以上に延伸すると、熱収縮がおきにくい結晶化が起こるとの報告がなされている。しかし、この方法では大規模な設備が必要であり、小ロット生産には向いていない。
ポリエステル製容器の耐熱性を向上させる別の方法として、耐熱性樹脂を共押出成形、多段射出成形等によりポリエステル樹脂と多層化してブロー成形することにより耐熱容器を得る方法がある。しかし、この方法では積層工程が煩雑で製造装置が高価になるという難点がある。さらに、ポリエステル樹脂成形体の熱収縮や熱変形を低減する方法として、ポリエチレンテレフタレートに、ポリブチレンテレフタレートやポリアリレート等をブレンドする方法が提案されている(特許文献1〜3)。しかし、これらの方法では、複数種のポリマーを製造する必要があり、工程数が増加するとともにコストが高くなるという欠点がある。また、ポリエステル樹脂以外の主鎖にカルボニル基を含む繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂からなる成形体においても同様の問題がある。
特開平5−178338号公報 特開平8−3430号公報 特開平10−176102号公報
Polymer Engineering and Science, February 1996, Vol. 36, No. 4
したがって、本発明の目的は、耐熱収縮性にすぐれたポリエステル樹脂成形体等の熱可塑性樹脂成形体を、複雑な装置や煩雑な操作を必要とせず、簡易に且つ安価に製造できる方法、及び耐熱収縮性にすぐれた熱可塑性樹脂成形体を提供することにある。
ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂は、ガラス転移点温度付近の延伸処理により剛性が著しく高くなるが、延伸により結晶化した部分を除いたアモルファス状態部分の影響で、例えば容器の場合、内容物充填温度において、熱収縮が生じる。そのため、延伸処理後の熱処理により、耐熱収縮性が付与されている。さらに、これらの特性は、一般に、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)の結晶化度の大きさで議論される。発明者等は、ポリエステル樹脂の機械特性が分子鎖末端でのポリエステル分子同士の結合特性とも関連するとの考えから、熱処理による結晶化と、延伸処理による結晶化の、それぞれの結合形式の違いに関する研究を進めている。
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂等の主鎖にカルボニル基を含む繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂からなる被処理物に、特定の化合物を含浸させた後に延伸処理を施すと、熱による収縮や変形を効果的に抑制でき、例えば、高温充填しても底部の収縮が極めて小さいブローボトル等を簡易に製造できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレートからなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させた後、延伸処理を施すことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供する。
前記アルデヒド化合物としては、炭素数1〜10のアルデヒド化合物が好ましい。
本発明は、また、上記熱可塑性樹脂成形体の製造方法により得られる熱可塑性樹脂成形体を提供する。
なお、本明細書には、上記の発明のほか、主鎖にカルボニル基を含む繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂からなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させた後、延伸処理を施すことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法についても記載する。
本発明によれば、耐熱収縮性にすぐれるポリエステル樹脂成形体等の熱可塑性樹脂成形体を、複雑な装置や煩雑な操作を必要とせず、簡易に且つ安価に製造することができる。このようなポリエステル樹脂成形体等の熱可塑性樹脂成形体は、例えば、高温充填可能な、お茶、コーヒー飲料用の容器(特に、耐熱PETボトル)等として有用である。
本発明の重要な特徴は、主鎖にカルボニル基を含む繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂からなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させた後、延伸処理を施すことにある。本発明における「延伸処理」には、プリフォームの延伸を伴うブロー成形、未延伸フィルム又はシートの延伸処理などが含まれる。
アルデヒド化合物を含浸させる対象としての熱可塑性樹脂からなる被処理物としては、重合によって得られたポリマーそのもの(塊状物、粉体等)、或いは該ポリマーを押出成形して得られるペレット等であってもよく、また、予め周知乃至慣用の成形法(例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形等)によりチューブ状(試験管状)、フィルム(又はシート)状等に成形された延伸処理前の成形品[ブロー成形に付されるプリフォーム(パリソン)、延伸前のフィルム又はシート等]であってもよい。熱可塑性樹脂からなる被処理物としては、予めチューブ状、フィルム(又はシート)状等に成形された延伸処理前の成形品であるのが好ましい。
熱可塑性樹脂としては主鎖にカルボニル基を含む繰り返し単位を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6−6、ポリアミド6−12等)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、これらの混合物などが挙げられる。これらのうち、特にポリエステル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の数平均分子量としては、成形が可能な程度であればよく、例えば、10000〜300000程度である。
ポリエステル樹脂としては、主鎖にエステル結合を有する熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合、ラクトンの開環重合、ヒドロキシカルボン酸の重縮合等により製造できる。
代表的なポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステル樹脂;ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル樹脂;これらの混合物などが挙げられる。これらのなかでも、特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエステル樹脂からなる被処理物にはポリエステル樹脂以外の熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。その場合、被処理物中の全熱可塑性樹脂に占めるポリエステル樹脂の割合は、50重量%以上が好ましく、特に80重量%以上(とりわけ、95重量%以上)であるのが好ましい。
なお、本発明では、ポリエチレンテレフタレートとは、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルを意味する。「主たる」とは、全繰り返し単位の85重量%以上を占めることを意味する。ポリエチレンナフタレート等についても同様である。
ポリエチレンテレフタレートを構成するテレフタル酸以外の多価カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸,ドデンカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートを構成するエチレングリコール以外の多価アルコールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ジエチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオールなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートには、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸の単位が含まれていてもよい。オキシ酸の単位の含有量は、ポリマーを構成する全繰り返し単位の30重量%以下が好ましく、10重量%以下が特に好ましい。
ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合、ポリエチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂を併用してもよい。その場合、ポリエチレンテレフタレートの全ポリエステル樹脂に占める割合は、50重量%以上が好ましく、特に80重量%以上(とりわけ、95重量%以上)であるのが好ましい。
ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる被処理物中には、充填材、滑剤、着色剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、その他の添加剤が添加されていてもよい。
本発明において、アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、オクタナール、デカナール、ドデカナール、テトラデカナール、ヘキサデカナール、オクタデカナール等の脂肪族アルデヒド;シクロヘキサンカルバルデヒド等の脂環式アルデヒド;ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、シンナムアルデヒド、ナフチルアルデヒド等の芳香族アルデヒドなどが挙げられる。アルデヒド化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
これらの中でも、炭素数1〜10のアルデヒド(特に、炭素数2〜6のアルデヒド)が好ましい。また、着色を抑えるためには、脂肪族アルデヒド、脂環式アルデヒドが好ましい。
なお、アルデヒド化合物として、上記アルデヒドの多量体、上記アルデヒドのホルミル基(−CHO)が保護基で保護されたアルデヒド保護体を用いることもできる。アルデヒドの多量体としては、例えば、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、パラアルデヒド、メタアルデヒドなどが挙げられる。アルデヒド保護体としては、例えば、アルデヒドのジメチルアセタール、アルデヒドのジエチルアセタール、アルデヒドのエチレングリコールとのアセタール、アルデヒドの1,3−プロパンジオールとのアセタール等のアセタール誘導体などが挙げられる。
ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させる方法としては、特に限定されず、被処理物の形状、大きさ等に応じて適宜選択できる。アルデヒド化合物の含浸法としては、例えば、前記被処理物を液状のアルデヒド化合物又はアルデヒド化合物を含む溶液中に浸漬する方法、前記被処理物を液状のアルデヒド化合物又はアルデヒド化合物を含む溶液と混合する方法などが挙げられる。
アルデヒド化合物を含む溶液を用いる場合、その溶媒としては、被処理物の物性を損なわず、且つアルデヒド化合物を溶解する溶媒であれば特に制限はない。該溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;酢酸エチル等のエステル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;水;これらの混合溶媒などの中から選択して使用される。アルデヒド化合物を含む溶液を用いる場合、アルデヒド化合物の濃度は、例えば、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。アルデヒド化合物の濃度を調整することにより、アルデヒド化合物の被処理物への浸透速度、浸透の程度をコントロールすることができる。
ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させる際の温度は、被処理物の種類や大きさ、アルデヒド化合物の種類等によっても異なるが、例えば、−10℃〜120℃、好ましくは−10℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃、特に好ましくは10〜40℃程度である。また、含浸時間についても、被処理物の種類や大きさ、アルデヒド化合物の種類等により異なり、被処理物へのアルデヒド化合物の浸透速度や製造効率等を考慮して適宜選択できる。含浸時間は、例えば0.1秒以上(好ましくは1秒以上)である。含浸時間の上限については特に制限はないが、生産性等の観点から1時間以内であるのが好ましく、5分以内(又は、1分以内)であってもよい。ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる被処理物のアルデヒド化合物の含浸量は、被処理物の種類によって異なるが、例えば、アルデヒド化合物含浸後の被処理物の0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上である。該アルデヒド化合物の含浸量の上限については特に制限はないが、例えば、5重量%以内(又は、3重量%以内)である。
ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂からなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させた後、被処理物の形状、形態に応じて、適宜、乾燥、拭き取り等により、被処理物に付着している余分のアルデヒド化合物を取り除いてもよい。
前記被処理物が予めチューブ状(試験管状)、フィルム(シート)状等に成形された延伸処理前の成形品[ブロー成形に付されるプリフォーム(パリソン)、延伸前のフィルム又はシート等]の場合には、アルデヒド化合物の含浸後、延伸処理に付される。また、前記被処理物が重合によって得られたポリマーそのもの(塊状物、粉体等)、或いは該ポリマーを押出成形して得られるペレット等の場合には、アルデヒド化合物の含浸後、まず、周知乃至慣用の成形法、例えば、射出成形、圧縮成形、押出成形等によりチューブ状(試験管状)、フィルム(シート)状等に成形し、次いで延伸処理に付される。
延伸処理は周知乃至慣用の方法により行われる。例えば、チューブ状(試験管状)に成形された成形品(パリソン)にアルデヒド化合物を含浸させた場合には、ブロー成形(好ましくは、二軸延伸ブロー成形)することにより延伸処理を施しつつブロー成形品(容器等)を得ることができる。ブロー成形の際の温度は、熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂等の場合、例えば80〜130℃、好ましくは100〜120℃程度の範囲から選択できる。ブロー成形品(ブローボトル)の延伸倍率としては、例えば、胴部の軸方向の延伸倍率は1.5倍以上(特に、2倍以上)であるのが好ましく、周方向の延伸倍率は2倍以上(特に、2.5倍以上)であるのが好ましい。
また、フィルム又はシート状に成形された成形品にアルデヒド化合物を含浸させた場合には、熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の場合、80〜100℃に予熱して縦方向に2.5〜4.0倍程度、次いで95〜120℃で横方向に3〜4.5倍程度に延伸することにより、フィルム(シート)状の熱可塑性樹脂製品を得ることができる。
本発明によれば、特定の熱可塑性樹脂からなる被処理物にアルデヒド化合物が含浸した状態で延伸処理を施すため、耐熱収縮性が大幅に改善される。したがって、延伸処理後の熱固定(ヒートセット)は必ずしも必要ないが、耐熱収縮性をより向上させるために、熱固定を行ってもよい。熱固定は、熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、例えば100〜235℃、好ましくは100〜160℃程度の温度で加熱することにより行うことができる。なお、本発明によれば、熱固定を行う場合であっても、従来と比較して、熱固定の工程を簡略化(短時間化、低温化など)することができる。したがって、大規模な設備を要することなく、従来の成形機をそのまま利用することができる。
こうして得られる熱可塑性樹脂成形体(ポリエステル樹脂成形体等)は、高い剛性を有するとともに、耐熱収縮性、耐熱変形性にすぐれており、お茶等の高温充填時、高温殺菌時にも、容器(特に、容器底部)の熱収縮、熱変形が生じにくい。従来、ポリエステル樹脂成形体からアセトアルデヒドやホルムアルデヒドを除去する方法が種々提案されているが、むしろアルデヒド化合物を積極的に含浸させた状態で延伸処理を施すことにより、耐熱収縮性というこれまでポリエステル樹脂成形体等の重要な課題とされてきた熱特性を大幅に改善できたことは驚くべきことである。この理由は必ずしも明らかではないが、アルデヒド化合物とポリマー分子との部分電荷間の静電的相互作用などによるものと推測される。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1(アセトアルデヒド)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人化成株式会社製の耐熱用ポリエチレンテレフタレートフィルム)から試験片(ダンベル片;JIS K6251−8参照)(断面の厚み0.5mm、幅5.0mm)を作製した。この試験片を、室温(25℃)で、アセトアルデヒド中に5分間浸漬した後、該試験片を取り出し、引張り試験機を用いて、100℃で長さ方向に2.1倍伸張させた(延伸倍率2.1倍;引張り速度30mm/分)。試験片を室温まで冷却した後、95℃の温水に10分間浸漬し、取り出した。熱収縮率を下記式により求めたところ、26%であった。試験後のフィルムは僅かに白濁していたが、クラックの発生もなく、きれいに伸張していた。なお、下記式におけるフィルムの長さはチャック間距離をいう。
熱収縮率(%)={1−(温水浸漬後のフィルムの長さ−最初のフィルムの長さ)/(伸張直後のフィルムの長さ−最初のフィルムの長さ)}×100
実施例2(アセトアルデヒド)
アセトアルデヒド中に1分間浸漬したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は18%であった。試験後のフィルムは僅かに白濁していたが、クラックの発生もなく、きれいに伸張していた。
実施例3(ベンズアルデヒド)
アセトアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は26%であった。なお、試験後のフィルムは黄色味を帯びていた。
実施例4(ベンズアルデヒド)
アセトアルデヒドの代わりにベンズアルデヒドを用い、浸漬時間を1分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は19%であった。なお、試験後のフィルムはアセトアルデヒドの場合よりも白濁していた。
比較例1(未処理)
アセトアルデヒド中に5分間浸漬する操作を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は88%であった。
比較例2(無水酢酸)
アセトアルデヒドの代わりに無水酢酸を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。無水酢酸浸漬時にフィルムにクラックが入ったため、試験を中止した。
比較例3(無水酢酸)
アセトアルデヒドの代わりに無水酢酸を用い、浸漬時間を1分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は82%であった。
比較例4(アセトン)
アセトアルデヒドの代わりにアセトンを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。フィルム伸張中にクラックが入ったため、試験を中止した。
比較例5(酢酸エチル)
アセトアルデヒドの代わりに酢酸エチルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。フィルム伸張中にクラックが入ったため、試験を中止した。なお、フィルムは僅かに白濁していた。
比較例6(酢酸エチル)
アセトアルデヒドの代わりに酢酸エチルを用い、浸漬時間を1分間としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は100%であった。
比較例7(エタノール)
アセトアルデヒドの代わりにエタノールを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は91%であった。フィルムの白濁は見られなかった。
比較例8(トルエン)
アセトアルデヒドの代わりにトルエンを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は88%であった。
比較例9(フィルム伸張後にアセトアルデヒドに浸漬)
先に100℃で長さ方向に2.1倍伸張させた後、アセトアルデヒド中に5分間浸漬したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。その結果、熱収縮率は88%であった。熱収縮率が改善されないのは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを2.1倍に伸張することにより、ポリエステルの分子鎖どうしがより接近してアルデヒド化合物が浸透できないためと考えられる。
以上の結果を表1にまとめた。なお、実施例1と2、実施例3と4で、それぞれ熱収縮率に若干の差があるが、誤差の範囲であり、含浸時間によらずその平均値程度の効果が期待できる。
Figure 0005641500

Claims (3)

  1. ポリエチレンテレフタレートからなる被処理物にアルデヒド化合物を含浸させた後、延伸処理を施すことを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  2. アルデヒド化合物が炭素数1〜10のアルデヒド化合物である請求項1記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法により得られる熱可塑性樹脂成形体。
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