以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る映像表示装置10と、映像表示装置10に表示される映像を視聴する際に用いる映像視聴用眼鏡20とを備えた映像表示システムを示す図である。図2は、映像表示装置10に表示される映像の例を示す図である。本実施の形態では、映像表示装置10に表示される映像を、視聴者が映像視聴用眼鏡20を通して見ることで、立体映像を視聴できるケースを例として説明する。
映像表示装置10は、図1に示されるように、表示パネル(表示部)11と、同期信号送信部12とを備える。表示パネル11は、立体映像(3D映像)等の所定の処理を施された映像を表示する。同期信号送信部12は、映像表示装置10の表示パネル11に出力される映像と同期する信号(同期信号)を、映像視聴用眼鏡20に送信する。
映像視聴用眼鏡20は、図1に示されるように、同期信号受信部21と、左眼用光学フィルタ22Lと、右眼用光学フィルタ22R(これらを総称して「光学フィルタ22」という)とを備える。同期信号受信部21は、同期信号送信部12からの同期信号を受信する。光学フィルタ22は、同期信号受信部21で受信した同期信号に基づいて、左右の眼へ入射する光に所定の光学処理を施す。
本実施の形態で説明する映像表示システムでは、例えば、映像表示装置10の表示パネル11に、図2に示されるような互いに視差を有する左眼用画像13Lと右眼用画像13Rとを、120Hz等の周期で交互に表示する。映像視聴用眼鏡20は、映像表示装置10の表示パネル11に表示される映像と同期して、映像視聴用眼鏡20の左眼に入射する光を左眼用光学フィルタ22Lで、右眼に入射する光を右眼用光学フィルタ22Rでそれぞれ制御する。
具体的には、映像表示装置10からの同期信号に同期して、左眼用光学フィルタ22Lと右眼用光学フィルタ22Rとを開閉する。つまり、映像表示装置10の表示パネル11に左眼用画像13Lが表示されている際には、左眼用光学フィルタ22Lを開状態(光を通過させる状態)とし、右眼用光学フィルタ22Rを閉状態(光を遮断する状態)とする。同様に、表示パネル11に右眼用画像13Rが表示されている際には、左眼用光学フィルタ22Lを閉状態とし、右眼用光学フィルタ22Rを開状態とする。
映像表示装置10に表示される左眼用画像13L及び右眼用画像13Rは、視差の分だけ異なる内容である。視聴者は、左眼と右眼とで視聴する映像から視差を擬似的に知覚し、映像表示装置10に表示される映像が立体的な映像であると感じる。
なお、上記の説明では、左眼用画像13Lと右眼用画像13Rとの表示周期を120Hzの場合を例として説明したが、表示周期はこれに限定されるものではない。他の周期として、例えば96Hz、100Hz、144Hzなど他の周期を用いるものであってもよい。これらの周期は、表示する映像の種類等に応じて変えてもよい。
図3は、PDP(Plasma Display Panel)のようなサブフィールド駆動で映像を表示する場合の映像表示装置10の表示動作例を示したものである。
映像表示装置10は、左眼用画像13L(「左眼用フレーム」とも言う)と右眼用画像13R(「右眼用フレーム」とも言う)とを時間的に交互に表示パネル11に表示する。この場合、各フレーム(プログレッシブ方式の場合は「ピクチャ」、インターレース方式の場合は「フィールド」ともいう)は複数のサブフィールドを組み合わせて表示パネル11に表示される。図3の例では、左眼用フレームが複数のサブフィールド14Lを組み合わせて表示されている。
サブフィールドを点灯させる制御(映像を表示させる制御)が開始されたとしても、実際に画素の蛍光体が印加電圧により放電現象を生じ、画素の蛍光体が発光するまでには時間的な遅延がある。この遅延は蛍光体の応答特性や、その他の原因に依存する。そのため、サブフィールド14Lに示すような点灯制御がなされても、実際の発光状況は破線15のように、サブフィールド14Lの点灯制御から遅れる。消光の際についても、同様な蛍光体の特性に依存して、駆動をオフした後も、発光量に応じて指数関数的な特性の残光時間がある。図3において、サブフィールド14Lの点灯制御が終了し、左眼用フレームの表示時間が終了しても、一点鎖線16のように、左眼用フレームの残光状態が続く場合がある。
その結果、次の右眼用フレームの表示時間において、左眼用フレームの残光が残ることとなる。視聴者がこの映像を見ると、右眼用フレームに左眼用フレームの映像が残り、ゴースト現象のように二重像となって見えることになる。この現象がクロストークと称されるものである。
なお、上記の説明では、表示方法の駆動方法としてPDPにおけるサブフィールド方式の場合を例として説明したが、本発明はこれに限定するものではない。液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の他の映像表示形式の場合においても、残光成分がクロストークとなって生じるケースであれば、いずれの表示方式であってもよい。
図4は、本実施の形態で説明する映像表示装置10のハードウェア構成を示した図である。映像表示装置10は、チューナ100、外部入力端子110、CPU(Central Processing Unit)120、RAM(Random Access Memory)130、ROM(Read Only Memory)140、映像/音声復号IC(Integrated Circuit)150、映像信号処理IC160、赤外線発光素子170、バス180、及び表示パネル11を備える。
チューナ100は、アンテナ(図示せず)で受信した放送波を復調する。チューナ100は、復調した放送データ(映像データ)を映像/音声復号IC150へ出力する。
外部入力端子110は、当該装置に接続された外部装置から、有線又は無線通信等により映像データの入力を受け付けるインタフェースとなる。外部入力端子110は、外部装置から取得した映像データを映像/音声復号IC150へ出力する。なお、外部装置の具体例は特に限定されないが、例えば、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤやBD(Blu−ray Disc)プレーヤ等の光ディスク再生装置の他、HDD(Hard Disk Drive)、磁気テープ、半導体メモリ等のあらゆる記憶媒体から映像データを読み出して出力する装置が該当する。
本実施の形態では、上記のチューナ100、及び外部入力端子110から映像データを取得する例を説明しているが、これに限定されるものではない。上記以外の方法で映像データが供給されるものであってもよい。
CPU120は、映像表示装置10の全体を制御する。CPU120は、その制御用のプログラムをROM140から読み出し、プログラムを実行する際に必要な各種の変数等をRAM130に一時的に記録等して、プログラムを実行する。CPU120は、他の主要な機能ブロックとバス180で接続されており、これを介して他の機能ブロックを制御する。
RAM130は、揮発性の情報記録部である。代表的なものにDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリがある。RAM130は、CPU120がプログラムを実行する際の各種の変数等の記録場所として、また、映像/音声復号IC150が映像データを復号する際の一時的なデータ格納場所等として使用される。
ROM140は、不揮発性の情報記録部である。代表的なものにマスクROMやフラッシュメモリ等の半導体メモリがある。ROM140は、CPU120が実行するプログラムを記録したり、映像表示装置10の動作に関わる各種の設定値を記録したりする場所等として使用可能である。なお、フラッシュメモリのように、不揮発性でありながら書き換え可能な半導体メモリを用いた場合は、上記のRAM130をフラッシュメモリで置き換えることも可能である。
映像/音声復号IC150は、上記に説明したチューナ100や外部入力端子110から入力される映像データ及び音声データ等を復号する。具体的には、映像/音声復号IC150は、所定の方式で記録等されているこれらのデータを、以降の各機能ブロックが取り扱える形式に復号(変換)する。なお、所定の方式とは、例えば、MPEG(Moving Picture Experts Group)−2、MPEG−4、H.264、JPEG(Joint Photographics Experts Group)等が代表的なものとしてある。
映像信号処理IC160は、映像/音声復号IC150で復号された映像データを校正する各画像に所定の信号処理を施すものである。ここでの信号処理とは、例えば、表示パネル11に表示した際に発色を美しくさせるための色変換処理、映像の動き(フレーム毎の変化)をより細かく表示するために、復号された映像データのフレームをより高速なフレームレートに変換するフレームレート変換処理、立体映像を視聴する際に用いる同期信号を生成する同期信号生成処理、及び表示パネル11の表示特性等に応じて表示する映像信号を修正する画質変換処理等がある。なお、映像信号処理IC160の処理の詳細については、後述する。
表示パネル11は、映像信号処理IC160で処理された映像信号を表示する。表示パネル11の具体的な表示方式は特に限定されないが、例えば、PDP、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathod Ray Tube)、SED(Surface−conduction Electron−emitter Display)等を採用することができる。
赤外線発光素子170は、映像信号処理IC160で生成される同期信号を映像視聴用眼鏡20へ出力する。本実施の形態では、同期信号の出力形式として、赤外線通信の例を示したが、これに限定するものではない。これ以外にも、無線通信、超音波通信等他の方式を用いて同期信号を映像視聴用眼鏡20へ送信するものであってもよい。
バス180は、上記で説明した各構成要素等を接続する役割を持つ。これにより、CPU120は、各機能ブロックを統合的に制御して、映像表示装置10を好適に制御することが可能となる。
図4に示される映像信号処理IC160で実行される映像信号処理について、図5に示される機能ブロック図を用いて説明する。映像/音声復号IC150は、左眼用フレーム及び右眼用フレームをそれぞれ復号する。映像/音声復号IC150によって復号された左眼用フレーム及び右眼用フレームは、映像信号処理IC160へ出力される。
映像信号処理IC160は、フレームレート変換部161、CT(Cross Talk:クロストーク)処理部162、同期信号送信部163、及び画質変換部164を備える。
フレームレート変換部161は、映像/音声復号IC150で復号された左眼用フレーム及び右眼用フレームのフレームレートを倍増するフレームレート変換処理を実行する。図6は、フレームレート変換処理の一例を示す。
フレームレート変換処理は、入力される右眼用フレームの信号(図6(A))と左眼用フレームの信号(図6(B))のフレームレートを倍増し、論理的に元のフレームレートの時間内に左右の両フレームが収まるように信号処理を行う。より具体的には、フレームを構成するデータを処理するための処理時間を2倍に高速化することで、この信号処理が可能となる。この処理時間を2倍に高速化するためには、映像信号処理IC160の当該部分の動作クロックを2倍の速度で処理するか、又は、映像信号処理IC160内部の処理を並列化する等の対策をする必要がある。
これにより、元のフレームレートの時間内に左右両方の映像が納まる映像信号を形成することが可能となる。なお、フレームレート変換部161から出力される映像信号は、図6(C)に示すように、一つの信号に左眼用フレームと右眼用フレームとが交互に収められている形式であってもよいし、フレームレート(クロック信号)が倍増され、入力と同じように左右の両映像が独立して出力される形式であってもよい。
CT処理部162は、左眼用フレームと右眼用フレームとを表示パネル11に交互に表示することによって発生する残光(クロストーク)を抑圧させるための信号処理を施す。CT処理部162の詳細については、後述する。
同期信号送信部163は、同期信号を生成する同期信号生成処理を実行する。具体的には、フレームレート変換部161で生成されたフレームレートに基づいて、左右の映像フレームと同期した同期信号を、赤外線発光素子170を通じて映像視聴用眼鏡20へ送信する。映像視聴用眼鏡20は、この同期信号に基づいて左眼用光学フィルタ22L及び右眼用光学フィルタ22Rを制御し、視聴者へ3D映像等を視聴させる。
同期信号の伝送には、赤外線等の光学通信、無線リモコン(ZigBeeなど)やBluetooth等の無線通信、及びケーブルを用いた有線通信等のあらゆる伝送方式を用いることができる。つまり、映像表示装置10と映像視聴用眼鏡20との間で同期情報を伝送できるものであれば、いずれの方法でもよい。なお本実施の形態では、上述のとおり赤外線による伝送を用いる場合を例として説明する。
画質変換部164は、表示パネル11の表示特性等に応じて表示する映像信号を修正等する画質変換処理を実行する。例えば、映像表示装置10がAPL(Average Picture Level)に基づいて表示映像の輝度を変更する場合、また入力信号の色域を表示デバイス色域にあわせるための色域変換を行う場合、入力された映像を表示パネル11の表示特性に応じて色情報の微調整を行う場合等、各種の映像信号処理を行う。
上記のように映像信号処理IC160の内部では、復号された映像信号に各種の処理を施し、変更された映像信号を表示パネル11へ出力する。これにより、より好ましい映像を表示することを可能とする。
図6に示されるCT処理部162の構成及び動作の詳細を、以下に説明する。
(実施の形態1)
図7は、実施の形態1に係るCT処理部(映像信号処理装置)200の機能ブロック図である。実施の形態1に係るCT処理部200は、図7に示されるように、CTキャンセル部210と、彩度補正処理部220とを備える。このCT処理部200は、隣接する2つの画像の間に生じるクロストークを抑圧する処理を実行する。
CTキャンセル部210には、時間的に隣接する入力左眼用フレームと入力右眼用フレームとが交互に入力される。なお、入力左眼用フレームを構成する各画素は、それぞれ入力赤色成分(Lch入力R)の信号レベル、入力緑色成分(Lch入力G)の信号レベル、及び入力青色成分(Lch入力B)の信号レベルによって表現される。同様に、入力右眼用フレームを構成する各画素は、それぞれ入力赤色成分(Rch入力R)の信号レベル、入力緑色成分(Rch入力G)の信号レベル、及び入力青色成分(Rch入力B)の信号レベルによって表現される。
なお、以降の説明においては、各画素を、赤色成分、緑色成分、及び青色成分で表現する例を示すが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記の3成分のいずれかに代えて、またはこれらに加えて、黄色成分等の他の色成分を含めてもよい。
CTキャンセル部210は、処理対象の画像とその直前の画像からクロストーク成分を算出し、このクロストーク成分を用いて処理対象の画像を補正する処理を実行する。ここでクロストーク成分とは、処理対象の画像が表示されるタイミングにおける直前の画像の残留する信号レベルを指す。
具体的には、CTキャンセル部210は、入力左眼用フレームと当該入力左眼用フレームの直前の入力右眼用フレームとを取得して、入力右眼用フレームの各画素のRch入力R、Rch入力G、及びRch入力B毎にクロストーク成分を算出する。そして、入力左眼用フレームの対応する画素の各信号レベルからクロストーク成分を減算することによって、補正後赤色成分(Lch補正R)、補正後緑色成分(Lch補正G)、及び補正後青色成分(Lch補正B)で表現される補正後左眼用フレームを生成する。同様に、入力右眼用フレームと直前の入力左眼用フレームとから、補正後赤色成分(Rch補正R)、補正後緑色成分(Rch補正G)、及び補正後青色成分(Rch補正B)で表現される補正後右眼用フレームを生成する。
彩度補正処理部220は、CTキャンセル部210で補正された左右の画像それぞれの彩度を補正する処理を実行する。なお、補正後左眼用フレームに対する処理はLch処理部220Lで、補正後右眼用フレームに対する処理はRch処理部220Rでそれぞれ実行される。
具体的には、Lch処理部220Lは、Lch補正R、Lch補正G、及びLch補正Bのうち、信号レベルが負の値で、且つ絶対値が最も大きい最大値成分を抽出する。そして、最大値成分の信号レベルを0にすると共に、他の2つの成分それぞれの信号レベルに最大値成分の信号レベルの絶対値を用いて算出される加算値を加算する。上記処理によって、Lch処理部220Lから出力赤色成分(Lch出力R)、出力緑色成分(Lch出力G)、及び出力青色成分(Lch出力B)で表現される出力左眼用フレームが生成され、出力される。
同様に、Rch処理部220Rは、Rch補正R、Rch補正G、及びRch補正Bのうち、信号レベルが負の値で、且つ絶対値が最も大きい最大値成分を抽出する。そして、最大値成分の信号レベルを0にすると共に、他の2つの成分それぞれの信号レベルに最大値成分の信号レベルの絶対値を用いて算出される加算値を加算する。上記処理によって、Rch処理部220Rから出力赤色成分(Rch出力R)、出力緑色成分(Rch出力G)、及び出力青色成分(Rch出力B)で表現される出力右眼用フレームが生成され、出力される。
図8は、CTキャンセル部210の詳細な機能ブロック図である。CTキャンセル部210は、図8に示されるように、左眼用画像適応制御部211、右眼用画像適応制御部214、変換部212、215、及び合成部213、216を備える。
左眼用画像適応制御部211は、入力左眼用フレーム及びその直前の入力右眼用フレームから、当該入力右眼用フレームに乗じる係数K1を算出する。右眼用画像適応制御部214は、左眼用画像適応制御部211とは反対に、入力右眼用フレーム及びその直前の入力左眼用フレームから、当該入力左眼用フレームに乗じる係数K2を算出する。なお、係数K1、K2の決定方法については後述する。
変換部212は、左眼用画像適応制御部211で決定された係数K1に基づいて、入力右眼用フレームに所定の変換処理を行う。例えば、係数K1が、入力右眼用フレームの残光率(直後の入力左眼用フレームが表示される際の残光の割合)である場合、ここでの所定の変換処理とは、入力右眼用フレームに係数K1を乗じるものとなる。
合成部213は、入力左眼用フレームと、変換部212で変換された入力右眼用フレームとを合成する。合成の一例として、例えば、入力左眼用フレームの信号レベルから、変換部212で変換された入力右眼用フレームの信号レベルを減算すればよい。合成部213は、合成した信号を補正後左眼用フレームとして出力する。この補正後左眼用フレームは、直前の出力右眼用フレームが発生させる残光量を相殺したものとなっている。
なお、上記の各処理は、画像を構成する各画素の赤、緑、青の各色成分毎に実行される。つまり、左眼用画像適応制御部211では、赤色成分の係数K1R、緑色成分の係数K1G、及び青色成分の係数K1Bが算出される。変換部212では、入力右眼用フレームを構成する各画素のRch入力Rに係数K1Rを、Rch入力Gに係数K1Gを、Rch入力Bに係数K1Bをそれぞれ乗算する。そして、合成部213では、入力左眼用フレームを構成する各画素のLch入力R、Lch入力G、及びLch入力Bの信号レベルから、変換部212から出力された入力右眼用フレームの対応する画素のRch入力R、Rch入力G、及びRch入力Bの信号レベルを減算することによって、補正後左眼用フレームが生成される。
なお、入力右眼用フレームに対するクロストークキャンセルの処理は、右眼用画像適応制御部214、変換部215、及び合成部216により、入力左眼用フレームの場合と同様に(対称に)行われる。
図9は、左眼用画像適応制御部211の構成の一例を示す図である。左眼用画像適応制御部211は、図9に示されるように、信号比較部217と、バッファ218と、CT(Cross Talk)係数決定部219とを備える。
信号比較部217は、入力左眼用フレームと直前の入力右眼用フレームとの信号レベル比を算出する。信号レベル比には、例えば、クロストークの影響を受ける被CT映像信号(入力左眼用フレーム)からクロストークの影響を及ぼすCT映像信号(直前の入力右眼用フレーム)を差し引いた差分映像信号を利用することができる。算出された信号レベル比は、CT係数決定部219へ出力される。バッファ218は、直前に表示される入力右眼用フレームを一時保持する遅延器として機能する。
CT係数決定部219は、信号比較部217で算出された信号レベル比に基づいて入力右眼用フレームに乗ずる係数K1を算出する。係数K1の決定方法は特に限定されないが、例えば、信号レベル比が大きくなる程、係数K1の値が小さくなるようにしてもよい。
図10は、図7に示される彩度補正処理部220のLch処理部220Lの詳細な機能ブロック図である。Lch処理部220Lは、図10に示されるように、彩度補正制御部221Lと、3つの合成部222L、223L、224Lとを備える。なお、Rch処理部220Rの構成はLch処理部220Lと共通するので、説明は省略する。
彩度補正制御部221Lは、入力されるLch補正R、Lch補正G、及びLch補正Bのうち、信号レベルが負の値で、且つ絶対値が最も大きい最大値成分を抽出する。例えば、Lch補正Rが最大値成分であった場合、合成部222Lは、Lch補正Rの信号レベルを0にしてLch出力Rとして出力する。合成部223Lは、Lch補正Gの信号レベルにLch補正Rの信号レベルの絶対値を用いて算出される加算値を加算してLch出力Gとして出力する。同様に、合成部224Lは、Lch補正Bの信号レベルに加算値を加算してLch出力Bとして出力する。
次に、図11〜図13を参照して、上記構成のCT処理部200の動作を説明する。なお、図11は、CT処理部200に入力される入力右眼用フレーム及び入力左眼用フレームの発光量(輝度レベル)を示すグラフである。図12は、CT処理部200での処理の過程における赤、緑、青の各色成分の信号レベルを示す図である。図13は、CT処理部200の動作を示すフローチャートである。
まず、CT処理部200には、図11に示されるように、入力右眼用フレームと入力左眼用フレームとが交互に入力される。以降の説明では、入力右眼用フレームNo.1をCT映像信号とし、入力左眼用フレームNo.1を被CT映像信号とした場合の処理を説明する。
例えば、図12に示されるように、入力右眼用フレームNo.1を構成する一の画素のRch入力Rの信号レベルが40、Rch入力Gの信号レベルが60、Rch入力Bの信号レベルが20であったとする。一方、入力左眼用フレームNo.1の対応する画素のLch入力Rの信号レベルが10、Lch入力Gの信号レベルが10、Lch入力Bの信号レベルが20であったとする。
上記の場合において、CT処理部200のCTキャンセル部210は、入力左眼用フレームNo.1から入力右眼用フレームNo.1のクロストーク成分を減算して、補正後左眼用フレームを算出する(S11)。例えば、CT係数決定部219で決定される係数K1が0.5(赤、緑、青の各色成分で同値)であったとすると、赤色成分のクロストーク成分は20、緑色成分のクロストーク成分は30、青色成分のクロストーク成分は10となる。これを入力左眼用フレームNo.1の各色成分の信号レベルから減算すると、図12に示されるように、Lch補正Rの信号レベルが−10、Lch補正Gの信号レベルが−20、Lch補正Bの信号レベルが10となる。
補正後左眼用フレームにおいて、信号レベルが正の値となる場合(Lch補正B)とは、表示パネル11に表示される左眼用フレームの輝度レベル(発光量)が直前の右眼用フレームのクロストーク成分を上回っている状態である。このような場合、実際の輝度レベル(青色成分=20)とクロストーク成分(10)との差分に相当する輝度レベル(10)のみを、表示パネル11に表示(発光)すればよい。
一方、補正後左眼用フレームにおいて、信号レベルが負の値となる場合(Lch補正R、Lch補正G)とは、表示パネル11に表示される左眼用フレームの輝度レベルが直前の右眼用フレームのクロストーク成分を下回っている状態である。このような場合、表示パネル11を発光させなくとも、本来表示すべき輝度レベル(赤色成分=10、緑色成分=10)を上回る輝度レベル(赤色成分=20、緑色成分=30)が表示パネル11に表示されることになる。ここで、本来表示すべき輝度レベルと実際に表示される信号レベルとの差分値(赤色成分=10、緑色成分=20)を「残留クロストーク量」という。
この残留クロストーク量が大きくなると、表示パネル11に実際に表示される左眼用フレームの色相と、左眼用フレームの本来の色相との差が大きくなってしまう。そこで、彩度補正制御部221Lは、以下に説明するように、この残留クロストークに伴う色相の誤差を抑圧するように処理を実行する。
次に、CT処理部200の彩度補正制御部221Lは、CTキャンセル部210から出力されたLch補正R、Lch補正G、及びLch補正Bのうち、信号レベルがマイナスの成分が存在するか否かを確認する(S12)。信号レベルがマイナスの成分が存在しなければ(S12でNo)、Lch処理部220Lは、Lch補正R、Lch補正G、及びLch補正Bの信号レベルをそのままLch出力R、Lch出力G、及びLch出力Bの信号レベルとして出力する。
一方、信号レベルがマイナスの成分が存在する場合(S12でYes)、彩度補正制御部221Lは、絶対値が最も大きい最大値成分を抽出する(S13)。図12の例では、Lch補正Gが最大値成分となる。
次に、彩度補正制御部221Lは、最大値成分であるLch補正Gの信号レベルから加算値を算出する(S14)。実施の形態1における加算値は、最大値成分の信号レベルの絶対値そのものである。すなわち、加算値は20となる。
次に、合成部222L、223L、224Lは、それぞれLch補正R、Lch補正G、及びLch補正Bの信号レベルを補正して、Lch出力R、Lch出力G、及びLch出力Bを出力する(S15)。具体的には、合成部223Lは、最大値成分であるLch補正Gの出力レベルを0に設定してLch出力Gとして出力する。一方、合成部222Lは、Lch補正Rの信号レベル(−10)に加算値(20)を加算して、信号レベルが10のLch出力Rを出力する。また、合成部224Lは、Lch補正Bの信号レベル(10)に加算値(20)を加算して、信号レベルが30のLch出力Bを出力する。
ここで、Lch出力R(10)、Lch出力G(0)、及びLch出力B(30)は、表示パネル11に左眼用フレームを表示させる際の発光量に相当する。ユーザが視認する輝度レベルは、これに残留クロストーク成分であるR(10)、G(20)、B(0)を加算したものとなるので、赤色成分の信号レベルが20、緑色成分の信号レベルが20、青色成分の信号レベルが30となる。
以上の加算処理を実施しない場合は、負の信号レベルは0にクリップされて出力されるため、R(0)、G(0)、B(10)が出力されるが、ユーザが視認する輝度レベルは、これに残留クロストーク成分であるR(10)、G(20)、B(0)を加算したものとなるので、赤色成分の信号レベルが10、緑色成分の信号レベルが20、青色成分の信号レベルが10となり、色相はG成分およびR成分(特にG成分)が強められた色相になってしまう。
一方補正値を加算することにより、ユーザが視認する左眼用フレームは、本来の左眼用フレームと比較して、ブライトネスが若干高く(すなわち、明るく)なっているものの、色相は実質的に同一となる。これにより、色相の変化を低減した画像処理が可能となる。
(実施の形態2)
次に、図14及び図15を参照して、本発明の実施の形態2に係るCT処理部300を説明する。図14は、実施の形態2に係るCT処理部300の機能ブロック図である。図15は、平均輝度レベルとCLIP値との関係を示すグラフである。なお、実施の形態1に係るCT処理部200と共通の構成要素には、同一の参照番号を付し、詳しい説明を省略する。また、左眼用フレームに対する処理を実行する機能ブロック(参照番号の末尾がL)と、右眼用フレームに対する処理を実行する機能ブロック(参照番号の末尾がR)とは、実質的に同一(対称)の動作を行うので、以降の説明では左眼側を中心に説明する。
実施の形態2に係るCT処理部300は、図14に示されるように、CTキャンセル部210と、Lch処理部320L及びRch処理部320Rを含む彩度補正処理部320と、平均輝度算出部330L、330Rと、補正量制御部340L、340Rとを備える。なお、図14では、Lch入力R、Lch入力G、及びLch入力Bを総称してLch入力信号と呼称する。他の信号についても同様である。
平均輝度算出部330Lは、Lch入力信号を取得して、入力左眼用フレームの平均輝度レベルを1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で算出する。具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、入力左眼用フレームを構成する全画素の輝度レベルの相加平均を算出すればよい。
補正量制御部340Lは、平均輝度算出部330Lによって算出された平均輝度レベルに基づいて、CLIP値を決定する。なお、CLIP値とは、彩度補正処理部320で決定される加算値の最大値を決定するための値であって絶対値の値となる。また、CLIP値を算出するために用いられる平均輝度レベルは、CT処理部300で現在処理されている左眼用フレームの直前の左眼用フレームの平均輝度レベルである。
CLIP値の具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、平均輝度レベルが大きい程、CLIP値を小さく(絶対値を小さく)する。より具体的には、図15に示されるように、平均輝度レベル(「輝度AVE」と表記する)が所定の閾値a未満の場合にはCLIP値を一定(最大)とし、閾値a以上の場合には、平均輝度レベルが大きい程、CLIP値の絶対値を小さくすればよい。
Lch処理部320Lは、Lch補正信号の赤、緑、青の各色成分の信号レベルに加算値を加算し、Lch出力信号を生成する。ここで、加算値の算出方法が実施の形態1と異なる。図12を参照して、実施の形態2に係る加算値の算出方法を説明する。
まず、Lch処理部320Lは、補正量制御部340LからCLIP値を取得する。この例では、CLIP値が絶対値15であったとする。次に、彩度補正制御部221Lは、最大値成分を抽出するのに先立って、赤、緑、青の各色成分の信号レベルをCLIP値で補正する。具体的には、信号レベルが負の値であって、その絶対値がCLIP値より大きい成分について、当該成分の信号レベルをCLIP値の負の値に置き換える。この例では、Lch補正Gの信号レベル(−20)がCLIP値より絶対値が大きいので、Lch補正Gの信号レベルを−15に置き換える。
次に、CLIP値で補正された信号レベルを用いて、最大値成分(負となる信号の絶対値の最大)を抽出する。この例では、赤、緑、青の各色成分の信号レベルが−10、−15、10であるので、緑色成分が最大値成分となる。次に、彩度補正制御部221Lは、CLIPで補正された最大値成分の信号レベルの絶対値を加算値(15)とする。
そして、合成部222L、223L、224Lは、Lch補正R、Lch補正G、Lch補正Bの信号レベルを補正する。つまり、合成部223Lは、最大値成分であるLch補正Gの信号レベルを0に設定する。合成部222L、224Lは、Lch補正R及びLch補正Bの信号レベルに加算値を加算する。その結果、Lch出力Rの信号レベルが5に、Lch出力Gの信号レベルが0に、Lch出力Bの信号レベルが25に設定される。これにより、ユーザが視認する輝度レベルは、これに残留クロストーク成分であるR(10)、G(20)、B(0)を加算したものとなるので、赤色成分の信号レベルが15、緑色成分の信号レベルが20、青色成分の信号レベルが25となり、色相はG成分がやや強められた色相になるが、加算処理を行わない場合に比べて、色相のずれが改善される。なお、CLIP値による補正処理は、最大値成分の抽出するためだけに行われるものであり、合成部222L、223L、224Lは、CLIP値による補正が行われる前の信号レベルを用いて処理を実行する。
実施の形態2における加算値(15)は、実施の形態1における加算値(20)より小さくなっている。より具体的には、加算値の上限がCLIP値の絶対値に制限されていると言える。つまり、Lch処理部320Lは、1つ前のLch入力信号の特徴(平均輝度レベル)に応じて、加算値の上限を規定している。
その結果、表示パネル11に表示される左眼用フレームは、本来の左眼用フレームと比較して色相が若干変化するものの、ブライトネスの変化量が実施の形態1より小さくなっている。
実施の形態1における加算量は、残留クロストーク量が大きくなるほど大きくなる。結果として各々の加算量が大きくなり、色相は本来の色に近づくもののブライトネスが大きくなってブライトネスの変化が弊害となって見栄えに影響してしまう。そこで本実施の形態では、CLIP値の値を適応的に変化させることにより、色相の変化量とブライトネスの変化量とのバランスを取るようにしたものである。
ここで、平均輝度レベルが大きい画像とは全体的に明るい画像なので、残光の影響による残留クロストーク量は相対的に小さい(出難い)と考えられる。一方、平均輝度レベルが小さい画像とは全体的に暗い画像なので、残光の影響による残留クロストーク量は相対的に大きいと考えられる。そこで、色相の改善という観点からは図15に示されるように、平均輝度レベルが大きくなる程、CLIP値の絶対値、すなわち加算値の上限を小さくすればよい。
一方、ブライトネスが高くなるという弊害の観点からは図15とは反対に、平均輝度レベルが大きくなる程、CLIP値の絶対値を大きくしてもよい。平均輝度レベルが大きい(明るい)画像はブライトネスの変化が相対的に目立ち難いので、色相の変化を最小限に抑えるために、加算値の上限を大きく設定することも可能である。平均輝度レベルが小さい(暗い)画像はブライトネスの変化が目立ちやすいので、色相が多少変化してしまうとしても、ブライトネスの変化量を小さくするために、加算値の上限を小さく設定することになる。
このように、CLIPを小さい値に設定すれば色相変化の改善が少なく、CLIPを大きな値とすればブライトネス変化量が弊害となるため、このように平均輝度等のパラメータを元に、最適なCLIP値を調整する。この際どのような効果を重視するかにより、上記の例のように異なる設定方法が考えられる。
また、補正量制御部340Lは、CT処理部300で現在処理されている左眼用フレームの直前の左眼用フレームの平均輝度レベルを用いて、CLIP値を算出する。これは、時間的に隣接する2つの左眼用フレームが似ているという特性を利用している。つまり、実施の形態2に係るCT処理部300は、動きの少ない映像の処理により好適である。
(実施の形態3)
次に、図16〜図18を参照して、本発明の実施の形態3に係るCT処理部400を説明する。図16は、実施の形態3に係るCT処理部400の機能ブロック図である。図17A〜図17Cは、残留クロストーク積算部460の機能ブロック図である。図18は、残留クロストーク積算値とCLIP値との関係を示すグラフである。なお、実施の形態1、2に係るCT処理部200、300と共通の構成要素には、同一の参照番号を付し、詳しい説明を省略する。また、左眼用フレームに対する処理を実行する機能ブロック(参照番号の末尾がL)と、右眼用フレームに対する処理を実行する機能ブロック(参照番号の末尾がR)とは、実質的に同一(対称)の動作を行うので、以降の説明では左眼側を中心に説明する。
実施の形態3に係るCT処理部400は、図16に示されるように、CTキャンセル部210と、Lch処理部320L及びRch処理部320Rを含む彩度補正処理部320と、補正量制御部440L、440Rと、Lch入力信号補正部450L及びRch入力信号補正部450Rを含む入力信号補正部450と、残留クロストーク積算部460L、460R(総称して「残留クロストーク積算部460」と表記する)とを備える。なお、図16では、Lch入力R、Lch入力G、及びLch入力Bを総称してLch入力信号と呼称する。他の信号についても同様である。
残留クロストーク積算部460Lは、Lch補正信号を取得して、左眼用フレームの残留クロストーク積算値を1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で算出する。図17A〜図17Cを参照して、残留クロストーク積算部460、460A、460Bの詳細な構成を説明する。
残留クロストーク積算部460は、図17Aに示されるように、信号補正部461L、461Rと、絶対値化部462L、462Rと、LPF(Low Path Filter)部463L、463Rと、フレーム積算部464L、464Rとを備える。この残留クロストーク積算部460は、その内部で左眼用フレームに対する処理と右眼用フレームに対する処理とを独立して実行することが可能な構成となっている。そのため、ここでは片側(左眼用フレーム)の場合のみを説明する。
信号補正部461Lは、CTキャンセル部210から出力されるLch補正信号の信号レベルを検出し、必要に応じてその信号レベルを補正する。具体的には、信号補正部461Lは、入力されるLch補正信号の信号レベルが0以上、すなわち、信号レベルが正の値である場合は、当該信号の信号レベルを0に補正して出力する。一方、信号レベルが0未満、すなわち、信号レベルが負の値である場合は、当該信号をそのままの値で出力する。これにより、CTキャンセル部210で処理されたLch補正信号のうちの負の値(すなわち、残留クロストーク)を持つ信号のみが、信号補正部461Lで抽出される。
絶対値化部462Lは、信号補正部461Lで補正された信号の絶対値を算出する。LPF部463Lは、絶対値化部462Lで算出された値についてその変化率を緩和させる。このLPF部463Lは、絶対値化部462Lから順次出力される信号をフレーム積算部464Lで所定の割合で間引いてフレーム積算処理を行っているために、LPF処理を行っているものである。フレーム積算部464Lは、LPF部463Lから出力される信号を1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で積算する。
つまり、残留クロストーク積算部460Lからの出力信号は、Lch補正信号に含まれる残留クロストーク量(想定値)の1フレーム分の積算値に相当する。なお、上記の処理は、赤、緑、青の各色成分毎に実行してもよいし、色成分を区別することなく全ての値を積算してもよい。
図17Bは、図17Aの変形例である残留クロストーク積算部460Aの機能ブロック図である。図17Bに示される残留クロストーク積算部460Aは、絶対値化部462L、462RとLPF部463L、463Rとの間にフィルタ部465L、465Rを備える点で、図17Aに示される残留クロストーク積算部460と相違する。以下、図17Aとの相違点のみを説明する。また、片側(左眼用フレーム)の場合のみを説明する。
フィルタ部465Lは、絶対値化部462Lで算出された値(信号レベル)と、予め定められた最大値及び最小値とを比較する。そして、信号レベルが最大値を超える場合には最大値を出力し、信号レベルが最小値を下回る場合は0を出力する。一方、信号レベルが最大値と最小値との間に収まっている場合は信号レベルそのものを出力する。
このように、所定の値(最小値)を下回る信号レベルを0にCLIPすることは、微小な残留クロストークを有する画素を無視することに相当する。その結果、残留クロストーク量が微小な画素が広範囲に広がっているような画像を、検出しない(補正処理の対象としない)ようにすることができる。一方、所定の値(最大値)を上回る信号レベルを最大値にCLIPすることは、残留クロストーク量が極めて大きい画素の影響を小さくすることに相当する。
図17Cは、図17Aの変形例である残留クロストーク積算部460Bの機能ブロック図である。図17Cに示される残留クロストーク積算部460Bは、LPF部463L、463Rに代えて画素検出部466L、466Rを備える点で、図17Aに示される残留クロストーク積算部460と相違する。以下、図17Aとの相違点のみを説明する。また、片側(左眼用フレーム)の場合のみを説明する。
画素検出部466Lは、絶対値化部462Lで算出された値(信号レベル)と、予め定められた閾値(ミニマム値)とを比較し、信号レベルが閾値以上の場合は1を、信号レベルが閾値未満の場合は0を出力する。そして、この出力信号をフレーム積算部464Lにフレーム単位で積算させることにより、残留クロストーク積算部460Bは、残留クロストーク量が閾値以上(言い換えれば、残留クロストーク積算部460Bに入力される信号レベルが所定の値以下)の画素の数(面積)を出力することになる。
補正量制御部440Lは、残留クロストーク積算部460によって算出された残留クロストーク積算値に基づいて、CLIP値を決定する。そして、補正量制御部440Lは、決定したCLIP値をLch処理部320Lに出力する。なお、実施の形態2と同様に、CLIP値を算出するために用いられる残留クロストーク積算値は、CT処理部400で現在処理されている左眼用フレームの直前の左眼用フレームの残留クロストーク積算値である。
Lch処理部320Lは、実施の形態2と同様に、補正量制御部440Lから取得したCLIP値に基づいて加算値を算出する。すなわち、Lch処理部320Lは、Lch補正信号の特徴(残留クロストーク積算値)に応じて、加算値の上限を規定している。
CLIP値の具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、図18に示されるように、残留クロストーク積算値が大きい程、CLIP値の絶対値を小さくすればよい。残留クロストーク積算値が大きくなる場合とは、当該フレームが直前の右眼用フレームとの関係において、残留クロストークが発生する条件の面積がある程度大きな場合や、全体的に暗い場合等である。例えば、図11に示される各フレームのうち、入力左眼用フレームNo.1のような条件の画素が多い場合残留クロストーク積算値は大きくなり、入力左眼用フレームNo.3のような条件の画素が多い場合残留クロストーク積算値は小さくなる傾向がある。
そこで、残留クロストーク積算値が大きい(暗い)画像はブライトネスの変化が目立ちやすいので、色相が多少変化してしまうとしても、ブライトネスの変化量を小さくするために、加算値の上限を小さく設定するのが望ましい。一方、残留クロストーク積算値が小さい(明るい)画像はブライトネスの変化が目立ち難いので、色相の変化を最小限に抑えるために、加算値の上限を大きく設定するのが望ましい。
Lch入力信号補正部450Lは、Lch入力信号を補正してCTキャンセル部210に出力する。典型的には、Lch入力信号のブライトネス(黒レベル)を増加させたり、階調特性の暗部側γを補正したりする処理を実行する。すなわち、赤、緑、青の各色成分の信号レベルそれぞれに同じ値を加算もしくは同様に暗部側の階調特性を補正する。これにより、Lch入力信号の残留クロストーク量を減少させることができる。
なお、Lch入力信号補正部450Lで加算される値は、補正量制御部440Lで算出される。例えば、ブライトネスを補正する例では直前の左眼用フレームの残留クロストーク積算値が大きい程、大きな値を加算するようにすればよい。つまり、残留クロストーク積算値が大きい画像には、大きめの値を加算して、予めブライトネスを増加させておく。CTキャンセル部210でキャンセル処理を行う前に、予めこのようにブライトネスや暗部の階調特性を補正しておくことにより、キャンセルされず残留する量を低減することができる。
一方、残留クロストーク積算値が小さい画像には、小さな値を加算することでブライトネスの変化を抑えながら残留クロストークの発生を効果的に抑制することができる。ここでは、ブライトネスを補正する例を示したが、映像の暗部側のγ特性を制御することでも、同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
次に、図19〜図22を参照して、本発明の実施の形態4に係るCT処理部500を説明する。図19は、実施の形態4に係るCT処理部500の機能ブロック図である。図20は、クロストーク量検出部570の機能ブロック図である。図21は、Lch処理部520Lの詳細な機能ブロック図である。図22は、クロストーク残留率とGLAY化率との関係を示すグラフである。なお、実施の形態1〜3に係るCT処理部200、300、400と共通の構成要素には、同一の参照番号を付し、詳しい説明を省略する。また、左眼用フレームに対する処理を実行する機能ブロック(参照番号の末尾がL)と、右眼用フレームに対する処理を実行する機能ブロック(参照番号の末尾がR)とは、実質的に同一(対称)の動作を行うので、以降の説明では左眼側を中心に説明する。
実施の形態4に係るCT処理部500は、図19に示されるように、CTキャンセル部210と、Lch処理部520L及びRch処理部520Rを含む彩度補正処理部520と、補正量制御部540L、540Rと、Lch入力信号補正部450L及びRch入力信号補正部450Rを含む入力信号補正部450と、残留クロストーク積算部460L、460Rと、クロストーク量検出部570L、570R(合わせて「クロストーク量検出部570」と表記する)とを備える。なお、図19では、Lch入力R、Lch入力G、及びLch入力Bを総称してLch入力信号と呼称する。他の信号についても同様である。
クロストーク量検出部570Lは、Lch入力信号を取得して、左眼用フレームのクロストーク量を1フレーム毎に算出する。図20を参照して、クロストーク量検出部570の詳細な構成を説明する。
クロストーク量検出部570は、図20に示されるように、信号レベル比算出部571L、571Rと、信号補正部572L、572Rと、絶対値化部573L、573Rと、LPF部574L、574Rと、フレーム積算部575L、575Rとを備える。このクロストーク量検出部570は、その内部で左眼用フレームに対する処理と右眼用フレームに対する処理とを独立して実行することが可能な構成となっている。
なお、図20に示されるクロストーク量検出部570は、図17Aに示される残留クロストーク積算部460と比較して、入力信号がLch入力信号及びRch入力信号であること、及び信号補正部572L、572Rの前に、信号レベル比算出部571L、571Rが設けられている点が異なる。
信号レベル比算出部571Lは、Lch入力信号とRch入力信号との信号レベル比を算出する。具体的には、信号レベル比算出部571Lは、Lch入力信号の信号レベルから直前のRch入力信号の信号レベルを減算する。同様に、信号レベル比算出部571Rは、Rch入力信号の信号レベルから直前のLch入力信号の信号レベルを減算する。
つまり、クロストーク量検出部570Lで算出されるのは、直前の右眼用フレームの影響で、左眼用フレームに生じ得るクロストーク量と相関する値である。なお、実施の形態3においては、入力信号補正部450で補正された後のLch入力信号及びRch入力信号を取得して残留クロストーク量を算出する例を示したが、これに限ることなく、入力信号補正部450で補正される前のLch入力信号及びRch入力信号を取得してもよい。
補正量制御部540Lは、残留クロストーク積算部460Lで算出される残留クロストーク積算値、及びクロストーク量検出部570Lで算出されるクロストーク量の一方、又は両方に基づいて、CLIP値とLch入力信号補正部450Lで加算される値を算出する。残留クロストーク積算値を用いた算出方法は、実施の形態3で示した通りであるので、再度の説明は省略する。
補正量制御部540Lは、例えば、クロストーク量が大きくなる程、CLIP値を小さくすればよい。これにより、色相の変化及びブライトネスの変化の一方が目立ちすぎるのを防止することができる。一方で、クロストーク量が大きくなる程、Lch入力信号補正部450Lで加算される値を大きくするようにしてもよい。これにより、CTキャンセル部210においてある程度クロストークをキャンセルすることができ、キャンセルされず残留する量を低減することができる。
Lch処理部520Lは、実施の形態2、3と同様に、補正量制御部540Lから取得したCLIP値に基づいて加算値を算出する。すなわち、Lch処理部520Lは、Lch入力信号の特徴(クロストーク量の発生量と相関を持った値)と、Lch補正信号の特徴(残留クロストーク積算値)とに応じて、加算値の値を算出している。
次に、図21及び図22を参照して、Lch処理部520Lの詳細を説明する。Lch処理部520Lは、図21に示されるように、負CLIP部521R、521G、521Bと、適応的CLIP部522R、522G、522Bと、判断回路523R、523G、523Bと、合成部524R、524G、524Bと、最大値成分選択部525と、最大値補正部526とを備える。
負CLIP部521R、521G、521Bは、それぞれLch補正R、Lch補正G、及びLch補正Bを取得して、正の値を持つ信号はそのまま出力し、負の値を持つ信号は0にして出力する。例えば、図12に示される補正後左眼用フレームが入力されたとすると、負CLIP部521R、521Gから0が、負CLIP部521Bから10が出力される。
適応的CLIP部522R、522G、522Bは、各々の入力信号の負のみを取り出し絶対値化した後、補正量制御部540Lから絶対値で示されるCLIP値を取得して、Lch補正信号の各信号レベルを補正する。例えば、CLIP値が絶対値15であった場合には、適応的CLIP部522Rから10が、適応的CLIP部522Gから15が、適応的CLIP部522Bから0が出力される。
最大値成分選択部525は、適応的CLIP部522R、522G、522Rから出力される負信号を絶対値化しクリップを付加した信号レベルに基づいて、最大値成分を選択する。上記の例では、緑色成分が最大値成分となる。そして、最大値成分選択部525は、最大値成分の信号レベルの絶対値、すなわち15を出力する。
最大値補正部526は、最大値成分選択部525から出力された値を補正して加算値を算出する。具体的には、最大値成分の信号レベルの絶対値に所定の係数(GLAY化率)を乗じることによって、加算値が算出される。例えば、GLAY化率が0.8であった場合、加算値は12となる。
図22を参照して、GLAY化率の決定方法を説明する。
最大値補正部526は、図22に示されるように、クロストーク残留率が大きい程、GLAY化率の値を小さくする。これにより、ブライトネスの変化量が目立ちすぎるのを抑制することができる。また、クロストーク残留率が所定の閾値b(例えば、45%)に達すると、GLAY化率を0に設定する。クロストーク残留率が閾値b以上の場合とは、左眼用フレームの信号レベルが、その直前の右眼用フレームの信号レベルと比較して、極端に小さい場合であり、もはやLch処理部520Lでの処理によって残留クロストークを抑圧する限界を超えている場合である。
なお、クロストーク残留率とは、信号レベルの取り得る最大値(8ビットであれば255)を分母とし、残留クロストーク成分の信号レベルの絶対値を分子として算出される値である。すなわち、クロストーク残留率が大きいとは、残留クロストーク成分の信号レベルの絶対値が大きいということである。
また、最大値補正部526では、適応的CLIP部522Bの出力が最大値成分である場合に、Lch補正R又はLch補正Gが最大値成分である場合より、GLAY化率を小さくするような処理を実行してもよい。これは、青色成分が赤色成分や緑色成分と比較して、残光量が小さいという、表示パネル11の特性に基づくものである。これは、青色成分は残光量が小さいにも関わらず、残留クロストークとして最大となるということは、青色成分のクロストーク量のみが極端に大きくなるようなLとRの入力信号の関係にある場合ということであるため、このような場合に、緑色成分や赤色成分と同様な彩度補正処理を行うと、ブライトネス増加による弊害がより顕著になるという理由からである。
判断回路523R、523G、523Bは、適応的CLIP部522R、522G、522Bから出力される信号と、最大値補正部526から出力される加算値とに基づいて、負CLIP部521R、521G、521Bから出力される信号に、合成部524R、524G、524Bで加算すべき値を判断し算出する。
まず、当該色成分が最大値成分である場合には、固定的に0を出力する。つまり、図12の例の場合では、最大値成分はGであるので判断回路523Gからは0が出力される。そして、合成部524Gは、負CLIP部521Gから出力される信号レベル(0)と、判断回路523Gから出力される加算値(0)とを加算して、信号レベルが0のLch出力Gを出力する。
次に、当該色成分の信号レベルが負の値である場合には、加算値として最大値成分(クリップされた場合はその値)との差分を出力する。つまり、判断回路523Rからは、クリップされGRAY化率補正された最大値成分Gの信号レベル(12)と、適応的CLIP部522Rから出力される信号レベル(10)との差分(2)が出力される。そして、合成部524Rは、負CLIP部521Rから出力される信号レベル(0)と、判断回路523Rから出力される加算値(2)とを加算して、信号レベルが2のLch出力Rを出力する。
次に、当該色成分の信号レベルが正の値である場合には、最大値補正部526から取得した加算値をそのまま出力する。つまり、判断回路523Bからは、12が出力される。そして、合成部524Bは、負CLIP部521Bから出力される信号レベル(10)と判断回路523Bから出力される加算値(12)とを加算して、信号レベルが22のLch出力Bを出力する。
(実施の形態5)
図23は、実施の形態5に係るCT処理部(映像信号処理装置)2000の機能ブロック図である。実施の形態5に係るCT処理部2000は、図23に示されるように、Lch入力信号補正部2100Lと、Rch入力信号補正部2100Rと、CTキャンセル部2200と、Lch変動検出部2300Lと、Rch変動検出部2300Rと、Lch残留クロストーク検出部2400Lと、Rch残留クロストーク検出部2400Rと、Lch補正量調整部2500Lと、Rch補正量調整部2500Rとを備える。このCT処理部2000は、隣接する2つの画像の間に生じるクロストークを抑圧する処理を実行する。
CTキャンセル部2200には、時間的に隣接する入力左眼用フレーム(Lch入力信号)と入力右眼用フレーム(Rch入力信号)とが交互に入力される。なお、Lch入力信号を構成する各画素は、入力赤色成分(Lch入力R)の信号レベル、入力緑色成分(Lch入力G)の信号レベル、及び入力青色成分(Lch入力B)の信号レベルによって表現される。同様に、Rch入力信号を構成する各画素は、それぞれ入力赤色成分(Rch入力R)の信号レベル、入力緑色成分(Rch入力G)の信号レベル、及び入力青色成分(Rch入力B)の信号レベルによって表現される。
Rch入力信号補正部2100Rは、Rch入力信号を補正してCTキャンセル部2200に出力する。具体的には、Rch入力R、Rch入力G、及びRch入力Bの信号レベルから補正値に応じて色相を保持しつつ、各信号レベルを小さくするような補正処理を行う。例えば、補正値に応じて信号コントラストを下げるような処理である。この補正値は、Rch補正量調整部2500Rから取得する。なお、Lch入力信号補正部2100Lの動作も同様であるので、説明は省略する。
CTキャンセル部2200は、処理対象の画像の直前の画像からクロストーク成分を算出し、このクロストーク成分を用いて処理対象の画像を補正する処理を実行する。なお、CTキャンセル部2200で処理される信号は、Lch入力信号補正部2100Lで補正されたLch入力信号、及びRch入力信号補正部2100Rで補正された後のRch入力信号である。
具体的には、CTキャンセル部2200は、Lch入力信号と当該Lch入力信号の直前のRch入力信号とを取得して、Rch入力信号の各画素のRch入力R、Rch入力G、及びRch入力B毎にRch入力信号のクロストーク成分を算出する。そして、Lch入力信号の各画素の信号レベルから対応するクロストーク成分を減算することによって、出力赤色成分(Lch出力R)、出力緑色成分(Lch出力G)、及び出力青色成分(Lch出力B)の各信号レベルで表現される出力左眼用フレーム(Lch出力信号)を生成する。同様に、Rch入力信号と直前のLch入力信号とから、出力赤色成分(Rch出力R)、出力緑色成分(Rch出力G)、及び出力青色成分(Rch出力B)の各信号レベルで表現される出力右眼用フレーム(Rch出力信号)を生成する。
図24は、CTキャンセル部2200の詳細な機能ブロック図である。CTキャンセル部2200は、図24に示されるように、左眼用画像適応制御部2210、右眼用画像適応制御部2240、変換部2220、2250、及び合成部2230、2260を備える。
左眼用画像適応制御部2210は、Lch入力信号及びその直前のRch入力信号から、当該Rch入力信号に乗じる係数K1を算出する。なお、係数K1の決定方法については後述する。
変換部2220は、左眼用画像適応制御部2210で決定された係数K1に基づいて、Rch入力信号に所定の変換処理を行う。例えば、係数K1が、Rch入力信号の残光率(直後のLch入力信号が表示される際の残光の割合)である場合、ここでの所定の変換処理とは、Rch入力信号に係数K1を乗じるものとなる。
合成部2230は、Lch入力信号と、変換部2220で変換されたRch入力信号とを合成する。合成の一例として、例えば、Lch入力信号の信号レベルから、変換部2220で変換されたRch入力信号の信号レベルを減算すればよい。合成部2230は、合成した信号をLch出力信号として出力する。このLch出力信号は、直前のRch出力信号が発生させる残光量を相殺したものとなっている。
上記の各処理は、画像を構成する各画素の赤、緑、青の各色成分毎に実行される。つまり、左眼用画像適応制御部2210では、赤色成分の係数K1R、緑色成分の係数K1G、及び青色成分の係数K1Bが算出される。変換部2220では、Rch入力信号を構成する各画素のRch入力Rに係数K1Rを、Rch入力Gに係数K1Gを、Rch入力Bに係数K1Bをそれぞれ乗算する。そして、合成部2230では、Lch入力信号を構成する各画素のLch入力R、Lch入力G、及びLch入力Bの信号レベルから、変換部2220から出力されたRch入力信号の対応する画素のRch入力R、Rch入力G、及びRch入力Bの信号レベルを減算することによって、Lch出力信号が生成される。
なお、Rch入力信号に対するクロストークキャンセルの処理は、右眼用画像適応制御部2240、変換部2250、及び合成部2260により、Lch入力信号の場合と同様に(対称に)行われる。
図25は、左眼用画像適応制御部2210の構成の一例を示す図である。左眼用画像適応制御部2210は、図25に示されるように、信号比較部2270と、バッファ2280と、CT(Cross Talk)係数決定部2290とを備える。
信号比較部2270は、Lch入力信号と直前のRch入力信号との信号レベル比を算出する。信号レベル比には、例えば、クロストークの影響を受ける被CT映像信号(Lch入力信号)からクロストークの影響を及ぼすCT映像信号(直前のRch入力信号)を差し引いた差分映像信号を利用することができる。算出された信号レベル比は、CT係数決定部2290へ出力される。バッファ2280は、直前に表示されるRch入力信号を一時保持する遅延器として機能する。
CT係数決定部2290は、信号比較部2270で算出された信号レベル比に基づいてRch入力信号に乗ずる係数K1を算出する。係数K1の決定方法は特に限定されないが、例えば、信号レベル比が大きくなる程、係数K1の値が小さくなるようにしてもよい。
図26は、Rch変動検出部2300Rの機能ブロック図である。Rch変動検出部2300Rは、図26に示されるように、合成部2310と、バッファ2320とを備える。このRch変動検出部2300Rは、Rch入力信号を順次取得し、時間的に隣接する2つのRch入力信号(第1のRch入力信号と、第1のRch入力信号の直後の第2のRch入力信号)の対応する画素の各信号レベルの変動幅(Rch変動幅)を検出する。
具体的には、合成部2310は、第1のRch入力信号の各信号レベルから第2のRch入力信号の各信号レベルを減算する。バッファ2320は、取得したRch入力信号を一時保存し、第1のRch入力信号として合成部2310に出力する。なお、Lch変動検出部2300Lの動作も同様であるので、説明は省略する。
Lch残留クロストーク検出部2400Lは、CTキャンセル部2200から出力されるLch出力信号の残留クロストーク量を検出し、出力する。具体的には、Lch出力信号のLch出力R、Lch出力G、及びLch出力Bのうち、信号レベルが負で、且つ絶対値が最大の信号レベルの絶対値を残留クロストーク量として出力する。なお、Rch残留クロストーク検出部2400Rの動作も同様であるので、説明は省略する。
図27は、Rch補正量調整部2500Rの機能ブロック図である。Rch補正量調整部2500Rは、図27に示されるように、演算部2510と、判定部2520と、補正値出力部2530とを備える。
演算部2510は、Lch残留クロストーク検出部2400LからLch出力信号の残留クロストーク量を取得する。そして、取得した残留クロストーク量に基づいて補正値を算出する。なお、演算部2510によって算出される補正値は、残留クロストーク量を上限とする任意の値である。残留クロストーク量の算出方法は特に限定されないが、例えば、残留クロストーク量が大きい程、大きい値となるのが望ましい。
図28は、残留クロストーク量(「残留CT量」と表記する)と補正値の関係を示すグラフである。一例として、図28Aに示されるように、残留CT量の増加に伴って、補正値を線形的に増加させてもよい。又は他の例として、図28Bに示されるように、残留CT量の増加に伴って、補正値を指数関数的に増加させてもよい。なお、図28A及び図28Bの例では、残留CT量が所定の閾値未満の場合には、補正量を0としている。
ただし、補正値の算出方法は、上記に限定されない。例えば、常に、残留クロストーク量の値をそのまま補正値として採用してもよい。又は、残留クロストーク量の値を上限として、判定部2520に入力されるRch変動幅が大きくなる(第1の閾値に近付く)程、補正値の値を小さくしてもよい。
判定部2520は、Rch変動検出部2300RからRch変動幅を取得する。なお、このRch変動幅は、Rch入力信号補正部2100Rで処理の対象となるRch入力信号と、その直前のRch入力信号との間の信号レベルの変動幅である。そして、判定部2520は、取得したRch変動幅に基づいて、Rch入力信号補正部2100Rで補正処理を実行するか否かを判定する。より具体的には、Rch変動幅が第1の閾値を下回った場合にのみ、補正処理を実行すればよい。
補正値出力部2530は、判定部2520で補正処理を実行すると判定された場合に、演算部2510で算出された補正値をRch入力信号補正部2100Rに出力する。一方、判定部2520で補正処理を実行しないと判定された場合には、0を出力する等すればよい。
なお、図27に示されるRch補正量調整部2500Rでは、Lch残留クロストーク量(クロストークがキャンセルされた後のLch出力信号にさらに残留しているクロストーク量)に基づいて、Rch補正値を決定している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、Lch入力信号に含まれるクロストーク量に基づいて、Rch補正値を決定してもよい。このとき、Rch変動幅に基づいて補正処理を実行するか否かを決定する判定部2520の処理は必須ではなく、省略することができる。
次に、図29〜図31を参照して、上記構成のCT処理部2000の動作を説明する。なお、図29は、CT処理部2000に入力される入力右眼用フレーム(No.1〜No.3)及び入力左眼用フレーム(No.1〜No.3)の発光量(輝度レベル)を示すグラフである。図30は、CT処理部2000での処理の過程における赤、緑、青の各色成分の信号レベルを示す図である。図31は、CT処理部2000の動作を示すフローチャートである。
まず、CT処理部2000には、図29に示されるように、第1系列に属する(ユーザの右眼に表示される)右眼用フレームNo.1、No.2、No.3と、第2系列に属する(ユーザの左眼に表示される)左眼用フレームNo.1、No.2、No.3とが交互に入力される。なお、以下の説明では、Rch入力信号補正部2100Rで右眼用フレームNo.3の補正処理を行うために必要な処理のみを説明する。
まず、CT処理部2000は、入力右眼用フレームNo.2を取得して信号処理を施した後、出力右眼用フレームNo.2として出力する。このとき、当該入力右眼用フレームNo.2を構成する各画素の信号レベルは、左眼用画像適応制御部2210のバッファ2280と、Rch変動検出部2300Rのバッファ2320とに保持される。例えば、バッファ2280、2320に保持される入力右眼用フレームNo.2の所定の位置の画素(以下「特定画素」という)の各信号レベルは、図30に示されるように、Rch入力Rが40、Rch入力Gが60、Rch入力Bが20であるとして説明する。
次に、CT処理部2000は、入力左眼用フレームNo.2を取得して信号処理を施す。例えば、CTキャンセル部2200に入力される(すなわち、Lch入力信号補正部2100Lから出力される)入力左眼用フレームNo.2の対応画素の各信号レベルは、図30に示されるように、Lch入力Rが10、Lch入力Gが10、Lch入力Bが20であるとして説明する。なお、本明細書中の「対応画素」とは、基準となる画像(この場合は、「入力右眼用フレームNo.2」)の特定画素に対応する位置の画素を指す。
CTキャンセル部2200は、バッファ2280に保持されている入力右眼用フレームNo.2を用いて、今回取得した入力左眼用フレームNo.2のクロストークを除去する処理を実行する。例えば、CT係数決定部2290で決定された係数K1が0.5であったとすると、赤色成分のクロストーク成分は20、緑色成分のクロストーク成分は30、青色成分のクロストーク成分は10となる。これを入力左眼用フレームNo.2の対応画素の信号レベルから減算すると、出力左眼用フレームNo.2の対応画素の信号レベルは、図30に示されるように、Lch出力Rが−10、Lch出力Gが−20、Lch出力Bが10となる。但し、表示パネル11は、負の信号に従って発光制御をすることができないので、この場合のLch出力R及びLch出力Gが0であるとして、発光制御が行われる。
出力左眼用フレームNo.2において、信号レベルが正の値となる場合(Lch出力B)とは、表示パネル11に表示すべき左眼用フレームNo.2の輝度レベル(発光量)が直前の右眼用フレームNo.2のクロストーク成分を上回っている状態である。このような場合、実際の輝度レベル(青色成分=20)とクロストーク成分(10)との差分に相当する輝度レベル(10)のみを、表示パネル11に表示(発光)すればよい。
一方、出力左眼用フレームNo.2において、信号レベルが負の値となる場合(Lch出力R、Lch出力G)とは、表示パネル11に表示すべき左眼用フレームNo.2の輝度レベルが直前の右眼用フレームNo.2のクロストーク成分を下回っている状態である。このような場合、表示パネル11を発光させなくとも、本来表示すべき輝度レベル(赤色成分=10、緑色成分=10)を上回る輝度レベル(赤色成分=20、緑色成分=30)が表示パネル11に表示されることになる。ここで、本来表示すべき輝度レベルと実際に表示される輝度レベルとの差分値(赤色成分=10、緑色成分=20)を「残留クロストーク量」というものとする。
以降、図31のフローチャートを参照して説明する。Lch残留クロストーク検出部2400Lは、出力左眼用フレームNo.2を取得して残留クロストーク量を算出する(S21)。この例では、出力左眼用フレームNo.2の対応画素の残留クロストーク量は20となる。算出した残留クロストーク量は、Rch補正量調整部2500Rに出力される。
次に、CTキャンセル部2200は、入力右眼用フレームNo.3を取得し、対応画素の信号レベルの変動幅を算出する(S22)。具体的には、Rch変動検出部2300Rは、バッファ2320に保持されている入力右眼用フレームNo.2の特定画素の各信号レベルから、新たに入力された入力右眼用フレームNo.3の対応画素の各信号レベルを減算することによって、信号レベル毎の変動幅を検出する。この値は、Rch変動幅としてRch補正量調整部2500Rに出力される。なお、Rch変動幅は、赤、緑、青の各色成分についての変動幅の最大値であってもよいし、3つの平均値であってもよいし、3つの加算値であってもよい。
次に、Rch補正量調整部2500Rの判定部2520は、取得したRch変動幅が第1の閾値未満であるか否かを判定する(S23)。Rch変動幅が第1の閾値以上であると判定された場合(S23でNo)、Rch入力信号補正部2100Rは、入力右眼用フレームNo.3を補正することなく、CTキャンセル部2200に出力する。
一方、Rch変動幅が第1の閾値未満であると判定された場合(S23でYes)、演算部2510は、取得した残留クロストーク量に基づいて補正値を算出する(S24)。この例では、取得した残留クロストーク量(20)を図28Aに当てはめて、補正値(10)が算出されたものとする。算出した補正値は、Rch補正値としてRch入力信号補正部2100Rに出力される。
次に、Rch入力信号補正部2100Rは、入力右眼用フレームNo.3の対応画素の各信号レベルから取得した補正値に応じた補正処理を実施する(S25)。例えば、入力右眼用フレームNo.3の対応画素の各信号レベルが、図30に示されるように、Rch入力Rが35、Rch入力Gが55、Rch入力Bが25であった場合、残留クロストークが最大であったRch入力Gに対して、補正値10を減算して45とする。また、他のchに対しても、Rch入力Gのコントラスト低減率と同率となるように信号レベルを補正する。つまり、この例では、Rch入力R及びRch入力Bの信号レベルを約20%ずつ減じることによって、Rch入力Rを28、Rch入力Bを20と補正する。これにより、補正後の各信号レベルは、Rch入力Rが28、Rch入力Gが45、Rch入力Bが20となる。補正された入力右眼用フレームNo.3は、CTキャンセル部2200に出力される。
なお、上記のように、残留クロストーク量が最大の成分を基準として、全ての成分の信号レベルの低減率を実質的に同率にしてもよい。ただし、この補正処理は一例でありこれに限定されるものではなく、例えば、簡易的に同一値(上記の例では「10」)をRGBより減算する補正処理であってもよい。さらには、各成分の残留クロストーク量それぞれから補正値を個別に算出して、各成分の信号レベルから減算するような補正処理であってもよい。
上記の処理によれば、右眼用フレームNo.3の発光量が、当初のレベル(図29の破線)から補正値分だけ下がる(図29の一点鎖線)ことになる。これに伴って、左眼用フレームNo.3を表示する際の右眼用フレームNo.3のクロストーク成分も下がることになので、結果として、左眼用フレームNo.3の残留クロストークを抑圧することができる。
なお、上記の3次元映像信号において、時間的に隣接する右眼用フレームと左眼用フレームとは、視差の分だけ内容が異なる画像である。そうすると、一方の系列に属する画像の時間的な変化の傾向から、他方の系列の画像の時間的な変化の傾向を推測できることになる。
つまり、第1系列に属する右眼用フレームNo.2の特定画素と右眼用フレームNo.3の対応画素との間の信号レベルの変動幅が小さい(第1の閾値未満)場合、第2系列に属する左眼用フレームNo.2の対応画素と左眼用No.3の対応画素との間の信号レベルの変動幅も小さいと推定できる。この場合、右眼用フレームNo.2の特定画素と左眼用フレームNo.2の対応画素との間の残留クロストーク量は、右眼用フレームNo.3の対応画素と左眼用フレームNo.3の対応画素との間の残留クロストーク量に近いと推定することができる。
このような3次元映像信号の特性を利用して、直後の信号(図29の例では、左眼用フレームNo.3)に影響を及ぼす信号(図29の例では、右眼用フレームNo.3)を予め補正することにより、残留クロストークを有効に抑圧することができる。
なお、上記の例では、判定部2520で補正処理を実行するか否かを判定するに当たって、直近の2画像の画素(右眼用フレームNo.2の特定画素と右眼用フレームNo.3の対応画素)間の信号レベルの変動幅のみを用いたが、時間的な変化の傾向をより正確に把握する観点からは、さらに前の画像の変動幅を合わせて判定してもよい。具体的には、判定部2520は、さらに、右眼用フレームNo.1及び右眼用フレームNo.2の対応画素間の信号レベルの変動幅を取得し、2つの変動幅がいずれも第1の閾値を下回った場合にのみ右眼用フレームNo.3に対して補正処理を実行するようにしてもよい。
また、Rch入力信号補正部2100Rでは、Rch入力R、Rch入力G、及びRch入力Bの各信号レベルの比率を保持するような補正処理を実施しているので、表示パネル11に表示される出力右眼用フレームの色相が、入力右眼用フレームの本来の色相と実質的に同一となる。すなわち、色相の変化を極小化した画像処理が可能となる。
(実施の形態6)
次に、図32及び図33を参照して、本発明の実施の形態6に係るCT処理部3000を説明する。図32は、実施の形態6に係るCT処理部3000の機能ブロック図である。図33は、実施の形態6に係るRch補正量調整部3500Rの機能ブロック図である。なお、実施の形態5に係るCT処理部2000と共通の構成要素には、同一の参照番号を付し、詳しい説明を省略する。
実施の形態6に係るCT処理部3000は、図32に示されるように、Lch入力信号補正部2100Lと、Rch入力信号補正部2100Rと、CTキャンセル部2200と、Lch変動検出部2300Lと、Rch変動検出部2300Rと、Lch残留クロストーク検出部2400Lと、Rch残留クロストーク検出部2400Rと、Lch補正量調整部3500Lと、Rch補正量調整部3500Rと、Lchシーン変化検出部3600Lと、Rchシーン変化検出部3600Rとを備える。
Rchシーン変化検出部3600Rは、同一系列に属する画像のうち時間的に隣接する2つの画像のシーン変化量(Rchシーン変化量)を算出する。Rchシーン変化量の具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、Rch変動検出部2300Rにおいて1画素単位で算出した信号レベルの変動幅を1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で積算してもよい。更に、1フレーム分の平均値を数フレームに渡って算出し、その平均値のフレーム間の重心の変動量、平均値の分散状態、平均値の差分などのパラメータを複数組み合わせて統計的に演算してシーン変化を検出するものである。なお、Lchシーン変化量の動作も同様であるので、説明は省略する。
Rch補正量調整部3500Rは、図33に示されるように、演算部2510と、判定部2520と、補正値出力部2530とに加えて、判定部3540と、判定結果出力部3550とをさらに備える。
判定部3540は、Rchシーン変化検出部3600Rから取得したRchシーン変化を判定するための上記複数のパラメータ(以下これらを総称してシーン変化量と呼称する)の各々が各々所定の閾値を下回って全て成立する場合に、Rch入力信号補正部2100Rによる補正処理を実行すると判定する。なお、図29に示される右眼用フレームNo.3の補正処理を実行するか否かは、同一系列に属する直近の2フレーム(右眼用フレームNO.1と右眼用フレームNo.2)のRchシーン変化量に基づいて判定する。
判定結果出力部3550は、判定部2520と判定部3540との判定結果に基づいて、補正処理を実行するか否かを最終的に判定する。例えば、判定部2520、3540の両方で補正処理を実行すると判定された場合にのみ、補正処理を実行するとの判定結果を出力し、判定部2520、3540のうちの少なくとも一方で補正処理を実行しないと判定された場合は、補正処理を実行しないとの判定結果を出力する。
実施の形態6においては、Rch変動検出部2300Rによる画素単位の変動幅のみならず、Rchシーン変化検出部3600Rによるフレーム単位のシーン変化量をも取得して、補正処理を実行するか否かを判定している。その結果、時間的な変化の傾向をより的確に把握することができるので、より好適に残留クロストークを抑圧することができる。
(実施の形態7)
次に、図34〜図38を参照して、本発明の実施の形態7に係るCT処理部4000を説明する。図34は、実施の形態7に係るCT処理部4000の機能ブロック図である。図35は、残留クロストーク積算部4700の機能ブロック図である。図36は、Rch補正量調整部4500Rの機能ブロック図である。図37A及び図37Bは、残留CT積算値又は輝度AVEとCLIP値との関係を示すグラフである。図38は、クロストーク残留率とGLAY化率との関係を示すグラフである。なお、実施の形態5、6に係るCT処理部2000、3000と共通の構成要素には、同一の参照番号を付し、詳しい説明を省略する。
実施の形態7に係るCT処理部4000は、図34に示されるように、Lch入力信号補正部2100Lと、Rch入力信号補正部2100Rと、CTキャンセル部2200と、Lch変動検出部2300Lと、Rch変動検出部2300Rと、Lch残留クロストーク検出部2400Lと、Rch残留クロストーク検出部2400Rと、Lch補正量調整部4500Lと、Rch補正量調整部4500Rと、Lch残留クロストーク積算部4700Lと、Rch残留クロストーク積算部4700Rとを備える。
Lch残留クロストーク積算部4700Lは、Lch出力信号を取得して、左眼用フレームの残留クロストーク積算値を1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で算出する。図35を参照して、Lch残留クロストーク積算部4700L及びRch残留クロストーク積算部4700R(総称して「残留クロストーク積算部4700」と呼称する)の詳細な構成を説明する。
残留クロストーク積算部4700は、図35に示されるように、信号補正部4710L、4710Rと、絶対値化部4720L、4720Rと、LPF(Low Path Filter)部4730L、4730Rと、フレーム積算部4740L、4740Rとを備える。この残留クロストーク積算部4700は、その内部で左眼用フレームに対する処理と右眼用フレームに対する処理とを独立して実行することが可能な構成となっている。そのため、ここでは片側(左眼用フレーム)の場合のみを説明する。
信号補正部4710Lは、CTキャンセル部2200から出力されるLch出力信号の信号レベルを検出し、必要に応じてその信号レベルを補正する。具体的には、信号補正部4710Lは、入力されるLch出力信号の信号レベルが0以上、すなわち、信号レベルが正の値である場合は、当該信号の信号レベルを0に補正して出力する。一方、信号レベルが0未満、すなわち、信号レベルが負の値である場合は、当該信号をそのままの値で出力する。これにより、CTキャンセル部2200で処理されたLch出力信号のうちの負の値(すなわち、残留クロストーク)を持つ信号のみが、信号補正部4710Lで抽出される。
絶対値化部4720Lは、信号補正部4710Lで補正された信号の絶対値を算出する。LPF部4730Lは、絶対値化部4720Lで算出された値についてその変化率を緩和させる。具体的には、LPF部4730Lは、絶対値化部4720Lから順次出力される信号を、所定の割合で間引いた上でLPF演算を行い出力する。フレーム積算部4740Lは、LPF部4730Lから出力される信号を1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で積算する。
つまり、Lch残留クロストーク積算部4700Lからの出力信号は、Lch出力信号に含まれる残留クロストーク量の(代表値の)1フレーム分の積算値に相当する。算出した残留クロストーク積算値は、Rch補正量調整部4500Rに出力される。なお、上記の処理は、赤、緑、青の各色成分毎に実行してもよいし、色成分を区別することなく全ての値を積算してもよい。
Rch補正量調整部4500Rは、図36に示されるように、演算部2510と、判定部2520と、補正値出力部2530と、調整部4560とを備える。なお、Lch補正量調整部4500Lの動作も同様であるので、説明は省略する。
調整部4560は、Lch残留クロストーク積算部4700Lから取得したLch残留クロストーク積算値に基づいて、CLIP値を算出する。CLIP値の具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、図37Aに示されるように、残留クロストーク積算値が大きい程、CLIP値の絶対値を小さくすればよい。この例では、CLIP値が8であったとする。
なお、CLIP値とは、補正値出力部2530から出力される補正値の最大値を決定するための値であって、常に正の値となる。また、CLIP値を算出するために用いられる残留クロストーク積算値は、CT処理部4000で現在処理されている右眼用フレームの直前の左眼用フレームの残留クロストーク積算値である。
次に、調整部4560は、演算部2510で算出された補正値を取得する。ここでは、図30の場合と同様に、補正値が10であったとする。そして、調整部4560は、取得した補正値と算出したCLIP値とを比較して、小さい方を最終的な補正値として出力する。つまり、この例では、補正値が8となる。
Rch入力信号補正部2100Rが、この補正値を用いて図30に示される入力右眼用フレームNo.3を補正すると、補正後の右眼用フレームNo.3の各信号レベルは、Rch入力Rの信号レベルが29、Rch入力Gの信号レベルが47、Rch入力Bの信号レベルが21となる。
実施の形態7における補正値(8)は、実施の形態5における加算値(10)より小さくなっている。より具体的には、補正値の上限がCLIP値に制限されていると言える。つまり、Rch補正量調整部4500Rは、1つ前のLch入力信号の特徴(残留クロストーク積算値)に応じて、補正値の上限を規定している。
ここで、補正値の値を大きくすれば、1回の補正処理で残留クロストークを大幅に抑圧することができる。しかしながら、右眼用フレームNo.3の信号レベルを大幅に減じることになるので、当該右眼用フレームNo.3が表示パネル11に表示された際に、ブライトネスの変化(暗くなる方向の変化)が目立ちすぎるおそれがある。そこで、補正値の上限値、すなわち、1回の補正処理で減算する信号レベルの最大値を規制することにより、残留クロストークの抑圧とブライトネスの変化とのバランスを取ることができる。
なお、CLIP値算出の基礎となるパラメータは、上記の残留クロストーク量積算値に限定されない。例えば、補正対象のフレームと同一系列に属する直前のフレームの平均輝度レベルを用いてCLIPを算出してもよい。
例えば、Rch平均輝度算出部(図示省略)は、Rch入力信号を取得して、入力右眼用フレームの平均輝度レベルを1フレーム単位(若しくは、分割された所定の領域単位)で算出する。具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、入力右眼用フレームを構成する全画素の輝度レベルの相加平均を算出すればよい。なお、Lch平均輝度算出部(図示省略)の動作も同様であるので、説明は省略する。
CLIP値の具体的な算出方法は特に限定されないが、例えば、平均輝度レベルが大きい程、CLIP値を小さくする。より具体的には、図37Bに示されるように、平均輝度レベル(「輝度AVE」と表記する)が所定の閾値a未満の場合にはCLIP値を一定(最大)とし、閾値a以上の場合には、平均輝度レベルが大きい程、CLIP値の絶対値を小さくすればよい。これは、全体として暗いシーンでは残留クロストークが発生しやすく、明るいシーンでは残留クロストーク自体が発生しにくい事を鑑みた場合の設定方法の一例である。
さらに、調整部4560は、演算部2510から取得した補正値を補正して新たな補正値を算出する。具体的には、演算部2510から取得した補正値に所定の係数(GLAY化率)を乗じることによって、新たな補正値が算出される。例えば、調整部4560は、図38に示されるように、クロストーク残留率が大きい程、GLAY化率の値を小さくする。また、クロストーク残留率が所定の閾値b(例えば、45%)に達すると、GLAY化率を0に設定する。
なお、クロストーク残留率とは、信号レベルの取り得る最大値(8ビットであれば255)を分母とし、最大値成分の信号レベルの絶対値を分子として算出される値である。すなわち、クロストーク残留率が大きいとは、最大値成分の信号レベルの絶対値が大きいのと、実質的に同じである。
また、調整部4560では、Lch出力Bが最大値成分である場合に、Lch出力R又はLch出力Gが最大値成分である場合より、GLAY化率を小さくするような処理を実行してもよい。これは、青色成分が赤色成分や緑色成分と比較して、残光量が小さいという、表示パネル11の特性に基づくものである。
次に、図39及び図40を参照して、映像視聴用眼鏡20の詳細な構成を説明する。なお、図39は、映像視聴用眼鏡20のハードウェア構成の一例を示す図である。図40は、映像視聴用眼鏡20の機能ブロック図である。
映像視聴用眼鏡20は、図39に示されるように、CPU610と、メモリ620と、クロック630と、光学フィルタ22と、赤外線受光素子640とを備える。なお、光学フィルタ22は、図1に示される左眼用光学フィルタ22L及び右眼用光学フィルタ22Rを含む。
CPU610は、映像視聴用眼鏡20の全体を制御する。CPU610は予め定められたソフトウェアプログラムを実行することで、映像視聴用眼鏡20の制御、特に、光学フィルタ22の制御等を行う。
メモリ620は、CPU610を動作させるソフトウェアプログラムの記憶場所、または、CPU610がソフトウェアプログラムを実行する際の各種変数の一時保持の場所としてデータの記録を行う。メモリ620は、揮発性のメモリであっても、不揮発性のメモリであってもいずれでもよいし、これらを組み合わせたものであっても良い。
クロック630は、CPU610等が動作するために必要となる基準信号(クロック信号)を生成する。クロック630には、水晶発振子や他の発振子を用いることができる。また、クロック630が生成したクロック信号を分周、逓倍して使用するものであってもよい。
光学フィルタ22は、映像視聴用眼鏡20をかけた視聴者の左眼の前に設けられる左眼用光学フィルタ22Lと、右眼の前に設けられる右眼用光学フィルタ22Rとを含む。そして、両眼へ入る光の量、性質等を調整するものである。
赤外線受光素子640は、外部、特に映像表示装置10から送信される同期信号を受信する。本実施の形態では、同期信号に赤外線を用いる場合を例として説明しているため、赤外線受光素子640を例に記載しているが、これに限定するものではない。無線等を用いて同期信号を受信する場合は、当該無線を受信するための受信部(アンテナ、チューナ等)であればよい。つまり、同期信号を適切に受信できるものであれば、その種類を限定するものでは無い。
また、映像視聴用眼鏡20は、図40に示されるように、外部同期信号受信部710と、同期信号検出部720と、同期信号解析部730と、同期情報記憶部740と、内部同期信号生成部750と、光学フィルタ制御部760と、光学フィルタ22とを備える。
外部同期信号受信部710は、映像表示装置10から赤外線で送信された同期信号を受信する。受光した赤外線に応じて、電気信号を同期信号検出部720へ出力する。図39に示されるハードウェア構成においては、赤外線受光素子640に該当する。なお、図39のハードウェア構成においても説明したが、本実施の形態では赤外線を用いた場合を例に挙げて説明するが、同期信号の送受信方法を赤外線に限定するものではない。無線等を送受信手段として用いるものであっても良い。
同期信号検出部720は、外部同期信号受信部710から出力される電気信号の同期信号を検出する。具体的には、所定の電気波形等を持つ信号を同期信号として検出する。
同期信号解析部730は、同期信号検出部720で検出された同期信号に基づいて、光学フィルタ22を動作させるための時間間隔等の情報を解析する。光学フィルタ22を動作させるための時間間隔情報等の情報を解析するとは、例えば、左眼用と右眼用のフィルタの開閉タイミングの情報等である。なお、同期信号検出部720及び同期信号解析部730は、図39に示されるハードウェア構成において、CPU610が実行するプログラムの一部に該当する。
同期情報記憶部740は、同期信号解析部730で解析された光学フィルタ22の動作内容に関する制御情報を記録及び保持する。図39に示されるハードウェア構成においては、メモリ620に該当する。より具体的には、CPU610が当該情報をメモリ620に記録する。
内部同期信号生成部750は、同期情報記憶部740に記録された同期情報、又は、同期信号解析部730で解析された同期情報(時間間隔情報等)に基づいて、映像視聴用眼鏡20の内部で同期信号を生成する。内部同期信号生成部750は、図39に示されるハードウェア構成においては、CPU610とクロック630とに該当する。
光学フィルタ制御部760は、映像視聴用眼鏡20の両眼に設けられている左右の光学フィルタ22の動作制御を行う。例えば、光学フィルタ22を透過する光の量を調整する等の制御を行う。光学フィルタ制御部760は、図39に示されるハードウェア構成においては、CPU610が実行する光学フィルタ制御用のプログラム、又は、後述の光学フィルタ22を駆動する駆動回路等に該当する。
光学フィルタ22は、映像視聴用眼鏡20の両眼に設けられ、左右の眼に入射する透過光を調整する光学的なフィルタである。光学フィルタ22には、透過する光の量を調整するものや、透過する光の偏向を調整するもの等様々な種類がある。また、光学フィルタ22に液晶素子を用い、当該液晶素子を制御することで、透過する光の量を調整するもの等もある。
本実施の形態では、映像表示装置10に表示される映像が左眼用の映像と右眼用の映像が交互に変わる場合を例として説明する。そのため、光学フィルタ22の動作としては、左眼用光学フィルタ22Lと右眼用光学フィルタ22Rとが、交互に透過する光の量を減光、増光するシャッタ的な動作をする。なお、本実施の形態ではこのような事例を用いて説明するが、光学フィルタ22の動作をこれに限定するものではない。他の例としては、右眼と左眼とで偏光方向を変えるような光学フィルタであってもよい。つまり、映像表示装置10に表示される映像と同期して透過する光を調整できる光学フィルタであれば、どのような種類であってもよい。
図39に示されるハードウェア構成と図40に示される機能ブロックとの対応関係は、本実施の形態で説明のために用いる具体例としての対応関係であり、これに限定するものではない。他のハードウェア構成、ソフトウェア構成を用いたものであってもよい。
また、本実施の形態で説明する映像視聴用眼鏡20は、外部から受信した同期信号に基づいて内部同期信号を生成し、それに基づいて光学フィルタ22を動作させるものであったが、これに限定するものではない。内部同期信号を生成せず、外部から受信した同期信号に直接基づいて、光学フィルタ制御部760を制御するものであってもよい。この場合は、映像視聴用眼鏡20が比較的簡単な構成で実現することが可能となる。
なお、上記の各実施の形態においては、互いに視差を有する左眼用画像及び右眼用画像を交互に出力される3次元映像信号を処理する例を示したが、これに限ることなく、本発明は2次元映像信号にも適用することができる。
(その他変形例)
なお、本発明を上記実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記の実施の形態に限定されないのはもちろんである。以下のような場合も本発明に含まれる。
上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成要素部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。ICカードまたはモジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。ICカードまたはモジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、ICカードまたはモジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
本発明は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
また、本発明は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されているデジタル信号であるとしてもよい。
また、本発明は、コンピュータプログラムまたはデジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
また、本発明は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、マイクロプロセッサは、コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
また、プログラムまたはデジタル信号を記録媒体に記録して移送することにより、またはプログラムまたはデジタル信号をネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。