JP5641026B2 - メモリ - Google Patents

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Description

本発明は、スピン偏極した電子を注入することにより記憶層の磁化の向きを変化させる記憶素子を備えたメモリに係わり、不揮発メモリに適用して好適なものである。
コンピュータ等の情報機器では、ランダム・アクセス・メモリとして、動作が高速で、高密度なDRAMが広く使われている。
しかし、DRAMは電源を切ると情報が消えてしまう揮発性メモリであるため、情報が消えない不揮発のメモリが望まれている。
そして、不揮発メモリの候補として、磁性体の磁化で情報を記録する磁気ランダム・アクセス・メモリ(MRAM)が注目され、開発が進められている。
MRAMは、ほぼ直交する2種類のアドレス配線(ワード線、ビット線)にそれぞれ電流を流して、各アドレス配線から発生する電流磁場によって、アドレス配線の交点にある磁気記憶素子の磁性層の磁化を反転して情報の記録を行うものである。
一般的なMRAMの模式図(斜視図)を、図10に示す。
シリコン基板等の半導体基体110の素子分離層102により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域108、ソース領域107、並びにゲート電極101が、それぞれ形成されている。
また、ゲート電極101の上方には、図中前後方向に延びるワード線105が設けられている。
ドレイン領域108は、図中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域108には、配線109が接続されている。
そして、ワード線105と、上方に配置された、図中左右方向に延びるビット線106との間に、磁化の向きが反転する記憶層を有する磁気記憶素子103が配置されている。この磁気記憶素子103は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。
さらに、磁気記憶素子103は、水平方向のバイパス線111及び上下方向のコンタクト層104を介して、ソース領域107に電気的に接続されている。
ワード線105及びビット線106にそれぞれ電流を流すことにより、電流磁界を磁気記憶素子103に印加して、これにより磁気記憶素子103の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うことができる。
そして、MRAM等の磁気メモリにおいて、記録した情報を安定に保持するためには、情報を記録する磁性層(記憶層)が、一定の保磁力を有していることが必要である。
一方、記録された情報を書き換えるためには、アドレス配線にある程度の電流を流さなければならない。
ところが、MRAMを構成する素子の微細化に従い、アドレス配線も細くなるため、充分な電流が流せなくなってくる。
そこで、より少ない電流で磁化反転が可能な構成として、スピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリが注目されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2参照)。
スピン注入による磁化反転とは、磁性体の中を通過してスピン偏極した電子を、他の磁性体に注入することにより、他の磁性体において磁化反転を起こさせるものである。
例えば、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)や磁気トンネル接合素子(MTJ素子)に対して、その膜面に垂直な方向に電流を流すことにより、これらの素子の少なくとも一部の磁性層の磁化の向きを反転させることができる。
そして、スピン注入による磁化反転は、素子が微細化されても、電流を増やさずに磁化反転を実現することができる利点を有している。
上述したスピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリの模式図を図8及び図9に示す。図8は斜視図、図9は断面図である。
シリコン基板等の半導体基体60の素子分離層52により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域58、ソース領域57、並びにゲート電極51が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極51は、図8中前後方向に延びるワード線を兼ねている。
ドレイン領域58は、図8中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域58には、配線59が接続されている。
そして、ソース領域57と、上方に配置された、図8中左右方向に延びるビット線56との間に、スピン注入により磁化の向きが反転する記憶層を有する記憶素子53が配置されている。
この記憶素子53は、例えば磁気トンネル接合素子(MTJ素子)により構成される。図中61及び62は磁性層を示しており、2層の磁性層61,62のうち、一方の磁性層を磁化の向きが固定された磁化固定層として、他方の磁性層を磁化の向きが変化する磁化自由層即ち記憶層とする。
また、記憶素子53は、ビット線56と、ソース領域57とに、それぞれ上下のコンタクト層54を介して接続されている。これにより、記憶素子53に電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。
このようなスピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリの場合、図10に示した一般的なMRAMと比較して、デバイス構造を単純化することができる、という特徴も有している。
また、スピン注入による磁化反転を利用することにより、外部磁界により磁化反転を行う一般的なMRAMと比較して、素子の微細化が進んでも、書き込みの電流が増大しないという利点がある。
ところで、MRAMの場合は、記憶素子とは別に書き込み配線(ワード線やビット線)を設けて、書き込み配線に電流を流して発生する電流磁界により、情報の書き込み(記録)を行っている。そのため、書き込み配線に、書き込みに必要となる電流量を充分に流すことができる。
一方、スピン注入による磁化反転を利用する構成のメモリにおいては、記憶素子に流す電流によりスピン注入を行って、記憶層の磁化の向きを反転させる必要がある。
そして、このように記憶素子に直接電流を流して情報の書き込み(記録)を行うことから、書き込みを行うメモリセルを選択するために、記憶素子を選択トランジスタと接続してメモリセルを構成する。この場合、記憶素子に流れる電流は、選択トランジスタに流すことが可能な電流(選択トランジスタの飽和電流)の大きさに制限される。
このため、選択トランジスタの飽和電流以下の電流で書き込みを行う必要があり、スピン注入の効率を改善して、記憶素子に流す電流を低減する必要がある。
また、読み出し信号を大きくするためには、大きな磁気抵抗変化率を確保する必要があり、そのためには記憶層の両側に接している中間層をトンネル絶縁層(トンネルバリア層)とした記憶素子の構成にすることが効果的である。
このように中間層としてトンネル絶縁層を用いた場合には、トンネル絶縁層が絶縁破壊することを防ぐために、記憶素子に流す電流量に制限が生じる。この観点からも、スピン注入時の電流を抑制する必要がある。
特開2003−17782号公報 米国特許第6256223号明細書
Phys.Rev.B 54.9353(1996) J.Magn.Mat. 159.L1(1996)
ところで、電流によって書き込まれた情報を記憶して保持しなければ、メモリとはなり得ない。そのため、記憶層の熱揺らぎに対する安定性(熱安定性)の確保が必要である。
スピン注入による磁化反転を利用する記憶素子の場合、従来のMRAMと比較して、記憶層の体積が小さくなるので、単純に考えると熱安定性は低下する方向にある。
記憶層の熱安定性が確保されていないと、反転した磁化の向きが、熱により再反転してしまい、書き込みエラーとなってしまう。
そのため、スピン注入による磁化反転を利用する記憶素子において、熱安定性は非常に重要な特性である。
一般に、書き込みにあまりエネルギーを費やさない素子は、エネルギーバリアが低いため、情報が消えやすい。
一方、書き込みに大きなエネルギーを要する素子は、高いエネルギーバリアを形成することが可能であるため、情報の保持も安定していると言える。
スピン注入による磁化反転を利用する記憶素子において、スピン注入効率が等しい構成で比較すると、記憶層の飽和磁化量及び記憶層の体積が大きくなるに従い、熱安定性が高くなると同時に、書き込みに大きな電流を必要とするようになる。
熱安定性指標は、一般に、熱安定性パラメーター(Δ)で表すことができる。
Δは、Δ=KV/kT(K:異方性エネルギー、V:記憶層の体積、k:ボルツマン定数、T:温度)で与えられる。
従って、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させる構成の記憶素子が、メモリとして存在し得るためには、スピン注入効率を改善して磁化反転に必要な電流をトランジスタの飽和電流以下に減らすと同時に、書き込まれた情報をしっかり保持する熱安定性を確保する必要がある。
上述した問題の解決のために、本発明は、書き込み電流を増大させることなく、熱安定性を改善することができる記憶素子を有するメモリを提供するものである。
本発明のメモリは、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、積層方向に電流を流すことにより、記憶層の磁化の向きが変化して、記憶層に対して情報の記録が行われる記憶素子と、この記憶素子の積層方向に流す電流を供給する配線とを備え、記憶素子の最も上の、Taが用いられているキャップ層の上に隣接して積層され、記憶素子と配線との間に配置された層に、記憶層と熱膨張係数の異なる、TiN,WN,TaNのうちのいずれかの材料が用いられて、記憶層に歪が印加されている構成であるものである。
上述の本発明のメモリの構成によれば、情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、記憶層に対して、中間層を介して磁化固定層が設けられ、中間層が絶縁体から成り、積層方向にスピン偏極した電子を注入することにより、記憶層の磁化の向きが変化して、記憶層に対して情報の記録が行われる記憶素子と、この記憶素子の積層方向に流す電流を供給する配線とを備え、記憶素子が、記憶層に歪が印加されている構成であることにより、配線を通じて記憶素子の積層方向に電流を流してスピン注入による情報の記録を行うことができる。
また、記憶素子の最も上の、Taが用いられているキャップ層の上に隣接して積層され、記憶素子と配線との間に配置された層に、記憶層と熱膨張係数の異なる、TiN,WN,TaNのうちのいずれかの材料が用いられて、記憶層に歪が印加されていることにより、記憶層の保磁力を大きくすることが可能になるため、記憶層の熱安定性を向上することが可能になる。
さらに、記憶層の飽和磁化を増大させないで、保磁力を大きくすることが可能になるため、書き込み電流量を増大させることなく、記憶層の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
上述の本発明によれば、記憶層の磁化の向きを反転させるために必要となる電流量(閾値電流)を増大させることなく、情報保持能力である熱安定性を確保することができるため、特性バランスに優れた記憶素子を構成することができる。
これにより、動作エラーをなくして、記憶素子の動作マージンを充分に得ることができる。
また、メモリとして必要な熱安定性を確保しても、書き込み電流が増えることがないので、大きな電圧をかける必要がなくなることから、中間層である絶縁体が破壊されることもなくなる。
従って、安定して動作する、信頼性の高いメモリを実現することができる。
さらにまた、書き込み電流を低減しても、メモリとして必要となる熱安定性を充分に確保することが可能となるため、書き込み電流を低減して、記憶素子に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。
従って、メモリ全体の消費電力を低減することも可能になる。
本発明の一実施の形態のメモリの概略構成図(斜視図)である。 図1の記憶素子の断面図である。 図1の記憶素子の平面図である。 図3に示した構成を一部変形した構成を示す平面図である。 本発明の他の実施の形態のメモリの概略構成図(平面図)である。 A 本発明のさらに他の実施の形態のメモリの概略構成図である。 B 図6AのX−Xにおける断面図である。 特性の測定のために作製した記憶素子の試料の概略断面図である。 スピン注入による磁化反転を利用したメモリの概略構成図(斜視図)である。 図8のメモリの断面図である。 従来のMRAMの構成を模式的に示した斜視図である。
まず、本発明の具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。
本発明は、前述したスピン注入により、記憶素子の記憶層の磁化の向きを反転させて、情報の記録を行うものである。記憶層は、強磁性層等の磁性体により構成され、情報を磁性体の磁化状態(磁化の向き)により保持するものである。
スピン注入により磁性層の磁化の向きを反転させる基本的な動作は、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)もしくは磁気トンネル接合素子(MTJ素子)から成る記憶素子に対して、その膜面に垂直な方向に、ある閾値(Ic)以上の電流を流すものである。このとき、電流の極性(向き)は、反転させる磁化の向きに依存する。
この閾値よりも絶対値が小さい電流を流した場合には、磁化反転を生じない。
スピン注入によって、磁性層の磁化の向きを反転させるときに、必要となる電流の閾値Icは、現象論的に、下記式(1)により表される(例えば、F.J.Albert他著、Appl.Phys.Lett.,77,p.3809,2000年、等を参照)。
Figure 0005641026
なお、式(1)において、Aは定数、αはスピン制動定数、ηはスピン注入効率、Msは飽和磁化量、Vは磁性層(記憶層)の体積である。
本発明では、式(1)で表されるように、電流の閾値が、磁性層の体積V、磁性層の飽和磁化Ms、スピン注入効率と制動定数を制御することにより、任意に設定することが可能であることを利用する。
そして、磁化状態により情報を保持することができる磁性層(記憶層)と、磁化の向きが固定された磁化固定層とを有する記憶素子を構成する。
メモリとして存在し得るためには、書き込まれた情報を保持することができなければならない。情報を保持する能力の指標として、前述した熱安定性指標Δの値で判断される。磁性層(記憶層)の熱安定性指標Δは、下記式(2)により表される。
Figure 0005641026
なお、式(2)において、Bは定数、Hc0は0Kでの保磁力Hc、Msは飽和磁化量、Vは体積である。
一般に、記憶された情報を85℃で10年間保持するためには、熱安定性指標Δの値として60以上が必要とされる。この熱安定性指標Δと電流の閾値Icとは、トレードオフの関係になることが多く、メモリ特性を維持するには、これらの両立が課題となることが多い。
記憶層の磁化状態を変化させる電流の閾値は、実際には、例えば記憶層の厚さが2nmであり、平面パターンが100nm×150nmの略楕円形のトンネル磁気抵抗効果素子(TMR素子)において、+側の閾値+Ic=+0.5mAであり、−側の閾値−Ic=−0.3mAであり、その際の電流密度は約3.5×10A/cmである。これらは、上記の式(1)にほぼ一致する。
一方、電流磁場により磁化反転を行う通常のMRAMでは、書き込み電流が数mA以上必要となる。
これに対して、スピン注入により磁化反転を行う場合には、上述のように、書き込み電流の閾値が充分に小さくなるため、集積回路の消費電力を低減させるために有効であることがわかる。
また、通常のMRAMで必要とされる、電流磁界発生用の配線(図10の105)が不要となるため、集積度においても通常のMRAMに比較して有利である。
そして、スピン注入により磁化反転を行う場合には、記憶素子に直接電流を流して情報の書き込み(記録)を行うことから、書き込みを行うメモリセルを選択するために、記憶素子を選択トランジスタと接続してメモリセルを構成する。
この場合、記憶素子に流れる電流は、選択トランジスタに流すことが可能な電流(選択トランジスタの飽和電流)の大きさに制限されるため、書き込み電流の許容範囲も制限されることになる。
これに対して、記憶層の磁化量を減らせば、書き込み電流の閾値を低減して許容範囲を広げることが可能になるが、前述したように、記憶層の熱安定性(指標Δ)を損なうことになる。メモリを構成するためには、熱安定性指標Δがある程度以上の大きさである必要がある。
また、電流磁場により磁化反転を行う通常のMRAMでは、保磁力やノイズを抑制するために、磁歪の影響を小さく制御する必要があった。そのため、磁歪定数の抑制が大きな課題の一つとなっていた。
そして、磁歪の影響を抑えるために、記憶層の磁歪定数をゼロに近くする材料を用いることが考えられていた。例えば、NiFeは、磁歪定数が小さく軟磁気特性を示す代表的な材料で、ハードディスクドライブ用の読み出し側の磁気ヘッドにはNiFeが重用されてきた。改善されたNiFeの磁歪定数(λ)は10−6〜10−7である。
これに対して、スピン注入による磁化反転を行う記憶素子の場合、保磁力が大きくなっても、必ずしも書き込み電流が増大するわけではないので、磁歪定数を極小化する必要はない。むしろ、保磁力を大きくすると、記憶素子の保持能力を示す熱安定性が向上し、記憶素子の性能向上を図ることができる。
具体的に、本発明における記憶素子の磁歪定数は、2×10−6以上、1×10−4以下が望ましい。
磁歪定数の調整は、強磁性層を構成するCoとFeとの組成比を調整したり、Al,Ti,V,Cr,Ga,Ge,Tb,Gd,B,C,N,O,P,S等の添加元素を適量添加して調整したりすることができる。
しかしながら、MTJ素子(TMR素子)の磁気抵抗特性や、スピン注入効率を優先すると、記憶層の材料選定の観点から、過度に磁歪定数のみを大きくすることはできない。
そこで、本願の発明者等が種々の検討を行った結果、MTJ素子の記憶層に歪を印加して、磁歪により記憶層の保磁力を向上させることにより、書き込み電流を増やすことなく、熱安定性を改善することができ、安定したメモリを形成することができることを、見出した。
そして、MTJ素子の記憶層に歪を印加するには、(1)MTJ素子の周囲を埋める材料とその形成条件とを制御すること、(2)MTJ素子の周囲に応力発生用の材料の層を形成すること、(3)隣接するMTJ素子の間に素子分離層を形成して応力を付与すること、(4)マトリクス状に配列されたMTJ素子の各行間にTiN等で形成されたライナー層を形成し、一方向(行方向)にのみ応力を加えること等が、有効であることを見出した。
また、(5)MTJ素子を構成する記憶層以外の層やMTJ素子の上下に隣接して積層された層、即ち例えば、下地層、キャップ層、上部電極層、下部電極層、或いは、製造時にMTJ素子をパターニングするためのマスクを残したハードマスク層に、MTJ素子の記憶層とは熱膨張係数が異なり、内部応力の大きいTiN等の材料を用いて、記憶層に応力が加わる構成も、MTJ素子の記憶層に歪を印加することができるので、有効である。
この構成の場合、用いる材料としては、TiNの他に、Ti,Ta,TaN,W,WN等のIVB族からVIB族の遷移金属及びその窒化物が挙げられる。
なお、上述した、下地層、キャップ層、上部電極層、下部電極層、或いは、ハードマスク層以外のMTJ素子を構成する層、例えば、磁化固定層の強磁性層、中間層(例えばトンネル絶縁層)、反強磁性層等を、記憶層とは熱膨張係数が異なる材料にすることも可能である。ただし、これら磁化固定層の強磁性層、中間層、反強磁性層は、記憶素子の特性を左右するので、最良の特性が得られる材料とすることが望ましいことから、下地層、キャップ層、上部電極層、下部電極層、或いは、ハードマスク層に、記憶層とは熱膨張係数が異なる材料を使用する方が好ましい。
(1)のMTJ素子の周辺を埋める材料としては、線膨張係数の小さいアルカリハライド型のセラミックスが有利であるが、具体的には、SiN,SiO,ZrSiO等が挙げられる。250℃以上の温度で形成される材料であれば、これらの材料を用いることで問題ない。
より好ましくは、MTJ素子の記憶層の形状異方性に対応して、記憶層の長手方向(例えば平面形状が楕円形の場合の長軸方向)に、引っ張り応力が作用するように、歪を印加するための構成(MTJ素子の周囲の材料、トレンチ素子分離層、ライナー層等)を選定する。
なお、本発明の構成においては、記憶層を構成する強磁性層の保磁力を可能な限り大きくすることが望ましい。具体的には、短軸100nm、長軸200nmの楕円形の平面形状を有するMTJ素子において、記憶層の保磁力が150[Oe]以上であることが望ましい。
本発明の構成において、さらに強磁性層が150[Oe]以上の保磁力を有することにより、記憶層の熱安定性を充分に向上させ、かつ反転電流の増大を抑制することができる。
さらに、本発明では、選択トランジスタの飽和電流値を考慮して、記憶層と磁化固定層との間の非磁性の中間層として、絶縁体から成るトンネル絶縁層を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成する。
トンネル絶縁層を用いて磁気トンネル接合(MTJ)素子を構成することにより、非磁性導電層を用いて巨大磁気抵抗効果(GMR)素子を構成した場合と比較して、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができ、読み出し信号強度を大きくすることができるためである。
また、トンネル絶縁層の材料として、特に、酸化マグネシウム(MgO)を用いることにより、これまで一般的に用いられてきた酸化アルミニウムを用いた場合よりも、磁気抵抗変化率(MR比)を大きくすることができる。
一般に、スピン注入効率はMR比に依存し、MR比が大きいほど、スピン注入効率が向上し、磁化反転電流密度を低減することができる。
従って、中間層であるトンネル絶縁層の材料として酸化マグネシウムを用い、同時に上述の構成の記憶層を用いることにより、スピン注入による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
これにより、MR比(TMR比)を確保して、スピン注入による書き込み閾値電流を低減することができ、少ない電流で情報の書き込み(記録)を行うことができる。また、読み出し信号強度を大きくすることができる。
トンネル絶縁層を酸化マグネシウム(MgO)膜により形成する場合には、MgO膜が結晶化していて、001方向に結晶配向性を維持していることがより望ましい。
なお、本発明において、記憶層と磁化固定層との間の中間層は、酸化マグネシウムから成る構成(トンネル絶縁層)とする他にも、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、SiO,Bi,MgF,CaF,SrTiO,AlLaO,Al−N−O等の各種の絶縁体、誘電体、半導体を用いて構成することもできる。
さらにまた、中間層に酸化マグネシウムを用いた場合に優れた磁気抵抗効果特性(MR特性)を得るためには、アニール温度を300℃以上、望ましくは340℃〜360℃の高い温度とすることが要求される。これは、従来中間層に用いられていた酸化アルミニウムの場合のアニール温度の範囲(250℃〜280℃)と比較して、高温になっている。
これは、酸化マグネシウム等のトンネル絶縁層の適正な内部構造や結晶構造を形成するために必要になるからである、と考えられる。
このため、記憶素子の強磁性層にも、この高い温度のアニールに耐性を有するように、耐熱性のある強磁性材料を用いることにより、優れたMR特性を得ることができる。
トンネル絶縁層の面積抵抗値は、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させるために必要な電流密度を得る観点から、数十Ωμm程度以下に制御する必要がある。
そして、MgO膜から成るトンネル絶縁層では、面積抵抗値を上述の範囲とするために、MgO膜の膜厚を1.5nm以下に設定する必要がある。
また、記憶層の磁化の向きを、小さい電流で容易に反転できるように、記憶素子を小さくすることが望ましい。
従って、好ましくは、記憶素子の面積を0.04μm以下とする。
なお、上述した構成条件を有する記憶層と、材料又は組成範囲の異なる他の強磁性層とを直接積層させることも可能である。また、強磁性層と軟磁性層とを積層させたり、複数層の強磁性層を軟磁性層や非磁性層を介して積層させたりすることも可能である。このように積層させた場合でも、本発明の効果が得られる。
特に、複数層の強磁性層を非磁性層を介して積層させた構成としたときには、強磁性層の層間の相互作用の強さを調整することが可能になるため、記憶素子の寸法がサブミクロン以下になっても、磁化反転電流が大きくならないように抑制することが可能になるという効果が得られる。この場合の非磁性層の材料としては、Ru,Os,Re,Ir,Au,Ag,Cu,Al,Bi,Si,B,C,Cr,Ta,Pd,Pt,Zr,Hf,W,Mo,Nbまたはそれらの合金を用いることができる。
磁化固定層は、一方向の異方性を有していることが望ましく、記憶層は一軸異方性を有していることが望ましい。
また、磁化固定層及び記憶層のそれぞれの膜厚は、1nm〜30nmであることが好ましい。
記憶素子のその他の構成は、スピン注入により情報を記録する記憶素子の従来公知の構成と同様とすることができる。
磁化固定層は、強磁性層のみにより、或いは反強磁性層と強磁性層の反強磁性結合を利用することにより、その磁化の向きが固定された構成とする。
また、磁化固定層は、単層の強磁性層から成る構成、或いは複数層の強磁性層を非磁性層を介して積層した積層フェリ構造とする。
磁化固定層を積層フェリ構造としたときには、磁化固定層の外部磁界に対する感度を低下させることができるため、外部磁界による磁化固定層の不要な磁化変動を抑制して、記憶素子を安定して動作させることができる。さらに、各強磁性層の膜厚を調整することができ、磁化固定層からの漏洩磁界を抑えることができる。
積層フェリ構造の磁化固定層を構成する強磁性層の材料としては、Co,CoFe,CoFeB等を用いることができる。また、非磁性層の材料としては、Ru,Re,Ir,Os等を用いることができる。
反強磁性層の材料としては、FeMn合金、PtMn合金、PtCrMn合金、NiMn合金、IrMn合金、NiO、Fe等の磁性体を挙げることができる。
また、これらの磁性体に、Ag,Cu,Au,Al,Si,Bi,Ta,B,C,O,N,Pd,Pt,Zr,Hf,Ir,W,Mo,Nb等の非磁性元素を添加して、磁気特性を調整したり、その他の結晶構造や結晶性や物質の安定性等の各種物性を調整したりすることができる。
また、記憶素子の膜構成は、記憶層が磁化固定層の上側に配置される構成でも、下側に配置される構成でも全く問題はない。
なお、記憶素子の記憶層に記録された情報を読み出す方法としては、記憶素子の記憶層に薄い絶縁膜を介して、情報の基準となる磁性層を設けて、絶縁層を介して流れる強磁性トンネル電流によって読み出してもよいし、磁気抵抗効果により読み出してもよい。
続いて、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の一実施の形態として、メモリの概略構成図(斜視図)を図1に示す。
このメモリは、互いに直交する2種類のアドレス配線(例えばワード線とビット線)の交点付近に、磁化状態で情報を保持することができる記憶素子が配置されて成る。
即ち、シリコン基板等の半導体基体10の素子分離層2により分離された部分に、各メモリセルを選択するための選択用トランジスタを構成する、ドレイン領域8、ソース領域7、並びにゲート電極1が、それぞれ形成されている。このうち、ゲート電極1は、図中前後方向に延びる一方のアドレス配線(例えばワード線)を兼ねている。
ドレイン領域8は、図中左右の選択用トランジスタに共通して形成されており、このドレイン領域8には、配線9が接続されている。
そして、ソース領域7と、上方に配置された、図中左右方向に延びる他方のアドレス配線(例えばビット線)6との間に、記憶素子3が配置されている。この記憶素子3は、スピン注入により磁化の向きが反転する強磁性層から成る記憶層を有する。
また、この記憶素子3は、2種類のアドレス配線1,6の交点付近に配置されている。
この記憶素子3は、ビット線6と、ソース領域7とに、それぞれ上下のコンタクト層4を介して接続されている。
これにより、2種類のアドレス配線1,6を通じて、記憶素子3に上下方向の電流を流して、スピン注入により記憶層の磁化の向きを反転させることができる。
また、本実施の形態のメモリの記憶素子3の断面図を図2に示す。
図2に示すように、この記憶素子3は、スピン注入により磁化M1の向きが反転する記憶層17に対して、下層に磁化固定層31を設けている。磁化固定層31の下に反強磁性層12が設けられ、この反強磁性層12により、磁化固定層31の磁化の向きが固定される。
記憶層17と磁化固定層31との間には、トンネルバリア層(トンネル絶縁層)となる絶縁層16が設けられ、記憶層17と磁化固定層31とにより、MTJ素子が構成されている。
また、反強磁性層12の下には下地層11が形成され、記憶層17の上にはキャップ層18が形成されている。
磁化固定層31は、積層フェリ構造となっている。
具体的には、磁化固定層31は、2層の強磁性層13,15が、非磁性層14を介して積層されて反強磁性結合した構成である。
磁化固定層31の各強磁性層13,15が積層フェリ構造となっているため、強磁性層13の磁化M13が右向き、強磁性層15の磁化M15が左向きとなっており、互いに反対向きになっている。これにより、磁化固定層31の各強磁性層13,15から漏れる磁束が、互いに打ち消し合う。
磁化固定層31の強磁性層13,15の材料としては、特に限定はないが、鉄、ニッケル、コバルトの1種もしくは2種以上からなる合金材料を用いることができる。さらにNb,Zr,Gd,Ta,Ti,Mo,Mn,Cu等の遷移金属元素やSi,B,C等の軽元素を含有させることもできる。また、例えばCoFe/NiFe/CoFeの積層膜といったように、材料が異なる複数の膜を直接(非磁性層を介さずに)積層して、強磁性層13,15を構成してもよい。
磁化固定層31の積層フェリを構成する非磁性層14の材料としては、ルテニウム、銅、クロム、金、銀等が使用できる。
非磁性層14の膜厚は、材料によって変動するが、好ましくは、ほぼ0.5nmから2.5nmの範囲で使用する。
本実施の形態では、特に、記憶素子3を上から見た平面図を図3に示すように、楕円形の平面形状を有する記憶素子3に対して、記憶素子3の記憶層17を含む各層の周囲に、熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41が設けられている構成とする。
そして、記憶層17の熱膨張係数を1×10−5[/K]以上とし、絶縁層41の熱膨張係数は、5×10−6[/K]以下とする。
このように熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41で、熱膨張係数の比較的大きい記憶層17等、記憶素子3の各層の周囲を囲うことによって、絶縁層41から記憶層17へ歪を印加することができる。
熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41の材料としては、前述した、線膨張係数の小さいアルカリハライド型のセラミックス、具体的には、SiN,SiO,ZrSiO等が挙げられる。
さらに、本実施の形態において、中間層である絶縁層16を、酸化マグネシウム層とした場合には、磁気抵抗変化率(MR比)を高くすることができる。
このようにMR比を高くすることによって、スピン注入の効率を向上して、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要な電流密度を低減することができる。
本実施の形態の記憶素子3は、下地層11からキャップ層18までを真空装置内で連続的に形成して、その後エッチング等の加工によって記憶素子3のパターンを形成することにより、製造することができる。
上述の本実施の形態の構成によれば、記憶素子3の記憶層17を含む各層の周囲に、熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41を設けたことにより、この絶縁層41から記憶層17に歪を印加して、磁歪により記憶層17の保磁力を増大させることができる。
これにより、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要となる、書き込み電流量を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
記憶層17の熱安定性が向上することにより、記憶素子3に対して電流を流して情報を記録する、動作領域を拡大することが可能になり、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
また、記憶素子3の記憶層17に充分な熱安定性を確保しても、書き込み電流が増えることがないので、大きな電圧をかける必要がなくなることから、中間層である絶縁層16が絶縁破壊されることもなくなる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができる。
さらにまた、書き込み電流を低減しても、熱安定性を充分に確保することが可能となるため、書き込み電流を低減して、記憶素子3に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。
これにより、本実施の形態の記憶素子3によりメモリセルを構成した、メモリ全体の消費電力を低減することも可能になる。
従って、情報保持特性が優れた、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
本実施の形態において、記憶素子3の周囲に形成する絶縁層41は、250℃以上500℃以下で、MOSプロセスとして比較的高温かつ汎用の条件で形成することができる。しかも、新たなマスクや複雑なプロセス工程を必要としないため、短時間で形成することができる。
なお、図3に示した構成とする代わりに、平面図を図4に示すように、記憶層17を含む各層の周囲のみに、熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41を設け、その他の部分(さらに外側の部分)は通常用いられるような絶縁層42とした構成も可能である。
この構成とした場合も、熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41から、記憶素子3の記憶層17に歪を印加することができる。
また、図3や図4に示した構成において、熱膨張係数の比較的小さい絶縁層41は、必ずしも記憶素子3の積層膜の全体の周囲を覆っていなくても良く、少なくとも記憶素子3の記憶層17の周囲を絶縁層41で覆って、記憶層17に歪を印加することができるようにすれば良い。
次に、本発明の他の実施の形態として、メモリ(記憶装置)の概略構成図(平面図)を、図5に示す。
図5に示すように、平面形状が楕円形状である記憶素子3により各メモリセルが構成され、メモリセルが多数マトリクス状に配置されている。
各メモリセルを構成する記憶素子3は、例えば、図2に断面図を示した膜構成とすることができる。
本実施の形態のメモリにおいては、特に、メモリセルの各行間に、記憶素子3の周囲とは熱膨張係数が異なる材料から成るライナー層43を、帯状に形成している。
このライナー層43は、楕円形状の記憶素子3の長軸方向(長手方向;行方向)と平行に形成されている。
そして、ライナー層43と各メモリセルの記憶素子3との間は、絶縁層44で埋められている。
メモリセル間の絶縁は、記憶素子3の周囲の絶縁層44によって確保されているので、ライナー層43の材料は、絶縁性に限らず、導電性を有していても構わない。そこで、例えば、電流を流すための配線や信号を伝送するための配線と兼用することも可能である。
ライナー層43の材料としては、例えば、熱膨張係数の比較的小さい材料、例えば、TiNが好適であるが、その他にも、Ti,Ta,TaN,W,WN等のIVB族からVIB族の遷移金属系材料や、SiN,AlN,Al,ZeO等が挙げられる。
熱膨張係数の比較的小さい材料を使用することにより、絶縁層44よりも熱膨張係数が小さいライナー層43から応力を発生させて、絶縁層44を通じて記憶層17に歪を付与することができる。
一方、ライナー層43の材料として、記憶素子3の周囲の絶縁層44よりも充分に熱膨張係数が大きい、熱膨張係数の比較的大きい材料を使用することも可能である。
即ち、ライナー層43には、記憶素子3の周囲の絶縁層44とは熱膨張係数が異なる材料を用いれば良い。
上述の本実施の形態の構成によれば、記憶素子3から成るメモリセルの各行間に、記憶素子3の周囲の絶縁層44とは熱膨張係数が異なる材料から成るライナー層43を帯状に設けたことにより、このライナー層43から絶縁層44を通じて記憶層17に歪を印加して、磁歪により記憶層17の保磁力を増大させることができる。
これにより、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要となる、書き込み電流量を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
記憶層17の熱安定性が向上することにより、記憶素子3に対して電流を流して情報を記録する、動作領域を拡大することが可能になり、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
また、記憶素子3の記憶層17に充分な熱安定性を確保しても、書き込み電流が増えることがないので、大きな電圧をかける必要がなくなることから、中間層である絶縁層16が絶縁破壊されることもなくなる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができる。
さらにまた、書き込み電流を低減しても、熱安定性を充分に確保することが可能となるため、書き込み電流を低減して、記憶素子3に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。
これにより、本実施の形態の記憶素子3によりメモリセルを構成した、メモリ全体の消費電力を低減することも可能になる。
従って、情報保持特性が優れた、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
本実施の形態において、ライナー層43は、250℃以上500℃以下で、MOSプロセスとして比較的高温かつ汎用の条件で形成することができる。しかも、複雑なプロセス工程を必要としないため、短時間で形成することができる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態のメモリ(記憶装置)を説明する。
本実施の形態では、メモリの各メモリセルを構成する、記憶素子の膜構成に特徴を有する。
具体的には、図2に断面図を示した記憶素子3の膜構成において、下地層11、キャップ層18、下地層11の下層に接続して設けられる下部電極層(図示せず)、キャップ層18の上層に接続して設けられる上部電極層(図示せず)、或いは製造時に記憶素子3の積層膜(MTJ素子)をパターニングするために使用したマスクを残したハードマスク層のうち、少なくともいずれかの層を、記憶層17よりも熱膨張係数が充分小さい材料を用いて構成する。
このような材料としては、TiN等の材料、その他、Ti,Ta,TaN,W,WN等のIVB族からVIB族の遷移金属及びその窒化物を用いることができる。
このような材料を用いることにより、記憶層17よりも熱膨張係数が充分小さい層から、記憶層17に歪を印加することができる。
本実施の形態の記憶素子周辺は250℃以上500℃以下で、MOSプロセスとして比較的高温な汎用条件で形成することができ、しかも新たなマスクや複雑なプロセス工程が必要なわけではなく、短時間で形成することができる。
次に、本発明のさらに他の実施の形態として、メモリ(記憶装置)の概略構成図(平面図)を、図6Aに示す。
図6Aに示すように、平面形状が楕円形の記憶素子3により各メモリセルが構成され、メモリセルがマトリクス状に配置されている。
各メモリセルの間は、絶縁層から成る素子分離層45により、互いに絶縁されている。
本実施の形態においては、さらに、この素子分離層45から記憶素子3の記憶層17に歪が印加されている構成とする。
そのためには、素子分離層45に、例えば、前述した、線膨張係数の小さいアルカリハライド型のセラミックス、具体的には、SiN,SiO,ZrSiO等のような、熱膨張係数の小さい材料を用いればよい。
ここで、図6AのX−Xにおける断面図を、図6Bに示す。
絶縁層22によってそれぞれメモリセル毎に分離されたコンタクト層4(21)の上に、記憶素子3が形成されている。
そして、各メモリセルの記憶素子3の間を埋めて、素子分離層45が形成されている。
図6A及び図6Bに示す素子分離層45を形成するには、例えば、次のような製造工程を採る。
まず、記憶素子3の積層膜を全面的に形成する。
次に、記憶素子3の積層膜をエッチングによってパターニングして、各メモリセルに分離する。
続いて、各メモリセルの間にできた穴を埋めて、素子分離層45を形成する。
その後、記憶素子3上に余分な素子分離層45が残っていれば、除去する。
このようにして、図6Bに示した断面構造を作製することができる。
上述の本実施の形態の構成によれば、記憶素子3から構成されるメモリセルの間が素子分離層45によって絶縁され、素子分離層45から記憶素子3の記憶層17に歪が印加されていることにより、磁歪により記憶層17の保磁力を増大させることができる。
これにより、記憶層17の磁化M1の向きを反転させるために必要となる、書き込み電流量を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
記憶層17の熱安定性が向上することにより、記憶素子3に対して電流を流して情報を記録する、動作領域を拡大することが可能になり、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
また、記憶素子3の記憶層17に充分な熱安定性を確保しても、書き込み電流が増えることがないので、大きな電圧をかける必要がなくなることから、中間層である絶縁層16が絶縁破壊されることもなくなる。
従って、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができる。
さらにまた、書き込み電流を低減しても、熱安定性を充分に確保することが可能となるため、書き込み電流を低減して、記憶素子3に書き込みを行う際の消費電力を低減することが可能になる。
これにより、本実施の形態の記憶素子3によりメモリセルを構成した、メモリ全体の消費電力を低減することも可能になる。
従って、情報保持特性が優れた、安定して動作する信頼性の高いメモリを実現することができ、記憶素子3を備えたメモリにおいて、消費電力を低減することができる。
なお、本発明において、記憶素子の平面形状は、図3・図4・図5・図6Aに示した略楕円形に限定されるものではなく、他の形状も可能である。ただし、記憶層に形状異方性を持たせた方が、磁化の向きを互いに逆向きの2つの向きに規制しやすい。楕円形の他には、例えば、紡錘形、長方形等が考えられる。
ここで、本発明の記憶素子の構成において、具体的に記憶層を構成する強磁性材料、ライナー層、ハードマスク層、埋め込み材料等、各層の材料や膜厚等を選定して、特性を調べた。
実際のメモリでは、図1や図8に示したように、記憶素子以外にもスイッチング用の半導体回路等が存在するが、選択用のトランジスタや下層配線の製造工程については、説明を省略する。
また、図1では、記憶素子3の上下にコンタクト層4が接続されているが、ここでは、図7に断面図を示すように、記憶素子3上にビット線24(BL)を直接接続した構造とした。
<実験1>
メモリセルの間にライナー層を設け、また、ライナー層の材料を変えて、それぞれ特性を調べた。
図7に示すように、下層配線と接続するコンタクト層21が形成された絶縁層22上に、図2に示した構成の記憶素子3を形成した。
具体的には、図2に示した構成の記憶素子3において、各層の材料及び膜厚を、下地膜11を膜厚3nmのTa膜、反強磁性層12を膜厚20nmのPtMn膜、磁化固定層31を構成する強磁性層13を膜厚2nmのCoFe膜、強磁性層15を膜厚2.5nmのCoFeB膜、積層フェリ構造の磁化固定層31を構成する非磁性層14を膜厚0.8nmのRu膜、トンネル絶縁層となる絶縁層(バリア層)16を膜厚0.9nmの酸化マグネシウム膜、記憶層17を膜厚3nmのCoFeB膜、キャップ層18を膜厚5nmのTa膜と選定し、また下地膜11と反強磁性層12との間に図示しない膜厚100nmのCu膜(後述するワード線となるもの)を設けて、各層を形成した。
上記膜構成で、PtMn膜の組成はPt50Mn50(原子%)、CoFe膜の組成はCo90Fe10(原子%)とした。
CoFeB膜のCoとFeの比率は80:20とした。
酸化マグネシウム膜から成る絶縁層16以外の各層は、DCマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
酸化マグネシウム(MgO)膜から成る絶縁層16は、RFマグネトロンスパッタ法を用いて成膜した。
さらに、記憶素子3の各層を成膜した後に、磁場中熱処理炉で、10kOe・360℃・2時間の熱処理を行い、反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理を行った。
ワード線部分をフォトリソグラフィによってマスクした後に、ワード線以外の部分の積層膜に対してArプラズマにより選択エッチングを行うことにより、ワード線(下部電極)を形成した。この際に、ワード線部分以外は、基板の深さ5nmまでエッチングされた。
その後、電子ビーム描画装置により記憶素子3のパターンのマスクを形成し、積層膜に対して選択エッチングを行い、記憶素子3を形成した。記憶素子3部分以外は、ワード線のCu層直上までエッチングした。
なお、特性評価用の記憶素子には、磁化反転に必要なスピントルクを発生させるために、記憶素子に充分な電流を流す必要があるため、トンネル絶縁層の抵抗値を抑える必要がある。そこで、記憶素子3のパターンを、短軸0.09μm×長軸0.18μmの楕円形状として、記憶素子3の面積抵抗値(Ωμm)が30Ωμmとなるようにした。
次に、記憶素子3部分以外を埋めて、厚さ150nm程度のシリコン酸化物から成る絶縁層23をスパッタリングによって形成し、記憶素子3を周囲と絶縁した。
その後、上部電極となるビット線24及びライナー層43を、それぞれフォトリソグラフィを用いてパターニングすることによって、順次形成した。ライナー層43は、記憶素子3に対して、図5に示した配置関係になるように、幅150nm・厚さ50nmになるように形成した。
さらに、ビット線24やライナー層43を覆って絶縁層25を形成し、ビット線24上の絶縁層25の一部を開口して測定用のパッドを形成した。
このようにして、記憶素子3から成るメモリセルを多数有し、メモリセルの各行の間に行方向のライナー層43が形成されたメモリの試料を作製した。
そして、ライナー層43の材料を、TaN(窒化タンタル)、SiN(窒化シリコン;熱膨張係数2.6×10−6/K)、TiN(窒化チタン;熱膨張係数4.1×10−6/K)、2Al・5SiO・2MgO(熱膨張係数2.5×10−6/K)、Al・4SiO・LiO(熱膨張係数1.9×10−6/K)と変えて、メモリを作製し、それぞれ実施例の試料とした。
また、ライナー層43を形成せず、その他は実施例の試料と同様にしてメモリを作製し、比較例の試料とした。
作製した実施例及び比較例の各試料について、下記のように特性の測定を行った。
(保磁力の測定)
まず、記憶素子に連続的に変化する外部磁場を加えながら、記憶素子の抵抗値を測定した。このとき、温度を室温25℃として、ワード線の端子とビット線の端子にかかるバイアス電圧が10mVとなるように調節した。
そして、記憶層の磁化の向きとは反対の方向に外部磁場を加えていき、外部磁界が記憶層の保磁力を上回ると、記憶層の磁化の向きが反転する。磁化の向きが反転することにより、記憶素子の抵抗値が変化するので、この抵抗値が変化したときの外部磁界の大きさを記憶素子の保磁力と等しいとみなして、記憶素子の保磁力を得た。
(反転電流値の測定)
記憶素子に、1μsから100msのパルス幅の電流を流して、その後の記憶素子の抵抗値を測定した。記憶素子の抵抗値を測定する際には、温度を室温25℃として、ワード線の端子とビット線の端子にかかるバイアス電圧が10mVとなるように調節した。
さらに、記憶素子に流す電流量を変化させて、この記憶層の磁化が反転する反転電流値を求めた。
そして、記憶素子間のばらつきを考慮するために、同一構成の記憶素子を20個程度作製して、上述の測定を行い、反転電流値の平均値をとった。
ここで、便宜上、ワード線からビット線に電流を流す場合の反転電流値をIc+と記し、ビット線からワード線に電流を流す場合の反転電流値をIcと記す。ワード線からビット線に電流を流す場合には、平行状態から反平行状態に反転し、ビット線からワード線に電流を流す場合には、反平行状態から平行状態に反転する。各パルス幅におけるIc値を横軸パルス幅でプロットし、1nsのパルス幅に外挿した値をIc値とした。
そして、Ic及びIcからそれぞれ得られたIc値の絶対値の平均値を求め、これを各試料の反転電流値とした。
(熱安定性の指標Δの測定)
各パルス幅で測定された電流値Ic及び上述の方法により算出されたIcの値から、下記の式3に従い、熱安定性の指標Δを導出した。式3中のτ値は、スピン自転周波数の逆数で、通常1nsとする。
Figure 0005641026
測定結果として、測定により得られた、保磁力Hc値、熱安定性の指標Δ値、反転電流値Ic値を、表1にまとめて示す。
Figure 0005641026
表1より、ライナー層43を形成した実施例の試料は、いずれも保磁力Hc及び熱安定性の指標Δが、比較例の試料より向上していることがわかる。
実施例の試料のうちでは、ライナー層43の材料をTiN(窒化チタン)とした試料が、最も保磁力Hc及び熱安定性の指標Δが大きかった。
また、反転電流値Icは比較例と同等又は若干増える程度であり、ライナー層43を設けても、反転電流値が大きく増大することはない。
従って、ライナー層43を設けることにより、記憶層17の保磁力Hcや熱安定性の指標Δを向上させて、反転電流値(即ち、書き込み電流量)を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
そして、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
実験1の実施例の各試料では、絶縁層23で記憶素子3の周囲を埋めた後に、ライナー層43をパターン形成しているので、ライナー層43が絶縁層23よりも上方に形成されている。
これに対して、例えば、絶縁層23を掘って溝を形成し、この溝にライナー層43の材料を埋め込んで形成することも可能である。
<実験2>
記憶素子の積層膜の上にハードマスク層を残し、また、ハードマスク層の材料を変えて、特性を調べた。
実験1と同様にして、記憶素子3の各層を成膜し、さらに反強磁性層12のPtMn膜の規則化熱処理を行った。
続いて、記憶素子3の最上層(キャップ層18)の上に、ハードマスク層を100nmの厚さで形成した。
その後、実験1と同様にして、ワード線を形成し、さらに記憶素子3のパターンのレジストマスクを形成した。
次に、このレジストマスクを用いて、ハードマスク層をパターニングした。
そして、レジストマスクを除去した後に、ハードマスク層を用いて記憶素子3の各層をパターニングした。
次に、記憶素子3部分以外を、厚さ150nm程度のシリコン酸化物から成る絶縁層23をスパッタリングによって形成し、記憶素子3を周囲と絶縁した。
その後、ハードマスク層の上に、フォトグラフィを用いて、上部電極となるビット線24を形成した。即ち、ハードマスク層は、図7に示した断面構造に対して、記憶素子3とビット線24との間に設けている。
さらに、ビット線24を覆って絶縁層25を形成した後に、絶縁層25の一部を開口して測定用のパッドを形成した。
このようにして、記憶素子3から成るメモリセルを多数有するメモリの試料を作製した。
そして、ハードマスク層の材料を、TiN(窒化チタン)、WN(窒化タングステン)、TaN(窒化タンタル)、Mo(モリブデン)と変えて、メモリを作製した。このうち、ハードマスク層にMoを用いた試料は、記憶層17のCoFeBとの熱膨張係数の差が小さく、記憶層17への応力の付与が少ないので、比較例として、その他の試料を実施例とした。
作製した実施例及び比較例の各試料について、実験1と同様にして特性の測定を行った。
測定結果として、測定により得られた、保磁力Hc値、熱安定性の指標Δ値、反転電流値Ic値を、表2にまとめて示す。
Figure 0005641026
表2より、ハードマスク層にTiN,WN,TaNをそれぞれ用いた各実施例の試料は、いずれも保磁力Hc及び熱安定性の指標Δが、Moを用いた比較例の試料より高くなっていることがわかる。
実施例の試料のうちでは、ハードマスク層の材料をTiN(窒化チタン)とした試料が、最も保磁力Hc及び熱安定性の指標Δが大きかった。
また、反転電流値Icは比較例と同等又は若干増える程度であり、TiN,WN,TaNから成るハードマスク層を設けても、反転電流値が大きく増大することはない。
従って、記憶素子3の上に、TiN,WN,TaNから成るハードマスク層を設けることにより、記憶層17の保磁力Hcや熱安定性の指標Δを向上させて、反転電流値(即ち、書き込み電流量)を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
そして、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
<実験3>
記憶素子の周囲を埋め込む絶縁層23の材料を変えて、特性を調べた。
実験1と同様にして、記憶素子3の各層をパターニングした。
次に、記憶素子3部分以外を、厚さ150nm程度の絶縁層23をスパッタリングによって形成し、記憶素子3を周囲と絶縁した。
その後、フォトグラフィを用いて、上部電極となるビット線24を形成した。
さらに、ビット線24を覆って絶縁層25を形成した後に、絶縁層25の一部を開口して測定用のパッドを形成した。
このようにして、記憶素子3から成るメモリセルを多数有するメモリの試料を作製した。
そして、記憶素子3の周囲に埋め込む絶縁層23の絶縁材料を、SiN(窒化シリコン;熱膨張係数2.6×10−6/K)、SiO(酸化シリコン;熱膨張係数3.0×10−6/K)、Al(酸化アルミニウム;熱膨張係数7.2×10−6/K)、ZrSiO(熱膨張係数4.1×10−6/K)、Al・TiO(熱膨張係数1.4×10−6/K)と変えて、メモリを作製した。このうち、Al(酸化アルミニウム)を用いた試料は、記憶層17との熱膨張係数の差が小さくなり、記憶層17への応力の付与が少ないので、比較例として、その他の試料を実施例とした。
作製した実施例及び比較例の各試料について、実験1と同様にして特性の測定を行った。
測定結果として、測定により得られた、保磁力Hc値、熱安定性の指標Δ値、反転電流値Ic値を、表3にまとめて示す。
Figure 0005641026
表3より、各実施例の試料は、いずれも保磁力Hc及び熱安定性の指標Δが、比較例の試料よりも高くなっていることがわかる。
実施例の試料のうちでは、絶縁層23の材料をZrSiOとした試料が、最も保磁力Hc及び熱安定性の指標Δが大きかった。
また、反転電流値Icは比較例と同等又は若干増える程度であり、SiN,SiO,ZrSiO,Al・TiOを絶縁層23に用いても、反転電流値が大きく増大することはない。
従って、記憶素子3の周囲に埋め込む絶縁層23の材料として、SiN,SiO,ZrSiO,Al・TiOを用いることにより、記憶層17の保磁力Hcや熱安定性の指標Δを向上させて、反転電流値(即ち、書き込み電流量)を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保することが可能になる。
そして、動作のマージンを広く確保し、記憶素子3を安定して動作させることができる。
なお、前述した記憶素子3の周囲に埋め込む絶縁層23の熱膨張係数を5×10−6[/K]以下とする条件について、実施例の各試料はこの条件を満たし、酸化アルミニウムを絶縁層23に用いた比較例の試料はこの条件を満たしていない。
従って、この熱膨張係数の条件を満たすことにより、記憶層17の保磁力Hcや熱安定性の指標Δを向上させて、反転電流値(即ち、書き込み電流量)を増大させることなく、記憶層17の熱安定性を充分に確保して、記憶素子3を安定して動作させることができる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
3 記憶素子、4,21 コンタクト層、11 下地層、12 反強磁性層、13,15 強磁性層、14 非磁性層、16 トンネル絶縁層、17 記憶層、18 キャップ層、22,23,25,42,44 絶縁層、24 ビット線、31 磁化固定層、41 (熱膨張係数の比較的小さい)絶縁層、43 ライナー層、45 素子分離層

Claims (1)

  1. 情報を磁性体の磁化状態により保持する記憶層を有し、前記記憶層に対して、中間層を介して磁化固定層が設けられ、前記中間層が絶縁体から成り、積層方向にスピン偏極した電子を注入することにより、前記記憶層の磁化の向きが変化して、前記記憶層に対して情報の記録が行われる記憶素子と、
    前記記憶素子の前記積層方向に流す電流を供給する配線とを備え、
    前記記憶素子の最も上の、Taが用いられているキャップ層の上に隣接して積層され、前記記憶素子と前記配線との間に配置された層に、前記記憶層と熱膨張係数の異なる、TiN,WN,TaNのうちのいずれかの材料が用いられ、前記記憶層に歪が印加されている
    メモリ。
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