以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)Cに向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面Cから離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周方向である。また、タイヤ赤道面Cとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面C上にあって空気入りタイヤ1の周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「C」を付す。
本実施の形態に係る空気入りタイヤ1は、図1に示すように、トレッド部2と、その両側のサイドウォール部3およびビード部4とを含んで構成されている。さらに、空気入りタイヤ1は、カーカス5とベルト層6とを有する。
トレッド部2は、その外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面21に、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝22と、これら周方向主溝22により区画形成された複数の陸部をなすリブ23とを有している。例えば、本実施の形態では、4本の周方向主溝22が形成され、これら周方向主溝22により5本のリブ23が形成されている。そして、最もタイヤ幅方向の両外側のリブ23がショルダーリブ23aをなす。また、トレッド部2において、タイヤ幅方向最外側であって、ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向外側は、サイドウォール部3に連続するバットレス部25として構成されている。
サイドウォール部3は、トレッド部2と連続して、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の両外側に露出したものである。サイドウォール部3は、該サイドウォール部3に生じた外傷がカーカス5に達することを防止する。
ビード部4は、ビードコア41とビードフィラ42とを有する。ビードコア41は、スチールワイヤであるビードワイヤ41aをリング状に巻くことにより形成される。ビードコア41は、空気入りタイヤ1の内圧によって発生するカーカス5の張力を支える。ビードフィラ42は、カーカス5がビードコア41の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置される。ビードフィラ42は、カーカス5をビードコア41の位置に固定すると共にビード部4の形状を整える。さらに、ビードフィラ42は、ビード部4の剛性を高める。
カーカス5は、トレッド部2、両サイドウォール部3および両ビード部4を連続して跨ぎつつタイヤ幅方向の両側端が、一対のビード部4に対して巻き返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。また、カーカス5は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのカーカスコードが、ゴム材で被覆されたものである。カーカス5のカーカスコードは、空気入りタイヤ1のタイヤ赤道線Cに直交してタイヤ子午線方向(ラジアル方向)に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されている。なお、カーカス5におけるカーカスコードのタイヤ赤道線C(タイヤ周方向)に対する角度は、実質的に90[°]であって、タイヤ赤道線Cに対する90[°]を基準に−5[°]から+5[°]の範囲の角度を含む。このカーカス5は、空気入りタイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たすと共に、その内圧によって空気入りタイヤ1に負荷される荷重を支える。
ベルト層6は、トレッド部2においてカーカス5よりもタイヤ径方向外側に設けられ、トレッド部2においてカーカス5をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト層6は、有機繊維(ナイロンやポリエステルやレーヨンなど)やスチールなどのコードが、ゴム材で被覆されたベルトを有し、このベルトが複数積層されている。本実施の形態では、ベルト61,62,63,64を積層した4層構造をなしている。また、ベルト層6は、コードがタイヤ周方向、つまりタイヤ赤道線Cに対して、所定の角度をつけて配置されている。このベルト層6は、カーカス5に締め付け力を与えて剛性を高めると共に、空気入りタイヤ1が装着された車両の走行時において、衝撃を緩和してトレッド部2に生じた外傷がカーカス5に達することを防止する。
図2は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤを車両へ装着した概略図である。上述した構成の本実施の形態における空気入りタイヤ1は、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルを備えている。そして、図2に示すように、車両に装着する場合、タイヤ周方向において進行方向が指定されている。進行方向の指定は、図には明示しないが、例えば、サイドウォール部に設けられた指標により示される。この空気入りタイヤ1は、図3および図4に示すように、タイヤ径方向最外側の位置を基準とし、タイヤ赤道面Cを境にした一方側である路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量をHU、他方側である路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量をHLとした場合、HU>HLとする。
路面カントは、一般に、路面Rの排水性を向上させるために道路の中央から両路側に向かって形成された1.5[deg]〜2[deg]程度の傾斜である。この路面カントは、例えば、車両が右側を走行する米国の道路では、図2に示すように車両の進行方向に向いて路面Rが左側から右側に下る傾斜をなす。
ここで、接地端Tとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、かつ正規内圧を充填するとともに正規荷重の70%をかけたとき、この空気入りタイヤ1の踏面21が路面と接地する領域であるタイヤ接地域のタイヤ幅方向最外端である。
なお、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。
接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量を異ならせる手段としては、タイヤ子午断面におけるトレッド部2の踏面21のラジアス(半径)を路面カント上側と路面カント下側とで異ならせるか(図3参照)、ラジアスを異ならせず、ラジアスの中心位置C’をタイヤ赤道面Cからずらす(図4参照)。なお、ラジアスの中心位置C’をタイヤ赤道面Cからずらす場合、接地端Tまでずらしてもよい。
この空気入りタイヤ1によれば、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUを、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLよりも大きくするプロファイルとすることで、路面カントを有する路面を直進走行するとき、路面に接触する踏面21に、傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じることから、傾斜を下るように路面カント下側に向かおうと弾性変形する横力が抑えられる。この結果、空気入りタイヤ1の路面カント下側のタイヤ幅方向最外側のショルダーリブ23aが不均一に摩耗する多角形摩耗の発生、および多角形摩耗の摩耗速度を走行距離に対して遅らせるので、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、HU>HLの関係は、0.8≦HL/HU<1.0の範囲とすることが好ましい。HL/HUが0.8未満であると、路面カント上側に向かう力Pが大きくなりすぎ、適切な範囲を超えてしまう。
また、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルとしては、図5に示すように、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームをVU、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームをVLとした場合、VU<VLとする。
ここで、バットレス部25のゴムボリュームとは、接地端Tとタイヤ幅方向最大幅のベルト(ここでは、タイヤ径方向内側から2番目のベルト)62のエッジとを結んだ線と、この線からタイヤ幅方向外側にx=30[mm]平行移動した線との間におけるカーカス5の外側の領域(図5に斜線を設けた領域)に配置されたゴム量をいう。
バットレス部25のゴムボリュームを異ならせる手段としては、図5に示すように、バットレス部25にタイヤ周方向に延在する溝25aなどの凹部を設ける。
この空気入りタイヤ1によれば、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームVLを、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームVUよりも大きくするプロファイルとすることで、路面カントを有する路面を直進走行するとき、路面に接触する踏面21に、傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じることから、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、VU<VLの関係は、0.7≦VU/VL<1.0が好ましく、0.7≦VU/VL≦0.9がより好ましい。VU/VLが0.7未満であると、路面カント上側に向かう力Pが大きくなりすぎ、適切な範囲を超えてしまう。
なお、バットレス部25のゴムボリュームを異ならせる場合、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUと、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLとの関係は、HU≧HLとすることが好ましい。HU<HLであると、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量でバットレス部25のゴムボリュームによる効果を打ち消すことになるからである。
また、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルとしては、図6に示すように、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法において、路面カント上側のタイヤ径方向寸法をShU、路面カント下側のタイヤ径方向寸法をShLとした場合、ShU>ShLとする。
ここで、ビードトウ43とは、ビード部4のタイヤ径方向最内側の位置を示す。また、タイヤ幅方向最大幅位置31とは、タイヤの側面の模様や文字などを除いたタイヤ幅方向の最も大きい幅となる位置を示す。
ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法を異ならせる手段としては、図6に示すように、ビードトウ43の位置を同じくして、タイヤ幅方向最大幅位置31をタイヤ径方向で変更する。
この空気入りタイヤ1によれば、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法において、路面カント上側のタイヤ径方向寸法ShUを、路面カント下側のタイヤ径方向寸法ShLよりも大きくするプロファイルとすることで、インフレート時に路面カント上側のサイドウォール部3が大きく撓み、路面カント上側の接地端Tが路面カント下側の接地端Tよりもタイヤ径方向内側に配置されるので、路面カントを有する路面を直進走行するとき、路面に接触する踏面21に、傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じることから、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、ShU>ShLの関係は、0.7≦ShL/ShU<1.0が好ましい。ShL/ShUが0.7未満であると、路面カント上側に向かう力Pが大きくなりすぎ、適切な範囲を超えてしまう。
なお、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法を異ならせる場合、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUと、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLとの関係は、HU≧HLとすることが好ましい。HU<HLであると、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量でバットレス部25のビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法による効果を打ち消すことになるからである。さらに、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法を異ならせる場合、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームVLと、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームVUとの関係は、VU≦VLとすることが好ましい。VU>VLであると、バットレス部25のゴムボリュームでバットレス部25のビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法による効果を打ち消すことになるからである。
また、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルとしては、図7に示すように、タイヤ赤道面Cを境に、路面カント上側の溝面積比をAU、路面カント下側の溝面積比をALとした場合、AU>ALとする。
溝面積比とは、タイヤ全周について、トレッド部2の表面における溝の比率、つまりタイヤの接地面積(リブ23の踏面21の面積)に対する総溝面積(図7に斜線で示す周方向主溝22および周方向主溝22以外の溝(図示せず)の開口面積)の比を言う。また、タイヤ赤道面Cを境に溝面積比を異ならせる手段としては、溝幅や溝本数を路面カント下側よりも路面カント上側で増加させて総溝面積を変更する。他に、溝面積比を異ならせる手段としては、リブ幅を路面カント上側よりも路面カント下側で増加させて接地面積を変更する。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ赤道面Cを境に、路面カント上側の溝面積比AUを、路面カント下側の溝面積比ALよりも大きくすることで、路面カント下側のトレッド剛性SLが、路面カント上側のトレッド剛性SUよりも大きくなるため、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、AU>ALの関係は、0<(AU−AL)≦+10[%]の範囲とすることが好ましい。路面カント上側の溝面積比AUから路面カント下側の溝面積比ALを差し引いた値が+10[%]を超えると、剛性差が大きすぎて傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じてしまう。
なお、タイヤ赤道面Cを境に溝面積比を異ならせる場合、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUと、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLとの関係は、HU≧HLとすることが好ましい。HU<HLであると、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量で溝面積比による効果を打ち消すことになるからである。さらに、タイヤ赤道面Cを境に溝面積比を異ならせる場合、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームVLと、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームVUとの関係は、VU≦VLとすることが好ましい。VU>VLであると、バットレス部25のゴムボリュームで溝面積比による効果を打ち消すことになるからである。さらに、タイヤ赤道面Cを境に溝面積比を異ならせる場合、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までの路面カント上側のタイヤ径方向寸法ShUと、路面カント下側のタイヤ径方向寸法ShLとの関係は、ShU≧ShLとすることが好ましい。ShU<ShLであると、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法で溝面積比による効果を打ち消すことになるからである。
また、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルとしては、図8および図9に示すように、各ショルダーリブ23aにおいて、路面カント上側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法をWU、路面カント下側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法をWLとした場合、WU<WLとする。
タイヤ赤道面Cを境に各ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法を異ならせる手段としては、溝幅や溝位置や溝本数を変更する。具体的には、周方向主溝22の場合、溝本数を同じくして溝幅を路面カント下側よりも路面カント上側で増加させるか(図8および図9参照)、溝本数を同じくして溝位置を路面カント上側よりも路面カント下側がタイヤ赤道面C寄りに設けるか(図8および図9参照)、溝幅を同じくして溝本数を路面カント下側よりも路面カント上側で増加させるか(図9参照)、これらの手段を合わせる。
この空気入りタイヤ1によれば、タイヤ赤道面Cを境に、路面カント下側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WLを、路面カント上側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WUよりも大きくすることで、路面カント下側のトレッド剛性SLが、路面カント上側のトレッド剛性SUよりも大きくなるため、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、WU<WLの関係は、0<WL/WU≦1.3の範囲とすることが好ましい。路面カント上側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WUに対する路面カント下側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WLの比が1.3を超えてしまうと、剛性差が大きすぎて傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じてしまう。
なお、周方向主溝22の溝本数を変更する場合は、タイヤ赤道面Cを境に路面カント下側と路面カント上側との差を1本とすることが好ましい。差が2本以上であると、剛性差が大きすぎて傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じてしまう。
なお、タイヤ赤道面Cを境に各ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法を異ならせる場合、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUと、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLとの関係は、HU≧HLとすることが好ましい。HU<HLであると、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量でショルダーリブ23aによる効果を打ち消すことになるからである。さらに、タイヤ赤道面Cを境に各ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法を異ならせる場合、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームVLと、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームVUとの関係は、VU≦VLとすることが好ましい。VU>VLであると、バットレス部25のゴムボリュームでショルダーリブ23aによる効果を打ち消すことになるからである。さらに、タイヤ赤道面Cを境に各ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法を異ならせる場合、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までの路面カント上側のタイヤ径方向寸法ShUと、路面カント下側のタイヤ径方向寸法ShLとの関係は、ShU≧ShLとすることが好ましい。ShU<ShLであると、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法でショルダーリブ23aによる効果を打ち消すことになるからである。さらに、タイヤ赤道面Cを境に各ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法を異ならせる場合、タイヤ赤道面Cを境に路面カント上側の溝面積比AUと、路面カント下側の溝面積比ALとの関係は、AU≧ALとすることが好ましい。AU<ALであると、溝面積比でショルダーリブ23aによる効果を打ち消すことになるからである。
また、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルとしては、図10に示すように、タイヤ幅方向最外側の各周方向主溝22のタイヤ幅方向外側の溝壁角度において、路面カント上側の周方向主溝22の溝壁角度をθU、路面カント下側の周方向主溝22の溝壁角度をθLとした場合、θU<θLとする。
ここで、溝壁角度は、トレッド部2の表面の法線に対する周方向主溝22の溝壁の角度をいう。
この空気入りタイヤ1によれば、路面カント下側の周方向主溝22の溝壁角度θLを、路面カント上側の周方向主溝22の溝壁角度θUよりも大きくすることで、路面カント下側のショルダーリブ23aの剛性が高くなり、路面カント下側のトレッド剛性SLが、路面カント上側のトレッド剛性SUよりも大きくなるため、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、周方向主溝22の溝壁がタイヤ周方向で一定の角度である場合、その溝壁角度をθU,θLとする。また、周方向主溝22の溝壁がタイヤ周方向で角度が変化する場合、タイヤ周方向の平均溝壁角度をθU,θLとする。また、路面カント下側の周方向主溝22の溝壁と路面カント上側の周方向主溝22の溝壁との一方がタイヤ周方向で一定の角度で、他方がタイヤ周方向で角度が変化する場合、上記に従い一定の溝壁角度をθU,θLとし、角度が変化する平均溝壁角度をθU,θLとする。
なお、θU<θLの関係は、0<(θL−θU)≦+20[°]の範囲とすることが好ましい。路面カント下側の周方向主溝22の溝壁角度θLから路面カント上側の周方向主溝22の溝壁角度θUを差し引いた値が+20[°]を超えると、剛性差が大きすぎて傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じてしまう。
なお、周方向主溝22の溝壁角度を異ならせる場合、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUと、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLとの関係は、HU≧HLとすることが好ましい。HU<HLであると、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量で溝壁角度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、周方向主溝22の溝壁角度を異ならせる場合、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームVLと、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームVUとの関係は、VU≦VLとすることが好ましい。VU>VLであると、バットレス部25のゴムボリュームで溝壁角度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、周方向主溝22の溝壁角度を異ならせる場合、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までの路面カント上側のタイヤ径方向寸法ShUと、路面カント下側のタイヤ径方向寸法ShLとの関係は、ShU≧ShLとすることが好ましい。ShU<ShLであると、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法で溝壁角度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、周方向主溝22の溝壁角度を異ならせる場合、タイヤ赤道面Cを境に路面カント上側の溝面積比AUと、路面カント下側の溝面積比ALとの関係は、AU≧ALとすることが好ましい。AU<ALであると、溝面積比で溝壁角度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、周方向主溝22の溝壁角度を異ならせる場合、路面カント上側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WUと、路面カント下側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WLとの関係は、WU≦WLとすることが好ましい。WU>WLであると、ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法で溝壁角度による効果を打ち消すことになるからである。
また、タイヤ赤道面Cを境に非対称のプロファイルとしては、図11に示すように、周方向主溝22により形成されたリブ23の踏面21にほぼタイヤ幅方向に延在するサイプ24が形成され、タイヤ赤道面Cを境に、路面カント上側のサイプ24の密度をρU、路面カント下側のサイプ24の密度をρLとした場合、ρU>ρLとする。
タイヤ赤道面Cを境にサイプ24の密度を異ならせる手段としては、サイプ24の個数(本数)や幅(溝幅)や長さ(溝長さ)や深さ(溝深さ)を変更する。具体的には、同一形状として路面カント下側のサイプ24よりも路面カント上側のサイプ24の個数を増加させるか、路面カント下側のサイプ24よりも路面カント上側のサイプ24の幅を大きくするか、路面カント下側のサイプ24よりも路面カント上側のサイプ24の長さを長くするか(湾曲や屈曲によりサイプ24の長さを長くすることも含む)、路面カント下側のサイプ24よりも路面カント上側のサイプ24の深さを深くするか、これらの手段を合わせる。
この空気入りタイヤ1によれば、路面カント上側のサイプ24の密度ρUを、路面カント下側のサイプ24の密度ρLよりも大きくすることで、路面カント下側のトレッド剛性SLが、路面カント上側のトレッド剛性SUよりも大きくなるため、路面カントによるショルダーリブ23aの偏摩耗を抑制することが可能になる。
なお、ρU>ρLの関係は、0<ρU/ρL≦2.0の範囲とすることが好ましい。路面カント下側のサイプ24の密度ρLに対する路面カント上側のサイプ24の密度ρUの比が2.0を超えると、剛性差が大きすぎて傾斜を上がるように路面カント上側に向かう力Pが生じてしまう。
なお、サイプ24の密度を異ならせる場合、路面カント上側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HUと、路面カント下側の接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量HLとの関係は、HU≧HLとすることが好ましい。HU<HLであると、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量でサイプ24の密度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、サイプ24の密度を異ならせる場合、路面カント下側のバットレス部25のゴムボリュームVLと、路面カント上側のバットレス部25のゴムボリュームVUとの関係は、VU≦VLとすることが好ましい。VU>VLであると、バットレス部25のゴムボリュームでサイプ24の密度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、サイプ24の密度を異ならせる場合、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までの路面カント上側のタイヤ径方向寸法ShUと、路面カント下側のタイヤ径方向寸法ShLとの関係は、ShU≧ShLとすることが好ましい。ShU<ShLであると、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法でサイプ24の密度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、サイプ24の密度を異ならせる場合、タイヤ赤道面Cを境に路面カント上側の溝面積比AUと、路面カント下側の溝面積比ALとの関係は、AU≧ALとすることが好ましい。AU<ALであると、溝面積比でサイプ24の密度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、サイプ24の密度を異ならせる場合、路面カント上側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WUと、路面カント下側のショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法WLとの関係は、WU≦WLとすることが好ましい。WU>WLであると、ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法でサイプ24の密度による効果を打ち消すことになるからである。さらに、サイプ24の密度を異ならせる場合、路面カント上側の周方向主溝22の溝壁角度θUと、路面カント下側の周方向主溝22の溝壁角度θLとの関係は、θU≦θLとすることが好ましい。θU>θLであると、周方向主溝22の溝壁角度でサイプ24の密度による効果を打ち消すことになるからである。また、接地端Tのタイヤ径方向落ち込み量や、バットレス部25のゴムボリュームや、ビードトウ43からタイヤ幅方向最大幅位置31までのタイヤ径方向寸法や、溝面積比や、ショルダーリブ23aのタイヤ幅方向寸法や、周方向主溝22の溝壁角度を異ならせる場合、路面カント上側のサイプ24の密度ρUと、路面カント下側のサイプ24の密度ρLとの関係は、ρU≧ρLとすることが好ましい。ρU<ρLであると、サイプ24の密度で他の効果を打ち消すことになるからである。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1では、車輌に装着した場合、タイヤ赤道面Cを境にした一方側が路面カント上側に位置し、他方側が路面カント下側に位置する態様で進行方向が指定されている。
この空気入りタイヤ1によれば、車輌に装着した場合、タイヤ赤道面を境にした一方側が路面カント上側に位置し、他方側が路面カント下側に位置する態様で進行方向が指定されていることで、上述した効果を適宜得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、重荷重用空気入りタイヤに適用されることが好ましい。
この空気入りタイヤによれば、重荷重用空気入りタイヤは、特に路面カントが設けられた路面を長時間高速走行するトラックやバスに用いられるため、路面カントによるショルダーリブの偏摩耗が発生し易い傾向にある。したがって、重荷重用空気入りタイヤを適用対象とすることにより、路面カントによるショルダーリブの偏摩耗抑制効果がより顕著に得られる利点がある。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、車両のステア軸Sの左右で対をなして装着されることが好ましい。
この空気入りタイヤによれば、車両のステア軸Sの左右で対をなして装着されることで、路面カントの上側に向く力を左右対で発生させるため、路面カントによるショルダーリブの偏摩耗抑制効果がより顕著に得られる利点がある。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、ショルダーリブの耐偏摩耗性に関する性能試験が行われた(図12参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ11R22.5の空気入りタイヤを正規リムに装着し、正規内圧を充填し試験車両(4×2のトラクターを加えた2軸トレーラ)のステア軸に左右それぞれに装着した。
耐偏摩耗性の評価方法では、上記試験車両にて路面カントを有する舗装路を走行し、偏摩耗(凹み量:1[mm])が発生し始めた走行距離を、従来例を基準として評価する。この評価は、従来例の空気入りタイヤを基準(100)とした指数値により示され、その指数値が大きいほど耐偏摩耗性に優れている。
従来例の空気入りタイヤは、接地端落ち込み量(HL/HU)、バットレス部のゴムボリューム(VU/VL)、およびビードトウ−タイヤ最大幅寸法(ShL/ShU)の全てが規定の範囲外である。
比較例の空気入りタイヤは、接地端落ち込み量(HL/HU)が1.1で規定の範囲外である。
これに対し、実施例1,2の空気入りタイヤは、接地端落ち込み量(HL/HU)が規定の範囲内であり、実施例3〜5の空気入りタイヤは、バットレス部のゴムボリューム(VU/VL)が規定の範囲内であり、実施例6〜8の空気入りタイヤは、ビードトウ−タイヤ最大幅寸法(ShL/ShU)が規定の範囲内である。
図12の試験結果に示すように、実施例1〜実施例8の空気入りタイヤは、耐偏摩耗性が優れていることが分かる。