〔光拡散性樹脂組成物〕
本発明の光拡散性樹脂組成物は、(a)基材樹脂と、(b)重合体粒子と、(c)有機酸金属塩化合物と、(d)フルオロポリマーとを含む光拡散性樹脂組成物であって、前記重合体粒子が、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルと架橋性単量体とを含む単量体混合物を共重合してなるフッ素含有架橋重合体粒子と、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子とを含んでいる。本発明の光拡散性樹脂組成物は、(c)有機酸金属塩化合物および(d)フルオロポリマーの両方を含んでいることにより、有炎燃焼時間がより短く、かつ、燃焼時における燃焼滴下物の発生が起こりにくい光拡散性樹脂組成物を提供できる。
前記基材樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられる。これらの樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。前記基材樹脂としては、耐衝撃性に優れ、難燃性に優れ、かつ光拡散性樹脂組成物の光拡散性をより高めることができるため、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。また、本発明の光拡散性樹脂組成物は、(c)有機酸金属塩化合物、(d)フルオロポリマーの両方を含み、かつ基材樹脂としてポリカーボネート系樹脂を含むことが好ましい。これにより、有炎燃焼時間がより短く、かつ、燃焼時における燃焼滴下物の発生が起こりにくい光拡散性樹脂組成物を提供できる。したがって、例えば、UL94 V−0規格で規定された有炎燃焼時間および燃焼滴下物の要件(有炎燃焼時間が50秒以下であり、かつ燃焼滴下物が無いこと)をクリアできるような難燃性に優れた光拡散性樹脂組成物を提供できる。
前記ポリカーボネート系樹脂としては、所望の物性に影響を与えない限り、特に限定されず、公知のポリカーボネート系樹脂のいずれも使用することができる。前記ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲンまたは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体とを溶融法または溶液法等の方法で反応させて得られる芳香族ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
前記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[別名:ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−tert−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5,6−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシ−ジアリールスルホン類;4,4’−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、前記ポリカーボネート系樹脂は、所望の物性に影響を与えない限り、任意の置換基を含んでいてもよく、架橋剤等により架橋されていてもよい。本発明においては、優れた耐衝撃性を有する光拡散性樹脂組成物を得ることができるため、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[別名:ビスフェノールA]が、前記芳香族ジヒドロキシ化合物として好ましい。本発明においては、2種以上のポリカーボネート系樹脂を使用してもよい。
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体または共重合体である。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。これら化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸エステル以外の他のビニル系単量体(重合可能なアルケニル基を有する化合物)との共重合体である。他のビニル系単量体としては、スチレン等が挙げられる。前記アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)が好ましい。
前記重合体粒子は、光拡散剤として機能する。前記重合体粒子の平均粒子径は、1〜20μmの範囲内であることが好ましい。前記重合体粒子の平均粒子径が1μm以上である場合、光拡散性樹脂組成物の光透過性を良好にすることができる。前記重合体粒子の平均粒子径が20μm以下である場合、良好な光拡散性を光拡散性樹脂組成物に付与できる。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、コールター方式にて測定した体積基準の粒度分布から算出される粒子径、具体的には実施例の項で述べる測定方法で測定された平均粒子径を意味するものとする。
前記重合体粒子の量は、前記基材樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲内であることが好ましく、1〜5重量部の範囲内であることがより好ましく、1.5〜3重量部の範囲内であることがさらに好ましい。前記重合体粒子の量が前記基材樹脂100重量部に対して0.1重量部以上である場合、良好な光拡散性を光拡散性樹脂組成物に付与できる。前記重合体粒子の量が前記基材樹脂100重量部に対して5重量部以下である場合、光拡散性樹脂組成物の光透過率を良好にすることができる。
前記重合体粒子は、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルと架橋性単量体とを含む単量体混合物を共重合してなるフッ素含有架橋重合体粒子を含んでいる。前記重合体粒子中における前記フッ素含有架橋重合体粒子の割合は、20〜100重量%の範囲内であることが好ましい。前記重合体粒子中における前記フッ素含有架橋重合体粒子の割合が20重量%以上である場合、光拡散性樹脂組成物の有炎燃焼時間をより短くすることができる。また、前記フッ素含有架橋重合体粒子の量は、前記基材樹脂100重量部に対して0.5〜2重量部の範囲内であることが好ましい。前記フッ素含有架橋重合体粒子の量が前記基材樹脂100重量部に対して0.5重量部以上である場合、光拡散性樹脂組成物の有炎燃焼時間をより短くすることができる。前記フッ素含有架橋重合体粒子の量が前記基材樹脂100重量部に対して2重量部以下である場合、光拡散性樹脂組成物の光透過性をより高めることができる。フッ素含有架橋重合体粒子については、後段で詳述する。
前記重合体粒子は、フッ素含有架橋重合体粒子以外の他の重合体粒子を含む。他の重合体粒子としては、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子、架橋シロキサン結合を有するシリコーン樹脂粒子等が挙げられるが、光拡散性樹脂組成物の光透過性をより高めることができることから、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を少なくとも用いる。
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、フッ素を含有しない(メタ)アクリル酸エステルと架橋性単量体とを含む単量体混合物を共重合してなるものである。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸アルキル;アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、光拡散性樹脂組成物の光拡散性をより高めることができることから、(メタ)アクリル酸アルキルが好ましい。すなわち、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子としては、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が好ましい。
前記単量体混合物における前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、50〜99重量%の範囲内であることが好ましく、70〜95重量%の範囲内であることがより好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量が50重量%以上である場合、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の光透過性がより高くなるために光拡散性樹脂組成物の光透過性がより高くなる。前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量が99重量%以下である場合、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の架橋度がより高くなることによって架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の強度や耐熱性がより高くなり、その結果、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を基材樹脂とを混合し、押出し機によりペレット化する際に架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の変形や溶融がより起こり難くなる。
本明細書において、架橋性単量体とは、多官能単量体とも呼ばれるものであり、重合可能な2つ以上のアルケニル基(広義のビニル基)を有する単量体を意味する。架橋性単量体としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、多官能ポリエステルアクリレート、多官能ウレタンアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系多官能単量体;ジビニルベンゼンおよびその誘導体、ジビニルナフタレンおよびその誘導体等の芳香族ビニル系多官能単量体が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。前記架橋性単量体としては、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の網目構造(架橋構造)をより容易に構築することができるため、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
単量体混合物における架橋性単量体の含有量(架橋アクリル酸エステル系樹脂粒子中における、架橋性単量体に由来する成分の含有量にほぼ等しい)は、1〜50重量%の範囲内であることが好ましく、5〜30重量%の範囲内であることがより好ましい。架橋性単量体の含有量が1重量%以上である場合、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の架橋度がより高くなることによって架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の強度や耐熱性がより高くなり、その結果、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子を基材樹脂とを混合し、押出し機によりペレット化する際に架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の変形や溶融がより起こり難くなる。架橋性単量体の含有量が50重量%以下である場合、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子の光透過性がより高くなるために光拡散性樹脂組成物の光透過性がより高くなる。
前記単量体混合物は、(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋性単量体以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体を含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、具体的には、アクリル酸;メタクリル酸;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系単量体との共重合は、ランダム共重合であってもよく、ブロック共重合であってもよい。
なお、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子は、後段で述べるフッ素含有架橋重合体粒子の製造方法において、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルに代えて(メタ)アクリル酸アルキルを用いる製造方法によって、製造することができる。
前記有機酸金属塩化合物は、有炎燃焼時間を短縮する効果に優れた難燃剤として作用する。前記有機酸金属塩化合物は、有炎燃焼時間を短縮する効果が高いことから、有機酸アルカリ金属塩および有機酸アルカリ土類金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、有機酸アルカリ金属塩であることがより好ましい。また、前記有機酸金属塩化合物は、有炎燃焼時間を短縮する効果が高いことから、有機スルホン酸の金属塩および硫酸エステルの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。前記有機酸金属塩化合物は、燃焼時に燃焼滴下物の発生を防止する機能を兼ね備えることから、フッ素を含有する有機酸塩の金属塩が好ましく、フッ素を含有する有機スルホン酸塩の金属塩がより好ましく、炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩がさらに好ましい。炭素数1〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩としては、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム(DIC株式会社製、製品名「メガファック(登録商標)F114」)、パーフルオロエタンスルホン酸カリウム等を挙げることができる。
前記フルオロポリマーは、燃焼時に燃焼滴下物の発生を防止する効果に優れた難燃剤として作用する。前記フルオロポリマーは、フッ素を含有するオレフィンの単独重合体または共重合体である。前記フルオロポリマーとしては、フィブリル(小繊維)形成能力を有するフルオロポリマーが好ましい。フィブリル形成能力を有するフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・プロピレン共重合体等のような、テトラフルオロエチレンの単独重合体または共重合体が好ましく、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。前記ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製の「PTFE6−J」、ダイキン工業株式会社製の「ポリフロン(登録商標)D−1」、「ポリフロン(登録商標)D−2」、「ポリフロン(登録商標)MPAFA−500H」、「ポリフロン(登録商標)FA−500C」、および「ポリフロン(登録商標)F−104」、三菱レイヨン株式会社製の「メタブレン(登録商標)A3000」、「メタブレン(登録商標)A3750」、および「メタブレン(登録商標)A3800」等を挙げることができる。
本発明の光拡散性樹脂組成物および光拡散部材は、必要に応じて、蛍光増白剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の各種成分を含むこともできる。本発明において、これらの各種成分を用いることにより、所望の蛍光増白性等の物性を光拡散性樹脂組成物および光拡散部材に付与することができる。
前記蛍光増白剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、オキサゾール系蛍光増白剤(例えば、日本化薬株式会社製の「カヤライト(登録商標)OS」)、イミダゾール系蛍光増白剤、ローダミン系蛍光増白剤等を用いることができる。光拡散性樹脂組成物中に含まれる蛍光増白剤の量は、基材樹脂100重量部に対し、0.0005〜0.1重量部の範囲内であることが好ましく、0.001〜0.1重量部の範囲内であることがより好ましく、0.001〜0.05重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
前記熱安定剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル、ホスホン酸エステル等の有機リン系熱安定剤;ヒンダードフェノール系熱安定剤;ラクトン系熱安定剤等を用いることができる。光拡散性樹脂組成物中に含まれる熱安定剤の量は、基材樹脂100重量部に対し、0.005〜0.5重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.5重量部の範囲内であることがより好ましく、0.001〜0.3重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等を用いることができる。光拡散性樹脂組成物中に含まれる紫外線吸収剤の量は、基材樹脂100重量部に対し、0.01〜2.0重量部の範囲内であることが好ましく、0.03〜2.0重量部の範囲内であることがより好ましく、0.05〜1.0重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
〔フッ素含有架橋重合体粒子およびその製造方法〕
前記フッ素含有架橋重合体粒子は、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルと架橋性単量体とを含む単量体混合物を共重合してなるものである。
フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート等のフッ素含有メタクリル酸アルキル;パーフルオロオクチルエチルアクリレートのようなフッ素含有アクリル酸アルキル等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
前記単量体混合物中に含まれるフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルの量は、単量体混合物全体に対し、50〜95重量%の範囲内であることが好ましい。フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルの量が単量体混合物全体に対して50重量%以上である場合、光拡散性樹脂組成物の有炎燃焼時間をより短くすることができる。フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルの量が単量体混合物全体に対して95重量%以下である場合、フッ素含有架橋重合体粒子の架橋度がより高くなることによってフッ素含有架橋重合体粒子の強度がより高くなり、その結果、フッ素含有架橋重合体粒子を基材樹脂と混合する際にフッ素含有架橋重合体粒子の粉砕がより起こり難くなる。
前記架橋性単量体としては、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂粒子に関して前述した種々の化合物を、単独で、または2種以上混合して用いることができる。架橋性単量体としては、フッ素含有架橋重合体粒子の網目構造をより容易に構築することができるため、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
前記単量体混合物中に含まれる架橋性単量体の量は、単量体混合物全体に対し、5〜50重量%の範囲内であることが好ましい。架橋性単量体の量が単量体混合物全体に対して5重量%以上である場合、フッ素含有架橋重合体粒子の架橋度がより高くなることによってフッ素含有架橋重合体粒子の強度がより高くなり、その結果、フッ素含有架橋重合体粒子を基材樹脂と混合する際にフッ素含有架橋重合体粒子の粉砕がより起こり難くなる。架橋性単量体の量が単量体混合物全体に対して50重量%以下である場合、フッ素含有架橋重合体粒子中におけるフッ素含有成分をより多くすることが可能となるため、光拡散性樹脂組成物の有炎燃焼時間をより短くすることが可能となる。
前記単量体混合物は、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルおよび架橋性単量体の2成分からなっていることが好ましく、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキル50〜95重量%と架橋性単量体50〜5重量%とからなっていることがより好ましい。前記単量体混合物がこれらの2成分からなっている場合、光拡散性樹脂組成物の有炎燃焼時間をより短くすることができる。フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルが50〜95重量%であることが好ましい理由、および架橋性単量体が50〜5重量%であることが好ましい理由は、前述した通りである。
前記単量体混合物は、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルおよび架橋性単量体以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル系単量体を含んでいてもよい。フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルと共重合可能なビニル系単量体としては、具体的には、アクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキル;メタクリル酸;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸アルキル;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルとビニル系単量体との共重合は、ランダム共重合であってもよく、ブロック共重合であってもよい。
前記フッ素含有架橋重合体粒子は、例えば、前記単量体混合物を水性媒体中に分散あるいは懸濁させて重合する懸濁重合法により製造できる。前記水性媒体としては、水、または、水と水溶性溶媒(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール)との混合媒体が挙げられるが、水が好ましい。
前記単量体混合物の重合は、通常、重合開始剤の存在下で行われる。重合開始剤としては、油溶性の重合開始剤、例えば過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤等が挙げられる。前記過酸化物系重合開始剤としては、具体的には、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、o−クロロ過酸化ベンゾイル、o−メトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。前記アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。これら重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、または過酸化ラウロイルが、重合開始剤の分解速度の点で、好ましい。前記重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.1〜5.0重量部の範囲内であることがより好ましい。重合開始剤の使用量が単量体混合物100重量部に対して0.01重量部以上である場合、重合をより確実に開始させることができる。一方、前記重合開始剤の使用量が単量体混合物100重量部に対して10重量部以下である場合、重合開始剤の使用量に見合った効果を得ることができるので、コストに見合った効果を得ることができる。
前記水性媒体には、水性媒体中における単量体混合物の分散を安定させるための懸濁安定剤を添加してもよい。懸濁安定剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩;ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等の難水溶性無機化合物等が挙げられる。懸濁安定剤としては、ピロリン酸マグネシウムまたはピロリン酸カルシウムが、フッ素含有架橋重合体粒子を安定して得ることが可能であるため、好ましい。これらの懸濁安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。懸濁安定剤の使用量は、所望するフッ素含有架橋重合体粒子の粒子径、および懸濁重合時における単量体混合物の分散安定性を考慮して調整すればよい。
前記水性媒体には、界面活性剤を添加してもよく、懸濁安定剤と界面活性剤とを併用してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤の何れをも用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルケニルコハク酸塩ジカリウム塩;アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系界面活性剤、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の使用量は、所望するフッ素含有架橋重合体粒子の粒子径と、懸濁重合時における単量体混合物の分散安定性と考慮して調整すればよい。
また、上記懸濁重合における乳化粒子(副次的に乳化重合が起こることにより生成する粒子径1μm未満の重合体粒子)の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を水性媒体中に添加してもよい。
単量体混合物を水性媒体中に分散させる方法としては、例えば、単量体混合物を水性媒体中に直接添加し、攪拌機または分散機を用いて単量体混合物を水性媒体中に分散させる方法;MPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通して単量体混合物を水性媒体中に圧入させる方法等が挙げられる。前記攪拌機としては、例えばプロペラ翼等が挙げられる。前記分散機としては、例えば、ローターとステーターとから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサー、超音波分散機、単量体混合物の液滴同士の衝突や反応容器内壁に対する単量体混合物の液滴の衝突を利用して分散を行うマイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧型分散機等が挙げられる。
重合反応中は、反応液(単量体混合物が分散した水性媒体)を攪拌するのが好ましい。攪拌は、単量体混合物が液滴として浮上することを防止すると共に、重合により生成したフッ素含有架橋重合体粒子が沈降することを防止できる程度に行えばよい。重合温度は、30〜120℃の範囲内にするのが好ましく、40〜80℃の範囲内にするのがより好ましい。重合時間は、0.1〜20時間の範囲内であることが好ましい。
重合完了後、得られたフッ素含有架橋重合体粒子を、必要に応じて塩酸などの酸を水性媒体中に添加して懸濁安定剤を分解した後、フッ素含有架橋重合体粒子を汎用の要領で水性媒体から分離し、洗浄、脱水することにより、フッ素含有架橋重合体粒子を得ることができる。吸引濾過、遠心脱水、遠心分離、加圧脱水等の方法により含水ケーキとして分離し、さらに、得られた含水ケーキを洗浄し、乾燥することにより、目的のフッ素含有架橋重合体粒子を得ることができる。
〔光拡散性樹脂組成物の製造方法〕
本発明の光拡散性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、(a)基材樹脂と、光拡散剤として用いる(b)重合体粒子と、難燃剤としての(c)有機酸金属塩化合物および(d)フルオロポリマーと、必要に応じて用いられる蛍光増白剤、熱安定剤等の添加剤とを、所定量で混合および混練することにより製造できる。混合および混練は、通常の熱可塑性樹脂に適用される方法で行えばよく、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラーでプリブレンド後、単軸スクリュー押出機、2軸スクリユー押出機、多軸スクリュー押出機等により混練を行うことができる。混練の温度条件は、通常、240〜300℃が適当である。
〔光拡散部材および照明カバー〕
本発明の光拡散部材は、本発明の光拡散性樹脂組成物を成形してなる。本発明の光拡散部材は、一般的な熱可塑性樹脂の成形方法により本発明の光拡散部材に成形することができる。成形方法としては、例えば、生産性の点で好ましい光拡散部材の成形方法として、ペレット状の光拡散性樹脂組成物を射出成形する方法、ペレット状の光拡散性樹脂組成物を射出圧縮成形する方法、ペレット状の光拡散性樹脂組成物を押出成形する方法、共押出成形法、キャスト重合法等が挙げられる。さらに、光拡散部材の成形方法として、光拡散性樹脂組成物を押出成形してシート状の成形品を得た後、得られたシート状の成形品を真空成形または圧空成形等の成形方法によって光拡散部材を成形する方法を用いることもできる。
本発明の光拡散部材を2mm厚に成形した場合、本発明の光拡散部材は、好ましくは50%以上、より好ましくは50〜60%の全光線透過率を示す。全光線透過率が60%以下である場合、光拡散部材が良好な光拡散性を示し易い。また、本発明の光拡散部材は、好ましくは40秒以下、より好ましくは30秒未満の有炎燃焼時間を示す。
本発明の光拡散部材は、本発明の照明カバーとして使用できる。すなわち、本発明の照明カバーは、本発明の光拡散性樹脂組成物を成形してなる。本発明の照明カバーは、蛍光灯、発光ダイオード(LED)等の各種の光源を用いた照明器具(一般照明、照明ディスプレイ、照明看板等)を囲んで、光源からの光を拡散させるカバーとして使用できる。その中でも、発光ダイオード(LED)を光源とする照明カバーが特に好ましい。照明カバーの形状は、その用途により変化し得るが、例えば、半円筒状、平板状などの形状である。照明カバーの厚さは、通常、0.5mm〜5mmの範囲に設定される。
〔重合体粒子の平均粒子径の測定方法〕
重合体粒子の平均粒子径は、コールター方式精密粒度分布測定装置マルチサイザーII(ベックマン・コールター株式会社製)を用いてコールター方式にて測定した。測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてマルチサイザーIIのキャリブレーションを行い、平均粒子径の測定を行った。
具体的には、重合体粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤水溶液10ml中にタッチミキサーおよび超音波を用いて分散させて分散液とした。マルチサイザーII本体に備え付けの測定用電解液ISOTON(登録商標)II(ベックマン・コールター株式会社製)を満たしたビーカー中に、前記分散液を緩く攪拌しながらスポイトで滴下して、マルチサイザーII本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせた。次に、マルチサイザーII本体に、アパチャーサイズ(径)を50μm、Current(アパーチャー電流)を800μA、Gain(ゲイン)を4、Polarity(内側電極の極性)を+と入力して、manual(手動モード)で体積基準の粒度分布を測定した。なお、アパチャーサイズ等は、必要に応じて変更して入力可能である。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、有機無機複合粒子10万個の粒度分布を測定した時点で測定を終了した。そして、測定した体積基準の粒度分布における積算値50%の粒子径を平均粒子径(D50)とした。
〔重合体粒子のCV値の測定方法〕
重合体粒子のCV値(変動係数)は、体積基準の粒度分布を測定した際の標準偏差(σ)及び体積平均粒子径(D50)から以下の式により算出された値である。
CV値(%)=(σ/D50)×100
〔光拡散板の全光線透過率の測定方法〕
光拡散板の全光線透過率は、JIS K7361に従って測定した。具体的には、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター「NDH2000」を使用し、JIS K7361に従って光拡散板の全光線透過率を測定した。そして、10個の測定サンプル(光拡散板)についてそれぞれ全光線透過率を測定し、10回の測定値の平均値を全光線透過率とした。
〔光拡散板の有炎燃焼時間の測定方法および燃焼特性の判定方法〕
光拡散板の有炎燃焼時間の測定および燃焼特性の判定(V−0,V−1,V−2の何れであるかの判定)は、UL94 V−0,V−1,V−2規格の試験方法に従って行った。射出成形により5本の短冊状の試験片(UL燃焼性試験用テストピース)を作成した。試験片のサイズは、長さ127mm×幅12.7mm、厚さ2mmとした。
〔製造例1:フッ素含有架橋重合体粒子の製造〕
〔水相の調製〕
内容積5Lのステンレス鋼製のビーカーに、水性媒体としての純水3000gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.54g(水相中での濃度180ppm)と、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム75gとを加え、水相を調製した。
〔油相の調製〕
水相の調製に用いたビーカーとは別のステンレス鋼製のビーカーに、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルとしての2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート700g(単量体混合物全体に対して70重量%)と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート300g(単量体混合物全体に対して30重量%)と、重合開始剤としての2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)6gとを投入し、良く攪拌して、油相となる混合物を調製した。
〔重合反応〕
調製された油相を先に調整した水相に加え、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、製品名「TKホモミキサー」)を用いて攪拌速度5000回転/分で15分間攪拌して、油相を液滴として水相中に分散させ、懸濁液を得た。次いで、高庄分散装置(みづほ工業株式会社製のマイクロフルイタイザー、製品名「HC−5000」)によって圧力10MPaで1回処理し、懸濁液中の液滴を微細化させた。その後、懸濁液を反応液として、攪拌機および温度計を備えた内容量5Lの反応器に移し、反応器内の空気を窒素で置換(窒素パージ)した。その後、反応液を50℃で5時間攪拌することによって単量体混合物(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート)を共重合させた後、反応液を105℃で3時間加熱した。
加熱終了後、反応液を30℃まで冷却した。これにより、平均粒子径10μmの重合体粒子を含むスラリーが得られた。次に、スラリーに、スラリーのpHが2以下になるまで塩酸を添加して、ピロリン酸マグネシウムを分解した。次に、遠心脱水機を用いて、洗浄水のpHが6〜7になるまでスラリーを水で洗浄した後、脱水した。これにより、脱水ケーキが得られた。得られた脱水ケーキを、真空乾燥機を用いて真空乾燥機のジャケット温度が60℃の条件で20時間かけて真空乾燥し、粒子を得た。次に、粒子を400メッシュの箭いに通し、400メッシュより大きい粗粒を取り除いた。その結果、前記測定方法による平均粒子径が10.7μmのフッ素含有架橋重合体粒子A(多分散性のフッ素含有架橋メタクリル酸アルキル系樹脂粒子)が得られた。得られたフッ素含有架橋重合体粒子AのCV値および屈折率を前記測定方法により測定したところ、CV値は19.1%、屈折率は1.45であった。
〔製造例2:架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子の製造〕
〔水相の調整〕
内容積5Lのステンレス鋼製のビーカーに、水性媒体としての純水3000g、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム1.8g(水相中での濃度600ppm)、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム90gを加え、水相を調整した。
〔油相の調整〕
水相の調製に用いたビーカーとは別のステンレス鋼製のビーカーに、(メタ)アクリル酸エステルとしてメタクリル酸メチル950g(単量体混合物全体に対して95重量%)、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート50g(単量体混合物全体に対して5重量%)、重合開始剤として2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)6gとを投入し、良く攪拌して、油相となる混合物を調製した。
〔重合反応〕
調製された油相を先に調整した水相に加え、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、製品名「TKホモミキサー」)を用いて攪拌速度7000回転/分で15分間攪拌して、油相を液滴として水相中に分散させ、懸濁液を得た。次いで、懸濁液を反応液として、攪拌機および温度計を備えた内容量5Lの反応器に移し、反応器内の空気を窒素で置換(窒素パージ)した。その後、50℃で5時間攪拌することによって単量体混合物を重合させた後、反応液を105℃で3時間加熱した。
加熱終了後、反応液を30℃まで冷却した。これにより、平均粒子径5μmの重合体粒子を含むスラリーが得られた。次に、スラリーに、スラリーのpHが2以下になるまで塩酸を添加して、ピロリン酸マグネシウムを分解した。次に、遠心脱水機を用いて、洗浄水のpHが6〜7になるまで水で洗浄した後、脱水した。これにより、脱水ケーキが得られた。得られた脱水ケーキを、真空乾燥機を用いて真空乾燥機のジャケット温度が60℃の条件で20時間かけて真空乾燥し、粒子を得た。次に、粒子を400メッシュの節いに通し、400メッシュより大きい粗粒を取り除いた。その結果、前記測定方法による平均粒子径が5.4μmの架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子B(多分散性の架橋メタクリル酸アルキル系樹脂粒子)が得られた。得られた架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子BのCV値および屈折率を前記測定方法により測定したところ、CV値は34%、屈折率は1.49であった。
〔製造例3;架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子の製造〕
製造例2において、単量体混合物を、(メタ)アクリル酸エステルとしてのアクリル酸ブチル700g(単量体混合物全体に対して70重量%)と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート300g(単量体混合物全体に対して30重量%)とに変更した以外は重合体粒子Bと同様にして重合体粒子を製造した。その結果、前記測定方法による平均粒子径が5.6μmの架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Cを得た。得られた架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子CのCV値および屈折率を前記測定方法により測定したところ、CV値は36%、屈折率は1.48であった。
〔製造例4:フッ素含有架橋重合体粒子の製造〕
〔水相の調製〕
内容積5Lのステンレス鋼製のビーカーに、水性媒体としての純水3000gと、アニオン性界面活性剤としてのラウリル硫酸ナトリウム0.60g(水相中での濃度200ppm)と、懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウム75gとを加え、水相を調製した。
〔油相の調製〕
水相の調製に用いたビーカーとは別のステンレス鋼製のビーカーに、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルとしての2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート500g(単量体混合物全体に対して50重量%)と、フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としてのメタクリル酸メチル450g(単量体混合物全体に対して45重量%)と、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート50g(単量体混合物全体に対して5重量%)と、重合開始剤としての2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)6gとを投入し、良く攪拌して、油相となる混合物を調製した。
〔重合反応〕
調製された油相を先に調整した水相に加え、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、製品名「TKホモミキサー」)を用いて攪拌速度5000回転/分で15分間攪拌して、油相を液滴として水相中に分散させ、懸濁液を得た。次いで、高庄分散装置(みづほ工業株式会社製のマイクロフルイタイザー、製品名「HC−5000」)によって圧力10MPaで1回処理し、懸濁液中の液滴を微細化させた。その後、懸濁液を反応液として、攪拌機および温度計を備えた内容量5Lの反応器に移し、反応器内の空気を窒素で置換(窒素パージ)した。その後、反応液を50℃で5時間攪拌することによって単量体混合物(2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、メタクリル酸メチル、およびエチレングリコールジメタクリレート)を共重合させた後、反応液を105℃で3時間加熱した。
加熱終了後、反応液を30℃まで冷却した。これにより、平均粒子径8μmの重合体粒子を含むスラリーが得られた。次に、スラリーに、スラリーのpHが2以下になるまで塩酸を添加して、ピロリン酸マグネシウムを分解した。次に、遠心脱水機を用いて、洗浄水のpHが6〜7になるまでスラリーを水で洗浄した後、脱水した。これにより、脱水ケーキが得られた。得られた脱水ケーキを、真空乾燥機を用いて真空乾燥機のジャケット温度が60℃の条件で20時間かけて真空乾燥し、粒子を得た。次に、粒子を400メッシュの箭いに通し、400メッシュより大きい粗粒を取り除いた。その結果、前記測定方法による平均粒子径が8.2μmのフッ素含有架橋重合体粒子D(多分散性のフッ素含有架橋メタクリル酸アルキル系樹脂粒子)が得られた。得られたフッ素含有架橋重合体粒子DのCV値および屈折率を前記測定方法により測定したところ、CV値は24%、屈折率は1.47であった。
〔実施例1〕
基材樹脂としての、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとカーボネート前駆体との反応によって得られた芳香族ポリカーボネート系樹脂(出光興産株式会社製、製品名「タフロン(登録商標)A2500」)100重量部、重合体粒子(光拡散剤)としてのフッ素含有架橋重合体粒子A 0.5重量部(重合体粒子全体の20重量%)と、重合体粒子(光拡散剤)としての架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子B 2.0重量部と、有機酸金属塩化合物としてのパーフルオロブタンスルホン酸カリウム(DIC株式会社製、製品名「メガファック(登録商標)F114」)0.05重量部と、フルオロポリマーとしてのポリテトラフルオロエチレン(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、製品名「PTFE−6J」)0.3重量部と、蛍光増白剤としてのオキサゾール系蛍光増白剤(日本化薬株式会社製、製品名「カヤライト(登録商標)OS」)0.01重量部とをこの割合で計量し、ヘンシェルミキサーで15分間混合し、混合物(光拡散性樹脂組成物)とした。この混合物を単軸型押出し機(株式会社星プラスチック製、製品名「R50」)を用いて、温度250〜280℃、吐出量10〜25kg/hの条件で押出した。押出した混合物を水冷した後、ペレタイザーでカットして、ペレット状の光拡散性樹脂組成物を得た。
得られたペレット状の光拡散性樹脂組成物を120℃で5時間かけて予備乾燥し、水分を十分に除去した後、射出成形機(川口鉄工株式会社製、製品名「K−80」)を用いて、シリンダー温度255〜280℃の条件で射出成形することにより、光拡散部材としての、厚さ2mm、幅50mm×長さ100mmの光透過性評価用の光拡散板(プレート)と、UL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)である5本の試験片とを製造した。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって、UL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)である5本の試験片を用いて測定したところ、36秒であった。また、前記の判定方法によって上記試験片の燃焼特性を判定したところ、試験片の燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の光透過性を評価するために、前述したヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、製品名「NDH2000」)を用いる測定方法によって光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率を測定したところ、全光線透過率は59%であった。
また、前記ペレット状の光拡散性樹脂組成物を押出成形機により押出成形することにより、本実施例の照明カバーとしての、厚みが1mmで半円筒状(円筒を縦に半分に割った形状)の成形品を製造した。複数のLED光源を備える蛍光管型LED照明(CREE社製、40W相当タイプ)において、このLED照明に付属の照明カバーを本実施例の照明カバーに付け替えて、光の拡散性を目視により評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本実施例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔実施例2〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aの量を1.0重量部(重合体粒子全体の50重量%)に、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bの量を1.0重量部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、33秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、57%であった。
また、本実施例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本実施例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔比較例1〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aを使用せず架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bのみを使用し、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bの量を2.5重量部に変更する以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、44秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、60%であった。
また、本比較例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本比較例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔比較例2〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aを使用せず架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bのみを使用し、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bの量を4.0重量部に変更する以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、60秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−1であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、51%であった。
また、本比較例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本比較例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔比較例3〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aを使用せず、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子B 2.0重量部に加えて架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子C 0.5重量部を使用する以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、51秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−1であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、53%であった。
また、本比較例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本比較例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔実施例3〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aの量を1.5重量部(重合体粒子全体の60重量%)に、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bの量を1.0重量部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、27秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、55%であった。
また、本実施例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本実施例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔参考例1〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aおよび架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bに代えてフッ素含有架橋重合体粒子Dを2.0重量部用いる以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、32秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、56%であった。
また、本参考例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本参考例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔参考例2〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aの量を2.0重量部に変更し、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bを使用しないこと以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、25秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、54%であった。
また、本参考例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本参考例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていた。
〔実施例4〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aの量を2.0重量部(重合体粒子全体の33重量%)に、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bの量を4.0重量部にそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、40秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、45%であった。
また、本実施例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しには確認できず、本実施例の照明カバーは、LED光源からの光を十分に拡散できていたが、他の実施例と比較すると、暗く、光量が少なかった。
〔参考例3〕
フッ素含有架橋重合体粒子Aの量を0.5重量部に変更し、架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子Bを使用しないこと以外は実施例1と同様にして、光拡散性樹脂組成物、光透過性評価用の光拡散板、およびUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)を得た。
得られたUL燃焼性試験用の光拡散板(テストピース)の有炎燃焼時間は、前記の測定方法によって測定したところ、32秒であった。また、前記の判定方法によって上記テストピースの燃焼特性を判定したところ、テストピースの燃焼特性はV−0であった。
また、得られた光透過性評価用の光拡散板の全光線透過率は、前記の測定方法によって測定したところ、87%であった。
また、本参考例の光拡散性樹脂組成物を用いる以外は実施例1と同様にして、照明カバーを製造し、評価した。その結果、LED光源の一つ一つの輪郭が照明カバー越しにはっきり確認でき、本参考例の照明カバーは、他の実施例と比較すると、LED光源からの光の拡散が小さかった。
実施例、参考例、および比較例の光拡散性樹脂組成物の構成成分の種類および量と、光拡散板の評価結果とを以下の表1にまとめて示す。
実施例1〜3および参考例1〜2の光拡散板は、全光線透過率が50%以上と高く(すなわち光線透過ロスが少なく)、良好な光拡散性を有し、UL94規格のV−0の要件を満たす良好な難燃性を有し、かつ有炎燃焼時間が40秒以下と短かった。
実施例4の光拡散板は、実施例1〜3および参考例1〜2の光拡散板と比較すると全光線透過率が低いものの、実用に耐えうる程度には高い全光線透過率を備えており、良好な光拡散性を有し、UL94規格のV−0の要件を満たす良好な難燃性を有し、かつ有炎燃焼時間が40秒以下と短かった。
参考例3の光拡散板は、光拡散性が比較的低いものの、全光線透過率が非常に高く60%を超えており、UL94規格のV−0の要件を満たす良好な難燃性を有し、かつ有炎燃焼時間が40秒以下と短かった。
比較例1〜3の光拡散板は、全光線透過率は50%以上と高いものの、有炎燃焼時間が40秒を超えており、長かった。特に、比較例2〜3の光拡散板は、有炎燃焼時間が50秒を超えており、UL94規格のV−0の要件を満たさず、難燃性が劣っていた。
したがって、実施例1〜4および参考例1〜3の光拡散性樹脂組成物および光拡散板が、高い全光線透過率を有し、かつ、比較例1〜3の光拡散性樹脂組成物および光拡散板と比較して短い有炎燃焼時間を有していた。
また、実施例1〜3および参考例1〜2と実施例4との比較から、これら実施例および参考例の光拡散性樹脂組成物および光拡散板は、基材樹脂100重量部に対する重合体粒子の量が5重量部以下の場合、特に3重量部以下の場合に、高い全光線透過率を示すことが分かった。
また、実施例1〜3および参考例1〜2と参考例3との比較から、これら実施例および参考例の光拡散性樹脂組成物および光拡散板は、基材樹脂100重量部に対する重合体粒子の量が、1重量部以上、特に1.5重量部以上の場合に、良好な光拡散性を示すことが分かった。
これらの評価結果は、本発明の光拡散性樹脂組成物、光拡散部材、および照明カバーが、光透過性および難燃性に優れていることを示している。よって、本発明の光拡散部材は、一般照明、照明ディスプレイ、照明看板等の照明器具を構成する照明カバー(光拡散板)、グレージング(ガラス製または樹脂製の窓ガラス)を構成する光拡散フィルムなどの成形体として好適に使用でき、本発明の光拡散性樹脂組成物は、上記成形体の材料として好適に使用できる。