JP5576756B2 - 光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材 - Google Patents

光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材 Download PDF

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Description

本発明は、光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材に関する。さらに詳しくは、本発明は、光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性樹脂組成物、前記光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散性部材に関する。
従来、基材樹脂としてアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂等を用いた樹脂組成物が成形性、生産性等に優れるため、照明カバー、照明ディスプレイ、照明看板、グレージング等の照明器具の原材料として幅広く用いられている。特に基材樹脂としてポリカーボネート系樹脂を用いた樹脂組成物が耐衝撃性に優れるため、これらの分野で好適に使用されている。
また、これらの樹脂成分中に有機系や無機系の光拡散剤を分散させることによって、樹脂組成物の光拡散性を向上させた光拡散性樹脂組成物も用いられるに至っている。
例えば特開2005−247999号公報(特許文献1)には、全光線透過率、ヘイズに優れた光拡散性樹脂組成物として、ポリカーボネート系樹脂を基材樹脂とする光拡散性樹脂組成物が記載されている。
特開2005−247999号公報
他方、照明器具等については顧客のニーズや嗜好に沿うように、さらなる高機能化や環境面への配慮が求められ、光源として従来用いられていた蛍光灯や白熱灯から、より長寿命化等を図り得るLEDが大きな注目を集めている。LEDについては前記の優れたメリットが認められるものの、極めて強い指向性が問題となることがある。この場合、安全かつ快適に照明器具等を使用するためには、より高いレベルの光拡散性と光透過性の両立が樹脂組成物に対して求められる。特に、LED光源と光拡散カバーとの距離が50mm以上と長い仕様のものについてはさらにより高いレベルの両立が求められる。
この様な光の透過性と光の拡散性のバランスをとる手段として特許文献1ではポリカーボネート樹脂に屈折率1.505〜1.575の樹脂粒子を添加した光拡散性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、近年のLED光源の高出力化に伴い光線透過率が高い状態を維持しつつLED光源のランプイメージを目立ちにくくする目的には光線透過率と光拡散性のバランスがなお十分とは言えなかった。
他方、光拡散性を高くするためには光拡散剤を多量に添加すれば光拡散性は向上するが、光拡散剤の添加量が多くなると光線透過率の低下やコスト高になる他、成形体の衝撃強度が低下するという問題もある。
このため、これらの問題点に鑑みて、LEDを光源として用いた場合であっても十分に使用することができるようなより高いレベルで光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性樹脂組成物の提供が望まれている。また、これらの光拡散性樹脂組成物から得られる光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性部材の提供も望まれている。
かくして本発明によれば、基材樹脂としてのポリカーボネート系樹脂、平均粒子径0.3〜3.0μmの単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子および平均粒子径1〜20μmの多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を添加してなる光拡散性樹脂組成物であり、
前記光拡散性樹脂組成物が、前記ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子を0.05〜0.2重量部含み、前記多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を0.5〜5重量部含むことを特徴とする光拡散性樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、前記光拡散性樹脂組成物を成形することによって得られる光拡散性部材も提供される。
本発明によれば、光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
また本発明によれば、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体に由来する成分を40〜99重量%含む場合、光拡散性樹脂組成物が大きな耐衝撃性を期待し得る単量体成分を好適な割合で含むため、より耐衝撃性に優れ、光拡散性、光透過性にも優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
また本発明によれば、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に架橋性単量体に由来する成分を1〜50重量%含む場合、樹脂成分がより高いレベルで3次元的な網目構造を構築することができるため、この場合も、より耐衝撃性に優れ、光拡散性、光透過性にも優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
また本発明によれば、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が15%以下のCV値を有する場合、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子の粗大粒子を低減することができるため、この場合も、より耐衝撃性に優れ、光拡散性にも優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
また本発明によれば、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中にスチレン系単量体に由来する成分を35〜80重量%含む場合、この場合も、光拡散性樹脂組成物が大きな光透過性を期待し得る単量体成分を好適な割合で含むため、より光透過性に優れ、光拡散性、耐衝撃性にも優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
また本発明によれば、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中に架橋性単量体に由来する成分を1〜50重量%含む場合、樹脂成分がより高いレベルでの3次元的な網目構造を構築することができるため、この場合も、より耐衝撃性に優れ、光拡散性、光透過性にも優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
本発明によれば、光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性部材を得ることもできる。
また本発明によれば、光拡散性部材が光拡散性部材の厚みが2mmのとき、85%以上の全光線透過率および15°以上の分散度を有する場合、より光拡散性、光透過性に優れ、耐衝撃性にも優れた光拡散性部材を得ることができる。
本発明の特徴は、基材樹脂としてのポリカーボネート系樹脂、平均粒子径0.3〜3.0μmの単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子および平均粒子径1〜20μmの多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を添加してなる光拡散性樹脂組成物であり、
前記光拡散性樹脂組成物が、前記ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子を0.05〜0.2重量部含み、前記多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を0.5〜5重量部含む光拡散性樹脂組成物である。
本発明においては、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子とは、単量体成分としてスチレン系単量体を含まない、(メタ)アクリル酸アルキル系単量体と2以上のビニル基を有する架橋性単量体との共重合体であり、CV値15%以下の狭い粒度分布を有する樹脂粒子を意味する。また、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子は、7〜14%のCV値を有することがより好ましい。
他方、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子とは、(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体および2以上のビニル基を有する架橋性単量体との共重合体であり、CV値15%を超える広い粒度分布を有する樹脂粒子を意味する。多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は、25〜40%のCV値を有することがより好ましい。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリルおよびメタクリルのいずれかを意味する。
本発明の光拡散性樹脂組成物は、従来光拡散性部材の原材料として用いられていたアクリル系樹脂より耐衝撃性が高いポリカーボネート系樹脂を基材樹脂として含む。このため、本発明の光拡散性樹脂組成物は高い耐衝撃性を得ることができる。
また、本発明の光拡散性樹脂組成物は比較的小さい平均粒子径0.3〜3.0μmの単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子を含むため、光拡散性樹脂組成物に大きな光拡散性を付与することができる。他方、本発明の光拡散性樹脂組成物は大きな光拡散性および光透過性を付与することができる平均粒子径1〜20μmの多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子も含む。このため、本発明の光拡散性樹脂組成物は光拡散性と光透過性との調和を図りつつ、両者の技術的効果を十分に確保することができる。さらに前記の技術的効果を所定の配合割合で添加しているため、光拡散性樹脂組成物に樹脂粒子を含有させることによる樹脂組成物等の強度低下を引き起こすことなく、光拡散性樹脂組成物の耐衝撃性を確保することができる。
よって、本発明に係る光拡散性樹脂組成物は、光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性樹脂組成物である。
以下、本発明の光拡散性樹脂組成物について詳説する。
(光拡散性樹脂組成物)
本発明の光拡散性樹脂組成物はポリカーボネート系樹脂、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子および多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を少なくとも含む。本発明の光拡散性樹脂組成物は、前記の組成を含むことによって優れた光拡散性、光透過性および耐衝撃性を得ることができる。
(ポリカーボネート系樹脂)
本発明においては、光拡散性樹脂組成物の基材樹脂としてポリカーボネート系樹脂を用いる。このため光拡散性樹脂組成物に極めて優れた耐衝撃性を付与することができる。また、本発明の光拡散性樹脂組成物を成形することによって得られる光拡散性部材も耐衝撃性に優れる。
所望の物性に影響を与えない限りポリカーボネート系樹脂は特に限定されず、公知の樹脂のいずれも使用することができる。例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲン又は炭酸ジエステルとを溶融法又は溶液法で反応させて得られる樹脂を使用することができる。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
4,4' −ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4' −ジヒドロキシ−3,3' −ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類;
4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4' −ジヒドロキシ−3,3' −ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;
4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4' −ジヒドロキシ−3,3' −ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
4,4' −ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4' −ジヒドロキシ−3,3' −ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
4,4' −ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類等が挙げられる
これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また所望の物性に影響を与えない限り、任意の置換基等を含んでいてもよく、架橋剤等により架橋されていてもよい。本発明においては、所望の耐衝撃性を有する光拡散性樹脂組成物を得ることができるため、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]が好ましい。本発明においては、同様に2種以上のポリカーボネート系樹脂を使用してもよい。
また、ポリカーボネート系樹脂の平均分子量は、10000〜50000が好ましく、12000〜30000がより好ましく15000〜28000が更に好ましい。平均分子量が10000未満であると引っ張り強度や耐衝撃性が低下する恐れがあり、平均分子量が50000を超える場合、成形加工性が低下する。
また、本発明において平均分子量とは、粘度平均分子量である。
本発明でいう粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4×M×0.83
c=0.7
(単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子)
本発明の光拡散性樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸アルキル系単量体を架橋性単量体により架橋した単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子を含む。このため、ポリカーボネート系樹脂に高い光拡散性を導入することができ、その結果、本発明の光拡散性樹脂組成物は優れた光拡散性を得ることができる。
また、本発明で用いられる単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子は比較的小粒径であり、これらが基材樹脂中に均一に分散されるため、これらを多量に添加することなくより高いレベルで光拡散性を得ることができる。具体的には、本発明で用いられる単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子は、0.3〜3.0μm、好ましくは0.4〜2.5μm、より好ましくは0.6〜2.0μmの平均粒子径を有する。平均粒子径が0.3μmより小さい場合、光線透過率が低下することがある。他方、平均粒子径が3.0μmより大きい場合、光拡散性、光透過性および耐衝撃性が低下することがある。
単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して0.05〜0.2重量部、好ましくは0.05〜0.1重量部含まれる。単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が、ポリカーボネート系樹脂に対して0.05重量部より少なく含まれる場合、十分な光拡散効果を得ることができないことがある。他方、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が、ポリカーボネート系樹脂に対して0.2重量部より多く含まれる場合、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が光拡散性樹脂組成物中で均一に分散せず、この場合も所望の光拡散効果を得ることができないことがある。
さらに、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が好ましくは15%以下、より好ましくは7〜14%のCV値(変動係数)を有する場合、系内に単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子の粗大粒子の偏在を抑制することができる。このため、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が前記のCV値を有する場合、本発明の光拡散性樹脂組成物を使用することにより、より衝撃強度に優れた光拡散性部材を得ることもできる。なお、CV値の測定方法等については実施例において詳説する。
本発明の単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子に用いることができる(メタ)アクリル酸アルキル系単量体としては、所望の物性を得ることができる限り特に限定されず、公知の(メタ)アクリル酸をアルキル基によってエステル化した単量体をいずれも使用できる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等を挙げることができる。
本発明においては、大きな光拡散性および耐衝撃性を期待することができるため、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中の(メタ)アクリル酸アルキル系単量体のアルキル基は炭素数2〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキル基であることがより好ましい。本発明においては、より優れた光拡散効果および耐衝撃性を得ることができるため(メタ)アクリル酸ブチルが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。また、アルキル基は直鎖状であってもよく、分枝鎖状であってもよい。
他方、光拡散性、光透過性および耐衝撃性を十分に引き出すことができるため、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子は、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に(メタ)アクリル酸アルキル系単量体に由来する成分を40〜99重量%含むことが好ましく、50〜90重量%含むことがより好ましく、60〜80重量%含むことが特に好ましい。
本発明においては、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に架橋性単量体に由来する成分を1〜50重量%含むことが好ましく、5〜30重量%含むことがより好ましい。前記の範囲である場合、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に高いレベルで3次元的な網目構造を構築することができ、その結果、より衝撃強度に優れた光拡散性部材を与え、光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
本発明の単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子に用いられる架橋性単量体としては、スチレン非含有の2以上のビニル基を有する架橋性単量体を用いることができる。具体的には、トリアクリル酸トリメチロールプロパン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸デカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタデカエチレングリコール、ジメタクリル酸ペンタコンタへクタエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレン、メタクリル酸アリル、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、テトラメタクリル酸ペンタエリスリトール、ジメタクリル酸フタル酸ジエチレングリコールが用いられ、これらを単独でまたは2種以上を併用してもよい。本発明においては、前記の網目構造をより容易に構築することができるため、ジメタクリル酸エチレングリコールが好ましい。
(多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子)
本発明の光拡散性樹脂組成物は、(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体とを架橋性単量体により架橋した比較的大粒径の多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を含む。このため、(メタ)アクリル酸アルキル系単量体に由来する光拡散性とスチレン系単量体に由来する光透過性との調和を図りつつ、両者の技術的効果を十分に確保することができる。その結果、本発明の光拡散性樹脂組成物は所望の光拡散性と光透過性とを確保することができる。
また、本発明で用いられる多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は、1〜20μm、好ましくは2〜15μm、より好ましくは4〜12μmの平均粒子径を有する。平均粒子径が1μmより小さい場合、光線透過率が低下することがある。他方、平均粒子径が20μmより大きい場合、光拡散性、光線透過率および耐衝撃性が低下することがある。
多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は、ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部、より好ましくは2〜4重量部含まれる。本発明においては、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が、ポリカーボネート系樹脂に対して0.5重量部より少なく含まれる場合、十分な光拡散効果を得ることができないことがある。他方、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が、ポリカーボネート系樹脂に対して5重量部より多く含まれる場合、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が光拡散性樹脂組成物中で均一に分散せず、この場合も所望の光拡散効果を得ることができないことがある。
さらに、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は15%を超えるCV値を有している。CV値は25〜40%であることがより好ましい。
多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子に用いられるスチレン系単量体としては、所望の物性に影響を与えない限り、スチレンおよび置換スチレン(置換基には、低級アルキル、ハロゲン原子(特に塩素原子)等が含まれる)のいずれも使用することができる。具体的には、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。本発明においては所望の光透過性を得ることができるため、スチレンが好ましい。また、これらスチレン系単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
また、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子に用いられる(メタ)アクリル酸アルキル系単量体としては、前記に例示した単量体を単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。
また、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子に用いられる架橋性単量体としては、前記に例示した架橋性単量体のほかにジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、およびこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物等を用いることができる。これらを単独で使用してもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。所望の光透過性を得ることができるため、芳香族ジビニル化合物が好ましく、ジビニルベンゼンがより好ましい。
また、光透過性を十分に引き出すことができるため、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中にスチレン系単量体に由来する成分を35〜80重量%含むことが好ましく、50〜70重量%含むことがより好ましい。
本発明においては、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中に前記と同様の架橋性単量体に由来する成分を1〜50重量%含むことが好ましく、5〜30重量%含むことがより好ましい。前記の範囲である場合、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中に高いレベルで3次元的な網目構造を構築することができ、その結果、押出し成形や射出成形時の熱やシェアに耐える樹脂粒子が得られ、光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れた光拡散性樹脂組成物を得ることができる。
基材樹脂と多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子との屈折率差は0.015〜0.055が好ましく、0.020〜0.045がより好ましい。屈折率差が0.055より大きい場合拡散剤の添加量が僅かであっても光拡散性が強くなりすぎ、光線透過率が減少する。屈折率差が0.015より小さい場合は光拡散効果が発現しにくくなり、多量の拡散剤が必要となってしまう。このため、基材樹脂がポリカーボネート(屈折率1.585)の場合、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子の好ましい屈折率は1.53〜1.57であり、1.54〜1.565がより好ましい。
前記の屈折率に多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子の屈折率を調整することは単官能モノマーである(メタ)アクリル酸アルキルとスチレンとの配合比率を変えることによって調整可能である。出来上がった樹脂粒子の屈折率は屈折率既知の液体に樹脂粒子を浸漬した時の樹脂粒子と浸液との界面を観察することによって最も界面が見えにくい浸液を選び出すことによって判定可能である。
本発明に用いられる単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子および多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は、公知の重合方法によって単量体成分を重合させることによって製造することができる。具体的には、溶液重合、懸濁重合、シード重合、分散重合等が挙げられる。ここで、シード重合によってこれらの重合を行った場合、所望の物性に影響を与えない限り、樹脂中にシードに由来する任意の成分を含んでいてもよい。なお、これらの製造方法を用いることにより単量体成分と重合体成分の重量部、比率等は略同一となる。
本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子および多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子は、光拡散性、光透過性および耐衝撃性等の所望の物性に影響を与えない限り、その他の樹脂成分を少量含んでいてもよい。
具体的には、塩化ビニル重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系樹脂;
酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル系樹脂;
スチレン重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等のスチレン系樹脂;
(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;
テレフタル酸とエチレングリコールとの縮合体、アジピン酸とエチレングリコールとの縮合体等のポリエステル系樹脂;
ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシル変性ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用してもよい。
同様に、本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子および多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子、それらを含む光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材は、アルキル基、ビニル基、芳香族基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、アルキレンオキシド基等のその他の官能基を含んでいてもよく、これらの官能基を含むその他の単量体成分を含んでいてもよい。
また同様に、本発明に用いられるポリカーボネート系樹脂、単分散性架橋アクリル酸アルキル系樹脂粒子および多分散性架橋メタクリル酸アルキル系樹脂粒子、それらを含む光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材は、蛍光増白剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の各種成分を含むこともできる。本発明においてこれらの各種成分は、所望の蛍光増白性等の物性を得ることができる。
蛍光増白剤の場合光拡散性樹脂組成物中にポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.0005〜0.1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.001〜0.05重量部含まれる。
熱安定剤の場合光拡散性樹脂組成物中にポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.005〜0.5重量部、より好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.001〜0.3重量部含まれる。
紫外線吸収剤の場合光拡散性樹脂組成物中にポリカーボネート系樹脂100重量部に対し、好ましくは0.01〜2.0重量部、より好ましくは0.03〜2.0重量部、さらに好ましくは0.05〜1.0重量部含まれる。
本発明においては単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子について所望の物性を確保するために、スチレン系樹脂、フェニル系置換基、スチレン系単量体等を含まない。
(光拡散性樹脂組成物の製造方法)
本発明に係わる光拡散性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、基材とするポリカーボネート系樹脂、光拡散剤として用いる樹脂粒子および必要に応じて、熱安定剤その他の添加剤を所定量混合、混練することにより製造される。混合および混練は、通常の熱可塑性樹脂に適用される方法で行えばよく、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリユー押出機、多軸スクリュー押出機等により行うことができる。混練の温度条件は通常、240〜300℃が適当である。
(光拡散性部材)
本発明の光拡散性部材は、一般的な熱可塑性樹脂の成形方法により本発明の光拡散性部材に成形される。例えば生産性の点からペレット状の光拡散性樹脂組成物からの射出成形、射出圧縮成形、押出成形が可能で、さらに押出成形されたシート状成形品からの真空成形、圧空成形等を採用することができる。
本発明の光拡散性部材(成形体)を2mm厚に成形した場合、本発明の光拡散性部材は、好ましくは85%以上の、より好ましくは87〜90%の全光線透過率を示し、好ましくは15°以上の、より好ましくは17°以上の分散度を示す。
また、本発明の光拡散性部材をJIS K 7110に従ってアイゾット衝撃試験に付した場合、本発明の光拡散性部材は、好ましくは30KJ/m2以上、より好ましくは50〜80KJ/m2の衝撃強度を示す。
これらの評価結果は、本発明の光拡散性部材は優れた光拡散性、光透過性および耐衝撃性を有することを示している。このため、本発明の光拡散性部材は、LED光源と光拡散カバーとの距離が50mm以上と長い仕様のものであっても、照明カバー、照明ディスプレイ、照明看板、グレージング等の部材として好適に使用することができる。
(樹脂粒子Aの平均粒子径)
樹脂粒子の平均粒子径は、ベックマンコールター社製のLS230型で測定する。具体的には、樹脂粒子0.1gと0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを試験管に投入し、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXER MT−31で2秒間混合する。この後、試験管中の混合液を市販の超音波洗浄器であるヴェルボクリーア社製ULTRASONIC CLEANER VS−150を用いて10分間分散させる。分散させたものをベックマンコールター社製のLS230型にて超音波を照射しながら粒子径を測定する。そのときの光学モデルは作製した樹脂粒子の屈折率にあわせる。粒子0.1gの粒子径の平均値が平均粒子径である。
(樹脂粒子B〜Eの平均粒子径)
平均粒子径及びCV値は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、50μmアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
具体的には、樹脂粒子0.1gを0.1%ノニオン系界面活性剤10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けのISOTON II(ベックマンコールター社:測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く撹拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にコールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製:測定装置)本体にアパチャーサイズ50μm、Currentを800、Gainを4、Polarityを+と入力してmanualで測定を行う。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く撹拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。平均粒子径は、10万個の粒子径の平均値である。
(樹脂粒子のCV値(変動係数))
CV値は、平均粒子径を測定した際の標準偏差(σ)及びモード径(x)から以下の式により算出された値である。
CV値(%)=(σ/x)×100
モード径は、個数%分布に基づき粒子径をカウントした際に、出現比率が最も大きい粒子径(分布の極大値)である。
CV値(%)=(σ/x)×100
(光拡散性部材の全光線透過率)
光拡散性樹脂組成物を120℃、5時間予備乾燥し、水分を十分に除去した後川口鉄工社製射出成形機K−80を用いて(シリンダー温度255〜280℃)で成形することにより、2mm厚、50mm×100mmのプレート(光拡散性部材)を得る。得られたプレートに対し下記の評価を行った。
全光線透過率はJIS K 7361によって測定される。具体的には、日本電色工業社製NHD−2000を使用して測定する。全光線透過率は、測定サンプル数n=10の平均値を算出した値を示している。
本発明においては、
(1)全光線透過率が85%以上である場合:合格(○)
(2)全光線透過率が85%未満である高い場合:不合格(×)
と判定する。
(光拡散性部材の分散度)
プレートの2mm部分を用い、自動変角光度計(村上色彩技術研究所製ゴニオフォトメータGP−1R)により分散度(D50)を以下の手順で求める。
自動変角光度計の光源からの直進光線を、光源から75cmの距離に設置した光拡散性部材の法線方向から当てる。可動式受光器にて光拡散性部材を透過した光の強度を測定する。この強度を透過率に換算し、法線方向からの角度に対応させて透過率をグラフにプロットする。このグラフから、法線方向の光の透過率(直進光透過率)の50%の透過率になるところの角度を求める。この角度を分散度D50と称し、単位は「°(度)」である。また、分散度D50は大きいほど拡散性に優れていることを意味する。
本発明においては、
(1)分散度が15°以上である場合:合格(○)
(2)分散度が15°未満である場合:不合格(×)
と判定する。
(光拡散性部材の衝撃強度)
アイゾット衝撃試験片(2号A試験片 10t×80L×3bmm、ノッチ深さ2mm)を作成し、JIS K7110に則りアイゾット衝撃試験を行った。
本発明においては、
(1)衝撃強度が30KJ/m2以上である場合:合格(○)
(2)衝撃強度が30KJ/m2未満である場合:不合格(×)
と判定する。
(樹脂粒子A:単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子(変動係数:14%)の製造)
種粒子の製造
攪拌機及び温度計を備えた容量5Lの反応器に純水3440g中に単量体モノマーとしてメタクリル酸メチル860gと、オクチルメルカプタン17gとを反応器に投入し、反応器を窒素パージし、次いで70℃まで昇温した。その後、過硫酸カリウム4.3gを純水70gに溶解した溶液を反応器に投入し、再び反応器を窒素パージした。その後、70℃で12時間単量体モノマーを重合させ、平均粒子径0.27μmのシード粒子をスラリーの状態で得た。
単量体としてアクリル酸ブチル700gとエチレングリコールジメタクリレート(ジメタクリル酸エチレングリコール)300gからなる混合溶液に、重合開始剤として2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)5g、熱安定剤としてペリンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート10gを溶解して、重合性単量体成分とした。
これとは別に、純水3000gにリン酸エステル系界面活性剤(フォスファノールLO−529 東邦化学社製 モノ(ポリオキシエチレンノニルフェノール)リン酸40%とジ(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)リン酸60%混合物の水酸化ナトリウム部分中和物)20gを溶解して水溶液を得た。この水溶液に上記重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて8000rpmで10分間攪拌した。このエマルションを攪拌機及び温度計を備えた容量5Lの反応器に入れ、前記のスラリーを250g添加した。4時間120rpmで攪拌を行い、シード粒子を膨潤させた。
次いで、スラリーを50℃に昇温し、この温度で3時間重合した後80℃に昇温し3時間加熱した後30℃まで冷却した。これにより平均粒子径0.8μmの粒度分布の揃った樹脂粒子A(単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子)のスラリーが得られた。
得られたスラリー中の樹脂粒子AのCV値は14%であった。
次に上記スラリーを噴霧乾燥機としての坂本技研社製のスプレードライヤー(型式:アトマイザーテイクアップ方式、型番:TRS−3WK)で次の条件下にて噴霧乾燥して樹脂粒子Aを集合体の状態で得た。樹脂粒子集合体の平均粒子径は30μmであった(樹脂粒子Aの屈折率1.48。)。
供給速度:25ml/min
アトマイザー回転数:11000rpm
風量:2m3/min
噴霧乾燥機のスラリー入口温度:130℃
樹脂粒子集合体出口温度:70℃
(樹脂粒子B:多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子(変動係数:34%)の製造)
水相の調製
容積5Lのステンレスビーカーに純水3000g、ラウリル硫酸ナトリウム1.8g(600ppm)、ピロ燐酸マグネシウム90gを加え、水相を調製した。
油相の調製
水相とは別のステンレスビーカーに単量体モノマーとしてメタクリル酸メチル400g、スチレン500g、ジビニルベンゼン100g、連鎖移動剤としてノルマルドデシルメルカプタン3g、重合開始剤として2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)6gとを投入し、良く攪拌した後、先に調製した水相に加え特殊機化製TKホモミキサーを用いて7000回転15分攪拌した。次に攪拌機及び温度計を備えた容量5Lの反応器に移し、窒素パージした。その後、50℃で5時間単量体モノマーを重合させた後105℃で3時間加熱した後30℃まで冷却し、平均粒子径5μmの樹脂粒子スラリーを得た。次に樹脂粒子スラリーにスラリーのpHが2以下になるまで塩酸を加えた。
次に遠心脱水機を用いて、洗浄水のpHが6〜7になるまで洗浄した後脱水した。
得られた脱水ケーキを真空乾燥機を用いてジャケット温度60℃で20時間真空乾燥した。次に400メッシュの篩いを通過させ、平均粒子径5μm、変動係数34%、屈折率1.565の樹脂粒子を得た。
(樹脂粒子C:多分散性(メタ)アクリル酸アルキル系架橋樹脂粒子(変動係数:32%)の製造)
油相の調製に際して、単量体モノマーとしてメタクリル酸メチル950g、エチレングリコールジメタクリレート50とした以外は樹脂粒子Bの製法と同様にして樹脂粒子Cを得た。
平均粒子径5.1μm、変動係数32%、屈折率1.495の樹脂粒子であった。
(樹脂粒子D:多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子(変動係数:35%)の製造)
油相の調製に際して、単量体モノマーとしてメタクリル酸メチル350g、スチレン550g、ジビニルベンゼン100gとした以外は樹脂粒子Bの製法と同様にして樹脂粒子Dを得た。
平均粒子径4.9μm、変動係数35%、屈折率1.56の樹脂粒子であった。
(樹脂粒子E:多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子(変動係数:36%)の製造)
油相の調製整に際して、単量体モノマーとしてメタクリル酸メチル550g、スチレン350g、ジビニルベンゼン100gとした以外は樹脂粒子Bの製法と同様にして樹脂粒子Eを得た。
平均粒子径5.2μm、変動係数36%、屈折率1.54の樹脂粒子であった。
実施例1
光拡散剤として樹脂粒子A 0.1重量部、樹脂粒子B 3.5重量部、基材樹脂としてポリカーボネート(帝人化成社製、製品名パンライトL−1250Z、平均分子量23800)100重量部の割合に計量し、ヘンシェルミキサーで15分間混合した。この混合物を単軸型押出し機(株式会社ホシプラスチック社製、製品名R50)を用いて温度250〜280℃、吐出量10〜25kg/hの条件で押出し、水冷後ペレタイザーでカットし光拡散剤を含有したペレット状の光拡散性樹脂組成物を得た。次いで得られた光拡散性樹脂組成物を原料として射出成形し2mm厚、50mm×100mmのプレート(光拡散性部材)を製造した。
実施例2
樹脂粒子A 0.1重量部、樹脂粒子B 2重量部、樹脂粒子D 2重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
実施例3
樹脂粒子A 0.1重量部、樹脂粒子D 4重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
実施例4
樹脂粒子A 0.1重量部、樹脂粒子E 2重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
実施例5
樹脂粒子A 0.2重量部、樹脂粒子D 3重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
実施例6
樹脂粒子A 0.05重量部、樹脂粒子B 4重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
比較例1
樹脂粒子B 3.5重量部、樹脂粒子C 0.1重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
比較例2
樹脂粒子B 4重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
比較例3
樹脂粒子D 5重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
比較例4
樹脂粒子A 0.3重量部、樹脂粒子B 3.5重量部に変更した以外は実施例1と同様に光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材を得た。
表1において、実施例および比較例の原料種、評価結果を詳説する。
Figure 0005576756
実施例については全て、良好な衝撃強度、全光線透過率、分散度の結果を示した。他方、比較例については、衝撃強度、全光線透過率、分散度のいずれかについて良好な結果を示さなかった。
前記の評価結果より、本発明の光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材は光拡散性、光透過性および耐衝撃性に優れていることを示している。よって、本発明の光拡散性樹脂組成物および光拡散性部材は照明カバー、照明ディスプレイ、照明看板、グレージング等の照明器具の成形体として好適に使用することができる。

Claims (7)

  1. 基材樹脂としてのポリカーボネート系樹脂、0.3〜3.0μmの平均粒子径および15%以下のCV値を有する単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子、ならびに1〜20μmの平均粒子径および15%を超えるCV値を有する多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を添加してなる光拡散性樹脂組成物であり、
    前記光拡散性樹脂組成物が、前記ポリカーボネート系樹脂100重量部に対して単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子を0.05〜0.2重量部含み、前記多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子を0.5〜5重量部含むことを特徴とする光拡散性樹脂組成物。
  2. 前記単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が、単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル系単量体に由来する成分を40〜99重量%含む請求項1に記載の光拡散性樹脂組成物。
  3. 前記単分散性スチレン非含有架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子が、前記単分散性スチレン非含架橋(メタ)アクリル酸アルキル系樹脂粒子中に架橋性単量体に由来する成分を1〜50重量%含む請求項1または2に記載の光拡散性樹脂組成物。
  4. 前記多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中にスチレン系単量体に由来する成分を35〜80重量%含む請求項1〜のいずれか1つに記載の光拡散性樹脂組成物。
  5. 前記多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子が、多分散性(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン系架橋樹脂粒子中に架橋性単量体に由来する成分を1〜50重量%含む請求項1〜のいずれか1つに記載の光拡散性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれか1つに記載の光拡散性樹脂組成物を成形することによって得られる光拡散性部材。
  7. 前記光拡散性部材が、前記光拡散性部材の厚みが2mmのとき、85%以上の全光線透過率および15°以上の分散度を有する請求項に記載の光拡散性部材。
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