図1〜図3は、本発明の実施形態に係る型締装置1を示す、一部に断面図を含む側面図である。なお、図1は、型締装置1の型開状態を示している。図2は、型締装置1の図1の状態から型閉状態(型接触状態)へ移行する途中の状態を示している。図3は、型締装置1の型接触状態を示している。
型締装置1は、ベース3と、ベース3上に固定された固定ダイプレート5Fと、ベース3上において移動可能な移動ダイプレート5Mと、固定ダイプレート5F及び移動ダイプレート5Mに掛架される複数のタイバー7とを有している。
固定ダイプレート5F及び移動ダイプレート5Mは、互いに対向して配置されている。固定ダイプレート5Fは、移動ダイプレート5Mに対向する面(金型取付面)に固定金型101Fを保持している。移動ダイプレート5Mは、固定ダイプレート5Fに対向する面(金型取付面)に移動金型101Mを保持している。なお、以下では、固定金型101F及び移動金型101Mを単に「金型101」といい、これらを区別しないことがある。
移動ダイプレート5Mは、固定ダイプレート5Fに対して近接又は離間する方向(型開閉方向、図1の左右方向)に移動可能である。金型101は、移動ダイプレート5Mの型開閉方向への移動により、型開閉がなされる。
タイバー7は、型開閉方向に延びている。タイバー7の断面は例えば円形である。タイバー7は、例えば、金型101の周囲に4本設けられ、型開閉方向に見て左右方向及び上下方向において金型取付面の概略中央位置を通過する所定の対称軸に対して対称に配置されている。
タイバー7の固定ダイプレート5F側の端部は、固定ダイプレート5Fに挿通されるとともに、固定ダイプレート5Fの背面側に設けられた固定ナット8により固定ダイプレート5Fに対して固定されている。なお、タイバー7と固定ダイプレート5Fとの固定は、ハーフナットを含む係合装置などの係合位置を変更可能な装置によって行われてもよい。タイバー7の移動ダイプレート5M側の端部は、型開閉方向に移動可能に移動ダイプレート5Mに挿通されている。
また、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを型開閉方向へ駆動する駆動力を生じる型開閉シリンダ9と、金型101を型締めする型締力を生じる型締シリンダ11と、タイバー7と型締シリンダ11との係合を行う係合装置13とを有している。
型開閉シリンダ9は、液圧シリンダにより構成されており、シリンダチューブ15と、シリンダチューブ15に収容されたピストン17と、ピストン17に固定され、シリンダチューブ15から延出するピストンロッド19とを有している。なお、ピストン17及びピストンロッド19は、一体的に形成されることにより互いに固定されていてもよい。ピストン17は、シリンダチューブ15内を2つのシリンダ室に区画している。区画された2つのシリンダ室に選択的に作動液(例えば油)が供給されることにより、ピストン17がシリンダチューブ15内を摺動し、型開閉シリンダ9は伸長又は収縮する。
型開閉シリンダ9は、型開閉方向を駆動方向として配置されている。より具体的には、型開閉シリンダ9は、ピストンロッド19が延出する側を型開方向側に向けて配置されている。また、型開閉シリンダ9は、シリンダチューブ15が係合装置13に固定され、ピストンロッド19がベース3に固定されている。従って、係合装置13の移動ダイプレート5Mに対する移動が規制されている状態において、型開閉シリンダ9が伸長すると、移動ダイプレート5Mは型閉方向へ移動し(図2)、型開閉シリンダ9が収縮すると、移動ダイプレート5Mは型開方向へ移動する(図1)。
型締シリンダ11は、移動ダイプレート5Mに設けられたシリンダ室21と、シリンダ室21に一部が収容されたピストン部材23とにより構成された液圧シリンダである。シリンダ室21は、タイバー7が貫通する移動ダイプレート5Mの貫通穴の一部を拡径することにより構成されている。ピストン部材23は、タイバー7が挿通され、移動ダイプレート5Mの貫通穴に挿通される円筒状部分と、当該円筒状部分を拡径して形成され、シリンダ室21に収容されたピストン23aとを有している。ピストン23aは、シリンダ室21を型開閉方向において2つのシリンダ室に区画している。区画された2つのシリンダ室に選択的に作動液(例えば油)が供給されることにより、ピストン23aはシリンダ室21内を摺動する。
型締シリンダ11は、複数のタイバー7に対応して複数(本実施形態では4つ)設けられている。型接触し(図3)、タイバー7の端部とピストン部材23との相対移動を規制した状態で、ピストン部材23を移動ダイプレート5Mの背後側(固定ダイプレート5Fとは反対側、図3の左側)へ移動させるように型締シリンダ11を駆動すると、タイバー7が伸長する。そして、伸長量に応じた力が金型101に加えられる。
係合装置13は、ハウジング25と、ハウジング25に収容されたハーフナット27と、ハーフナット27を駆動するナット用シリンダ29とを有している。
ハウジング25は、例えば、互いに離間して固定された2枚のプレートを含んでいる。ハーフナット27は、その2枚のプレート間に、開閉方向(タイバー7に向かう方向及びタイバー7から離間する方向)に移動可能に支持されている。ナット用シリンダ29は、液圧シリンダにより構成されており、ハーフナット27を開閉方向に駆動する。
係合装置13は、複数のタイバー7に対応して複数(本実施形態では4つ)設けられている。ハウジング25は、ピストン部材23に対して固定されている。従って、係合装置13は、ピストン部材23とともに型開閉方向へ移動可能である。
係合装置13は、ハーフナット27が開閉することにより、タイバー7の端部に形成された被係合部7aに係合可能である。すなわち、ハーフナット27の内周面及び被係合部7aの外周面には、それぞれ、タイバー7の長手方向に配列された複数の環状溝が形成されており、ハーフナット27及び被係合部7aは、噛み合うことにより係合する。なお、複数の環状溝は、互いに独立していても、ネジ溝状に連続していてもよい。
ハーフナット27及び被係合部7aは、一方の複数の環状溝と、他方の複数の環状溝間の突条とが、タイバー7の長手方向において同一位置にあるときに噛み合う。従って、ハーフナット27及び被係合部7aは、ハーフナット27を閉じる前に、タイバー7の長手方向における相対位置が所定の位置関係とされなければならない。
型締装置1は、各種シリンダに作動液を供給する液圧回路31と、液圧回路の動作を制御する制御装置33とを有している。
液圧回路31は、例えば、ポンプ、アキュムレータ、各種のバルブ等を含んで構成され、型開閉シリンダ9、型締シリンダ11、及び、ナット用シリンダ29への作動液の供給を制御する。
制御装置33は、例えば、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を含むコンピュータにより構成されている。制御装置33は、ROMや外部記憶装置等に記録されたプログラムや各種のセンサ等からの信号に基づいて、液圧回路31等を介して、型開閉シリンダ9、型締シリンダ11及び係合装置13を制御する。
なお、図示は省略するが、型締装置1には、金型101により形成されるキャビティに溶湯(溶融状態の金属)を射出する射出装置が連結される。射出装置は、例えば、固定ダイプレート5Fの背後側(移動ダイプレート5Mとは反対側、図1の右側)に配置され、固定ダイプレート5Fに挿通されるスリーブを介して溶湯を供給する。なお、型締装置1においては、固定ダイプレート5Fとタイバー7との係合は、固定ナット8により行われていることから、係合装置13によりタイバー7との係合が行われる移動ダイプレート5Mに比較して、背後側のスペースが広い。従って、射出装置の配置が容易である。
図4は、移動ダイプレート5Mの下方側部分を型閉方向に見た図(図1の左側から見た図)である。
図1及び図4に示すように、移動ダイプレート5Mは、リニアガイド35を介してベース3に載置されている。図4に示すように、リニアガイド35は、型開閉方向に転がることが可能な回転体37を有している。回転体37が回転することにより、移動ダイプレート5Mは、ベース3に対する摩擦抵抗が低減される。
図1及び図4に示すように、型開閉シリンダ9は、型締装置1において一本のみ設けられている。より具体的には、型開閉シリンダ9は、型開閉方向に直交する水平方向(図4の左右方向)において下方の2本のタイバー7の中央となり、且つ、下方の2本のタイバー7よりもベース3側となる位置に設けられている。
シリンダチューブ15は、連結プレート39及び係合装置13を介して、ピストン部材23に固定されている。シリンダチューブ15は、4つのピストン部材23のうち下方側の2つのピストン部材23に固定されている。
ピストンロッド19は、連結機構41を介してベース3に連結されている。
図5は、連結機構41を示す断面図である。
連結機構41は、ベース3に固定された連結部材43、受け金45及び押え部材47を有している。また、連結機構41は、これらの部材に保持されるフロート49及び複数の皿バネ51を有している。さらに、連結機構41は、ピストンロッド19に固定され、フロート49及び複数の皿バネ51に係合する継手53及び係止部材55を有している。連結機構41は、これらの部材を有することにより、ベース3に対して、ピストンロッド19を、その軸方向及び径方向において、所定範囲で移動可能に連結している。具体的には、以下のとおりである。
連結部材43は、断面形状が概ねL字に形成された部材である。なお、図5では、連結部材43が2部材から形成されている場合を例示している。連結部材43の型開閉方向に向く板状部43aには、継手53が挿通される孔部が形成されている。連結部材43は、ボルトなどによりベース3に固定されている。
受け金45は、環状の部材である。また、押え部材47は、筒状の部材である。受け金45及び押え部材47は、同軸状に配置され、ボルトなどにより板状部43aに共に固定されている。受け金45及び押え部材47の内周面の径は、基本的には概ね同等である。ただし、押え部材47の内周面は、受け金45側の端部において拡径しており、これにより、フロート49が配置される溝部47aが形成されている。
フロート49は、環状に形成された部材である。フロート49は、ピストンロッド19の軸方向(型開閉方向)において、押え部材47及び受け金45に挟まれており、当該方向においてベース3に対して移動不可能である。一方、フロート49の外周面の直径は、押え部材47の溝部47aにおける内周面の直径よりも、所定の差で小さい。従って、フロート49は、ピストンロッド19の半径方向において、上記の直径の差の範囲で、押え部材47(ベース3)に対して移動可能である。なお、フロート49の外周面及び溝部47aの内周面は円形であることが好ましい。
継手53は、軸状の部材であり、ボルトなどによりピストンロッド19に固定されている。継手53は、板状部43a、受け金45、フロート49及び押え部材47それぞれの孔部に挿通されている。継手53は、フロート49の孔部に嵌合するとともに、板状部43a、受け金45及び押え部材47それぞれの孔部の内周面に対しては、フロート49の外周面と溝部47aの内周面との距離以上の距離で離間している。従って、継手53及びピストンロッド19は、半径方向(型開閉方向に直交する方向)において、フロート49の直径と溝部47aの直径との差の範囲で、ベース3に対して移動可能である。
また、継手53は、外周面が拡径して形成されたフランジ53aを有している。フランジ53aは、フロート49に対してピストンロッド19の延出方向へ係合する。これにより、型開閉シリンダ9の伸長時における、ピストンロッド19のベース3に対する型開方向への(図5の左側への)移動は規制される。
係止部材55は、円盤状の部材であり、ボルトなどにより継手53の端部に固定されている。係止部材55の直径は、押え部材47の内周面の直径よりも大きく、係止部材55は、押え部材47に対して、ピストンロッド19側へ係合する。これにより、型開閉シリンダ9の縮小時における、ピストンロッド19のベース3に対する型閉方向への(図5の右側への)移動は規制される。
ただし、フランジ53aと係止部材55との距離は、フロート49のフランジ53aに当接する端面から押え部材47の係止部材55に当接する端面までの距離よりも大きい。従って、その距離の差(余裕分ΔL)の範囲で、ピストンロッド19の型開閉方向におけるベース3に対する移動は許容されている。
複数の皿バネ51は、ピストンロッド19の軸方向において積層して配置されるとともに、フロート49と係止部材55との間において圧縮された状態で配置されている。従って、複数の皿バネ51により、ピストンロッド19は、ベース3に対して、ピストンロッド19の延出方向(型開方向、図5の左側)へ付勢される。
以上の構成を有する型締装置1の動作を説明する。
図6は、型締装置1の成形サイクルにおける動作を説明するフローチャートを含む図である。図6の左側のフローチャートは、型締装置1の動作を示しており、右側の表は、各ステップにおける、型開閉シリンダ9、型締シリンダ11、係合装置13(ハーフナット27)の動作を示している。表において、上向きの矢印は、上段と同じであることを示している。
サイクルのスタート時において、型締装置1は、図1に示す型開状態である。この状態では、型開閉シリンダ9のピストン17は、ヘッドエンドHEP、すなわち、移動ダイプレート5Mを型開方向へ駆動するときの駆動限に位置している。なお、型開状態においては、型締シリンダ11のピストン23aは、原位置OP、すなわち、型締時の駆動方向とは反対側の駆動限に位置している。また、ハーフナット27は開かれている。
ステップST1では、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを型閉方向へ移動(前進)させ、型閉じを行う。具体的には、制御装置33は、型開閉シリンダ9を伸長させ、ベース3に対してシリンダチューブ15を移動させる。シリンダチューブ15は、係合装置13を介してピストン23aに連結され、ピストン23aは、原位置OPにて移動ダイプレート5Mに係合しているから、移動ダイプレート5Mはシリンダチューブ15とともに型閉方向へ移動する。なお、成形サイクルを短縮しつつ、型締装置1各部の負担を軽減するために、型開閉シリンダ9は、比較的低速、比較的高速、比較的低速の順で駆動されることが好ましい。
ステップST2では、図2に示すように、ピストン17がロッドエンドREPに到達する。このとき、移動ダイプレート5Mは、型接触の距離ΔS手前で停止する。換言すれば、型締装置1は、想定されている最大型厚の金型101が取り付けられた場合であっても、ピストン17がロッドエンドREPに到達したときに、型接触しないように構成されている。距離ΔSは、金型101の型厚の変化に伴って変化する値である。
なお、制御装置33は、種々の方法により、型開閉シリンダ9が駆動限(本実施形態ではロッドエンドREP)に到達したことを検知できる。例えば、ピストン17の位置を検出する位置センサが型締装置1に設けられ、制御装置33は、その位置センサの検出結果に基づいて駆動限への到達を検出してもよい。位置センサは、ピストン17が駆動限に到達したか否かのみを検出するスイッチのようなものであってもよい。また、例えば、型開閉シリンダ9のシリンダ室の圧力を検出する圧力センサが型締装置1に設けられ、制御装置33は、その圧力センサにより検出される圧力の上昇などにより、駆動限への到達を検出してもよい。制御装置33は、上記のような位置センサや圧力センサの検出結果によらず、型開閉シリンダ9の駆動を開始してから一定の時間が経過したことをもって、駆動限への到達がなされたと判断してもよい。
ステップST3では、制御装置33は、ハーフナット27を閉じて、移動ダイプレート5Mとタイバー7とを係合する。このとき、ハーフナット27及び被係合部7aが噛合うように、タイバー7の長手方向におけるハーフナット27及び被係合部7aの相対位置を調整する、いわゆる噛合い調整は不要である。型開閉シリンダ9のピストン17がロッドエンドREPに位置したときのタイバー7と移動ダイプレート5M(ハーフナット27)との相対位置、及び、ピストン23aが原位置OPにあるときのハーフナット27と移動ダイプレート5Mとの相対位置は一定であることから、予め、ピストン17がロッドエンドREPに位置したときにハーフナット27と被係合部7aとが係合するように、タイバー7の取付位置が固定ナット8により調整されるなどしていればよいことからである。
ステップST4では、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを再び前進させる。ただし、当該前進は、ステップST1とは駆動方法が異なる。具体的には、制御装置33は、型締シリンダ11のピストン23aを型締時の駆動方向(原位置OPから離間する方向)へ移動させる。ピストン部材23は、ハーフナット27、タイバー7及び固定ダイプレート5Fによりベース3に対する移動が規制されているから、移動ダイプレート5Mは、型閉方向へ移動する。なお、後述する型接触における衝撃が抑制されるように、このときの型締シリンダ11の圧力は低圧であることが好ましい。
ステップST5では、図3に示すように、型接触がなされる。このとき、型締シリンダ11のピストン23aは、原位置OPから距離ΔS移動している。従って、制御装置33は、予め距離ΔSを記憶しておくことにより、ピストン23aの位置を検出する不図示の位置センサの検出結果等に基づいて、型接触したことを検知することができる。
ステップST6では、型締装置1は、型締めを行う。具体的には、制御装置33は、型接触を検知すると、シリンダ室21の原位置OP側における圧力を上昇させ、ピストン23aを図3に示される位置から更に原位置OPから離間する方向へ駆動する。なお、型締力は、タイバー7の伸長量によって規定されるから、制御装置33は、ピストン23aの位置を検出する不図示の位置センサの検出結果に基づいて、所定の型締力が得られたことを検知できる。そして、所定の型締力が得られると、型締装置1は、次のステップに進む。
ステップST7では、成形が開始される。具体的には、不図示の射出装置から金型101内に形成されたキャビティに溶湯が射出、充填される。キャビティ内の溶湯は、射出装置により、型締力より低いものの、比較的高圧の圧力が付与される。そして、キャビティ内の溶湯が凝固すると、成形が終了する(ステップST8)。なお、成形開始から成形終了まで、所定の型締力は維持される。
ステップST9では、型締装置1は、圧抜きを行う。すなわち、制御装置33は、型締力を生じさせるための型締シリンダ11への作動液の供給を停止する。型締シリンダ11のピストン23aは、伸長していたタイバー7の復元に伴って、図3に示す位置へ戻る。すなわち、型締装置1は、ステップST5の型接触の状態に戻る。
ステップST10では、型締装置1は、型開きの初期動作を行う。具体的には、制御装置33は、型締シリンダ11を型締時の駆動方向とは反対側へ駆動する。すなわち、制御装置33は、型締シリンダ11のピストン23aを原位置OP側へ移動させる。ピストン23aは、係合装置13、タイバー7及び固定ダイプレート5Fによりベース3に対する移動が規制されているから、移動ダイプレート5Mは型開方向へ移動する。これにより、型開きがなされ、成形品は、固定金型101F及び移動金型101Mの一方から離れ、他方に残る。そして、ピストン23aは原位置OPに復帰され、型締装置1は図2に示す状態となる。ステップST10における型締シリンダ11の駆動力は、成形品を離型させるために比較的大きく設定される。
ステップST11では、型締装置1は、ハーフナット27を開き、係合装置13とタイバー7との係合を解除する。
ステップST12では、型締装置1は、移動ダイプレート5Mを型開方向へ移動(後退)させる。具体的には、型開閉シリンダ9を収縮させ、ベース3に対してシリンダチューブ15を型開方向へ移動させる。また、型締シリンダ11は、作動液の流出及び流入の少なくとも一方が制御されることにより、ピストン23aの原位置OPから離間する方向への移動が規制される。これにより、シリンダチューブ15の移動は、係合装置13及びピストン部材23を介して移動ダイプレート5Mに伝達され、移動ダイプレート5Mはシリンダチューブ15とともに型開方向へ移動する。なお、成形サイクルを短縮しつつ、型締装置1各部の負担を軽減するために、型開閉シリンダ9は、比較的低速、比較的高速、比較的低速の順で駆動されることが好ましい。
ステップST13では、型開閉シリンダ9のピストン17がヘッドエンドHEPに到達し、型開きが終了する。すなわち、型締装置1は、図1に示す状態に戻る。なお、ステップST12からステップST13までの間、又は、ステップST13の後においては、不図示の押し出し装置により、成形品が金型101から押し出される。そして、成形サイクルは終了する。
次に、上記の成形サイクル中における連結機構41の作用について説明する。
ステップST1及びステップST2の型閉動作においては、フランジ53aがフロート49に係合し、ピストンロッド19の型開方向(図4の左側)への移動が規制される。これにより、型開閉シリンダ9の伸長によりシリンダチューブ15を型閉方向へ移動させることができる。
ステップST3において係合装置13がタイバー7と結合されると、シリンダチューブ15は、係合装置13、タイバー7及び固定ダイプレート5Fを介してベース3に対して固定される。従って、シリンダチューブ15と、ベース3に連結されているピストンロッド19との相対移動は基本的には規制される。
しかし、ハーフナット27と被係合部7aとのガタに起因して、シリンダチューブ15は、微小量、ベース3に対して移動し得る。具体的には、ステップST4〜ST6のいずれかにおいて、ピストン部材23の型開方向(原位置OPから離れる方向)への移動に伴って、ハーフナット27が被係合部7aに対してガタに相当する移動量で型開方向へ移動し、係合装置13に固定されているシリンダチューブ15も移動する。
このとき、ピストンロッド19は、フランジ53a及びフロート49により型開方向への移動が規制されているから、型開閉シリンダ9はガタに相当する移動量で収縮する。
その後、ステップST6〜ST9においては、ピストン部材23は、タイバー7に対して型開方向へ移動する力が加えられているから、ハーフナット27の被係合部7aに対する型開方向への係合は維持されている。
ステップST10の型開きの初期動作においては、ピストン部材23の型閉方向(原位置OPへの方向)への移動に伴って、ハーフナット27は、被係合部7aに対してガタの2倍に相当する移動量で型閉方向へ移動し得る。また、ハーフナット27に連結されているシリンダチューブ15も同様に移動し得る。
ガタの2倍に相当する移動量のうち、ガタに相当する移動量は、型開閉シリンダ9において、ステップST4〜ST6における収縮に相当する伸長を生じさせる。すなわち、ガタに相当する量の移動により、ピストン17はロッドエンドREPに復帰する。
残りの、ガタに相当する量の移動は、ピストンロッド19の型閉方向への移動を生じさせる。すなわち、ピストンロッド19は、係止部材55と押え部材47との間の余裕分ΔLの範囲内で、複数の皿バネ51を圧縮しつつ、型閉方向へ移動する。
なお、余裕分ΔLは、ハーフナット27と被係合部7aとのガタと同等の大きさである。従って、係止部材55が押え部材47に係合したときに、ハーフナット27は被係合部7aに対して型閉方向へ係合する(バックラッシが解消される)。
ステップST12において型開きのために型開閉シリンダ9が縮小されているときは、係止部材55と押え部材47との係合により、ピストンロッド19のベース3に対する型閉方向への移動が規制されている。従って、型開閉シリンダ9の収縮により、シリンダチューブ15はベース3に対して型開方向へ移動する。
ステップST13において、ピストン17がヘッドエンドHEPに到達すると、連結機構41は、複数の皿バネ51の復元力により、フランジ53aがフロート49に係合し、係止部材55が余裕分ΔLで押え部材47から離間している状態となる。換言すれば、複数の皿バネ51は、移動ダイプレート5Mごと型開閉シリンダ9を原点位置SPに引き込む。
なお、上記のように、移動ダイプレート5Mごと型開閉シリンダ9を原点位置SPに引き込むために、複数の皿バネ51は、以下の式が成り立つように選定されている。
P0 > μ×m×g
ここで、P0は、原点位置SPにおける付勢力であり、μは、静止摩擦係数であり、mは、移動ダイプレートの質量(移動金型101M等の質量含む)であり、gは、重力加速度である。
すなわち、複数の皿バネ51は、複数の皿バネ51の圧縮が最も解除されている状態(フランジ53aがフロート49に係合し、係止部材55が余裕分ΔLで押え部材47から離間している状態)における付勢力P0が、移動ダイプレート5Mを移動させるのに必要な力よりも大きくなるように構成されている。
また、複数の皿バネ51は、ステップST10の型開きにおいて、弾性変形するように、付勢力P0が型開力F以下となるように選定されている。より好ましくは、係止部材55が押え部材47に係合するまで(ハーフナット27のバックラッシが解消されるまで)、複数の皿バネ51が弾性変形するように、複数の皿バネ51は、余裕分ΔL縮んだ状態における付勢力P1(>P0)が型開力F以下となるように選定されている。
以上の実施形態によれば、型締装置1は、ベース3と、ベース3上に設けられ、固定金型101Fを保持する固定ダイプレート5Fと、ベース3上に型開閉方向に移動可能に設けられ、移動金型101Mを保持する移動ダイプレート5Mと、固定ダイプレート5Fに連結されたタイバー7とを有する。また、型締装置1は、移動ダイプレート5Mに設けられたシリンダ室21に収容されたピストン23aを有する型締シリンダ11と、ピストン23aに連結され、タイバー7に対する係合及び当該係合の解除を行う係合装置13と、型開閉シリンダ9とを有する。型開閉シリンダ9は、シリンダチューブ15、シリンダチューブ15に収容されたピストン17及びピストン17に連結されたピストンロッド19を有し、シリンダチューブ15が係合装置13に連結され、ピストンロッド19がベース3に対して連結されている。
すなわち、ベース3と移動ダイプレート5Mとの間に型開閉シリンダ9と型締シリンダ11とが直列に接続されている。従って、型締シリンダ11により型接触を行わせることができる。その結果、型開閉シリンダ9は、型閉時において、型厚によらず、常に同一位置(例えばロッドエンドREP)に停止させることができる。その結果、型厚の変化に伴う噛合位置の調整が不要となる。さらに、型開閉シリンダ9を、型厚によらず、ロッドエンドREPまで駆動できることにより、型開閉シリンダ9の制御が容易化されるとともに、型開閉シリンダ9の小型化も可能となる。
ピストンロッド19は、ベース3に対して型開閉方向において所定範囲(余裕分ΔL)で相対移動可能に連結されている。従って、ステップST10の型開きの初期動作において、ハーフナット27と被係合部7aとのガタに起因して、型締シリンダ11から型開閉シリンダ9に、駆動限(ロッドエンドREP)を超える方向への力が加えられることが抑制される。
さらに、型締装置1は、ピストンロッド19をベース3に対して型開方向へ付勢する複数の皿バネ51を有している。従って、ステップST10の型開きの初期動作において、型締シリンダ11からの運動エネルギーが複数の皿バネ51に吸収され、型開閉シリンダ9に衝撃が加えられることが抑制される。
ピストンロッド19は、ベース3に対して型開閉方向に直交する方向おいて所定範囲で相対移動可能に連結されている。型締時においては、移動ダイプレート5Mは、タイバー7により外周部が固定ダイプレート5F側に引っ張られ、固定ダイプレート5F側を凹として撓む。その結果、移動ダイプレート5Mに連結されている型開閉シリンダ9にも、型開閉方向に直交する方向を含む種々の方向の力が加えられる。しかし、ピストンロッド19がベース3に対して型開閉方向に直交する方向おいて所定範囲で相対移動可能に連結されていることから、ピストンロッド19の変形が緩和される。
タイバー7、型締シリンダ11及び係合装置13はそれぞれ、上方側に2つ、下方側に2つ、合計4つ設けられ、上下方向及び左右方向に対称に配置されている。型開閉シリンダ9は、一本のみ設けられ、4つの係合装置13のうち下方側の2つの係合装置13にのみ連結されている。従って、簡便な構成により、一本の型開閉シリンダ9の駆動力が、左右方向において均等に、且つ、上下方向において下方側に偏って、移動ダイプレート5Mに加えられる。その結果、一本の型開閉シリンダ9による型開閉がスムーズになされる。なお、移動ダイプレート5Mにおいて力が加えられる位置として下方側が好ましいのは、型開閉シリンダ9の駆動力と、ベース3から受ける摩擦抵抗とによって生じるモーメントが小さくなることなどからである。
なお、以上の実施形態において、ピストン23aは本発明の型締ピストンの一例であり、シリンダチューブ15は本発明の型開閉シリンダチューブの一例であり、ピストン17は本発明の型開閉ピストンの一例であり、ピストンロッド19は本発明の型開閉ロッドの一例であり、複数の皿バネ51全体又はそれぞれは本発明の弾性部材の一例であり、型開閉シリンダは本発明の型開閉駆動装置の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
型締装置は、ダイカストマシンに用いられるものに限定されない。例えば、溶融状態の樹脂を成形材料とする射出成形機等の他の成形機に用いられるものであってもよい。
型開閉駆動装置(型開閉シリンダ)は、係合装置を介して型締ピストンに連結されるのではなく、直接的に型締ピストンに連結されてもよい。なお、型締シリンダと係合装置とが連結されている場合において、型開閉駆動装置と係合装置との連結と、型開閉駆動装置と型締ピストンとの連結とは同義である。すなわち、請求項1〜7は、型開閉シリンダと係合装置とが直接的に連結されている態様だけでなく、型開閉シリンダと型締ピストンとが直接的に連結されている態様も含む。また、請求項8は、型開閉シリンダと型締ピストンとが直接的に連結されている態様だけでなく、型開閉シリンダと係合装置とが直接的に連結されている態様も含み得る。
型開閉駆動装置は、液圧シリンダに限定されない。型開閉駆動装置は、例えば、ベースに軸支されたネジ軸と、係合装置に連結され、ネジ軸に螺合するナットと、ネジ軸を回転させるモータとを有するものであってもよい。
型開閉シリンダは、シリンダチューブがベースに連結され、ピストンロッドが係合装置(型締ピストン)に連結されてもよい。また、型開閉シリンダは、伸長することにより型開きを行い、収縮することにより型閉じを行うように配置されてもよい。
実施形態では、型開閉駆動装置が型閉時の駆動方向の駆動限まで駆動されたときに、係合装置13と被係合部7aとが噛合うようにタイバーが配置されている場合を例示した。しかし、駆動限の手前の所定の位置において噛合うようにタイバーを配置し、その所定の位置まで型開閉駆動装置を駆動するようにしてもよい。
なお、駆動限は、物理的に規定される駆動限界である。例えば、駆動装置が液圧シリンダである場合には、ピストンの移動可能な範囲の端部位置である。当該端部位置は、一般には、ピストンがシリンダ室の端部内壁に当接する位置である。また、例えば、駆動装置が送りネジ機構を含むものである場合には、ナットが移動可能な範囲の端部位置である。当該端部位置は、一般には、ナットがネジ溝の端部に到達する位置である。
型開閉駆動装置(型開閉シリンダ)は、ベースに対して型開閉方向及び型開閉方向に直交する方向の少なくとも一方において移動可能に連結されることに代えて、若しくは、そのような連結に加えて、係合装置に対して型開閉方向及び型開閉方向に直交する方向の少なくとも一方において移動可能に連結されてもよい。
弾性部材についても同様に、型開閉駆動装置をベースに対して付勢するものに代えて、若しくは、そのようなものに加えて、型開閉駆動装置を係合装置に対して付勢する弾性装置が設けられてもよい。
実施形態では、型開閉シリンダ9とベース3とを移動可能に連結するときの余裕分ΔLを、ハーフナット27と被係合部7aとのガタと同等とした。しかし、余裕分は、ガタよりも大きくてもよいし、ガタよりも小さくてもよい。
弾性部材は、皿バネに限定されない。例えば、弾性部材は、コイルバネであってもよいし、ゴムであってもよい。
タイバー、係合装置及び型締シリンダの個数は4つに限定されず、適宜な数とされてよい。また、型開閉駆動装置(型開閉シリンダ)も適宜な数で設けられてよい。一の型開閉駆動装置と型締ピストンとの連結は、1対2の連結に限定されず、1対1(2対2等を含む)の連結や1対4の連結であってもよい。
型閉じにおける係合装置の係合(ステップST3)は、型締シリンダによる型接触(ステップST4及びST5)の後に行うことも可能である。また、型開きにおける係合装置の係合解除(ステップST11)は、型締シリンダによる型開きの初期動作(ステップST10)の前に行うことも可能である。換言すれば、型開閉シリンダにより、型締ピストンのベースに対する移動を規制して、型接触(ステップST4及びST5)又は型開きの初期動作(ステップST10)を行うことも可能である。ただし、型開きの初期動作(ステップST10)においては、比較的大きな力が生じることから、型開閉シリンダの負担軽減の観点から、実施形態の順序が好ましい。
実施形態では、型開きの初期動作(ステップST10)において、ピストン23aを距離ΔS移動させ、原位置OPに復帰させた。しかし、このときの移動量は、ΔS未満であってもよい。ピストン23aの原位置OPへの復帰は、ステップST10の後から次のサイクルのステップST1までの間の適宜な時期に行われてよい。
また、実施形態では、型開き(ステップST12)において、シリンダ室21の作動液の流入又は流出を規制してピストン部材23の移動ダイプレート5Mに対する移動を規制した。ただし、ピストン部材23を原位置OPとは反対側において移動ダイプレート5Mに係合させた状態で型開閉シリンダ9により移動ダイプレート5Mを移動させ、その後、ピストン部材23を原位置OPに戻すことも可能である。