以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2(a)は、インクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図2(b)は、図2(a)のX−X′線断面図である。
図示するように、本実施形態の流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14及び連通路15を介して連通されている。連通部13は、後述する保護基板のマニホールド部31と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールドの一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。
なお、本実施形態では、流路形成基板10には、圧力発生室12、連通部13、インク供給路14及び連通路15からなる液体流路が設けられていることになる。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。また、この絶縁体膜55上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、圧電体層70の2つの電極に挟持された領域で、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を活性部320という。本実施形態では、第1電極60を各圧力発生室12毎に設けることで、圧電素子300の個別電極とし、第2電極80を複数の圧力発生室12に亘って設けることで共通電極としている。すなわち、圧電体層70の第1電極60及び第2電極80に挟まれて実質的に駆動する領域を活性部320とし、圧電体層70の一方の電極60、80又は両方の電極が設けられておらず、実質的に駆動しない領域を非活性部330としている。また、ここでは、変位可能な圧電素子300を有する装置をアクチュエーター装置と称する。なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55及び第1電極60が振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電素子300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
ここで、圧電素子300の構成について図3及び図4を参照して詳細に説明する。
図3及び図4に示すように、圧電素子300を構成する第1電極60は、各圧力発生室12に対応して独立して設けられている。ここで、第1電極60が各圧力発生室12に対応して独立して設けられているとは、第1電極60が圧力発生室12の並設方向において不連続となるように切り分けられていることを言う。本実施形態では、第1電極60を圧力発生室12の短手方向の幅(圧力発生室12の並設方向における幅)よりも幅狭に設けることで、第1電極60を各圧力発生室12に対応して独立して設けるようにした。
また、このような圧力発生室12毎に独立して設けられた第1電極60同士は、電気的に導通されないようにすることで、圧電素子300の個別電極として機能する。
さらに、圧力発生室12の長手方向において、第1電極60のインク供給路14とは反対側の端部には、圧電体層70の端部よりも外側まで延設された延設部65が設けられている。この延設部65の端部は、圧電体層70によって覆われずに露出されることで、詳しくは後述する駆動回路120と電気的に接続される接続端子となっている。すなわち、第1電極60は、圧電素子300から引き出されて駆動回路120が接続される引き出し配線としても機能する。もちろん、第1電極60とは異なる導電性を有する配線を引き出し配線として別途設けるようにしてもよい。
圧電体層70は、本実施形態では、圧力発生室12に対応して独立して設けられている。すなわち、圧力発生室12毎に設けられた圧電体層70は、圧力発生室12の並設方向において不連続となるように圧力発生室12毎に切り分けられて設けられていることを言う。
圧電体層70は、圧力発生室12の短手方向(圧力発生室12の並設方向)において、第1電極60よりも幅広で、且つ圧力発生室12の短手方向の幅よりも幅狭に設けられており、圧電体層70は第1電極60の幅方向の端面を覆っている。
また、圧電体層70は、圧力発生室12の長手方向(圧力発生室12の並設方向と交差する方向)において、圧力発生室12よりも長く設けられている。本実施形態では、圧電体層70は、圧力発生室12の長手方向において第1電極60のインク供給路14側の端部を覆う大きさで設けられている。
さらに、圧電体層70は、圧力発生室12の長手方向において、第1電極60の連通部13とは反対側の端部よりも短く設けられており、第1電極60の引き出し配線の一部を露出している。この露出された第1電極60の端部に駆動回路120が電気的に接続される。
また、本実施形態では、第1電極60には後述する開口部61が設けられているが、圧電体層70は、開口部61の内部、すなわち、開口部61によって露出された絶縁体膜55上にも形成されている。
なお、圧電体層70は、電気機械変換作用を示す圧電材料、例えば、ペロブスカイト構造を有し金属としてZrやTiを含む強誘電体材料、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電体材料や、これに酸化ニオブ、酸化ニッケル又は酸化マグネシウム等の金属酸化物を添加したもの等からなる。具体的には、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸ジルコン酸バリウム(Ba(Zr,Ti)O3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3)又はマグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)等が挙げられる。
圧電体層70の厚さについては、特に限定されないが、製造工程でクラックが発生しない程度に厚さを抑え、且つ十分な変位特性を呈する程度に厚く形成すればよい。例えば、圧電体層70を0.2〜5μm前後の厚さで形成することで、所望の結晶構造を得ることが容易となる。本実施形態においては、最適な圧電特性を得るため、圧電体層70の膜厚を1.2μmとした。
また、圧電体層70の製造方法は特に限定されず、例えば、有機金属化合物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成することができる。もちろん、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal-Organic Decomposition)法やスパッタリング法等を用いてもよい。
また、本実施形態では、圧電体層70を圧力発生室12毎に独立して設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧電体層70を複数の圧力発生室12に亘って連続するように設けてもよい。本実施形態では、圧電体層70を圧力発生室12毎に切り分けて独立して設けることで、圧電体層70が圧電素子300の変位を阻害することがない。
第2電極80は、複数の圧力発生室12の並設方向に亘って連続して設けられている。ここで、第2電極80が複数の圧力発生室12に連続して設けられているとは、図3(a)に示すように、隣り合う圧力発生室12の間で連続しているものを含む。
また、第2電極80は、圧力発生室12の長手方向(圧力発生室12の並設方向と交差する方向)において、圧力発生室12に相対向する領域内に設けられている。すなわち、第2電極80の長手方向(圧力発生室12の長手方向)の端部は、圧力発生室12の領域内に位置するように設けられている。
また、第2電極80は、圧力発生室12の長手方向において、第1電極60の端部よりも内側(圧力発生室12の中央側)、すなわち、第1電極60よりも圧力発生室12側が端部となるように設けられており、第2電極80が圧電体層70の活性部320の長手方向の両端部を規定している。
このような第1電極60、圧電体層70及び第2電極80で構成される圧電素子300では、第1電極60の幅方向(圧力発生室12の短手方向であって並設方向のこと)の端部によって、圧電体層70の実質的な駆動部である活性部320の短手方向(幅)の端部が規定され、第2電極80の長さ方向(圧力発生室12の長手方向)の端部によって、活性部320の長手方向の端部(長さ)が規定されている。そして、それ以外の圧電体層70の領域、すなわち、第1電極60及び第2電極80の何れか一方又は両方が設けられていない領域を非活性部330としている。したがって、活性部320と非活性部330との境界は、第1電極60と第2電極80とによって規定されている。ここで、本実施形態では、圧力発生室12の長手方向における活性部320と非活性部330との境界について、インク供給路14側を境界A、インク供給路14とは反対側(延設部65側)を境界Bとしている。
このような圧電素子300の第1電極60には、圧力発生室12の並設方向と交差する方向(圧力発生室12の長手方向)において、圧電体層70の活性部320と非活性部330との境界A、Bの一方の境界Aには、圧電体層70の活性部320と非活性部330とに亘って開口する複数の開口部61によって構成される開口部群62が設けられている。
開口部61は、第1電極60を貫通して形成されたものであり、圧力発生室12の長手方向に長い矩形状の開口が第1電極60の端部で開口するスリット形状を有する。また、本実施形態では、開口部61を圧力発生室12の短手方向に沿って複数個、例えば、4個設けて、1つの開口部群62を構成するようにした。もちろん、開口部61の並設方向はこれに限定されず、例えば、圧力発生室12の長手方向に沿って複数個の開口部61を並設するようにしてもよい。
ここで、開口部群62が活性部320と非活性部330とに亘って開口するとは、言い換えると、第1電極60を第2電極80側から平面視した際に、開口部群62が、第2電極80に重なる位置から重ならない位置に亘って連続して設けられているということである。すなわち、本実施形態では、開口部群62を構成する開口部61が、活性部320と非活性部330とを跨って連続して設けられている。
さらに、本実施形態では、圧力発生室12の長手方向におけるインク供給路14とは反対側の活性部320と非活性部330との境界Bにも、活性部320と非活性部330とに亘って開口する複数の開口部61で構成される開口部群62を設けるようにした。延設部65側(境界B側)の開口部群62を構成する開口部61は、第1電極60の端部に至るまで設けられておらず、矩形状に開口する開口形状を有するものである。ここで、第1電極60のインク供給路14とは反対側では、上述のように圧電体層70の外部まで延設されて、駆動回路120が接続される延設部65が設けられている。この延設部65は、境界B側で第1電極60に連続して活性部320の外側に延設された領域を言う。すなわち、延設部65側では、上述のように第2電極80の端部が活性部320の端部(境界B)を規定しているため、第1電極60の第2電極80に相対向しない領域を延設部65としている。
このように、第1電極60に活性部320から非活性部330に亘って開口する開口部61によって構成される開口部群62を設けることによって、活性部320の端部(境界A)近傍では、圧電体層70の単位面積に対する第1電極60の面積が減少する。これにより、開口部群62が設けられた領域(境界A及びその近傍)では、開口部61の面積分だけ(面積が減少した分だけ)、圧電変位する領域の面積が減少する。ここで圧電体層70は、電界が印加される面積に対応して変位量が変化するため、第1電極60に開口部群62が設けられた境界Aを跨った領域では、変位量が低下する。具体的には、第1電極60の開口部群62が設けられていない中央側で印加される面積を100%とすると、例えば、第1電極60の開口部群62が開口部61によって50%の面積となるように設けられていた場合、第1電極60の開口部群62が設けられた領域で印加される面積は50%となる。ちなみに、非活性部330では、電界が印加される面積は0%である。このように、圧力発生室12の長手方向において、圧電体層70には、電界が印加される領域(活性部320)と、電界が印加されない領域(非活性部330)とが存在し、このうち、電界が印加される領域(活性部320)には、中央で電界が印加される面積が100%の領域と、活性部320と非活性部330との境界領域(境界A及びその近傍)で中央よりも電界が印加される面積が狭い領域とが存在する。ちなみに、開口部群62が設けられていない圧電素子300に電圧を印加して変形させると、図4の点線で示す変形が行われて、活性部320と非活性部330との境界Aに応力集中が発生する。これは、第2電極80が設けられた活性部320と、第2電極80が設けられていない非活性部330とで、第2電極80の有無による剛性差が生じているからである。また、境界Aの応力集中は、活性部320には電界が印加されて変形し、非活性部330には電界が印加されずに自発的に変形しない(活性部320の変形によって追随する変形は行われる)ことからも発生する。
しかしながら、本実施形態では、開口部61からなる開口部群62を設けることで、活性部320の非活性部330側の端部(境界A)側に中央側よりも電界が印加される面積が狭くなり、活性部320の非活性部330側の端部の変位量を減少させることができる。また、第1電極60は、開口部61が設けられた領域(境界A及びその近傍)は、中央側に比べて剛性が低くなる。このため、活性部320の中央側の剛性が高くなった領域と、非活性部330の第1電極60が設けられずに剛性が低くなった領域との境界A及びその近傍の剛性を、開口部群62によって第1電極60の活性部320の中央部よりも低くして、境界Aにおける剛性の急激な変化を低減することができる。これらのことによって、図4に示すように、圧電素子300が変位した際の境界A及びその近傍の傾斜角度を緩やかにすることができ、圧電体層70の境界A及びその近傍に応力が集中するのを低減して、クラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、延設部65側の活性部320と非活性部330との境界Bにも、活性部320と非活性部330とに亘って開口する開口部群62を設けるようにしたため、上述した境界A側の開口部群62と同様に、境界B側の開口部群62によっても圧電体層70の境界B側の境界部分の応力集中を低減して、クラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
なお、活性部320と非活性部330との境界A側では、非活性部330には、第1電極60が設けられているが、第1電極60は、圧力発生室12の長手方向の端部よりも内側が端部となるように設けられている。これに対して、活性部320と非活性部330との境界B側の非活性部330では、圧力発生室12の端部の外側まで第1電極60(延設部65)が設けられている。このため、境界Bの近傍に比べて境界Aの近傍では、圧力発生室12に相対向する領域内で、非活性部330の剛性と活性部320との剛性に大きな差が生じる。したがって、第1電極60には、少なくとも境界Aに開口部群62を設けるのが好適である。
また、本実施形態では、テーパー部61をインク供給路14側と、延設部65側の両方の境界A、Bに設けるようにした。このようにすることにより、2つのテーパー部61は、活性部320となる領域において、長手方向において略対称の構造とすることができる。
なお、本実施形態では、図2(b)及び図3(b)に示すように、第1電極60の端面(開口部61の端面も含む)は厚さ方向に対して傾斜して設けられている。このように傾斜した端面上に圧電材料を結晶成長させて形成した圧電体層70の結晶性と、水平面上に結晶成長させて形成した圧電体層70の結晶性とは異なる。具体的には、傾斜面上に圧電材料を結晶成長させると、結晶は傾斜面に垂直な方向に向かって成長し、その後垂直方向に屈曲するように成長するため、水平面上に形成した圧電体層70の結晶性よりも悪い結晶性を有する圧電体層70が形成される。このような結晶性の悪い圧電体層70は、開口部61の開口端面上にも形成される。本実施形態では、境界A、Bに複数の開口部61からなる開口部群62を設けることで、複数の端面が境界A、Bを跨っているため、比較的結晶性の悪い圧電体層70が開口部群62の設けられた領域全体に亘って形成される。これにより、開口部群62が設けられた領域上に形成された圧電体層70は、その他の領域に比べて低い圧電特性を有することになり、これによっても開口部群62上の圧電体層70の変位量を低下させて、活性部320と非活性部330との境界A、B及びその近傍の応力集中を低減することができる。
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60及び絶縁体膜55上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。また、流路形成基板10の連通部13を圧力発生室12毎に複数に分割して、マニホールド部31のみをマニホールドとしてもよい。さらに、例えば、流路形成基板10に圧力発生室12のみを設け、流路形成基板10と保護基板30との間に介在する部材(例えば、弾性膜50、絶縁体膜55等)にマニホールドと各圧力発生室12とを連通するインク供給路14を設けるようにしてもよい。
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120と第1電極60及び第2電極80とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、比較的硬質の材料で形成されている。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部のインク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
このとき、第1電極60の延設部65とは反対側の活性部320と非活性部330との境界Aに、活性部320と非活性部330とに亘って開口する開口部61を有する開口部群62を設けることで、活性部320と非活性部330との境界Aへの応力集中が抑制される。同様に、延設部65側の境界Bにも開口部群62を設けることで、延設部65側の活性部320と非活性部330との境界Bへの応力集中が抑制され、圧電体層70にクラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
(実施形態2)
図5は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を拡大した平面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図5に示すように、実施形態2の圧電素子300Aは、第1電極60A、圧電体層70及び第2電極80を有する。
第1電極60Aには、境界A側に、複数の開口部61Aによって構成された開口部群62Aが活性部320と非活性部330とに亘って設けられている。ここで、開口部61Aは矩形状の開口を有し、単体では活性部320と非活性部330とに亘って連続して設けられていないが、複数の開口部61Aが境界Aの両側(活性部320及び非活性部330)に設けられることで、同一の開口面積を有する複数の開口部61Aにより構成される開口部群62Aが、活性部320と非活性部330とに亘って設けられていることになる。
また、開口部群62Aは、第1電極60Aの単位面積に対する開口率が活性部320から非活性部330に向かって徐々に大きくなる。本実施形態では、開口部群62として、活性部320の中央側に圧力発生室12の短手方向に2つの開口部61Aを並設し、活性部320の端部(境界A)側に3つの開口部61Aを並設した。また、非活性部330にも同様に3つの開口部61Aを並設した。これにより、開口部群62Aは、第1電極60の中央側では、2つの開口部61Aによって開口率が低くなり、非活性部330側では、3つの開口部61Aによって開口率が高くなる。
このような開口部群62Aを有する第1電極60Aが存在する領域では、圧電変位量が、開口部群62Aによって活性部320から境界Aに向かって徐々に低くなる。
これにより、活性部320と非活性部330との境界A及びその近傍への応力集中をさらに低減して、クラック等の破壊が発生するのをさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、第1電極60Aの境界B側にも開口部群62Aを設けるようにした。境界B側の開口部群62Aについても、境界A側の開口部群62Aと同様に、活性部320から非活性部330に向かって開口率が徐々に大きくなるようにした。
このように、第1電極60Aの境界B側にも開口部群62Aを設けることによって、境界B及びその近傍での応力集中をさらに低減して、クラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
なお、本実施形態では、境界B側に開口部群62Aを1つだけ設けるようにしたが、特にこれに限定されない。ここでその他の例を図6に示す。なお、図6は、本発明の実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの変形例を示す平面図である。
図6に示すように、第1電極60Aの境界B側には、開口部群62Aを活性部320側と非活性部330との両方にそれぞれ1つずつ設けるようにした。このような2つの開口部群62Aは、それぞれ境界Bに向かって第1電極60Aの単位面積当たりの開口率が漸大するように設けられている。
このように境界Bに2つの開口部群62Aを設け、且つ各開口部群62Aを境界Bに向かって開口率が漸大するようにしても、境界Bにおける応力集中を緩和することができる。
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を拡大した平面図である。なお、上述した実施形態1と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7に示すように、実施形態3の圧電素子300Bは、第1電極60B、圧電体層70及び第2電極80を具備する。
第1電極60Bには、境界A側に複数の開口部61Bによって構成された開口部群62Bが活性部320と非活性部330とに亘って設けられている。
ここで開口部61Bは、矩形状の開口を有し、単体では活性部320と非活性部330とに亘って連続して設けられていないが、複数の開口部61Bが境界Aの両側(活性部320及び非活性部330)に設けられることで、複数の開口部61Bにより構成される開口部群62Bが、活性部320と非活性部330とに亘って設けられていることになる。
また、開口部群62Bは、第1電極60Bの単位面積に対する開口率が活性部320から非活性部330に向かって徐々に大きくなる。本実施形態では、開口部群62Bの活性部320から非活性部330に向かって並設された開口部61Bの列が3列設けられており、このうちの中心の1列において、活性部320の中央側の開口部61Bの一部の開口面積を小さくし、非活性部330側の開口部61Bの開口面積を大きくするようにした。また、開口部61Bの並設されたその他の2列については、同じ開口面積となるようにした。これにより、第1電極60Bの開口部群62Bは、活性部320から非活性部330に向かって、開口率が徐々に高くなる。また、このような開口部群62Bの開口率の漸大は、実施例2よりも滑らかに変化するため、実施例2に比べてさらに応力の集中を低減することができる。
また、本実施形態では、第1電極60Bの境界B側にも開口部群62Bを設けるようにした。境界B側の開口部群62Bについても同様に、活性部320から非活性部330に向かって開口率が漸大するようにした。このように、第1電極60Bの境界B側にも開口部群62Bを設けることによって、境界B及びその近傍での応力集中をさらに低減して、クラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
もちろん、上述した実施形態3の図6に示す例のように、開口部群62Bを境界Bの両側の活性部320及び非活性部330のそれぞれに設けるようにしてもよい。
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を拡大した平面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図8に示すように、圧電素子300Cは、第1電極60C、圧電体層70及び第2電極80を具備する。
第1電極60Cには、境界A側に複数のスリット状の開口部61Cによって構成された開口部群62Cが活性部320と非活性部330とに亘って設けられている。
ここで開口部61Cは、開口幅が、活性部320から非活性部330に向かって徐々に漸大する形状を有し、第1電極60Cの端部に開口するようにスリット状に設けられている。また、本実施形態では、開口部61Cは、圧力発生室12の短手方向に沿って4個並設されている。このような開口部61Cで構成される開口部群62Cによれば、活性部320から非活性部330に向かって、開口率が徐々に高くなる。このため、圧電体層70に印加される電界が開口部群62Cによって活性部320から境界Aに向かって徐々に低くなる。これにより、活性部320と非活性部330との境界A及びその近傍への応力集中をさらに低減して、クラック等の破壊が発生するのをさらに抑制することができる。
また、本実施形態では、第1電極60Cの境界B側にも開口部群62Cを設けるようにした。境界B側の開口部群62Cについても同様に、活性部320から非活性部330に向かって開口率が漸大するようにした。ちなみに、境界B側の開口部群62Cは、隣り合う開口部61C同士が連通しないように配置することで、延設部65と活性部320の第1電極60Cとが開口部61Cによって断線しないようになっている。
このように、第1電極60Cの境界B側にも開口部群62Cを設けることによって、境界B及びその近傍での応力集中をさらに低減して、クラック等の破壊が発生するのを抑制することができる。
もちろん、上述した実施形態3の図6に示す例のように、開口部群62Cを境界Bの両側の活性部320及び非活性部330のそれぞれに設けるようにしてもよい。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1〜4では、第1電極60〜60Cの連通部13とは反対側の活性部320の端部にも、開口部群62〜62Cを設けるようにしたが、この部分は、第1電極60〜60Cの延設部65が圧力発生室12の外側に至るまで設けられているため、圧力発生室12に相対向する領域内での第1電極60〜60Cの存在の有無による剛性の変化が少ない。したがって、開口部群62〜62Cは、少なくとも延設部65とは反対側の端部に設けていればよく、延設部65側に開口部群62〜62Cを設けないようにしてもよい。勿論、延設部65側の開口部群62〜62Cは、それとは反対側であるインク供給路14側の開口部群62〜62Cとは異なる組み合わせとしてもよい。
また、上述した実施形態1〜4では、第1電極60〜60Cを略同一の厚さで形成するようにしたが、特にこれに限定されるものではない。ここで、上述した実施形態1の変形例を図9に示す。なお、図9は、本発明の他の実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドを示す平面図及び断面図である。
図9に示すように、圧電素子300Dは、第1電極60D、圧電体層70及び第2電極80を具備する。第1電極60Dは、境界A、Bに設けられた開口部群62を具備する。また、第1電極60Dは、境界B側に開口部群62に連続する延設部65が設けられている。
このような第1電極60Dは、開口部61が設けられた幅が狭い領域、すなわち、圧力発生室12の短手方向における開口部61の両側は、その他の領域に比べて厚さが厚い厚膜部66となっている。このように開口部61によって他の領域よりも幅が狭くなった領域を、他の領域よりも厚くした厚膜部66とすることで、厚膜部66の電気抵抗を下げて、厚膜部66によって圧電素子300Dに印加する電圧が低下するのを抑制することができる。もちろん、厚膜部66以外の領域、例えば、厚膜部66の延設部65側等を厚膜部66と同様に厚く形成してもよい。ただし、活性部320側の第1電極60Dの厚さを厚くすると、活性部320の剛性が高くなり、圧電素子300の変位を阻害してしまう虞があるため、活性部320の第1電極60Dはできるだけ薄く形成する方がよい。
また、上述した例では、流路形成基板10として、シリコン単結晶基板を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、SOI基板、ガラス等の材料を用いるようにしてもよい。
また、上述した例では、圧電素子300〜300Dの上に耐湿度性を有する保護膜を設けなくても、第1電極60〜60Cの圧力発生室12の長手方向における一端部は、圧電体層70によって覆われているため、第1電極60〜60Cと第2電極80との間で電流がリークすることがなく、圧電素子300〜300Dの破壊を抑制することができる。なお、第1電極60〜60Cの圧力発生室12の長手方向の他端部は圧電体層70に覆われていないが、第1電極60〜60Cと第2電極80との間に距離があるため、特に影響が無い。もちろん、上述した例の圧電素子300〜300Dに耐湿度性を有する保護膜を設けることで、圧電素子300〜300Dをさらに確実に保護することができるが、上述した例の圧電素子300〜300Dのように保護膜を設けないようにすることで、保護膜が圧電素子300〜300Dの変位を阻害することがなく、大きな変位量を得ることができる。
さらに、上述した例では、圧電体層70を各圧力発生室12毎に切り分けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧力発生室12の並設方向に亘って連続する圧電体層70を設けるようにしてもよい。
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図10は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図10に示すインクジェット式記録装置IIにおいて、インクジェット式記録ヘッドIを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
また、上述したインクジェット式記録装置IIでは、インクジェット式記録ヘッドI(ヘッドユニット1A、1B)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドIが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
なお、上述した例では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。