本発明は、手洗い部で吐出された水をボール面に設けられる流出口から洗浄水タンクに導く構成において、ボール部の流出口に、空気を通過させて洗浄水タンクの空気置換を行うための構成を設けることにより、外観意匠性を確保しつつ、洗浄水タンクにおける負圧の発生を防止しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図5に示すように、本実施形態に係る衛生洗浄装置1は、いわゆる洋式の水洗便器2に備え付けられるものであり、水洗便器2のボール部を洗浄するための洗浄水を貯溜する洗浄水タンク3を、水洗便器2の後上方に備える。洗浄水タンク3は、タンクカバー4により覆われ、衛生洗浄装置1を構成する各種機器等とともにタンクカバー4内に収納される。
本実施形態の衛生洗浄装置1においては、衛生洗浄装置1に対して水洗便器2が位置する側(図2において下側)を下側とし、その反対側(同図において上側)を上側とする。また、同じく衛生洗浄装置1において、水洗便器2上において洗浄水タンク3が位置する側(図2において右側)を後側とし、その反対側(同図において左側)を前側とする。
衛生洗浄装置1は、タンクカバー4の前側の下部に、水洗便器2のボール部の上端縁部に対応する便座5と、水洗便器2のボール部を上側から便座5上から覆う便蓋6とを有する。便座5および便蓋6は、いずれもタンクカバー4の前側の下部に設けられるヒンジユニットにて連結され、このヒンジユニットの部分を回動軸部分として、上下方向に開閉可能に設けられる。
衛生洗浄装置1は、水洗便器2の使用者(以下単に「使用者」ともいう。)が手を洗うために用いられる手洗い部7を備える。手洗い部7は、手洗い用の水を吐出する吐水口8aを構成するスパウト8を有する。また、手洗い部7は、吐水口8aから吐出される水を受けるボール面9を有する。ボール面9は、タンクカバー4の上部に設けられる。スパウト8は、タンクカバー4の上端部の後側に取り付けられ、前側上方に延設されて、吐水口8aにより下側に向けて水を吐出する。吐水口8aから吐出される水は、ボール面9により受けられる。
このように、スパウト8は、洗浄水タンク3の上方に設けられ所定の経路により供給される水を吐出する吐水口8aを構成する吐水部として機能する。吐水口8aから吐出される水は、洗浄水タンク3に水を供給するための配管から分岐する手洗い用の給水管10によりスパウト8に供給される。
具体的には、図3に示すように、洗浄水タンク3には、水道等の給水源からの水が、給水配管11からバルブユニット12を介して供給される。給水配管11は、バルブユニット12の下流側であって洗浄水タンク3の内部に、配管分岐部11aを有する。この配管分岐部11aにおいて、給水配管11が、洗浄水タンク3の給水用の給水口13と、手洗い用の給水管10とに分岐される。これにより、給水配管11によって供給される給水源からの水が給水管10によってスパウト8に供給される。
バルブユニット12は、定流量弁および給水バルブを含む。バルブユニット12を構成する定流量弁は、給水源から供給される水量を一定量に規制する。同じくバルブユニット12を構成する給水バルブは、その開閉動作によって、給水源からの洗浄水タンク3内への給水・止水を切り替える。
つまり、給水バルブが開弁することにより、給水配管11によって供給される給水源からの水が、配管分岐部11aから分岐される給水口13から洗浄水タンク3内に供給される。なお、給水バルブの開閉動作は、洗浄水タンク3内に設けられる水位センサの検知信号に基づいて、衛生洗浄装置1が備えるコントローラにより制御される。一方、給水配管11から供給される水の一部は、洗浄水タンク3内の配管分岐部11aにおいて給水口13とは異なる開口部に接続される給水管10により、スパウト8に供給される。
洗浄水タンク3内の水は、洗浄水タンク3の下端部に設けられる排水口14から排出され、水洗便器2の内部に形成される導水路を通って水洗便器2のボール部に供給される。洗浄水タンク3内の水の排水口14からの排水は、洗浄水タンク3内に設けられる排水バルブ15を介して行われる。排水バルブ15が開弁することにより、洗浄水タンク3内の水が排水口14から排出される。
排水バルブ15は、洗浄水タンク3に取り付けられる排水用の駆動装置としてのモータ16により駆動される。駆動するモータ16は、洗浄水タンク3の一側の側面に取り付けられる。モータ16の動作は、衛生洗浄装置1が備えるコントローラにより制御される。つまり、排水バルブ15の開閉動作は、モータ16を介してコントローラにより制御される。
一方、手洗い部7においてスパウト8の吐水口8aからボール面9に吐出された水は、ボール面9の下端に設けられる排水口17から洗浄水タンク3内に排出される。排水口17から排出される水は、排水口17と洗浄水タンク3との間に設けられる接続部18を介して洗浄水タンク3内に導かれる。このように、手洗い部7は、ボール面9に受けた水を流出させる排水口17を有する。
接続部18は、円筒状の外形を有し、洗浄水タンク3の上面部に設けられ、排水口17と洗浄水タンク3の内部空間とを連通させる。接続部18は、タンクカバー4の内部において、左右方向(図3における左右方向)の略中央に位置する。なお、排水口17には、排水経路を確保するとともに排水口17を上側から覆う排水キャップ40が設けられている。
洗浄水タンク3は、箱状のタンク本体3aと、タンク本体3aを上側から覆うタンク蓋体3bとを有し、上下に分割される構造を有する。したがって、手洗い部7の排水口17と洗浄水タンク3とを接続する接続部18は、タンク蓋体3b上に設けられる。
手洗い用の給水管10は、洗浄水タンク3の内部の配管分岐部11aから洗浄水タンク3のタンク蓋体3bを貫通してタンク蓋体3bの上面から延出される。給水管10は、タンク蓋体3bの上面における左右一端側(図3における左端側)から延出され、接続部18の後面側に設けられる支持ステー19に支持され、上方のスパウト8側へと延設される。
支持ステー19は、略円筒状の接続部18における外周面の後面側から斜め上方に突出するように設けられる。支持ステー19は、その先端部に、給水管10の下流側の部分を起立した状態で支持する支持部19aを有する。支持部19aは、給水管10を支持する面として略水平面を形成する。
給水管10は、例えばゴムホース等の可撓性を有する部材により構成され、上述のとおりタンク本体3aの左右一端側から延出されて左右方向の中央側に配され、支持ステー19の支持部19aの部分を介して上方に延設される。給水管10は、支持ステー19の支持部19a上において起立するように支持される。給水管10の支持部19a上における起立状態は、給水管10を覆うホースカバー10aにより保持される。
ホースカバー10aは、例えば合成樹脂製のスポンジ等の可撓性を有するパイプ状の部材であり、給水管10の支持部19aより上側の部分を挿通させた状態で、支持部19a上における給水管10の起立状態を保持する。このように、給水管10は、接続部18の後方に設けられる支持ステー19およびホースカバー10aにより、左右方向の中央位置において、スパウト8に接続される側となる上側の部分が、起立した状態かつ容易に撓むことができるように柔軟性を有する状態で配される。
給水管10は、その先端部に、スパウト8に対する接続部10bを有する。接続部10bは、給水管10において支持部19a上で起立した状態となる部分の先端部に設けられる。接続部10bは、ネジ部等を有する配管接続用の構成である。給水管10は、接続部10bにより、タンクカバー4の後側の上端に形成される開口部4aを介して、タンクカバー4の外部に配置されるスパウト8に接続される。これにより、給水管10からスパウト8への手洗い用の水の給水経路が構成される。
本実施形態の衛生洗浄装置1においては、洗浄水タンク3および洗浄水タンク3に接続される給・排水経路により形成される連通空間(以下「タンク部連通空間」という。)について、気密性が保持されている。詳細には、洗浄水タンク3を構成するタンク本体3aとタンク蓋体3bとの接合部分は、シール部材等によって気密性を保持する。また、給水配管11から配管分岐部11aを介して給水口13によって洗浄水タンク3内に至る給水経路、および洗浄水タンク3内から排水バルブ15を介して排水口14に至る排水経路の各経路における各部品間の接続部分は、シール部材等によって気密性を保持する。また、給水配管11からバルブユニット12および給水管10を介してスパウト8に至る手洗い用の給水経路、および手洗い部7の排水口17から接続部18を介して洗浄水タンク3内に至る手洗い用の排水経路の各経路における各部品間の接続部分は、シール部材等によって気密性を保持する。
このように、本実施形態の衛生洗浄装置1では、タンク部連通空間が水の通り道を確保しつつ密閉された状態とされ、タンク部連通空間についての気密性が保持される。
また、衛生洗浄装置1におけるタンクカバー4の前面側の下部には、各種センサの検出部分が配置されるセンサパネル部4bが設けられている。センサパネル部4bに検出部が配置されるセンサには、使用者である人体を検知するための素子や、衛生洗浄装置1のリモコンからの光を受ける受光素子等が含まれる。
また、本実施形態の衛生洗浄装置1は、使用者の局部洗浄用のノズルを有する局部洗浄装置、局部洗浄用の温水を生成するための熱交換器、水洗便器2内の脱臭を行うための脱臭装置、排水バルブ15の動作等の衛生洗浄装置1の各部の動作を制御するコントローラ、コントローラ等に接続される各種電装部品、各種弁機構等、各種の装置・機構を備える。このように衛生洗浄装置1が備える各種の装置・機構は、洗浄水タンク3とともにタンクカバー4内に収納される。
本実施形態の衛生洗浄装置1においては、洗浄水タンク3を収納するタンクカバー4が、一体の部品により構成される。厳密に言うと、手洗い部7のボール面9を形成する部分を含み、タンクカバー4の主たる部分を構成する部品として、一体の成形品であるタンクカバー本体20が用いられている。
そして、タンクカバー4を一体の部品であるタンクカバー本体20で構成することにともない、タンクカバー4は、次のような構成を備える。タンクカバー4は、衛生洗浄装置1においてタンクカバー4が装着された状態での手洗い用の給水管10についての配管作業を可能とするため、背面側(後面側)に形成される開口部21およびこの開口部21を覆う背面カバー体30を有する。つまり、開口部21および背面カバー体30は、タンクカバー4内に配される手洗い用の給水管10に対するタンクカバー4の外部からのアクセスを可能とするための構成である。
タンクカバー4は、タンクカバー4の主たる部分を構成するタンクカバー本体20と、タンクカバー本体20の背面側に形成される開口部21を覆う背面カバー体30とを備える。
タンクカバー本体20は、洗浄水タンク3を覆う部分としてタンクカバー部22を有する。つまり、タンクカバー部22は、洗浄水タンク3と、上述のとおり衛生洗浄装置1が備える各種の装置・機構とを収納する部分である。
また、タンクカバー本体20は、手洗い部7においてボール面9を形成する手洗い鉢部23を有する。つまり、手洗い鉢部23は、タンクカバー本体20においてタンクカバー部22に対して上側に形成される部分である。手洗い鉢部23は、タンクカバー部22と一体成形される部分である。
このように、タンクカバー4を構成するタンクカバー本体20は、洗浄水タンク3を覆うタンクカバー部22、およびタンクカバー部22と一体成形され、吐水口8aから吐出される水を受けるボール面9を有する手洗い鉢部23を含む。
背面カバー体30は、開口部21の形状に対応して略矩形板状に形成される部材である。背面カバー体30は、開口部21に取り付けられることで、開口部21に形成される開口を覆う。
背面カバー体30は、開口部21に固定されるため、略矩形状における下辺部に2箇所の係止片30aを有し、同じく略矩形状における上辺部に2箇所の係止爪30bを有する。係止片30aおよび係止爪30bは、背面カバー体30の下辺部および上辺部において、それぞれ左右の両側に設けられる。
背面カバー体30は、下側の係止片30aを開口部21からタンクカバー本体20の内面側に係止させるとともに、上側の係止爪30bをその弾性変形により開口部21の上辺部に係止させた状態で、開口部21に固定される。係止爪30bは、背面カバー体30の上辺部を固定するための固定用のフックとして機能する。開口部21の上辺部には、背面カバー体30の係止爪30bを係止させるための係合部が設けられる。
したがって、背面カバー体30を開口部21に取り付ける際には、まず、背面カバー体30の下側の係止片30aを、開口部21の下辺部においてタンクカバー本体20の内側に係止させる。そして、係止片30aを開口部21に係止させた状態から、背面カバー体30の上側を開口部21に向けて押し付けることにより、背面カバー体30の上側の係止爪30bが弾性変形することで自動的に開口部21の上辺部に対して係止される。
ここで、背面カバー体30の上辺部には、係止爪30bの弾性変形による可動範囲を確保するための開口30cが形成されている。背面カバー体30の上辺部に開口30cを形成することにより、係止爪30bが設けられる部分の剛性が低下し、背面カバー体30の取付けにともなう係止爪30bの弾性変形が促される。
このように、タンクカバー4を構成する背面カバー体30は、タンクカバー本体20の内部空間をタンクカバー本体20の背面側から開口させる開口部21に取り付けられ、開口部21に形成される開口を覆う。
以上のような構成を備える本実施形態の衛生洗浄装置1は、上述したようなタンク部連通空間について気密性が保持される構成に起因して洗浄タンクにおいて負圧が生じることを防止するため、手洗い部7の排水口17に、洗浄水タンク3の内部と外部との空気置換を行うための構成を備える。以下、具体的に説明する。
図6および図7に示すように、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、手洗い部7が、排水口17の部分に、洗浄水タンク3の内部と外部との空気置換を行うための通気口41を有する。
図6に示すように、排水口17が開口するボール面9は、タンクカバー本体20の上面部を形成する部分であって平面視での略中心部に向けて全体的に窪む凹形状を有するボール部53により形成される。つまり、下側に凹むボール部53の上側の面により、ボール面9が形成される。排水口17は、ボール部53の下端部に設けられ、ボール部53を上下方向に貫通させるとともに、ボール部53の下端部において下側に突出する円筒状の部分である。このような排水口17の内側に、通気口41が設けられる。
通気口41は、排水口17の内側に設けられ排水口17に沿って上下方向に貫通する円筒状の部分(内管部42)により形成される。通気口41は、スパウト8の吐水口8aからボール面9に吐出された水が排水口17から排水されるという排水口17による排水経路を確保しつつ、タンク部連通空間に対する通気経路を確保する。つまり、通気口41は、ボール面9から排水される水が排水口17内を流れている状態であっても、タンク部連通空間が排水口17の部分を介して外部と通気されている状態を維持する。
本実施形態では、通気口41は、ボール面9を形成するボール部53とは別体の部材である排水キャップ40により構成される。排水キャップ40は、互いに同軸心配置される内管部42と外管部43とを有する。内管部42および外管部43は、いずれも円筒状の部分であり、排水キャップ40は、内管部42および外管部43の中心軸方向が円筒状の部分である排水口17の軸方向と一致するように、排水口17に取り付けられる。
排水キャップ40は、排水口17に外管部43が嵌った状態で装着される。したがって、排水キャップ40の外管部43の外径の寸法は、外管部43が排水口17に嵌った状態が得られるように、排水口17の内径の寸法に対応して決められる。排水キャップ40は、排水口17に装着された状態で、外管部43の上側の開口端面がボール面9と連続するように(略同じ面を形成するように)構成される。
このように排水口17に装着される排水キャップ40の内管部42により、上述したように空気置換を行うための通気口41が構成される。排水キャップ40において、内管部42は、外管部43の内周面43aに対して固定された状態で設けられることで、外管部43と一体の部材として構成される。なお、内管部42と外管部43との固定構造については、特に限定されるものではない。例えば、内管部42は、外管部43とともに一体成形品として構成されたり、ボルト等の固定具によって外管部43に固定されたりしてもよい。
このように排水キャップ40が装着される排水口17には、その下側に排水管52が接続される。排水管52は、上述したように排水口17と洗浄水タンク3とを接続する接続部18を構成する(図2等参照)。つまり、排水管52により、排水口17から排出される水が洗浄水タンク3に導かれる。したがって、排水管52は、洗浄水タンク3の内部空間に連通する。排水管52は、排水口17に対して気密性を保持した状態で接続される。
本実施形態では、排水管52は、排水キャップ40およびゴムジョイント54を介して排水口17に接続される。具体的には、排水キャップ40を構成する外管部43は、排水キャップ40が排水口17に装着された状態で、排水口17から下側に突出する。一方、ゴムジョイント54は、略円環状の部材であり、その外周縁部54aを排水管52の上側の開口端部に装着した状態で、内周側に形成される孔部54bに、外管部43の排水口17から下側に突出する部分を貫通させる。
ゴムジョイント54の外周縁部54aは、排水管52の上端部の外周面に沿う略円筒形状部分を有し、排水管52の上端開口部に上側から被さった状態で装着される。ゴムジョイント54の孔部54bは、排水管52の上側の開口端の位置よりも下側の位置で、外管部43の下側突出部分を貫通させる。したがって、排水口17に装着された状態の排水キャップ40の外管部43は、排水口17から下側に突出するとともに、下側の一部が排水管52内に入った状態で、排水管52に対してゴムジョイント54により支持される。つまり、排水キャップ40の外管部43の下端部と排水管52の上端部とは互いにオーバーラップしている。
このように、排水管52は、ゴムジョイント54によって、排水口17に装着された状態の排水キャップ40を支持することで、排水キャップ40およびゴムジョイント54を介して排水口17に接続される。そして、ゴムジョイント54は、外周縁部54aにおいて排水管52の上端部に密着するとともに、孔部54bにおいて外管部43の外周面に密着することで、排水管52と排水キャップ40との間の気密性を保持する。なお、排水管52については、排水口17に直接的に接続される構成が採用されてもよい。また、ボール部53および排水キャップ40を含む構成と排水管52とのシール方法は、特に限定されるものではない。例えば排水管52とボール部53に対して、発泡体等のシール部材を用いる方法でもよい。
以上のように、排水キャップ40により構成される通気口41を有する構成においては、通常、スパウト8の吐水口8aから吐出されボール面9に沿って排水口17に流れ込む水は、排水口17の外周側から流れ込み、内管部42と外管部43との間(内管部42の外周面42bと外管部43の内周面43aとの間)に形成される通路を通って、排水管52に排出される(図7、矢印A参照)。
一方、ボール面9に吐出された水が排水口17を介して排水管52に排出されている状態においても、内管部42により形成される通気口41内は、水の流入がなく、外部に対する通気状態を保持する。このことは、内管部42により構成される通気口41が、排水口17の内側に設けられることで、排水口17の外周側から流れ込む水から内管部42の周壁によって隔離されることに基づく。
すなわち、排水口17に排水キャップ40が装着されることにより通気口41が設けられる構成においては、内管部42によって排水口17に流れ込む水の流れが規制され、通気口41における通気性が確保される。したがって、内管部42と外管部43との間に形成される通路が、主として水を通過させる通水路として機能し、内管部42の内部により形成される通気口41が、主として空気を通過させる通気路として機能する。
このように、本実施形態の手洗い部7は、排水口17の部分において通気口41を有し、通気口41は、排水口17の内側に設けられ、排水口17に流れ込む水の流れを規制することで、排水口17に接続される排水管52に対する通気性を確保する。つまり、通気口41について、通気性を確保するとは、排水口17によって水が流出している状態であっても通気性を保つことを意味する。排水管52は、洗浄水タンク3に連通するため、通気口41によって排水管52に対する通気性が確保されることで、洗浄水タンク3についての通気性が確保される。
以上のような構成を備える本実施形態の衛生洗浄装置1によれば、外観意匠性を損なうことなく、簡単な構造により、洗浄水タンク3から流出する洗浄水の勢いを減少させる原因となる負圧が生じることを防止することができる。
具体的には、洗浄水タンク3の内部と外部との空気置換を行うための構成である通気口41が、排水口17の部分に設けられる。排水口17は、ボール面9に開口する孔部として形成されるものであり、通気口41も空気用の通路としての孔部を形成するものであるので、排水口17の内側に通気口41が存在することが衛生洗浄装置1の外観意匠性に与える影響は小さい。つまり、通気口41が排水口17の部分に設けられることで、洗浄水タンク3の内部と外部との空気置換を行うための開口が例えばタンクカバー等に設けられる場合に生じる見映えの低下が防止され、製品の外観意匠性を確保することができる。
また、通気口41が排水口17の部分に設けられることにより、例えば空気置換のための開口が排水口17とは別の場所に設けられる場合に必要となる、開口と洗浄水タンクとを連通させるための構成が不要となる。このため、簡単な構造を実現することができる。
そして、通気口41によれば、排水管52を介して洗浄水タンク3の通気性を確保することができるので、タンク部連通空間が密閉される構成においても、便器洗浄に際して洗浄水タンク3から水が流出することにともなって洗浄水タンク3内に負圧が生じることを防止することができる。これにより、洗浄水タンクからの便器洗浄用の水の勢いを維持することができ、便器の洗浄不良を防止することができる。
また、例えば、スパウト8から吐出される手洗い水が排水口17に一気に多量に入った場合、排水口17が単なる開口であると、流入水で開口を塞がれてしまい、エアロック現象が発生する可能性がある。こうした現象は、開口の大きさを大きくすることにより防止することができるが、開口が大きくなると、見映えが低下する。この点、本実施形態の衛生洗浄装置1では、手洗い部7が通気口41を有するため、上述のようなエアロックが発生することを防止することができる。
なお、本実施形態では、通気口41が、ボール部53とは別体の排水キャップ40により構成されているが、通気口41は、例えば排水口17の内周面に管状の部材が設けられる等、排水口17に対して直接的に設けられる構成であってもよい。また、通気口41の形状については、本実施形態のように排水キャップ40の内管部42による円筒形状に限定されず、楕円状や多角形状等、様々な形状を採用することができる。
以下では、通気口41に関係する構成について、具体的に説明する。本実施形態の衛生洗浄装置1においては、排水キャップ40は、通気口41を上方から覆う蓋部44を有する。蓋部44は、内管部42の上端部に設けられる柱状の支持部45を介して排水キャップ40と一体的に設けられる。
蓋部44は、通気口41の上側の開口を確保するために、支持部45によって、通気口41を形成する内管部42の上端面との間に間隔を隔てた状態で設けられる。支持部45は、内管部42の周方向に略等間隔を隔てて複数設けられる。これにより、支持部45の部分において、通気口41の上側における通気状態が確保される。排水キャップ40における通気の流れには、通気口41を形成する内管部42の内部における上下方向の流れ(矢印B1参照)や、内管部42と蓋部44との間における複数の支持部45間を通過する流れ(矢印B2参照)等が含まれる。
蓋部44は、略円板状の部材であって、通気口41を上方から覆う傘状の部分である。したがって、蓋部44は、外径寸法が少なくとも通気口41の径(内管部42の内径)よりも大きく形成され、上面視で蓋部44によって通気口41が覆われるように設けられる。
なお、本実施形態では、蓋部44は、排水キャップ40と一体的に設けられているが、これに限定されるものではない。つまり、蓋部44については、手洗い部7において通気口41を上方から覆うように設けられれば、その構成は限定されない。
通気口41が蓋部44によって上方から覆われることで、例えばスパウト8の吐水口8aから吐出される水が上方から排水口17の部分にかかることによっても(図6、矢印C参照)、通気口41に流入することを防止することができ、通気口41の通気性を確実に保持することができる。つまり、通気口41が蓋部44により覆われることで、通気口41の上方からかかる水は、蓋部44によって通気口41の周囲に導かれ、ボール面9に落ちて、ボール面9を伝って、排水キャップ40における内管部42と外管部43との間に形成される通路によって、排水管52に排水される。これにより、通気口41により形成される空気置換用の通路における通気性が確実に保持される。
また、通気口41に対して蓋部44が設けられる構成によれば、通気口41に対して上側に例えばトイレ用洗浄材等の物が置かれることがあっても、置くことが妨げられるか、あるいは置かれたとしても通気口41が塞がれることがないので、通気口41が塞がれて洗浄水タンク3内の負圧による洗浄不良が発生することがない。また、蓋部44によって、排水口17を上側から覆う目隠しのための部材と、通気口41を上方から覆う部材を兼用することができるので、部品点数の省略や省コスト化を図ることができる。さらに、蓋部44によって、通気口41にゴミ等の異物が入ることを防止することができる。
また、蓋部44については、少なくとも排水口17を覆う大きさを有することが好ましい。つまり、図7に示すように、略円板状の部材である蓋部44は、外径寸法D1が排水口17の径の寸法D2よりも大きく形成され、上面視で蓋部44によって排水口17が覆われるように設けられることが好ましい。言い換えると、蓋部44が、排水口17に対してオーバーラップしていることが好ましい。
このように、蓋部44が排水口17よりも大きな外径とされることにより、蓋部44によって排水口17を隠すことができるので、外観意匠性を向上することができる。また、通気口41等の、排水口17の内部に設けられる構成が外部に露出しないため、いたずら等によって排水口17や通気口41が塞がれることを防止することができる。
さらに、蓋部44については、蓋部44の上面44aは、少なくとも周縁部に、蓋部の中央部から周縁部に向かう方向にかけて下る曲面部として、R形状部44bを有する。
蓋部44においては、上面44aの中央部は水平面として形成され、その周縁部にR形状部44bが形成される。蓋部44は、その周縁部においてR形状部44bを有することにより、上側の部分から下側の部分にかけて、R形状部44bの曲率に沿って徐々に外径寸法が大きくなる。
このように、蓋部44の周縁部にR形状部44bが設けられることにより、例えばスパウト8から吐出された水等の上方からの水を受ける蓋部44の上面において、整流作用が得られ、蓋部44上で水が跳ねて飛散することを防止することができる。なお、蓋部44の上面44aの形状については、周縁部だけでなく、全面的に蓋部44の中央部から周縁部に向かう方向にかけて下る曲面部として形成されたり、蓋部44の中央部から周縁部に向かう方向にかけて下る斜面部として形成されたりしてもよい。
また、通気口41については、本実施形態のように、排水口17からボール面9に臨んで開口する管状の部材により構成されることが好ましい。本実施形態では、通気口41は、排水口17からボール面9に臨んで開口する管状の部材である内管部42により構成されている。そして、本実施形態では、内管部42を構成する排水キャップ40において、互いに同軸心配置される内管部42と外管部43とによる2重管構造とされている。
このように、通気口41が管状の部材により構成されることにより、空気を通過させるための通路である通気口41を簡単に構成することができる。そして、管状の部材により構成される通気口41を、円筒状の排水口17に対して同軸心配置することにより、排水口17の周囲から流入する水に対して万遍なく対応することができ、通気口41による通気性を確実に保持することができる。
また、通気口41については、本実施形態のように、排水口17よりも上方で開口することが好ましい。本実施形態の場合、排水キャップ40が、外管部43の上側の開口端面がボール面9と連続するように構成されていることから、ボール面9に開口する排水口17の上側の開口位置と、外管部43の上側の開口位置とは略同じとなる。つまり、本実施形態の場合、外管部43は、排水口17の内側から排水口17の内周面を覆う部分であるので、外管部43は、実質的にボール面9が受けた水を流出させる排水口17の一部分とみることができる。したがって、本実施形態の場合、内管部42により形成される通気口41は、外管部43よりも上方で開口することが好ましい。
図7に示す例においては、通気口41が、排水口17よりも寸法D3だけ上方で開口している。言い換えると、通気口41を形成する内管部42の上側の開口端の位置は、排水口17の上側の開口端と略同じ高さ位置となる外管部43の上側の開口端の位置よりも、寸法D3だけ高い位置にある。
このように、通気口41が排水口17よりも上方で開口することにより、排水口17の周囲から流入する水が、排水口17の開口端面よりも上側に突出する内管部42の外周面42bに当たることとなる。これにより、排水口17に流れ込む水によって通気口41が塞がれることを確実に防止することができ、通気口41による通気性を確実に保持することができる。ただし、通気口41の上側の開口位置については、排水口17(外管部43)との関係で特に限定されるものではない。例えば、通気口41の(内管部42の)上側の開口の高さ位置は、排水口17の(外管部43の)上側の開口の高さ位置と同程度であってもよい。
また、通気口41については、本実施形態のように、排水キャップ40として、ボール面9を形成するボール部53とは別体の部材により構成されることが好ましい。本実施形態では、通気口41を構成する内管部42に加え、排水口17の内周面に沿う外管部43および通気口41を上方から覆う蓋部44が、一体の排水キャップ40として構成されている。
このように、通気口41が、ボール部53とは別体の部材として構成されることにより、別体の部材を排水口17に装着するだけで、通気口41を構成することができるので、通気口41を容易に設けることができる。また、通気口41の各部の形状・寸法や、蓋部44の形状・寸法等の調整が容易となる。
また、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、ボール部53とは別体の部材として通気口41を構成する排水キャップ40の排水口17に対する相対的な移動を規制する部材として、Oリング46が設けられている。Oリング46は、排水キャップ40の外管部43の外周面43bに形成される外周溝43cに装着された状態で、外管部43の外周面43bと排水口17の内周面17aとの間に設けられる。
このように、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、排水キャップ40は、排水口17の内周面17aに沿う管状の外管部43を有する。そして、手洗い部7は、外管部43の外周面43bと、排水口17の内周面17aとの間に、排水キャップ40の排水口17に対する相対的な移動を規制する規制部材としてのOリング46を有する。
このように、排水キャップ40と排水口17との間にOリング46が介装されることにより、排水キャップ40のガタつきを防止することができる。これにより、排水キャップ40にスパウト8から吐出される水が当たること等により生じる異音を防止することができる。また、使用者に、排水キャップ40が排水口17から外れるというような誤解を与えることがなく、本来は排水口17から取外しができない排水キャップ40が排水口17から無理に取り外されるというような事態を回避することができる。なお、排水キャップ40の排水口17に対する相対的な移動を規制する部材としては、Oリング46に限定されず、適宜の部材を用いることができる。
また、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、排水キャップ40を排水口17に固定するための構成が備えられる。具体的には、排水キャップ40は、外管部43の排水口17から突出する下端部の外周面に、係止凹部47を有し、排水管52は、係止凹部47に対応する係止片48を有する。
係止凹部47は、外管部43の外周面43bにおいて周面に沿って突出するとともに、外周溝47aを形成する部分である。また、係止片48は、排水管52の内周面52aにおいて係止凹部47の外周溝47aに係合可能な片部である。係止片48としては、例えば一部が切り欠かれた円環状の外形を有し、弾性変形によって径方向に拡大・縮小することで係止凹部47に嵌る構成が採用される。係止片48は、排水管52の内周面52aに所定の手段により支持される。
このように、本実施形態の衛生洗浄装置1においては、手洗い部7は、排水キャップ40を排水管52の内周面52aに係止させる係止手段として、外管部43の係止凹部47と、排水管52の係止片48とを有する。
このように、手洗い部7において排水キャップ40の係止手段が設けられることにより、排水キャップ40の排水口17からの抜けを防止することができるので、いたずらに排水キャップ40が排水口17から取り外されることを防止することができる。