以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る印刷物検査方法及び印刷物検査装置の好適な実施例について詳細に説明する。本発明は、可視光域では認識不可能な状態でありながら、所定波長の光源下では認識可能となる特殊なインクを利用した印刷物の検査に適用できる。このような特殊インクとして、例えば、赤外光を吸収する赤外線吸収インク、紫外光を吸収する紫外線吸収インク、赤外線のみを透過させる赤外線透過インク、紫外光を受けて発光する蛍光インクがある。本実施形態では、蛍光インクを利用して印刷された複数の小切れを含む大判印刷物を検査する場合を例に説明する。なお以下では、各構成部について記載する際に、機能及び動作が共通する複数の構成部を、例えば「10A、10B」のように同じ数字にアルファベットを付した符号を用いて記載するとともに、その構成部の全てを指す場合には「10」のように数字のみからなる符号を用いて記載する。
まず、図1を参照しながら、本実施の形態に係る印刷物検査装置1の概要について説明する。図1(A)は、印刷物検査装置1を側面から見た場合の構成概略を示す模式図であり、図1(B)は印刷物検査装置1を上面から見た場合の模式図である。
図1(A)に示すように、印刷物検査装置1は、紫外光用カメラ10と、紫外光照射部11と、赤外光用カメラ20と、赤外光照射部21及び22と、レール50によってY軸方向(正方向及び負方向)に移動可能なステージ30とを備えている。ステージ30は、大判印刷物100が載置されるガラス板31が嵌め込まれた枠体から構成される。ステージ30上には、図1(B)に示すように、ガラス板31の外側の枠体上に検査基準マーク39が設けられている。ステージ30の構造及び検査基準マーク39の詳細については後述する。
紫外光照射部11は、大判印刷物100に向けて紫外光を照射する機能を有する。具体的には、例えば、紫外光を発するLEDやランプ等を利用する。紫外光照射部11は、レール50上を移動するステージ30の上方(Z軸正方向)に設置されている。
赤外光照射部21及び22は、大判印刷物100に向けて赤外光を照射する機能を有する。赤外光照射部21及び22についても、紫外光投光部21と同様に、赤外光を照射することができれば、光源の種類は特に限定されない。
赤外光照射部21は、レール50上を移動するステージ30の上方(Z軸正方向)に設置されている。赤外光照射部21から照射された赤外光は、ステージ30の上面に載置された印刷物100の表面で反射される。これに対し、赤外光照射部22は、ステージ30の下方(Z軸負方向)に設置されている。この赤外光照射部22から照射された赤外光は、ガラス板31と、ガラス板31に載置された印刷物100とを透過する。
紫外光用カメラ10は、紫外光照射部11によって紫外光を照射された大判印刷物100の表面を撮像するためのラインカメラである。紫外光用カメラ10は、可視光による画像を生成するラインカメラと、このラインカメラの手前に設けられた紫外線カットフィルタとを有している。紫外光用カメラ10は、紫外線カットフィルタによって紫外光をカットして、蛍光インクで印刷された印刷内容が紫外光を受けて発光した状態を撮像する。すなわち紫外光用カメラ10によって蛍光画像が撮像される。なお印刷物検査装置1は、紫外光下で発光する印刷内容を撮像することができるように、紫外光用カメラ10による撮像時には、他の光を遮断する構造となっている。
紫外光用カメラ10の受光側には、レンズを含む光学系が設けられており、鮮明な画像を撮像できるように、大判印刷物100との距離に応じて焦点距離を調整することができるようになっている。ただし、本発明がこれに限定されるものではなく、大判印刷物100の画像を生成することができれば、ラインカメラではなく、エリアカメラ又はラインセンサを利用するものであってもよい。また、カメラと印刷物の位置を固定した状態で光学系を利用して焦点距離を調整する他、光学系を利用せずカメラと印刷物との距離を調整して焦点距離を調整してもよい。
撮像対象となる大判印刷物100は、図1(A)に示すように、ステージ30のガラス板31上に載置された状態で紫外光用カメラ10の下側をY軸方向(正方向又は負方向)へ通過するように搬送される。これにより紫外光用カメラ10を利用して、大判印刷物100を走査してY軸方向全体に渡る画像を撮像することができる。
本実施形態で印刷検査の対象となる大判印刷物100には、図1(B)に示すように、X軸方向(行方向)に3枚、Y軸方向(列方向)に3枚、合計9枚の小切れ101が並んで印刷されている。印刷物検査装置1は、図1(B)に示すように、X軸方向に3台の紫外光用カメラ(10Aから10C)を備えており、各カメラによって小切れ101を各列毎に撮像する。これにより列数に応じた3つの蛍光画像が撮像される。ただし、本発明がこれに限定されるものではなく、1台のカメラによって複数列の画像を撮像してもよい。なおここで「初期位置」とは、印刷物の検査を行う前にステージ30上に印刷物を載置する際の位置を言う。
赤外光用カメラ20は、大判印刷物100の表面で反射された赤外光を受光する赤外光反射画像と、大判印刷物100を透過した赤外光を受光する赤外光透過画像とを撮像するためのラインカメラである。赤外光用カメラ20は、可視光を受光して画像を生成するラインカメラと、この手前に設けられたバンドパスフィルタを有している。赤外光用カメラ20は、バンドパスフィルタによって所定波長領域内の赤外線を受光することにより、赤外光による反射画像又は透過画像を撮像する。
例えば、印刷物検査装置1内で、大判印刷物100が載置されたステージ30が、図1に示す初期位置からY軸正方向に移動して赤外光用カメラ20の位置を通過し、再び初期位置へと戻るまでの間に、3台の赤外光用カメラ(20Aから20C)によって、検査基準マーク39及び3枚の小切れ101を含む、3つの赤外光反射画像と、3つの赤外光透過画像を撮像することができる。なお光学系を含む構造や、X軸方向に3台の赤外光用カメラ20Aから20Cが設置される点等は紫外光用カメラ10と同様であるため詳細な説明を省略する。なお、ラインカメラを使うことにより、カメラの下を移動する小切れ101の複数枚分の画像を同一フレームに連続して撮像することができる。
図2は、印刷物検査装置1の構成概略を示すブロック図である。印刷物検査装置1は、図1を用いて説明した各構成部の他に、制御部2及び記憶部3を有している。また制御部2は、投光制御部2Aと、カメラ制御部2Bと、ステージ制御部2Cと、画像位置特定部2Dと、印刷検査処理部2Eとを有している。制御部2は、例えば、CPU、当該CPUにより実行されるソフトウェアプログラム、及び当該ソフトウェアプログラムを実行するCPUによって制御される各種ハードウェア等によって構成される。各部の動作に必要なソフトウェアプログラムやデータの保存には記憶部3を構成するRAMやROM等のメモリやハードディスク等が利用される。
投光制御部2Aは、紫外光照射部11と、赤外光照射部21及び22とを制御する機能を有する。具体的には、紫外光用カメラ10によって、蛍光画像を撮像する間は、紫外光照射部11から大判印刷物100に向けて紫外光を照射する。同様に、赤外光用カメラ20によって、赤外光反射画像を撮像する間は赤外光照射部21から、赤外光透過画像を撮像する間は赤外光照射部22から、各々赤外光を照射する。投光制御部2Aは、各投光部を点灯する制御を行うとともに、画像の撮像に不要な他の投光部を消灯する制御も行う。光源及びカメラは図1に示すように配置されているので、各投光部(11、21又は22)を点灯する際に、紫外反射用の光源11と赤外反射用の光源21は同時点灯可能であるが、赤外の反射光源21と透過光源22の同時点灯しないように制御される。
カメラ制御部2Bは、紫外光用カメラ10及び赤外光用カメラ20を制御する機能を有する。具体的には、各カメラ10及び20の下を通過する大判印刷物100を撮像して得られた蛍光画像、赤外光反射画像及び赤外光透過画像を、図示しないA/Dコンバータを用いてデジタル化したデータを記憶部2にそれぞれ記憶させる。
ステージ制御部2Cは、ステージ30の移動を制御する機能を有する。具体的には、例えば、図示しないギアやモータ等からなる駆動部を制御してステージ30を移動させる。また、ステージ制御部2Cは、例えば、ロータリーエンコーダ等を利用して、ギアやモータの回転角度からY軸方向に移動するステージ30の位置を算出する機能を有する。投光制御部2A及びカメラ制御部2Bは、ステージ制御部2Cによって算出された位置情報を利用して、各投光部(11、21及び22)や各カメラ(10及び20)の制御を行う。
画像位置特定部2Dは、紫外光用カメラ10及び赤外光用カメラ20によって生成された画像上で、各小切れ101の位置や、各小切れ101に含まれる検査対象領域を特定する機能を有する。この処理の詳細については後述する。
印刷検査処理部2Eは、画像位置特定部2Dによって特定された検査対象領域の画像を利用して印刷物検査を行う機能を有する。画像位置特定部2Dによって特定された結果に基づいて、大判印刷物100を撮像した画像から検査対象領域の画像を計測データとして抽出し、記憶部3に記憶された適正な印刷状態を示す基準データと比較することにより印刷状態を検査する。なお計測データと基準データとを比較して印刷物検査を行う方法は従来同様であるため詳細な説明は省略する。
記憶部3は、メモリやハードディスク等の記憶装置である。記憶部3内には、印刷物検査装置1を構成する各構成部の機能及び動作を実現するために必要なプログラムやデータが記憶される。記憶部3には、印刷物の検査を行う際に計測データと比較するための基準データである印刷検査用赤外画像3B及び印刷検査用蛍光画像3Cと、印刷検査を行う際に必要となる各種データを含む印刷検査用データ3Dと、検査対象となる領域を特定するために利用される印刷物位置データ3Aとが記憶されている。これらのデータの詳細については後述する。
表示部4は、液晶ディスプレイ等の表示装置であって、記憶部3に記憶されたデータ、紫外光用カメラ10や赤外光用カメラ20によって撮像された画像等を表示する機能を有する。また表示部4は、各種の設定を追加変更したり修正や削除をしたりする場合に必要となる情報を表示するために利用される。
操作部5は、印刷物検査装置1によって印刷物検査を含む各種の処理を行う際に、利用者からの指示操作を受け付ける機能を有する。例えば、操作部5から印刷物の検査が指示されると、この指示情報が制御部2に入力される。そして操作部5から入力された指示情報に基づいて、制御部2による各部の制御が行われて印刷物検査に係る各処理が実行される。また操作部5は、各種の設定を追加変更したり修正や削除をしたりする場合に、必要となる情報を入力するために利用される。
次に、図3を参照しながら、印刷物検査装置1で利用するステージ30について詳細を説明する。図3(A)は、印刷物検査を行う際のステージ30の状態を上方(Z軸正方向)から見た場合の図であり、図3(B)はステージ30に印刷物をセットする際の状態を示す斜視図である。
ステージ30は、印刷物が載置されるガラス板31とこれを保持する枠体により構成されている。ステージ30は、背面側に設けられた溝34と印刷物検査装置1に設けられたレール50とが噛み合うことによりY軸方向へスライドして移動できるようになっている。ステージ30の移動制御については後述する。
ステージ30には、上枠32が接続されている。上枠32は、奥側(Y軸正方向)端部の蝶番によって、ステージ30に対して開閉可能に設けられている。またステージ30と上枠32は、左右(X軸正方向及び負方向)端部でダンパー36によって接続されており、上枠32に設けられた取っ手を利用して僅かな力で上枠32を上方へ開き、図3(A)の閉状態から図3(B)の開状態とすることができる。またダンパー36によって、ステージ30に対して上枠32を持ち上げて開いた開状態を維持できるようになっている。
上枠32は、図3(A)の閉状態で、上方(Z軸正方向)外側からガラス板31に載置された印刷物を撮像できるように、その略中央部に印刷物よりも大きく開口された開口部を有する構造となっている。そして、この開口部には、3本のワイヤー(35Aから35C)がX軸方向に張られている。各ワイヤー(35Aから35C)のY軸方向の位置は、上枠32を閉じて閉状態としたときに各行の小切れ101間の余白位置となるように調整されている。これにより、閉状態では、図7に示すように、各ワイヤー(35Aから35C)によって小切れ101行間の余白位置がガラス板31に押しつけられて固定される。上枠32へのワイヤー35の取り付け状態と印刷物の押さえ方については後述する。
図3(A)に示すようにステージ30左側には、ガラス板31上に載置された印刷物を固定するための複数のクランプ(38Aから38F)がY軸方向に並んで配設されている。また同様に手前側にも複数のクランプ(37Aから37D)がX軸方向に並んで配設されている。図3(B)に示す開状態で、これらのクランプ37及び38に印刷物を突き当てて固定することにより、印刷物の位置決めができるようになっている。クランプ37及び38によって位置決めされた大判印刷物100は、全ての小切れ101がガラス板31上となる位置で固定される。
ステージ30には、ガラス板31の外周部奥側に3つの検査基準マーク39Aから39Cが固定して設けられている。この検査基準マーク39Aから39Cは、大判印刷物100に印刷された小切れ101の列に対応して設けられ、1台のカメラが撮像する列数に対して少なくとも1つの検査基準マークが設けられる。本実施例では、図4に示すように、検査基準マーク39は、小切れ101の各列においてX軸方向略中央となる位置でかつ図3に示す上枠32の閉状態でステージ30の上方向外側から撮像可能な位置に設けられている。
検査基準マーク39は、紫外光用カメラ10及び赤外光用カメラ20によって撮像される蛍光画像及び赤外光反射画像上で認識可能となる材質によって形成されている。具体的には、例えば、図4(A)に示す検査基準マーク39全体(図面黒塗り部分)を赤外線吸収インクによって形成するとともに、検査基準マーク39の外側の所定領域139を紫外光によって発光する蛍光インクによって形成する。これにより赤外光を利用して撮像した赤外光反射画像では、検査基準マーク39の部分で赤外光が吸収されるので、図4(A)に示すように、検査基準マーク39が暗部となる画像が生成される。これに対し紫外光を利用して撮像した蛍光画像では、検査基準マーク39周囲の所定領域139の部分が紫外光によって可視光を励起するので、図4(B)に示すように、所定領域139のみが明部となる画像が生成される。このように、蛍光画像及び赤外光反射画像の両方で認識可能な検査基準マーク39を設けることによって、各画像上で検査基準マーク39の位置を特定することができる。
なお、検査基準マーク39は、複数の検査光を利用して撮像される各画像上でその位置を認識することができれば、検査基準マーク39の形状、検査基準マーク39を設ける位置、検査基準マーク39を形成する材質等が、上記内容に限定されるものではない。例えば、検査基準マーク39の形状が三角形や矩形等であってもよいし、インクではなくアルミ等の金属や樹脂等を利用してもよい。また検査基準マーク39を、小切れ101の各列の側方や下方に設けてもよいし、ステージ30ではなく上枠32に設けても構わない。
また、基準マーク39をステージ30に直接設ける他、紙、樹脂又は金属等の平板状のプレート上に検査基準マーク39を設けて、このプレートをステージ30上に固定して利用してもよい。この場合は、例えばクランプや磁石等を利用した固定部材をステージ30に設けて、この固定部材によって基準マーク39を含むプレートをステージ30に固定すればよい。
次に、ステージ30の上枠32へのワイヤー35の取り付け状態及びワイヤー35による印刷物の押さえ方について説明する。図5は、ワイヤー35の取り付け状態を示す上枠32の断面模式図である。図5(A)に示すように、各ワイヤー35A〜35Cは、一端側を留め具42によって上枠32に固定されている。ワイヤー35は、留め具42から、上枠32の一部を構成する円筒部材41、ワイヤー支持部材39及び開口部を経てX軸方向へ延び、他端側がボルト43Aの先端に回転可能に固定されている。
ボルト43Aは、上枠32に設けられた貫通孔と、コイルスプリング43Cの内孔とを挿通し、上枠32に対して進退自在な状態にある。ボルト43に噛み合うナット43Bと上枠32との間にあるコイルスプリング43Cにより、ワイヤー35に所定の張力を生じさせている。ボルト43Aに対する軸方向のナット43Bの位置を変更することによってワイヤー35の張力を調整することができる。なお、ワイヤー35はボルト43Aの先端でX軸回りに回転可能に固定されているので、ボルト43Aが回転してもワイヤー35が捩れないようになっている。
ワイヤー35が摩耗等によって切れることがないように、円筒部材41及びワイヤー支持部材39上でワイヤー35が湾曲して接触する領域は曲面で構成されている。またワイヤー35がY軸方向へずれないように、円筒部材41及びワイヤー支持部材39上のワイヤー35が接触する位置には、X軸方向に浅い溝が形成されている。
図3(B)に示す開状態では、図5(A)に示すように、ワイヤー35は、上枠32開口部においてX軸方向に真っ直ぐに張られた状態にある。これに対し、図3(A)に示す閉状態、すなわちガラス板31に載置された大判印刷物100を押さえた状態にあるときは、図5(B)に示すように、ワイヤー支持部材39のZ軸方向の位置が大判印刷物100よりも低い位置となる。これに伴いワイヤー35は2つのワイヤー指示部材39の間でZ軸方向に変形する。このときワイヤー35によってボルト43Aが引っ張られて、コイルスプリング43Cが圧縮された状態となる。ワイヤー35は適度な張力が生ずるよう調整して張られているので、大判印刷物100をガラス板31に押さえつけて確実に固定することができる。なお図5(B)に示す閉状態にあるときの印刷物100の上面から、ワイヤー支持部材39の下端までの高さHは0.2から0.5mm程度であることが好ましい。またワイヤー35としては、鉄等の金属や、黄銅等を含む合金からなるワイヤーの他、ピアノ線、カーボンファイバ、ガラスリボン等を利用することができる。ワイヤー35に利用する線材としては、引っ張り強度が高く、径が0.5mm以下であることが好ましい。
次に、検査対象となる大判印刷物100について詳細を説明する。大判印刷物100上には、図6(A)に示すように、X方向にAからCまでの3列、Y方向に1から3までの3行の合計9枚の小切れ101が印刷されている。大判印刷物100の外周部分及び各小切れ101の間には何も印刷されていない余白部が設けられている。
図6(B)は、各小切れ101に印刷された印刷内容を示す図である。各小切れ101には、番号102等の数字や、文字、模様等がカラーで印刷されている。小切れ101に印刷されたセキュリティマーク103及び2次元バーコード104(以下では単に「バーコード」と記載する)は、紫外線によって可視光を励起する蛍光インクによって印刷されている。
図6(B)では、番号102、文字、模様、セキュリティマーク103、及びバーコード104の位置関係を理解できるように小切れ101を表している。しかし、自然光下で小切れ101を見た場合には、図6(C)に示すように、蛍光インクで印刷されたセキュリティマーク103及びバーコード104を認識することはできない。赤外光用カメラ20によって赤外光反射画像を撮像した場合には図6(C)に示す画像が得られる。
これに対し、他の光を遮断して紫外光を照射して蛍光インクを発光させ、紫外光用カメラ10によってこれを撮像した場合には、図6(D)に示す蛍光画像が得られる。蛍光画像では、蛍光インクによって印刷されたセキュリティマーク103及びバーコード104が認識可能な状態となる。
なお、蛍光画像では蛍光インクによる部分が明部となり他の部分が暗部となる。このため、実際に得られる蛍光画像は、図6(D)に示す画像を白黒反転させた画像である。しかし、本図を含めて、説明を簡単にするために、蛍光画像についても赤外線反射画像と同様に、視認可能な線図を黒で背景を白で表すこととする。
図6で説明した小切れ101が印刷された大判印刷物100は、図3に示すステージ30上の各クランプ37及び38に突き当てた状態でガラス板31の上に載置される。そして、小切れ101の各行の間の余白部分で、上方から、上枠32に張られたワイヤー35によってガラス板31に押しつけられて、図7に示すように固定される。このときステージ30上にセットされた全ての小切れ101と、ステージ30に設けられた検査基準マーク39とが、ステージ30の上方(Z軸正方向)外側から撮像可能な状態となっている。
ステージ30が、ステージ制御部2Cによって制御されてY軸方向へ移動すると、紫外光用カメラ10及び赤外光用カメラ20によって大判印刷物100が撮像されて各画像データが生成される。印刷物検査装置1では、蛍光画像、赤外光反射画像及び赤外光透過画像が生成されるが、以下では、説明を簡単にするために蛍光画像及び赤外光反射画像について説明を続ける。
印刷物検査装置1は、図1に示したように3台の紫外光用カメラ10を有しており、各カメラによって各列に対応する3つの蛍光画像が撮像される。同様に、3台の赤外光用カメラ20によって各列に対応する3つの赤外光反射画像が撮像される。具体的には、例えば、紫外光用カメラ10Aにより撮像される蛍光画像には、検査基準マーク39Aと、3つの小切れ(1,A)、(2,A)及び(3,A)とが含まれる。また赤外光用カメラ20Aにより撮像される赤外光反射画像には、同じく、検査基準マーク39Aと小切れ(1,A)〜(3,A)とが含まれる。他の紫外光用カメラ(10B及び10C)、及び赤外線カメラ(20B及び20C)で撮像される画像についても、同様に、各列の検査基準マーク(39B及び39C)と、各列の小切れ((1,B)〜(3,B)及び(1,C)〜(3,C))とが含まれる。
図8は、赤外光用カメラ20及び紫外光用カメラ10によって生成される画像の例を示している。図8(A)は赤外光反射画像の例を示し、図8(B)は蛍光画像の例を示している。上述したように各列毎に撮像された画像は、同図に示すように、Y軸方向に並ぶ1列3つの小切れ101を含む細長い画像となる。各画像の最上部には、各列に対応して設けられた検査基準マーク39が含まれている。図8に示した赤外光反射画像及び蛍光画像の比較から分かるように、赤外光反射画像で認識可能な番号102、文字、及び模様は、蛍光画像には表れない。また蛍光画像で認識可能なセキュリティマーク103及びバーコード104は赤外光反射画像には表れない。
しかし、印刷物検査装置1では、図8(A)の赤外光反射画像と、図8(B)の蛍光画像との両方の画像上に、共通する検査基準マーク39が含まれている。よって、赤外光反射画像上で小切れの範囲と検査基準マーク39との位置関係とを特定すれば、この位置関係を蛍光画像上の検査基準マーク39に適用することにより、蛍光画像上においても小切れ101の範囲を特定することができる。小切れ101の範囲を特定することができれば、従来と同様に基準データと比較することにより、印刷ずれの検査を含む印刷物検査を完結することが可能となる。
検査基準マーク39を利用した印刷物検査方法の詳細について、以下、図9及び図10を参照しながら説明する。これらの処理は、画像位置特定部2D及び印刷検査処理部2Eによって、赤外光反射画像及び蛍光画像を用いて行われる処理である。
図9は、印刷物検査の処理の流れを示すフローチャートである。本図に示すように、まず、画像位置特定部2Dが、図8(A)に示した赤外光反射画像を用いて、位置参照画像の位置を特定する。ここで、位置参照画像とは、小切れ101上に印刷された番号、文字及び模様等の印刷内容の中から選択された部分領域画像である。本実施形態では、図6に示す番号102を位置参照画像とする。
位置参照画像は、予め、印刷検査の対象となる各小切れ101について、印刷検査の基準となる基準データ、すなわち基準画像上で設定され、印刷検査用データ3Dの一部として記憶部3に記憶されている。画像位置特定部2Dは、この位置参照画像に係る情報を記憶部3から読み出して、赤外光反射画像上で位置参照画像と一致する領域を検索する。すなわちパターンマッチングによって、赤外光反射画像上で位置参照画像と最も高い相関を示す領域を特定し、この領域の画像を位置参照画像とする。
次に、画像位置特定部2Dは、特定した位置参照画像102に基づいて、各小切れ101の範囲を特定する(図9ステップS2)。記憶部3内の印刷検査用データ3Dには、位置参照画像と小切れ101の範囲の関係、すなわち位置参照画像と小切れ101の外周との位置関係が含まれている。画像位置特定部2Dは、これらの情報を記憶部3から読み出して、赤外光反射画像上で小切れ101の範囲を特定する。
具体的には、正しく印刷された場合の位置参照画像と小切れ外周との位置関係に関する情報を取得して、図10(A)に示すように、赤外光反射画像上で番号102の位置を基準として小切れ範囲105を特定する。このとき画像位置特定部2Dは、小切れ範囲105の左上端の座標を赤外画像小切れ基点115とし、これを印刷物位置データ3Aの一部として記憶部3に保存する。
次に、画像位置特定部2Dは、赤外光反射画像上で小切れ範囲105と検査基準マーク39との位置関係を特定する(図9ステップS3)。より具体的には、赤外画像小切れ基点115と検査基準マーク39との相対的な位置関係を特定し、これを印刷物位置データ3Aの一部として記憶部3に保存する。
このように、赤外光反射画像上で各小切れ範囲105が特定されると、印刷検査処理部2Eは、赤外光反射画像から小切れ101の画像を切り出して印刷物検査を行う(ステップS4)。印刷検査処理部2Eは、赤外光反射画像から切り出した小切れ範囲105の画像の特徴を、記憶部3内に記憶されている検査基準画像である印刷検査用赤外画像3Bと比較することにより従来同様に印刷物検査を行う。
位置参照画像を利用して小切れ範囲105を特定し、この範囲に含まれる小切れ101の画像を利用して印刷物検査を行う一連の処理(図9ステップS1からS4)が、未処理の小切れ101が存在する間(ステップS5;No)、繰り返して行われる。まず1つの赤外光反射画像に含まれる3つの各小切れ101について検査が行われる。
こうして大判印刷物100から生成された3つの赤外光反射画像について処理を行って、大判印刷物100に印刷された9枚全ての小切れ101について印刷物検査を終了すると(ステップS5;Yes)、次に、画像位置特定部2Dは、蛍光画像上で小切れ範囲106を特定する(ステップS6)。
赤外光反射画像による印刷物検査を完了したときには、9枚全ての小切れ101について、赤外画像小切れ基点115と検査基準マーク39との相対的な位置関係を特定した情報が、記憶部3内に印刷物位置データ3Aとして保存された状態にある。画像位置特定部2Dは、この情報を蛍光画像に適用して、図10(B)に示すように、蛍光画像上における蛍光画像小切れ基点116の座標を特定する。
すなわち、図10(A)に示す赤外光反射画像上の赤外画像小切れ基点115と検査基準マーク39との相対的な位置関係に基づいて、図10(B)に示す蛍光画像上で検査基準マーク39から蛍光画像小切れ基点116の位置を特定する。蛍光画像小切れ基点116は、蛍光画像上における小切れ101の左上端の座標を示す。よって蛍光画像小切れ基点116が特定されれば、蛍光画像上で小切れ範囲106を特定することができる。
蛍光画像上で小切れ範囲106が特定されると、印刷検査処理部2Eが、各小切れ101の画像を切り出して印刷物検査を行う(図9ステップS7)。印刷検査処理部2Eは、蛍光画像から切り出した小切れ範囲106の画像の特徴を、記憶部3内に記憶されている検査基準画像である印刷検査用蛍光画像3Cと比較することにより従来同様に印刷物検査を行う。
検査基準マーク39を利用して小切れ範囲106を特定し、この範囲に含まれる小切れ101の画像を利用して印刷物検査を行う一連の処理(図9ステップS6及びS7)が、未処理の小切れ101が存在する間(ステップS8;No)、繰り返して行われる。1つの蛍光画像に含まれる3つの各小切れ101について検査を終えると、他の蛍光画像の処理が行われる。
こうして大判印刷物100から生成された3つの蛍光画像について処理を行って、大判印刷物100に印刷された9枚全ての小切れ101について印刷物検査を終了する(ステップS8;Yes)。
なお、印刷物検査装置1では、小切れ101が傾いて撮像されている場合にも、これを認識して正しく小切れ範囲105及び106を特定することができる。具体的には、例えば、同一画像上の小切れ101に関して、パターンマッチングによって特定した各小切れの位置参照画像102のX軸方向のズレ量から、画像が傾く角度を算出することができる。算出した傾きに基づいて小切れ範囲105及び106を特定すれば、例えば図10(C)に示すように、小切れ101が傾いて撮像されている場合にも小切れ範囲105を正しく特定することができる。
このように、赤外光用カメラ20によって撮像された小切れ101の赤外光反射画像と、紫外光用カメラ10によって撮像された小切れ101の蛍光画像に、互いの位置関係を特定できる情報が何も含まれていない場合でも、ステージ30上に検査基準マーク39を設けることによって、赤外光反射画像上の小切れ範囲105及び蛍光画像上の小切れ範囲106を特定することができる。これにより、図6(B)に示した番号102、セキュリティマーク103、バーコード104、文字、及び模様を含む小切れ101上の全ての印刷内容を対象として従来と同様に印刷物検査を行うことができる。
なお、図9を参照しながら上述した印刷物検査の方法は一例であって、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、蛍光画像に含まれるセキュリティマーク103等を位置参照画像として、蛍光画像による印刷物検査を、赤外光反射画像による印刷物検査より先に行ってもよい。また赤外光反射画像上での小切れ範囲105の特定と、蛍光画像上での小切れ範囲106の特定とを先に行って、その後に印刷物検査を行ってもよい。
また、画像上で小切れ101の範囲を特定することなく、基準画像上の番号102と、セキュリティマーク103を含む他の印刷内容との位置関係に基づいて印刷物検査を行ってもよい。具体的には、例えば、赤外光反射画像上の番号102と検査基準マーク39との位置関係、及び蛍光画像上の検査基準マーク39とセキュリティマーク103との位置関係に基づいて、番号102とセキュリティマーク103との位置関係を算出する。そして、これを検査基準画像上の番号102とセキュリティマーク103との位置関係と比較すれば、小切れ範囲105及び106の特定に係る処理を行うことなく、印刷ずれが無いことの確認を含む印刷物検査を行うことができる。
赤外光反射画像又は蛍光画像のいずれか一方の画像上で、パターンマッチング技術を利用して小切れ101に含まれる番号102又はセキュリティマーク103等の印刷内容の位置を特定するとともに、検査基準マーク39を利用して他方の画像上で小切れ101の範囲又は印刷内容の位置を特定して検査するものであれば、処理の順番や印刷物検査の内容は特に限定されない。
上述したように、位置参照画像や、位置参照画像と小切れ範囲105及び106との位置関係等の情報は、印刷物位置データ3A又は印刷検査用データ3Dとして記憶部3に記憶されている。このような印刷物位置データ3A及び印刷検査用データ3Dに含まれるデータは、他の装置で作成し記憶部3に保存して利用することもできるが、印刷物検査装置1上で作成又は修正して記憶部3に保存することもできる。
以下では、図11及び図12を参照しながら、印刷物検査装置1の備える表示部4及び操作部5を利用して、位置参照画像等を設定する操作について説明する。図11は、位置参照画像、小切れ範囲(105及び106)及び印刷物検査を行う検査対象領域を設定する際の処理の流れを示すフローチャートである。図12は、これらの設定を行う際に表示部4へ表示される表示内容の例を示している。
まず、印刷物検査装置1の備える赤外光用カメラ20によって撮像された赤外光反射画像の1つを用いて、位置参照画像を設定する(ステップS11)。撮像された3つの赤外光反射画像の1つを選択すると、図12(A)に示すように、表示部4の枠110内に、図8(A)に示した赤外光反射画像の一部の領域が表示される。このとき、表示画像を拡大、縮小および移動することにより任意の領域を表示させることができる。小切れ101に含まれる番号102を位置参照画像として設定する場合には、表示部4の表示を確認しながら、操作部5を構成するマウス等の入力装置を利用して、画面上で位置参照画像として設定する番号102を囲む領域111を選択する。このとき画面上の右側には、選択した領域111の座標やサイズに関する情報が表示される。表示部4に表示された画像上で領域111を指定した後、これらの座標やサイズを変更して領域111の位置や大きさを微調整することもできる。また画面上で画像を拡大したり縮小したりして表示することも可能となっている。
次に、小切れ101の範囲を設定する(ステップS12)。図12(B)に示すように、表示部4の枠110内では、赤外光反射画像上で、先に設定された位置参照画像102を示す領域111が視認可能に表示される。これらの表示を確認しながら、操作部5を利用して、画面上で小切れ101の範囲114を選択する。画面上の右側には、位置参照画像の設定時と同様に、選択した小切れ範囲114の座標やサイズに関する情報が表示される。画面に表示された画像上で小切れ範囲114を指定した後、これらの座標やサイズを変更して小切れ範囲114の位置や大きさを微調整することもできる。また画面上で画像を拡大したり縮小したりして表示することも可能となっている。
小切れ範囲114は、上述したように手動で設定する他、自動的に設定することもできる。具体的には、操作者が、表示部4上の自動設定ボタンを押すと、先に設定された位置参照画像に基づいて、小切れ101の検査基準となる基準画像上で番号102の位置が特定される。そして、基準画像上の番号102と小切れ101の範囲との位置関係に基づいて、赤外光反射画像上での小切れ範囲114が自動的に算出され、表示部4上に表示される。このとき画面右側に表示される座標等を変更して小切れ範囲114の位置や大きさを微調整することもできる。
こうして小切れ範囲114を設定した後、「次へ」のボタンを押すと、赤外光反射画像上の赤外小切れ基点115の座標が特定され、小切れ範囲114に関する座標等の情報とともに記憶部3内に保存される。
次に、赤外光反射画像上の検査対象領域を設定する(ステップS13)。小切れ範囲114を設定すると、図12(C)に示すように、表示部4画面上の枠110内には、設定された小切れ範囲114の赤外光反射画像が表示される。表示部4に表示される画像は、画像を表示する枠110の下部に設けられたチェックボックス117によって適宜変更することができる。
具体的には、このチェックボックス117を利用して表示したい画像を選択すると、対応する画像が枠110内に表示される。チェックボックス117によって赤外光画像が選択された場合には、先に設定した小切れ範囲114内の赤外光反射画像が表示される。
また、チェックボックス117によって蛍光画像が選択された場合には、赤外光反射画像に含まれる赤外小切れ基点115と検査基準マーク39との位置関係に基づいて、図10を参照しながら説明した方法により蛍光画像上で蛍光画像小切れ基点116及び小切れ範囲106が特定され、この範囲に含まれる蛍光画像が表示される。
赤外光反射画像と蛍光画像の両方が選択された場合には、赤外光反射画像の上に、蛍光画像がオーバーレイ表示される。その結果、図12(C)に示すように、枠110内には、赤外光反射画像に含まれる番号102等の印刷内容と、蛍光画像に含まれるセキュリティマーク103やバーコード104等の印刷内容の両方が表示される。
図12(C)の表示を確認しながら操作部5を操作して、画面上の赤外光反射画像上で検査対象領域とする範囲112を選択すると、画面右側には、選択した領域112の座標やサイズに関する情報が表示される。操作部5を構成するマウス等を利用して、画面に表示された画像上で領域112を指定した後、これらの座標やサイズの値を変更して領域112の位置や大きさを微調整することもできる。また画面上で画像を拡大したり縮小したりして表示することも可能となっている。
また、印刷物検査の対象領域として、複数の領域を設定することもできる。ある領域112を選択して登録操作を行った後、続けて同じ操作を繰り返して別の領域113を選択すれば、複数の領域を検査対象領域として登録設定できる。
次に、蛍光画像上の検査対象領域を設定する(ステップS14)。赤外光反射画像上で行った動作と同様の操作により、蛍光画像上の検査対象領域を設定することができる。すなわち、検査対象領域として、赤外光反射画像上と、蛍光画像上とで、別々の領域を検査対象領域として設定することができる。
表示部4及び操作部5を利用して設定した情報は、印刷検査用データ3Dの一部として記憶部3に保存される。そして、上述したように印刷物検査を行う際に利用される。このように検査対象領域を設定して、その領域のみを検査すれば、重要な領域のみを効率よく検査することができる。
上述した例では、大判印刷物100に含まれる小切れ101の各列に対して1つの検査基準マーク39を設けて利用する例を示したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、小切れ101の各列に対して複数の検査基準マーク39を設けてもよい。図13(A)に示すように、ステージ30上に、小切れ101の各列に対して2つの検査基準マーク39を設ければ、図13(B)に示すように、2つの検査基準マーク39の傾きから小切れ101が傾いた状態で撮像されたことを認識して、この傾きに対応した小切れ範囲105又は106を容易に設定することができる。また2つの検査基準マーク39の実際の距離と、各画像上の検査基準マーク39との距離から画像の解像度を算出して利用することができる。例えば、印刷物検査に利用する画像を、解像度の異なる複数のカメラで撮像したような場合でも、各画像の解像度を算出して、これを考慮した印刷物検査を行うことが可能である。
また、図4を参照しながら説明したように、検査基準マーク39を赤外線吸収インクにより形成し、検査基準マーク39の周囲の所定領域139を紫外光によって可視光が励起される蛍光インクにより形成する例を示したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、検査基準マーク39を、図14(A)に示すように、赤外線吸収インクの領域121と、紫外線で発光する蛍光インクの領域122とに分けて形成してもよい。また複数の検査光を利用する印刷物検査装置1によって撮像される各画像上で、その位置を特定することができれば、検査基準マーク39の形状や検査基準マーク39を形成する材質は特に限定されない。例えば、マーク形状が円形等であってもよいし、インクではなく各検査光下で撮像可能な金属や樹脂等を利用してもよい。
また、上述した例では、赤外光及び紫外光の2つの検査光を利用する例を示したが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、3種の検査光を利用する場合に、小切れ101に含まれる番号や模様等の印刷内容が、いずれか1つの検査光下でしか撮像されない場合には、例えば図14(B)に示すように、各検査光下でいずれか1つの領域が認識可能に撮像されるように設けた3つの領域(121から123)によって検査基準マーク39を形成すればよい。同様に4種の検査光を利用する場合には、図14(C)に示すように4つの領域(121から124)によって形成される検査基準マーク39を利用すればよい。
なお、このとき検査基準マーク39上に複数検査光で認識可能に撮像される領域を形成できる場合には、検査基準マーク39を形成する領域の数を検査光の数よりも少なくすることもできる。具体的には、例えば、3種類の検査光を利用するが、検査基準マーク39を構成する領域121が2種類の検査光下で認識可能であれば、図14(A)に示すように、2つの領域(121及び122)から形成される検査基準マーク39を利用することができる。また3種類の検査光全てによって認識可能な領域を形成できるのであれば、検査基準マーク30を分割しなくてもよい。
このように検査基準マーク39を、全ての検査光下で認識可能に撮像されるように複数の領域に分割することで、上述した方法と同様に印刷物検査を行うことができる。印刷物検査装置1が、複数種類の印刷物を対象とした検査を行う場合でも、各印刷物で利用されるインクや検査光を考慮して、全ての種類の印刷物に利用可能な検査基準マーク39を設ければ、同じ検査基準マーク39を利用して全ての印刷物検査を行うことが可能となる。
また、画像の基点115及び116から小切れの範囲を求めるので、1つの小切れ画像のなかで検査領域を設定することで全ての小切れに対しての検査を行うことができる。
また、検査基準マーク39をインク、樹脂、金属等ではなく、LED等の発光素子を利用して構成してもよい。各検査光下で検査基準マーク39の位置を認識できるように、かつ検査の妨げとならないようにLED素子等の発光素子を制御して点灯させれば、上述した方法と同様に印刷物検査を行うことができる。その他、多波長光を発する発光素子とフィルタ等を利用して各検査光下で撮像されるようにフィルタを制御した場合にも、同様に印刷物検査を行うことができる。検査基準マーク39を、このような発光素子やフィルタを含む発光ユニットとして構成することで様々な波長の検査光に対応することができる。
上述してきたように、本実施形態によれば、印刷物上の印刷物を撮像した複数画像を利用して印刷物検査を行う際に、各検査光下で共通して撮像される番号や文字等の印刷内容が印刷物に含まれていない場合でも、検査基準マーク39を、印刷物を載置するステージ30上に設けることで、検査基準マーク39との位置関係に基づいて、各画像に含まれる番号や文字等の位置関係の検査を含む印刷物検査を行うことができる。このとき、検査光毎に印刷物を撮像するカメラが異なる場合でも、検査基準マーク39との位置関係から番号や文字等の位置関係を特定して、印刷ずれが無いことの確認を含む印刷物検査を行うことができる。
また、検査基準マーク39を、印刷物上ではなく、印刷物検査装置1の備えるステージ30上に設けることとしたので、検査対象となる全ての印刷物上に検査基準マーク39を印刷する必要がなくコストを抑えることができる。
また、検査対象となる印刷物が複数種類ある場合にも、全種類の印刷物に対応した検査基準マーク39を利用すれば、印刷物の種類に合わせて検査基準マーク39を変更する必要もなく容易に印刷物検査を行うことができる。
また、全種類の印刷物に対応しない場合でも、検査基準マーク39を、紙、樹脂、金属等のプレート上に設けて、このプレートをステージ30上に固定して利用すれば、印刷物の種類に対して少ない種類のプレートで、全種類の印刷物検査に対応することができる。検査基準マーク39を設けたプレートは容易に切り替えて利用することができるので、様々な種類の印刷物を検査する場合にも容易に対応することができる。