JP5633534B2 - 摺動構造 - Google Patents

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本発明は、相互の摺動する一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に充填されるグリースとを少なくとも備えた摺動構造に係り、特にグリースにイオン液体を含む摺動構造に関する。
従来から、資源保護、環境汚染の低減、および地球の温暖化防止は、各国で注目されており、特に、自動車業界においても排ガス規制の向上が課題となっている。該課題を解決するための一手段として、低燃費化への対応技術の開発が取り組まれている。なかでも、エンジンを構成する摺動部材、または動弁系の摺動部材の摺動特性を向上させることは、エネルギ損失を減らし、自動車の低燃費化に直接的に繋がるものである。
例えば、特許文献1には、このような摺動部材の耐摩耗性を向上させると共に低摩擦特性を得るために、相互に摺動する一対の摺動部材と、この摺動部材の間に充填されるグリースとを少なくとも含む摺動構造が提案されている。
具体的には、表面に開孔部を有する焼結金属からなる摺動部材と、該摺動部材の摺動面に混合調和度400以上である液状のグリースを含浸した摺動構造が提案されている。ここで、グリースは、基油に増ちょう剤をグリース全体に対して0.5〜5質量%配合し、増ちょう剤には、金属石鹸またはウレア化合物が用いられている。
特開2011−231407号公報
ところで、車両のプロペラシャフトの中間スライド部は、スプラインシャフトと、スプラインスリーブとを備えた摺動構造であり、車両の発進・停止時には、その慣性を吸収するために、良好な摺動特定が求められる。しかしながら、実摺動時には、エンジンの回転変動、局所的な面圧の上昇により、これらが不連続な動きをする場合がある。
さらに、バーフィールド型等速ボールジョイント(CVJ)を構成するボールとケージ、ケージとインナーレース、ケージとアウターレースの摺動形態は、滑り摺動の形態である。ここで、車両のステアリング動作が大きい場合には、ボールとケージ、ケージとインナーレース、ケージとアウターレースの間の面圧が上昇する場合がある。
このような摺動環境下において、これらの摺動部材の間に、グリースを用いた場合には、グリースの流動性、および、これらの摺動部分への介入性が重要となる。特に、摺動部分への介入性が悪くなると、静摩擦係数が増加してしまい、これによりスティックスリップ性能の低下を引き起こすおそれがある。
また、グリースの流動性は、グリースを構成する増ちょう剤の影響が大きい。温度が上昇するに従って、グリースの流動性は向上するが、潤滑油(液体)と比較すると、この増ちょう剤(固体分)により、高温・高面圧下では、摺動部分にグリース(基油)が介入し難く、油膜切れが生じやすい。たとえば、CVJの場合には、ボールとケージ、ケージとインナーレース、ケージとアウターレースの間の面圧が上昇した場合、摩擦損失が大きくなってしまい、引き摺り損失を発生してしまうおそれがある。
さらに、特許文献1の如く、金属石鹸、ウレア化合物を増ちょう剤としたグリースを用いた場合には、高温環境下で、増ちょう剤が変化し、グリース状が保てなくなったり(たとえば、硬化、軟化)、基油のさらなる熱劣化を促進したりする。たとえば、リチウムなどの金属石鹸では、石鹸構造が破壊し易く、これにより生成した熱劣化物の触媒作用により、グリースの基油の酸化劣化が促進される場合がある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、常温から高温下において耐熱性を有し、これまで以上に、高温環境下において、グリースの流動性および摺動部分へのグリースの介入性を向上させることができるグリースを備えた摺動構造を提供することにある。
発明者は、鋭意検討を重ねた結果、上述した摺動構造の使用環境(使用環境温度)と、これに用いるグリースの性状との関係に着眼した。すなわち、使用時には、摺動部分にグリースが介入し易いように、流動性を向上させ、未使用時には、摺動部分において、介入したグリースが摺動部材の間において保持されることが好ましいと考えた。
そこで、発明者は、グリースの増ちょう剤としてイオン液体に着眼し、このイオン液体の融点が、使用環境温度以下である場合には、使用時に、イオン液体である増ちょう剤が液化するので、上述した増ちょう剤によるグリースの流動性および摺動部分への介入性の課題を解決できるとの新たな知見を得た。
本発明は、発明者の新たな知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る摺動構造は相互の摺動する一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に充填されるグリースとを少なくとも備えた摺動構造であって、前記グリースには、基油と、イオン液体からなる増ちょう剤が含まれており、前記一対の摺動部材の未使用環境下においては固体であり、該一対の摺動部材の使用環境下における熱により、液化することを特徴とする。
本発明によれば、使用時である摺動時に、一対の摺動部材の使用環境下により液化するイオン液体を用いることにより、使用環境下におけるグリースの劣化を抑えることができる。さらに、これまで以上に、高温環境下において、グリースの流動性および摺動部分へのグリースの介入性を向上させることができる。
本発明の実施形態に係るプロペラシャフト(摺動構造)の断面図。 図1のII−II線に沿った矢視断面図。 実施例1〜6および比較例1〜6に係る摺動構造のグリースの成分を示した表図。 実施例1〜6および比較例1〜5に係る摺動構造の静摩擦係数の試験結果を示した図。 実施例1〜6および比較例1〜5に係る摺動構造の静摩擦係数/摩擦係数の試験結果を示した図。 実施例1〜5および比較例1〜5に係る摺動構造のグリースの圧力低下量の試験結果を示した図。 実施例1〜6および比較例1〜6に係る摺動構造のグリースの低温ちょう度の試験結果を示した図。 実施例7、8および比較例7に係る摺動構造の平均摩擦係数の試験結果を示した図。 実施例7、8および比較例7に係る摺動構造のグリースのみかけ粘度の試験結果を示した図。 実施例9および比較例8に係る摺動構造の損失トルクの試験結果を示した図。 実施例7および比較例7に係る摺動構造のグリースの圧力低下量の試験結果を示した図。
以下に本発明を実施形態に基づいて説明する。
1.一対の摺動部材
図1は、本発明の実施形態に係るプロペラシャフト(摺動構造)の断面図である。図2は、図1のII−II線に沿った矢視断面図である。
本発明の実施形態に係る摺動構造の一例であるプロペラシャフト1は、左右両端に設けられたユニバーサルジョイント10,40と、ユニバーサルジョイント10に接続されるスプラインシャフト20と、スプラインシャフト20に噛合するスプラインスリーブ30と、を有する。ここで、本発明の一対の摺動部材が、ここでは、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30に相当する。
スプラインスリーブ30はスプラインシャフト20に対して長手方向に移動してプロペラシャフト1の全長が伸縮することが可能である。図2で示すように、スプラインスリーブ30は円筒形状であり、その内周面に凹部31と凸部32により構成されるスプライン33が形成されている。スプライン33は複数本が長手方向に互いに平行に延びている。
スプラインシャフト20は円柱形状であり、その外周面に凹部21と凸部22とにより構成されるスプライン23が設けられている。スプラインシャフト20のスプライン23はスプラインスリーブ30のスプライン33と噛合しており、スプラインスリーブ30がスプラインシャフト20に対して長手方向に摺動可能な構成としている。
なお、図2で示す実施の形態では、スプラインシャフト20のスプライン23の数とスプラインスリーブ30のスプライン33の数とが等しくされているが、これに限るものではなく、一部の凸部22がかけている構造とされていてもよい。具体的には、スプラインシャフト20の凸部22の数がスプラインスリーブ30の凹部31の数よりも少なくてもよい。
なお、これらの材質としては、後述するグリースの成分と、摺動時に反応しないものであれば、特に限定されるものではなく、鉄系材料(鋼、鋳鉄など)、アルミニウム材料さらには、これらの部材の表面に、DLCなどの硬質被膜がさらに被覆されたものであってもよい。
2.グリース
本実施形態では、プロペラシャフト(摺動構造)1の中間スライド部に相当するスプラインシャフト20とスプラインスリーブ30の間には、グリースが充填(配置)されている。具体的には、グリースには、基油と、イオン液体からなる増ちょう剤が含まれており、グリースは、基油と増ちょう剤とが均一に混合した状態となっている。
2−1.基油
本実施形態では、グリースに用いられる基油は特に限定されるものではない。例えば、鉱油をはじめとする全ての基油を使用することができる。鉱油の他にも、エステル系合成油、合成炭化水素油、エーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油など各種合成油を挙げることができる。
さらに、グリースの基油の動粘度が、40℃で、100〜2000mm/sであることがより好ましい。基油の動粘度が100mm/s未満であると、中間スライド部の使用環境(面圧および速度)では、油膜切れが生じ易くなり、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30との間に摺動時に基油の再流入があったとしても、後述するような増ちょう剤の効果は十分に認めることができない。
一方、基油の粘度が、2000mm/sを超えると、基油の見かけ粘度とグリースの見かけ粘度との差が認められなくなる。また、基油の粘度増加により、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30との間において、油膜を保持することができるが、低温時における動作性(これらの摺動性)は低下してしまうことがある。
2−2.増ちょう剤
本実施形態では、一般的に用いられる金属石鹸またはウレア化合物を用いず、イオン液体を増ちょう剤として用いる。ここで、プロペラシャフトの使用環境下において、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30との使用環境温度(使用時の定常温度)は、設計上、50℃〜150℃の範囲にある。
使用環境温度の50℃は、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30とを、20〜30℃の温度環境下において繰り返し摺動したときに、これらの間において発熱し、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30の温度が定常状態となったときの、摺動面の温度(定常温度)である。
そこで、本実施形態に係るイオン液体(グリースの増ちょう剤)は、一対の摺動部材であるスプラインシャフト20とスプラインスリーブ30の未使用環境下においては固体であり、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30の使用環境下における熱により、液化する。なお、使用環境下とは、これらの摺動部材が摺動している環境下のことをいう。このときに、グリースに作用する熱としては、摺動による自己発熱、周辺部品から伝熱した熱や輻射熱などが挙げられ、この熱によりイオン液体が液化する。より具体的には、イオン液体は、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30とが未摺動時には固体であり、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30と(一対の摺動部材)の相互の繰り返しの摺動により発熱する際の、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30と(一対の摺動部材)の定常温度で少なくとも液化するものであってもよい。なお、この場合には、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30の定常温度が異なる場合には、イオン液体は、このうちの低い定常温度で液化するものである。
具体的には、未使用環境温度、35℃未満では固体であり、使用環境温度が50℃〜150℃の範囲にあることから、少なくとも、50℃未満では液化するイオン液体、すなわち、融点が35℃以上50℃未満の範囲にあるイオン液体を増ちょう剤に用いる。
このような融点を有するであればイオン液体としては、特に限定されるものではなく、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム、スルホニウム塩、アンモニウム塩などなどを挙げることができる。なかでも、イミダゾリウム塩およびピリジニウム塩の少なくとも1種からなる塩が、上述した使用環境温度において融点を有し、さらに塩素を含まないので、摺動部材の腐食を抑制することから好ましい。
たとえば、イミダゾリウム塩としては、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Hexafluorophosphate(C17P):融点38℃(東京化成工業株式会社製))、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩(1-Ethyl-3-methylimidazolium Methanesulfonate(C14S):融点35℃(東京化成工業株式会社製))、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium tetrafluoroborate(C17BF):融点37℃(東京化成工業株式会社製)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムニトレート(1-Ethyl-3-methylimidazolium nitrate(C11):融点38℃(東京化成工業株式会社製)などを挙げることができる。また、ピリジニウム塩としては、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-4-methylpyridinium Hexafluorophosphate(C1016NP):融点42℃(東京化成工業株式会社製))を挙げることができる。
このような増ちょう剤(イオン液体)は、グリース全体に対して、5〜30質量%含有していることが望ましい。増ちょう剤が5質量%未満の場合には、イオン液体の粒子の混合による増ちょう効果を発揮し難くなり、グリース(グリース組成物)は液体状に近くなり、作業中の垂れなどにより、充填時の作業性が低下する場合がある。
一方、増ちょう剤が30質量%超えの場合には、未摺動時におけるグリースの硬さが硬くなり、特に低温時における流動性が低下する。そのため、グリース充填時におけるグリース圧の高圧化により、作業性が低下し、作業コストが増加するおそれがある。
上述したグリースには、必要に応じて種々の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、錆止め剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤等を挙げることができる。
このような摺動構造によれば、一対の摺動部材であるスプラインシャフト20とスプラインスリーブ30との間にグリースを充填するときは(未摺動時には)、増ちょう剤であるイオン液体は固体であるので、イオン液体と基油とを混合した混合物(本実施形態のグリース)はグリース状になるため、容易にこれを充填することができるので、作業性がよい。
一方、スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30とが摺動する際には、これらの相互の摺動により、両者は発熱し、使用環境温度が50℃〜150℃の範囲となるので、イオン液体は、溶融して液化する。これにより、グリース(潤滑剤)の流動性が向上し、これらの間への潤滑剤の介入が向上する。これまでのグリースでは、摺動時に、これら(スプラインシャフト20とスプラインスリーブ30)の間から一旦排除されると、基本的には、これらの間には戻りにくいが、本実施形態では、増ちょう剤であるイオン液体が液化しているので、これらの間に戻すことができる。
さらに、上述したイオン液体は、これまでの、金属石鹸またはウレア化合物に比べて熱安定に優れているため、イオン液体を増ちょう剤としたグリースは、金属石鹸またはウレア化合物を増ちょう剤としたものに比べて、耐熱性に優れている。
なお、本実施形態では、一対の摺動部材として、スプラインシャフト20と、スプラインスリーブ30を例示したが、たとえば、ドライブシャフトの等速ボールジョイント(CVJ)のレース(アウターレースまたはインナーレース)とケージ(ジョイント内において複数のボールを保持するリテーナ)であってもよい。
CVJの使用環境下において、レース(アウターレースまたはインナーレース)とケージとの使用環境温度は、設計上、70℃以上の範囲にある。ここでは、アウターレースまたはインナーレースいずれかと、ケージとの摺動により発熱し、これらが定常状態となる温度(呈上温度)が、80℃以上である。
したがって、本実施形態に係るイオン液体(グリースの増ちょう剤)は、一対の摺動部材であるレース(アウターレースまたはインナーレース)とケージとが、未摺動時には固体であり、レース(アウターレースまたはインナーレース)とケージとの相互の繰り返しの摺動により発熱する際の、これらの定常温度で少なくとも液化する。
具体的には、未使用環境温度、35℃未満では固体であり、定常状態でCVJの使用環境温度が80℃以上の範囲にあることから、少なくとも、80℃以上では液化するイオン液体、すなわち、融点が35℃以上80℃未満の範囲にあるイオン液体を増ちょう剤に用いる。このような融点であればイオン液体としては、上述したように、特に限定されるものではないが、イミダゾリウム塩およびピリジニウム塩を用いることが望ましい。
たとえば、イミダゾリウム塩としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Iodide(C11IN):融点79℃(東京化成工業株式会社製))、ピリジニウム塩としては、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butylpyridinium Hexafluorophosphate(C14NP):融点75℃(東京化成工業株式会社製))を挙げることができる。
このような増ちょう剤(イオン液体)は、上述した理由から、グリース全体に対して、5〜30質量%含有していることが望ましい。さらに、上述如く、グリースには、必要に応じて種々の添加剤を添加してもよい。
このような摺動構造によれば、一対の摺動部材であるレース(アウターレースまたはインナーレース)とケージとの間に、具体的には、CVJの内部にグリースを充填するときは(未摺動時には)、増ちょう剤であるイオン液体は固体であるので、イオン液体と基油とを混合した混合物(本実施形態のグリース)はグリース状になるため、容易にこれを充填することができるので、作業性がよい。
一方、レース(アウターレースまたはインナーレース)とケージとが摺動する際には、これらの相互の摺動により、両者は発熱し、使用環境温度が80℃以上の範囲となるので、増ちょう剤であるイオン液体は溶融(液化)し、CVJの内部攪拌抵抗および引き摺り抵抗を低減することができる。また、摺動時に、これらの間から一旦排除されたグリースを、これらの間に容易に戻すことができる(潤滑剤としての介入性が向上する)。これにより、CVJ内に再度、グリースを給脂するようなシステムを設けなくてもよい場合がある。
さらに、上述したイオン液体は、これまでの、金属石鹸またはウレア化合物に比べて熱安定に優れているため、イオン液体を増ちょう剤としたグリースは、金属石鹸またはウレア化合物を増ちょう剤としたものに比べて、耐熱性に優れている。
以下に本発明を実施例により説明する。
[実施例1〜6]
実施例1〜6にかかる摺動構造を構成するスプラインシャフトとスプラインスリーブとの間に充填するグリースとして以下の材料を準備し、図3に示すような成分のグリースを作製した。
1.使用材料
(1)イオン液体
グリースを構成する増ちょう剤として、以下の市販のイミダゾリウム塩(東京化成工業株式会社製)とピリジニウム塩(東京化成工業株式会社製)を準備した。
・イミダゾリウム塩:1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium Hexafluorophosphate(C17P):融点38℃)→以降では、BDMIHと称す
・ピリジニウム塩:1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butyl-4-methylpyridinium Hexafluorophosphate(C1016NP):融点42℃)→以降では、BDPHと称す
(2)基油
グリースを構成する基油として、以下の市販のポリアルファオレフィン系の合成油(EXXONMOBIL社製)または鉱油(EXXONMOBIL社製)を準備した。
・スペクトラシン10(Spectra Syn 10),スペクトラシン40(Spectra Syn 40),スペクトラシン100(Spectra Syn 100),スペクトラシンウルトラ150(Spectra Syn Ultra 150),または、スペクトラシンウルトラ300(Spectra Syn Ultra 300)の単油または混合油
・コア600(Core 600:グループI鉱油)
(3)固体潤滑剤
以下の市販の固体潤滑剤を準備した。
・PFFE:ルブロンL−2、平均粒径3.5μm(ダイキン工業株式会社製)
・MoS:Tパウダー、平均粒径3.5μm(株式会社ダイゾー製)
〔実施例1〕
基油として、スペクトラシン10,スペクトラシン40を、配合体積比3:1の混合(40℃動粘度100mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BDMIHを30質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。
〔実施例2〕
基油として、スペクトラシン40,スペクトラシン100を、配合体積比4:1の混合(40℃動粘度500mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BDMIHを20質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。
〔実施例3〕
基油として、スペクトラシン40,スペクトラシン100を、配合体積比4:1の混合(40℃動粘度500mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BDMIHを20質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。その後、固体潤滑剤としてPTFEを10質量%添加し、同条件(ミキサー内温度、ミキサー回転数)で均一分散させた。
〔実施例4〕
基油として、スペクトラシン40,スペクトラシン100を、配合体積比1:4の混合(40℃動粘度1000mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BMPHを5質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。その後、固体潤滑剤としてMoSを10質量%添加し、同条件(ミキサー内温度、ミキサー回転数)で均一分散させた。
〔実施例5〕
基油として、スペクトラシンウルトラ150,スペクトラシンウルトラ300を、配合体積比3:2の混合(40℃動粘度2000mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BMPHを5質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。その後、固体潤滑剤としてMoSを10質量%添加し、同条件(ミキサー内温度、ミキサー回転数)で均一分散させた。
〔実施例6〕
基油として、コア600(40℃動粘度110mm/s)に、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BDMIHを30質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。
[比較例1〜6]
比較例1〜6にかかる摺動構造を構成するスプラインシャフトとスプラインスリーブとの間に充填するグリースとして以下の材料を準備し、図3に示すような成分のグリースを作製した。
〔比較例1〕
市販のグリースとして、リチウム石鹸グリース(マルテンプTA No.2:共同油脂株式会社製)を準備した。なお、遠心分離(8000r/m×5分)により抽出した基油は、40℃動粘度60mm/sであった。
〔比較例2〕
市販のグリースとして、リチウム石鹸グリース(アポロイルオートレックスA No.2:出光興産株式会社製)を準備した。なお、遠心分離(8000r/m×5分)により抽出した基油は、40℃動粘度300mm/sであった。
〔比較例3〕
市販のグリースとして、カルシウム石鹸グリース(パワーライト No.2:共同油脂株式会社製)を準備した。なお、遠心分離(8000r/m×5分)により抽出した基油は、40℃動粘度1500mm/sであった。
〔比較例4〕
基油として、スペクトラシン10,スペクトラシン40を、配合体積比5:1の混合(40℃動粘度100mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BDMIHを3質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。なお、ここでは、比較例4としているが、この比較例4は実施例に含まれるものである。
〔比較例5〕
基油として、スペクトラシン40,スペクトラシン100を、配合体積比5:1の混合(50℃動粘度500mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BDMIHを40質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。なお、ここでは、比較例5としているが、この比較例4は実施例に含まれるものである。
〔比較例6〕
基油として、スペクトラシンウルトラ150,スペクトラシンウルトラ300を、配合体積比2:3の混合(40℃動粘度2300mm/s)し、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BMPHを5質量%添加し、ミキサー内を30℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。なお、ここでは、比較例6としているが、この比較例6は実施例に含まれるものである。
<摺動性能試験>
以下に示す試験条件で、実施例1〜6および比較例1〜5に係る摺動構造のグリースを用いて試験を行った。
・試験機:SRV往復動摩擦摩耗試験機(ボールオンプレート試験機)
・試験片形状(摺動部材):ボール(φ10mm,JIS規格:SUJ2焼入れ焼き戻し)
プレート(JIS規格:S45C調質材)
・試験荷重:50N
・試験速度:10mm/s
・試験振幅50mm
・試験時間:10分
・試験温度:60℃(プロペラシャフトの使用環境温度)
評価方法としては、試験終了時(10分経過後)の静摩擦係数(摺動方向を変えて動き出す瞬間の摩擦係数)の絶対値(ただし、比較例2の静摩擦係数を基準に指数化を実施(すなわち比較例2の静摩擦係数を基準値1とする))を評価した。この結果を図4に示す。
さらに、静摩擦係数を動摩擦係数(定常摺動時の平均摩擦係数)で除したパラメータ(比較例2のデータを基準として指数化を実施)を算出し、摺動性能(スティックスリップ性能)を評価した。この結果を図5に示す。
(結果1および考察1)
図4に示すように、比較例1〜3のグリースを用いた摺動構造の静摩擦係数は、実施例1〜6および比較例4、5のものに比べて、高い結果となった。この結果から、実施例1〜6および比較例4、5のものは、グリースの増ちょう剤にイオン液体を用いたことにより、摺動時にはこれが液化し、一対の摺動部材であるボールとプレートの間へのグリースの介入性が向上したものと考えられる。
一般に、静摩擦係数を低減すると動摩擦係数も低減するが、図5に示すように、比較例1〜3のグリースを用いた摺動構造に比べて、実施例1〜6および比較例4、5のグリースを用いた摺動構造は、動摩擦係数の低下を起こさずに、静摩擦係数が低減された。
<耐熱性試験>
・試験機:酸化安定度試験
・試験方法:JIS K 2220 12(ASTM D 942)
評価方法として、実施例1〜6および比較例1〜5に係る摺動構造のグリースに対して、上記試験後に、圧力低下量(酸化度合い)を測定し、これにより各グリースの耐熱性を評価した。なお比較例2の圧力低下量を基準として指数化した。この結果を図6に示す。
(結果2および考察2)
図6に示すように、比較例1〜3のグリースの圧力低下量は、実施例1〜6および比較例4、5のものに比べて、高い結果となった。すなわち、実施例1〜6および比較例4、5のグリースは、比較例1〜3の如く金属石鹸を増ちょう剤に用いたものに比べて、イオン液体を増ちょう剤に用いたことにより、耐熱性(酸化安定性)が高くなったと考えられる。
<充填性(組み付け時の垂れ性)試験>
実施例1〜6および比較例1〜6に係る摺動構造のグリースを50g平板に塗布後、反転させ、25℃〜30℃で10分間放置し、グリースの垂れ発生の有無を確認した。
(結果3および考察3)
比較例4以外のグリースには、垂れが発生しなかった。このことから、増ちょう剤としてイオン液体をグリースに対して5質量%以上含有させることにより、グリースの良好な充填性を確保できるものと考えられる。
<低温流動性試験>
・試験機:ちょう度計
JIS K 2220 7(ASTM D 217)に準じて、測定前に、−30℃になるように、実施例1〜6および比較例1〜6に係る摺動構造のグリースを冷却し、これらのちょう度を測定した。なお比較例1のちょう度を基準として指数化した。この結果を図7に示す。
(結果4および考察4)
図7に示すように、実施例1〜6のグリースの低温ちょう度は、比較例1〜3のものよりも低い値となった。このことから、実施例1〜6の如く、増ちょう剤にイオン液体を用いることで、増ちょう剤に金属石鹸を用いた場合よりも、グリースの低温ちょう度が低くなり、低温時におけるグリースの流動性は向上したものと考えられる。これは、イオン液体が、従来の金属石鹸と比較して、網目状構造をとらないことによると考えられる。
また、比較例5の如く、イオン液体をグリースに対して40質量%添加したグリースや、比較例6の如く、基油の粘度が、40℃動粘度2300mm/sのグリースは、低温ちょう度の増加が認められた。この低温ちょう度は、一対の摺動部材の低温作動性に影響を与えるものと考えられる。
なお、常温(イオン液体の融点以下)になれば、イオン液体は、再結晶化し、増ちょう効果が期待できるため、イオン液体を増ちょう剤として用いれば、シール部からのグリースの漏れ等による機器まわりの汚染も低減できると考えられる。
<実機性能試験>
図1に示すプロペラシャフトのスプラインスリーブとスプラインシャフト(一対の摺動部材)の間に、実施例1〜6および比較例1〜3のグリース充填し、以下の条件でプロペラシャフトを回転させながら、スプラインスリーブとスプラインシャフトとを以下の条件で摺動させて、スティックスリップを確認した。
・プロペラシャフトの回転数:100rpm、負荷トルク200N・m
・振幅:±20mm、周波数:5Hz(sin波)
(結果5および考察5)
実施例1〜6の摺動構造の場合には、スティックスリップ(不連続な動き)は発生しなかったが、比較例1〜3のものは、スティックスリップが発生した。このことから、実施例1〜6の如く、イオン液体をグリースの増ちょう剤として用いることにより、摺動時に、イオン液体が液化し、この結果、動摩擦係数の低下を起こさずに、静摩擦係数が低減されるので、スティックスリップを低減することができると考えられる。
[実施例7〜9]
実施例7〜9にかかる摺動構造を構成するドライブシャフトの等速ボールジョイント(CVJ)のレース(アウターレースまたはインナーレース)とケージの間に充填するグリースとして以下の材料を準備し、グリースを作製した。
1.使用材料
(1)イオン液体
グリースを構成する増ちょう剤として、以下の市販のイミダゾリウム塩(東京化成工業株式会社製)とピリジニウム塩(東京化成工業株式会社製)を準備した。
・イミダゾリウム塩:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(1-Ethyl-3-methylimidazolium Iodide(C11IN):融点79℃)→以降では、BMIIと称す
・ピリジニウム塩としては、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート(1-Butylpyridinium Hexafluorophosphate(C14NP):融点75℃)→以降では、BPHと称す
(2)基油
グリースを構成する基油として、以下の市販のポリアルファオレフィン系の合成油(EXXONMOBIL社製)または鉱油(EXXONMOBIL社製)を準備した。
・スペクトラシン10(Spectra Syn 10)とスペクトラシン40(Spectra Syn 40)の混合油であり、混合比を調整することにより、100℃動粘度15mm/sとした混合油
・コア600(Core 600:グループI鉱油)であり、40℃動粘度115mm/s、100℃動粘度12mm/sである鉱油
(3)添加剤
市販のS−P系焼付防止剤、酸化防止剤
〔実施例7〕
基油として、コア600に、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BPHを30質量%添加し、ミキサー内を60℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた後、酸化防止剤を添加し、同条件(ミキサー内温度、ミキサー回転数)で均一分散させた。
〔実施例8〕
基油として、コア600に、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BMIIを5質量%添加し、ミキサー内を60℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた後、酸化防止剤を添加し、同条件(ミキサー内温度、ミキサー回転数)で均一分散させた。
〔実施例9〕
基油として、スペクトラシン10とスペクトラシン40の混合油に、グリース全体の質量に対して、増ちょう剤として、BPHを30質量%添加し、ミキサー内を60℃に保持・制御して、所定の回転数で均一にこれを拡散させた。その後、酸化防止剤およびS−P系焼付け防止剤を添加し、同条件(ミキサー内温度、ミキサー回転数)で均一分散させた。
[比較例7および8]
実施例7および8にかかる摺動構造を構成するドライブシャフトの等速ボールジョイント(CVJ)のレース(アウターレースまたはインナーレース)とケージの間に充填するグリースとして以下の材料を準備し、グリースを作製した。
〔比較例7〕
基油としてコア600に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とモノアミンを個々に溶解し、MDIを溶解した溶液を攪拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた。その後、100℃〜120℃の温度範囲で、30分間攪拌を継続し、これらを反応させ、増ちょう剤としてのジウレア化合物を生成した。これに、上述した酸化防止剤を加えて、60℃〜80℃でさらに攪拌した。その後、冷却して三本ロールで均一化を実施した。
〔比較例8〕
基油として、上述したスペクトラシン10とスペクトラシン40の混合油(実施例7と同じ)に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とモノアミンを個々に溶解し、MDIを溶解した溶液を攪拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた。その後、100℃〜120℃の温度範囲で、30分間攪拌を継続し、これらを反応させ、増ちょう剤としてのジウレア化合物を生成した。これに、上述した酸化防止剤を加えて、60℃〜80℃でさらに攪拌した。その後、冷却して三本ロールで均一化を実施した。
<摺動性能試験>
以下に示す試験条件で、実施例7,8および比較例7に係る摺動構造のグリースを用いて試験を行った。
・試験機:SRV往復動摩擦摩耗試験機(ボールオンプレート試験機)
・試験片形状(摺動部材):ボール(φ10mm,JIS規格:SUJ2焼入れ焼き戻し)
プレート(JIS規格:SCM415浸炭焼入れ焼き戻し)
・試験荷重:50N
・試験速度:10mm/s
・試験振幅2mm
・試験時間:10分
・試験温度:80℃(CVJの使用環境温度)
評価方法としては、試験終了時(10分経過後)の平均摩擦係数の絶対値(ただし、比較例7の静摩擦係数を基準に指数化を実施)を測定し、これにより摺動部材間における潤滑剤(グリース)の介入性を評価した。なお、介入性が良ければ、平均摩擦係数は低下する。この結果を図8に示す。
(結果6および考察6)
図8に示すように、比較例7と比較して、実施例7および8の摺動構造の平均摩擦係数は低下している。これは、実施例7および8のグリースに含まれるイオン液体が、液化(溶融)し、潤滑剤(グリース)がグリース状から液状に状態変化したことにより、摺動部材間に潤滑油が流れ込みやすくなったことによると考えられる。すなわち、このようなCVJの使用環境下では、比較例7の如きウレア系のグリースを用いた場合には、摺動部材間の摺動面に油膜が形成できなかったが、実施例7および8のグリースを用いた場合には、摺動部材間の摺動面に油膜が形成できたため、平均摩擦係数が低減したと考えられる。
<攪拌・引き摺り損失試験>
以下に示す試験条件で、実施例7,8および比較例7に係る摺動構造のグリースを用いて試験を行った。
・試験機:レオメータ
・試験温度:80℃(CVJの使用環境温度)
実施例7,8および比較例7に係る摺動構造のグリースに対して、せん断速度を変化させた時の見かけ粘度を測定した(比較例7の測定データを基準に指数化を実施した)。なお、見かけ粘度が低ければ、攪拌・引き摺り損失は少ない。この結果を図9に示す。
(結果7および考察7)
図9に示すように、比較例7と比較して、実施例7および8の摺動構造の見かけ粘度は低下している。これは、実施例7および8のグリースに含まれるイオン液体が、液化(溶融)し、潤滑剤(グリース)がグリース状から液状に状態変化することにより、グリースの見かけ粘度は低下が低下し、CVJの攪拌・引き摺り損失も低減すると考えられる。
<実機性能試験(CVJ)>
実施例9および比較例8のグリースのそれぞれを、ドライブシャフトの等速ボールジョイントのレース(アウターレースまたはインナーレース)とケージ内に充填し、ドライブシャフト(バーフィールドジョイント/トリポートジョイントの組み合わせ)を台上効率試験機に所定のジョイント角で設置し、80℃の温度条件下で雰囲気を制御し、所定条件(回転数、入力トルク)で作動させたときの入力トルクと出力トルクとの差を損失トルクとして評価した(比較例8の測定データを基準に指数化を実施した)。なお、損失トルクが低ければ、損失(摩擦、攪拌、引き摺り)は少ない。この結果を図10に示す。
(結果8および考察8)
図10に示すように、比較例8と比較して、実施例9の場合には、損失トルクが小さかった。これは、実施例9のごとく、グリースの増ちょう剤に、イオン液体を用いることにより、摺動時には、これが液化(溶融し)、この結果、バーフィールドジョイントのみならずトリポートジョイント内の摺動部分で、油膜の介入性の向上および攪拌・引き摺り損失の低減が実現され、ドライブシャフトの効率向上を図ることができると考えられる。
<耐熱性試験>
・試験機:酸化安定度試験
・試験方法:JIS K 2220 12(ASTM D 942)
評価方法として、実施例7および比較例7に係る摺動構造のグリースに対して、上記試験後に、圧力低下量(酸化度合い)を測定し、これにより各グリースの耐熱性を評価した。なお比較例7の圧力低下量を基準として指数化した。この結果を図11に示す。
(結果9および考察9)
図11に示すように、比較例7のグリースの圧力低下量は、実施例7のものに比べて、高い結果となった。すなわち、実施例7のグリースは、比較例7の如くウレア化合物を増ちょう剤に用いたものに比べて、イオン液体を増ちょう剤に用いたことにより、耐熱性(酸化安定性)が高くなったと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…プロペラシャフト、10…ユニバーサルジョイント、20:スプラインシャフト(摺動部材)、23…スプライン、30…スプラインスリーブ(摺動部材),33…スプライン、40…ユニバーサルジョイント

Claims (6)

  1. 相互の摺動する一対の摺動部材と、該一対の摺動部材の間に充填されるグリースとを少なくとも備えた摺動構造であって、
    前記グリースには、基油と、イオン液体からなる増ちょう剤が含まれており、
    該イオン液体は、前記一対の摺動部材の未使用環境下においては固体であり、
    該一対の摺動部材の使用環境下における熱により、液化することを特徴とする摺動構造。
  2. 前記イオン液体は、イミダゾリウム塩、または、ピリジニウム塩でありことを特徴とする請求項1に記載の摺動構造。
  3. 前記イオン液体は、前記グリース全体に対して、5〜30質量%含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動構造。
  4. 前記グリースの基油の動粘度が、40℃で、100〜2000mm/sであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の摺動構造。
  5. 前記一対の摺動部材は、スプラインシャフトと、スプラインスリーブとであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の摺動構造。
  6. 前記一対の摺動部材は、等速ボールジョイントのレースとケージであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の摺動構造。
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