JP5633226B2 - 除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法 - Google Patents
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Description
紙、不織布、織布等を基材とする製品又はこれらの基材を部分的に含む製品の回収・再利用を実施する場合、該基材上に印刷された印刷インク層を除去する必要がある。
ここで、引用文献1に記載の脱墨剤は、印刷古紙を細断、離解して調製されるパルプスラリーに適用するためのものであり、そしてそれにより、脱墨されたパルプスラリーから再生紙が製造されることとなる。
上記のように、引用文献2に記載の方法は、印刷がなされた紙及び不織布のような再生可能な基材の回収・再生を繰り返し行うことを可能とするという利点を有する優れた方法であるといえるものであるが、より広範な製品の回収・再生への適用を容易とするために、上記のような除去容易な印刷インク層を、より簡易な操作で形成でき、且つ、汎用の試剤(例えば、汎用のポリビニルアルコール)の使用により達成できる印刷方法が望まれる。
リビニルアルコールを含む印刷インクを印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成するという簡易な操作により形成された印刷インク層が、低温の水では除去されないものの、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することにより容易に除去でき、更に、上記ポリビニルアルコールとして、汎用のポリビニルアルコールを使用し得ることを見出し、本発明を完成させた。
また、基材上に、顔料、ポリビニルアルコール、架橋剤及び架橋遅延剤を含む印刷インクを印刷するという簡易な操作により形成された印刷インク層も、低温の水では除去されないものの、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することにより容易に除去できること、及び、上記と同様に、汎用のポリビニルアルコールを使用し得ることも見出した。
(1)除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法であって、
基材上に、顔料及びポリビニルアルコールを含む印刷インクを印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる方法、
(2)基材上に、顔料及びポリビニルアルコールを含む印刷インクを印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷することにより形成された印刷インク層を、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法、
(3)除去容易な印刷インク層を形成する印刷方法であって、
基材上に、顔料、ポリビニルアルコール、架橋剤及び架橋遅延剤を含む印刷インクを印刷して印刷インク層を形成することからなる方法、
(4)基材上に、顔料、ポリビニルアルコール、架橋剤及び架橋遅延剤を含む印刷インクを印刷することにより形成された印刷インク層を、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法、
に関するものである。
上記印刷方法により印刷された、紙、不織布、織布等の基材は、形成された印刷インク層が、常温の水では除去されないものの、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することにより容易に取り除くことができる。
特に例えば、基材が紙である場合、紙を繊維状にほぐすことなく、また紙表面の印刷インク層を取り除くだけで再生紙を製造することができるので、製造された再生紙は品質及び強度が殆ど低下せず、実用的な価値が高いものが得られる。
本発明の印刷方法は、基材上に、顔料及びポリビニルアルコールを含む印刷インクを印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷して印刷インク層を形成することからなる。
また、本発明は、上記の方法で形成された印刷インク層を、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法にも関する。
が、従来、顔料印刷がなされる基材であれば特に制限はない。織布としては、木綿、絹、麻などの天然素材の織布であってもよく、不織布としては、リサイクルの容易さ、強度、成形性等の面から、素材としてポリプロピレン不織布、ポリエステル不織布又はアクリル樹脂不織布が好ましく、なかでも、再生が容易なポリプロピレン不織布が好ましい。
上記印刷インクに使用し得る顔料としては、一般的な印刷インキや塗料で使用されている各種の無機顔料や有機顔料が挙げられ、具体的な無機顔料としては、例えば、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛など有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルクなどの体質顔料等を挙げることができ、具体的な有機顔料としては、例えば、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。
上記顔料は、1種だけを使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
上記顔料の使用量は、印刷インクの総質量に基づいて、1ないし20質量%、好ましくは、2ないし12質量%の範囲である。
上記ポリビニルアルコールは、1種だけを使用することもできるが、2種以上を混合して使用することもできる。
上記ポリビニルアルコールとしては、合成品及び市販品の何れも使用することができるが、市販品としては、例えば、日本合成化学株式会社製のゴーセノール(登録商標)(例えば、ゴーセファイマーZ−320、Z−200、Z−410、Z−220等)、クラレ社製のポバール(登録商標)又は電気化学工業社製のデンカポバール(登録商標)等を用いることができる。
上記ポリビニルアルコールの使用量は、印刷インクの総質量に基づいて、5ないし20質量%、好ましくは、7ないし13質量%の範囲である。
上記高分子としては、ポリビニルアセタール、セルロース系ポリマー〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;エーテル結合を有するポリマーであるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);アミド基またはアミド結合を有するポリマーであるポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びに、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類などのような水溶性高分子が挙げられる。
上記印刷インクに上記高分子を添加する際の使用量は、印刷インクの総質量に基づいて、0.25ないし2質量%、好ましくは、0.4ないし1.3質量%の範囲である。
上記印刷方法としては、従来、上述した基材の印刷に採用される方法であれば特に制限はなく、凸版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写印刷等いずれも採用可能である。なかでも、厚さ、大小、平面、曲面を問わず印刷が可能なことからシルクスクリーン印刷が好ましい。
シルクスクリーンで印刷する場合、該印刷に使用するネットボードのメッシュは特に限定されるものではないが、例えば、120ないし250メッシュ、具体的には、120、150、200、250メッシュのものを用いることができる。
上記により基材上に印刷された印刷インクは、必要に応じて加熱等を行って乾燥させるのが好ましい。
加熱を行う際の温度としては、印刷インクに悪影響を及ぼさない加熱条件であれば特に限定されないが、例えば、70ないし80℃程度が好ましく、その際の乾燥時間としては、7ないし15秒程度が好ましい。
室温にて乾燥させる場合の乾燥時間は、5分ないし1時間を採用することができ、好ましくは、8分ないし30分が挙げられる。
上記架橋剤としては、ポリビニルアルコールを架橋させて耐水性を付与し得る化合物であれば特に限定されるものではないが、例えば、多価金属化合物、ホウ素化合物、アミン化合物、ヒドラジン化合物、ヒドラジド化合物、シラン化合物、メチロール基含有化合物、アルデヒド基含有化合物、エポキシ化合物、チオール化合物、イソシアネート化合物等を用いることができるが、例えば、ヒドラジド化合物等が好ましく、具体的には、アジピン酸ヒドラジド(ADH)等が挙げられる。
上記架橋剤は単独で用いることもできるが、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記架橋剤は、例えば、水溶液として印刷インクの表面上に塗布、噴霧又は印刷される。
上記架橋剤の水溶液は、架橋剤を0.5ないし3質量%含み、好ましくは、0.5ないし2質量%含む。
上記架橋剤の水溶液の使用量は、使用する架橋剤の質量が、印刷で使用したポリビニルアルコールの質量の、0.5ないし3%程度、特に、0.5ないし2%程度となるような量とするのが好ましい。
塗布、噴霧又は印刷の方法は、通常使用される方法を用いることができる。
例えば、上記印刷方法は、上述の印刷インクの印刷方法と同様の操作で行うことができる。
架橋剤の水溶液を塗布、噴霧又は印刷した後、必要に応じて加熱・乾燥等を行うことにより、基材上に印刷インク層が形成される。
上記乾燥条件としては、例えば、70ないし80℃程度の温度で、7ないし15秒程度が乾燥させた後、室温で、24時間ないし200時間、好ましくは、48時間ないし120時間乾燥させる。
上記印刷インク層は、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することにより除去される。
本発明で使用する温水は、温度が60℃ないし90℃の水を意味する。
好ましい温水としては、温度が70℃ないし90℃の水が挙げられる。
本発明で使用するアルカリ水としては、pHが10ないし13で、温度が10ないし40℃である水が挙げられ、好ましくは、pHが11ないし12で、温度が20ないし35℃である水が挙げられる。
本発明で使用する温アルカリ水は、温度が60℃ないし90℃のアルカリ水を意味する。
好ましい温アルカリ水としては、pHが11ないし12で、温度が65℃ないし85℃の水が挙げられる。
上記の際、基材から印刷インク層を剥がれ易くするために、浸漬された基材に、振動、特に超音波振動を加えることもでき、また、高圧水流を用いることもできる。
処理時間は、温水を用いる処理の場合、20ないし60分間程度、好ましくは、30分ないし40分間程度であり、アルカリ水を用いる処理の場合、2ないし10分間程度、好ましくは、3分ないし7分間程度であり、温アルカリ水を用いる処理の場合、1ないし7分間程度、好ましくは、2分ないし5分間程度である。
上記処理を行った後、処理された基材を取り出し、必要な場合は水洗等を行なった後、乾燥する。
上記操作は、例えば、遠心機を用いる脱水によっても行うことができる。
上記除去方法により基材から除去された印刷インク層を構成する印刷インク(顔料)は一般に水不溶性であり、水、アルカリ水又は温アルカリ水であっても溶解しないので、容易に印刷インク層のみを取り除くことができる。
本発明は更に、上記の方法で形成された印刷インク層を、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法にも関する。
上記架橋剤は単独で用いることもできるが、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記架橋剤の使用量は、使用するポリビニルアルコールの質量に基づき、0.5ないし3%、好ましくは、0.5ないし2%である。
そのため、上記のようなケースを回避するために、上記印刷インクには、架橋遅延剤を添加する。
架橋遅延剤としては、印刷インクのpHを酸性にし、それにより、架橋反応を遅延し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸及びオキシ酪酸等が挙げられ、クエン酸が好ましい。
架橋遅延剤の使用量としては、印刷インクのpHを2ないし4、好ましくは、2.5ないし3.5程度にできる量であり、例えば、架橋剤と同程度の使用量、即ち、使用するポリビニルアルコールの質量に基づき、0.5ないし3%、好ましくは、0.5ないし2%の範囲が挙げられる。
尚、上記高分子の種類及び添加する際の使用量は、前述と同様である。
上記で調製した印刷インクを基材上に印刷することにより印刷インク層を形成する。
上記印刷方法としては、従来、上述した基材の印刷に採用される方法であれば特に制限はなく、凸版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写印刷等いずれも採用可能である。なかでも、厚さ、大小、平面、曲面を問わず印刷が可能なことからシルクスクリーン印刷が好ましい。
シルクスクリーンで印刷する場合、該印刷に使用するネットボードのメッシュは特に限定されるものではないが、例えば、120ないし250メッシュ、具体的には、120、150、200、250メッシュのものを用いることができる。
上記により基材上に形成された印刷インク層は、必要に応じて加熱等を行って乾燥させるのが好ましい。
上記乾燥条件としては、例えば、70ないし80℃程度の温度で、7ないし15秒程度が乾燥させた後、室温で、24時間ないし200時間、好ましくは、48時間ないし120時間乾燥させる。
尚、上記で形成された印刷インク層を除去する条件は、前述の印刷インク層の除去方法と同様の条件を用いることができる。
例えば、小売店で配布される、紙、不織布又は織布製の買物袋におけるロゴマークの印刷に使用した場合、該ロゴマークは雨に濡れたくらいでは除去されないものの、回収後は、容易に前記ロゴマークを除去でき、再度、同小売店の又は異なる小売店のロゴマークを印刷すれば、容易に再利用できるため、このような使用において、省力・省資源、環境保全の点から非常に優れている。
実施例1
1)ポリプロピレン不織布への印刷
水900gに、ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−320:けん化度92.0〜94.0モル%:日本合成化学株式会社製)100g及び緑色顔料50gを添加して印刷インクを調製した。
上記で調製した印刷インクを、ポリプロピレン不織布表面に、100メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、80℃の熱風で12秒乾燥した後、該印刷面上に、アジピン酸ヒドラジド(ADH)の1%水溶液により、使用したポリビニルアルコールの質量の1%となる量を、150メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、80℃の熱風で12秒乾燥したの後、室温で120時間放置して、印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を製造した。
2)印刷インク層の除去
上記で製造した印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を表1に示す4種の処理液に浸漬し、高圧水流下で処理した後、遠心機で脱水し、印刷インク層がどの程度除去されたかを目視にて評価した。
1)ポリプロピレン不織布への印刷
水900gに、ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−320:けん化度92.0〜94.0モル%:日本合成化学株式会社製)100g及び緑色顔料50gを添加して印刷インクを調製した。
上記で調製した印刷インクを、ポリプロピレン不織布表面に、150メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、80℃の熱風で7秒乾燥した後、該印刷面上に、アジピン酸ヒドラジド(ADH)の1%水溶液を、使用したポリビニルアルコールの質量の0.5%となる量、150メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、室温で120時間放置して、印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を製造した。
2)印刷インク層の除去
上記で製造した印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を表2に示す4種の処理液に浸漬し、高圧水流下で処理した後、遠心機で脱水し、印刷インク層がどの程度除去されたかを目視にて評価した。
1)ポリプロピレン不織布への印刷
水900gに、ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−320:けん化度92.0〜94.0モル%:日本合成化学株式会社製)100g、緑色顔料50g及びアジピン酸ヒドラジド(ADH)1gを添加し、更に、クエン酸を液のpHが3になるまで加えて印刷インクを調製した。
上記で調製した印刷インクを、ポリプロピレン不織布表面に、100メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、80℃の熱風で7秒乾燥した後、室温で120時間放置して、印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を製造した。
2)印刷インク層の除去
上記で製造した印刷インク層が形成されたポリプロピレン不織布を表3に示す4種の処理液に浸漬し、高圧水流下で処理した後、遠心機で脱水し、印刷インク層がどの程度除去されたかを目視にて評価した。
1)紙、織布への印刷
水900gに、ポリビニルアルコール(ゴーセファイマーZ−320:けん化度92.0〜94.0モル%:日本合成化学株式会社製)100g及び緑色顔料50gを添加して印刷インクを調製した。
上記で調製した印刷インクを、上質紙(コピー用紙)、コート紙(カレンダー:写真印刷されている面の裏面に印刷した。)、袋用クラフト紙及び綿織布(10号帆布)の表面に、150メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、70℃の熱風で15秒乾燥した後、該印刷面上に、アジピン酸ヒドラジド(ADH)の1%水溶液により、使用したポリビニルアルコールの質量の1%となる量を、200メッシュのネットボードを用いて、シルクスクリーン印刷し、室温で48時間放置して、印刷インク層が形成された基材(上質紙、コート紙、袋用クラフト紙及び綿織布)を製造した。
2)印刷インク層の除去
上記で製造した印刷インク層が形成された基材(上質紙、コート紙、袋用クラフト紙及び綿織布)を表4に示す処理液に浸漬し、高圧水流下で処理した後、遠心機で脱水し、印刷インク層がどの程度除去されたかを目視にて評価した。
Claims (2)
- 不織布である基材上に、顔料及びポリビニルアルコールを含む印刷インクを印刷し、印刷された面上に架橋剤を塗布、噴霧又は印刷することにより形成された印刷インク層を、温水、アルカリ水又は温アルカリ水で処理することからなる、印刷インク層を除去する方法。
- 前記架橋剤が、アジピン酸ヒドラジド(ADH)である請求項1記載の方法。
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