以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
(実施の形態1)
<携帯電話機の構成および動作>
図1は、携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。図1に示すように、携帯電話機1は、制御部CU、インターフェース部IFU、ベースバンド部BBU、RF集積回路部RFIC、電力増幅器HPA、低雑音増幅器LNA、アンテナスイッチASWおよびアンテナANTを有している。
インターフェース部IFUは、ユーザ(通話者)からの音声信号を処理する機能を有している。すなわち、インターフェース部IFUは、ユーザと携帯電話機とのインターフェースをとる機能を有している。そして、ベースバンド部BBUは、中央制御部であるCPUを内蔵し、送信時には、操作部を介したユーザ(通話者)からの音声信号(アナログ信号)をデジタル処理してベースバンド信号を生成できるように構成されている。一方、受信時には、デジタル信号であるベースバンド信号から音声信号を生成できるように構成されている。さらに、制御部CUは、ベースバンド部BBUと接続されており、ベースバンド部BBUにおけるベースバンド信号の信号処理を制御する機能を有している。
RF集積回路部RFICは、送信時にはベースバンド信号を変調して無線周波数の信号を生成し、受信時には、受信信号を復調してベースバンド信号を生成することができるように構成されている。このとき、制御部CUは、RF集積回路部RFICとも接続されており、RF集積回路部RFICにおける送信信号の変調や受信信号の復調を制御する機能も有している。
電力増幅器HPAは、微弱な入力信号と相似な大電力の信号を電源から供給される電力で新たに生成して出力する回路である。一方、低雑音増幅器LNAは、受信信号に含まれるノイズを増幅することなく、受信信号を増幅するように構成されている。
アンテナスイッチASWは、携帯電話機1に入力される受信信号と携帯電話機1から出力される送信信号とを分離するためのものであり、アンテナANTは、電波を送受信するためのものである。アンテナスイッチASWは、例えば、送信端子TXと受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)を有している。この送信端子TXは電力増幅器HPAと接続されており、受信端子RXは低雑音増幅器LNAと接続されている。さらに、アンテナ端子ANT(OUT)はアンテナANTと電気的に接続されている。アンテナスイッチASWは制御部CUと接続されており、アンテナスイッチASWにおけるスイッチの切り替え動作は、制御部CUによって制御されている。
携帯電話機1は、上記のように構成されており、以下に、その動作について簡単に説明する。まず、信号を送信する場合について説明する。インターフェース部IFUを介して音声信号などの信号がベースバンド部BBUに入力されると、ベースバンド部BBUは、音声信号などのアナログ信号をデジタル処理する。これにより、生成されたベースバンド信号は、RF集積回路部RFICに入力する。RF集積回路部RFICでは、入力したベースバンド信号を、変調信号源およびミキサによって、無線周波数(RF(Radio Frequency)周波数)の信号に変換する。無線周波数に変換された信号は、RF集積回路部RFICから電力増幅器(RFモジュール)HPAに出力される。電力増幅器HPAに入力した無線周波数の信号は、電力増幅器HPAで増幅された後、アンテナスイッチASWを介してアンテナANTより送信される。具体的に、アンテナスイッチASWでは、電力増幅器HPAと電気的に接続されている送信端子TXをアンテナANTと電気的に接続するようにスイッチの切り替えが行なわれる。これにより、電力増幅器HPAで増幅された無線周波数の信号はアンテナスイッチASWを介してアンテナANTから送信される。
次に、信号を受信する場合について説明する。アンテナANTにより受信された無線周波数の信号(受信信号)は、アンテナスイッチASWを介して低雑音増幅器LNAに入力される。具体的に、アンテナスイッチASWでは、アンテナANTと受信端子RXとを電気的に接続するようにスイッチの切り替えが行なわれる。これにより、アンテナANTで受信した受信信号は、アンテナスイッチASWの受信端子RXに伝達される。アンテナスイッチASWの受信端子RXは、低雑音増幅器LNAと接続されているので、受信信号は、アンテナスイッチASWの受信端子RXから低雑音増幅器LNAに入力される。そして、受信信号は低雑音増幅器LNAで増幅された後、RF集積回路部RFICに入力する。RF集積回路部RFICでは、変調信号源およびミキサによって、周波数変換を行なう。そして、周波数変換された信号の検波が行なわれ、ベースバンド信号が抽出される。その後、このベースバンド信号は、RF集積回路部RFICからベースバンド部BBUに出力される。このベースバンド信号がベースバンド部BBUで処理され、インターフェース部IFUを介して携帯電話機1から音声信号が出力される。以上は、シングルバンドの信号を送受信する携帯電話機1の簡単な構成およびその動作である。
<アンテナスイッチの回路構成>
次に、アンテナスイッチASWの回路構成について説明する。図2は、アンテナスイッチASWの回路構成を示す図である。図2に示すように、アンテナスイッチASWは、送信端子TXと、受信端子RXと、アンテナ端子ANT(OUT)とを有している。そして、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にTXスルートランジスタTH(TX)を有し、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にRXスルートランジスタTH(RX)を有している。さらに、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとGND端子GND1の間にTXシャントトランジスタSH(TX)を有し、受信端子RXとGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタSH(RX)を有している。
送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間に設けられているTXスルートランジスタTH(TX)は、例えば、直列に接続された5つのMISFET(Metal Insulator semiconductor Field Effect Transistor)QNから構成されている。このとき、各MISFETQNは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQNのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、TXスルートランジスタTH(TX)を構成するMISFETQNにおいては、送信端子TX側の領域をドレイン領域とし、アンテナ端子ANT(OUT)側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQNのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VTXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VTXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。このように構成されているTXスルートランジスタTH(TX)では、制御端子VTXに印加する電圧を制御することより、直列に接続されたMISFETQNのオン/オフを制御して、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間を電気的に接続したり、電気的に遮断するようになっている。つまり、TXスルートランジスタTH(TX)は、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との電気的な接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能する。
続いて、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間に設けられているRXスルートランジスタTH(RX)も、例えば、TXスルートランジスタTH(TX)と同様に、直列に接続された5つのMISFETQNから構成されている。このとき、各MISFETQNは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQNのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、RXスルートランジスタTH(RX)を構成するMISFETQNにおいては、アンテナ端子ANT(OUT)側の領域をドレイン領域とし、受信端子RX側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQNのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VRXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VRXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。このように構成されているRXスルートランジスタTH(RX)では、制御端子VRXに印加する電圧を制御することより、直列に接続されたMISFETQNのオン/オフを制御して、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間を電気的に接続したり、電気的に遮断するようになっている。つまり、RXスルートランジスタTH(RX)は、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との電気的な接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能する。
次に、送信端子TXとGND端子GND1との間に設けられているTXシャントトランジスタSH(TX)は、例えば、直列に接続された5つのMISFETQNから構成されている。この場合、各MISFETQNは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQNのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、TXシャントトランジスタSH(TX)を構成するMISFETQNにおいては、送信端子TX側の領域をドレイン領域とし、GND端子GND1側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQNのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VRXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VRXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。
ここで、上述したTXスルートランジスタTH(TX)は、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間で、送信信号を伝達する送信経路の接続/非接続を切り替えるスイッチとして機能することから、アンテナスイッチASWとして必要な構成要素である。これに対し、TXシャントトランジスタSH(TX)は送信端子TXとGND端子GND1との間の接続/非接続を切り替えるものであり、送信端子TXとGND端子GND1間の経路は直接送信信号が伝達されないことから、TXシャントトランジスタSH(TX)を設ける必要があるのか疑問となる。しかし、TXシャントトランジスタSH(TX)は、アンテナで受信信号を受信する際に重要な機能を有しているのである。
以下では、TXシャントトランジスタSH(TX)の機能について説明する。アンテナから受信信号を受信する場合、アンテナスイッチASWでは、RXスルートランジスタTH(RX)をオンしてアンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとを電気的に接続する。これにより、アンテナで受信された受信信号は、アンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RXを介して受信回路に伝達される。このとき、送信経路側には受信信号を伝達させない必要があるので、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TXとの間に設けられているTXスルートランジスタTH(TX)はオフされる。これにより、アンテナからアンテナ端子ANT(OUT)に入力された受信信号は、送信端子TX側には伝達されない。TXスルートランジスタTH(TX)をオフすることにより、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TXとの送信経路は電気的に遮断されるので、理想的には受信信号が送信経路に漏れこむことはないと考えられる。しかし、実際には、TXスルートランジスタTH(TX)を構成するMISFETQNにおいて、TXスルートランジスタTH(TX)をオフしているということは、電気的にMISFETQNのソース領域とドレイン領域の間にオフ容量が発生しているとみなすことができる。このため、高周波信号である受信信号は、このオフ容量を介して送信端子TX側に漏れるのである。受信信号の電力は小さいので、効率良くアンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RX側に伝達させることが望ましい。すなわち、TXスルートランジスタTH(TX)のオフ容量を介した受信信号の送信端子TX側への漏れこみを抑制する必要がある。特に、TXスルートランジスタTH(TX)を構成する各MISFETQNのゲート幅はオン抵抗を低減する観点から大きくなっている。このようにMISFETQNのゲート幅が大きくなっていることは、言い換えれば、オフ容量が大きくなるとも言える。いまの場合、TXスルートランジスタTH(TX)は5つのMISFETQNを直列に接続しているので、TXスルートランジスタTH(TX)の合成容量は、1つのMISFETQNのオフ容量よりも小さくなるものの、TXスルートランジスタTH(TX)のオフ容量は無視できないくらいに大きくなる。TXスルートランジスタTH(TX)のオフ容量が大きくなるということは、それだけ、高周波信号である受信信号が漏れこみやすくなることを意味している。したがって、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にTXスルートランジスタTH(TX)を設ける構成だけでは、受信信号の漏れこみを充分に抑制することができないのである。
そこで、送信端子TXとGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタSH(TX)を設けているのである。つまり、TXスルートランジスタTH(TX)をオフしている状態でも受信信号が送信端子TX側に漏れこむが、送信端子TX側に漏れこんだ受信信号を送信端子TXで充分に反射させることができれば、送信端子TX側に漏れこむ受信信号を抑制できるのである。すなわち、送信端子TXとGND端子GND1との間に設けられているTXシャントトランジスタSH(TX)は、送信端子TXにおける受信信号の反射を充分に行なう目的で設けられているのである。
送信端子TXにおいて高周波信号である受信信号を充分に反射させるには、送信端子TXをGNDに接地することで実現できる。言い換えれば、送信端子TXとGND端子GND1との間をできるだけ低インピーダンス状態にすることができれば、送信端子TXでの受信信号の反射を充分に行なうことができるのである。このため、受信時に送信端子TX側では、TXスルートランジスタTH(TX)をオフするとともに、TXシャントトランジスタSH(TX)をオンすることにより、送信端子TXとGND端子GND1とを電気的に接続しているのである。これにより、送信端子TX側に受信信号が漏れこんできても送信端子TXで充分に反射させることができるので、送信端子TX側に漏れこむ受信信号を抑制することができる。
TXシャントトランジスタSH(TX)は、例えば、5つのMISFETQNから構成されている。ここで、複数のMISFETQNを直列に接続しているのは、送信時に送信端子TXに大電力の送信信号が流れる関係上、送信端子TXとGND端子GND1との間には大きな電圧振幅が印加されるからである。すなわち、複数のMISFETQNを直列に接続することにより、送信端子TXとGND端子GND1との間に大きな電圧振幅が印加される場合であっても、各MISFETQNに印加される電圧振幅を耐圧以下にすることができるようにしたものである。
続いて、受信端子RXとGND端子GND2との間に設けられているRXシャントトランジスタSH(RX)も、例えば、5つのMISFETQNから構成されている。この場合、MISFETQNは、ソース領域とドレイン領域とゲート電極とを有している。本明細書では、MISFETQNのソース領域とドレイン領域とは対称になっているが、RXシャントトランジスタSH(RX)を構成するMISFETQNにおいては、受信端子RX側の領域をドレイン領域とし、GND端子GND2側の領域をソース領域と定義することにする。さらに、MISFETQNのゲート電極はゲート抵抗GRを介して制御端子VTXに接続されている。ゲート抵抗GRは、制御端子VTXに高周波信号が漏れ込まないようにするためのアイソレーション抵抗である。言い換えれば、ゲート抵抗GRは高周波信号を減衰させる機能を有している。
ここで、送信時においてRXスルートランジスタTH(RX)をオフしている状態でも、RXスルートランジスタTH(RX)にはオフ容量があることから、送信信号が受信端子RX側に漏れこむが、受信端子RX側に漏れこんだ送信信号を受信端子RXで充分に反射させることができれば、受信端子RX側に漏れこむ送信信号を抑制できるのである。すなわち、受信端子RXとGND端子GND2との間に設けられているRXシャントトランジスタSH(RX)は、受信端子RXにおける送信信号の反射を充分に行なう目的で設けられているのである。
受信端子RXにおいて高周波信号である送信信号を充分に反射させるには、受信端子RXをGNDに接地することで実現できる。言い換えれば、受信端子RXとGND端子GND2との間をできるだけ低インピーダンス状態にすることができれば、受信端子RXでの送信信号の反射を充分に行なうことができるのである。このため、送信時に受信端子RX側では、RXスルートランジスタTH(RX)をオフするとともに、RXシャントトランジスタSH(RX)をオンすることにより、受信端子RXとGND端子GND2とを電気的に接続しているのである。これにより、受信端子RX側に送信信号が漏れこんできても受信端子RXで充分に反射させることができるので、受信端子RX側に漏れこむ送信信号を抑制することができる。
アンテナスイッチASWは上記のように構成されており、以下にその動作について説明する。まず、送信時の動作について説明する。図2において、送信時には、TXスルートランジスタTH(TX)とRXシャントトランジスタSH(RX)とをオンし、かつ、TXシャントトランジスタSH(TX)とRXスルートランジスタTH(RX)とをオフする。これにより、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に接続され、かつ、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に遮断される。この結果、送信端子TXからアンテナ端子ANT(OUT)に向って送信信号が出力される。このとき、RXスルートランジスタTH(RX)はオフしているが、オフ容量が存在するので、高周波信号である送信信号の一部はRXスルートランジスタTH(RX)のオフ容量を介して、受信端子RX側に漏れ出る。ところが、受信端子RXとGND端子GND2とはRXシャントトランジスタSH(RX)がオンしていることから、電気的に接続され、受信端子RXとGND端子GND2との間のインピーダンスは低インピーダンス状態となる。このため、受信端子RX側に漏れ出た送信信号は受信端子RXで充分に反射される。この結果、受信端子RXに漏れ出る送信信号は抑制されるので、送信端子TXから送信信号が効率良くアンテナ端子ANT(OUT)に伝達される。このようにして、送信信号がアンテナ端子ANT(OUT)から出力される。
次に、受信時の動作について説明する。図2において、受信時には、RXスルートランジスタTH(RX)とTXシャントトランジスタSH(TX)とをオンし、かつ、RXシャントトランジスタSH(RX)とTXスルートランジスタTH(TX)とをオフする。これにより、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に接続され、かつ、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)が電気的に遮断される。この結果、アンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RXに向って受信信号が伝達される。このとき、TXスルートランジスタTH(TX)はオフしているが、オフ容量が存在するので、高周波信号である受信信号の一部はTXスルートランジスタTH(TX)のオフ容量を介して、送信端子TX側に漏れ出る。ところが、送信端子TXとGND端子GND1とはTXシャントトランジスタSH(TX)がオンしていることから、電気的に接続され、送信端子TXとGND端子GND1との間のインピーダンスは低インピーダンス状態となる。このため、送信端子TX側に漏れ出た受信信号は送信端子TXで充分に反射される。この結果、送信端子TXに漏れ出る受信信号は抑制されるので、アンテナ端子ANT(OUT)から効率良く受信端子RX側に伝達される。このようにして、受信信号がアンテナ端子ANT(OUT)から受信端子RX側に伝達される。
<アンテナスイッチを構成するMISFETの構造>
続いて、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQNの断面構造について説明する。図3は、MISFETQNの断面を示す断面図である。図3において、半導体基板(支持基板)1S上には、埋め込み絶縁層BOXが形成されており、この埋め込み絶縁層BOX上にシリコン層が形成されている。この半導体基板1Sと埋め込み絶縁層BOXとシリコン層とによりSOI基板が形成されている。そして、このSOI基板上にMISFETQNが形成されている。SOI基板のシリコン層には、チャネル領域として機能するボディ領域BDが形成されている。このボディ領域BDは、例えば、p型不純物であるボロンなどを導入したp型半導体領域から形成されている。ボディ領域BD上にはゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。一方、ゲート電極Gは、ポリシリコン膜PFとコバルトシリサイド膜CSとの積層膜から形成されている。ゲート電極Gの一部を構成するコバルトシリサイド膜CSは、ゲート電極Gの低抵抗化のために形成されている。なお、コバルトシリサイド膜CSに代えて、ニッケルシリサイド膜、プラチナシリサイド膜、ニッケルプラチナシリサイド膜、あるいは、チタンシリサイド膜などのシリサイド膜を使用してもよい。
続いて、ゲート電極Gの両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSWの下層にあるシリコン層内には低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dが形成されている。この低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dはゲート電極Gに整合して形成されている。そして、低濃度不純物拡散領域EX1sの外側には、高濃度不純物拡散領域NR1sが形成され、低濃度不純物拡散領域EX1dの外側には、高濃度不純物拡散領域NR1dが形成されている。高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dは、サイドウォールSWに整合して形成されている。さらに、高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dの表面にはコバルトシリサイド膜CSが形成されている。低濃度不純物拡散領域EX1sと高濃度不純物拡散領域NR1sとコバルトシリサイド膜CSによりソース領域Sが形成され、低濃度不純物拡散領域EX1dと高濃度不純物拡散領域NR1dとコバルトシリサイド膜CSによりドレイン領域Dが形成される。
低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dおよび高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dは、ともに、例えば、リンや砒素などのn型不純物を導入した半導体領域であり、低濃度不純物拡散領域EX1s、EX1dに導入されている不純物の濃度は、高濃度不純物拡散領域NR1s、NR1dに導入されている不純物の濃度よりも小さくなっている。
本実施の形態1におけるMISFETQNは上記のように構成されており、以下に、MISFETQN上に形成される配線構造について説明する。図3において、本実施の形態1におけるMISFETQNを覆うように窒化シリコン膜SNが形成されており、この窒化シリコン膜SN上にコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。そして、コンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SNにはソース領域Sに達するコンタクトホールCNTや、ドレイン領域Dに達するコンタクトホールCNTが形成されている。そして、コンタクトホールCNT内にチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜が埋め込まれてプラグPLGが形成されている。プラグPLGを形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上には配線L1が形成されている。例えば、配線L1は、チタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜およびチタン/窒化チタン膜の積層膜から形成される。さらに、この配線L1上に多層配線が形成されるが、図3では省略している。以上のようにして、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQNが形成されている。
<SOI基板に形成されたMISFETの長所および短所>
例えば、図1に示す携帯電話機1においては、送信信号の電力が1Wを超えるなど大電力になることが普通であり、アンテナスイッチASWには、大電力の送信信号の高品質性を確保し、かつ、他の周波数帯の通信に悪影響を与える妨害波(高次高調波)の発生を低減する性能が要求される。このため、アンテナスイッチASWを構成するスイッチング素子として電界効果トランジスタを使用する場合、この電界効果トランジスタには、高耐圧性だけでなく、高次高調波歪を低減できる性能が要求される。
このことから、アンテナスイッチを構成する電界効果トランジスタは、低損失や低高調波歪みを実現するため、寄生容量が少なく、線形性に優れたGaAs基板やサファイア基板上に形成される電界効果トランジスタ(例えば、HEMT)が使用されている。しかし、高周波特性に優れている化合物半導体基板は、高価であり、アンテナスイッチASWのコスト低下の観点から望ましいとはいえない。これに対し、アンテナスイッチASWをSOI基板上に形成したMISFETQNから構成する場合、SOI基板は、化合物半導体基板に比べて安価であることから、アンテナスイッチASWのコスト低下を実現することができる利点がある。すなわち、アンテナスイッチASWのコスト削減の観点からは、安価なシリコン基板(SOI(Silicon On Insulator)基板)上に形成されたMISFETQN(電界効果トランジスタ)を使用することが効果的である。
しかし、安価なSOI基板は、高価な化合物半導体基板に比べて寄生容量が大きく、化合物半導体基板上に形成された電界効果トランジスタよりも高調波歪みが大きくなる問題点がある。つまり、コスト削減の観点から、アンテナスイッチASWをSOI基板に形成されたMISFETQNから構成することが望ましいが、SOI基板に形成したMISFETQNでは、高調波歪みが大きくなる問題点が発生する。
例えば、図4は、SOI基板上に形成されたMISFETの場合と化合物半導体基板上に形成されたHEMTの場合のそれぞれにおいて、周波数1.9GHzでの入力電力(Pin)と3次高調波歪み(3HD)の関係を示すグラフである。図4において、横軸が入力電力(Pin)の大きさを示しており、縦軸が3次高調波歪み(3HD)の大きさを示している。ここで、図4のうち実線で示されているグラフがSOI基板上に形成されたMISFETに対応し、破線で示されているグラフが化合物半導体基板上に形成されたHEMTに対応している。図4では、3次高調波歪み(3HD)をデシベルで表示しているが、このデシベル表示は、高次高調波の大きさが入力電力(Pin)の電力からどれだけ減衰させているかを示している。すなわち、高次高調波のデシベル表示が小さくなるほど減衰が小さくなり、高次高調波の大きさが増大していることを示していることになる。したがって、図4を見ると、SOI基板に形成されたMISFETの方が、化合物半導体基板に形成されたHEMTよりも3次高調波歪み(3HD)の発生が大きくなっていることがわかる。つまり、SOI基板に形成されたMISFETでは、化合物半導体基板に形成されたHEMTよりも3次高調波歪みの発生が問題となることがわかる。
3次高調波歪みの発生原因は、例えば、図3に示すSOI基板上に形成されたMISFETQNを例に挙げて説明すると、MISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dの間に形成される寄生容量の電圧依存性が主な原因となっている。ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に形成される寄生容量は、ソース領域Sとボディ領域BDとの間に形成される寄生容量と、ドレイン領域Dとボディ領域BDとの間に形成される寄生容量に分けることができる。これらの寄生容量は、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に印加される電圧によって、容量絶縁膜として機能する空乏層の大きさが変化することから、容量値が変化する。すなわち、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に形成される寄生容量は電圧依存性を有している。そして、この電圧依存性が非線形性を含んでいることから、非線形性に起因した3次高調波歪みが発生するのである。一方、化合物半導体基板に形成されたHEMTは、半絶縁性基板に形成されており、ソース領域とドレイン領域との間に形成される寄生容量の電圧依存性も非常に小さい。このことから、化合物半導体基板に形成されたHEMTでは、3次高調波歪みも小さくなる。
高次高調波歪みには、上述した3次高調波歪みだけでなく、2次高調波歪みも存在するが、SOI基板に形成されたMISFETでは、化合物半導体基板に形成されたHEMTよりも2次高調波歪みの発生も大きくなる。
以上のように、SOI基板に形成されたMISFETでは、2次高調波歪みや3次高調波歪みなどの高次高調波歪みが、化合物半導体基板に形成されたHEMTに比べて大きくなるため、高次高調波歪みを低減するための対策が必要となる。そこで、本発明では、特に、高次高調波歪みのうち3次高調波歪みに着目して、3次高調波歪みの低減を図ることができる技術的思想を提供するものである。
<DC電圧印加時における寄生容量の電圧依存性>
上述したように、3次高調波歪みの発生原因は、ソース領域とドレイン領域との間に存在する寄生容量の電圧依存性にあるため、まず、この寄生容量の電圧依存性について検討する。まず、ソース領域とドレイン領域との間にDC電圧(直流電圧)を印加した場合のソース領域とドレイン領域の間に存在する寄生容量の電圧依存性について図面を参照しながら説明する。
図3に示すMISFETQNをオフした状態で、ソース領域Sとドレイン領域Dの間にDC電圧(直流電圧)を印加する場合を考える。図5は、ソース領域Sとドレイン領域Dの間にDC電圧(直流電圧)を印加した場合のソース・ドレイン間電圧とボディ・ソース間電圧との関係、および、ソース・ドレイン間電圧とボディ・ドレイン間電圧との関係を示すグラフである。ここで、ソース・ドレイン間電圧は、図3に示すソース領域Sとドレイン領域Dとの間に印加される電圧を示しており、特に、ソース領域Sを基準にしたソース領域Sとドレイン領域Dとの間の電圧を示している。また、ボディ・ソース間電圧は、図3に示すソース領域Sとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ソース領域Sを基準にしたボディ領域BDとソース領域Sとの間の電圧を示している。さらに、ボディ・ドレイン間電圧は、図3に示すドレイン領域Dとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ドレイン領域Dを基準としたボディ領域BDとドレイン領域Dとの間の電圧を示している。図5において、横軸はソース・ドレイン間電圧を示しており、縦軸はボディ・ソース間電圧、あるいは、ボディ・ドレイン間電圧を示している。
図6は、ソース・ドレイン間電圧(Vds)と、ソース・ドレイン間容量(Cds)との関係を示すグラフである。図6において、横軸はソース・ドレイン間電圧(Vds)を示しており、縦軸はソース・ドレイン間容量(Cds)を示している。
まず、図5に示すように、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合、ボディ・ドレイン間電圧とボディ・ソース間電圧はともに0Vとなっている。このとき、ボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量とは同じ容量CAであるとすると、図6に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)は、ボディ・ドレイン間接続容量とボディ・ソース間接合容量の直列和となるから、CA/2となる。
次に、ソース・ドレイン間電圧に、例えば、+1Vを印加した場合を考える。例えば、ソース領域Sに0Vを印加し、かつ、ドレイン領域Dに+1Vを印加する場合を考える。この場合、ソース領域Sとドレイン領域Dの間にあるボディ領域BDの電圧は0Vになる。なぜなら、ボディ領域BDはフローティング状態となっているため、ボディ・ソース間接合およびボディ・ドレイン間接合に電流が流れることはなく、順方向の電圧が印加され得ないからである。
例えば、ボディ領域BDの電圧Vが0<V<1となると仮定した場合、p型半導体領域であるボディ領域BDに正電位が印加され、かつ、n型半導体領域であるソース領域Sに0Vが印加されることになる。このことから、ボディ領域BDとソース領域Sとの間の接合には順バイアスが印加されることになる。このため、ボディ領域BDとソース領域Sの間のボディ・ソース間接合には電流が流れる必要があるが、ボディ領域BDはフローティング状態となっており、ボディ領域BDとソース領域Sの間に電流が流れることはない。したがって、ボディ領域BDの電圧Vは0<V<1となることはなく、ボディ・ソース間接合、および、ボディ・ドレイン間接合に順バイアスが印加されないようにボディ領域BDの電圧Vは0Vとなるのである。
以上より、ソース領域Sとボディ領域BDはともに0Vとなることから、ボディ・ソース間電圧は0Vのままであり、ボディ・ソース間接合容量はCAを維持する。一方、ボディ領域BDは0Vであり、かつ、ドレイン領域Dには+1Vが印加されることになるから、ボディ・ドレイン間電圧は−1Vとなる。つまり、ボディ領域BDとドレイン領域Dとの間には逆バイアスが印加されていることになる。このため、ボディ・ドレイン間接合からは空乏層が延びる結果、ボディ・ドレイン間接合容量は減少する。例えば、この場合のボディ・ドレイン間接合容量をCA´とすると、CA´<CAとなる。
すると、図6に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)は、ボディ・ドレイン間接合容量(CA´)とボディ・ソース間接合容量(CA)の直列和となるから、CA・CA´/(CA+CA´)<C/2となる。つまり、ソース・ドレイン間電圧が+1Vの場合は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりも、ソース・ドレイン間容量(Cds)が小さくなることがわかる。
さらに、ソース・ドレイン間電圧に、例えば、+2Vを印加した場合を考える。例えば、ソース領域Sに0Vを印加し、かつ、ドレイン領域Dに+2Vを印加する場合を考える。この場合、ソース領域Sとドレイン領域Dの間にあるボディ領域BDの電圧は0Vになる。なぜなら、ボディ領域BDはフローティング状態となっており、ボディ・ソース間接合およびボディ・ドレイン間接合に電流が流れることはないからである。したがって、ソース領域Sとボディ領域BDはともに0Vとなることから、ボディ・ソース間電圧は0Vのままであり、ボディ・ソース間接合容量はCAを維持する。
一方、ボディ領域BDは0Vであり、かつ、ドレイン領域Dには+2Vが印加されることになるから、ボディ・ドレイン間電圧は−2Vとなる。つまり、ボディ領域BDとドレイン領域Dとの間にはさらに深い逆バイアスが印加されていることになる。このため、ボディ・ドレイン間接合からは、ドレイン領域Dに+1Vを印加する場合よりも、さらに空乏層が延びる結果、ボディ・ドレイン間接合容量は、さらに減少する。例えば、この場合のボディ・ドレイン間接合容量をCA´´とすると、CA´´<CA´<CAとなる。
すると、図6に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)は、ボディ・ドレイン間接合容量(CA´´)とボディ・ソース間接合容量(CA)の直列和となるから、CA・CA´´/(CA+CA´´)<CA・CA´/(CA+CA´)<C/2となる。つまり、ソース・ドレイン間電圧が+2Vの場合は、ソース・ドレイン間電圧が+1Vや0Vの場合よりも、ソース・ドレイン間容量(Cds)がさらに小さくなることがわかる。
以上のことから、ソース・ドレイン間電圧(Vds)に正電圧を印加する場合、印加する正電圧が大きくなるほど、ソース・ドレイン間容量(Cds)が減少することがわかる。
続いて、ソース・ドレイン電圧に負電圧を印加する場合を考える。例えば、ソース領域Sに+1Vを印加し、かつ、ドレイン領域Dに0Vを印加する場合を考える。この場合、ソース領域Sとドレイン領域Dの間にあるボディ領域BDの電圧は0Vになる。なぜなら、ボディ領域BDはフローティング状態となっており、ボディ・ソース間接合およびボディ・ドレイン間接合に電流が流れることはないからである。
例えば、ボディ領域BDの電圧Vが0<V<1となると仮定した場合、p型半導体領域であるボディ領域BDに正電位が印加され、かつ、n型半導体領域であるドレイン領域Dに0Vが印加されることになる。このことから、ボディ領域BDとドレイン領域Dとの間の接合には順バイアスが印加されることになる。このため、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のボディ・ドレイン間接合には電流が流れる必要があるが、ボディ領域BDはフローティング状態となっており、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間に電流が流れることはない。したがって、ボディ領域BDの電圧Vは0<V<1となることはなく、ボディ・ソース間接合、および、ボディ・ドレイン間接合に順バイアスが印加されないようにボディ領域BDの電圧Vは0Vとなるのである。
以上より、ドレイン領域Dとボディ領域BDはともに0Vとなることから、ボディ・ドレイン間電圧は0Vのままであり、ボディ・ドレイン間接合容量はCAを維持する。一方、ボディ領域BDは0Vであり、かつ、ソース領域Sには+1Vが印加されることになるから、ボディ・ソース間電圧は−1Vとなる。つまり、ボディ領域BDとソース領域Sとの間には逆バイアスが印加されていることになる。このため、ボディ・ドレイン間接合からは空乏層が延びる結果、ボディ・ソース間接合容量は減少する。このとき、上述したソース・ドレイン間電圧に正電圧(+1V)を印加する場合と同様に考えることができることから、ボディ・ソース間接合容量はCA´(CA´<CA)となる。
すると、図6に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)は、ボディ・ソース間接合容量(CA´)とボディ・ドレイン間接合容量(CA)の直列和となるから、CA・CA´/(CA+CA´)<C/2となる。つまり、ソース・ドレイン間電圧が−1Vの場合は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりも、ソース・ドレイン間容量(Cds)が小さくなることがわかる。さらに、ソース・ドレイン間電圧が−1Vである場合のソース・ドレイン間容量(Cds)は、ソース・ドレイン間電圧が+1Vである場合のソース・ドレイン間容量(Cds)と同様になることがわかる。
さらに、ソース・ドレイン間電圧に、例えば、−2Vを印加した場合を考える。例えば、ソース領域Sに+2Vを印加し、かつ、ドレイン領域Dに0Vを印加する場合を考える。この場合、ソース領域Sとドレイン領域Dの間にあるボディ領域BDの電圧は0Vになる。なぜなら、ボディ領域BDはフローティング状態となっており、ボディ・ソース間接合およびボディ・ドレイン間接合に電流が流れることはないからである。したがって、ドレイン領域Dとボディ領域BDはともに0Vとなることから、ボディ・ドレイン間電圧は0Vのままであり、ボディ・ドレイン間接合容量はCAを維持する。
一方、ボディ領域BDは0Vであり、かつ、ソース領域Sには+2Vが印加されることになるから、ボディ・ソース間電圧は−2Vとなる。つまり、ボディ領域BDとソース領域Sとの間にはさらに深い逆バイアスが印加されていることになる。このため、ボディ・ソース間接合からは、ソース領域Sに+1Vを印加する場合よりも、さらに空乏層が延びる結果、ボディ・ソース間接合容量は、さらに減少する。このとき、上述したソース・ドレイン間電圧に正電圧(+2V)を印加する場合と同様に考えることができることから、ボディ・ソース間接合容量はCA´´(CA´´<CA´<CA)となる。
すると、図6に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)は、ボディ・ソース間接合容量(CA´´)とボディ・ドレイン間接合容量(CA)の直列和となるから、CA・CA´´/(CA+CA´´)<CA・CA´/(CA+CA´)<C/2となる。つまり、ソース・ドレイン間電圧が−2Vの場合は、ソース・ドレイン間電圧が−1Vや0Vの場合よりも、ソース・ドレイン間容量(Cds)がさらに小さくなることがわかる。さらに、ソース・ドレイン間電圧が−2Vである場合のソース・ドレイン間容量(Cds)は、ソース・ドレイン間電圧が+2Vである場合のソース・ドレイン間容量(Cds)と同様になることがわかる。
以上のことから、ソース・ドレイン間電圧(Vds)に負電圧を印加する場合、印加する負電圧(絶対値)が大きくなるほど、ソース・ドレイン間容量(Cds)が減少することがわかる。したがって、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間にDC電圧(直流電圧)を印加した場合のソース領域Sとドレイン領域Dの間に存在する寄生容量(ソース・ドレイン間容量)の電圧依存性は図6に示すようになる。すなわち、ソース・ドレイン間電圧(Vds)が0Vのときが最もソース・ドレイン間容量(Cds)が大きく、ソース・ドレイン間電圧が正負を問わず絶対値が大きくなるにつれて、ソース・ドレイン間容量(Cds)が小さくなる電圧依存性を有することになる。言い換えれば、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性は、ソース・ドレイン間容量(Cds)が0Vの位置を基準にして左右対称となっており、かつ、上に凸になっているということができる。
<高周波電圧印加時における寄生容量の電圧依存性>
上述した検討結果から、SOI基板に形成されたMISFETのソース領域とドレイン領域との間にDC電圧(直流電圧)を印加した場合、ソース領域とドレイン領域の間に存在する寄生容量の電圧依存性は、ソース・ドレイン間容量(Cds)が0Vの位置を基準にして左右対称となっており、かつ、上に凸になっていることが明らかになった。
しかし、図2に示すアンテナスイッチASWを構成するMISFETQNについての電圧依存性は、DC電圧(直流電圧)を印加した場合の電圧依存性をそのまま適用することはできないことを本発明者は新たに見出した。つまり、アンテナスイッチASWには、DC(直流電圧)ではなく、高周波電圧(高周波信号)が印加されるのであり、オフしているMISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧が印加されることを考慮する必要がある。本発明者の検討によると、オフしているMISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dの間に、DC電圧が印加される場合と高周波電圧が印加される場合とでは、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性に大きな相違点があることがわかったのである。したがって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQNのソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性を得るために、DC電圧(直流電圧)を印加した時のソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性を解析することは適切ではなく、高周波電圧を印加した時のソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性を解析する必要がある。
そこで、本発明者は新規に高周波電圧を印加した際におけるソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性を解析したところ、以下に示すような結果が得られたので、この結果について図面を参照しながら説明する。
図3に示すMISFETQNをオフした状態で、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加する場合を考える。図7は、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合のソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧、ゲート・ボディ間電圧のそれぞれの時間変化を示すグラフである。ここで、ソース・ドレイン間電圧は、図3に示すソース領域Sとドレイン領域Dとの間に印加される電圧を示しており、特に、ソース領域Sを基準にしたソース領域Sとドレイン領域Dとの間の電圧を示している。また、ボディ・ソース間電圧は、図3に示すソース領域Sとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ソース領域Sを基準にしたボディ領域BDとソース領域Sとの間の電圧を示している。さらに、ボディ・ドレイン間電圧は、図3に示すドレイン領域Dとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ドレイン領域Dを基準としたボディ領域BDとドレイン領域Dとの間の電圧を示している。また、ゲート・ボディ間電圧は、図3に示すゲート電極Gとボディ領域BDとの間に印加される電圧を示しており、特に、ボディ領域BDを基準としたボディ領域BDとゲート電極Gとの間の電圧を示している。図7において、横軸は時間を示しており、縦軸はソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧、ゲート・ボディ間電圧のいずれかを示している。
まず、図7に示すように、オフしているMISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dとの間に高周波電圧が印加されると、ソース・ドレイン間電圧は0Vを中心として振幅が2V程度の高周波電圧となる。具体的に、ソース・ドレイン間電圧は、0Vを中心として−2Vと+2Vとの間を振動する電圧となる。そして、ボディ・ソース間電圧は、約−1Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。具体的に、ボディ・ソース間電圧は、ソース・ドレイン間電圧の正方向(+方向)への振幅が最大になったときにほぼ0Vとなり、それ以外のときは負電圧内を振動している。同様に、ボディ・ドレイン間電圧は、約−1Vを中心として振幅が1V程度の高周波電圧となる。具体的に、ボディ・ドレイン間電圧は、ソース・ドレイン間電圧の負方向(−方向)への振幅が最大になったときにほぼ0Vとなり、それ以外のときは負電圧内を振動している。つまり、ボディ・ドレイン間電圧およびボディ・ソース間電圧は正電圧にならないように変化していることがわかる。これは、以下に示す理由による。
最初に、ボディ・ドレイン間電圧について説明すると、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になるということは、ドレイン領域Dを基準にしてボディ領域BDが正電圧になることを意味している。これは、ボディ領域BDがp型半導体領域から形成され、ドレイン領域Dがn型半導体領域から形成されていることを考慮すると、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になるということは、ボディ領域BDとドレイン領域Dとの間のpn接合に順バイアスが印加されることを意味している。したがって、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になると、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間に順方向電流が流れることになる。しかし、実際には、ボディ領域BDはフローティング状態となっているので、上述した順方向電流は流れない。すなわち、ボディ領域BDがフローティング状態となって順方向電流が流れないことから、ボディ・ドレイン間電圧が正電圧になることはないのである。このような理由からボディ・ドレイン間電圧は0V〜負電圧となるのである。
このことは、ボディ・ソース間電圧についても同様である。すなわち、ボディ・ソース間電圧が正電圧になるということは、ソース領域Sを基準にしてボディ領域BDが正電圧になることを意味している。これは、ボディ領域BDがp型半導体領域から形成され、ソース領域Sがn型半導体領域から形成されていることを考慮すると、ボディ・ソース間電圧が正電圧になるということは、ボディ領域BDとソース領域Sとの間のpn接合に順バイアスが印加されることを意味している。したがって、ボディ・ソース間電圧が正電圧になると、ボディ領域BDとソース領域Sの間に順方向電流が流れることになる。しかし、実際には、ボディ領域BDはフローティング状態となっているので、上述した順方向電流は流れない。すなわち、ボディ領域BDがフローティング状態となって順方向電流が流れないことから、ボディ・ソース間電圧が正電圧になることはないのである。このような理由からボディ・ソース間電圧は0V〜負電圧となるのである。
一方、図7に示すように、ゲート・ボディ間電圧は時間変化にかかわらず、一定の電位差を維持している。これは以下に示す理由による。すなわち、図3に示すように、ボディ領域BD上にゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極Gが形成されている。したがって、図3に示すMISFETQNでは、ボディ領域BDを下部電極、ゲート絶縁膜GOXを容量絶縁膜、ゲート電極Gを上部電極とするゲート容量が形成されている。そして、ゲート絶縁膜GOXは非常に薄い膜から形成されているので、上述したゲート容量の容量値は非常に大きくなる。ここで、オフしているMISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dの間に印加された高周波電圧によって、ボディ領域BDには高周波電圧が印加される。そして、ボディ領域BDとゲート電極Gの間は容量値の大きなゲート容量が形成されている。したがって、AC的な高周波電圧は容量値の大きなゲート容量によってボディ領域BDからゲート電極Gへ通過するのである。つまり、容量値の大きなゲート容量を介してボディ領域BDとゲート電極Gが接続されているということは、ボディ領域BDとゲート電極GがAC的にショートされていると考えることができるのである。したがって、ボディ領域BDに印加されるAC的な電圧変化に追随するようにゲート電極Gの電圧は時間変化する。この結果、ボディ領域BDに印加されている電圧とゲート電極Gに印加される電圧において、AC的な電圧変動は、ボディ領域BDとゲート電極G間の電位差に影響を与えることなく、一定のDC電圧(直流電圧)を維持したままとなるのである。以上のことから、ゲート・ボディ間電圧は時間変化にかかわらず、一定の電位差を維持しているのである。
次に、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合のソース・ドレイン間電圧、ボディ・ソース間電圧、ボディ・ドレイン間電圧のそれぞれの時間変化に基づいて、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量の電圧依存性について説明する。
図8は、ソース・ドレイン間電圧(Vds)とボディ・ドレイン間接合容量との関係、および、ソース・ドレイン間電圧(Vds)とボディ・ソース間接合容量との関係を示すグラフである。図8において、横軸はソース・ドレイン間電圧(Vds)を示しており、縦軸はボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量を示している。
まず、ソース・ドレイン間電圧(Vds)が0Vの場合を考える。図7に示すように、ソース・ドレイン間電圧が0Vのとき、ボディ・ドレイン間電圧とボディ・ソース間電圧は、ともに、約−1Vとなっている。したがって、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のpn接合に逆バイアスが印加されているとともに、ボディ領域BDとソース領域Sの間のpn接合にも逆バイアスが印加されている。このときのボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量を、図8に示すように、CBとする。
続いて、ソース・ドレイン間電圧がAC的に変化して正電圧方向に最も大きな電圧となる場合を考える。つまり、図7に示すように、ソース・ドレイン間電圧が+2Vとなる場合を考える。この場合、図7からわかるように、ボディ・ソース間電圧はほぼ0Vとなる。このことから、ボディ領域BDとソース領域Sの間のpn接合には逆バイアスは印加されないため、空乏層の幅は後退し、ボディ・ソース間接合容量の値は大きくなる。したがって、ボディ・ソース間接合容量は、図8に示すように、例えば、CB´(CB´>CB)となる。一方、図7からわかるように、ボディ・ドレイン間電圧はほぼ−2Vとなる。このことから、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のpn接合には深い逆バイアスが印加されるため、空乏層は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりもさらに延びる。この結果、ボディ・ドレイン間接合容量の値はさらに小さくなる。したがって、ボディ・ドレイン間接合容量は、図8に示すように、例えば、CB´´(CB´´<CB)となる。
また、ソース・ドレイン間電圧がAC的に変化して負電圧方向に最も大きな電圧(絶対値)となる場合も同様に考えることができる。具体的には、図7に示すように、ソース・ドレイン間電圧が−2Vとなる場合を考える。この場合、図7からわかるように、ボディ・ドレイン間電圧はほぼ0Vとなる。このことから、ボディ領域BDとドレイン領域Dの間のpn接合には逆バイアスは印加されないため、空乏層の幅は後退し、ボディ・ドレイン間接合容量の値は大きくなる。そして、ボディ・ドレイン間電圧が0Vである場合のボディ・ドレイン間接合容量は、ボディ・ソース間電圧が0Vである場合のボディ・ソース間接合容量と同様になる。したがって、ボディ・ドレイン間接合容量は、図8に示すように、例えば、CB´(CB´>CB)となる。一方、図7からわかるように、ボディ・ソース間電圧はほぼ−2Vとなる。このことから、ボディ領域BDとソース領域Sの間のpn接合には深い逆バイアスが印加されるため、空乏層は、ソース・ドレイン間電圧が0Vの場合よりもさらに延びる。この結果、ボディ・ソース間接合容量の値はさらに小さくなる。そして、ボディ・ソース間電圧が−2Vである場合のボディ・ソース間接合容量は、ボディ・ドレイン間電圧が−2Vである場合のボディ・ドレイン間接合容量と同様になる。したがって、ボディ・ソース間接合容量は、図8に示すように、例えば、CB´´(CB´´<CB)となる。
以上のことから、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合において、ボディ・ドレイン間接合容量およびボディ・ソース間接合容量は、図8に示すような電圧依存性を示すことになる。
ここで、ソース・ドレイン間容量(Cds)は、ボディ・ドレイン間接合容量とボディ・ソース間接合容量との直列和で表すことができる。このため、図8に示すボディ・ドレイン間接合容量の電圧依存性とボディ・ソース間接合容量の電圧依存性に基づいて、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性は、図9に示すようになる。図9は、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合において、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性を示すグラフである。図9において、横軸はソース・ドレイン間電圧(Vds)を示しており、縦軸はソース・ドレイン間容量(Cds)を示している。図9に示すように、ソース・ドレイン間電圧(Vds)が0Vのときが最もソース・ドレイン間容量(Cds)が小さく、ソース・ドレイン間電圧が正負を問わず絶対値が大きくなるにつれて、ソース・ドレイン間容量(Cds)が大きくなる電圧依存性を有することになる。言い換えれば、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性は、ソース・ドレイン間容量(Cds)が0Vの位置を基準にして左右対称となっており、かつ、下に凸になっているということができる。
したがって、SOI基板に形成されたMISFETのソース領域Sとドレイン領域Dとの間にDC電圧(直流電圧)を印加した場合と、SOI基板に形成されたMISFETのソース領域Sとドレイン領域Dとの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合では、図6および図9に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性はまったく異なっていることがわかる。
つまり、DC電圧(直流電圧)を印加した場合、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に存在する寄生容量の電圧依存性は、図6に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)が0Vの位置を基準にして左右対称となっており、かつ、上に凸になっている。これに対し、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に存在する寄生容量の電圧依存性は、図9に示すように、ソース・ドレイン間容量(Cds)が0Vの位置を基準にして左右対称となっており、かつ、下に凸になっているのである。
このことから、高周波電圧(AC電圧)が印加されるアンテナスイッチASWにおいては、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQNのソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性として、図6に示す電圧依存性ではなく、図9に示す電圧依存性を適用することが適切であると考えられる。
<本願発明の基本思想>
上述したように、MISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dとの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、MISFETQNにおけるソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性は、図9に示すように、下に凸の曲線で表される。この図9に示す下に凸の曲線は非線形成分を含んでいるので、この非線形成分を含んだソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性に起因して、3次高調波歪みが発生すると考えられる。
そこで、本願発明では、上述した知見に基づいて、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQNからの3次高調波歪みの発生を低減できる工夫を施している。
本願発明の基本思想は、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性により発生する3次高調波歪みと、この3次高調波歪みと逆位相で、かつ、ほぼ同じ振幅を有する別の3次高調波歪みを発生させる機構をアンテナスイッチASWに設けることにより、もともとの3次高調波歪みを別の3次高調波歪みで打ち消して、3次高調波歪みの絶対値を低減するというものである。具体的には、アンテナスイッチASWでの所定の回路動作モードにおいてオフとなるMISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dの間に歪補償用容量回路を付加する。そして、この歪補償用容量回路にソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性とは反対の電圧依存性(電圧の極性によらず電圧印加により容量が減少する電圧依存性)を持たせる。この場合、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性と反対の電圧依存性は、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性に起因して発生する3次高調波歪みとは逆位相の別の3次高調波歪みを発生させる。このため、この別の3次高調波歪みの振幅を調整することにより、ソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性に起因して発生する3次高調波歪みを打ち消すことができるのである。別の3次高調波歪みの振幅の最適化は、例えば、歪補償用容量回路の容量値とその電圧依存性を調整することにより行なうことができる。
以下に、本願発明における基本思想の概略について図面を参照しながら説明する。図10は、本願発明の基本思想を説明するための図である。図10に示すように、本願発明の基本思想は、例えば、上述したソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性のように下に凸の電圧依存性ED1があった場合、歪補償用容量回路のように上に凸の電圧依存性ED2を電圧依存性ED1と組み合わせるのである。その結果、電圧依存性ED3のようにフラットな電圧依存性を得ることができるのである。つまり、電圧依存性ED1と電圧依存性ED2はそれぞれ非線形成分を含んでいるが、下に凸の電圧依存性ED1と上に凸の電圧依存性ED2を組み合わせることにより、非線形成分を低減したフラットな電圧依存性ED3を得ることができるのである。このことは、言い換えれば、下に凸の電圧依存性ED1に起因して発生する3次高調波歪みの位相と、上に凸の電圧依存性ED2に起因して発生する別の3次高調波歪みの位相が逆位相になっていることを意味する。そして、本願発明の基本思想は、この逆位相の関係にある3次高調波歪みと別の3次高調波歪みを組み合わせることで、もともとの3次高調波歪みが打ち消すことができるというものである。
<歪補償用容量回路の構成>
上述した本願発明の基本思想を具現化するためには、まず、歪補償用容量回路を設計する必要がある。つまり、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQNのソース領域Sとドレイン領域Dとの間に高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、MISFETQNにおけるソース・ドレイン間容量(Cds)の電圧依存性は、図9に示すように、下に凸の曲線で表される。したがって、図10に示す本願発明の基本思想からわかるように、アンテナスイッチASWに付加する歪補償用容量回路には、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、上に凸の曲線で表される電圧依存性が要求される。そこで、以下の説明では、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する歪補償用容量回路の構成について説明する。
まず、歪補償用容量回路を構成する容量素子について説明する。歪補償用容量回路自体に容量の電圧依存性が要求されることから、歪補償用容量回路を構成する容量素子にも容量の電圧依存性が要求されると考えられる。このため、本願発明では、歪補償用容量回路を構成する容量素子に電圧依存性のあるMOSダイオード容量素子を使用する。
以下に、歪補償用容量回路を構成するMOSダイオード容量素子の構成について説明する。図11(a)は、本願発明におけるMOSダイオード容量素子MDC1の構造を示す断面図であり、図11(b)は、このMOSダイオード容量素子の回路シンボル図である。図11(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC1は、半導体基板(支持基板)1Sと、半導体基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層(活性層)からなるSOI基板上に形成されている。具体的に、MOSダイオード容量素子MDC1は、SOI基板のシリコン層に平面的に離間して形成された一対の半導体領域NR1Aを有しており、さらに、この一対の半導体領域NR1Aの間に形成された半導体領域NR1Bを有している。このとき、半導体領域NR1Aおよび半導体領域NR1Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域(不純物拡散領域)であり、例えば、ともにn型半導体領域から形成することができる。したがって、半導体領域NR1Aと半導体領域NR1Bとは電気的に接続されており、これらの半導体領域NR1Aと半導体領域NR1BによってMOSダイオード容量素子MDC1の下部電極が形成される。なお、半導体領域NR1Bの不純物濃度は、半導体領域NR1Aの不純物濃度よりも低くなっている。
次に、半導体領域NR1B上には、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL1が形成されている。そして、この容量絶縁膜CIL1上に電極EL1が形成されている。この電極EL1は、MOSダイオード容量素子MDC1の上部電極となるものであり、例えば、ポリシリコン膜にリンなどのn型不純物を導入することにより形成されている。さらに、電極EL1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
以上のように構成されているMOSダイオード容量素子MDC1は、通常のMISFETと近い構成をしているが以下の点で相違する。すなわち、通常のMISFETでは、ソース領域およびドレイン領域と、チャネル領域となるボディ領域の導電型が異なっているが、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1では、通常のMISFETのソース領域およびドレイン領域に相当する半導体領域NR1Aと、ボディ領域に相当する半導体領域NR1Bが同じ導電型の半導体領域から形成されている点が相違する。このように構成されているMOSダイオード容量素子MDC1では、下部電極となる半導体領域NR1Aと端子Aとを配線で電気的に接続し、かつ、上部電極となる電極EL1と端子Bとを配線で電気的に接続している。
ここで、図11(a)および図11(b)に示す容量素子をMOSダイオード容量素子と呼ぶのは、容量素子をMOS構造で形成し、かつ、端子Aと端子Bの2つのノード(ダイオード)を有しているからである。つまり、MOSダイオード容量素子と呼ぶからといって、ダイオード(pn接合ダイオード)が形成されているわけではない点を付け加えておく。
続いて、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1によれば端子Aと端子Bとの間に印加される電圧によって容量値が変化することについて説明する。すなわち、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1の容量値が電圧依存性を有していることについて説明する。
図12は、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1の容量値Cbaが端子Aと端子Bの間に印加される電圧によって変化することを示すグラフである。図12において、横軸は端子Aと端子Bとの間に印加される電圧Vbaを示しており、特に、端子Aを基準にした端子Aと端子Bとの間の電圧Vbaを示している。一方、縦軸はMOSダイオード容量素子MDC1の容量値Cbaを示している。
以下では、図12のグラフにおいて実線で示すn型のMOSダイオード容量素子MDC1の電圧依存性について説明する。n型のMOSダイオード容量素子MDC1とは、図11(a)に示す半導体領域NR1Aおよび半導体領域NR1Bがともにn型半導体領域から形成されている構造のMOSダイオード容量素子をいうものとする。
まず、図12に示すように、電圧Vbaとして負電圧を印加した場合を考える。電圧Vbaとして負電圧を印加するということは、端子Aに対して端子Bに低い電圧を印加することに相当する。例えば、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1において、半導体領域NR1B(半導体領域NR1A)に正電圧を印加し、電極EL1に負電圧を印加することに対応する。この場合、容量絶縁膜CIL1直下の半導体領域NR1Bで空乏層が広がる。この空乏層は絶縁領域として機能することから、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜は、容量絶縁膜CIL1と空乏層の厚さとを合わせたものとなる。このことは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜が容量絶縁膜CIL1だけから構成される場合よりも厚くなることを意味し、この結果、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値Cbaが減少することを意味している。
一方、電圧Vbaとして正電圧を印加した場合を考える。電圧Vbaとして正電圧を印加するということは、端子Aに対して端子Bに高い電圧を印加することに相当する。例えば、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1において、半導体領域NR1B(半導体領域NR1A)に負電圧を印加し、電極EL1に正電圧を印加することに対応する。この場合、容量絶縁膜CIL1直下の半導体領域NR1Bでは空乏層が消滅し、半導体領域NR1Bと容量絶縁膜CIL1との界面近傍に電子が集積して蓄積層が形成される。このため、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜は、容量絶縁膜CIL1だけから構成されることになる。このことは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜が容量絶縁膜CIL1と空乏層から構成される場合よりも薄くなることを意味し、この結果、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値Cbaが増加することを意味している。
上述した考察から、図12の実線で示すように、n型のMOSダイオード容量素子MDC1では、電圧Vbaが負電圧の場合に容量値Cbaが相対的に小さく、電圧Vbaが負電圧から正電圧に変化するにつれて、半導体領域NR1Bに形成されている空乏層の厚さが小さくなることから容量値Cbaが増加する。そして、n型のMOSダイオード容量素子MDC1では、さらに、電圧Vbaに大きな正電圧が印加されると、空乏層が消滅して電子による蓄積層が形成され、その後、容量値Cbaは、ほぼ一定となることがわかる。
このような電圧依存性を有するn型のMOSダイオード容量素子MDC1においては、半導体領域NR1Bの不純物濃度や不純物分布を調整することにより、空乏層の調整ができることから、半導体領域NR1Bの不純物濃度や不純物分布を調整することで所定の電圧依存性を得ることができる。例えば、半導体領域NR1Bの不純物濃度を、1×1017/cm3〜1×1018/cm3とすることができる。また、電極EL1の幅を調整することにより、電圧による容量変化の絶対値を所定値にすることができる。
次に、図12のグラフにおいて破線で示すp型のMOSダイオード容量素子MDC1の電圧依存性について説明する。p型のMOSダイオード容量素子MDC1とは、図11(a)に示す半導体領域NR1Aおよび半導体領域NR1Bがともにp型半導体領域から形成されている構造のMOSダイオード容量素子をいうものとする。
まず、図12に示すように、電圧Vbaとして正電圧を印加した場合を考える。電圧Vbaとして正電圧を印加するということは、端子Aに対して端子Bに高い電圧を印加することに相当する。例えば、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1において、半導体領域NR1B(半導体領域NR1A)に負電圧を印加し、電極EL1に正電圧を印加することに対応する。この場合、容量絶縁膜CIL1直下の半導体領域NR1Bで空乏層が広がる。この空乏層は絶縁領域として機能することから、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜は、容量絶縁膜CIL1と空乏層の厚さとを合わせたものとなる。このことは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜が容量絶縁膜CIL1だけから構成される場合よりも厚くなることを意味し、この結果、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値Cbaが減少することを意味している。
一方、電圧Vbaとして負電圧を印加した場合を考える。電圧Vbaとして負電圧を印加するということは、端子Aに対して端子Bに低い電圧を印加することに相当する。例えば、図11(a)に示すMOSダイオード容量素子MDC1において、半導体領域NR1B(半導体領域NR1A)に正電圧を印加し、電極EL1に負電圧を印加することに対応する。この場合、容量絶縁膜CIL1直下の半導体領域NR1Bでは空乏層が消滅し、半導体領域NR1Bと容量絶縁膜CIL1との界面近傍に正孔が集積して蓄積層が形成される。このため、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜は、容量絶縁膜CIL1だけから構成されることになる。このことは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜が容量絶縁膜CIL1と空乏層から構成される場合よりも薄くなることを意味し、この結果、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値Cbaが増加することを意味している。
上述した考察から、図12の破線で示すように、p型のMOSダイオード容量素子MDC1では、電圧Vbaが正電圧の場合に容量値Cbaが相対的に小さく、電圧Vbaが正電圧から負電圧に変化するにつれて、半導体領域NR1Bに形成されている空乏層の厚さが小さくなることから容量値Cbaが増加する。そして、p型のMOSダイオード容量素子MDC1では、さらに、電圧Vbaに大きな負電圧が印加されると、空乏層が消滅して正孔による蓄積層が形成され、その後、容量値Cbaは、ほぼ一定となることがわかる。
このような電圧依存性を有するp型のMOSダイオード容量素子MDC1においては、半導体領域NR1Bの不純物濃度や不純物分布を調整することにより、空乏層の調整ができることから、半導体領域NR1Bの不純物濃度や不純物分布を調整することで所定の電圧依存性を得ることができる。例えば、半導体領域NR1Bの不純物濃度を、1×1017/cm3〜1×1018/cm3とすることができる。また、電極EL1の幅を調整することにより、電圧による容量変化の絶対値を所定値にすることができる。
以上のことから、図12に示すように、n型のMOSダイオード容量素子MDC1の電圧依存性と、p型のMOSダイオード容量素子MDC1の電圧依存性は、0Vを中心にして互いに反転させた電圧依存性になることがわかる。
ここで、単体のMOSダイオード容量素子MDC1における容量値の電圧依存性は、図12に示すようになる。一方、歪補償用容量回路には、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合、上に凸の曲線で表される電圧依存性が要求される。このことから、単体のMOSダイオード容量素子MDC1だけでは、上に凸の曲線で表される電圧依存性の歪補償用容量回路を実現することはできない。そこで、本願発明では、MOSダイオード容量素子MDC1を2つ組み合わせることにより、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する歪補償用容量回路を実現している。以下では、この歪補償用容量回路の構成について説明する。
図13(a)は、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1の構造を示す図である。図13(a)に示すように、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1は、半導体基板1Sと、半導体基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層からなるSOI基板上に形成されている。そして、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1は、SOI基板に形成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2を有している。このMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層に形成された素子分離領域STIによって分離されている。
具体的に、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1を構成するMOSダイオード容量素子MDC1およびMOSダイオード容量素子MDC2のそれぞれの構成について説明する。図13(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC1は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR1Aと、一対の半導体領域NR1Aの間に形成された半導体領域NR1Bを有している。この半導体領域NR1Aと半導体領域NR1Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC1は、半導体領域NR1B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL1を有し、この容量絶縁膜CIL1上に電極EL1を有している。電極EL1は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
次に、図13(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR2Aと、一対の半導体領域NR2Aの間に形成された半導体領域NR2Bを有している。この半導体領域NR2Aと半導体領域NR2Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC2は、半導体領域NR2B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL2を有し、この容量絶縁膜CIL2上に電極EL2を有している。電極EL2は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL2の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
このように構成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2において、MOSダイオード容量素子MDC1の半導体領域NR1Aに端子Aが電気的に接続され、MOSダイオード容量素子MDC2の半導体領域NR2Aに端子Bが電気的に接続されている。そして、MOSダイオード容量素子MDC1の電極EL1と、MOSダイオード容量素子MDC2の電極EL2が電気的に接続されており、互いに接続されている電極EL1と電極EL2の間のノードCは、抵抗素子R1を介して、例えば、DC電源、あるいは、GND電位(接地電位)に接続されている。ノードCをDC電源、あるいは、GND電位に接続する理由は、ノードCをフローティング状態とした場合、ノードCに電荷が蓄積してノードCの電位が所望の電位からずれる可能性があり、これを防止するためである。
本願発明における歪補償用容量回路CAPC1は上記のように構成されており、その回路図は、図13(b)のようになる。図13(b)は、図13(a)の構造で示される歪補償用容量回路CAPC1の回路図を示す図である。図13(b)に示すように、本願発明における歪補償用回路CAPC1は、端子Aと端子Bの間にMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆直列に接続されている。そして、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の中間に位置するノードCが、抵抗素子R1を介してDC電源あるいはGND電位に接続されていることがわかる。
続いて、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1によれば、対称性を有し、かつ、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有していることについて説明する。図14は、歪補償用回路CAPC1の電圧依存性を示すグラフである。まず、端子Aと端子Bの間に印加される電圧Vbaが0Vの場合を考える。例えば、図13において、端子A、端子BおよびノードCに0Vが印加されていることになる。このとき、図13に示すMOSダイオード容量素子MDC1の上部電極となる電極EL1と、MOSダイオード容量素子MDC1の下部電極となる半導体領域NR1Bの両方に0Vが印加される。同様に、図13に示すMOSダイオード容量素子MDC2の上部電極となる電極EL2と、MOSダイオード容量素子MDC2の下部電極となる半導体領域NR2Bの両方に0Vが印加される。
ここで、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜となる容量絶縁膜CIL1と、MOSダイオード容量素子MDC2の容量絶縁膜となる容量絶縁膜CIL2は同じ膜厚であることから、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値と、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は同じになり、例えば、CCとなるものとする。このとき、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値(CC)とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値(CC)との直列和になることから、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、CC/2となる。
続いて、電圧Vbaが正電圧(例えば、Vba=2V)になる場合を考える。例えば、図13において、端子AおよびノードCに0Vが印加され、端子Bに+2Vが印加されていることになる。このとき、図13に示すMOSダイオード容量素子MDC1の上部電極となる電極EL1と、MOSダイオード容量素子MDC1の下部電極となる半導体領域NR1Bの両方に0Vが印加されるので、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は、CCのままである。一方、図13に示すMOSダイオード容量素子MDC2の上部電極となる電極EL2には0Vが印加され、MOSダイオード容量素子MDC2の下部電極となる半導体領域NR2Bには+2Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC2では、電極EL2の電圧に対して半導体領域NR2Bの電圧が正電圧になることから、容量絶縁膜CIL2直下の半導体領域NR2B内に空乏層が広がる。この結果、MOSダイオード容量素子MDC2の容量絶縁膜の厚さは、容量絶縁膜CIL2の厚さと空乏層の厚さを合わせた厚さになることから、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値が低下し、例えば、CC´(CC´<CC)になるものとする。この場合、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値(CC)とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値(CC´)との直列和になることから、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、CC・CC´/(CC+CC´)となる。つまり、電圧Vbaが正電圧になる場合の歪補償用容量回路CAPC1の容量値は、電圧Vbaが0Vになる場合の歪補償用容量回路CAPC1の容量値より低下することがわかる。
次に、電圧Vbaが負電圧(例えば、Vba=−2V)になる場合を考える。例えば、図13において、端子BおよびノードCに0Vが印加され、端子Aに+2Vが印加されていることになる。このとき、図13に示すMOSダイオード容量素子MDC2の上部電極となる電極EL2と、MOSダイオード容量素子MDC2の下部電極となる半導体領域NR2Bの両方に0Vが印加されるので、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は、CCのままである。一方、図13に示すMOSダイオード容量素子MDC1の上部電極となる電極EL1には0Vが印加され、MOSダイオード容量素子MDC1の下部電極となる半導体領域NR1Bには+2Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1では、電極EL1の電圧に対して半導体領域NR1Bの電圧が正電圧になることから、容量絶縁膜CIL1直下の半導体領域NR1B内に空乏層が広がる。この結果、MOSダイオード容量素子MDC1の容量絶縁膜の厚さは、容量絶縁膜CIL1の厚さと空乏層の厚さを合わせた厚さになることから、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値が低下する。ここで、MOSダイオード容量素子MDC1の構造とMOSダイオード容量素子MDC2の構造は同じであるので、電圧Vbaが正電圧(2V)の場合にMOSダイオード容量素子MDC2に形成される空乏層の厚さと、今回のように電圧Vbaが負電圧(−2V)の場合にMOSダイオード容量素子MDC1に形成される空乏層の厚さは同じであるので、電圧Vbaが負電圧(−2V)の場合でのMOSダイオード容量素子MDC1の容量値は、電圧Vbaが正電圧(+2V)の場合でのMOSダイオード容量素子MDC2の容量値と同じCC´(CC´<CC)となる。この場合、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値(CC´)とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値(CC)との直列和になることから、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、CC・CC´/(CC+CC´)となる。つまり、電圧Vbaが負電圧になる場合の歪補償用容量回路CAPC1の容量値は、電圧Vbaが0Vになる場合の歪補償用容量回路CAPC1の容量値より低下するとともに、電圧Vbaが正電圧(絶対値が同じ)になる場合の歪補償用容量回路CAPC1の容量値と同じになることがわかる。以上のことから、図14に示すように、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaは、電圧Vba=0Vのとき最も大きくなり、電圧Vbaが正電圧あるいは負電圧のいずれになる場合も電圧Vbaの絶対値が大きいほど、歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaが低下することがわかる。すなわち、本願発明における歪補償用容量回路CAPC1の容量値Cbaの電圧依存性は、対称性を有し、かつ、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することがわかる。
このように図14に示す歪補償用容量回路CAPC1の電圧依存性は、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合に、ソース領域Sとドレイン領域Dの間に存在する寄生容量の電圧依存性(図9参照)と逆の依存性となっていることがわかる。このため、歪補償用容量回路CAPC1を構成するMOSダイオード容量素子MDC1、MDC2の下部電極となる半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度と、電極EL1および電極EL2の幅を調整して歪補償用容量回路CAPC1の容量値の電圧依存性を最適化することにより、歪補償用容量回路CAPC1に対して、MISFETQNの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みを打ち消す効果を持たせることができることがわかる。
なお、MISFETQNの寄生容量の電圧依存性が下に凸で、かつ、対称性を有していることから、この電圧依存性と逆の電圧依存性を持つ歪補償用容量回路CAPC1では、上に凸の電圧依存性を有するとともに、対称性を有することも重要である。したがって、歪補償用容量回路CAPC1を構成する2つのMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2は同じ構造を有していることが望ましい。このため、2つのMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2は、例えば、同じn型のMOSダイオード容量素子から構成したり、同じp型のMOSダイオード容量素子から構成することが望ましい。
<歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
次に、上述した歪補償用容量回路CAPC1をアンテナスイッチASWへ適用する場合、3次高調波歪みを効果的に低減する観点から、アンテナスイッチASWのどの構成要素に歪補償用容量回路CAPC1を設けることが望ましいかについて説明する。
図15は、アンテナスイッチASWの回路構成を示す図である。図15に示すように、アンテナスイッチASWは、送信端子TXと、受信端子RXと、アンテナ端子ANT(OUT)とを有している。そして、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にTXスルートランジスタTH(TX)を有し、受信端子RXとアンテナ端子ANT(OUT)との間にRXスルートランジスタTH(RX)を有している。さらに、アンテナスイッチASWは、送信端子TXとGND端子GND1の間にTXシャントトランジスタSH(TX)を有し、受信端子RXとGND端子GND2の間にRXシャントトランジスタSH(RX)を有している。
本願発明では、このように構成されているアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)(図15の斜線領域で示されている)に上述した歪補償用容量回路を適用する。この理由は次のようなものである。すなわち、アンテナスイッチASWでは、送信信号を送信する場合と受信信号を受信する場合があるが、送信信号は大電力の信号であるのに対し、受信信号は微弱な信号である。したがって、大電力な信号である送信信号を送信する際に発生する3次高調波歪みも大きくなる。このことから、アンテナスイッチASWから送信信号を送信する際に発生する3次高調波歪みを低減することが必要であると考えられる。
アンテナスイッチASWから送信信号を送信する場合、図15に示すTXスルートランジスタTH(TX)とRXシャントトランジスタSH(RX)をオンし、かつ、RXスルートランジスタTH(RX)とTXシャントトランジスタSH(TX)をオフする。3次高調波歪みはオフしているトランジスタから主に発生する。そこで、本願発明では、アンテナスイッチASWから送信信号を送信する際にオフしているRXスルートランジスタTH(RX)に歪補償用容量回路を付加しているのである。
なお、アンテナスイッチASWから送信信号を送信する際にオフしているトランジスタは、RXスルートランジスタTH(RX)だけでなく、TXシャントトランジスタSH(TX)も存在するが、TXシャントトランジスタSH(TX)ではなく、RXスルートランジスタTH(RX)に歪補償用容量回路を付加する理由は次のとおりである。
つまり、RXスルートランジスタTH(RX)は受信信号が直接伝達される経路に設けられていることから、オン抵抗を小さくする必要性が高い。したがって、RXスルートランジスタTH(RX)のゲート幅は大きくなっており、それに伴って、RXスルートランジスタTH(RX)のサイズも大きくなっている。一方、TXシャントトランジスタSH(TX)は、信号が直接伝達される経路に設けられているわけではないので、RXスルートランジスタTH(RX)よりもオン抵抗を低減する必要性は低くなる。それよりも、TXシャントトランジスタSH(TX)ではオフ容量を介した送信信号の漏れをできるだけ小さくする必要があり、これにより、TXシャントトランジスタSH(TX)のゲート幅は、RXスルートランジスタTH(RX)のゲート幅よりも小さくなっている。このことは、TXシャントトランジスタSH(TX)のサイズは、RXスルートランジスタTH(RX)のサイズに比べて小さくなっていることを意味している。したがって、サイズの大きなRXスルートランジスタTH(RX)に歪補償用容量回路を付加した場合、歪補償用容量回路のサイズに比べて、RXスルートランジスタTH(RX)のサイズが大きいので、歪補償用容量回路を設けたことによるRXスルートランジスタTH(RX)への影響を小さくできる。逆に言えば、サイズの小さいTXシャントトランジスタSH(TX)に歪補償用容量回路を付加する場合、歪補償用容量回路のサイズとTXシャントトランジスタSH(TX)のサイズの差は、歪補償用容量回路のサイズとRXスルートランジスタTH(RX)のサイズの差よりも小さくなるため、歪補償用容量回路を設けたことによるTXシャントトランジスタSH(TX)への影響が大きくなる。このような理由から、歪補償用容量回路は、RXスルートランジスタTH(RX)に付加しているのである。
<特願2009−158995号の構成および問題点>
上述したように、アンテナスイッチASWに歪補償用容量回路を付加する場合、アンテナスイッチASWを構成するRXスルートランジスタTH(RX)に歪補償用容量回路を付加している。実際に、RXスルートランジスタTH(RX)に歪補償用容量回路を付加した構成例である特願2009−158995号の構成例(比較例)を説明し、その後、比較例における問題点を説明する。
図16は、RXスルートランジスタに歪補償用容量回路CAPC1を付加した比較例の構成を示す回路図である。図16に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタを構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、MISFETQN1〜MISFETQN5のそれぞれには、歪補償用容量回路CAPC1が接続されている。具体的に、MISFETQN1のドレイン領域D1とソース領域S1の間に歪補償用容量回路CAPC1が接続され、MISFETQN2のドレイン領域D2とソース領域S2の間に歪補償用容量回路CAPC1が接続されている。さらに、MISFETQN3のドレイン領域D3とソース領域S3の間にも歪補償用容量回路CAPC1が接続され、MISFETQN4のドレイン領域D4とソース領域S4の間にも歪補償用容量回路CAPC1が接続されている。また、MISFETQN5のドレイン領域D5とソース領域S5の間にも歪補償用容量回路CAPC1が接続されている。
MISFETQN1〜QN5のそれぞれと並列に接続されている歪補償用容量回路CAPC1のそれぞれは、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続した構成をしており、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間の中間ノードは、それぞれゲート電極G1〜G5と容量素子CTを介して接続されている。さらに、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間の中間ノードは、抵抗素子R2を介して束ねられてGND(グランド)に接続されている。
ここで、容量素子CTは、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間の中間ノードをMISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5およびMISFETQN1〜QN5のそれぞれのボディ領域とAC的に短絡させる機能を有している。つまり、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのボディ領域の電圧(電位)は、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのソース領域S1〜S5とドレイン領域D1〜D5の間のほぼ中間値になっており、このボディ領域は、容量値の大きなゲート容量を介してゲート電極G1〜G5と接続されていることから、ボディ領域はAC的にゲート電極G1〜G5と短絡されている。そして、ゲート電極G1〜G5は、容量素子CTを介して歪補償用容量回路CAPC1の中間ノードと接続されていることから、結局、ボディ領域のそれぞれとゲート電極G1〜G5のそれぞれと中間ノードのそれぞれとはAC的に短絡されていることになる。そして、ボディ領域のそれぞれは、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのソース領域S1〜S5とドレイン領域D1〜D5の間のほぼ中間値になっていることから、ボディ領域のそれぞれと短絡されている中間ノードのそれぞれは、歪補償用容量回路CAPC1のそれぞれが接続されているソース領域S1〜S5とドレイン領域D1〜D5の中間値となる。この結果、歪補償用容量回路CAPC1は中間ノードを中心として対称となる。これにより、歪補償用容量回路CAPC1の電圧依存性の対称性が確保され、歪補償用容量回路CAPC1の歪補償機能を有効に作用させることができる。したがって、図16に示す容量素子CTは、歪補償用容量回路CAPC1の電圧依存性の対称性を確保する機能を有しているということができる。
このように比較例では、歪補償用容量回路CAPC1の電圧依存性の対称性を確保するために容量素子CTを使用しているが、この容量素子CTを使用する結果、以下に示すような問題点が発生する。すなわち、容量素子CTには、副作用としての高次高調波歪みの発生を防ぐため、電圧依存性の小さなMIM(Metal Insulator Metal)容量素子を使用することが望ましい。ところが、ゲート電極G1〜G5のそれぞれと歪補償用容量回路の中間ノードのそれぞれとをAC的に短絡させるために大きな容量値が必要となる。具体的に、容量素子CTには1pF程度の容量値が必要となるが、一般的に、MIM容量素子は、容量密度が小さいため、容量値を大きくするためには面積を大きくする必要があり、MIM容量素子の占有面積が大きくなってしまう問題点がある。また、MIM容量素子を新たに形成する必要があり、余分な製造工程が追加されてしまう問題点もある。さらには、追加する容量素子CTと、SOI基板を構成する支持基板との間に寄生容量が生じ、この寄生容量が原因で2次高調波歪みが発生する問題点も生じてしまう。
<本実施の形態1における歪補償用容量回路>
そこで、本実施の形態1では、上述した容量素子CTを使用しなくても、歪補償用容量回路の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができる工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における歪補償用容量回路の構成について図面を参照しながら説明する。
図17(a)は、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2の構成を示す図である。図17(a)に示すように、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2は、半導体基板1Sと、半導体基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層からなるSOI基板上に形成されている。そして、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2は、SOI基板に形成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2を有している。このMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層に形成された素子分離領域STIによって分離されている。
具体的に、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2を構成するMOSダイオード容量素子MDC1およびMOSダイオード容量素子MDC2のそれぞれの構成について説明する。図17(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC1は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR1Aと、一対の半導体領域NR1Aの間に形成された半導体領域NR1Bを有している。この半導体領域NR1Aと半導体領域NR1Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC1は、半導体領域NR1B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL1を有し、この容量絶縁膜CIL1上に電極EL1を有している。電極EL1は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
次に、図17(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR2Aと、一対の半導体領域NR2Aの間に形成された半導体領域NR2Bを有している。この半導体領域NR2Aと半導体領域NR2Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC2は、半導体領域NR2B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL2を有し、この容量絶縁膜CIL2上に電極EL2を有している。電極EL2は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL2の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
このように構成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2において、MOSダイオード容量素子MDC1の半導体領域NR1Aに端子Aが配線WAで電気的に接続され、MOSダイオード容量素子MDC2の半導体領域NR2Aに端子Bが配線WBで電気的に接続されている。そして、MOSダイオード容量素子MDC1の電極EL1と、MOSダイオード容量素子MDC2の電極EL2が配線ELWで電気的に接続されている。ここまでの構成で、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2は、図13に示す歪補償用容量回路CAPC1と同様の構成をしていることから、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2も上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することがわかる(図14参照)。
ここで、本実施の形態1の特徴は、電極EL1と電極EL2との間のノードCと、端子Aとの間に高抵抗素子DRが形成され、かつ、ノードCと端子Bの間にも高抵抗素子DRが形成されている点にある。このノードCと端子Aの間に形成されている高抵抗素子DRと、ノードCと端子Bの間に形成されている高抵抗素子DRは、同じ抵抗値を有している。したがって、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。つまり、本実施の形態1によれば、比較例で使用していた容量素子CTを使用しなくても、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができるのである。
さらに、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2によれば、ノードCと端子Aとを高抵抗素子DRで接続し、かつ、ノードCと端子Bとを高抵抗素子DRで接続することにより、ノードCがフローティング状態になることを回避できる。例えば、ノードCがフローティング状態になっていると、フローティング状態となっているノードCに電荷が蓄積し、ノードCの電圧(電位)が端子Aと端子Bとの間の中間値からずれる可能性がある。しかし、本実施の形態1によれば、ノードCは高抵抗素子DRを介して端子Aや端子Bに接続されているので、ノードCがフローティング状態になることを回避することができる。この結果、ノードCがフローティング状態となることに起因してノードCを中心とした歪補償用容量回路の電圧依存性の対称性が損なわれることを防止できる。したがって、本実施の形態1によれば、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を充分に確保することができ、これによって、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができる顕著な効果を得ることができるのである。
本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2は上記のように構成されており、その回路図は、図17(b)のようになる。図17(b)は、図17(a)の構造で示される歪補償用容量回路CAPC2の回路図を示す図である。図17(b)に示すように、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2は、端子Aと端子Bの間にMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆直列に接続されている。そして、MOSダイオード容量素子MDC1と並列に1つの高抵抗素子DRが接続され、かつ、MOSダイオード容量素子MDC2と並列にもう1つの高抵抗素子DRが接続されている。このとき、1つの高抵抗素子DRと、もう1つの高抵抗素子DRは同じ抵抗値を有している。したがって、端子Aと端子Bの間にあるノードCには、抵抗値の等しい2つの高抵抗素子DRで分圧された電圧が印加されるため、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになることがわかる。これにより、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2では、ノードCを中心とした対称性が確保されることにより、歪補償用容量回路CAPC2の容量値の電圧依存性は、対称性を有し、かつ、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することがわかる。
このように、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性は、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合に、ソース領域とドレイン領域の間に存在する寄生容量の電圧依存性(図9参照)と逆の依存性となっていることがわかる。このため、歪補償用容量回路CAPC2を構成するMOSダイオード容量素子MDC1、MDC2の下部電極となる半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度と、電極EL1および電極EL2の幅を調整して歪補償用容量回路CAPC2の容量値の電圧依存性を最適化することにより、歪補償用容量回路CAPC2に対して、MISFETQNの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みを打ち消す効果を持たせることができることがわかる。
<本実施の形態1における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
そこで、次に、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2をアンテナスイッチASWへ適用する例について説明する。本実施の形態1でも、3次高調波歪みを効果的に低減する観点から、図15に示すアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)(図15の斜線領域で示されている)に本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2を適用する。
図18は、RXスルートランジスタTH(RX)に、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2を付加した構成を示す回路図である。図18に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、MISFETQN1〜MISFETQN5のそれぞれには、歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。具体的に、MISFETQN1のドレイン領域D1とソース領域S1の間に歪補償用容量回路CAPC2が接続され、MISFETQN2のドレイン領域D2とソース領域S2の間に歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。さらに、MISFETQN3のドレイン領域D3とソース領域S3の間にも歪補償用容量回路CAPC2が接続され、MISFETQN4のドレイン領域D4とソース領域S4の間にも歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。また、MISFETQN5のドレイン領域D5とソース領域S5の間にも歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。
ここで、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2は、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する。つまり、本実施の形態1では、直列に複数個接続されたそれぞれのMISFETQN1〜QN5のソース領域とドレイン領域の間に、ソース領域の電位を基準としてドレイン領域に正電圧を印加する場合と、ソース領域の電位を基準としてドレイン領域に負電圧を印加する場合のいずれの状態においても、ソース領域の電位とドレイン電極の電位が同電位の状態よりも容量が減少する電圧依存性を持つ容量回路が接続されている。
MISFETQN1〜QN5のそれぞれと並列に接続されている歪補償用容量回路CAPC2のそれぞれは、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続した構成をしており、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間のノードCは、端子Aと端子Bの間に設けられた抵抗値の等しい2つの高抵抗素子DRで分圧されている。つまり、端子AとノードCとの間に1つの高抵抗素子DRが設けられており、端子BとノードCとの間にもう1つの高抵抗素子DRが設けられている。したがって、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。つまり、本実施の形態1によれば、比較例で使用していた容量素子CTを使用しなくても、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができるのである。
特に、MISFETQN1と並列に設けられている歪補償用容量回路CAPC2に着目すると、歪補償用容量回路CAPC2の端子AがMISFETQN1のドレイン領域D1と接続され、歪補償用容量回路CAPC2の端子BがMISFETQN1のソース領域S1と接続されている。ここで、歪補償用容量回路CAPC2のノードCの電圧(電位)は、抵抗値の等しい2つの高抵抗素子DRによって、端子Aと端子Bに印加されている電圧の中間値となる。そして、端子AはMISFETQN1のドレイン領域D1と接続され、端子BはMISFETQN1のソース領域S1と接続されていることから、歪補償用容量回路CAPC2のノードCの電圧は、ドレイン領域D1とソース領域S1に印加される電圧のほぼ中間値となるボディ領域の電圧とほぼ等しくなる。
なお、本実施の形態1では、歪補償用容量回路CAPC2の端子Aと端子Bが2つの高抵抗素子DRによって電気的に接続されている。そして、端子AはMISFETQN1のドレイン領域D1と接続され、かつ、端子BはMISFETQN1のソース領域S1と接続されていることから、結果的に、ドレイン領域D1とソース領域S1は、2つの高抵抗素子DRによって電気的に接続されていることになる。このため、MISFETQN1をオフしても、ドレイン領域D1とソース領域S1が2つの高抵抗素子DRを介して電気的に接続されていることから高周波信号がドレイン領域D1とソース領域S1との間を流れてしまうのではないかと考えられる。しかし、高抵抗素子DRの抵抗値は非常に高くなっており、高抵抗素子DRによって高周波信号を充分に減衰させることができるのである。つまり、高抵抗素子DRの抵抗値を高周波信号の伝達を遮断するのに充分な高抵抗値とすることにより、ドレイン領域D1とソース領域S1の間を高周波信号が流れることはないのである。すなわち、本実施の形態1において、歪補償用容量回路CAPC2に設けられている高抵抗素子DRは、歪補償用容量回路CAPC2のノードCを端子Aと端子Bの中間電位にすることにより、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を確保させる重要な機能を有しているとともに、抵抗値を高くすることにより、高周波信号の伝達を遮断する機能も合わせ持っているのである。
<実施の形態1における歪補償用容量回路のレイアウト構成>
次に、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2のレイアウト構成について説明する。図19は、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2のレイアウト構成を示す図である。図19において、紙面のX方向(横方向)に電極EL1と電極EL2が並んで延在している。具体的には、1本の電極EL1と1本の電極EL2が対になっており、この対がY方向(縦方向)に複数個並ぶようにして、それぞれの対がX方向(横方向)に延在している。そして、電極EL1および電極EL2を囲むように配線ELWが配置されている。つまり、配線ELWは、電極EL1と電極EL2を電気的に接続するように引き回されている。さらに、電極EL1および電極EL2を囲む配線ELWの外側から配線ELWの内部に延在するように、端子Aと接続する配線WAと、端子Bと接続する配線WBが互いに櫛歯状に配置されている。そして、配線WAと配線ELWとは1つの高抵抗素子DRを介して接続され、かつ、配線WBと配線ELWとはもう1つの高抵抗素子DRを介して接続されている。なお、図19のX1−X1線での断面図が図17(a)に相当する。
<本実施の形態1におけるRXスルートランジスタのレイアウト構成>
続いて、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2を設けたRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成について説明する。図20は、本実施の形態1におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成を示す図である。
図20に示すように、X方向(横方向)に並ぶように配置されたドレイン配線DL1〜DL5およびソース配線SL1〜SL5がY方向(縦方向)にそれぞれ延在している。このとき、ドレイン配線DL2とソース配線SL1は共通化され、ドレイン配線DL3とソース配線SL2は共通化されている。同様に、ドレイン配線DL4とソース配線SL3は共通化され、ドレイン配線DL5とソース配線SL4は共通化されている。そして、ドレイン配線DL1〜DL5およびソース配線SL1〜SL5のそれぞれからは、X方向(横方向)に延在する分岐配線が延びている。
例えば、ドレイン配線DL1とソース配線SL1に着目すると、ドレイン配線DL1からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL1からX方向に延びる分岐配線とが櫛歯状に交互に配置されている。そして、ドレイン配線DL1からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL1からX方向に延びる分岐配線の間に挟まれるようにゲート電極G1がX方向に延びている。このX方向に延びるゲート電極G1は端部でY方向に延在する幹配線に接続され、このY方向に延在する幹配線はゲート抵抗GRと接続されている。一方、ドレイン配線DL1とソース配線SL1の間には歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。
同様に、ドレイン配線DL2とソース配線SL2に着目すると、ドレイン配線DL2からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL2からX方向に延びる分岐配線とが櫛歯状に交互に配置されている。そして、ドレイン配線DL2からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL2からX方向に延びる分岐配線の間に挟まれるようにゲート電極G2がX方向に延びている。このX方向に延びるゲート電極G2は端部でY方向に延在する幹配線に接続され、このY方向に延在する幹配線はゲート抵抗GRと接続されている。一方、ドレイン配線DL2とソース配線SL2の間には歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。
また、ドレイン配線DL3とソース配線SL3に着目すると、ドレイン配線DL3からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL3からX方向に延びる分岐配線とが櫛歯状に交互に配置されている。そして、ドレイン配線DL3からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL3からX方向に延びる分岐配線の間に挟まれるようにゲート電極G3がX方向に延びている。このX方向に延びるゲート電極G3は端部でY方向に延在する幹配線に接続され、このY方向に延在する幹配線はゲート抵抗GRと接続されている。一方、ドレイン配線DL3とソース配線SL3の間には歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。
さらに、ドレイン配線DL4とソース配線SL4に着目すると、ドレイン配線DL4からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL4からX方向に延びる分岐配線とが櫛歯状に交互に配置されている。そして、ドレイン配線DL4からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL4からX方向に延びる分岐配線の間に挟まれるようにゲート電極G4がX方向に延びている。このX方向に延びるゲート電極G4は端部でY方向に延在する幹配線に接続され、このY方向に延在する幹配線はゲート抵抗GRと接続されている。一方、ドレイン配線DL4とソース配線SL4の間には歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。
同様に、ドレイン配線DL5とソース配線SL5に着目すると、ドレイン配線DL5からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL5からX方向に延びる分岐配線とが櫛歯状に交互に配置されている。そして、ドレイン配線DL5からX方向に延びる分岐配線と、ソース配線SL5からX方向に延びる分岐配線の間に挟まれるようにゲート電極G5がX方向に延びている。このX方向に延びるゲート電極G5は端部でY方向に延在する幹配線に接続され、このY方向に延在する幹配線はゲート抵抗GRと接続されている。一方、ドレイン配線DL5とソース配線SL5の間には歪補償用容量回路CAPC2が接続されている。このようにして、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2を設けたRXスルートランジスタTH(RX)がレイアウト構成されている。
<本実施の形態1による効果>
本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2のように、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2を逆直列に接続した場合、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の電圧依存性により、歪補償用容量回路CAPC2の容量値は、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態1では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC2の容量値とその電圧依存性は、歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的には、図17に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/10になっている。
また、上述した歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みと、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを効果的に打ち消すには、歪補償用容量回路CAPC2における容量値の電圧依存性の対称性を確保する必要がある。このため、図16に示す比較例では、例えば、MISFETQN1のゲート電極G1と歪補償用容量回路CAPC1の中間ノードの間に容量素子CTを設けて、ゲート電極G1と中間ノードをAC的に短絡させることにより、歪補償用容量回路CAPC1における電圧依存性の対称性を確保していた。しかし、容量素子CTを設ける場合、その副作用として、容量素子CTによる占有面積の増大、製造工程の追加、および、容量素子CTとSOI基板間の寄生容量の増加による2次高調波歪みの増大といった問題が生ずる。
これに対し、本実施の形態1では、図18に示すように、ノードCと端子Aとの間に高抵抗素子DRを形成し、かつ、ノードCと端子Bの間に高抵抗素子DRを形成している。そして、ノードCと端子Aの間に形成されている高抵抗素子DRと、ノードCと端子Bの間に形成されている高抵抗素子DRは、同じ抵抗値を有しているので、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。つまり、本実施の形態1によれば、比較例で使用していた容量素子CTを使用しなくても、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができるのである。したがって、本実施の形態1によれば、図16に示す比較例で使用していた容量素子CTを使用する必要がなく、容量素子CTを使用することによって発生する副作用を回避することができる。
さらに、比較例では、歪補償用容量回路CAPC1の中間ノードがフローティング状態になることを防止するために、図16に示すように、中間ノードは抵抗素子R2を介してGND(グランド)に接続されている。この場合、容量素子CTとは別に抵抗素子R2を新たに設ける必要が生じるとともに、中間ノードをGND(グランド)に接続する新たな配線を設ける必要があり、アンテナスイッチASWの占有面積の増大を招くことになる。これに対し、図18に示す本実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2において、ノードCは高抵抗素子DRを介して端子Aや端子Bに接続されているので、ノードCがフローティング状態になることを回避することができる。この結果、ノードCがフローティング状態となることに起因してノードCを中心した歪補償用容量回路の電圧依存性の対称性が損なわれることを防止できるのである。つまり、本実施の形態1では、ノードCを端子Aと端子Bとの中間電位にして、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を確保するために、2つの高抵抗素子DRが設けられているが、この高抵抗素子DRでノードCは端子Aと端子Bに電気的に接続される結果、高抵抗素子DRを設けることによって、ノードCがフローティング状態になるということも同時に回避することができるのである。
本実施の形態1におけるアンテナスイッチASWによれば、歪補償用容量回路CAPC2を設けないアンテナスイッチASWと比較して、2次高調波歪み、損失、アイソレーションといった3次高調波歪み以外の特性にはほとんど影響を与えることなく、3次高調波歪みを約10dB低減することができる。
また、本実施の形態1によれば、図16に示す比較例で必要であった容量素子CTが不要となるので、比較例におけるアンテナスイッチASWに比べて、2次高調波歪みを約3dB低減することができ、さらに、アンテナスイッチASWの占有面積および製造工程数を低減できる効果も得られる。
以上のことから、本実施の形態1におけるアンテナスイッチASWを形成した半導体チップでは、製造コストやチップ寸法をほとんど増加させることなく、3次高調波歪みを約10dBも低減できる顕著な効果を得ることができる。
(実施の形態2)
<本実施の形態2における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
前記実施の形態1では、RXスルートランジスタTH(RX)を構成する複数のMISFETQN1〜QN5のそれぞれのソース領域とドレイン領域の間に歪補償用容量回路CAPC2を設ける例について説明したが、本実施の形態2では、RXスルートランジスタTH(RX)が設けられているアンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に複数の歪補償用容量回路CAPC2を直列接続する構成について説明する。
図21は、本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2を設けたRXスルートランジスタTH(RX)の回路構成を示す回路図である。図21に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、本実施の形態2では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に複数の歪補償用容量回路CAPC2が直列接続されている。具体的に、本実施の形態2では、図21に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に4つの歪補償用容量回路CAPC2が直列に接続されている。つまり、本実施の形態2では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に5つのMISFETQN1〜QN5が直列に接続されているとともに、この5つのMISFETQN1〜QN5と並列に4つの直列接続された歪補償用容量回路CAPC2が設けられている。
ここで、本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2は、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する。本実施の形態2では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に、アンテナ端子ANT(OUT)の電位を基準として受信端子RXに正電圧を印加する場合と、アンテナ端子ANT(OUT)の電位を基準として受信端子RXに負電圧を印加する場合のいずれの状態においても、アンテナ端子ANT(OUT)の電位と受信端子RXの電位が同電位の状態よりも容量が減少する電圧依存性を持つ容量回路が接続されている。
<本実施の形態2におけるRXスルートランジスタのレイアウト構成>
次に、図22は、本実施の形態2におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成を示す図である。本実施の形態2におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成は、図20に示す前記実施の形態1におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成とほぼ同様である。異なる点は、本実施の形態2において、ドレイン配線DL1とソース配線SL5の間に4つの歪補償用容量回路CAPC2が直列に設けられている点である。
<本実施の形態2による効果>
本実施の形態2におけるアンテナスイッチASWは上記のように構成されており、本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2の容量値は、前記実施の形態1と同様に、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態2では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC2の容量値とその電圧依存性は、歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的には、図17に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/10になっている。
また、本実施の形態2では、図21に示すように、ノードCと端子Aとの間に高抵抗素子DRを形成し、かつ、ノードCと端子Bの間に高抵抗素子DRを形成している。そして、ノードCと端子Aの間に形成されている高抵抗素子DRと、ノードCと端子Bの間に形成されている高抵抗素子DRは、同じ抵抗値を有しているので、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。つまり、本実施の形態1によれば、歪補償用容量回路CAPC2の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができる。
さらに、図21に示す本実施の形態2における歪補償用容量回路CAPC2において、ノードCは高抵抗素子DRを介してアンテナ端子ANT(OUT)や受信端子RXに接続されているので、ノードCがフローティング状態になることを回避することができる。この結果、ノードCがフローティング状態となることに起因してノードCを中心した歪補償用容量回路の電圧依存性の対称性が損なわれることを防止できる。
本実施の形態2に特有の効果としては、例えば、以下に示すような効果が考えられる。すなわち、本実施の形態2では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に複数の歪補償用容量回路CAPC2を接続するように構成している。このため、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に設けられるMISFETQN1〜QN5の直列接続段数とは独立に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に挿入する歪補償用容量回路CAPC2の直列接続段数を設定することができる。この結果、歪補償用容量回路CAPC2を付加したアンテナスイッチASWの設計自由度が増加し、歪補償用容量回路CAPC2による歪補償の精度を向上させることができる。
本実施の形態2の最後に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に歪補償用容量回路CAPC2を設ける利点について説明する。例えば、図15に示すアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)がオフしている場合、RXシャントトランジスタSH(RX)はオンされるので、受信端子RXは接地電位になる。このため、本実施の形態2では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に歪補償用容量回路CAPC2を設けているが、実質的に、受信端子RXは接地電位となることから、アンテナ端子ANT(OUT)とGND端子との間に歪補償用容量回路CAPC2を設けても同様の効果が得られると考えられる。
続いて、RXスルートランジスタTH(RX)がオンしている場合を考える。この場合、RXスルートランジスタTH(RX)はオンしていることから、RXスルートランジスタTH(RX)は、オフ容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みの主要な発生源ではなくなる。つまり、RXスルートランジスタTH(RX)がオンしている場合、RXスルートランジスタTH(RX)からの3次高調波歪みの発生が小さくなるため、歪補償用容量回路CAPC2から発生する逆位相の3次高調波歪みを小さくすることが望ましい。
ここで、RXシャントトランジスタSH(RX)はオフしているので、もはや受信端子RXは接地電位とはならない。すなわち、RXスルートランジスタTH(RX)がオンしている場合、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXは導通するため、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間の電圧差は小さくなる。したがって、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に歪補償用容量回路CAPC2が接続されている場合、この歪補償用容量回路CAPC2に印加される電圧は小さくなる。この結果、歪補償用容量回路CAPC2から発生する逆位相の3次高調波歪みも小さくなる。このことから、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に歪補償用容量回路CAPC2が接続されていると、RXスルートランジスタTH(RX)がオフして3次高調波歪みの主要な発生源となっている場合、歪補償用容量回路CAPC2は、これを補償するように大きな逆位相の3次高調波歪みを発生させる。一方、RXスルートランジスタTH(RX)がオンして3次高調波歪みの主要な発生源とならない場合、歪補償用容量回路CAPC2からも逆位相の3次高調波歪みの発生が少なくなる。この結果、歪補償用容量回路CAPC2の過補償が抑制される利点があるのである。
これに対し、アンテナ端子ANT(OUT)とGND端子の間に歪補償用容量回路CAPC2が接続されている場合を考える。受信信号を受信する場合、アンテナ端子ANT(OUT)とGND端子とは導通されていないため、アンテナ端子ANT(OUT)とGND端子との間の電圧は、RXスルートランジスタTH(RX)がオンしている場合のアンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間の電圧よりも高くなる。このため、アンテナ端子ANT(OUT)とGND端子との間に歪補償用容量回路CAPC2を接続すると、RXスルートランジスタTH(RX)がオンして3次高調波歪みの主要な発生源とならない場合でも、歪補償用容量回路CAPC2からも逆位相の3次高調波歪みの発生が多くなる。この結果、歪補償用容量回路CAPC2の過補償により、3次高調波歪みの発生が大きくなってしまうのである。
以上のことから、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に歪補償用容量回路CAPC2を設ける構成のほうが、アンテナ端子ANT(OUT)とGND端子との間に歪補償用容量回路CAPC2を設ける構成よりも、どのような状況下においても3次高調波歪みを低減できる観点から望ましいといえることがわかる。
(実施の形態3)
前記実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2では、MOSダイオード容量素子MDC1の電極EL1と、MOSダイオード容量素子MDC2の電極EL2とを電気的に接続するようにして、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続していた。これに対し、本実施の形態3では、MOSダイオード容量素子MDC1の半導体領域NR1Bと、MOSダイオード容量素子MDC2の半導体領域NR2Bとを電気的に接続するようにして、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続する歪補償用容量回路について説明する。
<本実施の形態3における歪補償用容量回路>
図23(a)は、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3の構成を示す図である。図23(a)に示すように、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3は、半導体基板1Sと、半導体基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層からなるSOI基板上に形成されている。そして、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3は、SOI基板に形成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2を有している。
具体的に、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3を構成するMOSダイオード容量素子MDC1およびMOSダイオード容量素子MDC2のそれぞれの構成について説明する。図23(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC1は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR1Aと、一対の半導体領域NR1Aの間に形成された半導体領域NR1Bを有している。この半導体領域NR1Aと半導体領域NR1Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC1は、半導体領域NR1B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL1を有し、この容量絶縁膜CIL1上に電極EL1を有している。電極EL1は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
次に、図23(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR2Aと、一対の半導体領域NR2Aの間に形成された半導体領域NR2Bを有している。この半導体領域NR2Aと半導体領域NR2Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC2は、半導体領域NR2B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL2を有し、この容量絶縁膜CIL2上に電極EL2を有している。電極EL2は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL2の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
このように構成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2において、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間に挟まれた半導体領域NR1Aは半導体領域NR2Aにもなっている。すなわち、本実施の形態3では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間に挟まれている半導体領域(NR1A、NR2A)が共通化されている。したがって、一対の半導体領域NR1A、半導体領域NR1B、一対の半導体領域NR2A、および、半導体領域NR2Bは一体化されて互いに電気的に接続されていることになる。
そして、MOSダイオード容量素子MDC1の電極EL1は配線WAで端子Aと電気的に接続され、MOSダイオード容量素子MDC2の電極EL2は配線WBで端子Bと電気的に接続されている。また、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2に挟まれた半導体領域NR1A(半導体領域NR2A)は、配線NRWでノードCと接続されている。
ここで、本実施の形態3の特徴は、ノードCと端子Aとの間に高抵抗素子DRが形成され、かつ、ノードCと端子Bの間にも高抵抗素子DRが形成されている点にある。このノードCと端子Aの間に形成されている高抵抗素子DRと、ノードCと端子Bの間に形成されている高抵抗素子DRは、同じ抵抗値を有している。したがって、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。
本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3は上記のように構成されており、その回路図は、図23(b)のようになる。図23(b)は、図23(a)の構造で示される歪補償用容量回路CAPC3の回路図を示す図である。図23(b)に示すように、本実施の形態3における歪補償用回路CAPC3は、端子Aと端子Bの間にMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆直列に接続されている。そして、MOSダイオード容量素子MDC1と並列に1つの高抵抗素子DRが接続され、かつ、MOSダイオード容量素子MDC2と並列にもう1つの高抵抗素子DRが接続されている。このとき、1つの高抵抗素子DRと、もう1つの高抵抗素子DRは同じ抵抗値を有している。したがって、端子Aと端子Bの間にあるノードCには、抵抗値の等しい2つの高抵抗素子DRで分圧された電圧が印加されるため、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。
続いて、上述した構成を有する歪補償用容量回路CAPC3における容量値の電圧依存性について、図23(a)を参照しながら説明する。まず、図23(a)において、端子Aと端子Bの間に0Vの電圧が印加される場合を考える。例えば、端子Aに0Vが印加され、端子Bに0Vが印加されるとする。この場合、ノードCには端子Aと端子Bの中間値の電圧が印加されることから、ノードCの電圧も0Vとなる。このため、ノードCと電気的に接続されている半導体領域NR1Bおよび半導体領域NR2Bにも0Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1においては、上部電極である電極EL1に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR1Bにも0Vが印加されることから、半導体領域NR1B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は大きくなる。同様に、MOSダイオード容量素子MDC2においても、上部電極である電極EL2に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR2Bにも0Vが印加されることから、半導体領域NR2B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は大きくなり、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値と同じになる。このとき、歪補償用容量回路CAPC3の容量値は、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値との直列和になる。
次に、図23(a)において、端子Aと端子Bの間に正電圧(例えば、+2V)の電圧が印加される場合を考える。例えば、端子Aに0Vが印加され、端子Bに+2Vが印加されるとする。この場合、ノードCには端子Aと端子Bの中間値の電圧が印加されることから、ノードCの電圧は+1Vとなる。このため、ノードCと電気的に接続されている半導体領域NR1Bおよび半導体領域NR2Bにも+1Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1においては、上部電極である電極EL1に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR1Bにも+1Vが印加されることから、半導体領域NR1B内に空乏層が広がり、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は小さくなる。一方、MOSダイオード容量素子MDC2においては、上部電極である電極EL2に+2Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR2Bには+1Vが印加されることから、半導体領域NR2B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合の容量値から変化しない。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値との直列和である歪補償用容量回路CAPC3の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合よりも小さくなる。
さらに、図23(a)において、端子Aと端子Bの間に負電圧(例えば、−2V)の電圧が印加される場合を考える。例えば、端子Aに+2Vが印加され、端子Bに0Vが印加されるとする。この場合、ノードCには端子Aと端子Bの中間値の電圧が印加されることから、ノードCの電圧は+1Vとなる。このため、ノードCと電気的に接続されている半導体領域NR1Bおよび半導体領域NR2Bにも+1Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1においては、上部電極である電極EL1に+2Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR1Bにも+1Vが印加されることから、半導体領域NR1B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合の容量値と同じになる。一方、MOSダイオード容量素子MDC2においては、上部電極である電極EL2に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR2Bには+1Vが印加されることから、半導体領域NR2B内に空乏層が広がり、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合の容量値よりも小さくなり、端子Aと端子Bの間に正電圧(+2V)が印加される場合のMOSダイオード容量素子MDC1の容量値と同じになる。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値との直列和である歪補償用容量回路CAPC3の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合よりも小さくなり、かつ、端子Aと端子Bの間に正電圧(+2V)を印加した場合と同じになる。
以上のことから、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3において、ノードCを中心とした対称性が確保されることにより、歪補償用容量回路CAPC3の容量値の電圧依存性は、対称性を有し、かつ、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することがわかる。
このように、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3の電圧依存性は、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合に、ソース領域とドレイン領域の間に存在する寄生容量の電圧依存性(図9参照)と逆の依存性となっていることがわかる。このため、歪補償用容量回路CAPC3を構成するMOSダイオード容量素子MDC1、MDC2の下部電極となる半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度と、電極EL1および電極EL2の幅を調整して歪補償用容量回路CAPC3の容量値の電圧依存性を最適化することにより、歪補償用容量回路CAPC3に対して、MISFETQNの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みを打ち消す効果を持たせることができることがわかる。
<本実施の形態3における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
次に、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3をアンテナスイッチASWへ適用する例について説明する。本実施の形態3でも、3次高調波歪みを効果的に低減する観点から、図15に示すアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)(図15の斜線領域で示されている)に本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3を適用する。
図24は、RXスルートランジスタTH(RX)に、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3を付加した構成を示す回路図である。図24に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、MISFETQN1〜MISFETQN5のそれぞれには、歪補償用容量回路CAPC3が接続されている。具体的に、MISFETQN1のドレイン領域D1とソース領域S1の間に歪補償用容量回路CAPC3が接続され、MISFETQN2のドレイン領域D2とソース領域S2の間に歪補償用容量回路CAPC3が接続されている。さらに、MISFETQN3のドレイン領域D3とソース領域S3の間にも歪補償用容量回路CAPC3が接続され、MISFETQN4のドレイン領域D4とソース領域S4の間にも歪補償用容量回路CAPC3が接続されている。また、MISFETQN5のドレイン領域D5とソース領域S5の間にも歪補償用容量回路CAPC3が接続されている。
ここで、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3は、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する。つまり、本実施の形態3では、直列に複数個接続されたそれぞれのMISFETQN1〜QN5のソース領域とドレイン領域の間に、ソース領域の電位を基準としてドレイン領域に正電圧を印加する場合と、ソース領域の電位を基準としてドレイン領域に負電圧を印加する場合のいずれの状態においても、ソース領域の電位とドレイン電極の電位が同電位の状態よりも容量が減少する電圧依存性を持つ容量回路が接続されている。
MISFETQN1〜QN5のそれぞれと並列に接続されている歪補償用容量回路CAPC3のそれぞれは、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続した構成をしており、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間のノードCは、端子Aと端子Bの間に設けられた抵抗値の等しい2つの高抵抗素子DRで分圧されている。つまり、端子AとノードCとの間に1つの高抵抗素子DRが設けられており、端子BとノードCとの間にもう1つの高抵抗素子DRが設けられている。したがって、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。つまり、本実施の形態3によれば、歪補償用容量回路CAPC3の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができるのである。
<実施の形態3における歪補償用容量回路のレイアウト構成>
続いて、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3のレイアウト構成について説明する。図25は、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3のレイアウト構成を示す図である。図25において、紙面のX方向(横方向)に電極EL1と電極EL2が並んで延在している。具体的には、1本の電極EL1と1本の電極EL2が対になっており、この対がY方向(縦方向)に複数個並ぶようにして、それぞれの対がX方向(横方向)に延在している。そして、複数の電極EL1は、配線WAによって束ねられて端子Aと接続されている。同様に、複数の電極EL2は、配線WBによって束ねられて端子Bと接続されている。さらに、電極EL1と電極EL2とに挟まれるように配線NRWがX方向に延在するように配置されており、端部で束ねられている。そして、配線NRWと配線WAとは、1つの高抵抗素子DRを介して接続されており、配線NRWと配線WBとは、もう1つの高抵抗素子DRを介して接続されている。なお、図25のX1−X1線での断面図が図23(a)に相当する。
また、本実施の形態3におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成は、図20に示す前記実施の形態1におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成とほぼ同様である。異なる点は、歪補償用容量回路CAPC2に代えて歪補償用容量回路CAPC3を使用している点である。
<本実施の形態3による効果>
本実施の形態3におけるアンテナスイッチASWは上記のように構成されており、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3の容量値は、前記実施の形態1と同様に、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態3では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC3の容量値とその電圧依存性は、歪補償用容量回路CAPC3から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的には、図23(a)に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/10になっている。
また、本実施の形態3では、図23に示すように、ノードCと端子Aとの間に高抵抗素子DRを形成し、かつ、ノードCと端子Bの間に高抵抗素子DRを形成している。そして、ノードCと端子Aの間に形成されている高抵抗素子DRと、ノードCと端子Bの間に形成されている高抵抗素子DRは、同じ抵抗値を有しているので、ノードCには、端子Aと端子Bの間に印加される電圧の中間値の電圧が印加されることになる。このことから、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3においては、ノードCを中心にしてMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2にそれぞれ印加される電圧を等しくすることができる。つまり、本実施の形態3によれば、歪補償用容量回路CAPC3の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができる。
さらに、図23に示す本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3において、ノードCは高抵抗素子DRを介して端子Aや端子Bに接続されているので、ノードCがフローティング状態になることを回避することができる。この結果、ノードCがフローティング状態となることに起因してノードCを中心とした歪補償用容量回路の電圧依存性の対称性が損なわれることを防止できる。
本実施の形態3に特有の効果としては、例えば、以下に示すような効果が考えられる。すなわち、本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3では、図23に示すように、MOSダイオード容量素子MDC1の半導体領域NR1Bと、MOSダイオード容量素子MDC2の半導体領域NR2Bとを電気的に接続している。このことから、図17に示す前記実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2のように、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを素子分離領域STIで分離する必要がない。このように本実施の形態3における歪補償用容量回路CAPC3では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを分離する素子分離領域を形成する必要がないので、歪補償用容量回路CAPC3の占有面積を小さくすることができるのである。
(実施の形態4)
前記実施の形態1では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続する歪補償用容量回路CAPC2について説明したが、本実施の形態4では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆並列に接続する歪補償用容量回路について説明する。
<本実施の形態4における歪補償用容量回路>
図26(a)は、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4の構成を示す図である。図26(a)に示すように、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4は、半導体基板1Sと、半導体基板1S上に形成された埋め込み絶縁層BOXと、埋め込み絶縁層BOX上に形成されたシリコン層からなるSOI基板上に形成されている。そして、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4は、SOI基板に形成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2を有している。このMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層に形成された素子分離領域STIによって分離されている。
具体的に、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4を構成するMOSダイオード容量素子MDC1およびMOSダイオード容量素子MDC2のそれぞれの構成について説明する。図26(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC1は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR1Aと、一対の半導体領域NR1Aの間に形成された半導体領域NR1Bを有している。この半導体領域NR1Aと半導体領域NR1Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC1は、半導体領域NR1B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL1を有し、この容量絶縁膜CIL1上に電極EL1を有している。電極EL1は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL1の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
次に、図26(a)に示すように、MOSダイオード容量素子MDC2は、SOI基板のシリコン層内に離間して形成された一対の半導体領域NR2Aと、一対の半導体領域NR2Aの間に形成された半導体領域NR2Bを有している。この半導体領域NR2Aと半導体領域NR2Bは同じ導電型不純物が導入された半導体領域であり、例えば、リンなどのn型不純物が導入されたn型半導体領域から形成されている。
そして、MOSダイオード容量素子MDC2は、半導体領域NR2B上に、例えば、酸化シリコン膜からなる容量絶縁膜CIL2を有し、この容量絶縁膜CIL2上に電極EL2を有している。電極EL2は、例えば、リンなどのn型不純物を導入したポリシリコン膜から形成されている。この電極EL2の両側の側壁にはサイドウォールSWが形成されている。
このように構成されたMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2において、MOSダイオード容量素子MDC1の電極EL1は配線WBで端子Bと電気的に接続され、MOSダイオード容量素子MDC2の電極EL2は配線WAで端子Aと電気的に接続されている。
なお、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の逆並列接続であるため、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆直列に接続した前記実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2のように、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2の間に中間ノードは存在しない。したがって、前記実施の形態1のように中間ノードを中心として電圧依存性の対称性を確保する必要はなく、そのため、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4では、高抵抗素子DRを使用していない。
本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4は上記のように構成されており、その回路図は、図26(b)のようになる。図26(b)は、図26(a)の構造で示される歪補償用容量回路CAPC4の回路図を示す図である。図26(b)に示すように、本実施の形態4における歪補償用回路CAPC4は、端子Aと端子Bの間にMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆並列に接続されている。
以下に、上述した構成を有する歪補償用容量回路CAPC4における容量値の電圧依存性について、図26(a)を参照しながら説明する。まず、図26(a)において、端子Aと端子Bの間に0Vの電圧が印加される場合を考える。例えば、端子Aに0Vが印加され、端子Bに0Vが印加されるとする。この場合、端子Aと電気的に接続されている半導体領域NR1B、および、端子Bと電気的に接続されている半導体領域NR2Bにも0Vが印加される。そして、端子Aと接続されている電極EL2にも0Vが印加され、端子Bと接続されている電極EL1にも0Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1においては、上部電極である電極EL1に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR1Bにも0Vが印加されることから、半導体領域NR1B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は大きくなる。同様に、MOSダイオード容量素子MDC2においても、上部電極である電極EL2に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR2Bにも0Vが印加されることから、半導体領域NR2B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は大きくなり、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値と同じになる。このとき、歪補償用容量回路CAPC4の容量値は、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値との並列和になる。
次に、図26(a)において、端子Aと端子Bの間に正電圧(例えば、+2V)の電圧が印加される場合を考える。例えば、端子Aに0Vが印加され、端子Bに+2Vが印加されるとする。この場合、端子Aと電気的に接続されている半導体領域NR1B、および、端子Aと電気的に接続されている電極EL2にも0Vが印加される。そして、端子Bと接続されている半導体領域NR2Bには+2Vが印加され、端子Bと接続されている電極EL1にも+2Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1においては、上部電極である電極EL1に+2Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR1Bに0Vが印加されることから、半導体領域NR1B内に空乏層は広がらず、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合の容量値から変化しない。一方、MOSダイオード容量素子MDC2においては、上部電極である電極EL2に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR2Bに+2Vが印加されることから、半導体領域NR2B内に空乏層が広がり、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は小さくなる。このとき、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値との並列和である歪補償用容量回路CAPC4の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合よりも小さくなる。
さらに、図26(a)において、端子Aと端子Bの間に負電圧(例えば、−2V)の電圧が印加される場合を考える。例えば、端子Aに+2Vが印加され、端子Bに0Vが印加されるとする。この場合、端子Aと電気的に接続されている半導体領域NR1B、および、端子Aと電気的に接続されている電極EL2にも+2Vが印加される。そして、端子Bと接続されている半導体領域NR2Bには0Vが印加され、端子Bと接続されている電極EL1にも0Vが印加される。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1においては、上部電極である電極EL1に0Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR1Bに+2Vが印加されることから、半導体領域NR1B内に空乏層が広がり、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合の容量値よりも小さくなり、端子Aと端子Bの間に正電圧(+2V)が印加される場合のMOSダイオード容量素子MDC2の容量値と同じになる。一方、MOSダイオード容量素子MDC2においては、上部電極である電極EL2に+2Vが印加されるとともに、下部電極である半導体領域NR2Bに0Vが印加されることから、半導体領域NR2B内に空乏層が広がらず、MOSダイオード容量素子MDC2の容量値は端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合の容量値と同じになる。したがって、MOSダイオード容量素子MDC1の容量値とMOSダイオード容量素子MDC2の容量値との並列和である歪補償用容量回路CAPC4の容量値は、端子Aと端子Bの間に0Vが印加される場合よりも小さくなり、かつ、端子Aと端子Bの間に正電圧(+2V)を印加した場合と同じになる。
以上のことから、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4において、歪補償用容量回路CAPC4の容量値の電圧依存性は、対称性を有し、かつ、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することがわかる。
このように、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4の電圧依存性は、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合に、ソース領域とドレイン領域の間に存在する寄生容量の電圧依存性(図9参照)と逆の依存性となっていることがわかる。このため、歪補償用容量回路CAPC4を構成するMOSダイオード容量素子MDC1、MDC2の下部電極となる半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度と、電極EL1および電極EL2の幅を調整して歪補償用容量回路CAPC4の容量値の電圧依存性を最適化することにより、歪補償用容量回路CAPC4に対して、MISFETQNの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みを打ち消す効果を持たせることができることがわかる。
<本実施の形態4における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
次に、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4をアンテナスイッチASWへ適用する例について説明する。本実施の形態4でも、3次高調波歪みを効果的に低減する観点から、図15に示すアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)(図15の斜線領域で示されている)に本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4を適用する。
図27は、RXスルートランジスタTH(RX)に、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4を付加した構成を示す回路図である。図27に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、MISFETQN1〜MISFETQN5のそれぞれには、歪補償用容量回路CAPC4が接続されている。具体的に、MISFETQN1のドレイン領域D1とソース領域S1の間に歪補償用容量回路CAPC4が接続され、MISFETQN2のドレイン領域D2とソース領域S2の間に歪補償用容量回路CAPC4が接続されている。さらに、MISFETQN3のドレイン領域D3とソース領域S3の間にも歪補償用容量回路CAPC4が接続され、MISFETQN4のドレイン領域D4とソース領域S4の間にも歪補償用容量回路CAPC4が接続されている。また、MISFETQN5のドレイン領域D5とソース領域S5の間にも歪補償用容量回路CAPC4が接続されている。
ここで、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4は、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する。つまり、本実施の形態4では、直列に複数個接続されたそれぞれのMISFETQN1〜QN5のソース領域とドレイン領域の間に、ソース領域の電位を基準としてドレイン領域に正電圧を印加する場合と、ソース領域の電位を基準としてドレイン領域に負電圧を印加する場合のいずれの状態においても、ソース領域の電位とドレイン電極の電位が同電位の状態よりも容量が減少する電圧依存性を持つ容量回路が接続されている。
MISFETQN1〜QN5のそれぞれと並列に接続されている歪補償用容量回路CAPC4のそれぞれは、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆並列に接続した構成をしている。このことから、本実施の形態4によれば、歪補償用容量回路CAPC4の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができる。
<実施の形態4における歪補償用容量回路のレイアウト構成>
続いて、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4のレイアウト構成について説明する。図28は、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4のレイアウト構成を示す図である。図28において、紙面のX方向(横方向)に電極EL1と電極EL2が並んで延在している。具体的には、1本の電極EL1と1本の電極EL2が対になっており、この対がY方向(縦方向)に複数個並ぶようにして、それぞれの対がX方向(横方向)に延在している。そして、複数の電極EL1は、配線WBによって束ねられて端子Bと接続されている。同様に、複数の電極EL2は、配線WAによって束ねられて端子Aと接続されている。配線WAからは分岐配線がX方向に延びており、同様に、配線WBからも分岐配線がX方向に延びている。そして、配線WAから分岐した分岐配線と、配線WBから分岐した分岐配線は櫛歯状に配置され、配線WAから分岐した分岐配線と配線WBから分岐した分岐配線との間に、電極EL1および電極EL2が配置されている。なお、図28のX1−X1線での断面図が図26(a)に相当する。
また、本実施の形態4におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成は、図20に示す前記実施の形態1におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成とほぼ同様である。異なる点は、歪補償用容量回路CAPC2に代えて歪補償用容量回路CAPC4を使用している点である。
<本実施の形態4による効果>
本実施の形態4におけるアンテナスイッチASWは上記のように構成されており、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4の容量値は、前記実施の形態1と同様に、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態4では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC4の容量値とその電圧依存性は、歪補償用容量回路CAPC4から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的には、図26(a)に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/20になっている。
本実施の形態4に特有の効果としては、例えば、以下に示すような効果が考えられる。すなわち、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆並列に接続されている。このため、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆直列に接続されている前記実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2と比較して、MOSダイオード容量素子MDC1およびMOSダイオード容量素子MDC2のそれぞれに印加される高周波電圧が大きくなる。この結果、本実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4によれば、前記実施の形態1における歪補償用容量回路CAPC2に比べて、電圧依存性を大きくすることができるので、容量値自体を小さくしても所望の電圧変化を得ることができる。このことから、本実施の形態4では、MOSダイオード容量素子MDC1およびMOSダイオード容量素子MDC2のサイズを縮小することができ、これによって、歪補償用容量回路CAPC4のサイズを縮小化することができる。
(実施の形態5)
前記実施の形態4では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆並列に接続する歪補償用容量回路CAPC4について説明したが、本実施の形態5では、MOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2とを逆並列に接続するとともに、さらに、高抵抗素子も並列に接続する歪補償用容量回路について説明する。
<本実施の形態5における歪補償用容量回路>
図29(a)は、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5の構成を示す図である。図29(a)に示す本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5は、図26(a)に示す前記実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4とほぼ同様の構成をしている。異なる点は、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5において、端子Aと端子Bの間に、さらに、1つの高抵抗素子DRが接続されている点である。
本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5は上記のように構成されており、その回路図は、図29(b)のようになる。図29(b)は、図29(a)の構造で示される歪補償用容量回路CAPC5の回路図を示す図である。図29(b)に示すように、本実施の形態5における歪補償用回路CAPC5は、端子Aと端子Bの間にMOSダイオード容量素子MDC1とMOSダイオード容量素子MDC2が逆並列に接続されているとともに、端子Aと端子Bの間に高抵抗素子DRが接続されている。
本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5は、前記実施の形態4における歪補償用容量回路CAPC4とほぼ同様の構成をしていることから、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5の容量値の電圧依存性も、対称性を有し、かつ、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有していることがわかる。
このように、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5の電圧依存性も、高周波電圧(AC電圧)を印加した場合に、ソース領域とドレイン領域の間に存在する寄生容量の電圧依存性(図9参照)と逆の依存性となっていることがわかる。このため、歪補償用容量回路CAPC5を構成するMOSダイオード容量素子MDC1、MDC2の下部電極となる半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度と、電極EL1および電極EL2の幅を調整して歪補償用容量回路CAPC5の容量値の電圧依存性を最適化することにより、歪補償用容量回路CAPC5に対して、MISFETQNの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みを打ち消す効果を持たせることができることがわかる。
<本実施の形態5における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
次に、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5をアンテナスイッチASWへ適用する例について説明する。本実施の形態5でも、3次高調波歪みを効果的に低減する観点から、図15に示すアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)(図15の斜線領域で示されている)に本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5を適用する。
図30は、RXスルートランジスタTH(RX)に、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5を付加した構成を示す回路図である。図30に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、本実施の形態5では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に複数の歪補償用容量回路CAPC5が直列接続されている。具体的に、本実施の形態5では、図30に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に7つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続されている。つまり、本実施の形態5では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に5つのMISFETQN1〜QN5が直列に接続されているとともに、この5つのMISFETQN1〜QN5と並列に7つの直列接続された歪補償用容量回路CAPC5が設けられている。
ここで、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5は、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有する。本実施の形態5では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に、アンテナ端子ANT(OUT)の電位を基準として受信端子RXに正電圧を印加する場合と、アンテナ端子ANT(OUT)の電位を基準として受信端子RXに負電圧を印加する場合のいずれの状態においても、アンテナ端子ANT(OUT)の電位と受信端子RXの電位が同電位の状態よりも容量が減少する電圧依存性を持つ容量回路が接続されている。このことから、本実施の形態5によれば、歪補償用容量回路CAPC5の電圧依存性の対称性を確保して、歪補償用容量回路の歪補償機能を有効に作用させることができる。
さらに、図30に示す本実施の形態5の歪補償用容量回路CAPC5においては、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間に複数の歪補償用容量回路CAPC5が直列接続されている。このとき、本実施の形態5では、それぞれの歪補償用容量回路CAPC5に高抵抗素子DRが接続されている。このため、各歪補償用容量回路CAPC5間にある中間ノードがフローティング状態になることを回避することができる。つまり、本実施の形態5では、各歪補償用容量回路CAPC5間になる中間ノードへの電荷の蓄積を防止することができ、電荷の蓄積に起因して、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に挿入されている複数の歪補償用容量回路CAPC5全体における電圧依存性の対称性が損なわれることを防止できる。
<実施の形態5における歪補償用容量回路のレイアウト構成>
続いて、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5のレイアウト構成について説明する。図31は、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5のレイアウト構成を示す図である。図31において、紙面のX方向(横方向)に電極EL1と電極EL2が並んで延在している。具体的には、1本の電極EL1と1本の電極EL2が対になっており、この対がY方向(縦方向)に複数個並ぶようにして、それぞれの対がX方向(横方向)に延在している。そして、複数の電極EL1は、配線WBによって束ねられて端子Bと接続されている。同様に、複数の電極EL2は、配線WAによって束ねられて端子Aと接続されている。配線WAからは分岐配線がX方向に延びており、同様に、配線WBからも分岐配線がX方向に延びている。そして、配線WAから分岐した分岐配線と、配線WBから分岐した分岐配線は櫛歯状に配置され、配線WAから分岐した分岐配線と配線WBから分岐した分岐配線との間に、電極EL1および電極EL2が配置されている。なお、図31のX1−X1線での断面図が図29(a)に相当する。
また、図32は、本実施の形態5におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成を示す図である。図32に示すように、本実施の形態5におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成は、図20に示す前記実施の形態1におけるRXスルートランジスタTH(RX)のレイアウト構成とほぼ同様である。異なる点は、本実施の形態5において、ドレイン配線DL1とソース配線SL5の間に7つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に設けられている点である。
<本実施の形態5による効果>
本実施の形態5におけるアンテナスイッチASWは上記のように構成されており、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5の容量値は、前記実施の形態1と同様に、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態5における歪補償用容量回路CAPC5から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態5では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC5の容量値とその電圧依存性は、歪補償用容量回路CAPC5から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的には、図29(a)に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/20になっている。
本実施の形態5に特有の効果としては、例えば、以下に示すような効果が考えられる。すなわち、本実施の形態5では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に複数の歪補償用容量回路CAPC5を接続するように構成している。このため、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に設けられるMISFETQN1〜QN5の直列接続段数とは独立に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に挿入する歪補償用容量回路CAPC5の直列接続段数を設定することができる。この結果、歪補償用容量回路CAPC5を付加したアンテナスイッチASWの設計自由度が増加し、歪補償用容量回路CAPC5による歪補償の精度を向上させることができる。
(実施の形態6)
前記実施の形態4では、RXスルートランジスタTH(RX)を構成する複数のMISFETQN1〜QN5のそれぞれのソース領域とドレイン領域の間に歪補償用容量回路CAPC4を設ける例について説明したが、本実施の形態6では、複数のMISFETQN1〜QN5のそれぞれのソース領域とドレイン領域の間に、2つの歪補償用容量回路CAPC5を直列に接続する例について説明する。
<本実施の形態6における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
本実施の形態6における歪補償用容量回路CAPC5をアンテナスイッチASWへ適用する例について説明する。本実施の形態6でも、3次高調波歪みを効果的に低減する観点から、図15に示すアンテナスイッチASWにおいて、RXスルートランジスタTH(RX)(図15の斜線領域で示されている)に本実施の形態6における歪補償用容量回路CAPC5を適用する。
図33は、RXスルートランジスタTH(RX)に、本実施の形態6における歪補償用容量回路CAPC5を付加した構成を示す回路図である。図33に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、MISFETQN1〜MISFETQN5のそれぞれには、2つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続されている。具体的に、MISFE5TQN1のドレイン領域D1とソース領域S1の間に2つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続され、MISFETQN2のドレイン領域D2とソース領域S2の間に2つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続されている。さらに、MISFETQN3のドレイン領域D3とソース領域S3の間にも2つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続され、MISFETQN4のドレイン領域D4とソース領域S4の間にも2つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続されている。また、MISFETQN5のドレイン領域D5とソース領域S5の間にも2つの歪補償用容量回路CAPC5が直列に接続されている。
<本実施の形態6による効果>
本実施の形態6におけるアンテナスイッチASWは上記のように構成されており、本実施の形態6における歪補償用容量回路CAPC5をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態6における歪補償用容量回路CAPC5の容量値は、前記実施の形態1と同様に、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態6における歪補償用容量回路CAPC5から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態6では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC5の容量値とその電圧依存性は、歪補償用容量回路CAPC5から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的に、図29(a)に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/10になっている。
(実施の形態7)
前記実施の形態2では、RXスルートランジスタTH(RX)が設けられているアンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に複数の歪補償用容量回路CAPC2を直列接続する構成について説明した。本実施の形態7では、RXスルートランジスタTH(RX)を構成する一部のMISFETの間に複数の歪補償用容量回路CAPC2を直列接続する構成について説明する。
<本実施の形態7における歪補償用容量回路のアンテナスイッチへの適用>
図34は、本実施の形態7における歪補償用容量回路CAPC2を設けたRXスルートランジスタTH(RX)の回路構成を示す回路図である。図34に示すように、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXとの間にRXスルートランジスタTH(RX)を構成する5つのMISFETQN1〜MISFETQN5が直列に接続されている。具体的には、アンテナ端子ANT(OUT)とMISFETQN1のドレイン領域D1が接続され、MISFETQN1のソース領域S1とMISFETQN2のドレイン領域D2が接続されている。そして、MISFETQN2のソース領域S2とMISFETQN3のドレイン領域D3が接続され、MISFETQN3のソース領域S3とMISFETQN4のドレイン領域D4が接続されている。さらに、MISFETQN4のソース領域S4がMISFETQN5のドレイン領域D5と接続され、MISFETQN5のソース領域S5が受信端子RXと接続されている。
続いて、MISFETQN1〜QN5のそれぞれのゲート電極G1〜G5は、ゲート抵抗GRを介して互いに接続されている。そして、本実施の形態7では、MISFETQN1〜MISFETQN3の間に複数の歪補償用容量回路CAPC2が直列接続されている。具体的に、本実施の形態7では、図34に示すように、MISFETQN1〜MISFETQN3の間に3つの歪補償用容量回路CAPC2が直列に接続されている。つまり、本実施の形態7では、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RXの間に5つのMISFETQN1〜QN5が直列に接続されているとともに、この5つのMISFETQN1〜QN5のうち、MISFETQN1〜MISFETQN3に、3つの直列接続された歪補償用容量回路CAPC2が並列に設けられている。
なお、本実施の形態7では、5つのMISFETQN1〜QN5のうち、MISFETQN1〜MISFETQN3に、直列接続された複数の歪補償用容量回路CAPC2を並列に設ける例について説明しているが、これに限らない。例えば、5つのMISFETQN1〜QN5のうち、MISFETQN1〜MISFETQN2に、直列接続された複数の歪補償用容量回路CAPC2を並列に設けるように構成してもよい。また、5つのMISFETQN1〜QN5のうち、MISFETQN1〜MISFETQN4に、直列接続された複数の歪補償用容量回路CAPC2を並列に設けるように構成してもよい。また、本実施の形態7では、歪補償用容量回路CAPC2を使用しているが、歪補償用容量回路CAPC2に代えて、歪補償用容量回路CAPC3〜歪補償用容量回路CAPC5を使用してもよい。
<本実施の形態7による効果>
本実施の形態7におけるアンテナスイッチASWは上記のように構成されており、本実施の形態7における歪補償用容量回路CAPC2をアンテナスイッチASWに適用することにより、以下に示すような効果が得られる。すなわち、本実施の形態7における歪補償用容量回路CAPC2の容量値は、前記実施の形態1と同様に、上に凸の曲線で表される電圧依存性を有することになる。このことから、本実施の形態7における歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みによって、アンテナスイッチASWを構成するMISFETQN1〜QN5におけるオフ容量の電圧依存性(上に凸の曲線で表される電圧依存性)に起因して発生する逆位相の3次高調波歪みを打ち消すことができる。この結果、アンテナスイッチASWから発生する3次高調波歪みの絶対値を低減することができる。
本実施の形態7では、上述した効果を実現するために、歪補償用容量回路CAPC2の容量値とその電圧依存性は、直列接続された3つの歪補償用容量回路CAPC2から発生する3次高調波歪みが、MISFETQN1〜QN5から発生する3次高調波歪みを補償するように設定されている。具体的に、図17(a)に示す半導体領域NR1Bの不純物濃度は、約5×1017/cm3になっており、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/8になっている。
本実施の形態7に特有の効果としては、例えば、以下に示すような効果が考えられる。すなわち、本実施の形態7では、歪補償用容量回路CAPC2と並列となるMISFETの直列段数を変えることにより、歪補償用容量回路CAPC2の両端に印加される高周波電圧の大きさを変えることができる。この結果、歪補償用容量回路CAPC2を付加したアンテナスイッチASWの設計自由度が増加し、歪補償用容量回路CAPC2による歪補償の精度を向上させることができる。
(実施の形態8)
前記実施の形態1では、1つの送信経路と1つの受信経路を有するSPDT(Single Pole Double Throw)型のアンテナスイッチASWに本願発明の技術的思想を適用する例について説明したが、本実施の形態8では、2つの送信経路と3つの受信経路を有するSP5T(Single Pole 5 Throw)型のアンテナスイッチに本願発明を適用する例について説明する。なお、本実施の形態8では、SD5T型のアンテナスイッチを例に挙げて説明するが、本願発明の技術的思想は、これに限らず、SPnT型のアンテナスイッチに幅広く適用することができる。
近年、携帯電話機では音声通話機能だけでなく様々なアプリケーション機能が追加されている。すなわち、携帯電話機を用いた配信音楽の視聴、動画伝送、データ転送などの音声通話機能以外の機能が携帯電話機に追加されている。このような携帯電話機の多機能化に伴い、世界各国での周波数帯や変調方式が多数存在することになっている。したがって、携帯電話機では、複数の異なる周波数帯や異なる変調方式に対応した送受信信号に対応するものが存在する。
図35は、例えば、デュアルバンドの信号を送受信する携帯電話機1の構成を示すブロック図である。図35に示す携帯電話機1の構成は、図1に示す携帯電話機1の基本構成とほぼ同様である。異なる点は、複数の異なる周波数帯の信号を送受信するために、それぞれの周波数帯の信号に対応し電力増幅器と低雑音増幅器が設けられている点である。例えば、複数の異なる周波数帯の信号として第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号がある。第1周波数帯の信号としては、GSM(Global System for Mobile Communication)方式を利用した信号が挙げられ、周波数帯としては、GSM低周波帯域の824MHz〜915MHzを使用している信号である。一方、第2周波数帯の信号としては、GSM(Global System for Mobile Communication)方式を利用した信号が挙げられ、周波数帯としては、GSM高周波帯域の1710MHz〜1910MHzを使用している信号である。
図35に示す携帯電話機1において、インターフェース部IFU、ベースバンド部BBU、RF集積回路部RFICおよび制御部CUは、第1周波数帯の信号と第2周波数帯の信号とを信号処理できるように構成されている。そして、第1周波数帯の送信信号に対応して電力増幅器HPA1が設けられており、第2周波数帯の送信信号に対応して電力増幅器HPA2が設けられている。さらに、複数の異なる周波数帯の受信信号に対応して、それぞれ低雑音増幅器LNA1〜LNA3が設けられている。すなわち、図35に示すデュアルバンド方式の携帯電話機1では、異なる複数の周波数帯の信号に対応して2つの送信経路と3つの受信経路が存在する。
したがって、アンテナスイッチASW2では切り替え端子が5つ存在することになる。つまり、第1周波数帯の送信信号に対応して送信端子TX1が設けられており、第2周波数帯の送信信号に対応して送信端子TX2が設けられている。そして、複数の異なる周波数帯の受信信号に対応して受信端子RX1〜RX3が設けられている。このようにアンテナスイッチASW2には5つの切り替え端子が存在するが、これらの端子の切り替えは制御部CUによって制御される。
例えば、図1に示すSPDT型のアンテナスイッチASWは、1つの送信経路と1つの受信経路と有しているが、このSPDT型のアンテナスイッチASWにおいて送信信号を送信する場合、送信経路に設けられているTXスルートランジスタTH(TX)をオンするとともに、受信経路に設けられているRXスルートランジスタTH(RX)をオフする。すなわち、送信信号を送信する場合、送信経路を導通させるとともに、受信経路を非導通とする。このとき、3次高調波歪みはオフしているトランジスタが主要な発生源となるので、非導通となっている受信経路のRXスルートランジスタTH(RX)から主に3次高調波歪みが発生する。
一方、図35に示すSP5T型のアンテナスイッチASW2は、2つの送信経路と3つの受信経路を有している。このため、1つの送信経路から送信信号を送信する場合、もう1つの送信経路と3つの受信経路が非導通となる。つまり、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、1つの送信経路から送信信号を送信する際、他の4つの経路(もう1つの送信経路と3つの受信経路)に設けられているトランジスタはオフしていることになる。このことは、SPDT型のアンテナスイッチASWでは非導通の経路が1つであるのに対し、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、非導通の経路が4つ存在することを意味する。したがって、SPDT型のアンテナスイッチASWでは、3次高調波歪みの主要な発生源が1つの非導通経路に設けられているオフ状態のトランジスタであるのに対し、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、3次高調波歪みの主要な発生源が4つの非導通経路に設けられているオフ状態のトランジスタとなる。このため、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、SPDT型のアンテナスイッチASWよりもより多くの3次高調波歪みが発生すると考えられる。以上のことから、SP5T型のアンテナスイッチASW2では、3次高調波歪みを低減する必要性が高く、本願発明の技術的思想をSP5T型のアンテナスイッチASW2に適用することが有用であると考えられる。
以下に、本願発明における歪補償用容量回路をSP5T型のアンテナスイッチASW2に適用する例について説明する。図36は、本実施の形態8におけるアンテナスイッチASW2の回路構成を示す図である。図36に示すように、本実施の形態8におけるアンテナスイッチASW2は、アンテナ端子ANT(OUT)と、2つの送信端子TX1、TX2と、3つの受信端子RX1〜RX3を有している。
まず、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX1の間にTXスルートランジスタTH(TX1)が設けられ、送信端子TX1とGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタSH(TX1)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX2の間にTXスルートランジスタTH(TX2)が設けられ、送信端子TX2とGND端子GND2との間にTXシャントトランジスタSH(TX2)が設けられている。
一方、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX1の間にRXスルートランジスタTH(RX1)が設けられ、受信端子RX1とGND端子GND3との間にRXシャントトランジスタSH(RX1)が設けられている。同様に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX2の間にRXスルートランジスタTH(RX2)が設けられ、受信端子RX2とGND端子GND4との間にRXシャントトランジスタSH(RX2)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX3の間にRXスルートランジスタTH(RX3)が設けられ、受信端子RX3とGND端子GND5との間にRXシャントトランジスタSH(RX3)が設けられている。
そして、図36の斜線領域で示すTXスルートランジスタTH(TX1)、TH(TX2)、および、RXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)に、例えば、前記実施の形態1〜7で説明した歪補償用容量回路CAPC2〜CAPC5が設けられている。したがって、送信端子TX1から第1送信信号を送信する場合と、送信端子TX2から第2送信信号を送信する場合のいずれにおいても、オフしているスルートランジスタから発生する3次高調波歪みを低減することができる。
本実施の形態8では、TXスルートランジスタTH(TX1)をオン状態として、送信端子TX1から第1送信信号を送信する際、オフ状態となっているTXスルートランジスタTH(TX2)およびRXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)のそれぞれの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みが、それら自身に付加されている歪補償用容量回路(前記実施の形態1〜7における歪補償用容量回路CAPC2〜CAPC5)によって補償(相殺)されるように設計されている。同様に、TXスルートランジスタTH(TX2)をオン状態として、送信端子TX2から第2送信信号を送信する際、オフ状態となっているTXスルートランジスタTH(TX1)およびRXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)のそれぞれの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みが、それら自身に付加されている歪補償用容量回路(前記実施の形態1〜7における歪補償用容量回路CAPC2〜CAPC5)によって補償(相殺)されるように設計されている。
これら歪補償用容量回路では、例えば、図17に示す半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度が約5×1017/cm3になっており、かつ、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/10になっている。このように本実施の形態8におけるSP5T型のアンテナスイッチASW2においても、前記実施の形態1〜7で説明したSPDT型のアンテナスイッチASWと同様に、3次高調波歪みを低減できる効果が得られる。
(実施の形態9)
前記実施の形態8では、TXスルートランジスタTH(TX1)、TH(TX2)、および、RXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)に歪補償用容量回路を付加する例について説明したが、本実施の形態9では、RXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)にだけ歪補償用容量回路を付加する例について説明する。
図37は、本実施の形態9におけるアンテナスイッチASW2の回路構成を示す図である。図37に示すように、本実施の形態9におけるアンテナスイッチASW2は、アンテナ端子ANT(OUT)と、2つの送信端子TX1、TX2と、3つの受信端子RX1〜RX3を有している。
まず、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX1の間にTXスルートランジスタTH(TX1)が設けられ、送信端子TX1とGND端子GND1との間にTXシャントトランジスタSH(TX1)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と送信端子TX2の間にTXスルートランジスタTH(TX2)が設けられ、送信端子TX2とGND端子GND2との間にTXシャントトランジスタSH(TX2)が設けられている。
一方、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX1の間にRXスルートランジスタTH(RX1)が設けられ、受信端子RX1とGND端子GND3との間にRXシャントトランジスタSH(RX1)が設けられている。同様に、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX2の間にRXスルートランジスタTH(RX2)が設けられ、受信端子RX2とGND端子GND4との間にRXシャントトランジスタSH(RX2)が設けられている。また、アンテナ端子ANT(OUT)と受信端子RX3の間にRXスルートランジスタTH(RX3)が設けられ、受信端子RX3とGND端子GND5との間にRXシャントトランジスタSH(RX3)が設けられている。
そして、図37の斜線領域で示すRXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)にだけ、例えば、前記実施の形態1〜7で説明した歪補償用容量回路CAPC2〜CAPC5が設けられている。
本実施の形態9では、TXスルートランジスタTH(TX1)をオン状態として、送信端子TX1から第1送信信号を送信する際、オフ状態となっているTXスルートランジスタTH(TX2)およびRXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)のそれぞれの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みの総計が、RXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)に付加されている歪補償用容量回路(前記実施の形態1〜7における歪補償用容量回路CAPC2〜CAPC5)によって補償(相殺)されるように設計されている。同様に、TXスルートランジスタTH(TX2)をオン状態として、送信端子TX2から第2送信信号を送信する際、オフ状態となっているTXスルートランジスタTH(TX1)およびRXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)のそれぞれの寄生容量の電圧依存性に起因した3次高調波歪みの総計が、RXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)に付加されている歪補償用容量回路(前記実施の形態1〜7における歪補償用容量回路CAPC2〜CAPC5)によって補償(相殺)されるように設計されている。
これら歪補償用容量回路では、例えば、図17に示す半導体領域NR1B、NR2Bの不純物濃度が約5×1017/cm3になっており、かつ、電極EL1および電極EL2の幅は、MISFETQN1〜QN5のゲート幅の約1/5になっている。このように本実施の形態9におけるSP5T型のアンテナスイッチASW2においても、前記実施の形態1〜7で説明したSPDT型のアンテナスイッチASWと同様に、3次高調波歪みを低減できる効果が得られる。
さらに、本実施の形態9では、歪補償用容量回路をRXスルートランジスタTH(RX1)〜TH(RX3)にだけまとめることができるので、アンテナスイッチASW2の占有面積を小さくすることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。