JP5632322B2 - 窒化ガリウム系半導体の製造方法、及び、基板の製造方法 - Google Patents

窒化ガリウム系半導体の製造方法、及び、基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、種結晶、窒化ガリウム系半導体の製造方法、及び、基板の製造方法に関する。
窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体基板を低コストで製造するためには、バルク成長技術が不可欠である。例えば、異種基板上や+c極性GaN基板上に+c極性GaNを厚膜成長したIII族窒化物半導体の結晶をバルク成長する技術がある(非特許文献1、非特許文献2)。
Kenji Fujito et al., "Bulk GaN crystals grown by HVPE", Journal of Crystal Growth, 2009, 311, p.3011-3014 M.Bockowski, "Review: Bulk growth of gallium nitride: challenges and difficulties", Cryst. Res. Technol., 2007, 42, No.12, p.1162-1175
上述したような異種基板上や、異種基板上から剥離して得られた+c極性GaN基板上にIII族窒化物半導体の+c極性GaN結晶をバルク成長する技術の場合、(0001)と比較して、{1−101}、{11−22}など、(0001)から傾いた面の成長速度が著しく遅い。このため、長時間の成長で徐々にこれらの遅い成長速度面が現れ、バルク成長後に得られる結晶は、(0001)から傾いた面を含んで構成される。すなわち、結晶の形状は、成長が進むにつれて先細りとなり、例えば六角すいのような形状に近づいていく。また、このような面で構成された後の結晶の拡大成長速度は、構成された低成長速度面で律速されてしまう。これらの理由などから、+c極性GaN基板上にバルク成長する技術の場合、大型な結晶が得られ難いという問題がある。
また、得られた結晶の側面は略三角形状となるため、結晶をスライスして成長用基板と同径の定型基板を複数製造することは困難であるという問題もある。
本発明者は、+c極性及び−c極性を含む面を結晶成長面として窒化ガリウム系半導体を結晶成長させた場合、安定的に拡径して、大型で、結晶性が良好な窒化ガリウム系半導体の単結晶が得られることを発見した。
本発明によれば、Ga及びNを含む混晶からなり、窒化ガリウム系半導体の結晶成長に用いられる種結晶であって、前記種結晶の表面を、前記種結晶のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野に、+c極性領域と、−c極性領域とが含まれる種結晶が提供される。
また、本発明によれば、前記種結晶を用い、前記+c極性領域及び前記−c極性領域が含まれる前記視野に含まれる結晶面を結晶成長面として、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する窒化ガリウム系半導体の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、前記窒化ガリウム系半導体の製造方法を用いて得られた窒化ガリウム系半導体をスライスして基板を得る基板の製造方法が提供される。
本発明によれば、大型で、結晶性が良好な窒化ガリウム系半導体の単結晶を製造することが可能となる。
本発明の実施形態にかかる種結晶の斜視図の一例である。 本発明の実施形態にかかる種結晶の平面図の一例である。 本発明の実施形態にかかる種結晶の平面図の一例である。 本発明の実施形態にかかる種結晶の平面図の一例である。 本発明の実施形態にかかる種結晶保持部材の断面図の一例である。 本発明の実施形態にかかる種結晶保持部材の斜視図の一例である。 本発明の実施形態にかかる種結晶保持部材の断面図の一例である。 HVPE装置を示す模式図である。 種結晶形成用部材上に種結晶が形成された状態を示す断面図である。 本発明の実施形態にかかる窒化ガリウム系半導体の製造方法の一例を示すフローチャートである。 種結晶形成用部材上に種結晶が保持された状態を示す断面図である。 種結晶形成用部材上の種結晶が拡大成長した状態を示す断面図である。 種結晶を拡大成長して得られた単結晶の断面図の一例である。 種結晶形成用部材上に種結晶が保持された状態を示す断面図である。 本発明の実施形態にかかる種結晶の斜視図の一例である。 本発明の実施形態にかかる窒化ガリウム系半導体の製造方法で製造した窒化ガリウム系半導体の平面図の一例である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
<<第1の実施形態>>
<種結晶の構成>
まず、本実施形態の種結晶の構成について説明する。
図1に、本実施形態の種結晶10の斜視図の一例を示す。本実施形態の種結晶10は、Ga及びNを含む混晶からなり、窒化ガリウム系半導体の結晶成長に用いられる。本実施形態の種結晶10は略柱状であり、例えば、図1に示すような六角柱形状であってもよいし、図示しないが四角柱形状や円柱形状であってもよい。種結晶10のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、10μm以上1000μm以下である。最大径とは、断面の外周上の任意の2点を結んで形成される複数の線分の中の最も長い線分の長さである。
次に、図2乃至4に、図1に示す種結晶10の表面を、c軸と平行な2つの方向(図中、矢印A及びBで示す方向)の中の一方から観察したときの視野に映る種結晶10の一例を示す。図示するように、当該観察における視野には、+c極性領域20と、−c極性領域30とが含まれる。
+c極性領域20とは、種結晶の表面に位置する領域であって、(1)+c極性面、及び、(2)+c極性面から90°未満の範囲で傾いた面であって当該傾斜面をc面と平行に平面研磨すると+c極性面が表出する面、の少なくとも一方を含む領域と言い換えることが可能である。さらに、+c極性領域20とは、種結晶の表面に位置する領域であって、(0001)、{h−h0l}、及び、{hh−2hl}の中の少なくとも1つの面を含む領域と言い換えることも可能である(h、lは自然数)。
−c極性領域30とは、種結晶の表面に位置する領域であって、(1)−c極性面、及び、(2)−c極性面から90°未満の範囲で傾いた面であって当該傾斜面をc面と平行に平面研磨すると−c極性面が表出する面、の少なくとも一方を含む領域と言い換えることが可能である。さらに、−c極性領域30とは、種結晶の表面に位置する領域であって、(000−1)、{a−a0−c}、及び、{aa−2a−c}の中の少なくとも1つの面を含む領域と言い換えることも可能である(a、cは自然数)。
以下、種結晶10の表面を、c軸と平行な2つの方向(図中、矢印A及びBで示す方向)の中の一方から見る観察を「第1のc軸方向観察」という。
第1のc軸方向観察における視野において+c極性領域20及び−c極性領域30が含まれる場合であって、−c極性領域30の面積の方が、+c極性領域20の面積よりも大きい場合、当該視野における−c極性領域30と+c極性領域20の面積比は、50:50〜99:1とすることが好ましく、55:45〜95:5とすることが一層好ましい。
一方、第1のc軸方向観察における視野において+c極性領域20及び−c極性領域30が含まれる場合であって、+c極性領域20の面積の方が、−c極性領域30の面積よりも大きい場合、当該視野における−c極性領域30と+c極性領域20の面積比は、50:50〜1:99とすることが好ましく、45:55〜5:95とすることが一層好ましい。
なお、本実施形態の種結晶10は、第1のc軸方向観察における視野において+c極性領域20及び−c極性領域30が含まれる構成を実現できれば、その3次元的な構成は特段制限されず、あらゆるバリエーションを採用することができる。
例えば、+c極性領域20及び−c極性領域30は、c軸と垂直な平面上に位置してもよいし、また、当該平面とは異なる平面上に位置してもよい。また、+c極性領域20及び−c極性領域30は、同一平面上に位置してもよいし、異なる平面上に位置してもよい。
具体的には、+c極性領域20及び−c極性領域30いずれもが、c軸と垂直な平面上に位置してもよい。又は、図15の斜視図に示すように、例えば種結晶10の先端が凸状となることで、c軸と垂直な平面から所定角度M(0°<M<90°)傾いた傾斜面が形成されている場合、当該傾斜面上に、+c極性領域20及び/又は−c極性領域30が位置してもよい。
なお、+c極性領域20と−c極性領域30との位置関係及びこれらの形状は、特段制限されない。
このような本実施形態の種結晶10は、例えばエピタキシャル成長して得られる。本実施形態の種結晶10は単結晶からなってもよい。また、本実施形態の種結晶10は、例えばウルツ鉱型構造である。
<種結晶の製造方法>
次に、上述のような本実施形態の種結晶10の製造方法について説明する。本実施形態では、核を種結晶10に成長させる段階の成長条件を適切に設定することで、上述のような種結晶10の製造を実現する。以下、本実施形態の種結晶10の製造方法の一例について図5乃至8を用いて説明する。
本例の種結晶10の製造方法では、気相成長法により、種結晶形成用部材上に複数の窒化ガリウム系半導体の核を離間させて形成し、当該複数の核を所定の成長条件下で成長させて、当該複数の核それぞれから複数の種結晶10を得る。
例えば、まず、図5及び6に示すような種結晶形成用部材(サセプター)1を用意する。図5は種結晶形成用部材(サセプター)1の断面図の一例であり、図6は種結晶形成用部材(サセプター)1の斜視図の一例である。この種結晶形成用部材1は、基材11と、この基材11に突設されるとともに離間配置された複数の立設部12と、基材11を支持する支持部13とを有する。なお、立設部12の数は図示するものに限定されない。
基材11は、例えば、平板状であり、材料は特に限定されないが、石英、グラファイト、SiCコートグラファイト、ガラス状カーボンコートグラファイト、アルミナ等の材料で構成される。基材11上には、複数の立設部12が柱状に突設されている。
立設部12は、柱状(例えば、円柱状、四角柱状)であり、基材11に対し、着脱可能である。例えば、基材11に凹部111を形成し、この凹部111内に立設部12の基端部をはめ込み、立設部12が凹部111から着脱可能なものとしてもよい。また、基材11の凹部111を雌ねじとし、立設部12の基材11側の基端部にねじを刻設して、凹部111と、立設部12とを螺合してもよい。立設部12は、グラファイトを含んでなり、特には、グラファイトからなるものであることが好ましい。また、立設部12は、ガラス状カーボンやSiC、BNなどでコーティングされたグラファイトで構成されてもよい。
ここで、種結晶形成用部材1の構造は、図5及び6に示したものに限られず、図7に示すようなものとしてもよい。図7は種結晶形成用部材(サセプター)1の断面図の一例である。
図7に示す例の場合には、基材11上に複数の立設部12が隣接配置され、隣り合う立設部12は、互いに接している。ただし、立設部12は、凹部内(図6では、図示略)にはめ込まれたものであるため、基材11に対し、着脱可能である。
次に、図8に示すように、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)装置3内に、種結晶形成用部材1を設置する。このHVPE装置3は、反応管31を備え、この反応管31内に、ソースボート39が設置されている。ソースボート39内には、窒化ガリウム系半導体の種結晶の原料となるIII族原料、例えば、ガリウムが配置される。また、反応管31には、ガス導入管33及び34が接続されている。
HVPE装置3内に種結晶形成用部材1を設置した後、ガス導入管33及び34より窒素(N2)ガスを供給して反応管31内をパージする。反応管31内に供給したガスは、排出口38より排出される。反応管31内を十分パージした後、水素(H2)ガスに切替えて、ヒータ35により反応管31を昇温する。成長領域36の温度が例えば500℃前後となったら、ガス導入管34よりアンモニア(NH3)ガスを加えて昇温する。さらにGaソース37領域の温度が例えば850℃、成長領域36の温度が例えば1080℃になるまで昇温を続ける。
Gaソース37領域の温度及び成長領域36の温度が安定してからガス導入管33よりHClガスを加えて供給し、ソースボート39内のガリウム(Ga)と反応させて塩化ガリウム(GaCl)を生成し、成長領域36に輸送する。成長領域36では、NH3ガスとGaClが反応する。これにより、各立設部12の先端上に窒化ガリウム系半導体の核が形成され、この核が成長することで、Ga及びNを含む混晶からなる種結晶10となる(図9参照)。すなわち、複数の核が離間配置されて形成され、複数の核が合体せずに、それぞれ種結晶10となり、複数の種結晶10が同時に得られる。
ここで、図5及び6に示す種結晶形成用部材1の代わりに、図7に示す構成の種結晶形成用部材1を用いれば、立設部12の先端面への窒化ガリウム系半導体の核形成を促進させることができるほか、立設部12を高密度に配置することにより、より多くの種結晶10を得ることも可能となる。
なお、図9では、立設部12の先端に一つの核が形成し、その核が成長して一つの種結晶10となっている例を示しているが、立設部12に複数の核が離間して形成され、複数の核それぞれが種結晶10となってもよい。隣り合う核間の間隔は100μm以上、100mm以下であれば、核同士が合体せずに種結晶10となりやすく、複数の核を効率良く形成しやすい。
核間の間隔をあけ、離間して複数の核を形成するためにはIII族ハロゲン化物ガス(ここでは、GaClガス)の分圧を1.4Pa以上、1.4×10Pa以下、好ましくは7.0Pa以上、7.0×10Pa以下、V族元素を含むガス(ここではアンモニアガス)の分圧を1.4×10Pa以上、1.4×10Pa以下、好ましくは、7.0×10Pa以上、7.0×10Pa以下とし、成長温度(核形成温度)を800℃以上、1100℃以下、好ましくは1060℃以上1090℃以下とすることが好ましい。
このような核形成条件とすることで、核生成密度を小さくでき、核同士が合体せずに種結晶10となりやすい。すなわち、核間の間隔を調整し、さらに、成長温度や、原料ガスの分圧等を適宜調整することで、複数の核同士を合体させずに、複数の種結晶10を得ることが可能となる。その上、上記V族元素ガス分圧、成長温度とすることで、長さ/幅比をより大きくすることが可能となる。このことは、より微小領域からの核生成とその長尺化による低転位密度化が実現されるとともに、接着時などのハンドリング性についても向上する。
ここで、上記製造工程で得られる種結晶10の中には、(1)第1のc軸方向観察における視野いずれにおいても、+c極性領域20及び−c極性領域30のいずれもが含まれた構成となっていないものや、(2)複数の核の中の一部の核同士が合体し、1つの種結晶となったものが含まれる場合がある。そこで、上記製造工程の後、得られた種結晶を観察などし、上記(1)又は(2)を満たす種結晶を除去する工程(選別工程)、すなわち、第1のc軸方向観察における視野において、+c極性領域20及び−c極性領域30のいずれもが含まれ、かつ、核が合体せずに成長した種結晶を抽出する工程を含んでもよい。そして、当該選別工程の後に除去されずに残った種結晶を本実施形態の種結晶10としてもよい。
<窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法>
次に、本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法について説明する。本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法は、図10のフローチャートに示すように、Ga及びNを含む混晶からなる種結晶を準備する種結晶準備工程S10と、準備した種結晶を成長させて、窒化ガリウム系半導体単結晶を得る成長工程S20と、を含む。
種結晶準備工程S10では、上述した本実施形態の「種結晶の製造方法」により得られた本実施形態の種結晶10を準備する。
成長工程S20では、第1のc軸方向観察における視野であって、+c極性領域20及び−c極性領域30のいずれもが含まれる視野に含まれる結晶面を結晶成長面として、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する。すなわち、成長工程S20では、+c極性領域20及び−c極性領域30のいずれもが含まれる結晶成長面に原料ガスを供給し、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する。例えば、種結晶10のc軸と平行な方向(図1のA及びB)のいずれかであって、当該方向から種結晶10の表面を観察したときの視野に、+c極性領域20及び−c極性領域30のいずれもが含まれる方向から、種結晶10に原料ガスを供給し、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する。
以下、このような本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法の一例について説明する。
例えば、上述した本実施形態の「種結晶の製造方法」を実施することで、図9に示すように、立設部12上に窒化ガリウム系半導体の種結晶10を形成した後(種結晶準備工程S10)、当該種結晶10をそのまま拡大成長させることができる(成長工程S20)。なお、種結晶準備工程S10の後、かつ、成長工程S20の前に、上述した「選別工程」を行ってもよい。また、種結晶準備工程S10の後、かつ、成長工程S20の前に、種結晶10が設けられた立設部12間の間隔をあけるため、以下の工程を経てもよい。
すなわち、上述した本実施形態の「種結晶の製造方法」を実施後、図8に示すHVPE装置3から、種結晶形成用部材1を取り出す。そして、図11に示すように、一部の立設部12を基材11から外し、隣り合う立設部12間に一定の隙間を形成する。その後、一部の立設部12を基材11から外した種結晶形成用部材1を再び図8に示すHVPE装置3に設置し、種結晶10を拡大成長させる。
なお、立設部12間の間隔は隣り合う種結晶10同士が合体することを抑制する観点から1mm以上が好ましい。このようにすることで、複数の種結晶10が十分な間隔をおいて離間配置され、複数の種結晶10同士が合体することなく、これらの種結晶10を同時に拡大成長させることができる。なお、あらかじめ、立設部12間の間隔が十分に確保されている場合には、HVPE装置3から種結晶形成用部材1を取り出し、一部の立設部12を基材11から外す工程を経ることなく、種結晶10を拡大成長させる工程を行うことができる。
必要に応じて上記一部の立設部12を基材11から外す工程及び/又は上記選別工程を経た後、図8に示したHVPE装置3により、種結晶10を拡大成長させる(成長工程S20)。
具体的には、HVPE装置3内に種結晶10が設けられた種結晶形成用部材1を設置した状態で、ガス導入管33、34より窒素(N2)ガスを供給して反応管31内をパージする。反応管31内に供給したガスは、排出口38より排出される。反応管31内を十分パージした後、水素(H2)ガスに切替えて、ヒータ35により反応管31を昇温する。成長領域36の温度が例えば500℃前後となったら、ガス導入管34よりアンモニア(NH3)ガスを加えて昇温する。さらにGaソース37領域の温度が850℃、成長領域36の温度が例えば1050℃になるまで昇温を続ける。
Gaソース37領域の温度及び成長領域36の温度が安定してからガス導入管33よりHClガスを加えて供給し、ソースボート39内のガリウム(Ga)と反応させて塩化ガリウム(GaCl)を生成し、成長領域36に輸送する。成長領域36では、NH3ガスとGaClが反応する。これにより、図12に示すように、各立設部12上の種結晶10が拡径するとともに、縦方向にも成長し、大型な窒化ガリウム系半導体の単結晶21を得ることができる。
なお、アンモニアガスの分圧は、種結晶10周辺への窒化ガリウム系半導体の多結晶付着防止という観点から、1.4×10Pa以下が好ましい。また、製造性の観点から、アンモニアガスの分圧は、7.1×10Pa以上が好ましい。
ここで、種結晶10を成長させる際に、基材11上に窒化ガリウム系半導体の多結晶が堆積することがある。この場合、基材11上の多結晶の層が非常に厚くなってしまうと、種結晶10に付着してしまうおそれがある。そこで、立設部12の基端部の外周にねじを刻設するとともに、基材11表面に形成された凹部111に雌ねじを形成し、立設部12の先端部の種結晶10の基材11からの高さを調整し、基材11上の多結晶が種結晶10に付着してしまうことを防止してもよい。
さらに、基材11表面の位置によって多結晶の堆積のしやすさに違いがあるため、各立設部12の先端の基材11からの高さをそれぞれ調整することもできる。
さらに、種結晶10をある程度拡大成長させた後、基材11上に堆積した多結晶が種結晶10に付着する前に、種結晶10が設けられた種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、立設部12を基材11から取り外した後に基材11上に堆積した多結晶を除去(基材11を洗浄)してもよい。その後、立設部12を基材11に取り付け、種結晶10を再度拡大成長させることができる。
さらに、種結晶10を成長させる前に、予め基材11上に薄く多結晶を堆積させるか、成長によって基材11上に厚く付着した多結晶の層を除去する際にわずかに残すなどして、基材11上に多結晶の層を形成する。このようにすることで、立設部12周辺に供給される原料が、基材11上の多結晶に優先的に消費され、立設部12に新たに多結晶が発生することが抑制できる。そのため、単結晶21を多結晶との合体なしに単独で拡大できるため、窒化ガリウム系半導体の単結晶21の結晶性を良好なものとすることができる。
また、種結晶10をある程度拡大成長させた後、基材11から一部の立設部12を取り外し、立設部12間の間隔をあけて、拡大成長した種結晶10同士がぶつからないように調整してもよい。拡大成長した種結晶10同士を合体させずに、複数の窒化ガリウム系半導体の単結晶を得ることが好ましい。例えば、N個(複数)の種結晶10を拡大成長させて、そのうちの10%以上の種結晶10(N×0.1個以上)が互いに合体することなく成長し、複数の窒化ガリウム系半導体の単結晶(N×0.1個以上)が得られることが好ましい。
さらに、種結晶10をある程度拡大成長させた後、基材11から一部の立設部12を取り外し、結晶性が良好でないものを間引いてもよい。
以上のようにして得られた窒化ガリウム系半導体の単結晶21をスライスして、複数の窒化ガリウム系半導体自立基板又は複数の窒化ガリウム系半導体の種結晶基板を得ることができる。また、以上のようにして得られた窒化ガリウム系半導体の単結晶21から所定形状の結晶を切り出して、複数の窒化ガリウム系半導体の種結晶10を得ることができる。
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態では、Ga及びNを含む混晶からなる種結晶であって、第1のc軸方向観察における視野において、+c極性領域と、−c極性領域とが含まれる種結晶を用い、当該視野に含まれる結晶面を結晶成長面として、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する。すなわち、+c極性領域及び−c極性領域のいずれもが含まれる結晶成長面に原料ガスを供給して、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する。
このように、+c極性及び−c極性を含む面を結晶成長面として窒化ガリウム系半導体を結晶成長させる本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法によれば、+c極性のみからなる結晶成長面上に窒化ガリウム系半導体を結晶成長させる場合に比べて、大型な窒化ガリウム系半導体の単結晶を、効率的に製造することができる。このような結果となるメカニズムは明らかでないが、当該事実は以下の実施例により明らかにされている。なお、+c極性領域に関しては、c軸方向から傾いた方向(例えば<1−101>)の成長速度は遅いが、c軸方向[0001]の成長速度は速い。一方、−c極性領域に関しては、c軸方向[000−1]の成長は+c極性のc軸方向[0001]に比べて遅いが、c軸方向から傾いた方向(例えば<1−10−1>)の成長速度はc軸方向[000−1]に比べて著しく速いということを確認している。本発明者は、本件のような+c極性領域及び−c極性領域が結晶成長面に混在した場合、+c極性領域におけるc軸方向の成長速度、及び、−c極性領域におけるc軸方向から傾いた方向の成長速度の相乗効果により、上記結果が得られるのでないかと予測している。
また、本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法によれば、上記種結晶は拡径しながら拡大成長していくことで、大型な窒化ガリウム系半導体の単結晶となる。本発明者は、本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法により得られた窒化ガリウム系半導体単結晶を分析した結果、得られた窒化ガリウム系半導体単結晶のc軸方向に対して垂直な断面は、種結晶の状態での+c極性領域及び−c極性領域の形状に関わらず、図13に示すように、+c極性領域20を−c極性領域30が取り囲むような状態になりやすいことを確認した。また、結晶成長により得られた窒化ガリウム系半導体単結晶の結晶成長面も同様に、+c極性領域20を−c極性領域30が取り囲むような状態になりやすいことを確認した。さらに、このような結晶成長面は、−c極性領域30の面積の方が、+c極性領域20の面積よりも大きくなりやすいことを確認した。図16に、本実施形態の製造方法によって得られた窒化ガリウム系半導体単結晶の結晶成長面を示す。図からも、上述の結果が得られていることが分かる。すなわち、−c極性領域の結晶成長面における面積の増加が、上記拡径に寄与していると考えられる。
また、本実施形態では、第1のc軸方向観察における視野において+c極性領域20及び−c極性領域30が含まれる場合であって、−c極性領域30の面積の方が、+c極性領域20の面積よりも大きい場合、当該視野における−c極性領域30と+c極性領域20の面積比は、50:50〜99:1、好ましくは、55:45〜95:5とする。このようにすることで、全面が−c極性領域の場合と比較して、多結晶の発生を抑制して持続的にc軸方向成長が行われ、c軸方向成長速度を速めることができ、径方向も拡径することができる。
さらに、本実施形態では、第1のc軸方向観察における視野において+c極性領域20及び−c極性領域30が含まれる場合であって、+c極性領域20の面積の方が、−c極性領域30の面積よりも大きい場合、当該視野における−c極性領域と+c極性領域の面積比は、50:50〜1:99、好ましくは、45:55〜5:95とする。このようにすることで、全面が+c極性領域の場合と比較して、−c極性成長領域の存在と−c極性領域の拡大により、{1−101}面などの形成による成長阻害が無く、持続的にc軸方向成長が行われ、径方向も拡径することができる。
また、本実施形態では、気相成長法により、複数の核を形成し、複数の核から、上述のような種結晶を複数得ることができる。そして、上述のように核形成条件を調整することで、間隔を十分にあけて複数の核を形成し、その後、隣り合う核同士を合体させずに、複数の核を成長させて種結晶を得ることができる。この方法により得られた種結晶は結晶性が良好であり、拡大成長させることで、結晶性が良好な窒化ガリウム系半導体の単結晶を得ることができる。また、複数の種結晶を同一工程により得ることができ、種結晶の生産性が良好となる。
さらに、本実施形態では、グラファイトを含む種結晶形成用部材上に種結晶を形成することができる。グラファイトと、種結晶を構成する窒化ガリウム系半導体との熱膨張係数差は小さいため、種結晶に歪み等が発生しにくくなる。このため、結晶性が良好な種結晶を得ることができ、当該種結晶を拡大成長させた場合に、結晶性の良好な窒化ガリウム系半導体の単結晶を得ることができる。
また、本実施形態では、HVPE法により種結晶を製造することができるため、この種結晶を、HVPE法を使用して拡大成長させた場合に、結晶性の良好な窒化ガリウム系半導体の単結晶を得ることができる。
例えば、アモノサーマル法や、Naフラックス法等の液相成長で種結晶を製造し、その後、成長速度の比較的速い、気相成長法のHVPE法により、種結晶を拡大成長させた場合、種結晶の製造方法と、種結晶を拡大成長させる方法とが大きく異なり、製法の違いによる不純物元素の種類とその濃度差などに起因して、窒化ガリウム系半導体の単結晶に歪みやクラック等が発生しやすいと考えられる。
本実施形態のように、種結晶の製造及び拡大成長を、同じ成長方法で実施することでこのような問題を解決することができる。
なお、本実施形態では、種結晶の製造及び拡大成長をHVPE法で実施したが、例えば、種結晶製造をMOCVD法で実施し、種結晶の拡大成長をHVPE法で実施した場合にも、アモノサーマル法や、Naフラックス法等で種結晶を製造し、その後、HVPE法により拡大成長させる場合に比べれば、HVPE法と同じ気相成長という点でドーピングガスによる不純物制御が容易であり、HVPE成長時に結晶に取り込まれる不純物元素とその濃度を近づけた種結晶を得ることができるので、窒化ガリウム系半導体の単結晶の歪み等を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、HVPE装置内で種結晶を形成し、当該種結晶をHVPE装置から出さずに、そのまま種結晶を拡大成長させることができる。かかる場合には、種結晶をHVPE装置から取り出すことで種結晶が汚染されてしまう不都合を回避できる。
一方、HVPE装置内から種結晶形成用部材を取り出し、一部の立設部を種結晶形成用部材から取り外す際も、立設部が種結晶形成用部材から着脱可能に設けられているため、作業者が拡大成長させる種結晶にふれずに、立設部を種結晶形成用部材から取り外すことができるので、種結晶が汚染されてしまうことを抑制できる。
また、本実施形態では、種結晶を拡大成長させる処理中に、窒化ガリウム系半導体に1×1017cm−3以上の酸素がドープされることを本発明者は確認している。かかる場合、別途キャリアをドープする工程を設ける必要がないため、作業効率が向上するというメリットがある。
なお、上記作用を実現するため、本実施形態では、HVPE装置の部材、例えば反応管を石英で構成することができる。このようにすれば、ドーピングガスを導入することなく反応管内に酸素を供給できるので好ましい。なお、当該手段で供給される酸素は、(1)原料由来の酸素、例えばHCl、NH中の水由来の酸素や、(2)石英(SiO2)とGaClとの反応により発生する酸素や、(3)大気中の酸素、水分由来の酸素などが考えられる。
さらに、一部の立設部を種結晶形成用部材から取り外すことで、種結晶間の間隔を大きく確保することができ、種結晶同士が拡大成長する際に合体してしまうことを抑制できる。
<<第2の実施形態>>
<種結晶の構成>
本実施形態の種結晶10の構成は、第1の実施形態で説明した種結晶10の構成と同様である。
<種結晶の製造方法>
次に、本実施形態の種結晶10の製造方法について説明する。本実施形態の種結晶10の製造方法では、第1の実施形態の「窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法」で得られた窒化ガリウム系半導体の単結晶21から、所定形状の結晶を所定位置から切り出すことで、種結晶10を製造する。切り出した結晶は、切り出し面、好ましくはすべての切り出し面を研磨加工する。その後、CMP(Chemical Mechanical Polish)処理や、ドライエッチング処理を行って、加工変質層を取り除くことが好ましい。
なお、第1の実施形態で説明したように、単結晶21のc軸成長方向に対して垂直な断面は、図13に示すように、+c極性領域20及び−c極性領域30が含まれた状態となりやすい。このような単結晶21から切り出された単結晶21は、一定の確率で、切り出された単結晶21を第1のc軸方向観察した際の視野に、+c極性領域20と、−c極性領域30とが含まれた状態となる。
なお、切り出された種結晶10の上記所定形状は特段制限されず、六角柱形状、四角柱形状、円柱形状などであってもよいが、切り出す際の加工し易さを考えると、六角柱形状、四角柱形状とするのが好ましい。また、切り出された単結晶21をさらに加工して+c極性領域20及び/又は−c極性領域30を有する傾斜面を露出させることで、切り出された単結晶21を第1のc軸方向観察した際の視野に、+c極性領域20と、−c極性領域30とが含まれた状態を形成してもよい。
切り出された種結晶10のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、10μm以上1000μm以下である。最大径は、第1の実施形態で説明した概念と同様である。その他、径が1000μm以上となった単結晶21を加工して得られる複数の基板状結晶あるいは柱状結晶を種結晶10としてもよい。
<窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法>
本実施形態の窒化ガリウム系半導体単結晶の製造方法は、第1の実施形態に準じて実現することができる。
<作用効果>
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を実現することができる。
なお、本発明者は、単結晶21をスライスして得られる基板状の種結晶10を用いて拡大成長させた場合、種結晶10は、拡径しながら、又は径を保ちながら成長することを確認している。いずれにおいても、大型な単結晶21を得ることができる。
<変形例>
ここで、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば前記各実施形態では、種結晶10をHVPE法により成長させていたが、これに限らず、MOCVD法で成長させてもよい。ただし、比較的成長速度の速いHVPE法により成長させることで、MOCVD法と比較して短時間で種結晶10が得られるという利点がある。
さらに、前述の実施形態では、複数の核が合体しないように、III族ハロゲン化物ガスの分圧等を調整するとしたが、これに限らず、例えば、複数の核が形成された後、一部の核を除去して、核同士の間隔をあけ、残った複数の核を成長させて種結晶10を製造してもよい。
また、核を形成する際、あるいは形成後に、立設部12へむけて塩化水素ガスを供給し、立設部12上に形成される核の一部が塩化水素ガスでエッチングされるようにしてもよい。このようにすることで、核間の間隔を広く確保することができ、核同士を合体させずに、種結晶10を成長させることができる。
さらに、第1の実施形態では、立設部12上に形成した種結晶10をそのまま用い、当該種結晶10を拡大成長させて、窒化ガリウム系半導体の単結晶21を得たが、拡大成長の前に種結晶10を一度立設部12上から取り外し、再度保持させた後に、種結晶10を拡大成長させることもできる。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
(種結晶の製造)
第1の実施形態と同様の方法で種結晶10を製造した。
具体的には、種結晶形成用部材としては、図5及び6に示した種結晶形成用部材1を使用した。種結晶形成用部材1は、基材11と、立設部12とを備える。基材11には雌ねじとなる凹部111が形成され、立設部12は、基材11に対して螺合しており、着脱可能である。
基材11の材料は、グラファイトであり、立設部12の材料はグラファイトである。また、立設部12は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部12間の間隔は、5mmであり、種結晶形成用部材1の基材11表面側からみて、立設部12は、正方格子の格子点上に配置されている。そして、図8に示すようなHVPE装置3を使用し、立設部12上に核を形成し種結晶10を形成した。製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
成長温度:1080℃
原料ガス:HClガス 40cc/min、NHガス300cc/min
キャリアガス:Hガス 16L/min
ソース :Gaソース(850℃)
成長時間:15時間
(結果)
本実施例では、複数の核から、複数の種結晶10を得ることができた。また、互いに合体していない、複数の単結晶の種結晶10を得ることができた。
また、種結晶10の表面を、種結晶10のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野には、+c極性領域(Ga極性領域)20と、−c極性領域(N極性領域)30とが含まれていた。なお、当該観察にあたっては、数多くの結晶について、アズグロウン状態の表面モフォロジーとコントラストをSEMで観察した後、先端を研磨してc面を表出させ、リン酸硫酸エッチング耐性による極性判別を行って、対応を調査することにより、アズグロウンの表面モフォロジーとコントラストが+c極性と−c極性とで特徴的に異なっていることを予め確認した。このことにより、アズグロウン結晶の極性判別が表面SEM観察のみでほぼ可能となった。
また、種結晶10のc軸と平行な方向から観察したときの視野における+c極性領域20と−c極性領域30との面積比は、5:95〜47:53であった。
また、種結晶10のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、50〜150μmであり、高さ(厚みH)/直径(L)は、0.5〜20であった。
(窒化ガリウム系半導体単結晶の製造)
上述のようにして、立設部12上に種結晶10を形成した後、種結晶形成用部材1をHVPE装置3から取り出し、一部の立設部12を種結晶形成用部材1から取り外した。そして、立設部12間の間隔を20mmとした。その後、再度、種結晶形成用部材1をHVPE装置3内に配置し、複数の種結晶10を同時に拡大成長させた。製造条件は以下の通りである。
製造方法:HVPE法
成長温度:1050℃
原料ガス:HClガス 50cc/min、NHガス1.0L/min
キャリアガス:Hガス 7L/min
ソース :Gaソース(850℃)
成長時間:50時間
(結果)
上記成長時間で、複数の種結晶10は互いに合体することなく成長し、直径5mm程度、高さ8mm程度の複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。その形状は六角柱状であった。
また、得られた結晶(種結晶を拡大成長させた結晶)は、X線回折でいずれも単結晶(半値幅FWHMが70arcsec以下)であることがわかった。
また、単結晶をスライスし、基板を得た。そして、基板の表面をリン酸硫酸溶液中で240℃、1.5時間処理してエッチピットを形成し、基板の転位密度を評価したところ、いずれも良好な結晶品質であることがわかった。
(実施例2)
(種結晶の製造)
第2の実施形態と同様の方法で種結晶10を製造した。
すなわち、実施例1で得られた窒化ガリウム系半導体単結晶から、最大径2mm、高さ3mmの四角柱形状の単結晶を、ダイヤモンドワイヤーソーを用いて切り出しを行い、切り出し面全ての研磨を行った。また、研磨後に有機洗浄、王水洗浄を行った後、ドライエッチング装置で5μm程度のエッチングを行って、加工変質層を除去した。その後100℃に保温したリン酸硫酸溶液(リン酸:硫酸=1:1)を含む溶液中で30minエッチング処理を行なった。水洗してNブローにより乾燥を行った。
そして、切り出した単結晶を観察することで、これらの中から、種結晶の表面を、種結晶のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野に、+c極性領域(Ga領域)と、−c極性領域(N領域)とが含まれている種結晶10を取り出した。
(結果)
このような方法では、互いに合体していない、複数の単結晶の種結晶10を得ることができた。
また、種結晶10の表面を、種結晶10のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野には、+c極性領域(Ga極性領域)20と、−c極性領域(N極性領域)30とが含まれていた。なお、当該観察では、リン酸硫酸のエッチング後のモフォロジ−変化をSEM観察することにより、+c極性領域と−c極性領域の判別を行った。
また、種結晶10のc軸と平行な方向から観察したときの視野における+c極性領域20と−c極性領域30との面積比は、2:98程度であった。
また、種結晶10のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、2mm程度であり、高さ(厚みH)/直径(L)は、1.5程度であった。
(窒化ガリウム系半導体単結晶の製造)
上述のようにして、立設部12上に種結晶10を形成した後、実施例1と同様な手段により、窒化ガリウム系半導体単結晶を製造した。
(結果)
上記成長時間で、複数の種結晶10は互いに合体することなく成長し、直径5mm程度、高さ8mm程度の複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。その形状は六角柱であった。
また、得られた結晶(種結晶を拡大成長させた結晶)は、X線回折でいずれも単結晶(半値幅FWHMが70arcsec以下)であることがわかった。
また、単結晶をスライスし、基板を得た。そして、基板の表面をリン酸硫酸溶液中で240℃、1.5時間処理してエッチピットを形成し、基板の転位密度を評価したところ、いずれも良好な結晶品質であることがわかった。
(実施例3)
(種結晶の製造)
第3の実施形態と同様の方法で種結晶10を製造した。
すなわち、実施例1で得られた窒化ガリウム系半導体単結晶をスライスし、最大径5mm、高さ0.5mmの基板状の種結晶を得た。
(結果)
このような方法では、複数の基板状の種結晶10を得ることができた。
また、種結晶10の表面を、種結晶10のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野には、+c極性領域(Ga極性領域)20と、−c極性領域(N極性領域)30とが含まれていた。なお、当該観察は、実施例2と同様な手段で行った。
また、種結晶10のc軸と平行な方向から観察したときの視野における+c極性領域20と−c極性領域30との面積比は、0.6:99.4程度であった。
(窒化ガリウム系半導体単結晶の製造)
上述のようにして、立設部12上に種結晶10を形成した後、実施例1と同様な手段により、窒化ガリウム系半導体単結晶を製造した。
(結果)
上記成長時間で、直径8mm程度、高さ12mm程度の複数(種結晶と同数)の単結晶を得ることができた。その形状は六角柱状であった。
また、得られた結晶(種結晶を拡大成長させた結晶)は、X線回折でいずれも単結晶(半値幅FWHMが70arcsec以下)であることがわかった。
また、単結晶をスライスし、基板を得た。そして、基板の表面をリン酸硫酸溶液中で240℃、1.5時間処理してエッチピットを形成し、基板の転位密度を評価したところ、いずれも良好な結晶品質であることがわかった。
(比較例1)
(種結晶の製造)
比較例1の種結晶(以下、「比較例1種結晶」という)として、種結晶の表面を、種結晶のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野に、+c極性領域のみが観察される種結晶を準備した。比較例1種結晶のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、1mmであり、高さ(厚みH)/直径(L)は、0.85であった。
(窒化ガリウム系半導体単結晶の製造)
種結晶形成用部材4としては、図14に示したものを使用した。種結晶形成用部材4は、基材41と、立設部42とを備える。基材41、立設部42の材料はグラファイトである。また、立設部42は、円柱形状であり、その径は、3mmである。立設部42間の間隔は、20mmであり、種結晶形成用部材4の基材41表面側からみて、立設部42は、正方格子の格子点上に配置されている。
立設部42の先端に、アルミナを母材とする接着剤6を塗布し、比較例1種結晶43を、比較例1種結晶43のc軸方向と立設部42の中心軸の方向がなるべく一致するように固定した。なお、+c極性が図14中上側を向くように固定した。その後、種結晶形成用部材4をHVPE装置3内に配置し、実施例1と同様の成長条件で、比較例1種結晶43を成長させた。
(結果)
上記成長時間で、比較例1種結晶は、直径2mm程度、高さ1.7mm程度まで成長した。その形状は六角錐形状であった。また、六角錐先端付近に多結晶が発生することがあった。
−c極性領域のみが観察される種結晶についても同様に試験した結果、全く成長しないか、成長したとしても成長速度が著しく遅く、−c極性面に多結晶が発生することがあった。
以下、参考形態の例を付記する。
1. Ga及びNを含む混晶からなり、窒化ガリウム系半導体の結晶成長に用いられる種結晶であって、
前記種結晶の表面を、前記種結晶のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野に、+c極性領域と、−c極性領域とが含まれる種結晶。
2. 1に記載の種結晶において、
前記+c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、+c極性面、及び、+c極性面から90°未満の範囲で傾いた面であって当該傾斜面をc面と平行に平面研磨すると+c極性面が表出する面、の少なくとも一方を含む領域であり、
前記−c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、−c極性面、及び、−c極性面から90°未満の範囲で傾いた面であって当該傾斜面をc面と平行に平面研磨すると−c極性面が表出する面、の少なくとも一方を含む領域である種結晶。
3. 1に記載の種結晶において、
前記+c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、(0001)、{h−h0l}、及び、{hh−2hl}の中の少なくとも1つの面を含む領域(h、lは自然数)であり、
前記−c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、(000−1)、{aa0−c}、及び、{aa−2a−c}の中の少なくとも1つの面を含む領域(a、cは自然数)である種結晶。
4. 1から3のいずれかに記載の種結晶において、
前記視野において、前記−c極性領域の面積が前記+c極性領域の面積よりも大きい場合、当該視野における前記−c極性領域と前記+c極性領域の面積比は、50:50〜99:1である種結晶。
5. 1から3のいずれかに記載の種結晶において、
前記視野において、前記+c極性領域の面積が前記−c極性領域の面積よりも大きい場合、当該視野における前記−c極性領域と前記+c極性領域の面積比は、50:50〜1:99である種結晶。
6. 1から5のいずれかに記載の種結晶において、
前記種結晶のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、10μm以上1000μm以下である種結晶。
7. 1から6のいずれかに記載の種結晶を用い、前記+c極性領域及び前記−c極性領域が含まれる前記視野に含まれる結晶面を結晶成長面として、窒化ガリウム系半導体を結晶成長する窒化ガリウム系半導体の製造方法。
8. 7に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
前記結晶成長の処理中に、前記窒化ガリウム系半導体に1×10 17 cm −3 以上の酸素がドープされる窒化ガリウム系半導体の製造方法。
9. 7または8に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
前記結晶成長後の前記窒化ガリウム系半導体の結晶成長面において、前記−c極性領域の面積が、前記+c極性領域の面積よりも大きい窒化ガリウム系半導体の製造方法。
10. 7から9のいずれかに記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
前記結晶成長後の前記窒化ガリウム系半導体の結晶成長面において、前記−c極性領域が、前記+c極性領域を取り囲んでいる窒化ガリウム系半導体の製造方法。
11. 7から10のいずれかに記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法を用いて得られた前記窒化ガリウム系半導体をスライスして基板を得る基板の製造方法。
1 種結晶形成用部材
3 HVPE装置
4 種結晶形成用部材
6 接着剤
10 種結晶
11 基材
12 立設部
13 支持部
20 +c極性領域
21 単結晶
30 −c極性領域
31 反応管
33 ガス導入管
34 ガス導入管
35 ヒータ
36 成長領域
37 ソース
38 排出口
39 ソースボート
41 基材
42 立設部
43 種結晶
111 凹部

Claims (9)

  1. Ga及びNを含む混晶からなり、窒化ガリウム系半導体の結晶成長に用いられる種結晶であって、前記種結晶の表面を、前記種結晶のc軸と平行な2つの方向の中の一方から観察したときの視野に、+c極性領域と、−c極性領域とが含まれる前記種結晶を用い、前記+c極性領域及び前記−c極性領域が含まれる前記視野に含まれる結晶面を結晶成長面として、窒化ガリウム系半導体を結晶成長させ、
    前記結晶成長後の前記窒化ガリウム系半導体の結晶成長面において、前記−c極性領域が、前記+c極性領域を取り囲んでいる窒化ガリウム系半導体の製造方法。
  2. 請求項1に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記+c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、+c極性面、及び、+c極性面から90°未満の範囲で傾いた面であって当該傾斜面をc面と平行に平面研磨すると+c極性面が表出する面、の少なくとも一方を含む領域であり、
    前記−c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、−c極性面、及び、−c極性面から90°未満の範囲で傾いた面であって当該傾斜面をc面と平行に平面研磨すると−c極性面が表出する面、の少なくとも一方を含む領域である窒化ガリウム系半導体の製造方法
  3. 請求項1に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記+c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、(0001)、{h−h0l}、及び、{hh−2hl}の中の少なくとも1つの面を含む領域(h、lは自然数)であり、
    前記−c極性領域は、種結晶の表面に位置する領域であって、(000−1)、{aa0−c}、及び、{aa−2a−c}の中の少なくとも1つの面を含む領域(a、cは自然数)である窒化ガリウム系半導体の製造方法
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記視野において、前記−c極性領域の面積が前記+c極性領域の面積よりも大きい場合、当該視野における前記−c極性領域と前記+c極性領域の面積比は、50:50〜99:1である窒化ガリウム系半導体の製造方法
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記視野において、前記+c極性領域の面積が前記−c極性領域の面積よりも大きい場合、当該視野における前記−c極性領域と前記+c極性領域の面積比は、50:50〜1:99である窒化ガリウム系半導体の製造方法
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記種結晶のc軸方向に対して垂直な断面における最大径は、10μm以上1000μm以下である窒化ガリウム系半導体の製造方法
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記結晶成長の処理中に、前記窒化ガリウム系半導体に1×1017cm−3以上の酸素がドープされる窒化ガリウム系半導体の製造方法。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法において、
    前記結晶成長後の前記窒化ガリウム系半導体の結晶成長面において、前記−c極性領域の面積が、前記+c極性領域の面積よりも大きい窒化ガリウム系半導体の製造方法。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の窒化ガリウム系半導体の製造方法を用いて得られた前記窒化ガリウム系半導体をスライスして基板を得る基板の製造方法。
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