JP5631984B2 - ナノ結晶セルロースを用いて処方した航空機用防氷液 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
[発明の分野]
本発明は、ナノ結晶セルロースを用いて処方した航空機用防氷液及びその適用に関する。
[発明の背景]
米国連邦航空局(FAA)、カナダ運輸省及び他の国際的な同等の機関により確立された規制は、航空機の翼、プロペラ又は操縦翼面に、霜、氷又は雪が付着した際には、いかなる航空機の離陸も禁止している。規制はまた、運航者が承認済みの除氷又は防氷プログラムを有していない限り、航空機に霜、氷又は雪が付着することを合理的に予測し得る、いかなる時点の離陸も禁止している。
北米及び欧州の航空界で発達した慣行は、積もった雪及び他の着氷性の降水を除氷し、次いで、離陸の前に航空機を防氷するものである。航空機の除氷及び防氷の目的は、離陸前及び離陸時において、航空機の翼と他の空力的に敏感な領域をきれいに保つことである。
航空機の除氷は、既に着氷性の降水(freezing precipitates)が積もった航空機の表面をきれいにするため、加熱した航空機用除氷液を適用することにより行われる。市販の除氷液は、一般に、凝固点降下剤として作用するエチレングリコール又はプロピレングリコールと水との混合物等のグリコール溶液である。
航空機の防氷は、処理する航空機表面上における霜又は氷の継続的形成、及び雪又は水雪の積もりから防護する予防的な処置である。航空機の防氷は、航空機が除氷された後に、航空機用防氷液(AAF)を適用することにより行われる。防氷液は、水溶性ポリマーを用いて増粘したグリコール溶液であることが多い。AAF中におけるグリコール溶液及び水溶性ポリマーの典型的な濃度は、それぞれ40〜95重量%及び0.1〜0.5重量%である。AAFは通常、航空機の表面上に一時的な防護層を形成するため、加熱せずに適用される。AAFの層は氷結した降水(frozen precipitation)よりも低い凝固点を有し、氷結した降水は防氷液と接触すると融解する。
水溶性ポリマー増粘剤は、防氷液が傾斜した航空機の表面から流れ落ちるのを防ぐ。これは、航空機が離陸に向けて待機している間、繰り返し防氷液を適用することを必要とすることなく降水から航空機を守るのに重要である。しかし、融解する降水によって液層が希釈されていくにつれ、度々その粘度は下がり、防氷液層は薄まって効果が低くなり、氷結した降水が積もり始める。
逆に、濃すぎる防氷液は、離陸時にみられるような高剪断速度においてさえ航空機の表面に粘着するであろう。これは、不安定な空力特性につながる可能性があり、航空機の揚力及びバランスについての有害な影響を有する。
故に、地上走行及び待機時のような低剪断状態の間、濃さ及び粘度を保持し、しかしまた高剪断状態、すなわち離陸時においては容易にずり落ちる、航空機用防氷液の増粘剤を開発することが極めて重要である。このような非ニュートン流体は、異なる剪断状態において粘度を有利に変化させるはずである。
[発明の概要]
本発明は、凝固点降下剤及びナノ結晶セルロースを含む増粘剤を含む、航空機用防氷組成物を提供する。
本発明はまた、水溶性ポリマー増粘剤及びナノ結晶セルロースを含む、増粘組成物を提供する。
本発明は、防氷組成物の製造におけるナノ結晶セルロースの使用をさらに提供する。
本発明はさらに、増粘組成物中におけるナノ結晶セルロースの使用を提供する。
ここで、本発明を以下の図面に関してさらに詳細に説明する。
防氷液を塗布された航空機の翼の断面図であり、翼の表面全体に防氷液により形成された防護層を示している。 本発明のナノ結晶セルロースを作製する2つの好適な方法の概略図である。 ヒドロキシエチルセルロース(HEC)単独、0.5%のナノ結晶セルロース(NCC)と併用したHEC、0.5%のコロイド状微結晶(MCC)と併用したHEC、2%のNCC及び2%のMCCの粘度対剪断速度を示すグラフである。
[好適な実施形態の詳細な説明]
本発明について説明する際、本明細書中で定義されていない全ての用語は、それらの一般的な当技術分野で認識されている意味を有する。本明細書中で使用される場合、用語「約」は、プラスマイナス10%の範囲差、又は適切な測定装置若しくは機器の許容誤差の範囲内を指す。
航空機用防氷液の評価においては、2つの重要な性能特性、すなわち来るべき氷結した降水に対する防護時間又は保持時間及び離陸時の航空機表面に対する防氷液の空力的影響がある。以下に、これらをさらに詳細に論じる。
SAE規格は、防氷性能に対する2つの要求事項、すなわち水噴霧耐性試験(WSET)及び高湿度耐性試験(HHET)を規定しており、それらは耐候試験室にて実施される。
WSETにおける降水の速度は、典型的には5g/dmhであり、気温及び表面温度は−5.0℃に設定される。高湿度耐性試験(HHET)は、典型的には一晩駐機する間の霜の蓄積を表すものである。HHETにおける氷の凝結の速度は、典型的には0.3g/dmhであり、気温は0℃に設定され、表面温度は−5℃に設定され、空気湿度は96%に設定される。
試験の手順は、WSET及びHHET両試験とも同様である。防氷液の薄膜を適用し、液体が安定した厚さに達するための5分間の静置時間の後、降水を開始する。氷が2.5cm長に達するのに必要とした時間を、防氷液の標準的な保持時間として記録する。図1は、氷結した降水14から防護する防氷液12の層を塗布された航空機の翼10を示す。
航空機の翼表面上に留まっている除氷液及び防氷液は、通常、気流の剪断作用によって離陸時に流れ落ちなければならない。液体の粘度が高く離陸速度においてずり落ちない場合、これは航空機の空力性能及び揚力損失特性に有害な影響を及ぼし得る。さらには、液体は低い気温において、一般に粘性が高まり、該液体が流れ落ちるのをより困難にする。
航空機が離陸走行において速度を増すと、空力的剪断力によって液体は航空機の表面から流れ落ちる。航空機からずり落ちる液体の量は、離陸走行時に達する速度及びそのような速度に達するまでの時間による。2つの別個の空力的合格基準があり、1つはターボジェット等の回転速度が速めの航空機用、1つはターボプロップコミューター等の回転速度が遅めの航空機用である。試験の目的は、除氷液又は防氷液が、離陸時、すなわち地上での加速及び上昇の際に航空機の表面から流れ落ちるときに、それらが許容空力特性を有する最も低い温度を求めることである。
除氷液及び防氷液に対するSAEの空力的合格基準は、低温風洞内における平板上での境界層の排除厚さ(BLDT)の評価に基づく。BLDTは、航空機離陸時の揚力損失に直接関係する。この試験時に、試験部分の床面に残った液体の量も測定し報告される。
航空機上での液体の性能特性に加えて、液体はまた良好な取り扱い特性を有していなければならず、その流動性は、航空機表面への噴霧前及び噴霧時における液体の取り扱い中に劣化するべきではない。したがって、剪断安定性及び熱安定性は、航空機用防氷液の2つの重要な取り扱い特性である。
航空機用防氷液は、貯蔵タンクから除氷車へポンプで送られ、スプレーノズルを通して噴霧される。この種の流れは、防氷液において高剪断速度を生じさせる。高分子量のポリマー増粘剤は、剪断速度に対して本質的に敏感であり、度々分解して、その増粘特性及び粘度上昇特性を恒久的に失う。防氷組成物中のポリマー増粘剤が分解すれば、当然粘度が下がり、液体はその氷に対する防護特性を失う。故に防氷液配合物は、統制された試験手順下において、その低剪断速度粘度の20%超を失わないことが求められる。
防氷液配合物は、航空機の表面上において最大の塗布効率を得るため、一般的に加熱せずに適用される。それでもやはり、配合物中のポリマー増粘剤は、加熱下で分解し、恒常的な粘度の低下を起こすべきではない。
本発明は、ナノ結晶セルロースの形での新規な増粘剤及び増粘剤成分を提供する。
セルロースは、ヘミセルロース及びリグニンと共に木質バイオマス及び農業バイオマスを構成する天然ポリマー材料である。それは、1−4 β−グリコシド結合により連結されたグルコースの繰り返し単位のホモポリマーである。1−4 β−結合によってセルロースは直鎖状に形成され、それらは水素結合を通して相互に強力に作用し合う。その規則的な構造及び強力な水素結合のため、セルロースポリマーは高結晶質であり、凝集して部分構造体及びミクロフィブリルを形成する。次に、ミクロフィブリルが凝集して、セルロース系繊維を形成する。
木質バイオマス又は農業バイオマスから精製したセルロースは、細菌のプロセスにより大規模に崩壊又は生成することができる。セルロース系材料がナノサイズの繊維により構成され、該材料の性質がそのナノファイバーの構造により決定する場合、これらのポリマーはナノセルロースと言われる。一般的に、ナノセルロースは、およそ20〜200の長さ/直径比を有する棒状のフィブリルである。好ましくは、ナノセルロースは、約60nm未満、より好ましくは約4nm〜約15nmの直径、及び約150nm〜約350nmの長さを有する。
一般的にナノセルロースの調製は2つの方法により説明することができ、そのいずれも図2に示されている。第1の方法においては、ナノセルロースは、木質繊維又は農業繊維の化学パルプから、主に酸加水分解によって非晶領域を除き、次いでナノサイズのフィブリルを生成することにより調製することができる。最終段階において、個々のウィスカー又は微結晶は、超音波処理するか、又は高剪断マイクロフルイダイザーに通すかのいずれかによって、水性懸濁液中で生成及び安定化される。この種の調製材料は、ナノ結晶セルロース(NCC)、セルロースナノ結晶、セルロースナノファイバー又はセルロースウィスカーと称される。
第2の方法は、主に物理的処理である。セルロースミクロフィブリル又はミクロフィブリル化セルロースと呼ばれる、数十ナノメートル(nm)〜数マイクロメートル(μm)の直径を有するミクロフィブリルの束が、高圧均質化及び粉砕処理を用いることにより生成される。高強度超音波処理を用いた新規な工程も、天然のセルロース繊維からフィブリルを単離するのに用いられてきた。高強度超音波は、非常に強い機械的振動力を生み出すことができ、そのためセルロースフィブリルのバイオマスからの分離が、超音波の流体力の作用によって可能となる。この方法は、約60nm未満、より好ましくは約4nm〜約15nmの直径、及び1000nm未満の長さを有するミクロフィブリル化セルロースを生成する。ミクロフィブリル化セルロースには、任意選択によりさらに化学的、酵素的及び/又は機械的処理を施すことができる。
上記の工程により調製されるようなナノ結晶セルロース及びミクロフィブリル化セルロースは、増粘剤として使用した場合、単独でも、従来の水溶性ポリマー増粘剤を含む増粘組成物中でも有効であることが判明した。これらの増粘組成物をさらに、周知の凝固点降下剤及び他の一般に知られている添加剤と組み合わせて、有効な防氷組成物を形成することができる。
防氷配合物の理想的なレオロジー調整システムは、航空機が停止している間に増粘して航空機の表面に塗布層を形成するべきである。さらに、液体の粘度は、来るべき着氷性の雨の結果による希釈と共に急激に下がるべきではない。
防氷配合物は、航空機が静止している間に、重力の下で、傾斜した航空機の表面上を流れるべきではない。静止時の傾斜表面上の防氷液に対応する流れの剪断速度は、0.01〜0.2sec−1である。故に、レオロジー調整剤の増粘効率及び防氷防護特性は、本明細書で低剪断速度(LSR)として定義する0.13sec−1における粘度を測定することにより評価できる。傾斜した航空機の翼表面上に防氷液の濃い防護層を形成するためには、0.13sec−1剪断速度における粘度は、可能な限り高いことが望ましく、5Pa・s超がより好ましい。さらに、このような高粘度によって、着氷性の雨での希釈による層の減粘が緩和される。
図3は、5つの異なる増粘剤組成物の粘度−剪断速度の関係を示し、NCCを含む増粘剤の低剪断速度粘度の有意な上昇を示している。2%のMCCの低剪断粘度は2%のNCCよりも高いものの、HECと併用した0.5%のNCCを含む増粘剤は、同じ剪断速度におけるHECと併用した0.5%のMCCよりもほぼ2桁分高い低剪断粘度を示していることが分かる。
揚力損失の影響を最小限にするためには、防氷配合物は、航空機の速度の加速時に波の形成を最小限にして容易に流れ落ちるべきである。流れ落ちるときの剪断速度は、10〜20sec−1の剪断速度範囲に相当する。防氷液の粘度は、この剪断速度範囲において低くなければならず、且つ生じ得る気温低下と共に急激に上昇するべきではない。BLDT試験を通過するためには、20sec−1における粘度は0.75Pa・sより高くてはならない。故に、本明細書で高剪断速度(HSR)として定義する20sec−1において測定される防氷粘度を用いて、揚力損失及びBLDT性能の特性を評価することができる。
本発明において使用するセルロースナノファイバーは、一般の水溶性ポリマー増粘剤のポリマー鎖との可逆的な物理的連結を形成する水素結合のネットワーク中に取り込まれ、それによって増粘組成物の粘度を上昇させるものと仮定される。該物理的連結は、分枝状ポリマー増粘剤同士の間における化学結合とも、また会合性ポリマー増粘剤同士の間における疎水的相互作用とも異なる。該物理的連結は高剪断状態では容易に壊れ、それによって航空機離陸時における低粘度が可能となる。該物理的連結は、次いで剪断速度が低下すると、再形成する傾向がある。この可逆的な連結によって、航空機用防氷液に必要とされる、所望のLSR状態における高粘度及びHSR状態における低粘度が得られる。それにより、高剪断状態下での分枝状ポリマー増粘剤に典型的にみられる損傷も回避される。
ナノ結晶セルロースと併用して本件の増粘組成物を形成し得る水溶性ポリマー増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロース(HMEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、架橋ポリアクリレート、カルボキシポリメチレン、キサンタンガム、グアーガム及びカラギーナン等の多糖を挙げることができる。増粘組成物は、好ましくは、該増粘組成物の0.1〜1.0重量%の量のナノ結晶セルロース、及び該増粘組成物の0.1〜5.0重量%の量の1つ又は複数のポリマー増粘剤により構成される。最も好適な増粘組成物は、0.5重量%のナノ結晶セルロース及び0.2重量%のヒドロキシエチルセルロース又は他の水溶性ポリマーである。
本発明の航空機用防氷液はまた、一般に凝固点降下剤を含有する。凝固点降下剤は、典型的にはアルカリ性グリコール水溶液で構成し得る。防氷液配合物のグリコール成分は、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは50〜95重量%である。AAFのグリコール成分は、好ましくはエチレングリコール又はプロピレングリコールのいずれかである。しかし、ジエチレングリコール、トリエチレントリオール及び1,2−プロパンジオール等のジオールもまた使用することができる。防氷液のアルカリ度は、例えば、トリエチルアミン(TEA)及び/又は水酸化カリウム(KOH)を添加することにより調節して、約8.5の範囲のpHを達成することができる。
本発明の防氷組成物は、増粘剤としての単独のナノ結晶セルロース、又は任意選択により1つ若しくは複数の防氷液用の水溶性ポリマー増粘剤と併用するナノ結晶セルロースを用いて作製することができる。ナノ結晶セルロース成分は、好ましくは防氷組成物の0.25〜5重量%の量で存在し、より好ましくは防氷組成物の0.25〜2重量%である。1つ又は複数のポリマー増粘剤と混合した場合、ポリマー増粘剤は、好ましくは防氷組成物の0.1〜2重量%の量で存在し、より好ましくは該組成物の0.1〜0.5重量%である。水溶性ポリマーは、例えば、架橋ポリアクリレート、カルボキシポリメチレン、キサンタンガム、グアーガム及びカラギーナン等の多糖、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースでもよい。他の適切な増粘剤もまた、本発明の範囲を逸脱することなく本発明と併用し得ることを、当業者には理解されよう。
任意選択により界面活性剤を添加して、適用時における噴霧性及び湿潤性を改善すること、及びポリマーレオロジー調整剤との会合により増粘レベルを調節することも可能である。
さらに防氷液配合物は、任意選択により腐食防止剤、消泡剤、着色剤及び防炎剤のうちの1つ又は複数を含有することも可能である。
[実施例]
以下の実施例は、本発明の態様をよりよく例示するのに役立つものの、その範囲を限定するものではない。
本発明のナノ結晶セルロースを、レオロジー調整剤として、単独及び他の公知の増粘剤との併用の双方により試験した。エチレングリコール/水 50/50混合の一般の防氷液配合物を、全ての実施例において使用した。防氷液のアルカリ度は、トリエチルアミン(TEA)及び水酸化カリウム(KOH)の添加によりpH8.5に維持された。界面活性剤及び他の添加剤を、本発明の範囲から逸脱することなく、当該組成物に添加することも可能であった。
実施例1:ヒドロキシエチルセルロース及びナノ結晶セルロースを用いた増粘剤
ナノ結晶セルロース(NCC)を併用した場合及び併用しない場合のヒドロキシエチルセルロース(HEC)の防氷増粘剤としての性能を試験して、ナノ結晶セルロースの添加が、(離陸前の)低剪断速度及び(離陸時の)高剪断速度における増粘性にどのように影響を与えるか確認した。HECの3つの異なる分子量について試験した。結果を以下の表1、2及び3に示す。
Figure 0005631984
Figure 0005631984
Figure 0005631984
これらの表から、各分子量において、HEC単独による粘度は、低剪断から高剪断の状態にかけてほとんど変化しないことが確認できる。異なる分子量でのHECの粘度もまた、低剪断から高剪断の状態にかけてほとんど変化しない。しかし、ナノ結晶セルロースの添加に伴い、3つの全ての事例において低剪断粘度が上昇し、液体はなお高剪断速度における望ましい低粘度を維持した。NCCを添加した場合のHECの分子量が高いほどまた低剪断粘度が上昇し、その一方で高剪断速度における望ましい低粘度が維持された。ナノ結晶セルロースの添加によって、増粘剤の非ニュートン特性は向上した。それは、より長い保持時間につながる離陸前のより高い粘度、及び離陸時の空力的揚力損失を低減するための高剪断におけるより低い粘度を示した。高分子量のポリマーの使用によりまた、本発明に記載されているより低濃度の水溶性ポリマー及びNCCも可能となり得る。
実施例2:疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロース及びナノ結晶セルロースを用いた増粘剤
疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)を増粘剤として使用して、ナノ結晶セルロースを添加した場合及び添加しない場合につき、実施例1と同様の試験を行った。この試験の結果を以下の表4に示す。
Figure 0005631984
HECと同様にHMECは、低剪断から高剪断の状態にかけて粘度の変化をほとんど示さず、よりニュートン流体らしく作用した。しかし、ナノ結晶セルロースの増粘剤への添加によって、低剪断粘度は劇的に上昇し、はるかに良好な防護時間が得られた。ナノ結晶セルロースを添加された増粘剤の高剪断粘度は、非常に低いままに留まり、空力的揚力の損失がほとんどないことを保証した。
実施例3:カルボキシメチルセルロース及びナノ結晶セルロースを用いた増粘剤
カルボキシメチルセルロース(CMC)を増粘剤として使用して、ナノ結晶セルロースを添加した場合及び添加しない場合につき、実施例1と同様の試験を行った。結果を以下の表5に示す。
Figure 0005631984
HEC及びHMECと同様に、CMCもまた、単独で増粘剤として使用した際には、低剪断から高剪断の状態にかけて粘度の変化をほとんど示さなかった。しかし、ナノ結晶セルロースの増粘剤への添加によって、低剪断粘度は劇的に上昇する一方、高剪断粘度は低いままに留まった。
以下の表6、7及び8は、異なるHEC及びNCC濃度に対する高剪断速度及び低剪断速度での粘度を示す。
Figure 0005631984
Figure 0005631984
Figure 0005631984
表6を参照すると、HECは濃度の上昇に伴い、好ましくない揚力損失特性につながる高剪断速度での粘度の有意な上昇を示している。表7にみられるように、高剪断速度では、NCC単独はHEC単独よりも良好に性能を発揮し、また表8にみられるように、0.2%のHECとNCCとの組合せは、低剪断における高粘度及び高剪断における低粘度のいずれも望ましい形で示す。最も好ましいのは、5Pa・s超の低剪断粘度及び0.8Pa・s未満の高剪断粘度を生み出すNCC及びHECの濃度である。
当該組成物及び方法のこの詳細な説明は、本発明のいくつかの実施形態を例示するのに使用される。添付の特許請求の範囲による以外は制限されることのない本出願の範囲から逸脱することなく、本組成物及び方法において様々な修正を行い得ること、及び様々な代替実施形態を利用し得ることは、当業者には自明であろう。

Claims (38)

  1. a.凝固点降下剤、及び
    b.ナノ結晶セルロース及び1つ又は複数の水溶性ポリマー増粘剤を含む増粘剤
    を含む航空機用防氷組成物。
  2. 前記凝固点降下剤がグリコール水溶液である、請求項1に記載の航空機用防氷組成物。
  3. 前記グリコール水溶液が、前記航空機用防氷組成物の少なくとも40重量%を構成する、請求項2に記載の航空機用防氷組成物。
  4. 前記グリコール水溶液が、前記航空機用防氷組成物の50〜95重量%を構成する、請求項3に記載の航空機用防氷組成物。
  5. 前記グリコール水溶液が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレントリオール及び1,2−プロパンジオールからなる群から選択される、請求項2に記載の航空機用防氷組成物。
  6. 前記ナノ結晶セルロースが、前記航空機用防氷組成物の0.25〜5重量%の量で存在する、請求項1に記載の航空機用防氷組成物。
  7. 前記ナノ結晶セルロースが、前記航空機用防氷組成物の0.25〜2重量%の量で存在する、請求項6に記載の航空機用防氷組成物。
  8. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、前記航空機用防氷組成物の0.1〜2重量%の量で存在する、請求項に記載の航空機用防氷組成物。
  9. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、前記航空機用防氷組成物の0.1〜0.5重量%の量で存在する、請求項に記載の航空機用防氷組成物。
  10. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、架橋ポリアクリレート、カルボキシポリメチレン、多糖、会合性合成ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項に記載の航空機用防氷組成物。
  11. 前記多糖が、キサンタンガム、グアーガム又はカラギーナンである、請求項10に記載の航空機用防氷組成物。
  12. 界面活性剤、腐食防止剤、消泡剤、着色剤及び防炎剤からなる群から選択される1つ又は複数の成分をさらに含む、請求項1に記載の航空機用防氷組成物。
  13. トリエチルアミン及び水酸化カリウムから選択されるpH調整剤をさらに含む、請求項1に記載の航空機用防氷組成物。
  14. 前記増粘剤として、前記ナノ結晶セルロースを前記航空機用防氷組成物の0.5重量%及びヒドロキシエチルセルロースを前記航空機用防氷組成物の0.2重量%含む、請求項1に記載の航空機用防氷組成物。
  15. a.水溶性ポリマー増粘剤、及び
    b.ナノ結晶セルロース
    を含む増粘組成物。
  16. 前記ナノ結晶セルロースが、前記増粘組成物の0.1〜1.0重量%の量で存在する、請求項15に記載の増粘組成物。
  17. 前記ポリマー増粘剤が、前記増粘組成物の0.1〜5.0重量%の量で存在する、請求項15に記載の増粘組成物。
  18. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、架橋ポリアクリレート、カルボキシポリメチレン、多糖、会合性合成ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項15に記載の増粘組成物。
  19. 前記多糖が、キサンタンガム、グアーガム又はカラギーナンである、請求項18に記載の増粘組成物。
  20. 前記ナノ結晶セルロースを0.5重量%及びヒドロキシエチルセルロースを0.2重量%含む、請求項17に記載の増粘組成物。
  21. 航空機用防氷組成物又は除氷組成物の製造における、1つ又は複数の水溶性ポリマー増粘剤と併用される、ナノ結晶セルロースの使用。
  22. グリコール水溶液である凝固点降下剤と併用される、請求項21に記載の使用。
  23. 前記グリコール水溶液が、前記航空機用防氷組成物の少なくとも40重量%を構成する、請求項22に記載の使用。
  24. 前記グリコール水溶液が、前記航空機用防氷組成物の50〜95重量%を構成する、請求項22に記載の使用。
  25. 前記グリコール水溶液が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレントリオール及び1,2−プロパンジオールからなる群から選択される、請求項22に記載の使用。
  26. 前記ナノ結晶セルロースが、前記航空機用防氷組成物の0.25〜5重量%の量で使用される、請求項21に記載の使用。
  27. 前記ナノ結晶セルロースが、前記航空機用防氷組成物の0.25〜2重量%の量で使用される、請求項21に記載の使用。
  28. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、前記増粘組成物の0.1〜2重量%の量で存在する、請求項21に記載の使用。
  29. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、前記増粘組成物の0.1〜0.5重量%の量で存在する、請求項21に記載の使用。
  30. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、架橋ポリアクリレート、カルボキシポリメチレン、多糖、会合性合成ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項21に記載の使用。
  31. 前記多糖が、キサンタンガム、グアーガム又はカラギーナンである、請求項30に記載の使用。
  32. 前記増粘剤が、前記ナノ結晶セルロースを0.5重量%及びヒドロキシエチルセルロースを0.2重量%含む、請求項21に記載の使用。
  33. 1つ又は複数の水溶性ポリマー増粘剤を含む増粘組成物中におけるナノ結晶セルロースの使用。
  34. 前記ナノ結晶セルロースが、前記増粘組成物の0.1〜1.0重量%の量で存在する、請求項33に記載の使用。
  35. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、前記増粘組成物の0.1〜5.0重量%の量で存在する、請求項34に記載の使用。
  36. 前記水溶性ポリマー増粘剤が、架橋ポリアクリレート、カルボキシポリメチレン、多糖、会合性合成ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及び疎水的に修飾されたヒドロキシエチルセルロースからなる群から選択される、請求項34に記載の使用。
  37. 前記多糖が、キサンタンガム、グアーガム又はカラギーナンである、請求項36に記載の使用。
  38. 前記増粘剤が、前記ナノ結晶セルロースを0.5重量%及びヒドロキシエチルセルロースを0.2重量%含む、請求項33に記載の使用。
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