以下、実施形態に係る車両用ウインドウシェード装置について説明する。
<全体構成>
図1は引出状態における車両用ウインドウシェード装置20を示す側面図であり、図2は収納状態における車両用ウインドウシェード装置20を示す側面図であり、図3は引出状態と収納状態との中間状態における車両用ウインドウシェード装置20を示す側面図である。なお、これらの図では、車両外側から見た状態を示している。
この車両用ウインドウシェード装置20は、車両において隣設するウインドウ10、12に組込まれ、当該ウインドウ10、12を車両内側から遮蔽及び開放可能に覆うように構成されている。ここでは、車両に略方形状のリアサイドウインドウ10(第1ウインドウ、図1〜図3で車両後方の一部のみ図示)が設けられ、このリアサイドウインドウ10からさらに車両後方に隣設して略三角形状のリアクオーターウインドウ12(第2ウインドウ)が設けられている。また、これらのリアサイドウインドウ10とリアクオーターウインドウ12との間にはピラー14が設けられている。
車両用ウインドウシェード装置20は、リアサイドウインドウ10を覆うための上下方向遮蔽用ウインドウシェード装置30(第1ウインドウシェード装置)と、リアクオーターウインドウ12を覆うための水平方向遮蔽用ウインドウシェード装置50(第2ウインドウシェード装置)とを備えている。そして、上下方向遮蔽用ウインドウシェード装置30の引出収納動作に連動して、水平方向遮蔽用ウインドウシェード装置50が引出収納動作するようになっている。
<上下方向遮蔽用ウインドウシェード機構>
上下方向遮蔽用ウインドウシェード装置30は、上下方向遮蔽用ウインドウシェード32(第1ウインドウシェード)と、上下方向遮蔽用巻取装置36(第1巻取装置)とを備えている。
上下方向遮蔽用ウインドウシェード32は、布或は樹脂シート等によりリアサイドウインドウ10を遮蔽可能な形状に形成されている。ここでは、上下方向遮蔽用ウインドウシェード32は、リアサイドウインドウ10と略同じ大きさ及び形状に形成されている。また、第1ウインドウシェード32の先端部には、樹脂或は金属等によって形成された略棒状のステイ34が取付けられている。上下方向遮蔽用ウインドウシェード32を引出した状態で、ステイ34をリアサイドウインドウ10の上方に存在する車両側部位に引っかける等して固定できるようになっている。
上下方向遮蔽用巻取装置36は、上下方向遮蔽用ウインドウシェード32を巻取可能な巻取軸部材38を有し、上下方向遮蔽用ウインドウシェード32を引出収納可能に巻取るように構成されている(巻取軸部材38については図1参照)。
すなわち、上下方向遮蔽用巻取装置36は、樹脂或は金属等で形成されたケース37内に、上下方向遮蔽用ウインドウシェード32を巻取可能な巻取軸部材38が回転可能に支持された構成とされている。この巻取軸部材38は、図示省略のコイルバネ等の巻取付勢部材によって上下方向遮蔽用ウインドウシェード32を巻取る方向に付勢されている。そして、上記ステイ34を引張ると、巻取付勢部材の付勢力に抗して上下方向遮蔽用ウインドウシェード32が上下方向遮蔽用巻取装置36から引出される。また、ステイ34を引張る力を解除すると、巻取軸部材38に対する巻取方向への付勢力によって上下方向遮蔽用ウインドウシェード32が上下方向遮蔽用巻取装置36に巻取収納される。また、この上下方向遮蔽用巻取装置36は、リアサイドウインドウ10の下縁部に沿って車両に組込まれる。この組込状態でリアサイドウインドウ10の下方から上下方向遮蔽用ウインドウシェード32を引出すことによって、当該上下方向遮蔽用ウインドウシェード32がリアサイドウインドウ10の略全体を遮蔽できるようになる。
<水平方向遮蔽用ウインドウシェード機構>
水平方向遮蔽用ウインドウシェード装置50は、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52(第2ウインドウシェード)と、水平方向遮蔽用巻取装置56(第2巻取装置)と、水平方向遮蔽用開閉機構60(遮蔽用開閉機構)とを備えている。
水平方向遮蔽用ウインドウシェード52は、布或は樹脂シート等によりリアクオーターウインドウ12を遮蔽可能な形状に形成されている。ここでは、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52は、先端部を丸めた略三角形状に形成されている。水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の先端部には、樹脂等によって形成された略棒状のクオーター用ステイ54が取付けられている。
水平方向遮蔽用巻取装置56は、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を略水平方向に沿って引出収納可能に巻取っている。すなわち、水平方向遮蔽用巻取装置56は、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を巻取可能な巻取軸を有している。当該巻取軸は図示省略のコイルバネ等によって水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を巻取る方向に付勢されている。そして、上記クオーター用ステイ54を引張ると、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52が水平方向遮蔽用巻取装置56から引出されて、リアクオーターウインドウ12を覆うようになる。また、クオーター用ステイ54を引張る力を解除すると、巻取軸の巻取方向への付勢力によって水平方向遮蔽用ウインドウシェード52が水平方向遮蔽用巻取装置56に巻取収納されるようになっている。また、この水平方向遮蔽用巻取装置56は、上記上下方向遮蔽用巻取装置36の一端部である車両後方側端部に、上方に延出する姿勢で固定されている。そして、水平方向遮蔽用巻取装置56は、リアクオーターウインドウ12の車両前方側のピラー14に組込まれて、リアクオーターウインドウ12の前方側縁部に沿って配設される。これにより、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52がリアクオーターウインドウ12に対して、略水平方向に沿って引出収納可能に覆う構成とされる。
水平方向遮蔽用開閉機構60は、案内支持機構62と、アーム70と、減速ギヤ機構80とを備えている。そして、案内支持機構62に沿って前記アーム70を移動させると共に、当該移動途中でアーム70を姿勢変更させることで、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を引出し及び収納する構成とされている。
より具体的には、案内支持機構62は、可動部材64と案内レール66(案内経路部材)とを有している。
案内レール66は、可動部材64を、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出収納方向に沿って移動可能に支持可能に構成されている。ここでは、案内レール66は、略筒状(略角筒状)に形成されており、一側面(ここでは、車内に向く側の面)に案内レール66の長手方向に沿って延びる開口66Aが形成されている。この案内レール66の内周面によって、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出収納方向に沿うように延在し、かつ、開口66Aを介して一側方に開口する案内経路66Pが形成されている。また、案内レール66の一端部は、上記上下方向遮蔽用巻取装置36の一端部である車両後方側端部に、ブラケット等を介して固定されている。これにより、案内レール66は上下方向遮蔽用巻取装置36の車両後方側端部から略水平に延出する姿勢で固定されている。そして、案内レール66は、車体のうちリアクオーターウインドウ12の下方部分に組込まれ、当該リアクオーターウインドウ12の下縁部に沿って配設されるようになっている。
図4は可動部材64を示す側面図である。図1〜図3,図4に示すように、可動部材64は、樹脂等で形成された部材であり、前記案内経路66Pに沿って、即ち、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出収納方向に沿って移動可能に支持されている。可動部材64の一部は上記案内レール66内の案内経路66P内に配設され当該案内経路66Pに沿って走行し、可動部材64の残部は上記開口66Aを介して案内レール66の外部に露出している。この可動部材64に、後に詳述するように、アーム70と減速ギヤ機構80が支持される。
ここで、上下方向遮蔽用ウインドウシェード装置30の引出収納動作に連動して可動部材64を移動させる連動機構の一例について説明する。
図5は連動機構100を示す概略図である。すなわち、この連動機構100は、連動用ラック部材102と、連動中継機構110とを備えている。
連動用ラック部材102は、上記案内レール66の長手方向に沿って移動可能に配設されると共に、可動部材64に連結されている。連動用ラック部材102は、案内レール66内に配設されていてもよいし、案内レール66外に配設されていてもよい。図1〜図3では、連動用ラック部材102は、案内レール66外に配設され、可動部材64のうち案内レール66外に露出する部分に連結されている。そして、連動用ラック部材102が案内レール66に沿って移動すると、その移動方向及び移動量に応じて可動部材64が案内レール66に沿って引出収納方向に移動するように構成されている。
より具体的には、連動用ラック部材102は、線状に形成されており、その一面に複数の歯が直線状に連なるように形成されている。ここでは、連動用ラック部材102は、前記複数の歯を上向きにした姿勢で案内レール66に沿って移動可能に支持されている。連動用ラック部材102は、樹脂等の可撓性を有する部材によって構成されていてもよいが、押込まれた場合に容易に屈曲しない程度の剛性を有していることが好ましい。また、連動用ラック部材102は、案内レール66の基端側で案内レール66から延出可能に配設されており、可動部材64が水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に移動する場合には、連動用ラック部材102の端部が案内レール66の基端側外方に逃されるようになっている。また、連動用ラック部材102の車両後方側端部に可動部材64が固定されている。可動部材64と連動用ラック部材102との固定は、挟み込み構造、ねじ止等の各種固定構造によってなされる。そして、連動用ラック部材102をその長手方向に沿って進退移動させることによって、可動部材64が案内経路66Pに沿って往復移動するようになっている。
連動中継機構110は、第1傘歯車112と、第2傘歯車114とを有している。これらの第1傘歯車112及び第2傘歯車114等は、案内レール66と上下方向遮蔽用巻取装置36との間に設けられたケース状部分等に組込むとよい。そして、第1傘歯車112と第2傘歯車114との噛合を通じて上下方向遮蔽用巻取装置36の巻取軸部材38の回転が、連動用ラック部材102を案内レール66に沿って移動させる力として伝達される。
すなわち、第1傘歯車112は、上下方向遮蔽用巻取装置36の巻取軸部材38に対して当該巻取軸部材38と連動して回転可能に連結されている。ここでは、第1傘歯車112が第1巻取装置36の巻取軸部材38に直接連結されており、巻取軸部材38と一体的に回転するようになっている。もっとも、第1傘歯車112と巻取軸部材38との間に他の平歯車、伝達ベルト等が介在していてもよい。すなわち、巻取軸部材38の回転タイミング及び回転方向に応じて第1傘歯車112が回転すればよい。
第2傘歯車114は、上記第1傘歯車112と噛合可能に配設されている。即ち、第1傘歯車112の回転軸と第2傘歯車114の回転軸とが交わる姿勢で、第2傘歯車114が配設されている。また、この第2傘歯車114に、その回転軸と一致する回転軸を有する平歯車118が一体化されている。平歯車118は、案内レール66と上下方向遮蔽用巻取装置36との間のケース状部分内で、上記連動用ラック部材102に噛合可能に配設されている。そして、第2傘歯車114の回転により平歯車118が回転すると、その回転運動が連動用ラック部材102を案内レール66に沿って直線移動する力として伝達されるようになっている。
この連動中継機構110の連動動作について説明する。
すなわち、上下方向遮蔽用ウインドウシェード32が引出されると、上下方向遮蔽用巻取装置36の巻取軸部材38が引出方向に回転する。巻取軸部材38の回転に連動して第1傘歯車112が回転すると共に、第1傘歯車112に噛合する第2傘歯車114が回転する。第2傘歯車114の回転に連動して平歯車118が回転し、平歯車118と噛合する連動用ラック部材102が案内レール66側に送出される。すると、可動部材64が案内レール66に沿って引出方向側に移動する。
逆に、上下方向遮蔽用巻取装置36の巻取軸部材38の巻取力により上下方向遮蔽用ウインドウシェード32が巻取られる際には、巻取軸部材38の回転力が、第1傘歯車112、第2傘歯車114及び平歯車118を介して連動用ラック部材102に伝達される。これにより、連動用ラック部材102が案内レール66に沿って移動して上下方向遮蔽用巻取装置36側に送出される。すると、可動部材64が案内レール66に沿って収納方向側に移動する。
なお、可動部材64を案内経路66Pに沿って移動させる構成は上記例に限られない。モータ等のアクチュエータの駆動力によって、ワイヤー等を引張り或は送込む等して、可動部材64を移動させる構成であってもよい。モータ等のアクチュエータの駆動力或は人による操作力等が、上下方向遮蔽用ウインドウシェード装置30を介することなく、直接的に、可動部材64を移動させる力として作用する構成であってもよい。
図6はアーム70を示す側面図である。図1〜図3,図6に示すようにアーム70は、金属或は樹脂等により細長棒状に、ここでは、長尺部分70a及び短尺部分70bを有する略L字棒状に形成されている。アーム70のうち長尺部分70aの端部は、上記水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出側端部のクオーター用ステイ54にピンP1を介して回転自在に連結されたシェード連結部分71とされている。また、アーム70のうち短尺部分70bの端部は、可動部材64の外方露出部分の側面にピンP2を介して回転自在に連結されている。そして、アーム70が、シェード連結部分71を水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に位置させた第1姿勢(図2参照)と、シェード連結部分71を水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側に位置させた第2姿勢(図1参照)との間で姿勢変更可能とされている。
より具体的には、上記第1姿勢では、アーム70の長尺部分70aは水平方向遮蔽用巻取装置56に沿って配設されると共に、短尺部分70bは案内レール66に沿って配設されている。従って、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を収納した状態では、アーム70は水平方向遮蔽用巻取装置56或は案内レール66に沿って配設され、外観上目立たないようになっている。そして、この状態から、可動部材64を移動させることで、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を引出すことができる。
また、第2姿勢では、前記第1姿勢を基準にして、シェード連結部分71が水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側に傾けられている。可動部材64の移動方向において、可動部材64に対するシェード連結部分71の位置は、第1姿勢の場合よりも第2姿勢の場合において、より引出方向側に位置する。このため、可動部材64の移動距離以上に大きな距離でシェード連結部分71を移動させて、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52をより大きく引出すことができる。なお、水平方向遮蔽用巻取装置56の巻取軸に作用する付勢力によって、アーム70は常時第1姿勢側に付勢されている。
また、アーム70のうち短尺部分70bの端部に、第1ギヤ72が設けられている。この第1ギヤ72は、アーム70が姿勢変更する際の回転中心を中心(曲率中心)とする弧状ギヤであり、その外周面に複数の歯が形成された構成とされている。ここでは、第1ギヤ72は、短尺部分70bに隣設する位置に形成されている。
図7は、案内レール66に設けられた第2ギヤ78を有するギヤ組込部材75を示す側面図である。図1〜図3,図7に示すように、ギヤ組込部材75は、長尺棒状部分76と固定片75pとを有している。長尺棒状部分76は、案内経路66Pと略同じ長さ寸法の棒状部材に形成され、案内レール66内の案内経路66Pの天井部に沿って配設可能に形成されている。この長尺棒状部分76の一端部に、案内レール66の端部に固定可能な固定片75pが設けられている。長尺棒状部分76のうち少なくとも一部に第2ギヤ78が形成されている。第2ギヤ78は、長尺棒状部分76の一側部に複数のギヤ歯を形成することにより形成され、一種のラック歯として用いられる。そして、第2ギヤ78を案内経路66P内に向けた姿勢(ここでは下向き姿勢)で、長尺棒状部分76を案内経路66Pに沿って配設することで、案内経路66Pの少なくとも一部に、案内経路66Pに沿って延在するラック歯が設けられることとなる。ここでは、第2ギヤ78は、長尺棒状部分76のうち固定片75pとは反対側の端部の部分に設けられている。従って、長尺棒状部分76を案内経路66Pに沿って配設すると、案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向端部からその中間部に至る部分に、ラック歯として第2ギヤ78が配設されることとなる。
また、上記第2ギヤ78のうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向端部側の溝78aは、その他の溝78bよりも大きく開口している。これにより、後述する第2中間ギヤ86の歯が、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向端部側より円滑に第2ギヤ78に噛合するようになっている。
また、長尺棒状部分76のうち上記第2ギヤ78が設けられた部分よりも固定片75p側の部分に、長尺棒状部分76の延在方向に沿って平坦な第2ギヤ側平面部79が形成されている。そして、長尺棒状部分76を案内経路66Pに沿って配設することで、案内経路66Pのうち第2ギヤ78が設けられた部分よりも水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側の部分に上記第2ギヤ側平面部79が設けられることになる。つまり、案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側部分に第2ギヤ78が形成され、その他の部分に第2ギヤ側平面部79が形成され、両者が連続して形成されている。
図8は減速ギヤ機構80を示す側面図である。図1〜図3,図8に示すように、減速ギヤ機構80は、上記第1ギヤ72及び第2ギヤ78のそれぞれに噛合可能とされている。そして、減速ギヤ機構80は、第2ギヤ78との噛合による回転運動を、第1ギヤ72との噛合によりアーム70を第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢変更させる回転運動として減速して伝達するように構成されている。ここで、減速ギヤ機構80が減速して力を伝達するとは、可動部材64の所定長の移動による第2ギヤ78との噛合長さに比べて、第1ギヤ72との噛合長さが短いこと、換言すれば、可動部材64の所定の移動距離に対して、第1ギヤ72のピッチ円周りの移動距離が短くなっている場合をいい、結果として、小さな力をより大きな力に変えて伝達する場合をいう。
より具体的には、減速ギヤ機構80は、樹脂等で形成された部材であり、第1中間ギヤ82と第2中間ギヤ86とを有している。第1中間ギヤ82は、ここでは、一周の円を描く歯車であり、上記第1ギヤ72と噛合可能に形成されている。第2中間ギヤ86は、弧状ギヤであり、その曲率半径は第1中間ギヤ82よりも大きい。また、この第2中間ギヤ86は、第2ギヤ78と噛合可能に形成されている。そして、第1中間ギヤ82の中心と第2中間ギヤ86の中心(曲率中心)とが同軸中心となるように、一体化されている。この減速ギヤ機構80は、上記アーム70を回転自在に支持するピンP2の隣の位置で、可動部材64の側面にピンP3を介して回転自在に支持されている。なお、可動部材64が減速ギヤ機構80を支持する側面は、アーム70を回転自在に支持する側面よりも一段凹んでおり、案内経路66P内に位置している。従って、上記支持状態では、上記第2中間ギヤ86は、案内経路66P内でギヤ組込部材75の長尺棒状部分76に対向する位置に配設され、可動部材64の移動に伴って第2ギヤ78が設けられた部分を移動する際には当該第2ギヤ78と噛合できるようになっている。また、上記第1中間ギヤ82は、開口66Aを通って案内経路66P外に露出して、アーム70の第1ギヤ72に常時噛合している。
また、上記弧状の第2中間ギヤ86に対してその周方向に隣設して第2中間ギヤ側当接部88が設けられている。第2中間ギヤ側当接部88は、アーム70が第2姿勢に姿勢変更した状態で、上記第2ギヤ側平面部79と接触してアーム70を第2姿勢に維持可能に構成されている。より具体的には、第2中間ギヤ側当接部88は、第2中間ギヤ86の両端部のうち可動部材64の引出方向側への移動による第2中間ギヤ86の回転方向側の端部から連続する平面状に形成されている。そして、可動部材64が案内経路66Pに沿って水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向に移動する際に、第2ギヤ78と第2中間ギヤ86との噛合が終了すると、第2中間ギヤ側当接部88が第2ギヤ側平面部79と接触して、第2中間ギヤ86及び第1中間ギヤ82の回転位置が一定状態に維持されるようになっている。また、第1中間ギヤ82が一定の回転位置に維持されることによって、第1中間ギヤ82と噛合する第1ギヤ72を有するアーム70が第2姿勢に維持されるようになっている。このように、第2ギヤ側平面部79と第2中間ギヤ側当接部88とで、アーム70を第2姿勢に維持する姿勢維持機構が構成されている。
なお、第2中間ギヤ側当接部88は必ずしも平面である必要はないが、平面である方が、第2中間ギヤ側当接部88と第2ギヤ側平面部79とを円滑に摺接させることができる。
この水平方向遮蔽用ウインドウシェード装置50のうち水平方向遮蔽用開閉機構60の動作について説明する。図9〜図12は可動部材64を水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納側から引出側へ移動させる際の水平方向遮蔽用開閉機構60の動作を示す側面図であり、図13〜図16は同動作を示す斜視図である。
まず、可動部材64が案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側端部に位置する状態、即ち、アーム70の長尺部分70aが水平方向遮蔽用巻取装置56に沿って配設されている状態(つまり、第1姿勢)では、図9及び図13に示すように、第2中間ギヤ86は、第2ギヤ78よりも水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に位置しており、第2中間ギヤ86と第2ギヤ78とは噛合していない状態となっている。なお、この状態において、第2中間ギヤ86と第2ギヤ78とが軽く噛合していてもよい。また、この状態を含め、第1中間ギヤ82と第1ギヤ72とは常時噛合している。
この状態から、上記連動機構100等を介した力によって、可動部材64が案内経路66Pに沿って水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側に移動すると、図10及び図14に示すように、第2中間ギヤ86が第2ギヤ78に噛合するようになる。これにより、第1中間ギヤ82及び第2中間ギヤ86が回転(図10、図13等では右回りに回転)するようになる。すると、第1中間ギヤ82と噛合する第1ギヤ72も回転し、アーム70も第1姿勢から第2姿勢に向けて姿勢変更する。
可動部材64がさらに案内経路66Pに沿って水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側に移動し、図11及び図15に示すように、第2中間ギヤ86が第2ギヤ78のうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側端部に達すると、第2中間ギヤ86と第2ギヤ78との噛合が解除され始める。これと同時に、第2中間ギヤ86に隣接する第2中間ギヤ側当接部88が上方を向いて第2ギヤ側平面部79と対向するようになる。
そして、さらに可動部材64が移動すると、図12及び図16に示すように、第2中間ギヤ86と第2ギヤ78との噛合が完全に解除されるまで、第2中間ギヤ86及び第1中間ギヤ82が回転し、アーム70は第2姿勢に姿勢変更した状態となる。また、この状態では、第2中間ギヤ側当接部88と第2ギヤ側平面部79とが略並行状態で対向して互いに接触するようになる。そして、第2中間ギヤ側当接部88と第2ギヤ側平面部79とが接触することで、第2中間ギヤ86及び第1中間ギヤ82の回転が抑制され、アーム70は第2姿勢に維持される。
この後、第2中間ギヤ側当接部88と第2ギヤ側平面部79とが接触したままの状態で、つまり、アーム70が第2姿勢に維持されたままの状態で、可動部材64が案内経路66Pに沿って水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側に移動する。
そして、可動部材64が案内経路66Pの水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側端部に達した時点で、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52がリアクオーターウインドウ12をほぼ完全に覆うまで引出される。この状態でも、第2中間ギヤ側当接部88と第2ギヤ側平面部79とが接触しているので、アーム70は第2姿勢に維持されている。
可動部材64を水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出側から収納側へ移動させる際の水平方向遮蔽用開閉機構60の動作は上記とは逆になる。
すなわち、可動部材64を案内経路66Pに沿って水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に移動させる。そして、可動部材64が第2ギヤ78の端部に達すると、水平方向遮蔽用巻取装置56の巻取力によってアーム70が第2姿勢側に付勢されていることと相まって、第2中間ギヤ86が第2ギヤ78に噛合し始める。この際、第2ギヤ78のうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向端部側の溝78aは、その他の溝78bよりも大きく開口しているため、第2中間ギヤ86の歯は第2ギヤ78の歯と歯当りすることが抑制され、当該第2ギヤ78の歯と円滑に噛合することができる。
そして、可動部材64がさらに水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に移動すると、第2ギヤ78と第2中間ギヤ86との噛合によって、第2中間ギヤ86及び第1中間ギヤ82が回転する。そして、第1中間ギヤ82と第1ギヤ72との噛合によってアーム70が第2姿勢から第1姿勢に向けて姿勢変更する。可動部材64が案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側端部に達すると、アーム70は第1姿勢に姿勢変更すると共に、第2中間ギヤ86と第2ギヤ78との噛合も解除される。この状態では、アーム70の先端部は、水平方向遮蔽用巻取装置56の巻取力によって水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に付勢されている。この付勢力によって、アーム70は第1姿勢側により安定して維持されている。
以上のように構成された車両用の水平方向遮蔽用ウインドウシェード装置50によると、減速ギヤ機構80が第1ギヤ72及び第2ギヤ78に噛合することでアーム70を姿勢変更させることにより、アーム70を移動させつつ当該アーム70を姿勢変更させて、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を引出すことができる。この際、減速ギヤ機構80は、第2ギヤ78との噛合による回転運動を、第1ギヤ72との噛合によりアーム70を第1姿勢と第2姿勢との間で姿勢変更させる回転運動として減速して伝達する。このため、アーム70をより小さい力で姿勢変更させることができる。
また、減速ギヤ機構80が可動部材64に設けられ、アーム70側の第1ギヤ72と第1中間ギヤ82とが常時噛合する状態となっているため、第1ギヤ72と第1中間ギヤ82との間での力の伝達をスムーズに行うことができる。
また、減速ギヤ機構80として、第1ギヤ72に噛合する第1中間ギヤ82と、第1中間ギヤ82よりも大きな曲率半径を有しかつ第2ギヤ78に噛合する第2中間ギヤ86とを有し、第1中間ギヤ82と第2中間ギヤ86とが同軸中心となるように一体化された構成のものを用いているため、比較的簡易な構成とすることができる。
もっとも、減速ギヤ機構が上記構成であることは必須ではなく、より多数の中間ギヤ等の組合わせによって減速して回転運動を伝達する構成であってもよい。
また、第1ギヤ72はアーム70が姿勢変更する際の回転中心を中心とする弧状ギヤであり、第2ギヤ78は案内経路66Pに沿って延在するラック歯であるため、構成の簡易化、コンパクト化を図ることができる。
また、第2ギヤ78は、案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向端部からその中間部に至る部分に設けられているラック歯であるため、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出しに要する最大力をなるべく小さくすることができる。また、これにより、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を引出す際の操作力をなるべく均一化することができ、人手により引出す場合の操作性を向上させることができ、或は、モータ等のアクチュエータで引出す場合の負担を軽減することができる。
すなわち、水平方向遮蔽用巻取装置56はコイルバネ等の弾性復元力によって巻取方向に付勢する構成であるため、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を引出すにつれて、コイルバネ等の弾性変形力が大きくなり、巻取付勢力が大きくなる。よって、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出初期段階では巻取付勢力に抗して引出しに要する力は比較的小さく、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52を引出すにつれて巻取付勢力に抗して引出しに要する力が大きくなる。そこで、巻取付勢力に抗して引出しに要する力が比較的小さい引出初期段階で、アーム70を姿勢変更させるようにすることで、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出しに要する最大力をなるべく小さくすることができることになる。
また、姿勢維持機構として、案内経路66Pのうち第2ギヤ78が設けられた部分よりも水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側の部分に設けられた第2ギヤ側平面部79と、第2ギヤ78に隣接して設けられ、アーム70が第2姿勢に姿勢変更した状態で第2ギヤ側平面部79と接触してアーム70を第2姿勢に維持する第2中間ギヤ側当接部88とにより構成されているため、アーム70が第2姿勢に姿勢変更した後、可動部材64が移動する途中で、アーム70が第2姿勢を維持する状態を、簡易な構成で維持できる。
また、第2ギヤ78のうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向端部側の溝78aを他の溝78bよりも大きく開口させているため、可動部材64が水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側に移動する際に、第2中間ギヤ86を第2ギヤ78に容易に噛合させることができる。
また、アーム70がL字状に形成されているため、ウインドウ形状に合わせた設計が容易となる。もっと、アーム70がL字状である必要はなく、直線状、弧状に湾曲する形状等であってもよい。
{変形例}
なお、案内経路66Pにおいて第2ギヤ78を形成する部分は、上記実施形態の例に限られない。
図17に示すように、第2ギヤ78に対応する第2ギヤ178が上記案内経路66Pのうちその中間部から水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向端部に至る経路部分に設けられていてもよい。この場合、アーム70は、案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側端部からその中間部に至るまでは、第1姿勢のまま移動する。この状態でのアーム70の第1姿勢の維持は、アーム70を可動部材に設けた規制部材に当接させると共に、水平方向遮蔽用巻取装置56の巻取付勢力によって前記当接状態を維持すること等により行うとよい。そして、アーム70は、案内経路66Pの中間部から水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側端部に移動する途中で、上記実施形態と同様に第2ギヤ178と減速ギヤ機構との噛合によって第1姿勢から第2姿勢に姿勢変更する。最後にアーム70が案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側端部に達して停止した状態では、図18に示すように、第1ギヤ72と第1中間ギヤ82に対応する第1中間ギヤ182とが噛合し、かつ、第2ギヤ78に対応する第2ギヤ178が第2中間ギヤ86に対応する第2中間ギヤ186に噛合することで、アーム70が第2姿勢に姿勢変更した状態が維持される。
また、図19に示すように、第2ギヤ78に対応する第2ギヤ278が上記案内経路66Pのうちその両端部を除く中間部分に設けられていてもよい。この場合、アーム70は、案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の収納方向側端部からその中間部に至るまでは、第1姿勢のまま移動する。この状態でのアーム70の第1姿勢の維持は、上記変形例と同様に行うとよい。そして、アーム70は、案内経路66Pの中間部から別の中間部に移動する途中で、上記実施形態と同様に第2ギヤ178と減速ギヤ機構との噛合によって第1姿勢から第2姿勢に姿勢変更する。そして、アーム70が第2姿勢を維持したままアーム70が案内経路66Pのうち水平方向遮蔽用ウインドウシェード52の引出方向側端部に移動して停止する。この途中、最終状態におけるアーム70の姿勢維持は、上記実施形態と同様の構成により行うことができる。
このように、案内経路66Pにおける第2ギヤの配設位置を適宜変更することで、アーム70の姿勢変更状態を比較的自由に設計することができる。
なお、第2ギヤが案内経路の延在方向(長手方向)全体に亘って設けられたラック歯であってもよい。この場合、減速ギヤ機構は、案内経路全体を移動する際に、アームを姿勢変更させることになる。またこの場合、減速ギヤ機構に、より多数(3つ以上、より具体的には4つ)のギヤを設け、第2ギヤとの噛合による回転運動を、第1ギヤとの噛合によりアームを姿勢変更させる回転運動としてより減速して伝達する構成とすることが好ましい。より具体的には、第2ギヤに対して噛合する第2中間ギヤと第1ギヤに対して噛合する第1中間ギヤとの間に、1つ又は複数(例えば2つ)の介在ギヤを設け、第2中間ギヤの回転運動が少なくとも1つの介在ギヤを介して第1中間ギヤに減速して伝達されるようにするとよい。この場合、第2中間ギヤの回転軸と第1中間ギヤの回転軸とは同軸上にある必要はない。
なお、上記実施形態のように、上下方向遮蔽用ウインドウシェード装置30と、水平方向遮蔽用ウインドウシェード装置50とを両方を備えていることは必須ではなく、水平方向遮蔽用ウインドウシェード52単独で用いられてもよい。また、本水平方向遮蔽用ウインドウシェード52で説明した構成が、上下方向、斜め方向で遮蔽するウインドウシェード装置に組込まれてもよい。
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。