JP5630459B2 - ガス吹き用ポーラス質耐火物およびそれを用いたガス吹きタンディッシュ上ノズル - Google Patents
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Description
一方、溶鋼の連続鋳造においてガス吹きタンディッシュ上ノズル1そのものにアルミナ等による孔詰まりが発生し、大きな問題となっている。孔詰まり発生の機構は以下の通りである。すなわち、
図4に示す通り、ガス吹きタンディッシュ上ノズル1の直下にはスライドバルブ装置10が設置される。このスライドバルブ装置10は、図6に示す上プレート3の上孔8と下プレート4の下孔9が重なる開孔部11(斜線部)の面積を、図5の下プレート4をスライドさせることで変化させ鋳型7内に注入する溶鋼量を調節する役割を持つ。実際の鋳造時には、上プレート3〜タンデッィシュガス吹き上ノズル1の内管1a内において、図5に示されるように、開孔部直上領域Aと開口部からはずれた領域Bでは溶鋼流速に大きな差が生じ、開孔部11からはずれた領域Bの流速が遅くなる。その為、同一水平断面において溶鋼流速に差が生じ、その結果圧力差が発生する。溶鋼流の圧力差は前記ガス吹きタンディッシュ上ノズル1から溶鋼内へのガスの吹き込みやすさに影響し、ガス吹きタンディッシュ上ノズル1からのガス吹きが不安定になる。すなわち、流速が速い部分では動圧の影響で圧力が低下するため吹き込みガスの背圧も下がり、ガスをノズル内管に吹き込みやすくなり、流速が遅い部分では逆に圧力が増加し、ガスを内管1aに吹き込み難い状態になると考えられる。このようにガスが吹き込み難くなる所では、アルミナ付着が助長され孔が詰まりやすくなる。実機のガス吹きタンディッシュ上ノズル1内に発生するアルミナ付着は、図5に示されるように、スライドバルブ装置10の絞り直上の流速が遅くガスが出難い部分に付着物Cが付着する場合が多く、スライドバルブ装置10の絞りによるガス吹きタンディッシュ上ノズル1のアルミナ付着防止効果への悪影響は連続鋳造において大きな障害となっている。
すなわち、これらの従来の技術ではガスの通り道となるポーラス質耐火物の気孔を小さくすることや厚みを厚くすることによってガス背圧を上げて、ポーラス質耐火物から均等にガスを出しアルミナ付着の防止を図っているが、気孔径が小さくなるとポーラス質耐火物を通過する時の圧損が大きくなり吐出時のガス流速が遅くなるため溶鋼を攪拌することによるアルミナ付着防止効果が小さくなると考えられる。特に上記のプレート絞り直上のアルミナ付着抑制のためには、絞りにより溶鋼流速が遅くなっている部分の溶鋼の活性化を図る必要があり、従来の技術ではアルミナ付着の抑制が不十分であるものと考えられる。
ガス吹きタンディッシュ上ノズルのガス吹きを不安定にする原因であるプレートによる絞り直上の水平断面における圧力差の影響は、ガス背圧を高くして溶鋼の圧力変化の影響を受けにくくすることで改善できる。しかしながら、従来の発明ではガス背圧の向上、あるいは気孔径を小さくすることだけではアルミナ付着を抑制するには不十分であったため、本発明者らはガス吹きによる溶鋼攪拌効果を向上することによりさらにアルミナ付着防止効果を向上することを考えた。
さらには、大きい気孔と小さい気孔とを共存させることで、耐火物内の気孔率の少しのバラツキがあっても、通気性に対する影響が少なくなることを見出した。
すなわち、平均気孔径が5μm以上で20μm以下、かつ気孔径分布に極大値が二つ以上あり、前記各極大値のうちの少なくとも一つが22μm以上で50μm以下又は25μm以上で50μm以下であるポーラス質耐火物を用いているため、鋳造中のアルミナ付着抑制に安定した効果を有するガス吹きタンディッシュ上ノズルを得ることができる。
尚、本発明で記述するポーラス質耐火物13の平均気孔径はメディアン径と同義であり、平均気孔径は20μm以下でなければ背圧向上による内面全体からの均一なガス吹き込み効果が得られず、5μm以下になると圧力損失が大きくなり過ぎ、十分なガス吹き込み量が得られないため5μm以上が好ましい。より好ましくは、7〜17μmである。
また、本発明で記述するポーラス質耐火物13の気孔径分布について説明する。この気孔径分布は、横軸に気孔径を対数表示した値を表示し、縦軸に体積比率を表示したヒストグラムによって示される。気孔径分布の極大値については、ガスが通りやすい大きい気孔と、背圧を増加させるための小さい気孔が必要なため極大値が2つ以上必要である。十分なガス吐出速度を確保するためには少なくとも一つ以上の極大値が20μm以上である必要がある。また一つ以上の極大値50μm以上になると大きな気孔を通じたガスの吐出が多くなって背圧が低下するため好ましくない。このため50μm以下であることが好ましい。より好ましくは、25〜50μmである。
また、極大値が20μm以上となる必要がある理由は必ずしも定かでないが、以下のように考えられる。すなわち、極大値を持たない場合、上ノズルの気孔径が連続的に変化しているため内面全体から吐出される気泡の速度差が小さく一様に吐出される。それに対し、極大値を持つ場合、ガスは内面全体から一様に吐出されるのではなく、局所的に見た場合一部では勢いよく吐出され、その他の部分ではソフトに吐出されることにより、吐出速度が大きい部分と小さい部分の差が強調されることになり、ノズル内面での溶鋼攪拌効果がより発揮されるものと推定される。
またポーラス質耐火物13の気孔径は、使用する原料の粒径の影響を受けるため、使用原料の粒径を調整することにより、気孔径分布を調整することができる。
尚、前記ガス吹きタンディッシュ上ノズルの外形は特に規定するものではなく、タンディッシュ底部に固定することができればどのような形状でも適用できる。
前記ガス吹きタンディッシュ上ノズル1は鋼の連続鋳造設備において図4に示すようにタンディッシュ底部の羽口にモルタル等により施工され、その下にスライドバルブ装置10、下ノズル5、浸漬ノズル6を設置して使用される。溶鋼は内管1aを通り、その溶鋼に図1のAr等の不活性ガスを吹き込む。ガス吹きタンディッシュ上ノズル1のパイプ15を圧力計や流量計と接続されたガス導入用のパイプ(図示せず)と接続し、所定のガス圧力をかけてガス流量を調整しながら連続鋳造を行う。
使用時のガス流量やガス圧力は特に限定するものではないが、一般的には2〜30Nl/minのガス量で使用される。
次に、本発明によるポーラス質耐火物13の実施例および比較例について、以下の表1および表2を用いて説明する。
前記ポーラス質耐火物13の平均気孔径と気孔径分布は水銀ポロシメーターにより測定した値である。また、製造したノズルを鋳造時間30〜50分、連々数5〜9回、ガスを吹き込む圧力は0.8kg/cm2以上の条件でAlキルド鋼スラブの連続鋳造に使用して、浸漬ノズルやガス吹き上ノズル内管へのアルミナ詰まりによる鋳造時間の延長や鋳造中止等の生産性疎外トラブルの発生比率と鋼片の品質により使用結果を評価した。生産性阻害トラブルの発生比率は20本使用しての発生比率で5%以下であれば効果があったと判断した。
比較例2は平均気孔径15μmで請求項の範囲内であるが、気孔径分布の極大値が20μ以下であるため、大きい気孔がなく、ガスによる攪拌効果が劣ると考えられる。
比較例3は平均気孔径10μmで請求孔の範囲内であるが、2つある気孔径分布の極大値がいずれも20μ以下であるため大きい気孔がなく、ガスによる攪拌効果が劣ると考えられる。また、吐出する気泡が小さく、モールド内での介在物除去能力に劣るため鋼片品質異常も発生したと推測される。
比較例4は平均気孔径4μmで、気孔径分布の極大値が20μm以下であるため、大きい気孔がなく、ガスによる攪拌効果に劣ると考えられる。また、気孔径が過度に小さいため吐出する気泡が小さくモールド内での介在物除去能力に劣るため鋼片品質異常が発生したと推測される。
実施例2は平均気孔径15μmで請求項の範囲内であり、3つある気孔径分布のうち20μm以上の極大値が30μmである。
実施例3は平均気孔径6μmで請求項の範囲内であり、2つある気孔径分布のうち20μm以上の極大値が26μmである。
実施例4は平均気孔径15μmで請求項の範囲内であり、2つある気孔径分布のうち20μm以上の極大値が22μmである。20μm以上の極大値が請求項の好ましい値より若干小さいためガスによる攪拌効果が若干足りず5%の生産性阻害トラブルが発生したと考えられる。
実施例5は平均気孔径18μmで請求項の範囲内であり、2つある気孔径分布のうち20μm以上の極大値が30μmである。平均気孔径が請求項の好ましい値より若干大きいため、背圧向上効果が足りなかったため5%の生産性阻害トラブルが発生したと考えられる。
実施例6は平均気孔径18μmで請求項の範囲内であり、2つある気孔径分布のうち20μm以上の極大値が22μmである。平均気孔径が請求項の好ましい値より若干大きいため、背圧向上効果が足りなかったこと、極大値が請求項の好ましい範囲より若干低く攪拌効果が足りなかったため5%の生産性阻害トラブルが発生したと考えられる。
実施例7は平均気孔径15μmで請求項の範囲内であり、2つある気孔径分布のうち20μm以上の極大値が60μmである。極大値が60μmと過度に大きいため背圧に悪影響を及ぼしたものと考えられる。
1A 空間
2 タンディッシュ底部羽口耐火物
3 上プレート
4 下プレート
5 下ノズル
6 浸漬ノズル
7 鋳型(モールド)
8 上孔
9 下孔
10 スライドバルブ装置
11 開孔部
12 鉄ケース
13 ポーラス質耐火物
14 シール材
15 パイプ
20 緻密質材料
A 開孔部直上領域
B 開孔部からはずれた領域
C 付着物(アルミナ)
Claims (3)
- 平均気孔径が5μm以上で20μm以下、かつ気孔径分布に極大値が二つ以上であり、前記各極大値の少なくとも一つが22μm以上で50μm以下又は25μm以上で50μm以下であることを特徴とするポーラス質耐火物。
- 請求項1のポーラス質耐火物を用いたことを特徴とするガス吹きタンディッシュ上ノズル。
- 前記ポーラス質耐火物に非ポーラス状の緻密質材料を組み合わせたことを特徴とする請求項2記載のガス吹きタンディッシュ上ノズル。
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JP2012105074A JP5630459B2 (ja) | 2012-05-02 | 2012-05-02 | ガス吹き用ポーラス質耐火物およびそれを用いたガス吹きタンディッシュ上ノズル |
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