次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。図1及び図2に示すように、実施形態形態に係る乗用型田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部3と、から構成されている。
車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、車体2は、オペレータが搭乗するための運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の走行速度を調節するための変速ペダル8等、各種の操作具が配置されている。
また、車体2において、運転座席6の下方には駆動源としてのエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。
また車体2の後部には、植付部3を昇降可能に取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するための不等速伝動軸13等が配置される。
また本実施形態の田植機1は、制御部45(図3を参照)を備えている。制御部45は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
前記植付部3は、植付ケース15と、複数のフロート16と、苗載台17と、を備えている。
植付ケース15には、1つ以上の植付ユニット20が取り付けられている。例えば本実施形態の田植機1は4条植えに対応しており、4つの植付ユニット20を備えている。各植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。
植付ケース15には、前記不等速伝動軸13からの駆動力が入力されており、この駆動力によって回転ケース21が回転駆動されるように構成されている。ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付爪22の先端部が所定の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成したものである。そして、植付爪22の先端部は、上から下に向かって動くときに、後述の苗載台17に載せられた苗マットの下端から1株分の苗を掻き取り、当該苗の根元を保持したまま下方に動いて、その軌跡の下死点近傍で地面に植え込むように構成されている。
前記フロート(浮き)16は、植付部3の下部に左右対称に設けられる。このフロート16を地面に接触させることにより、植付部3を地面に対して水平に保ち、植付姿勢を安定させて正確な植付けを行うことができるように構成されている。
苗載台17は、前記植付ケース15の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マットの左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マットを、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マットを、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
続いて、本実施形態の田植機1における駆動伝達経路について、図3を参照して説明する。
エンジン10の駆動出力軸10aの端部には、駆動伝達ベルト34が配置されている。エンジン10が出力する回転駆動力は、この駆動伝達ベルト34を介して、エンジン10の前方に配置されたミッションケース11に入力される。ミッションケース11内に入力された駆動力は、HST(静油圧式無段変速機)によって適宜変速される。
HSTの構成は公知であるから詳細には説明しないが、可変容量油圧ポンプと、固定容量油圧モータと、を油圧回路で接続し、可変容量油圧ポンプの吐出容量を変更することにより、固定容量油圧モータの出力を無段階で変更できるように構成した無段変速機の一種である。なお、前記可変容量油圧ポンプの吐出容量は、変速ペダル8の操作量に応じて変更されるように構成されている。即ち、オペレータが変速ペダル8を踏み込み操作することにより、エンジン10の出力を無段階で任意に変速することができるようになっている。もっとも、田植機1の変速機はHSTに限らず、ギアとHSTとを組み合わせたHMT(油圧機械式無段変速機)であっても良いし、ギア式の有段変速装置であっても良い。
ミッションケース11内で変速された回転駆動力は、フロントアクスルケース37に入力される。フロントアクスルケース37は、ミッションケース11の前方に配置されるとともに、当該ミッションケース11と一体的に形成されている。フロントアクスルケース37に入力された回転駆動力の一部は、当該フロントアクスルケース37から左右に突出する前車軸38,38に伝達され、左右の前輪4,4を駆動する。
また、フロントアクスルケース37に入力された回転駆動力の一部は、当該フロントアクスルケース37から取り出され、プロペラシャフト39を介して、エンジン10の後方に位置するリアアクスルケース40に伝達される。リアアクスルケース40内に入力された回転駆動力は、当該リアアクスルケース40から左右に突出する後車軸42,42に伝達され、左右の後輪5,5を駆動する。
以上の構成により、変速ペダル8の操作に応じて、前輪4及び後輪5の回転速度を無段階で変更することができるようになっている。即ち、オペレータが変速ペダル8を操作することにより、所望の車速で車体2を走行させることができるように構成されている。
また、フロントアクスルケース37に入力された回転駆動力の一部は、ギア式の変速装置として構成された株間変速部29に入力される。株間変速部29に入力された回転駆動力は、当該株間変速部29によって適宜変速された後、当該株間変速部29の後寄りの位置から後方向に向けて突出する植付駆動取出軸51を介して外部に取り出される。
この株間変速部29による変速比は、オペレータが植付間隔設定レバー(図略)を操作することにより変更可能に構成されている。具体的には、本実施形態において、前記植付間隔設定レバーは、苗の植え付け間隔を「疎植」又は「密植」の何れかに設定できるようになっている。株間変速部29は、苗の植付間隔が「疎植」に設定された場合は、植付駆動取出軸51を比較的低速で回転させるように前記変速比を設定する。一方、苗の植付間隔が「密植」に設定された場合は、植付駆動取出軸51を比較的高速で回転させるように前記変速比を設定するように構成されている。
前記植付駆動取出軸51には、第1ユニバーサルジョイント23を介して植付駆動伝達軸52の端部が接続されている。この植付駆動伝達軸52の他端には、第2ユニバーサルジョイント24を介して、不等速変速部25の入力軸26が接続されている。
不等速変速部25に入力された回転駆動力は、非円形ギアから構成された不等速変速機構(後述)により不等速回転駆動力に変換され、不等速変速部25の出力軸27から出力される。
不等速変速部25から出力された不等速回転駆動力は、不等速伝動軸13を介して植付ケース15内に入力される。植付ケース15に入力された不等速回転駆動力は、複数の伝動シャフト18及び複数の伝動ギア19等を介して、回転ケース駆動軸28まで伝達される。回転ケース駆動軸28の両端には、植付ユニット20の回転ケース21が取り付けられている。
以上の構成により、回転ケースを回転駆動することができるので、ロータリ式植付装置として構成された植付ユニット20による苗の植え付けを行うことができる。
なお既に説明したように、回転ケース駆動軸28に入力される駆動力は、ミッションケース11内のHSTによって変速ペダル8の操作量に応じて変速されている。一方、車体2の走行速度も、変速ペダル8の操作量に応じて変速される。従って、回転ケース21の回転周期は、車体2の走行速度に比例して変化する。即ち、車体2を速く走行させると回転ケース21の回転周期は短くなり、車体2を遅く走行させると回転ケース21の回転周期は長くなる。これにより、車体2の走行速度にかかわらず、苗を等間隔で植え付けることができる。
また、上記比例関係(車体2の走行速度と回転ケース21の回転周期との比例関係)を変更すれば、苗の植付間隔を変更することができる。本実施形態の田植機1では、前述のように、回転ケース駆動軸28に入力される駆動力は、株間変速部29によって変速されている。従って、この株間変速部29の変速比を変更することにより、苗の植付間隔を変更することができる。
本実施形態では前述のように、「疎植」に設定されている場合は、「密植」に設定されている場合に比べて株間変速部29が出力する回転駆動力の回転速度(植付駆動取出軸51の回転速度)が遅くなるように構成されている。即ち、「疎植」に設定した場合は、回転ケース21の回転周期を長くして苗の植付間隔を広くし、「密植」に設定した場合は、回転ケース21の回転周期を短くして苗の植付間隔を狭くするように構成されている。このように、本実施形態の田植機1は、疎植と密植の両方に対応することができる。なお、以下の説明で、特に断わらない場合には、株間変速部29における変速比を低速としている場合、即ち疎植を行う場合について説明する。
本実施形態の田植機1では、不等速変速部25から出力された不等速回転駆動力によって回転ケース21を回転駆動しているので、回転ケース21が1回転する間に当該回転ケースの回転速度を加速及び減速させることができる。従って、回転ケース21を単純に等速回転させる場合に比べて、回転ケース21の回転速度の設計自由度が増す。これにより、植付爪22を理想的な軌跡で駆動することができるので、回転ケース21を単純に等速回転させる場合に比べて、苗をきれいに植え付けることができる。
例えば、苗を植え付けた後に植付爪22が地面を引き摺られてしまうことを防止したい場合は、苗を植え付けた植付爪22が地面から速やかに離間するように回転ケース21を不等速回転させれば良い。この場合、植付爪22の先端が下死点近傍に来たときに回転ケース21の回転速度が速くなるようにすれば良いので、植付爪22の先端が下死点に向かう間に回転ケース21の回転速度を加速させるように上記不等速変速部25を設定する。
なお、回転ケース21の回転速度を増速したままでは、当該回転ケース21の回転周期が変わってしまい、苗の植え付け間隔が変化してしまう。従って、苗の植え付け間隔を保つためには、回転ケース21の回転速度を加速した後に必ず回転速度の減速を行わなければならない。このように、不等速回転する回転ケース21は、1回転する間に加速と減速を繰り返すことになる。従って、不等速変速部25は、加速と減速を繰り返す不等速回転駆動力を出力するように構成されている。なお以下の説明で、「加速度」「減速度」と言った場合は、回転ケース21が1回転する間に繰り返される加速及び減速の強さをいうものとする。
ところで既に説明したように、回転ケース21は慣性により等速回転運動を行おうとする。このように等速回転運動を行おうとする回転ケース21を、不等速変速部25が出力する不等速回転駆動力によってむりやり不等速回転させようとするので、不等速回転駆動力を伝達する伝動系(不等速伝動軸13、伝動シャフト18、伝動ギア19など)にねじれやガタが発生し得る。
そして、回転ケース21の回転速度が速いほど(車体2の走行速度が速いほど)、上記ねじれやガタが大きくなり易くなる。このため、従来の田植機では、車体2を高速走行させて苗の植え付けを行うと、騒音や振動が発生する場合があった。
そこで本実施形態の田植機1では、伝動系に発生し得るガタやねじれが大きくなるに従って、不等速変速部25における加速度及び減速度を自動的に小さくするように構成している。即ち、不等速回転の加速度及び減速度を小さくすることにより、上記ねじれやガタを小さくすることができるので、振動や騒音が大きくなることを防止できるのである。
以下、図3を参照して具体的に説明する。
本実施形態の田植機1は、植付駆動取出軸51の回転速度を検出する回転センサ43を備えている。回転センサ43は、例えばロータリエンコーダとして構成される。この回転センサ43の検出結果は、制御部45に出力される。
ここで、前述したように、回転ケース21の回転速度が速いほど、伝動系に発生するガタやねじれが大きくなり易い。回転ケース21の回転速度は、植付駆動取出軸51の回転速度に略比例している。従って、回転センサ43が検出した植付駆動取出軸51の回転速度に基づいて、伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさを検出することができる。
そこで、制御部45は、回転センサ43の検出結果に基づいて、伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさを判断するように構成されている。即ち制御部45は、植付駆動取出軸51の回転速度を所定の閾値と比較し、閾値以上であった場合(回転ケース21の回転速度が速くなってきた場合)に、大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状態であると判断するように構成されている。なお、上記のように伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさを回転センサ43の検出結果に基づいて検出することができるので、回転センサ43はガタ・ねじれ検出部であると言うことができる。
なお、上記の判断は、多段階的に行っても良い。例えば本実施形態において、制御部45は、所定の第1閾値と、第1閾値よりも大きい第2閾値と、の2つの閾値によって上記の判断を行うように構成されている。即ち、制御部45は、回転センサ43が検出した植付駆動取出軸51の回転速度が第1閾値未満の場合(回転ケース21の回転速度が低速の場合)は、伝動系に発生し得るガタやねじれは小さいと判断する。また制御部45は、植付駆動取出軸51の回転速度が第1閾値以上第2閾値未満の場合(回転ケース21の回転速度が中速の場合)は、大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状態であると判断する。また制御部45は、植付駆動取出軸51の回転速度が第2閾値以上の場合(回転ケース21の回転速度が高速の場合)は、更に大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状態であると判断する。このように、本実施形態の制御部45は、伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさを3段階で判断するように構成されている。
続いて、不等速変速部25の不等速変速機構について説明する。前述のように、不等速変速部25は、非円形ギアからなる不等速変速機構によって不等速変速を行うように構成されている。本実施形態では、上記のように騒音や振動の発生し易さを3段階で判断するように構成されているので、不等速変速部25はこれに対応して、切り換え可能な3つの非円形ギア対を有している。
より具体的には以下のとおりである。即ち、不等速変速部25は、入力軸26に回転自在に軸支された3つ入力側非円形ギア(低速用入力ギア61a、中速用入力ギア62a、高速用入力ギア63a)と、出力軸27に対してスプライン嵌合により回転不能に軸支された3つの出力側非円形ギア(低速用出力ギア61b、中速用出力ギア62b、高速用出力ギア63b)と、を備える。そして、3つの非円形ギア対(低速用の非円形ギア対61a,61b、中速用の非円形ギア対62a,62b、高速用の非円形ギア対63a,63b)は、それぞれ常時噛み合い状態とされている。
不等速変速部25は、3つの入力側非円形ギア61a,62a,63aうち何れか1つと、入力軸26と、を相対回転不能に連結するキーシフタ64を備える。このキーシフタ64は入力軸26の軸方向に沿って移動可能に構成されており、これにより、入力軸26に連結する入力側非円形ギア61a,62a,63aを切り換えることができるように構成されている。
中速用の非円形ギア対62a,62bは、低速用の非円形ギア対61a,61bに比べて、不等速運動の加速度及び減速度が小さくなるように構成されている。言い換えれば、中速用の非円形ギア対62a,62bは、低速用の非円形ギア対61a,61bに比べて、より円形ギアに近い形状となっている。また高速用の非円形ギア対63a,63bは、中速用の非円形ギア対62a,62bに比べて、不等速運動の加速度及び減速度が小さくなるように構成されている。言い換えれば、高速用の非円形ギア対63a,63bは、中速用の非円形ギア対62a,62bに比べて、より円形ギアに近い形状となっている。
なお、何れの非円形ギア対で駆動を伝達する場合であっても、入力軸26の回転周期と、出力軸27の回転周期と、の比例関係は同じになるように設定されている。これにより、何れの非円形ギア対によって駆動を伝達する場合であっても、苗の植え付け間隔は変わらないようになっている。
そして本実施形態において、不等速変速部25は、前記キーシフタ64を駆動可能なシフタ駆動部65を備えている。このシフタ駆動部65は、例えばソレノイドなどのアクチュエータであり、制御部45によって制御可能に構成されている。
そして、制御部45は、回転センサ43が検出した植付駆動取出軸51の回転速度が所定の第1閾値未満であった場合(即ち、回転ケース21が低速回転している場合)は、シフタ駆動部65を適宜制御して、低速用入力ギア61aと入力軸26とを連結するように構成されている。これにより、フロントアクスルケース37から出力されたエンジン10からの回転駆動力が、低速用の非円形ギア対61a,61bによって不等速回転駆動力に変換されて、出力軸27から出力される。
ここで、低速用の非円形ギア対61a,61bの形状は、回転ケース21の理想的な不等速回転運動に対応した不等速回転駆動力を、出力軸27から出力できる形状に設定されている。即ち、低速走行の場合は、伝動系のねじれやガタも小さいので、出力軸27からの不等速回転駆動力を、ほぼそのまま回転ケース21まで伝達することができる。従って、低速用の非円形ギア対61a,61bの形状を理想的な形状としておくことにより、低速回転の際に植付爪22を理想的な軌跡で駆動することができる。
一方、制御部45は、回転センサ43が検出した植付駆動取出軸51の回転速度が第1閾値以上第2閾値未満であった場合(即ち、回転ケース21が中速回転している場合)は、シフタ駆動部65を適宜制御して、中速用入力ギア62aと入力軸26とを連結する。これにより、フロントアクスルケース37から出力されたエンジン10からの回転駆動力が、中速用の非円形ギア対62a,62bによって不等速回転駆動力に変換されて、出力軸27から出力される。これにより、中速回転時に出力軸27から出力される不等速回転の加速度及び減速度は、低速回転時よりも小さくなる。
このように、回転ケース21の回転速度がある程度速くなって、大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状態になった場合には、不等速回転の加速度及び減速度を自動的に小さくすることにより、振動や騒音の発生を防止することができる。
また制御部45は、回転センサ43が検出した植付駆動取出軸51の回転速度が第2閾値以上であった場合(即ち、回転ケース21が高速回転している場合)は、シフタ駆動部65を適宜制御して、高速用入力ギア63aと入力軸26とを連結する。これにより、フロントアクスルケース37から出力されたエンジン10からの回転駆動力が、高速用の非円形ギア対63a,63bによって不等速回転駆動力に変換されて、出力軸27から出力される。これにより、高速回転時に出力軸27から出力される不等速回転の加速度及び減速度は、中速回転時よりも更に小さくなる。
このように、回転ケース21の回転速度が更に速くなって、更に大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状態になった場合には、不等速回転の加速度及び減速度を更に小さくすることにより、振動や騒音の発生を防止することができる。
ところで本実施形態では上記のように、低速回転時に不等速変速部25が出力する不等速回転駆動力を理想的な不等速回転としているので、中速走行時及び高速走行時には、理想的な不等速回転よりも加速度及び減速度を小さくした不等速回転駆動力が不等速変速部25から出力される。即ち、中速回転時及び高速回転時においては、不等速変速部25の出力軸27は、回転ケース21の理想的な回転よりも小さな加減速で回転を行う場合があることになる。
しかしながら、回転速度が速くなると、伝動系のねじれやガタが大きくなる場合がある。この場合、不等速変速部25の出力軸27が出力する不等速回転の加速度及び減速度は増幅して伝達される現象が発生し、回転ケース21が実際に不等速回転を行う際の加速度及び減速度は大きくなる。従って、中速回転時や高速回転時において、不等速変速部25が出力する不等速回転駆動力の加速度及び減速度を低速回転時よりも小さくしたとしても、結局は、低速回転時と同じ程度の加速度及び減速度で回転ケース21が不等速回転する場合がある。これにより、中速回転時や高速回転時であっても、低速回転時と同様にきれいな植え付けを実現することができる。
なお以上の説明は、植付間隔が「疎植」に設定されている場合についての説明である。即ち、疎植の場合は植付爪22の移動速度が遅いので、当該植付爪22が地面を引き摺られ易い。これを防止するために、下死点近傍での植付爪22の移動速度を一時的に速くする必要があったので、上記のように回転ケース21の回転速度の加減速を行っていたのであった。
一方、密植を行う場合は、疎植の場合に比べて植付爪22が速く駆動されるから、当該植付爪22は地面を引き摺られにくくなる。従って、密植を行う場合(植付間隔が狭い場合)には、疎植を行う場合(植付間隔が狭い場合)に比べて、回転ケース21の不等速回転の加速度及び減速度は小さくて良い。
そこで本実施形態において、制御部45は、株間変速部29において設定された苗の植付間隔が広いほど、不等速変速部25における加速度及び減速度を小さくするように構成されている。即ち、本実施形態の田植機1は、不等速変速部25における加速度及び減速度が変更可能に構成されているので、この構成を利用して、植付間隔に応じて加速度及び減速度を変更するように制御を行うことが可能である。これにより、植付間隔に応じて最適な軌跡で植付爪22を駆動することができるので、植付間隔にかかわらずきれいに苗を植えつけることができる。
より具体的に説明する。制御部45は、植付間隔が「密植」に設定されている場合において、回転ケース21が低速回転している場合は、シフタ駆動部65を適宜制御して、中速用入力ギア62aと入力軸26とを連結するように構成されている。これにより、「密植」に設定されている場合には、「疎植」に設定されている場合に比べて、低速回転時における回転ケース21の加速度及び減速度を小さくすることができる。
もちろん密植の場合であっても、回転ケース21の回転速度が速くなってくると、伝動系に発生し得るガタやねじれが大きくなる結果、騒音や振動が発生し易くなる。そこで、制御部45は、密植に設定されている場合であっても、大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状況になった場合には、不等速変速部25における加速度及び減速度が小さくなるように制御する。例えば本実施形態では、制御部45は、密植に設定されている場合において回転ケース21の回転速度がある程度速くなってくると、シフタ駆動部65を適宜制御して、高速用入力ギア63aと入力軸26とを連結するように構成されている。この構成により、密植の場合であっても、回転ケース21の回転速度が速くなったときに植付部3の騒音や振動が大きくなることを防止することができる。
即ち、本実施形態のように田植機1を構成することで、苗の植付間隔にかかわらず、植付部3の騒音や振動が大きくなることを防止することができるのである。
以上で説明したように、本実施形態の田植機1は、不等速変速部25と、植付部3と、回転センサ43と、制御部45と、を備えている。不等速変速部25は、エンジン10からの回転駆動力を不等速回転駆動力に変換して出力する。植付部3は、不等速変速部25が出力する不等速回転駆動力によって植付爪22を駆動して苗の植え付けを行う。回転センサ43は、不等速変速部25から植付爪22まで駆動力を伝達する伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさを検出する。また、不等速変速部25は、当該不等速変速部25が出力する不等速回転駆動力の加速度及び減速度を変更可能に構成される。そして、制御部45は、回転センサ43が検出した前記伝動系のガタやねじれが大きくなるに従って、不等速変速部25の加速度及び減速度を小さくしている。
このように、不等速回転の加速度及び減速度を自動的に小さくすることにより伝動系のねじれやガタが過度に大きくなることを防止できるので、振動や騒音の発生を抑制することができる。また、上記のように不等速変速部25の加速度及び減速度を小さくしたとしても、伝動系には依然としてねじれやガタが存在しているので、植付爪22が実際に駆動される際の加速度及び減速度は大きくなる。これにより、不等速変速部25の加速度及び減速度を小さくした分を補うことができ、きれいな植え付けを実現することができる。
また本実施形態の田植機1は、以下のように構成されている。即ち、不等速変速部25は、非円形ギア対を複数備えるギア式の変速機構である。そして、当該不等速変速部25は、駆動を伝達する非円形ギア対を切り換えることにより、前記加速度及び減速度を変更する。
これにより、簡単な構成で、不等速回転駆動力の加速度及び減速度を変更することができる。また変速にギアを用いているので、効率的な駆動力伝達を実現することができる。
また本実施形態の田植機1は、植付部3による苗の植付間隔を変更する株間変速部29を備える。そして、制御部45は、前記植付間隔が広いほど、不等速変速部25の加速度及び減速度を大きくする。
即ち、本実施形態の田植機1は、上記のように不等速変速部25の加速度及び減速度を変更可能に構成されているから、この構成を利用して、植付間隔に応じて加速度及び減速度を変更するように制御すれば、植付間隔に応じた最適な軌跡で植付爪22を駆動することができる。
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
この変形例は、回転ケース駆動軸28に回転センサを設け、当該回転センサによって回転ケース駆動軸28の回転速度を検出するようにした構成である。回転ケース駆動軸28の不等速回転と、不等速変速部25が出力する不等速回転(出力軸27の回転)と、がズレている場合、伝動系にガタやねじれが発生していると判断することができる。
そこで本実施形態において、制御部45は、回転センサによって検出した回転ケース駆動軸28の回転速度と、不等速変速部25の出力軸27の回転速度と、を比較し、両者のズレの大きさに基づいて、伝動系に発生したガタやねじれの大きさを判断するように構成されている。なお、不等速変速部25の出力軸27の回転速度は、不等速変速部25の非円形ギアの形状によって決まるものである。非円形ギアの形状は設計段階において既知であるから、出力軸27の回転速度は、回転センサ等によって検出しなくとも制御部45が適宜計算等によって求めることができる。
この変形例の場合、回転センサの検出結果に基づいて、伝動系に発生したガタやねじれの大きさを判断することができるので、回転センサはガタ・ねじれ検出部であると言うことができる。
そして制御部45は、上記のようにして検出したガタやねじれが大きかった場合に、シフタ駆動部65を適宜制御して、不等速変速部25の加速度及び減速度を小さくする。これにより、伝動系に発生しているガタやねじれを小さくすることができるので、苗をきれいに植え付けることができるようになるだけでなく、騒音や振動が大きくなることも防止することができる。
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は類似の構成については、図面に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の田植機1は、第1実施形態の不等速変速部25に代えて、揺動ケース70を備える。揺動ケース70は、入力軸26と、出力軸27と、を備える。なお、入力軸26と出力軸27は、その軸線の延長線が一致しないように配置されている。入力軸26には入力側スプロケット71が固着され、出力軸27には出力側スプロケット72が固着されている。そして、入力側スプロケット71と出力側スプロケット72との間に無端チェーン73を懸架することにより、入力軸26から出力軸27まで駆動が伝達される。
ところで、植付駆動取出軸51と植付駆動伝達軸52を結ぶ第1ユニバーサルジョイント23と、植付駆動伝達軸52と入力軸26を結ぶ第2ユニバーサルジョイント24と、がそれぞれ所定の作動角(折れ角)を有する場合、第1ユニバーサルジョイント23及び第2ユニバーサルジョイント24において、不等速回転が生じる。
このようにユニバーサルジョイントに作動角が存在する場合、通常は、上記不等速回転を打ち消すために、植付駆動伝達軸52の両端において、第1ユニバーサルジョイント23と第2ユニバーサルジョイント24の取り付け位相を一致させて取り付ける。
ところが本実施形態では、植付駆動伝達軸52の両端において、第1ユニバーサルジョイント23と第2ユニバーサルジョイント24の取り付け位相を90°ズラして取り付けている。これにより、第1ユニバーサルジョイント23及び第2ユニバーサルジョイント24で発生した不等速回転が、相殺されることなく入力軸26に伝達される。
以上のように、本実施形態では、ユニバーサルジョイントの不等速性を利用して、エンジン10が出力する回転駆動力を不等速回転駆動力に変換している。従って、本実施形態においては、ユニバーサルジョイント23,24が不等速変速部であると言うことができる。
以上の構成によれば、第1実施形態のように非円形ギアを必要とせずに不等速変速を実現できるので、不等速変速を行うための機構をシンプルに構成することができる。なお本実施形態では、揺動ケース70の入力側スプロケット71と出力側スプロケット72は、円形かつ非偏心のスプロケットとされている。即ち、本実施形態において、不等速変速はもっぱらユニバーサルジョイントの不等速性を利用して行い、揺動ケース70内では不等速変速は行われない。
また本実施形態において、揺動ケース70は、ベアリング77を介して、リアアクスルケース40に取り付けられている。当該ベアリング77は、揺動ケース70を、出力軸27の軸線を中心として回転させることができるよう支持している。このように揺動ケース70を回転させることにより、植付駆動取出軸51と、揺動ケース70の入力軸26と、の位置関係が変化するので、ユニバーサルジョイント23,24の作動角(折れ角)を変更することができる。これにより、ユニバーサルジョイント23,24による不等速回転の加速度及び減速度を変更することができる。
なお、植付駆動伝達軸52は、その軸線方向にスライド可能なスプライン嵌合部74を有している。これにより、植付駆動伝達軸52は、その軸線方向で伸縮可能であるので、植付駆動取出軸51と入力軸26との位置関係の変化に対応することができる。
揺動ケース70には、出力軸27の軸線と一致させて、揺動ケース駆動ギア78が形成されている。一方、揺動ケース70の近傍には、電動モータ75が配置されている。この電動モータ75の出力軸には、前記揺動ケース駆動ギア78と噛み合うギアが固着されている。電動モータ75は、制御部45によって制御可能に構成されている。
この構成で、電動モータ75を駆動することにより、出力軸27の軸線を中心として揺動ケース70を回転駆動することができる。制御部45は、電動モータ75を適宜制御して揺動ケース70を回転させることにより、植付駆動取出軸51に対する入力軸26の相対位置を変化させることができる。これにより、制御部45は、ユニバーサルジョイント23,24の作動角を無段階で変化させることができるので、当該ユニバーサルジョイント23,24による不等速回転の加速度及び減速度を無段階で変更することができる。
一方、本実施形態の田植機1は、変速ペダル8の操作量を検出するペダルセンサ76を備えている。ペダルセンサ76の検出結果は、制御部45に出力される。制御部45は、ペダルセンサ76の検出結果に基づいて、伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさを判断するように構成されている。
即ち、前述のように、回転ケース21の回転速度は、変速ペダル8の操作量に応じて変化する。そして、回転ケース21の回転速度が速いほど、大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る。従って、制御部45は、ペダルセンサ76が検出した変速ペダル8の操作量が大きいほど、大きなガタやねじれが伝動系に発生し得る状態であると判断できる。なお上記のように、伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさをペダルセンサ76の検出結果に基づいて判断することができるので、ペダルセンサ76はガタ・ねじれ検出部であると言うことができる。
そして本実施形態において、制御部45は、ペダルセンサ76が検出した変速ペダル8の操作量が大きいほど、ユニバーサルジョイント23,24の作動角が小さくなるように、電動モータ75を制御するように構成されている。これによれば、伝動系に発生し得るガタやねじれが大きくなるほど、ユニバーサルジョイント23,24で発生する不等速回転の加速度及び減速度を小さくすることができるので、振動や騒音が大きくなることを防止できる。しかもこの構成によれば、伝動系に発生し得るガタやねじれの大きさ(変速ペダル8の操作量)に応じて、不等速回転の加速度及び減速度を無段階で調整することができるので、振動や騒音をより適切に抑制することができる。
以上で説明したように、本実施形態の田植機は、以下のように構成されている。即ち、不等速変速部は、エンジン10の回転駆動力を植付部3へ伝達するためのユニバーサルジョイント23,24であり、当該ユニバーサルジョイント23,24の折れ角を変更することにより、前記加速度及び減速度を変更する。
これにより、ギア等が無くても不等速変速を実現することができるので、田植機1をシンプルに構成することができる。また、ユニバーサルジョイント23,24の角度を無段階で調整できるように構成しているので、加速度及び減速度を無段階で調整することができる。
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同一又は類似の構成については、図面に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
本実施形態の田植機1は、第1実施形態の不等速変速部25に代えて、不等速変速部80を備える。この不等速変速部80は、電動モータによって不等速変速を実現するように構成されている。
以下、具体的に説明する。不等速変速部80は、遊星歯車機構(駆動合成部)81と、電動モータ86と、を有する。遊星歯車機構81は公知であるので詳細は省略するが、サンギア82と、複数のプラネタリギア83を回転可能に支持するプラネタリキャリア84と、アウターギア85と、を備えている。そして、入力軸26に入力された駆動力はサンギア82に入力され、アウターギア85の回転駆動力が出力軸27から出力されるように構成されている。一方、前記電動モータ86が出力する回転駆動力は、プラネタリキャリア84に入力される。
以上の構成で、エンジン10からの回転駆動力(入力軸26に入力された回転駆動力)と、電動モータ86の回転駆動力と、が遊星歯車機構81において合成され、出力軸27から出力される。
電動モータ86の動作は、制御部45によって制御されるように構成されている。制御部45は、電動モータ86を、加速及び減速を周期的に繰り返すように駆動制御する。このように駆動される電動モータ86の出力が、遊星歯車機構81においてエンジン10からの回転駆動力と合成されるので、出力軸27からは、加速及び減速を周期的に繰り返す不等速回転駆動力が出力される。即ち、上記の構成により、エンジン10からの回転駆動力を、不等速回転駆動力に変換して出力することができる。
また本実施形態の田植機1は、植付部3の振動を検出する振動センサ87を備えている。この振動センサ87の検出結果は、制御部45に出力される。ここで、植付部3の振動は、伝動系に発生したガタやねじれに起因していると考えることができる。そこで本実施形態において、制御部45は、振動センサ87が検出した振動の大きさに基づいて、伝動系に発生しているガタやねじれの大きさを判断するように構成されている。このように、振動センサ87の検出結果に基づいて、伝動系に発生しているガタやねじれの大きさを判断することができるので、振動センサ87はガタ・ねじれ検出部であると言うことができる。
そして、制御部45は、振動センサ87が検出した振動が大きいほど、電動モータ86の加速度及び減速度を小さくするように制御する。これにより、伝動系に発生したガタやねじれが大きくなると、不等速変速部80の出力軸27から出力される不等速回転駆動力の加速度及び減速度を小さくすることができるので、振動を小さくすることができる。
また、電動モータ86は、加速度及び減速度を柔軟かつ無段階に制御することができるので、振動の大きさに応じて適切な制御を行うことができる。
以上で説明したように、本実施形態の田植機は、以下のように構成されている。即ち、不等速変速部80は、出力を周期的に加速及び減速させる電動モータ86と、電動モータ86の駆動力及びエンジン10からの駆動力を合成して出力する遊星歯車機構81と、からなる。そして、不等速変速部80は、電動モータ86の出力の加速度及び減速度を変更することにより、遊星歯車機構81から出力される駆動力の加速度及び減速度を変更する。
即ち、電動モータ86の回転速度は柔軟かつ無段階に制御することが可能であるから、上記のように構成することにより、不等速変速部80が出力する不等速回転駆動力を柔軟かつ無段階に変更することができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
上記実施形態では、伝動系のねじれやガタが大きくなったときに、不等速変速部の加速度及び減速度を小さくするとしているが、加速度及び減速度を小さくした結果として、不等速変速部から等速回転が出力されるようになっても良い。例えば、第1実施形態において、不等速変速部25に円形のギア対を設け、ねじれやガタが極端に大きくなったときには、当該円形のギア対で駆動を伝達することにより等速回転を出力するようにすることができる。また、第2実施形態において、ねじれやガタが極端に大きくなったときには、ユニバーサルジョイント23,24の作動角がゼロになるように揺動ケース70を回動させて、等速回転を出力するようにすることができる。また第3実施形態において、ねじれやガタが極端に大きくなったときには、電動モータ86の回転を停止することにより、等速回転を出力するようにすることができる。
株間変速部29は、省略しても良い。また、株間変速部29を設ける場合、植付間隔は「疎植」と「密植」の2段階に限らず、3段階以上で設定可能であっても良い。
第1実施形態において、不等速回転するギア対は、非円形ギア対であるとしたが、これに限らず、例えば偏心ギア対であっても良い。
第1実施形態において、回転センサ43は植付駆動取出軸51の回転速度を検出しているが、これに限らず、エンジン10から回転ケース21に至る駆動伝達経路の中での何れかの位置の回転速度を検出できれば良い。
第2実施形態において、揺動ケース70内の駆動伝達は無端チェーン73によって行っているが、これに限らず、例えばギアによって揺動ケース70内の駆動伝達を行っても良いことは勿論である。
第3実施形態においては、振動センサ87によって植付部3の振動を検出する構成としたが、これに代え、或るいはこれに加えて、騒音センサによって植付部3の騒音を検出するように構成することもできる。
第1実施形態では駆動軸の回転速度を検出し、第2実施形態では変速ペダルの操作量を検出し、第3実施形態では振動を検出する構成としたが、これに限らず、ガタ・ねじれ検出部は適宜の構成を用いることができる。
上記実施形態では、植付部はロータリ式の植付装置であるとしたが、クランク式の植付装置を備えた田植機であっても、不等速回転駆動力によって植付爪を駆動する構成の場合には本発明を適用することができる。