JP5626727B2 - 微量血液からの白血球ポピュレーション解析法 - Google Patents

微量血液からの白血球ポピュレーション解析法 Download PDF

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本発明は、微量の全血から白血球を効率的かつ迅速に分離し、回収した白血球細胞をハイスループットな画像解析に供することで、血液中の白血球のポピュレーション解析を行う方法に関する。
血液は血液細胞と血漿成分からなる。血漿の主成分はその約90%を占める水であり、他に、塩などの無機質、フィブリノゲン、グロブリン、アルブミンなどのタンパク質を含む。また、血液細胞には赤血球、白血球、血小板がある。
血液の中で最も多く含まれている血液細胞は赤血球であり、健常人の血液中には約400〜500万個/μl存在する。赤血球は成熟途中で脱核して細胞核を失い、直径が約7.5〜8.5μmの円板状で中央がくぼんだ形状であり、壊れにくく、かつ変形し易いという特性を持つ。赤血球の中にはヘモグロビンが多量に含まれており、ヘモグロビンは酸素と結合する性質をもつことから、赤血球は血流に乗って酸素を全身に運搬する役割を果たす。
血小板は健常人で血液の中に約10〜40万個/μl存在する、血液細胞の中で最も小さく、直径2〜3μmで核を持たない不定形の細胞である。血管が損傷した場合に集合してその傷口をふさぎ(血小板凝集)、出血を止める作用をもつ。
白血球は直径6〜20μm、血液細胞の中で最も大きく唯一核を有する細胞であり、健常人の血液中に約4000〜8000個/μl存在する。白血球には様々な種類があり、大きく分けて顆粒球と単核球に分類される。顆粒球はさらに好中球、好酸球、好塩基球の3種類に分類され、一方単核球はリンパ球と単球の2種類に分類される。これら種々の白血球はそれぞれ独自の機能を有し、主に細菌・ウイルスなど異物の生体内への侵入防御や感染後の排除、腫瘍細胞や役目を終えた細胞の排除などを役割とすることが知られている。
白血球やその他の細胞は、細胞表面に糖タンパクなど様々な分子を発現しており、これら細胞表面抗原(細胞表面マーカー)によって、さらに機能的亜群や細胞系統、分化成熟段階など、細かい細胞の違いを識別し、分類することができる。これら白血球の詳細な分類は白血球サブセットとも呼ばれる。ヒト白血球分化抗原に関する国際ワークショップ(HLDA)が表面抗原を認識する抗体群を国際的に統一して分類したものがCD(cluster of differentiation)分類であり、2007年時点でCD1〜350まで決定され、白血球サブセットの同定に広く用いられている。CD分類は、本来は同じ表面抗原を認識するモノクローナル抗体の分類であるが、現在ではモノクローナル抗体が認識する表面抗原の名称としても用いられている。
血液は様々な成分と機能を有し生命維持のために全身を循環し、全身の組織や臓器の状態が血液の成分に反映されるため、血液中の成分を調べることにより、疾患の検査や治療の経過をモニタリングすることができる。そのため血液検査は一般的な検査方法として広く行われており、特にHIV感染者の免疫状態の評価や白血病、悪性リンパ腫のタイピングなどにおいては、血液中の白血球の詳細な種類やその割合などを分析する、白血球ポピュレーション解析が非常に重要であると考えられている。
白血球など血液細胞の検査は、古くは血液細胞を染色して塗抹標本を作製し、顕微鏡にて観察、計数する目視法で行われていたが、煩雑であり、標本作製、検鏡、判定に個人差があり、またカウント数が少ないため統計学的精度が低い、などの問題があった。そこで、電気抵抗法により血球容積を測定し、光透過度法により白血球の内部構造を分析する、全自動の血球計数機器が開発された(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この血球計数器は多量の細胞を計数でき、血液成分の簡易分類検査は可能であるが、リンパ球のサブセットポピュレーションなどの詳細な情報を得られないこと、細胞の形態も観察できないこと、血液サンプルが10〜120μl程度必要であること、などの問題があった。
さらに白血球を詳しく調べる方法として、フローサイトメトリーを用いた方法がある(例えば、特許文献2参照)。この方法は、個々の細胞を散乱光や蛍光を用いて光学的に解析するもので、白血球細胞の表面マーカーを解析することによる、白血球ポピュレーションの詳細な解析が可能である。しかしながら、この方法も、溶血処理が必要であり、細胞の形態も観察できず、血液サンプルが20〜200μl程度必要であり、大型で高価なフローサイトメトリーの装置が必要である、などの問題があった。そのため、医療機関でのルーチン検査に利用可能な、小型安価で詳細な解析を行うことができる白血球ポピュレーション計測機器の開発が求められていた。
また、マウスなどの小型実験動物を用いた実験では、実験動物の全血液量が少量のために実験が制限される、例えば、経時的に血液を採取して血中成分の詳細な分析を行うような実験が困難であるという問題もあった。そのため、患者の負担軽減という観点からだけでなく、動物実験の設計の制限をなくすという観点からも、少ない血液量でも分析を行うことができる解析方法の開発が期待されていた。
他方、本発明者らは、試料中に含まれる細胞を1細胞レベルで捕捉することができる単一細胞捕捉用のマイクロ流路デバイスや、かかるマイクロ流路デバイスを用いた試料中に含まれる細胞を1細胞レベルで分離・捕捉する方法や、前記マイクロ流路デバイスを利用した単一細胞の遺伝子発現の定量的解析方法(例えば、特許文献3参照)や、サイズ選択マイクロキャビティアレイを利用した単一細胞解析技術(例えば、非特許文献1参照)について提案している。
特公昭54―2598号公報 特公平6−100596号公報 WO/2009/016842
http://jstshingi.jp/abst/p/10/1010/tuat2.pdf
本発明の課題は、微量の全血から簡易かつ迅速に白血球を回収することができ、さらに個々の細胞の表現型をも迅速に同定することができる、小型で安価な装置を用いた、白血球のポピュレーション解析方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討し、サイズ選択マイクロキャビティアレイのシステムを利用した、微量血液からの白血球のポピュレーション解析方法(以下、「本発明の白血球ポピュレーションの解析方法」ともいう)を開発するに至った。具体的には、溶血操作の有無や抗凝固剤の種類、マイクロキャビティアレイの孔径や孔数などを検討することにより、サイズ選択マイクロキャビティアレイを用いて微量血液からほぼ100%の白血球を捕捉できる方法(以下、「本発明の白血球回収方法」ともいう)を見いだし、さらに染色方法を検討することにより、かかるマイクロキャビティアレイに捕捉された白血球を迅速に染色して観察できる方法を見出した。マイクロキャビティアレイに捕捉した細胞の蛍光顕微鏡観察を行うには、これまでは染色・洗浄操作を施した細胞をマイクロキャビティアレイに導入する(特許文献3)、あるいはマイクロキャビティアレイに細胞を捕捉した後に、このデバイスに染色液、洗浄液を順次導入してインキュベートする(特願2010−024774)方法を用いて行っていた。それに対し本発明では、染色液を細胞液に混入して反応させた後、希釈してマイクロキャビティアレイに導入することで、洗浄操作不要で迅速に細胞の染色、捕捉及び蛍光顕微鏡観察を行うことができる方法を見出した。
すなわち、本発明者らは鋭意検討の結果、抗凝固剤として金属キレート剤を用いて採取した、溶血操作を行わない血液を用いることにより、血中のほぼ100%の白血球を捕捉できる;血液に染色試薬を添加し反応させたサンプル液を希釈して白血球回収用のマイクロ流体デバイスに導入することにより、染色試薬の洗浄操作が不要で手順及び時間を削減できる;という効果を得て、簡易かつ迅速な白血球ポピュレーション解析方法を確立し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、〔1〕以下の(a)〜(e)の工程を備えたことを特徴とする微量血液からの白血球ポピュレーションの解析方法;
(a)孔径3μm以上5μm未満から選ばれる微細貫通孔を有するサイズ選択マイクロキャビティアレイにより全血試料中に含まれる白血球を選択的に捕捉することができるマイクロ流体デバイスを準備する工程;
(b)全血試料に、血液凝固抑制剤としてカルシウムイオンをキレートする金属キレート剤と、蛍光染色試薬とを混入し、希釈する工程;
(c)工程(b)で調製したサンプル液を、マイクロ流体デバイスに供給する工程;
(d)マイクロ流体デバイスのサイズ選択マイクロキャビティアレイの微細孔に白血球を捕捉する工程;
(e)白血球が集積化された領域内をスキャニングすることで白血球細胞の観察像を取得する工程;
に関する。
また本発明は、〔2〕微量血液が、0.1μl〜10μlの全血試料であることを特徴とする上記〔1〕記載の白血球ポピュレーションの解析方法や、〔3〕細胞捕捉率が、99%以上であることを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載の白血球ポピュレーションの解析方法や、〔4〕カルシウムイオンをキレートする金属キレート剤が、EDTAである上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法や、〔5〕蛍光染色試薬が、DNA又は白血球細胞表面抗原を認識して染色することを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法や、〔6〕サイズ選択マイクロキャビティアレイが、孔径3μmの微細貫通孔を有し、孔の中心間距離25μm、320×320の102,400孔をアレイ状に配したマイクロキャビティアレイであることを特徴とする上記〔1〕〜〔〕のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法や、〔〕サンプル液導入速度を100〜2000μl/minとすることを特徴とする上記〔1〕〜〔〕のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法や、〔〕マイクロ流体デバイスに供給するサンプル液に含まれる白血球数:マイクロキャビティアレイの孔数が、1:50〜1:5とすることを特徴とする上記〔1〕〜〔〕のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法に関する。
本発明によれば、溶血処理を行うことなく微量の血液をそのまま分析できる;白血球を簡易かつ迅速に(約一分以内)ほぼ100%分離することができる;白血球の詳細なポピュレーション解析を行うことができる;使用する装置自体が小型で安価である;等の特徴を有する白血球のポピュレーション解析を行うことができる。また、本発明によれば、試料が極微量でも十分な捕捉効率が得られるので、マウス等のような比較的小型の実験動物を被検体とする場合でも、サンプル採取に伴う被検体の負荷が少なく、経時的なモニタリングを通して、一個体の血液動態を連続的に把握することが可能になる。
サイズ選択マイクロキャビティアレイにより細胞を捕捉する技術を示す図である。 サイズ選択マイクロキャビティアレイを用いた、全血からの白血球回収方法の原理を示す図である。 本発明の白血球回収デバイス又は血球計算盤を用いた白血球数計測方法の概略を示す図である。 孔径3μm、100,000孔のマイクロキャビティアレイを用いて全血から白血球を捕捉する場合、サンプルに溶血操作を行わないほうが良好な結果が得られることを示した図である。 全血サンプルを本発明の白血球回収デバイスに導入し、マイクロキャビティアレイを通過したサンプル液を採取することにより、赤血球及び血小板を観察することができることを示す図である。 孔径3μm、100,000孔のマイクロキャビティアレイを用いて計測した白血球数と、血球計算盤を用いて計測した白血球数の相関を示す図である。 マイクロキャビティアレイに導入する全血サンプルに使用する抗凝固剤は、ヘパリンよりもEDTAを使用した方が良好な結果が得られることを示した図である。 Hoechst、FITC標識抗CD16β抗体、PE標識抗CD3抗体で染色した全血をマイクロキャビティアレイに導入し、捕捉した白血球の蛍光画像を示す図である。 ヒト細胞を移植したマウスから採取した全血を、FITC標識抗ヒトCD45抗体及びPE標識抗マウスCD45抗体を用いて染色し、マイクロキャビティアレイを用いて捕捉して観察した白血球の蛍光画像を示す図である。 ヒト細胞を移植した5匹のマウスから、移植後8週目、10週目の時点で全血を採取してマイクロキャビティアレイを用いて解析し、ヒト化率がどのように変化するかをモニタリングした結果を示す図である。
本発明の白血球ポピュレーションの解析方法は、数マイクロリットルの微量な全血から白血球を効率的かつ迅速に分離する手法であり、さらに、回収した白血球細胞をハイスループットな画像解析に供することで、血液中の白血球のポピュレーション解析を行う手法である。本発明の白血球ポピュレーションの解析方法は、従来技術の血球計数器やフローサイトメーターと比較して、以下の特徴を有している(表1)。血球計数器やフローサイトメーターと比べて少ない血液量を解析することができ、測定項目が血球計数器より詳細でフローサイトメーターと同等であるにもかかわらず、前処理が不用で簡便であり、使用する装置も小型で安価である。さらに、顕微鏡により形態観察を行うことができ、血球計数器やフローサイトメーターでは得られなかった、白血球の形態に関する情報を得ることができる。
また、白血球回収用のサイズ選択性マイクロキャビティアレイの下に、さらに孔径の小さいサイズ選択性マイクロキャビティアレイを設置することにより、白血球を白血球回収用のサイズ選択性マイクロキャビティアレイで、赤血球をさらに孔径の小さいサイズ選択性マイクロキャビティアレイで、順次、それぞれ捕捉することも可能であるが、本発明の白血球回収方法は全血から白血球を効率よく回収できることから、全血をマイクロ流体デバイスに導入し、マイクロキャビティアレイを通過した後のサンプル液を採取することにより、赤血球及び血小板を選択的に回収することもできる。フローサイトメーターを用いた場合は溶血操作により赤血球を破壊するため赤血球を解析することができず、血球計数器を用いた場合も、赤血球の形態に関する情報は得られない。それに対し、本発明の白血球回収方法を用いた場合は、マイクロキャビティアレイを通過し、白血球が捕捉された後のサンプル液を顕微鏡で観察することにより、貧血の診断と病態解明に不可欠である、赤血球の形態の情報を得ることができる。すなわち、本発明の白血球のポピュレーション解析方法は、小型で安価な装置を用いて微量の全血から簡易かつ迅速に効率よく白血球を回収することができ、白血球の詳細な表現型を迅速に同定できるだけでなく、同じサンプル液から赤血球の形態解析を行うことをも可能にしたものである。以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。
本発明の微量血液からの白血球ポピュレーションの解析方法としては、
(a)サイズ選択マイクロキャビティアレイにより全血試料中に含まれる白血球を選択的に捕捉することができるマイクロ流体デバイスを準備する工程;
(b)全血試料に、血液凝固抑制剤としてカルシウムイオンをキレートする金属キレート剤と、蛍光染色試薬とを混入し、希釈する工程;
(c)工程(b)で調製したサンプル液を、マイクロ流体デバイスに供給する工程;
(d)マイクロ流体デバイスのサイズ選択マイクロキャビティアレイの微細孔に白血球を捕捉する工程;
(e)白血球が集積化された領域内をスキャニングすることで白血球細胞の観察像を取得する工程;
を備えた微量血液からの白血球ポピュレーションの解析方法であれば特に制限されない。
本発明における白血球ポピュレーション解析としては、微量血液中の全白血球の数、及びそのうちの任意のサブセット(免疫表現型)の白血球の数を解析し、かかる白血球サブセットの全白血球中における割合を算出するものであれば特に限定されない。具体的には、DNA染色蛍光試薬で全白血球を、また任意のCD分類の蛍光標識抗体により任意のサブセットの白血球を染色した微量血液サンプルをマイクロ流体デバイスに導入し、マイクロキャビティアレイ上に捕捉された白血球の画像を取得して解析することにより、全白血球数に対する、かかる任意のサブセットの白血球数の割合を算出する例を挙げることができる。
本発明における微量血液の量としては、0.001μl〜50μl、好ましくは0.01μl〜30μl、より好ましくは0.1μl〜10μlを挙げることができる。また、かかる微量血液の量は、本発明のマイクロ流体デバイスに供給するサンプル液に含まれる白血球数:マイクロキャビティアレイの孔数の比が、1:50〜1:5、好ましくは1:10となるように上記の範囲内で適宜調整することができる。また血液の由来としては、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、モルモット、ハムスター、ラット、マウス等を挙げることができるが、とりわけヒト及びマウスを好適に例示すことができる。
本発明における、サイズ選択マイクロキャビティアレイにより全血試料中に含まれる白血球を選択的に捕捉することができるマイクロ流体デバイスとしては、微細加工技術を用いて直径数ミクロンの微細な貫通孔を高密度加工した白血球回収基板と、試料供給口・試料排出口を連通するマイクロ流路を接合・密封したマイクロ流路に、試料供給口から全血を導入し、試料排出口から血液試料を吸引することで、全血中の白血球のみを選択的に貫通孔上に捕捉回収するデバイスであれば特に制限されない。
上記マイクロ流体デバイスとしては、例えば、特願2010−24774や上記非特許文献1に記載されているような、試料供給口と試料排出口、及び試料供給口と試料排出口を連通するマイクロ流路が形成され、マイクロ流路の一部に相当する位置にサイズ選択マイクロキャビティアレイ用開口窓が設けられた上部部材と;前記上部部材の開口窓の下方に相当する位置に、白血球捕捉用の孔径、孔数、配置が制御された微細貫通孔を有するサイズ選択マイクロキャビティアレイと、かかるサイズ選択マイクロキャビティアレイを保持する密封性シールからなるマイクロキャビティアレイ保持部と;前記サイズ選択マイクロキャビティアレイの下方に相当する位置に設けられた吸引用開口窓と、前記吸引用開口窓と吸引口を連通する吸引流路が形成された下部部材と;を備え、サイズ選択マイクロキャビティアレイにより血液試料中に含まれる白血球を捕捉することができる装置を挙げることができ、その一例を図1に示す。
本発明におけるサンプル液としては、血液凝固抑制剤としてカルシウムイオンをキレートする金属キレート剤を含み、溶血操作を行っていない全血試料に蛍光染色試薬を混入して反応させ、希釈したものが好ましい。サンプル液における希釈倍率としては、マイクロ流体デバイスに供給するに十分な液量になるような希釈であれば特に制限されないが、好ましくは全血1μlにつき、200μlになるように希釈する、200倍希釈を挙げることができる。
本発明におけるカルシウムイオンをキレートする金属キレート剤としては、カルシウムイオンとキレート錯体を形成する物質であればよく、具体的には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−4酢酸)、クエン酸、フィチン酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、フッ化ナトリウム及びこれらを含む化合物を挙げることができ、中でもEDTAを好適に例示することができる。EDTAの濃度は0.1μM〜100mMであればよく、好ましくは1mM〜10mM、より好ましくは2mMを挙げることができる。
本発明における蛍光染色試薬としては、DNA又は白血球細胞を認識して染色することができ、蛍光により検出できる染色試薬であればよく、DNAを染色する蛍光染色試薬としては、Hoechst 33342、Hoechst 33258、アクリジンオレンジ、ジヒドロエチジウム、DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)、SYTOX(登録商標) Green(Molecular Probes社製)、TO-PRO(登録商標)-3 iodide(Molecular Probes社製)などを挙げることができる。また、白血球細胞のサブセットを認識して染色することができる蛍光染色試薬としては、FITC(fluorescein isothiocyanate)、rhodamine 、Cy3、Cy5、Alexa(登録商標)Fluor(Molecular Probes社製)、PE(phycoerythrin)などの蛍光色素によって蛍光標識された白血球細胞表面抗原を認識する抗体を挙げることができ、白血球細胞表面抗原を認識する抗体としてはCD抗体を挙げることができる。したがって、かかる白血球細胞を認識する蛍光染色試薬としては、例えばPE−抗CD8α抗体やPE−CD3抗体、FITC−抗CD16β抗体を好適に例示することができる。
本発明における上記サイズ選択マイクロキャビティアレイとしては、ニッケルや石英基板に電鋳技術やレーザー技術を用いて形成された白血球捕捉用の微細貫通孔を有するものを挙げることができ、中でもニッケル製のものを好適に例示することができる。マイクロキャビティアレイの白血球捕捉用の孔径としては、試料供給口から全血を導入し、試料排出口から血液試料を吸引した際に目詰まりを起こさず、全血中の白血球のみを選択的に、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の捕捉率で貫通孔上に捕捉回収することができる孔径であればよく、具体的には孔径2μm超5μm未満、好ましくは孔径2.5μm〜4.5μm、さらに好ましくは孔径3μm〜孔径4μm、特に好ましくは孔径3μmを挙げることができる。孔数としては1000個以上、好ましくは3000個以上、より好ましくは5000個以上、中でも100×100の10,000孔から100,000孔程度、とりわけ320×320の102,400孔が特に好ましい。また、孔の配置としては等間隔であることが好ましく、孔の中心間距離は20μm以上、40μm以下とすることが好ましく、例えば、孔径が3μmで、孔の中心間距離が25μmの例を挙げることができる。図2に本発明のマイクロキャビティアレイを用いた全血からの白血球回収原理を示す。
本発明におけるマイクロ流体デバイスへのサンプル液導入速度としては、100〜2000μl/minであればよく、好ましくは150〜1000μl/min、さらに好ましくは200μl/minである。
白血球が集積化された領域内をスキャニングすることで白血球細胞の観察像を取得する方法としては、蛍光顕微鏡又や光学顕微鏡、走査電子顕微鏡を用いて、マイクロキャビティアレイ上の細胞の観察像を取得することができる。かかる取得画像を解析することより、マイクロキャビティアレイ上の細胞の形態の観察や、細胞数の計測を行うことができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
[白血球回収デバイスの作製]
マイクロキャビティアレイを加工するための基板として、ニッケル基板(18×18mm、厚さ35μm)を使用した。マイクロキャビティアレイに血液を直接送液し、血中の白血球のみを選択的にマイクロキャビティ上に捕捉するために、血球成分のサイズとフィルトレーションに関する文献等の値から、マイクロキャビティアレイの孔径サイズは2〜3μmとした。ニッケル基板の加工は、オプトニクス精密株式会社に依頼し、電鋳技術を用いてニッケル基板に孔径3μmの貫通孔を加工した。孔の中心間距離は25μmとし、合計で320×320の102,400孔をアレイ状に配したものを作製した。このマイクロキャビティアレイを、本明細書においては、孔径3μm、100,000孔の白血球回収用マイクロキャビティアレイと記すこともある。さらに、PDMS(Poly-dimethylsiloxane)マイクロ流路により、マイクロキャビティアレイ基板を挟み込む形式の白血球回収装置を設計し、アレイ領域の周囲を囲む上部チャンバーと、吸引ラインを配した下部流路を作製した。これらのPDMSマイクロ流路をマイクロキャビティアレイに対して、in situ PCR slide seal(タカラバイオ社製)により貼り付けた。これらのPDMSからなる構造体は、CAD−CAMを用いてPMMA(Poly(methyl methacrylate))を切削して作製した構造体から型を作製し、この型にPDMSを注入し加熱硬化させて作製した。白血球回収装置は、下部流路をぺリスタルティックポンプに接続し、コンピューター制御式電動ステージ、冷却デジタルカメラ(DP70;オリンパス社製)及びDAPI、FITC、PE由来の蛍光を観察するための蛍光フィルター(WU、NIBA、Cy3フィルター)を装備した正立顕微鏡(BX61;オリンパス社製)のステージ上に設置して使用した。
[白血球回収デバイスを用いた微量血液からの白血球の回収及び解析方法]
白血球回収デバイスを用いた白血球の計数は、以下の手順で行った。
1)微量血液(0.1〜10μl)に蛍光染色試薬を反応させて染色した後、PBS(2mM EDTA)を加えて、血液1μlに対し200μlまでサンプルをボリュームアップした。
2)上述の白血球回収用デバイスの上部チャンバーにPBS(2mM EDTA)100μlを導入し、マイクロキャビティアレイ上をPBSで満たしてから、ぺリスタルティックポンプにより200μl/minで下部流路から吸引することにより、送液を開始した。
3)約30秒後、200μlにボリュームアップした血液サンプルを上部チャンバーに導入し、全血中の血漿、血小板、赤血球はマイクロキャビティアレイを通り抜けさせ、核を有しサイズが大きな白血球のみをマイクロキャビティアレイ上に捕捉した。
4)約30秒後、血球成分を流しきるために、同デバイスに200〜400μlのPBS(2mM EDTA)を導入し、その約30〜60秒後、上部チャンバーにカバーグラスをかぶせ、蛍光顕微鏡観察を行った。
5)マイクロキャビティアレイ上に捕捉・回収された全ての細胞を観察するためにアレイ全体の画像を取得し、Lumina Vision(Mitani Corporation社製)を用いて画像取得及び
細胞数を計数する解析を行った。
[白血球回収用デバイスを用いた白血球回収方法の検討]
マイクロキャビティアレイの孔径について検討した。ヒト全血50μlをHoechst 33342(Molecular Probes社製)を含む細胞染色液50μlと反応させた。VersaLyse溶血試薬(Beckman coulter社製)を含むバッファーもしくはPBS(2mM EDTA)を用いて、サンプルを1mlまでボリュームアップし、赤血球を溶血させたサンプルと非溶血サンプルを調製した。全血1μl分に相当するサンプル量を、流速200μl/minにて白血球回収デバイスに導入し、サンプル中の白血球数を測定した。また、同サンプル中の白血球数を、血球計算盤を用いてカウントし、血液1μl中の白血球細胞数を算出した(図3)。血球計算盤を用いてカウントして得た細胞数を100として、孔径2μm、10,000孔のマイクロキャビティアレイ(特許文献3参照)を用いた白血球の回収効率を求めた(表2)。孔径2μmのマイクロキャビティアレイを用いて、血液を送液した場合は、非溶血サンプルではすぐさま目詰まりが起こった。一方、溶血サンプルでは目詰まりは起こらないが、白血球回収効率は39±20%(個別の測定値は57.5%、17.7%、40.8%)であり、白血球回収率は低い上に安定しなかった。
また孔径3μm、100,000孔の白血球回収用マイクロキャビティアレイを用いた場合では、溶血サンプルおよび非溶血サンプルともにスムーズな送液を行うことができ、血液サンプルを送液した後、バッファーを送液することで、マイクロキャビティアレイ上を綺麗に洗い流すことができた。図4にその一例を示す。白血球回収効率は、溶血サンプルで45±8%、非溶血サンプルで100±10%であった。白血球回収用マイクロキャビティアレイ通過後の非溶血サンプルを顕微鏡観察した結果、赤血球・及び血小板のみが観察され、本デバイスを通過したサンプル中には白血球を除いた血球成分の回収が可能であることが示された(図5)。また、非溶血サンプルの白血球数を、血球計算盤を用いてカウントした値と、孔径3μm、100,000孔のマイクロキャビティアレイを用いて測定した値との関係を表すグラフ(図6)から、両方法による白血球数の測定値に高い相関性があることが示された。
以上の結果から、1)溶血処理により白血球回収効率が低減すること、2)白血球以外の血球成分の通過には孔径が3μm以上の微細貫通孔が必要であることが示唆された。よって、以後の実験では、溶血を行わずに血液を適宜希釈して白血球回収デバイスに導入することとし、デバイスに配するマイクロキャビティアレイの孔径は3μmとした。
[血液サンプルの調製法の検討]
血液サンプルの状態は、採血時から時間が経つほど悪化していくと考えられ、白血球の回収及び検出に与える影響も懸念される。特に、白血球数の正確な計測には血小板の凝集作用を効果的に抑制することが求められ、血液凝固・血小板凝集を抑制し、血液の流動性を保つことができる抗凝固剤を利用することが必要である。そこで、採血した全血の抗凝固剤としてEDTA(ethylene-diamine-tetraacetic acid)及びヘパリンを使用し、孔径10μmのマイクロキャビティアレイに回収された血球の状態を、凝集した血球の有無について評価した(図7)。この結果、EDTAを抗凝固剤として利用した場合(図7右パネル)には顕著な凝集塊は観察されなかったが、ヘパリンを抗凝固剤として利用した場合(図7左パネル)には大小の凝集塊が多く観察された。このような凝集塊はマイクロキャビティアレイの目詰まりを引き起こすものと考えられ、白血球の計測に不具合を起こすことが懸念される。よって、採血時の抗凝固剤にはEDTAを利用することとし、血液を希釈するためのPBSバッファーには2mM EDTAを含むものを利用することとした。
[回収白血球数とマイクロキャビティアレイの孔数の関係性の評価]
白血球を効率的に回収し、総白血球数及びポピュレーションを正確に計測するために、測定時にマイクロキャビティアレイに導入する白血球数の最適範囲及び血液の最適希釈比率を検討した。このために、孔径3μm、25,000孔のマイクロキャビティアレイを用いてマウス血液1μl中の白血球数の計測を行った。測定する血液サンプルは予め、上記の方法と同様に、血球計算盤を用いて白血球数を計測した。この結果、マウス血液1μl中に2,000〜12,000の血球が存在することが分かった。この結果を受け、マウス血液0.1μl(白血球数500〜1,200)又は1μl(白血球数5,000〜12,000)に相当するサンプルを200μlにボリュームアップし、白血球回収用デバイスに導入した。この結果、マウス血液0.1μl(白血球数500〜1,200)を解析した場合は、マイクロキャビティアレイ上に白血球を回収することができ、算出された総白血球数も血球計算盤での計測結果と一致した。一方で、全血1μl(白血球数5,000〜12,000)では白血球がほとんど回収できず、計測不能であった。これは、マイクロキャビティの孔数に対して白血球が過剰に存在するために、細胞捕捉時に細胞に占有される貫通孔が多数生じることで差圧が上昇し、細胞が貫通孔を通過したものと考えられた。これらの結果から、本発明における微量血液の量としては、0.001μl〜50μl、好ましくは0.01μl〜30μl、より好ましくは0.1μl〜10μlとし、かかる微量血液の量は、本発明のマイクロ流体デバイスに供給するサンプル液に含まれる白血球数:マイクロキャビティアレイの孔数の比が、1:50〜1:5、好ましくは1:10となるように適宜調整して使用することとした。
[白血球回収用デバイスを用いた白血球ポピュレーション解析の結果]
採取した血液50μlにFITC標識抗CD16β抗体(Beckman coulter社製)及びPE標識抗CD8α(又はCD3)抗体(Beckman coulter社製)各20μlを加えて白血球の表面抗原を染色し、Hoechst 33342(Molecular Probes社製)10μlを用いて核を染色した。血液1μl相当のサンプルをPBS(2mM EDTA)で200μlにボリュームアップし、全量を白血球回収用デバイスに導入することで白血球回収用マイクロキャビティアレイ微細孔上に白血球を回収した。蛍光顕微鏡を用いて蛍光観察・画像取り込みを行い(図8)、マイクロキャビティアレイ上に捕捉されたHoechst 33342陽性細胞数から総白血球数を算出した。また、FITC及びPE由来の蛍光顕微鏡写真からCD16β及びCD8α(又はCD3)陽性細胞数も同様に計測した。その後、各ポピュレーションの比率を以下の計算式より求めた。
ポピュレーション比率=CD16β及びCD8α(又はCD3)陽性細胞数/総白血球数×100(%)
また、同血液サンプルを溶血後、フローサイトメーター(BD bioscience社製)を用いてCD16β及びCD8α(又はCD3)陽性細胞のポピュレーションを解析し、白血球回収用デバイスを用いたポピュレーション計測結果と比較した(表3)。ただし、フローサイトメーターでは微量血液からの計測が困難であるため、100μl以上の全血を別途採血することで調製と解析を行った。
この結果、CD16β及びCD8α陽性細胞の比率を計測したサンプル1では、白血球回収用デバイス(マイクロキャビティアレイ)での計測結果が、CD16β陽性細胞は73.6±2.7%、CD8α陽性細胞は4.8±0.2%であった。同サンプルのフローサイトメーターでの計測結果では、それぞれ73.1%、4.2%という値であった。次に、CD16β及びCD3陽性細胞の比率を計測したサンプル2では、白血球回収用デバイスでの計測結果が、CD16β陽性細胞は56.8±4.2%、CD3陽性細胞は18.8±1.6%と計測された。同サンプルのフローサイトメーターでの計測結果では、それぞれ57.9%、19.1%という値であった。このように、白血球回収用デバイスを用いた白血球ポピュレーションの計測結果とフローサイトメーターを用いた白血球ポピュレーションの計測結果には高い相関性が得られており、本発明の白血球ポピュレーションの解析方法により、微量血液から高精度な白血球ポピュレーション解析を行うことができることが示された。
[ヒト細胞定着率の評価]
さらに、本発明の白血球ポピュレーション解析方法は、ヒト細胞定着率の評価にも利用することができる。移植マウスとして、重度免疫不全マウスであるNOD/Shi−scid−IL2Rynullマウス(財団法人実験動物中央研究所)を用いた。購入マウスの週齢は、購入可能な最若週齢の6週齢とした。また、性周期がなく安定した生化学値が得られる雄を選択した。また、移植細胞として、ヒト臍帯血由来CD34陽性細胞(Lot;081618A、Lonza社製)を使用し、移植まで液体窒素中で凍結保存した。
マウス入荷から2週間の検疫、馴化後、X線照射行った。検疫、馴化期間中、外傷や脱毛の有無、運動性など外見上の一般状態を観察した。検疫、馴化期間中に健康状態に異常のあったマウスはいなかった。マウスへのX線照射はX線照射装置(MBR-320R、日立メディコ株式会社製)を用い、移植群のマウスを専用のホルダー内に半固定し、全身照射(2.5Gy)を行った。照射は、管電圧:300kV、管電流:10mA、1.0mm Al+0.5mm Cuフィルターの条件下で行い、X線管と照射台の間隔は550mmとした。被照射体位置の空間線量率は1.5Gy/minであった。X線照射マウスへの細胞移植はX線照射後3−5時間後に行った。
移植に際し、凍結保存されたヒト臍帯血由来CD34陽性細胞を融解し、遠心洗浄後MEM(Invitrogen社製)培地(2% BSA含有)中に懸濁した後、細胞数を計測した。細胞数計測は血球計算盤を用いて顕微鏡下で行った。細胞濃度の調整後、シリンジを用いてX線照射マウスの尾静脈より細胞懸濁液(200μl/2.25×10cells/mouse)を注入し、細胞移植を行った。細胞は、調整から移植まで4℃で維持した。細胞移植の際、マウスはマウス採血ホルダー内に入れることで固定した。非移植群には、MEM培地(2% BSA含有)のみを同量、尾静脈より注入した。移植後、各マウスを1〜4ヶ月飼育した。このマウスへのヒト細胞定着率を評価するために、抗凝固剤としてEDTAを使用して血液を採取したマウス全血50μlにFITC標識抗ヒトCD45抗体(Beckman coulter社製)及びPE標識抗マウスCD45抗体(Beckman coulter社製)各20μlを加えて白血球の表面抗原を染色し、Hoechst 33342(Molecular Probes社製)10μlを用いて核を染色した。血液1μl相当のサンプルをPBS(2mM EDTA)を用いて200μlにボリュームアップし、全量を白血球回収用デバイスに導入することで白血球回収用マイクロキャビティアレイ微細孔上に白血球を回収した。蛍光顕微鏡を用いて蛍光観察・画像取り込みを行い(図9下のパネルに一例を示す)、マイクロキャビティアレイ上に捕捉されたHoechst 33342陽性細胞数を総白血球数として、FITC及びPE由来の蛍光顕微鏡写真から測定したヒトCD45及びマウスCD45陽性細胞数から、各ポピュレーションの比率を求めた(表4)。また、同血液サンプルを溶血後、フローサイトメーター(BD bioscience社製)を用いてヒトCD45及びマウスCD45陽性細胞のポピュレーションを解析し(図9右上のパネルに一例を示す)、白血球回収用デバイスでのポピュレーション計測結果と比較した(表4)。ただし、フローサイトメーターでは微量血液からの計測が困難であるため、100μl以上の全血を別途採血することで調製と解析を行った。
その結果、白血球回収用デバイス(マイクロキャビティアレイ)を用いて測定した細胞移植群マウスの白血球のヒト化率は64.7%、同サンプルのフローサイトメーターで測定したヒト化率は64.9%であった。それに対し、非移植群マウスの白血球では、いずれの方法でもヒト化率は0%であった。このように、マイクロキャビティアレイを用いた方法により算出されたヒト化率はフローサイトメトリーにより算出されたヒト化率の結果とよく一致しており、本発明のマイクロキャビティアレイを用いた白血球ポピュレーションの解析方法は、ヒト細胞定着率評価にも利用できることが示された。この結果をもとに、移植からの経過週間が8週目、10週目の時点で5匹の移植群マウスについてヒト化率がどのように変化するかをモニタリングした。この結果、8週目の時点での5匹の移植群マウスのヒト化率は53.5〜80.1%であったのに対し、10週目には61.7〜90.4%となった(図10)。ヒト化率が増加している個体と減少している個体が存在していることがこの結果から示され、本発明による白血球回収デバイスを用いることで、マウス個体におけるヒト化率の変動を微量血液から連続的に追跡可能であることが示唆された。
本発明は、微量血液の解析の分野や、白血球ポピュレーションの解析の分野や、医療・診断分野における白血球簡易検査装置の分野に好適に利用することができる。

Claims (8)

  1. 以下の(a)〜(e)の工程を備えたことを特徴とする微量血液からの白血球ポピュレーションの解析方法。
    (a)孔径3μm以上5μm未満から選ばれる微細貫通孔を有するサイズ選択マイクロキャビティアレイにより全血試料中に含まれる白血球を選択的に捕捉することができるマイクロ流体デバイスを準備する工程;
    (b)全血試料に、血液凝固抑制剤としてカルシウムイオンをキレートする金属キレート剤と、蛍光染色試薬とを混入し、希釈する工程;
    (c)工程(b)で調製したサンプル液を、マイクロ流体デバイスに供給する工程;
    (d)マイクロ流体デバイスのサイズ選択マイクロキャビティアレイの微細孔に白血球を捕捉する工程;
    (e)白血球が集積化された領域内をスキャニングすることで白血球細胞の観察像を取得する工程;
  2. 微量血液が、0.1μl〜10μlの全血試料であることを特徴とする請求項1記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
  3. 細胞捕捉率が、99%以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
  4. カルシウムイオンをキレートする金属キレート剤が、EDTAである請求項1〜3のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
  5. 蛍光染色試薬が、DNA又は白血球細胞表面抗原を認識して染色することを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
  6. サイズ選択マイクロキャビティアレイが、孔径3μmの微細貫通孔を有し、孔の中心間距離25μm、320×320の102,400孔をアレイ状に配したマイクロキャビティアレイであることを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
  7. サンプル液導入速度を100〜2000μl/minとすることを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
  8. マイクロ流体デバイスに供給するサンプル液に含まれる白血球数:マイクロキャビティアレイの孔数が、1:50〜1:5とすることを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の白血球ポピュレーションの解析方法。
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