本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。なお、図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を実物のそれから変更し、誇張している。また、各図面において、見易さのために繰り返しとなる符号を一部省略している場合がある。
<透過型曲面スクリーン>
図1は一つの実施形態にかかる本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法によって製造された透過型曲面スクリーン10(以下、単に「スクリーン10」と表記する。)の外観を模式的に表した斜視図である。図1では、スクリーン10を表示装置に備えさせた場合に映像光源からの映像光が投射される側(以下、単に「映像光源側」と表記する。)が紙面奥側であり、スクリーン10を表示装置に備えさせた場合に観察者が観察する側(以下、単に「観察者側」と表記する。)が紙面手前側である。また、図1中に示した「水平方向」は、スクリーン10を表示装置に備えさせた場合に、水平となる方向であって、「鉛直方向」は、スクリーン10を表示装置に備えさせた場合に、鉛直となる方向である。図2は、スクリーン10の断面を示し、その層構成を模式的に表した図である。図2では紙面右が映像光源側、紙面左が観察者側である。また、図2は、単にスクリーン10の層構成を模式的に表す図であり、スクリーン10を実際の形状とは異なる平板状にして示している。図3は、透過型曲面スクリーン10を備えた表示装置1の鉛直方向断面を模式的に表した図である。
図1に示すように、スクリーン10は観察者側に凸となるような三次元曲面をなすように形成されている。ここで、「三次元曲面をなすように形成されている」とは、互いに対して傾斜した複数の軸をそれぞれ中心として、部分的又は全体的に曲がっていることを意味する。具体的には、スクリーン10は、平板状にすると矩形となる形状を有しており、該矩形の一方の対角線と平行でスクリーン10の映像光源側に位置する第1の軸A1を中心とした方向d1に曲がるとともに、他方の対角線と平行でスクリーン10の映像光源側に位置するとともに第1の軸A1と交わる第2の軸A2を中心とした方向d2にも曲がっている。この結果、スクリーン10は、全体として、観察者側に凸となるような三次元曲面をなすように形成されている。また、スクリーン10を平板状にした場合の矩形の一対の対角線が交わる中央位置Paにおいて、スクリーン10の表示面10aは観察者側に最も突出している。ただし、本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法によって製造できる透過型曲面スクリーンの形状はスクリーン10のような形状に限定されず、様々な三次元曲面をなすように透過型曲面スクリーンを製造することができる。また、透過型曲面スクリーンを平板状したときの形状は矩形に限定されず、様々な形状にすることができる。
スクリーン10は、映像光源側から投射された映像光を観察者側に透過させるスクリーンである。よって、図3に示すように、スクリーン10を表示装置1に組み込む場合、該表示装置1を、スクリーン10と、該スクリーン10を支持する開口部を有した筐体2と、該筐体2内に収容され、スクリーン10に映像光Lを投射する映像光源3とを少なくとも備えた、いわゆる背面投射型表示装置とすることができる。
スクリーン10は、図2に示すように、積層体31及び、基材層32を備えている。積層体31は、映像光源からの光を制御して観察者側に透過可能な層であり、複数の層を有する。図2に示した積層体31は、ハードコート層21、光拡散層20、光学機能層12、及び光学機能層12の基材となる層(以下、光学機能層12の基材となる層を「第1基材層」と表記する。)11を有している。なお、本実施形態では、基材層32がフレネルレンズ24を有しているため、以下では基材層32をフレネルレンズ層32と表記する。以下、これらの層について説明する。
(フレネルレンズ層32)
フレネルレンズ層32は、後に説明するようにして、基部23と基部23上に形成されたフレネルレンズ24とが一体となって樹脂で形成される層である。フレネルレンズ層32を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂を挙げることができる。
基部23は、フレネルレンズ層32にある程度の強度を持たせるために備えられる部分である。基部23の厚さ(フレネルレンズ層32のフレネルレンズ24を除いた部分の厚さ。すなわちフレネルレンズ層32の最も薄い部分の厚さ。)は、3mm以上5mm以下であることが好ましい。基部23の厚さを3mm以上とすることによって、フレネルレンズ層32に十分な剛性を付与しやすくなる。一方、基部23の厚さを5mm以下とすることによって、スクリーン10の厚さが厚くなり過ぎる、映像光の透過率が低下する、ゴースト(二重像)が発生する等の不具合を防止しやすくなる。
フレネルレンズ24は、映像光源から発散光束としてスクリーン10に投射される映像光の進行方向を偏向させる機能を有している。具体的には、フレネルレンズ24は、発散光束として入射した映像光を、映像光源側から観察者側に向けて進む平行光束に変換する。このように映像光を一旦平行光束にしておくことにより、観察者側から観察される映像の明るさのバラツキを緩和することができる。
フレネルレンズ24に入射した映像光の光路について、図4を参照しつつ説明する。図4は、フレネルレンズ層32の一部を拡大するとともに、フレネルレンズ24に入射した映像光の光路を示した図である。
図4に示すように、フレネルレンズ24を構成する複数の単位レンズ25は、映像光Lを屈折させて入射させる入射面26と、入射面26から入射した映像光Lを全反射させて観察者側に向ける全反射面27とを有している。このように、映像光源から発光される映像光Lは、発散光束としてスクリーン10に投射されてフネルレンズ層32に入射し、フレネルレンズ24を構成する単位レンズ25、25、…によって屈折及び反射されることによって、平行光束にされて積層体31へと入射する。
このようなフレネルレンズ24を構成する単位レンズの構成について、以下に例示する。図5(a)、図5(b)及び図6は、フレネルレンズ層32を平板状にした場合のフレネルレンズ24を模式的に表した平面図である。図5(a)及び図5(b)は、いわゆるサーキュラーフレネルレンズを表しており、図6は、いわゆるリニアフレネルレンズを表している。図5(a)、図5(b)及び図6において、紙面奥が観察者側、紙面手前が映像光源側である。また、図5(a)、図5(b)及び図6に示した「水平方向」及び「鉛直方向」は、図1と同義である。
図5(a)に示したフレネルレンズ24aを構成する単位レンズ25a、25a、…は、同心円をなす円の弧上に延びるように配列されている。そして、水平方向における単位レンズ25a、25a、…の構成は、水平方向における中心位置を通る鉛直方向と平行な軸Aaを中心として、線対称となっている。このような単位レンズ25a、25a、…の構成はスクリーン10に対する映像光源等の配置に基づいて設計され得る。例えば、単位レンズ25a、25a、…の配置に関する同心円の中心Oが、スクリーン10を備えた表示装置を正面から観察した場合において、映像光源の配置位置に重なる位置になるように設計する。この場合、中心Oは、フレネルレンズ24aの光学中心と呼ばれることもある。このように中心Oをフレネルレンズ層32の中心から鉛直方向下側に偏心させることにより、スクリーン10の下方から映像光を投射したとしても、映像光源からの発散光束を平行光束にすることができる。スクリーン10の下方から映像光を照射する構成とすることによって、スクリーン10を備えた表示装置の厚さを薄くすることができる。
図5(b)に示したフレネルレンズ24bは、フレネルレンズ24bを構成する単位レンズ25b、25b、…の配置に関する同心円の中心Oの位置が、図5(a)に示したフレネルレンズ24aと異なる。図5(b)に示したフレネルレンズ24bのように、単位レンズ25b、25b、…の配置に関する同心円の中心Oを、フレネルレンズ層32の略中心とすることも可能である。
図6に示したフレネルレンズ24cを構成する単位レンズ25c、25c、…は、それぞれが水平方向に直線状に延び、且つ単位レンズ25c、25c、…が鉛直方向に配列されている。このように、フレネルレンズ24をいわゆるリニアフレネルレンズとすることも可能である。ただし、リニアフレネルレンズの場合、単位レンズの配列方向(図6に示した形態では紙面上下方向)には光を収束できるが、単位レンズが延在する方向(図6に示した形態では紙面左右方向)には光を収束できない。
(第1基材層11)
第1基材層11は、後で詳しく説明する光学機能層12を形成するための基材となる層であり、積層体31の変形を抑えてスクリーン10によって表示される映像の歪みの発生を防止できる程度の剛性が付与されている。また、上述したように、フレネルレンズ層32の基部23は、その厚みを厚くすると、ゴースト(二重像)が発生する等の不具合を起こす虞があるため、第1基材層11は、積層体31に十分な剛性を付与するだけでなく、スクリーン10全体に十分な剛性を付与すべく、その材質及び厚みを設計することが好ましい。
第1基材層11は、例えば、上述したフレネルレンズ層32を構成する樹脂と同様の樹脂で構成されることが好ましい。後に説明するようにして射出成型でフレネルレンズ層32を形成する際に、第1基材層11とフレネルレンズ層32との密着性を高めることができるからである。
第1基材層11の厚みは、50μm以上200μm以下であることが好ましい。第1基材層11の厚さを50μm以上とすることによって、スクリーン10に十分な剛性を付与しやすくなる。一方、第1基材層11の厚さを200μm以下とすることによって、スクリーン10の厚さが厚くなり過ぎる、映像光の透過率が低下する、後に説明するようにして光学機能層12を形成することが困難になる等の問題を生じることを防止しやすくなる。
(光学機能層12)
光学機能層12は、映像光源側から入射した映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有する層である。光学機能層12は、図2に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備える。図7は、図2に示した光学機能層12の一部を拡大して示した図である。図2、図7及び適宜示す図を参照しつつ光学機能層12についてさらに説明する。
光学機能層12は、光を透過可能に層面に沿って並列された光透過部13、13、…と、光透過部13、13、…間に光を吸収可能に並列された光吸収部14、14、…とを備えており、光透過部13、13、…及び光吸収部14、14、…は、図2に示した断面を有して紙面奥/手前側に延在する形状を備えている。光学機能層12は、このような光透過部13、13、…及び光吸収部14、14、…を備えることによって、表示装置に備えられた際に、映像光源側から入射した映像光の光路を制御するとともに、迷光や外光を適切に吸収する機能を有することができる。
光透過部13、13、…は、映像光を透過する機能を有する部位で、図2及び図7に表れる断面において、略台形の断面を有する要素である。当該略台形断面における上底及び該上底より長い下底が光学機能層12の層面に沿う方向に配置されている。また、光透過部13、13、…は、屈折率がNpであり、光透過性を有する。このような光透過部13、13、…は、以下に説明する光透過部構成組成物を硬化させることによって構成することができる。なお、屈折率Npの値は特に限定されることはないが、適用する材料の入手性の観点等から1.49〜1.56であることが好ましい。
光透過部構成組成物としては、紫外線などの光で硬化させられるものが好ましく、例えば、以下に挙げる光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマー(P1)としては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリチオール系等のプレポリマーを挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M1)としては、例えば、ビニルピロリドン、2−エチルヘキシルアクリレート、β−ヒドロキシアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
また、上記光重合開始剤(S1)としては、例えば、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち光透過部13、13、…の着色防止の観点から好ましいのは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよびビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドである。なお、上記光重合開始剤(S1)は、光透過部構成組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上5.0質量%以下含まれていることが好ましい。
これらの光硬化型プレポリマー(P1)、反応性希釈モノマー(M1)および光重合開始剤(S1)は、それぞれ、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また必要に応じて、光透過部構成組成物中に、塗膜の改質や塗布適性、金型からの離型性を改善させるため、種々の添加剤としてシリコーン系添加剤、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等を添加することも可能である。だたし、光透過部構成組成物は以下に説明するように、架橋間分子量が3000以上4000以下の紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。
紫外線硬化型樹脂は、架橋間分子量が多くなると柔らかく(伸びやすく)なり、柔らかい紫外線硬化型樹脂は、成型した際に形状が変化しやすくなる。本発明者らは、本実施形態においては適度な柔らかさの紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましいと考えて実験を行った結果、架橋間分子量が3000以上4000以下の紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましいことを見出した。以下に、発明者が行った実験の一例について説明する。
発明者は、それぞれ異なる樹脂によって形成された光透過部を備えた光学機能層を具備するシートを複数用意し、様々な金型を用いてそれらのシートを三次元曲面を有するように成型する実験を行った。表1に、実験に用いた金型の形状及び使用した樹脂等を示した。本実験に用いた樹脂は、架橋間分子量が1500の樹脂(樹脂A)及び架橋間分子量が3250の樹脂(樹脂B)である。また、本実験に用いた金型は、図15に示したような金型である。図15(a)は金型150の斜視図であり、図15(b)は図15(a)に示したXVb−XVbでの断面であり、図15(c)は図15(a)に示したXVc−XVcでの断面である。表1に示した「曲率半径」は、金型150の凹部151の長手方向の曲率半径である。「深さ」は凹部151の深さD1である。「長手方向変化率」は凹部151の長手方向断面(図15(b)に示した断面)において底部を形成する孤154の長さL2と、上面視における凹部151の長手方向の長さL1とを用いて(L2−L1)/L1で求められる値である。「面積変化率」は、長手方向変化率と同様にして短手方向についても変化率を計算し、その短手方向変化率と長手方向変化率とを掛け合わせた値である。「縦ストライプ」は、光透過部の長手方向(図2の紙面奥/手前方向)がXVb−XVbと平行になるようにして成型した場合にクラックが発生したかどうかを示しており、「横ストライプ」は光透過部の長手方向(図2の紙面奥/手前方向)がXVc−XVcと平行になるようにして成型した場合にクラックが発生したかどうかを示している。なお、クラックが発生した場合は「×」、クラックが発生しなかった場合は「○」としている。
表1に示したように、架橋間分子量が3250の紫外線硬化型樹脂を用いた場合は、面積変化率が19.4%となるまで伸ばしてもクラックが発生しなかった。
次に、光吸収部14、14、…について説明する。光吸収部14、14、…は、光透過部13、13、…の間に配置され、図2及び図7表れる断面において略台形面を有する要素である。当該略台形断面における上底及び該上底より長い下底が光学機能層12の層面に沿う方向に配置されている。また、当該略台形断面の下底に相当する面が光透過部13、13、…の上底間に並列されている。そして、光吸収部14、14、…の下底、及び光透過部13、13、…の上底により光学機能層12の一方の面が形成されている。当該略台形断面における斜辺は、光学機能層12の層面の法線方向に対して0度以上10度以下の角度をなしていることが好ましい。なお、斜辺の角度が0度に近い場合、断面は略矩形となる。また、光吸収部14、14、…の上記斜辺の傾きは必ずしも一定である必要はなく、折れ線状であってもよいし、曲線状であってもよい。さらに、光吸収部13、13、…断面は、略三角形であってもよい。
また、光吸収部14、14、…は、光透過部13、13、…の屈折率Npより小さい屈折率Nbを有する所定の材料により構成されている。このように光透過部13、13…の屈折率Npと光吸収部14、14、…の屈折率NbとをNp>Nbとすることにより、光透過部13、13、…に入射した映像光源からの映像光を、光吸収部14、14、…と光透過部13、13、…との界面でスネルの法則によって反射させ、観察者に明るい映像を提供することができる。NpとNbとの屈折率の差は特に限定されるものではないが、0より大きく0.06以下であることが好ましい。
また、本実施形態では上記のようにNp>Nbの関係が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、光透過部の屈折率と光吸収部の屈折率とを同じにしてもよく、光透過部の屈折率を光吸収部の屈折率よりも小さくすることも可能である。
加えて、本実施形態における光吸収部14、14、…は、光吸収粒子16、16、…と光吸収粒子16、16、…を分散させたバインダー15とを含む光吸収部構成組成物が光透過部13、13、…間の溝に充填されることにより構成されている。これにより、光透過部13、13、…と光吸収部14、14、…との界面でスネルの法則によって反射せずに光吸収部14、14、…の内側に入射した映像光を光吸収粒子16、16、…で吸収することができる。さらには所定の角度で入射した観察者側からの外光を光吸収粒子16、16、…で適切に吸収することができ、映像のコントラストを向上させることも可能となる。
このときバインダー15が上記の屈折率Nbである材料により構成される。当該バインダーとして用いられるものは特に限定されないが、紫外線などの光によって硬化されるものが好ましく、これには例えば、光硬化型プレポリマー(P2)に、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)を配合した光硬化型樹脂組成物が好ましく用いられる。
上記光硬化型プレポリマー(P2)としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、およびブタジエン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また、上記反応性希釈モノマー(M2)としては、例えば、単官能モノマーとして、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、スチレン等のビニルモノマー、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ベンジルメタクリレ−ト、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体が挙げられる。また、多官能モノマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレ−ト、グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ−ト等が挙げられる。
また、上記光重合開始剤(S2)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。これらの中から、光硬化型樹脂組成物を硬化させるための照射装置および光硬化型樹脂組成物の硬化性から任意に選択することができる。本発明において光硬化型樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(S2)の量は、光硬化型樹脂組成物の硬化性およびコストの観点から、光硬化型樹脂組成物全量を基準(100質量%)として、0.5質量%以上10.0質量%以下含まれていることが好ましい。
これらの光硬化型プレポリマー(P2)、反応性希釈モノマー(M2)および光重合開始剤(S2)は、それぞれ、1種で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
具体的には、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびメトキシトリエチレングリコールアクリレートからなる重合性成分(詳しくは、光硬化型プレポリマー(P2)および反応性希釈モノマー(M2))の屈折率、粘度、あるいは光学機能層12の性能への影響等を考慮して任意に配合して用いる。
また必要に応じて、添加剤として、シリコーン、消泡剤、レベリング剤および溶剤等を光吸収部構成組成物に添加してもよい。
光吸収粒子16、16、…は、光吸収部構成組成物中に含まれ、光吸収部14、14、…を構成したとき、迷光や外光を吸収するように作用する。
光吸収粒子16、16、…としては、カーボンブラック等の光吸収性の着色粒子が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではなく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収する着色粒子を使用してもよい。具体的には、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等で着色した有機微粒子や着色したガラスビーズ等を挙げることができる。特に、着色した有機微粒子が、コスト面、品質面、入手の容易さ等の観点から好ましく用いられる。より具体的には、カーボンブラックを含有したアクリル架橋微粒子や、カーボンブラックを含有したウレタン架橋微粒子等が好ましく用いられる。こうした着色粒子は、通常、上記の光吸収部構成組成物中に3質量%以上30質量%以下の範囲で含まれる。着色粒子の平均粒子径は1.0μm以上20μm以下であることが好ましい。光吸収部14、14、…を形成する際には、図10(光吸収部を製造する装置を概略的に示す図。)に示すように、着色粒子を含有する光吸収部構成組成物46を光透過部13、13、…間の溝に充填しつつ、ドクターブレード47を用いて余剰分の光吸収部構成組成物46を掻き落とす工程が含まれる。このとき、平均粒子径が1.0μm以上の着色粒子を用いることによって、着色粒子がドクターブレード47と光透過部13、13、…との間の隙間を抜け難くなることを防止し、光透過部13、13、…上に着色粒子が残留することを防止できる。
また、光透過部を構成する材料によっては、光吸収部の表面は光透過部の表面に対して、同一平面上(平滑)に充填される場合もあれば、凹部状に充填される場合もある。
なお、光を吸収させるための手段は本実施形態のように光吸収粒子による方法に限定されるものではない。他には例えば、顔料や染料により光吸収部全体を着色することを挙げることができる。
光吸収部14、14、…は、上記光吸収部構成組成物を用いて、後に詳述するようにして形成することができる。
(光拡散層20)
光拡散層20は、映像光源側から入射した光を等方拡散して観察者側に出射する層である。具体的には、光拡散層20は、透明樹脂からなるベース部と、該ベース部中に分散された拡散成分とを有している。そして、光拡散層20は、例えば、ベース部と拡散成分との間の屈折率差に起因して、或いは、拡散成分自体が有する反射性に起因して、光を等方的に拡散する機能を発現する。ただし、本発明において、光拡散層20は光を等方拡散する層に限定されず、透過型曲面スクリーンの用途に応じて、光を異方拡散する層であってもよい。例えば、ベース部中における拡散成分の分布や拡散成分の形状を調整することによって、光を異方拡散することができる。光拡散層20のこのような光拡散能によって、光学機能層12を透過した映像光が拡散され、観察者は、光拡散層20の光拡散能に応じた視野角の範囲内で映像を観察することができる。
光拡散層20のベース部を構成する透明樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
また、光拡散層20の拡散成分を構成するものとしては、プラスチックビーズ等の有機フィラーが好適であり、特に透明度が高いものが好ましい。当該プラスチックビーズをとしては、例えば、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等が挙げられる。これらの中でもアクリルビーズが好ましい。或いは、拡散成分は気泡であっても良い。
光拡散層20の厚みは、0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.2mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。光拡散層20の厚みが0.1mm未満であれば、光拡散層20の光拡散能が不十分となる虞がある。一方、光拡散層20の厚みが2mmを超えると、スクリーン10の観察者側に表示される映像の解像性が劣化し、映像がぼやける虞がある。
(ハードコート層21)
ハードコート層21は、スクリーン10の最も観察者側に配置されており、スクリーン10の映像表示面を構成する。したがって、ハードコート層21は、外部との接触に起因した擦傷に対する耐性が付与されている。このようなハードコート層21は、例えば、電離放射線硬化型樹脂を硬化させることによって形成できる。当該電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、アクリルウレタン系の電離放射線硬化型樹脂を挙げることができる。
また、ハードコート層21は、スクリーン10の映像表示面を構成するため、防眩機能を有していることが好ましい。防眩機能を有するハードコート層21によれば、スクリーン10表示面での外光の反射や外部像の写りこみを防止して、スクリーン10表示面に表示される映像の視認性を向上させることができる。
(その他の層)
これまでに説明した各層は、融着、又は粘着剤層を介することによって互いに固定されている。当該粘着剤層に用いられる粘着剤は、光を透過させるとともに、適切な粘着性を有すればその材質は特に限定されるものではない。これには、例えばアクリル系粘着剤を挙げることができる。その粘着力は、例えば、数N/25mm〜20N/25mm程度である。
なお、図2には、積層体31がハードコート層21、光拡散層20、光学機能層12、及び第1基材層11を備える形態について例示したが、本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法によって製造される透過型曲面スクリーンの積層体は、これら全ての層を必須とするわけではない。また、その他の層が備えられていてもよい。積層体を構成する層としては、従来の透過型スクリーンに備えられる層を適宜備えさせることができる。例えば、透明な基材上に透明な球体やレンズを複数配列することによって、光を拡散又は集光させることができる層等がある。
<透過型曲面スクリーンの製造方法>
本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法は、映像光源から入射した光を観察者側に拡散して出射可能な光拡散層を有する積層体と、該積層体の映像光源側に形成された基材層とを含む、三次元曲面をなすように曲げられた透過型曲面スクリーンを製造する方法である。
図8は、本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法が有する工程を示したフローチャートである。図8に示すように、透過型曲面スクリーンの製造方法は、積層体を平板状に作製する、積層体作製工程S1(以下、単に「工程S1」と表記する場合がある。)と、工程S1において作製された平板状の積層体を予備成型する、予備成型工程S2(以下、単に「工程S2」と表記する場合がある。)と、射出成型金型を用いて、工程S2において予備成型された積層体の映像光源側の面に基材層を形成するとともに、積層体及び基材層を、三次元曲面をなすように曲げる、射出成型工程S3(以下、単に「工程S3」と表記する場合がある。)とを有する。上述したスクリーン10を製造する場合を例にして、以下、本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法について説明する。
(工程S1)
工程S1は、積層体31を平板状に作製する工程である。
積層体31を作製するには、まず光拡散層20を構成する拡散フィルムを作製する。当該拡散フィルムを作製する方法としては、上述した拡散成分を分散させた熱可塑性樹脂を押し出し成形によって板状に成形する方法が挙げられる。
次に、上記拡散フィルムの一方の面側にハードコート層21を付与する。拡散フィルムの一方の面側にハードコート層21を付与するには、上述したハードコート層21を構成する樹脂を拡散フィルムの一方の面側に連続的に供給し、賦型成形する方法が挙げられる。このとき、ハードコート層21に上述した防眩機能を備えさせる場合は、表面がマット面である金型ロールを用いて賦型成形すれば良い。
しかしながら、ハードコート層21を硬化させた後に該ハードコート層21を含む積層体31を後述するようにして曲げると、ハードコート層21にクラックが入る虞がある。これは、ハードコート層21を構成する樹脂を完全に硬化させると、ハードコート層21が延び難くなり、曲げに追従できなくなるためである。
よって、光拡散層20の一方の面側にハードコート層21を付与する好ましい方法として、以下の方法を例示できる。1つ目の方法は、工程S1ではハードコート層21を構成する樹脂を完全に硬化させずに次工程に進み、積層体31を曲げると同時に、若しくは積層体31を曲げた後にハードコート層21を硬化させる方法である。2つ目の方法は、後に説明するようにして、ハードコート層21を工程S3で転写する方法である。3つ目の方法は、工程S3の後に、ハードコート層21を構成する樹脂をスプレー塗工、スピン塗工、ディップ塗工などで光拡散層20の表面に塗工し、該樹脂を硬化させる方法である。
一方、光拡散層20及びハードコート層21とは別に、光学機能層12を作製しておく。以下、光学機能層12の製造方法について説明する。図9は、光学機能層12の製造方法の一例について、一部の過程を模式的に表した断面図である。図10は、光学機能層12の製造方法の一例について、他の過程を模式的に表した斜視図である。
光学機能層12を作製する際、図9に示すように、第1基材層11となる、又は第1基材層11となる層を含む基材11’の上に、光透過部13、13、…を形成する。光透過部13、13、…を形成するには、まず、光透過部13、13、…の形に対応した形の溝を所定のピッチで有する金型ロール42を準備する。次に、当該金型ロール42とニップロール41との間に基材11’を送り込む。図9に示した矢印x1は、基材11’を送り込む方向である。基材11’の送り込みに合わせて、金型ロール42と基材11’との間に供給装置45から光透過部構成組成物40の液滴を供給し続ける。供給装置45から基材11’上に光透過部構成組成物40を供給するとき、金型ロール42と基材11’との間に、光透過部構成組成物40が溜まったバンクが形成されるようにする。このバンクにおいて、光透過部構成組成物40が基材11’の幅方向に広がる。
上記のようにして金型ロール42と基材11’との間に供給された光透過部構成組成物40は、金型ロール42およびニップロール41間の押圧力により、基材11’と金型ロール42との間に充填される。その後、光照射装置44によって光透過部構成組成物40に光を照射し、光透過部構成組成物を硬化させることによって光透過部13、13、…を形成することができる。光透過部13、13、…が形成された後、基材11’上に光透過部13、13、…が形成されたシートは、剥離ロール43を介して引かれることによって、金型ロール42から引き剥がされる。
次に、図9に示した工程を経て得られたシートの光透過部13、13、…間に、光吸収部14、14、…を形成する。具体的には、光透過部13、13、…上に光吸収部構成組成物46を供給し、ドクターブレード47によって該光吸収部構成組成物46を光透過部13、13、…間の溝13a、13a、…に充填しつつ、余剰分の光吸収部構成組成物46を掻き落とし、光透過部13、13、…間の溝13a、13a、…に残った光吸収部構成組成物46に光を照射して硬化させることにより、光吸収部14、14、…を形成することができる。このようにして、第1基材層11上に光学機能層12を形成する。なお、図10に示した矢印x2は、図9に示した工程を経て得られたシートの送り方向である。
なお、図10に示した工程において、光透過部13、13、…の弾性率は10MPa以上2000MPa未満であることが好ましい。光透過部13、13、…の弾性率が2000MPa以上になると、硬くなり、ワレや欠けの不具合が発生したり、上記のようにして光吸収部14、14、…を形成する際に、光学機能層12の表面に外観不良を生じたり、光学機能層12の透過率が低下したりする虞がある。すなわち、光透過部13、13、…が硬すぎると、光透過部13、13、…上に供給した光吸収部構成組成物46のうち余剰分をドクターブレード47で掻き取る際、ドクターブレード47を光透過部13、13、…に押し付けても光透過部13、13、…が変形しないため、余剰分の光吸収部構成組成物46を掻き落としきれない虞がある。光透過部13、13、…の弾性率を上記範囲にすると、ドクターブレード47を押し付けた際、光透過部13、13、…の変形により、余剰分の光吸部構成組成物46の掻き取り不良をなくし、光学機能層12の表面に外観不良を生じたり、光学機能層12の透過率が低下したりすることを防止できる。なお、光透過部13、13、…の弾性率が10MPa以下だと光透過部13、13、…が軟らか過ぎるため、図9に示した工程において、光透過部13、13、…が金型ロール42から離型し難くなる虞がある。
上述したようにして光拡散層20及びハードコート層21と、第1基材層11上に形成された光学機能層12とを作製した後、これらを適当な大きさに断裁して積層することにより、平板状の積層体31を作製することができる。このとき、光拡散層20と光学機能層12とは、粘着剤層を介して貼合するようにする。
(予備成型工程S2)
工程S2は、工程S1において作製された平板状の積層体を予備成型する工程である。なお、工程2では、積層体31を最終的な三次元曲面にまで変形する必要はない。後の工程S3において、加熱(例えば、200℃以上250℃以下)及び加圧(例えば、100kg/cm2以上1500kg/cm2以下)によって、積層体31を含むスクリーン10を最終的な三次元曲面にまで変形するからである。
図11、図12及び適宜示す図を参照しつつ、工程S2について説明する。図11及び図12は、それぞれ工程S2の一例を模式的に表した断面図である。以下に説明するように、工程S2は、積層体31を加熱して、所望の形状が得られる金型に積層体31を真空密着及び/又は圧空密着させる工程であることが好ましい。また、積層体31を加熱して、押圧部材を用いて金型に積層体31を密着させても良い。積層体31を加熱する温度は、ガラス転移温度Tg(積層体31を構成する層のうち、最もガラス転移温度が高い層のガラス転移温度)以上、例えば、120℃以上180℃以下であることが好ましい。
図11は、碗状の凹部55及びその周囲を囲む平坦部52を有するメス型の金型50を用いる場合を例示している。金型50によって積層体31を予備成型する場合、まず、図11(a)に示すように、積層体31を金型50上に配置する。このとき、工程S3でフレネルレンズ層32が形成される側の面を上側(金型50と反対側)にする。その後、図11(b)に示すように、金型50の平坦部52と積層体31とを接触させる。その後、積層体31の上から空圧を付与する、及び/又は金型50に設けられた孔51、51、…から真空引きすることによって、図11(c)に示すように、積層体31と金型50とを密着させる。このようにして、積層体31を予備成型することができる。
図12は、図11に示した金型50の凹部55に対応する形状の凸部65及びその周囲を囲む平坦部62を有する、オス型の金型60を用いる場合を例示している。金型60によって積層体31を予備成型する場合、まず、図12(a)に示すように、積層体31を金型60上に配置する。このとき、工程S3でフレネルレンズ層32が形成される側の面を下側(金型60側)にする。その後、図12(b)に示すように、凸部65の頂部64と積層体31とを接触させる。その後、積層体31の上から空圧を付与する、及び/又は金型60に設けられた孔61、61、…から真空引きすることによって、図12(c)に示すように、積層体31と金型60とを密着させる。このようにして、積層体31を予備成型することができる。
図11に示したようなメス型の金型を用いる場合と、図12に示したようなオス型の金型を用いる場合とでは、以下に説明するように、オス型の金型を用いる場合の方が好ましい。
金型50を用いる場合、真空引きを効率良く行う観点から、孔51、51、…は、平坦部52及び凹部55の底部54に設けられる。また、上述したように、積層体31と金型50とを密着させるとき、積層体31はまず平坦部52に接触した後、圧力を加えられる。このとき、凹部55の端部、すなわち、凹部55と平坦部52との境目53に接触している積層体31の部分は変形し難い。一方、底部54に密着する積層体31の部分は、最も変形し易く、薄くなる。底部54に密着する積層体31の部分は、スクリーン10の中心となる部分であって、変形は少ないことが好ましい。当該部分が薄くなると、映像の明度や視野角に大きな影響を与える虞があるためである。
一方、金型60を用いる場合、真空引きを効率良く行う観点から、孔61、61、…は、平坦部62に設けられる。また、上述したように、積層体31と金型60とを密着させるとき、積層体31はまず頂部64に接触した後、圧力を加えられる。このとき、頂部64に接触している積層体31の部分は変形し難い。上述したように当該部分は変形が少ないことが好ましい。このように、オス型の金型を用いた予備成型は、スクリーン10の中心となる部分が他の部分に比べて薄くなることを抑制することができるため好ましい。
なお、これまでの工程S2の説明では、積層体31を加熱して、真空密着、圧空密着、又は真空圧空成型によって積層体31を成型する方法について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。工程S2は、例えば、積層体31を加熱して、プレス成型によって積層体31を成型する工程であってもよい。
また、これまでの工程S2の説明では、金型の断面図を参照しながら説明したが、金型を三次元的に見た場合、以下に説明するような金型を用いることが好ましい。
図15(a)は型150の斜視図である。図15(a)において斜線で示した部分は、予備成型する際に、積層体31のうち最終的に透過型曲面スクリーン10に用いられる部分が配置される場所である。図15(b)は図15(a)に示したXVb−XVbでの断面である。図15に示した型150は、積層体31のうち最終的に透過型曲面スクリーン10に用いられる部分に合わせて凹部151が形成されている。そのため、図15(b)に示したように、凹部151の長手方向については段差がないが、図15(c)に示したように、凹部151の短手方向については、平坦部152と凹部151との間で段差153、153が形成されている。このような段差があると、積層体31を予備成型する際に、その段差の部分で積層体31が他の部分より伸ばされるため、積層体31にクラックが発生しやすくなる。そこで、このようなクラックの発生を防ぐ型として、図16に示した金型160や図17に示した金型170を用いることが好ましい。
図16(a)は金型160の斜視図である。図16(a)において斜線で示した部分は、成型する際に、積層体31のうち最終的に透過型曲面スクリーン10に用いられる部分が配置される場所である。図16(b)は図16(a)に示したXVIb−XVIbでの断面である。図16(b)においてL3は、予備成型する際に、積層体31のうち最終的に透過型曲面スクリーンに用いられる部分の幅を示している。L4は、L3、L3で示した部分の間の部分、すなわち、最終的には透過型曲面スクリーン10に用いられず、破棄される部分の幅を示している。図16(c)は図16(a)に示したXVIc−XVIcでの断面である。図16(c)においてL5は、予備成型する際に、積層体10のうち最終的に透過型曲面スクリーン10に用いられる部分の幅を示している。L6は、L5、L5で示した部分の間の部分、すなわち、最終的には透過型曲面スクリーン10に用いられず、破棄される部分の幅を示している。
型160は、平面視において楕円形又は円形の凹部からなる成型部161を備えており、成型部161は積層体31の予備成型に供される。平面視において楕円形又は円形である凹部によって成型部161を形成することによって、成型部161と平坦部162との間の段差をなくすことができる。すなわち、型160の厚さ方向のどの断面視においても、成型部161は角を有さない1つの曲線で形成されるとともに、成型部161と平坦部162とが鈍角をなす。よって、型160を用いれば、積層体31を成型する際に、上述したようなクラックが発生することを防止することができる。また、型160は、成型部161を複数有しており、工程S11の後、積層体31を適切な大きさに裁断しておくことによって、多面付けが可能となる。なお、型160に備えられる成型部161の数は特に限定されない。また、型160は成型部161が凹部で構成される、いわゆるメス型であるが、成型部161に対応する形状の凸部を成型部とする、いわゆるオス型を用いても同様に積層体31にクラックが発生することを防止できる。
このように、工程S12において積層体31にクラックが発生することを防止するという観点からは、平面視において楕円形又は円形の凸部又は凹部からなる成型部を備えた型を用いることが好ましい。
しかしながら、スクリーンは通常は平面視において長方形であるため、型160のような型では、積層体31の無駄が多くなる。すなわち、図16(c)に示したように、透過型曲面スクリーンの長手方向となる側では無駄な部分L6を最小限にすることが可能であるが、透過型曲面スクリーンは平面視において長方形であるため、図16(b)に示したように、透過型曲面スクリーン10の短手方向となる側では無駄な部分L4が多くなる。このような無駄を削減する観点からは、図17に示した金型170のような型を用いることが好ましい。
図17(a)は型170の斜視図である。図17(a)において斜線で示した部分は、成型する際に、積層体31のうち、最終的に透過型曲面スクリーン10に用いられる部分が配置される場所である。図17(b)は図17(a)に示したXVIIb−XVIIbでの断面である。図17(b)においてL7は、予備成型する際に、積層体31のうち、最終的に透過型曲面スクリーン10に用いられる部分の幅を示している。L8は、L7、L7で示した部分の間の部分、すなわち、最終的には透過型曲面スクリーン10に用いられず、破棄される部分の幅を示している。
型170は、平面視において楕円形又は円形の凹部からなる成型部171を備えており、成型部171が積層体31の予備成型に供される。また、型170は、成型部171を複数並べた列を少なくとも1列備えており(図17に示した形態では2列備えている。)、平面視において、列内で隣接する成型部171は互いの一部が重なるように形成されている。すなわち、列内で隣接する一方の成型部171の中心Pと他方の成型部171の中心Pとを結ぶ線分の長さL9の半分が、列内で最も端に位置する成型部171の中心Pから他の成型部171が存在しない側の端までの距離L10より短くなっている。なお、中心Pとは成型部171の最も深い位置を意味する。
このように、透過型曲面スクリーンの短手方向に相当する方向が短くなるように成型部171を設けることによって、図17(b)に示したように、無駄になる部分L8を少なくすることができる。なお、型170に備えられる成型部171の数は特に限定されない。また、型170は成型部171が凹部で構成される、いわゆるメス型であるが、成型部171に対応する形状の凸部を成型部とする、いわゆるオス型を用いても同様に積層体31にクラックが発生することを防止し、かつ積層体31の無駄になる部分を少なくすることができる。
工程S12で用いる型の深さ(メス型を用いる場合)又は高さ(オス型を用いる場合)は、積層体31を備えた透過型曲面スクリーンの用途に応じて適宜変更可能である。
上述したようにして工程S2で積層体31を予備成型した後、積層体31を適宜断裁して適当な形状にした後、工程S3に進む。
(射出成型工程S3)
工程S3は、工程S2において予備成型された積層体31を、フレネルレンズ24に対応した形状の溝73、73、…を有する射出成型金型70内に保持し、積層体31の一方の面側にフレネルレンズ層32を形成する工程である。図13を参照しつつ、工程S3について説明する。図13は、工程S3の一例を模式的に表した断面図である。
図13に示した射出成型金型70は、メス型の金型71及びオス型の金型72を有しており、金型72はフレネルレンズ24の単位レンズに対応した形状の溝73、73、…を有している。まず、金型71及び金型72の間に積層体31を保持する。次に、オス金型72に設けられたスプルー74から、フレネルレンズ層32(基部23及びフレネルレンズ24)を構成する樹脂75を溶融して射出注入する。そして、該樹脂75を金型70内に注入しながら、加熱(例えば、200℃以上250℃以下)及び加圧(例えば、100kg/cm2以上1500kg/cm2以下)する。その後、金型70内の樹脂75を冷却する。かかる工程を経ることによって、基部23とフレネルレンズ24とが一体となったフレネルレンズ層32を、積層体31の一方の面側に形成するとともに、スクリーン10が最終的な三次元曲面をなすように曲げることができる。なお、図示はしていないが、射出成型金型70には幾つかの孔が設けられており、温水や油、ヒーター等で温度を管理することができる。また、図13には、積層体31の略中心となる位置にスプルー74の開口部74aが備えられるように示しているが、実際には、スプルー74の開口部74aは、積層体31の有効領域(表示装置に組み込まれた際に、映像光が照射される領域)以外に設けることが好ましい。すなわち、サイドゲート等が好ましい。スプルー74の開口部74aが備えられる位置には単位レンズ25が形成されないためである。
上述したように、工程S3において、ハードコート層21を形成することもできる。この場合、積層体31(ハードコート層21含まない。)と金型71との間に、ベースフィルム上にハードコート層21を構成する樹脂が塗布されたシートを配置する。当該ベースフィルムとしては、PET、ポリカーボネート樹脂等からなるフィルムを用いることができる。なお、当該シートは、ベースフィルムが金型71側、ハードコート層21を構成する樹脂が積層体31側となるように配置する。その後、上述したように樹脂75を射出注入することによって、樹脂75の熱でハードコート層21が積層体31に転写される。
これまではスクリーン10を例にして本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法について説明したが、本発明によって製造できる透過型曲面スクリーンの形状はスクリーン10の形状に限定されない。例えば、フレネルレンズが不要な場合は、工程S3において平滑な曲面が形成される射出成型金型を用いればよい。その他にも型の形状を変更することによって、様々な三次元曲面をなすように透過型曲面スクリーンを製造することができる。また、透過型曲面スクリーンを平板状としたときの形状は矩形に限定されず、様々な形状にすることができる。
このように、本発明の透過型曲面スクリーンの製造方法によれば、三次元曲面をなすように形成することで意匠性が向上された透過型曲面スクリーンを容易に製造することができる。このような意匠性が向上された透過型曲面スクリーンは、自動車のダッシュボードやアミューズメント機器など、意匠性が非常に重要視される部分に好適に用いることができる。
<表示装置>
本発明の表示装置の製造方法は、三次元曲面をなすように曲げられた積層体を具備した透過型曲面スクリーンと、映像光を出射する映像光源と、透過型曲面スクリーンを支持するとともに映像光源を収容する筐体と、を備える映像表示装置の製造方法である。
図3に示した表示装置1を例にして、本発明の表示装置の製造方法について説明する。透過型曲面スクリーン10は上述したようにして作製することができる。筐体2内に映像光源3などを配置した後、該筐体2の開口部に透過型曲面スクリーン10を支持することによって、表示装置1を製造することができる。筐体2及び映像光源3としては、従来の透過型スクリーンを備えた表示装置に用いられるものを、特に限定することなく用いることができる。
このように、本発明の表示装置の製造方法によれば、三次元曲面をなすように形成することで意匠性が向上された透過型曲面スクリーンを備えた表示装置を、容易に製造することができる。
なお、図3には、映像光源3からの映像光Lが透過型曲面スクリーン10に直接照射される形態を例示しているが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、図14に示した表示装置1’のように、映像光源3からの映像光Lを筐体2’内に備えられた鏡4に照射し、その反射光L’を透過型曲面スクリーン10に照射する形態としてもよい。図14には1枚の鏡4によって映像光Lを1回反射させる形態を例示したが、鏡の数は特に限定されず、さらに複数の鏡を用いて複数回反射させた映像光を透過型曲面スクリーン10に照射する形態とすることもできる。このように映像光を反射させて透過型曲面スクリーン10に照射する形態とすれば、筐体の奥行きを小さくすることができる。
以上、現時点において最も実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明した。しかしながら、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う透過型曲面スクリーンの製造方法、及び表示装置の製造方法も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。