JP5625902B2 - 固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、接触抵抗値が低く、かつ耐食性に優れる固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼およびその製造方法に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、発電効率に優れ、また、CO2を排出しない燃料電池の開発が積極的に進められている。この燃料電池は、電気化学反応によってH2とO2から電気を発生させるものであって、その基本構造はサンドイッチのような構造を有している。具体的には、電解質膜(イオン交換膜)、2つの電極(燃料極および空気極)、O2(空気)とH2の拡散層および2つのセパレータから構成されている。
そして、使用される電解質膜の種類に応じて、リン酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、アルカリ形燃料電池および固体高分子形燃料電池等が開発されている。
これらの燃料電池のうち、固体高分子形燃料電池は、他の燃料電池に比べて、
(i) 発電温度が80℃程度であり、格段に低い温度で発電ができる、
(ii) 燃料電池本体の軽量化、小型化が可能である、
(iii) 短時間で立上げができ、燃料効率や電力の出力密度が高い
等の利点を有している。
このため、固体高分子形燃料電池は、電気自動車の搭載用電源、家庭用または業務用の定置型発電機、携帯用の小型発電機として、今日最も注目されているタイプの燃料電池である。
固体高分子形燃料電池(以下、本発明において、単に燃料電池と言った場合は、固体高分子形燃料電池を指すものとする。)は、高分子膜を介してH2とO2から電気を取り出すものであり、図1に示すように、膜−電極接合体1を、ガス拡散層2,3(たとえばカーボンペーパ等)およびセパレータ4,5によって挟み込んで、これを単一の構成要素(いわゆる単セル)として、セパレータ4とセパレータ5との間に起電力を生じさせるものである。
なお、膜−電極接合体1は、MEA(Membrance-Electrode Assembly)と呼ばれていて、高分子膜と、その膜の表裏面に白金系触媒を担持したカーボンブラック等の電極材料とを一体化したものであり、厚さは数10μm〜数100μmである。また、ガス拡散層2,3は、膜−電極接合体1と一体化される場合も多い。
固体高分子形燃料電池は、上記のような単セルを、直列に数10〜数100個つないで燃料電池スタックとして使用している。
ここに、セパレータ4,5には、
(a) 単セル間を隔てる隔壁
としての役割に加えて、
(b) 発生した電子を運ぶ導電体、
(c) O2(空気)とH2が流れる空気流路6、水素流路7、
(d) 生成した水やガスを排出する排出路
としての機能がそれぞれ求められる。
従って、固体高分子形燃料電池を実用に供するためには、耐久性や電気伝導性に優れたセパレータが必要である。
ここに、燃料電池の耐久性は、電気自動車の搭載用電源として使用する場合、約5000時間がその耐用時間として想定されている。また、家庭用の定置型発電機等として使用する場合、約40000時間がその耐用時間として想定されている。
しかし、セパレータに腐食が生じた場合には、その腐食によってセパレータの金属イオンが溶出し、電解質膜のプロトン伝導性が低下して、燃料電池の発電能力が失われてしまう。
すなわち、セパレータには、長時間の発電を前提とした耐食性が要求されることになる。
他方、電気伝導性については、セパレータ4,5とガス拡散層2,3との接触抵抗ができるだけ小さいことが望まれる。というのは、セパレータとガス拡散層との接触抵抗が大きいと、燃料電池の発電効率が低下するからである。
従って、セパレータとガス拡散層との接触抵抗が小さいほど、発電特性が優れていることになる。
現在までに、セパレータの素材としては、グラファイトを用いる燃料電池が実用化されている。このグラファイトからなるセパレータは、接触抵抗が比較的小さいだけでなく、腐食をしないという利点がある。しかしながら、グラファイトからなるセパレータは、衝撃によって破損しやすいので、小型化が困難なだけでなく、加工性が悪いので、空気流路や、水素流路など、セパレータを形成するための加工コストが極めて高くなるという欠点がある。
これらグラファイトのセパレータが有する欠点は、固体高分子形燃料電池の普及を妨げる原因ともなっている。
そこで、近年、セパレータの素材として、グラファイトに替えて金属素材を適用することが試みられている。特に、耐久性向上の観点から、ステンレス鋼や、チタン、チタン合金等を素材としたセパレータの実用化に対して、種々の検討がなされている。
例えば、特許文献1には、ステンレス鋼またはチタン合金等の不動態皮膜を形成しやすい金属を、セパレータとして用いる技術が開示されている。しかしながら、不動態皮膜の形成は、接触抵抗の上昇を招くので、発電効率が低下してしまう。すなわち、これらの金属素材は、グラファイト素材に比べ、接触抵抗が大きくなり易く、しかも耐食性に劣る等の改善すべき点が種々指摘されている。
また、特許文献2には、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)等の金属セパレータの表面に金めっきを施すことにより、接触抵抗を低減し、高出力を確保する技術が開示されている。しかしながら、金めっき層が薄いと、ピンホールの発生を防止することが困難になり、耐食性に関して問題がある。一方、金めっき層が厚いと、コスト高になるという問題がある。
特開平8-180883号公報 特開平10-228914号公報
上述したように、燃料電池を開発するに際し、安価で耐食性に優れ、しかも実使用環境下で長時間にわたって接触抵抗が小さいセパレータが望まれていた。
また、最近では、従来にも増して接触抵抗の低減が求められており、具体的には、実使用環境下において、接触抵抗:10mΩ・cm2未満のものが求められている。
本発明は、上記した種々の問題点を有利に解決するもので、接触抵抗が低く、かつ実使用環境下での耐久性に優れた燃料電池用セパレータに用いるステンレス鋼を、その有利な製造方法と共に提供することを目的とする。
発明者らは、上記の目的を達成するために、固体高分子形燃料電池の実使用環境下において、接触抵抗を低く抑制することができるステンレス鋼を開発すべく鋭意検討を重ねた。
ここに、使用環境としては、例えば、沿岸地域での使用が考えられるが、かような使用環境下では、大気中の海塩粒子が燃料電池に侵入しやすいため、セパレータ内は、塩素を含んだ環境になることが指摘されている。すなわち、燃料電池用セパレータには、塩素の腐食に対して耐えることが可能な、一層高い耐食性が要求されている。そこで、発明者らは、塩素を含んだ環境での耐食性の検討を進めた。
その結果、Snめっきをしたステンレス板を、高温で熱処理することによって生成するFeとの金属間化合物、すなわちFeSnとFeSn2とが存在するSn系皮膜を生成することで、ステンレス板が塩素を含んだ環境においても、極めて優れた耐食性を示すことを見出した。さらに、詳細に検討を重ねた結果、上記Sn系皮膜中のFeSnと、FeSn2の薄膜X線回折ピーク強度比(FeSn/FeSn2)が、ステンレス板の耐食性の向上に関して極めて重要であるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.表面に、FeSnとFeSn2を含むSn系皮膜を有するステンレス鋼であって、該Sn系皮膜中のFeSn(2θ=44.3°)とFeSn2 (2θ=43.7°)の薄膜X線回折ピーク強度比FeSn/FeSn2が2.4以上を満足することを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
2.前記ステンレス鋼が、16質量%以上のCrを含有するステンレス鋼であることを特徴とする前記1に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
3.酸洗処理を施して、表面の不動態皮膜を除去したステンレス鋼の表面にSn層を形成し、その後加熱処理をすることで、表面にFeSnおよびFeSn2を生成する固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法であって、上記加熱処理を、600℃以上で行うものとし、その際、680℃を境として下記式(1)または式(2)の条件で行うことを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法。

(加熱温度が600℃以上680℃未満の場合)
保持時間(min)≧8600×Sn層厚み(μm)/加熱温度(℃)・・・式(1)
(加熱温度が680℃以上の場合)
保持時間(min)≧5500×Sn層厚み(μm)/加熱温度(℃)・・・式(2)
4.前記ステンレス鋼が、16質量%以上のCrを含有するステンレス鋼であることを特徴とする前記3に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法。
本発明によれば、セパレータの実使用環境下での接触抵抗を長期間にわたって低く維持することができる固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼を、低コストで得ることができる。また、本発明の製造方法によれば、上記ステンレス鋼をより有利に得ることができる。
燃料電池の基本構造を示す模式図である。 薄膜X線回折測定によるFeSnピーク強度(cps:2θ=44.3°)とFeSn2ピーク強度(cps:2θ=43.7°)比FeSn/FeSn2の値と、電流密度の値との関係を示したグラフである。 接触抵抗の測定要領を示した図である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において、基材として用いるステンレス鋼に特に制限はなく、従来から公知の、例えば、SUS447J1、SUS444およびSUS316、その他、SUS445J1、SUS304、SUS329J1などを好適に使用することができるが、Crを16質量%以上含有していることが、燃料電池に要求されている耐食性を充分に満足するという観点から望ましい。特に、Crを30質量%程度含有するSUS447J1は、耐食性が高いので、厳しい耐食性が要求される環境下で使用される固体高分子形燃料電池用セパレータ(以下、単にセパレータという)材料としてとりわけ有利に適合する。
本発明は、ステンレス鋼の表面で、表面Sn(めっき)層を溶融させて、Snをステンレス鋼中の鉄と反応させて生成する金属間化合物、すなわち少なくともFeSnとFeSn2とを含むSn系皮膜を有しているところに特徴がある。
以下、本発明のSn系皮膜につき具体的に説明する。
なお、本発明のSn系皮膜は、薄膜X線回折のピーク強度を測定し、FeSnのピーク強度とFeSn2のピーク強度の比が以下に示す条件を満足していれば、上記FeとSnの合金だけでなく、その他のステンレス鋼成分とSnとの合金や、ステンレス鋼成分同士の合金、Sn単体、その他不可避的不純物が入っていても問題はない。
図2に、Sn系皮膜中のFeSn2量が分極後(セパレータ実使用環境下)の電流密度に及ぼす影響について調べた実験結果を示す。図中、横軸は、薄膜X線回折測定によって求めたFeSnピーク強度(cps:2θ=44.3°)とFeSn2ピーク強度(cps:2θ=43.7°)との比FeSn/FeSn2を示す。また、縦軸は、電流密度を示す。
なお、上記電流密度は、測定用試料を、温度が80℃で、塩素を50ppm添加したpH2の硫酸水溶液中に浸潰して、参照電極に飽和KCl Ag/AgClを用いて、200mV/min の掃印速度で、0〜1.2V (vs.SHE)の範囲のサイクリックボルタモグラム(電位−電流曲線)を5サイクル測定し、この5サイクル目における電圧上昇時0.8Vでの電流密度を求めて得た値とする。
また、薄膜X線回折測定は、理学電機製ロータフレックス(RU-300)を使用して次の条件で行った。
・使用X線:Cu-Kα(波長=15.4178nm)
・Kβ線の除去:グラファイト単結晶モノクロメータ
・管電圧・管電流:55kV・250mA
・X線入射角度:2.0°
・スキャニングスピード:4°/min
・サンプリングインターバル:0.020°
・D.S.スリット:0.2mm
・R.S.スリット:5.0mm
・検出器:シンチレーションカウンター、積算回数:1回
図2に示したとおり、5サイクル目における電圧上昇時0.8Vでの電流密度の値を、5μA/cm2以下にするためには、皮膜の薄膜X線回折ピークの強度比(FeSn/FeSn2)を、2.4以上にすればよいことが分かる。なお、電流密度の値:5μA/cm2以下を評価基準としたのは、燃料電池は、5μA/cm2を超える電流密度になると、長期間使用した際に特性の劣化が早期に発生するからである。特に好ましくは、4μA/cm2以下である。
従って、本発明では、FeSnとFeSn2の薄膜X線回折のピーク強度比を、2.4以上に限定する。
本発明において、上記のピーク強度比FeSn/FeSn2を2.4以上とするには、ステンレス鋼表面に形成したSn(めっき)層を形成後600℃以上に加熱し、ステンレス鋼表面に形成したSn(めっき)層が溶融した状態で、所定の時間保持することで達成することができる。また、この保持時間は、以下の式(1)または式(2)の関係を満足することができればより望ましい。つまり、上記の加熱温度が680℃未満の場合は式(1)を満足する保持時間とし、また上記の加熱温度が680℃以上の場合は、式(2)を満足する保持時間とすることができればより望ましい。ここに、具体的な保持時間としては、1〜30分間程度が挙げられる。
保持時間(min)≧8600×Sn層厚み(μm)/加熱温度(℃)(加熱温度:680℃未満)・・・式(1)
保持時間(min)≧5500×Sn層厚み(μm)/加熱温度(℃)(加熱温度:680℃以上)・・・式(2)
次に、本発明におけるステンレス鋼の有利な製造方法を説明する。
本発明では、前述したように、基材として用いるステンレス鋼に特に制限はなく、従来から公知のステンレス鋼を用いるため、基材の製造方法について特段の制限はない。なお、基材として用いるステンレス鋼は、Crを16質量%以上含有していることが、燃料電池の耐食性の観点から望ましいことは前述したとおりである。
ここで、上記したようなステンレス鋼は、いずれも、表面に不動態皮膜を有しているのが普通である。そのため、本発明では、まず酸洗処理を施して、ステンレス鋼表面の不動態皮膜を除去することが好ましい。
というのは、かような不動態皮膜が残存していると、その後にSn層を形成し、加熱処理によってSn層と下地ステンレス鋼のFeとを反応させて、表面にFeSn やFeSn2を生成しようとしても、反応速度が遅くて時間がかかりすぎるからである。
ここに、酸洗に使用する酸の種類は、不動態皮膜を除去するものであれば、ふっ酸、硝酸、硫酸、塩酸などの酸、あるいはこれらを混合した酸を使用できるが、中でも硝弗酸(硝酸:6質量%、弗酸:3質量%)が安定して不動態皮膜を除去することができるため好ましい。
ついで、酸洗処理により不動態皮膜を除去したステンレス鋼の表面に、Sn(めっき)層を形成する。Sn(めっき)層の形成手段については、特に制限はなく、電気めっき、溶融めっき、蒸着およびスパッタリングなどが適用可能であるが、電気めっきによる方法は、生産性の観点や膜厚の制御が容易であることからより有利である。また、Snを電気めっきする場合のめっき浴は、メタンスルホン酸浴や硫酸浴、硼ふっ酸浴などのいずれも使用できるが、浴の管理が容易である点で、メタンスルホン酸浴がとりわけ好適である。
ついで、600℃以上の加熱により、表面のSn層を溶融して、その状態で一定時間保持し、Snと下地ステンレス鋼のFeとを反応させてFeSnを主体とするSn系皮膜を生成する。このSn層の溶融・保持を行う加熱処理に際しては、特段の制限はなく、従来公知の加熱処理条件で良いが、表面に形成したSn層を、極力、下地ステンレス鋼のFeと反応させてFeSnを主成分とするSn系皮膜とし、該皮膜中のFeSn/FeSn2比を前記した所定の値とすることが肝要である。また、その保持時間は、上掲式(1)、(2)によることがより望ましいのは前述したとおりである。
上記したように、Sn層形成後、加熱処理を行って表面にFeSn およびFeSn2を生成させるには、Sn層の厚みが薄い方がより好ましく、具体的には、0.1〜0.4μm程度の厚みとすることが好適である。
なお、層厚は0.1〜0.4μmの範囲に限られることなく、0.4μmを超えて厚くしても問題はないが、その場合には、Sn層溶融後の保持時間を長くして、十分にFeSnを生成させる必要がある。
なお、本発明における加熱処理については、熱処理炉に入れて加熱する方法や、鋼材に電流を流して板を発熱させる、いわゆる通電加熱の方法などで行うことができる。ここに、いずれの方法においても、非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。というのは、酸化性雰囲気で行うと、表面にSn酸化物が形成されて、接触抵抗が高くなるおそれがあり、この場合には、表面に形成したSn酸化物を酸洗等の方法で除去するという余分な工程を経る必要が生じるからである。
いずれにしても、在炉時間や通電時間を調整して、FeSn およびFeSn2の生成量をFeSn/FeSn2比で2.4以上とすることが肝要であり、この比を満足するものであれば、いずれの製造条件、および製造方法でも用いることができる。
セパレータには、発電効率の低下を低減するために低い接触抵抗が要求される。また、セパレータは、燃料電池の起動停止時の電位変動や、温度:80℃で、pH:2程度という厳しい腐食環境下で使用されることから、優れた耐食性が要求されているのは、前述したとおりである。そこで、本発明の条件に従ったセパレータの特性が、これらの要求を十分に満足していることを確認するために、以下の試験を実施した。
板厚:0.2mmのステンレス鋼SUS447J1、SUS444およびSUS304を使用して、温度:60℃の硝弗酸(硝酸:6質量%、弗酸:3質量%)で酸洗処理した後、ROHM and HAAS社製メタンスルホン酸すずめっき浴 RONASTAN TP浴を使用して、pH:0.2〜0.4、温度:45℃、電流密度:5A/dm2の条件でめっき時間を調整して、ステンレス鋼SUS447J1、SUS444およびSUS316の表面に厚さ:0.1〜1.0μmのSn層を形成した。その後、熱処理炉を用い、Arガス雰囲気中、600〜700℃で5分間または15分間保持する加熱処理を行って、Sn系皮膜を生成して試料(試験片)とした。
上記試料における接触抵抗の測定結果、およびセパレータの実使用環境下での安定性(耐食性)について調べた結果を試料作製条件と共に、表1に示す。
なお、使用環境下での接触抵抗値は、次のようにして評価した。
図3に示すように、2枚の試験片8を両面から同じ大きさの3枚のカーボンペーパ9(東レ製TGP-H-120)で交互に挟み、さらに銅板に金めっきを施した電極10を接触させ、単位面積当たり9.8 MPa(=10 kgf/cm2)の圧力をかけて2枚のセパレータ間の抵抗を測定し、接触面積を乗じ、さらに接触面数(=2)で除した値を接触抵抗値とした。なお、測定は位置を変えて4ヶ所で行ない、その平均値を示した。なお、上記の接触抵抗の値を以下の基準で評価した。
○:接触抵抗10mΩ・cm2未満
×:接触抵抗10mΩ・cm2以上
また、実使用環境下での安定性(耐食性)は、前述したように、以下のとおり評価した。
試料を、温度:80℃、塩素を50ppm添加したpH:2の硫酸水溶液中に浸漬し、参照電極に飽和KCl Ag/AgClを用いて、200mV/min の掃印速度で0〜1.2V(vs. SHE)のサイクリックボルタモグラム(電位−電流曲線〉を5サイクル測定し、5サイクル目における電圧上昇時0.8Vでの電流密度の値を実使用環境での安定度とし、電流密度が小さいほど実使用環境下で安定であるものとした。
なお、上記の電流密度の値を以下の基準で評価した。
◎:電流密度4μA/cm2以下
○:電流密度4μA/cm2超5μA/cm2以下
×:電流密度5μA/cm2
Figure 0005625902
同表に示したとおり、本発明に従って表面に生成させたSn系皮膜の薄膜X線回折ピーク強度比(FeSn/FeSn2)が2.4以上となっているステンレス鋼は、接触抵抗が低く抑えられているだけでなく、セパレータの実使用環境下での電流密度が低い、すなわち安定性(耐食性)にも優れていることが分かる。
一方、上記ピーク強度比が2.4に満たないものは、いずれも、5サイクル目における電圧上昇時0.8Vでの電流密度が大きく、使用環境下での安定性(耐食性)に劣っていることが分かる。
本発明によれば、従来から使用されている金めっきステンレス製セパレータやグラファイト製セパレータと、同程度に接触抵抗が低くかつ耐食性に優れたセパレータを、安価に得ることができる。その結果、従来の固体高分子形燃料電池に比べ、製造コストを大幅に削減した固体高分子形燃料電池を製造することができる。
1 膜−電極接合体
2,3 ガス拡散層
4,5 セパレータ
6 O(空気)流路
7 水素流路
8 試験片
9 カーボンペーパ
10 銅板に金めっきを施した電極

Claims (4)

  1. 表面に、FeSnとFeSn2を含むSn系皮膜を有するステンレス鋼であって、該Sn系皮膜中のFeSn(2θ=44.3°)とFeSn2 (2θ=43.7°)の薄膜X線回折ピーク強度比FeSn/FeSn2が2.4以上を満足することを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
  2. 前記ステンレス鋼が、16質量%以上のCrを含有するステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼。
  3. 酸洗処理を施して、表面の不動態皮膜を除去したステンレス鋼の表面にSn層を形成し、その後加熱処理をすることで、表面にFeSnおよびFeSn2を生成する固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法であって、上記加熱処理を、600℃以上で行うものとし、その際、680℃を境として下記式(1)または式(2)の条件で行うことを特徴とする固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法。

    (加熱温度が600℃以上680℃未満の場合)
    保持時間(min)≧8600×Sn層厚み(μm)/加熱温度(℃)・・・式(1)
    (加熱温度が680℃以上の場合)
    保持時間(min)≧5500×Sn層厚み(μm)/加熱温度(℃)・・・式(2)
  4. 前記ステンレス鋼が、16質量%以上のCrを含有するステンレス鋼であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子形燃料電池セパレータ用ステンレス鋼の製造方法。
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