JP5623808B2 - 時計用文字板 - Google Patents

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Description

この発明は時計用文字板に関し、特に高級腕時計に装着するもので、表面に七宝による装飾を施した文字板の構造に関するものである。
一般に、七宝等で装飾を施した文字板は、金属からなる基板の表面側にプレス加工等により凹状の模様を形成し、その模様の上にペースト状のガラス粉を付着させ、700〜850℃の高温で焼成することにより形成されていた。このように金属からなる基板とその表面側に付着させたガラス粉とを高温で焼成すると、金属とガラスの熱膨張率の相違により大きな反りが発生することがあった。このため、基板を焼成治具板にボルトとナットを使用してネジ止めした上で、加熱、焼成して、反りの発生を最小限に抑えることが行われていた(特許文献1参照)。
しかし、上記した特許文献1に開示されている時計用文字板の製造方法は、1枚の文字板に対して1個の焼成治具板が必要となると共に、ボルトとナットを使用し文字板を焼成治具板に取付け固定していたので、量産性に欠けるという問題があった。
また、文字板表面にボルトによるキズ等が付いて外観品質不良を発生したり、ボルトの頭部が当たる位置には文字板表面にガラス溶解層を設けることができず、デザインバリエーションの拡大もできなかった。
そのため、簡単な構造で、焼成工程を施しても表示板基板の変形の発生がなく、且つ七宝による装飾被膜層の割れや剥れをなくすことが要求されている。
そこで、金属板からなる基板の表面側と裏面側に凹部を形成してその各凹部にそれぞれ着色材を含んだ着色ガラスを溶融させて被膜層(七宝層)を設けることによって、基板の表面と裏面の応力のバランスをとって、基板の変形等が発生しないようにし、装飾被膜層の割れや剥れも発生もしないようにすることが提案されている(特許文献2参照)。
特開2003−270362号公報 特開2005−274358号公報
しかしながら、上記のように基板の表面と裏面に七宝層を形成した文字板でも、腕時計に組み込んで使用された場合の過酷な使用状況にも耐えられるように、ハンマーをある高さから回動させて文字板を組み込んだ時計ケースの風防ガラスに衝突させるハンマー衝撃テストを実施すると、ハンマーを20cm程度の高さから衝突させても、文字板の七宝層にひび割れが発生してしまった。すなわち、まだ耐衝撃性が充分ではないという問題があった。
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、七宝層を形成した時計用文字板の耐衝撃性を大幅に高め、腕時計に組み込まれたときの過酷な使用状況にも耐えられるようにすることを目的とする。
この発明による時計用文字板は上記の目的を達成するため、金属からなる七宝基板の表面側に第1の凹部を、裏面側に該第1の凹部と対応する第2の凹部をそれぞれ設けると共に、前記第1の凹部と前記第2の凹部を形成するための外周部が前記七宝基板に形成されており、前記第1の凹部内に装飾用の七宝層を、前記第2の凹部内に反り防止用の七宝層をそれぞれ形成し、前記七宝基板を下板に接合してなる時計用文字板において、前記七宝基板の裏面側の前記反り防止用の七宝層上を含む略全面に亘って100〜300μmの厚さを有するゲルを主体とした両面緩衝材層を接合材として、前記七宝基板を前記下板接合すると共に、前記七宝基板の前記外周部の表面側の外側に全周に亘って前記第1の凹部と略同等の深さを有する低段部を設け、該低段部内の全面に亘って見切り緩衝材を被着したことを特徴とする。
上記第1の凹部と第2の凹部は、それぞれ上記七宝基板の外周部と指針軸を挿通するための中心孔を設けた中央部との間に形成することができる。
上記見切り緩衝材が、ゲルを主体とした見切り緩衝材又は発泡材による見切り緩衝材であるとよい。
上記ゲルは、アクリルゲル、ウレタンゲル、シリコンゲルの中の少なくとも1つからなる緩衝材であるとよい。
上記発泡材は、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン、発泡アクリル、発泡シリコンの中の少なくとも1つからなる緩衝材であるとよい。

上記七宝基板の表面側の第1の凹部内には、上記装飾用の七宝層を仕切る突条による模様を形成してもよい。
上記装飾用の七宝層は着色材を含んだ着色ガラス溶融の七宝層であるとよく、上記反り防止用の七宝層は着色材を含まない無着色ガラス溶融の七宝層であってもよい。
上記七宝基板と上記下板は、それぞれ銀、銀合金、金、金合金、プラチナ、プラチナ合金、銅、銅合金、ステンレス鋼の中のいずれかからなるとよい。
この発明による時計用文字板は、七宝層の焼成工程における七宝基板の表面側と裏面側とで熱応力のバランスが取れ、反りが発生しない。かつ、七宝基板の裏面側の反り防止用の七宝層上を含む略全面に亘って、ゲルを主体とした両面緩衝材層を介して金属板からなる下板を被着しているため、外部からの衝撃による振動が両面緩衝材層によって効果的に吸収され、耐衝撃性が大幅に向上する。したがって、腕時計の文字板として使用しても、通常の携帯において七宝層にひび割れが発生する恐れがない。
この発明の一実施例を示す時計用文字板の表面側から見た平面図である。 同じくその七宝基板の裏面図である。 図1のA−A線に沿う拡大断面図である。 アクリルゲルを主体とする緩衝層の例を示す部分的な斜視図である。 ハンマー衝撃試験の簡略化した側面図である。 図5における載物台に被テスト体としての時計ケースを支持した状態を示す正面図である。
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1はこの発明の一実施例1を示す時計用文字板の表面側から見た平面図、図2はその七宝基板の裏面図、図3は図1のA−A線に沿う拡大断面図である。
この実施例の時計用文字板1は、図3に最もよく示されるように、金属からなる厚さ800μm程度の七宝基板10の表面側に第1の凹部11を、裏面側に第1の凹部11と略同等の深さの第2の凹部12をそれぞれ設けている。その第1の凹部11と第2の凹部12は、七宝基板10の外周部13と時計用ムーブメントの指針軸(図示していない)を挿通するための中心孔14を設けた中央部15との間に、それぞれ例えば200μm程度の深さに形成されている。これは、金属製の七宝基板10にプレス加工又は切削加工を施すか、あるいは七宝基板10の成形時に形成される。
そして、第1の凹部11内に装飾用の七宝層21を、第2の凹部内に反り防止用の七宝層22をそれぞれ形成している。
これらの七宝層21,22は、ガラス粉末に必要に応じて所望の着色材等を加えたもの又は所望の着色ガラス粉末を溶剤又は各種油等に溶き、ペースト状にした釉薬(ゆうやく、「フリット」「うわぐすり」とも言う)を、第1の凹部11内及び第2の凹部12内の所要領域に塗って、450℃〜900℃で1〜5分(好ましくは700℃〜800℃で2〜3分)焼成することを繰り返して形成する。釉薬の組合せや塗布の仕方によって、グラデーション模様を形成することもできる。各七宝層21,22の完成膜厚は各凹部の深さと略同等の200μm程度になる。
第1の凹部11内に形成される装飾用の七宝層21は、第1の凹部11の内面に彫刻や打ち出し(コイニング)等による模様を施した場合などには、透明又は半透明なガラス溶融の七宝層でもよいが、一般には着色材を含んだ着色ガラス溶融の七宝層で美しい色彩に仕上げる。裏面側の第2の凹部12内に形成される反り防止用の七宝層22は、外部から見えなくなるので、着色材を含まない無着色ガラス溶融の七宝層でよい。
そして、その七宝基板10の裏面側の反り防止用の七宝層22上を含む略全面に亘って、ゲルを主体とした両面緩衝材層30を接合材として、厚さ300μm〜400μmの金属板等からなる下板40を接合する。両面緩衝材層30を構成するゲルとしては、アクリルゲル、ウレタンゲル、シリコンゲル等がある。これらの各種ゲルは透明体であって、ガラスと同様に光が透過する。この実施例ではアクリルゲルを使用している。
その両面緩衝材層30としては、例えば図4に示すように、アクリルゲルを主体としたアクリルゲル層31(厚さ100〜300μm程度)の一方の面に重剥離セパレーター32を、他方の面に軽剥離セパレーター33をそれぞれ貼着して構成されたアクリルゲルシート34を使用する。重剥離セパレーター32及び軽剥離セパレーター33はいずれもPETフィルムからなる。アクリルゲル層31は接着性があるとともに減衰特性に優れ、衝撃吸収力がある。このアクリルゲルシート34としては、例えば共同技研株式会社製の「メークリンゲル(登録商標)」がある。
そして、このアクリルゲルシート34をプレス機にセットして、抜き金型によって下板40の外形(図2に示す七宝基板10の裏面側の外形と同じ)と同一形状に打ち抜き成形する。その状態で、一方の面には重剥離セパレーター32が、他方の面には軽剥離セパレ
ーター33がそれぞれ貼着されている。また、治具を使用して七宝基板10の裏面側又は下板40に確実に位置出しして貼れるようにするため、重剥離セパレーター32及び軽剥離セパレーター33の少なくとも一方に、パイロット孔を2つ以上開けておくとよい。
このアクリルゲルシート34を両面緩衝材層30として、七宝基板10の裏面側に下板40を接合するには、まず軽剥離セパレータ33を剥離して、そのアクリルゲル層31を七宝基板10の裏面側(反り防止用の七宝層22上を含む)に確実に貼り付ける。その後、重剥離セパレータ32を剥離して、露出したアクリルゲル層31に下板40を重ねて押圧して貼り付ける。あるいは、軽剥離セパレータ33を剥離したアクリルゲル層31を下板40に重ねて張り付けた後、重剥離セパレータ32を剥離して、下板40をアクリルゲル層31によって七宝基板10の裏面側に貼り付けるようにしてもよい。
この実施例における七宝基板10の外周部13は、図1及び図2に示すように円環状の部分から90°間隔で4個所に径方向に膨出した部分13aを有し、七宝基板10の平面形状は正方形の4辺がそれぞれ外方に凸の弧状になった形状をしている。その4個所の膨出した部分(略正方形の各角部に相当する)13aに、ねじ挿通孔17を有するボス部18を表面側に設けている。
その七宝基板10の外周部13の表面側13bの外側に、全周に亘って第1の凹部11と略同等の深さで幅が500μm程度の低段部13cを設けており、その低段部13cに見切り緩衝材35を被着している。
その見切り緩衝材35もゲルを主体とした緩衝材であるのが望ましいが、幅が狭いため貼り付け作業が困難な場合には、例えば発泡材のような別の緩衝材を使用してもよい。
ゲルを主体とした緩衝材としては、両面緩衝材層30の場合と同様に、アクリルゲル、ウレタンゲル、シリコンゲル等を主体とした緩衝材がある。
発泡材による緩衝材としては、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン、発泡アクリルゲル、発泡シリコン等の緩衝材がある。この実施例では、発泡ウレタンを使用している。
また、この実施例の七宝基板10の表面側の第1の凹部11内には、装飾用の七宝層21を仕切る突条16による模様が形成されている。図1に示す例では図案化した世界地図の模様が形成されている。図3ではこの突条の図示を省略しているが、その突条は第1の凹部11内の底面から厚さ方向に突出している。このような突条16は、例えばコイニング加工によって第1の凹部11を形成する際に同時に形成することができる。その各突条16の露出する表面は充分に磨いて光沢を有するようにするとよい。このような七宝層を仕切る突条を、ワイヤ(一般に鋼線を使用)を所望の形状に屈曲させて第1の凹部11内に設置することによって形成してもよい。
七宝基板10と下板40は、それぞれ銀、銀合金、金、金合金、プラチナ、プラチナ合金、銅、銅合金、ステンレス鋼の中のいずれかで形成するとよい。例えば、七宝基板10を銀又は銀合金で、下板40を銅又は銅合金で製造することができる。しかし、下板40はポリカーボネート等の樹脂で形成してもよい。
図示は省略しているが、七宝基板10の表面側の装飾用の七宝層21の表面には、その外周に沿って時刻を示す数字や目盛が貼り付けられる。
そのため、導電性基板の表面にフォトレジストを塗布し、3時、6時、9時及び12時を示すアラビア数字又はローマ数字と、それらの間の1時間ごとの各時を示す平面形状が
細長い長方形の目盛からなるパターンを露光して現像し、その各パターンの部分だけフォトレジストを除去して、導電性基板を露出させる。その後、その導電性基板の露出している部分に酸化膜形成処理を施し、その導電性基板を湿式メッキ浴(ニッケルメッキ又は銅メッキ)に浸漬して、厚さ25μm〜50μmの厚メッキを行う。
このようにして、導電性基板の表面に厚メッキで形成した数字や目盛の表面をセパレーターの片面にコートされている粘着面で覆い、導電性基板から数字や目盛を剥離してセパレーターに移す。そのセパレーター上の数字や目盛の裏面(導電性基板に接していた面)に粘着材を印刷等の手段でコートした後、その粘着面を七宝基板10に向けて、その七宝基板10の所定の位置に各数字及び目盛を貼り付け、その後セパレーターを剥がす。
なお、治具を使用して各数字及び目盛を七宝基板10上の所定位置に確実に貼れるようにするため、それらを保持しているセパレーターにパイロット孔を2つ以上開けておくとよい。
次に、七宝基板10上に装飾用ゴトクリング(図示せず)を重ねて所定の位置に配置し、4本の止めねじを装飾用ゴトクリングの透孔を通して図1に示す4箇所のボス部18のねじ挿通孔17に挿入し、七宝基板10にねじ止めして、時計用文字板が完成する。
この時計用文字板1によれば、七宝基板10の表裏面側に七宝層21,22が形成されているため、七宝層の焼成工程における金属製の七宝基板10とガラス溶融の七宝層21,22との熱膨張率の違いによる応力が、七宝基板10の表面側と裏面側とでバランスが取れ、反りが発生しない。
また、七宝基板10の裏面側の反り防止用の七宝層22上を含む略全面に亘って、ゲルを主体とした両面緩衝材層30を介して下板40を被着しているため、外部からの衝撃による振動が両面緩衝材層30によって効果的に吸収され、耐衝撃性が大幅に向上する。
この実施例ではさらに、七宝基板10の外周部13の表面側13bの外側に全周に亘って設けられた低段部13cに見切り緩衝材を被着しているため、外周部13の表面側からの衝撃力も効果的に吸収でき、耐衝撃性が一層向上する。
それによって、この時計用文字板1を時計ケースに組み付けた状態で、後述するハンマー衝撃テスト、高温と低温の環境に交互に置くことを繰り返す温度ショックテスト、所定の高さからランダムに落下させるランダム落下テスト、テスト用のケースに入れて低い位置から連続的に複数回落下させるバタバタテスト、等のいずれのテストにおいても、七宝層21,22にひび割れが生じなくなった。
この時計用文字板1を腕時計に組み込むには、図3下板40の裏面に溶接等によって固定された2本の足(たとえば円柱形状)45を時計用ムーブメントの所定の足孔に挿入して、時計用文字板1を時計用ムーブメントに取り付ける。次に、時計用文字板1の中央部15の中心孔14から前方へ突出させた時計用ムーブメントの指針軸を構成する同心の時針軸、分針軸及び秒針軸の各先端部に、それぞれ時針、分針及び秒針を取り付ける。
次に、時計用ムーブメントの外周に樹脂でできた中枠を取り付け、風防ガラスを取り付けた時計ケース内に時計用ムーブメント等を挿入し、時計ケースの裏面を裏蓋で塞いだ後、時計ケースにねじ止めして裏蓋を固定する。
次に、前述した各種のテストの中でも最も過酷なハンマー衝撃テストを行うためのハンマー衝撃試験機と、そのテスト結果について説明する。
図5はハンマー衝撃試験機の一例を簡略化して示す側面図である。このハンマー衝撃試験機50は、スタンド状の本体51の上部にハンマー52の柄52aの後端部が支軸53によって回動可能に軸支されている。ハンマー52の鉄製円柱状の頭部52bの一端面52cには樹脂材が溶着されている。
本体下部の平板状基部53上には、載物台54が設置され、その上部に図6に示すように、被テスト体として時計用文字板を組み込んだ時計ケース5を、発砲ウレタン55と両面テープ56で両側から支持し、ハンマー52が図5の矢示B方向に回動したときに、その最下降位置で頭部52bの一端面52cが被テスト体である時計ケース5の風防ガラス5aに衝突するように配置する。
なお、スタンド状の本体51にはハンマー高さ調整部、ハンマー高さ固定部、ハンマー高さ表示部、固定解除レバーなども設けられ、ハンマー52の高さを調整して固定し、その固定を解除すればハンマー52が設定した高さから矢示B方向に回動して、その頭部52bが最下降位置で被テスト体に衝突するようになっているが、それらの各部の図示は省略している。
後述するハンマー高さとは、図5に示すハンマー52の頭部52bの中心の回動前における高さ位置h1と、矢示B方向に回動して頭部52bの一端面52cが被テスト体に衝突するときの高さ位置h2との差H(H=h1−h2)である。
このハンマー衝撃試験機50を用いて、この発明による前述した実施例の時計用文字板1を組み込んだ時計ケース(「発明サンプル」と称す)と、特許文献2に記載された表示板の裏面に、この発明の実施例と同様な下板を接着剤で接着(接合)した文字板を組み込んだ時計ケース(「従来サンプル」と称す)を、それぞれ被テスト体として図5及び図6に示した時計ケース5のようにセットして、ハンマー高さHを20cm,30cm,40cm,50cm,60cmと変更して、各ハンマー高さで各サンプル10個ずつについてテストした結果を表1に示す。
Figure 0005623808
表1において、発明サンプルにおける下板30と七宝基板10との接合材は、アクリルゲルを主体とした両面緩衝材層である。従来サンプルにおける下板と七宝基板との接合材は接着剤であり、例えば薄いフイルムの両面に接着剤が塗布された通常の両面接着テープである。
コメント欄における「割れ発生」は、1個のサンプルのハンマー衝撃テストで、七宝基板の表側の七宝層に1本でもひび割れが生じた場合を「割れ発生」とし、1本もひび割れが生じなかった場合を「割れ発生なし」とした。
判定欄の判定記号は次のことを示している。
○:10個とも割れなし
△:10個のうち数個に割れ発生
×:10個全てに割れ発生
ハンマー高さ40cmで割れが発生しなければ、時計の携帯において通常問題が発生する恐れがないので合格とする。発明サンプルの場合は、どのハンマー高さでも10個のいずれにも割れが発生しないので、合格基準を超えた充分な耐衝撃性があることが分かる。従来サンプルの場合は、ハンマー高さ20cmでも一部のサンプルで割れが発生し、30cm以上では全て割れが発生してしまうので、不合格である。
このテスト結果から、この発明による時計用文字板は、耐衝撃性は飛躍的に向上していることが分かる。
なお、前述した実施例では、七宝基板10の外周部13の表面側13bの外側に形成した低段部13cに全周に亘って見切り緩衝材35を被着した。しかし、これはあった方が望ましいが必須ではなく、外周部13の全体が七宝基板10と同一の金属で形成されていても、ハンマー衝撃テストに充分合格する耐衝撃性は得られる。
また、前述の実施例では、七宝基板10の外周部13の表面側の外側に全周に亘って低段部13cを形成し、その低段部13cに見切り緩衝材35を被着して設けたが、この低段部13cを設けず、外周部13の表面側13bと同一面とし、そこに見切り緩衝材35を被着してもよい。そのようにしても、耐衝撃性を充分に高めることができる。
七宝基板の表裏両面に七宝層を形成するための凹部の平面形状は円形に限るものではなく、楕円形、正方形、長方形、菱形、その他任意の形状にしたり、その中の一部分を凹部にしないこともできる。しかし、七宝基板の表面側と裏面側の七宝層形成領域が略対応していることが、焼成時における熱応力のバランスを取るために望ましい。
また、前述した実施例は指針を有するアナログ式の腕時計にこの発明を適用した例を説明したが、懐中時計、ペンダント型時計、携帯型目覚まし時計、小型置時計などに適用してもよいし、デジタル式の時計に適用することも可能である。その場合は、指針軸を挿通するための中心孔を設けた中央部は不要であるが、時刻をデジタル表示するための窓部が必要になる。
さらに、前述した実施例においては、金属からなる七宝基板10の表側と裏側にそれぞれ第1の凹部11と第2の凹部12とを設け、その各凹部に七宝を入れたが、金属からなる七宝基板に幅が約0.5mm〜約10mmの貫通孔からなる縞模様を形成し、裏面側を治具で密閉してその貫通孔に七宝を入れて焼成した(一般に透胎七宝と言う)後、治具を剥がしてステンドガラスのようにした七宝基板を作製してもよい。
その七宝基板に、アクリルゲル等の透光性ゲルによる両面緩衝材層を接合材としてポリカーボネート等の透明な樹脂製の下板を接合することによって、透光性が有り、且つ耐衝撃性も優れた文字板を作製することができ、ソーラー時計用及びソーラー電波時計用の文字板として使用することが可能になる。
この発明によると時計用文字板は、各種の時計に適用でき、特に高級腕時計、懐中時計、ペンダント型時計、携帯型目覚まし時計、小型置時計などに適用することができる。
1:時計用文字板 5:時計ケース 10:七宝基板
11:第1の凹部 12:第2の凹 13:外周部 13c:低段部
14:中心孔 15:中央部 16:突条 21:装飾用の七宝層
22:反り防止用の七宝層 30:両面緩衝材層 31:アクリルゲル層
32:重剥離セパレータ 33:軽剥離セパレータ 34:アクリルゲルシート35:見切り緩衝材 40:下板 50:ハンマー衝撃試験機
51:スタンド状の本体 52:ハンマー 52a:ハンマーの柄
52b:ハンマーの頭部 53:支軸 54:載物台
55:発砲ウレタン 56:両面テープ

Claims (8)

  1. 金属からなる七宝基板の表面側に第1の凹部を、裏面側に該第1の凹部と対応する第2の凹部をそれぞれ設けると共に、前記第1の凹部と前記第2の凹部を形成するための外周部が前記七宝基板に形成されており、前記第1の凹部内に装飾用の七宝層を、前記第2の凹部内に反り防止用の七宝層をそれぞれ形成し、前記七宝基板を下板に接合してなる時計用文字板において、
    前記七宝基板の裏面側の前記反り防止用の七宝層上を含む略全面に亘って100〜300μmの厚さを有するゲルを主体とした両面緩衝材層を接合材として、前記七宝基板を前記下板接合すると共に、
    前記七宝基板の前記外周部の表面側の外側に全周に亘って前記第1の凹部と略同等の深さを有する低段部を設け、該低段部内の全面に亘って見切り緩衝材を被着したことを特徴とする時計用文字板。
  2. 前記第1の凹部と前記第2の凹部は、それぞれ前記七宝基板の前記外周部と指針軸を挿通するための中心穴を設けた中央部との間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の時計用文字板。
  3. 前記見切り緩衝材が、ゲルを主体とした見切り緩衝材又は発泡材による見切り緩衝材であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の時計用文字板。
  4. 前記ゲルは、アクリルゲル、ウレタンゲル、シリコンゲルの中の少なくとも1つからなる緩衝材であることを特徴とする請求項1又は3に記載の時計用文字板。
  5. 前記発泡材は、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン、発泡アクリル、発泡シリコンの中の少なくとも1つからなる緩衝材であることを特徴とする請求項3に記載の時計用文字板。
  6. 前記七宝基板の表面側の第1の凹部内には、前記装飾用の七宝層を仕切る突状による模様が形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の時計用文字板。
  7. 前記装飾用の七宝層は着色材を含んだ着色ガラス溶融の七宝層であり、前記反り防止用の七宝層は着色材を含まない無着色ガラス溶融の七宝層であることを特徴とする請求項1
    からのいずれか一項に記載の時計用文字板。
  8. 前記七宝基板と前記下板は、それぞれ銀、銀合金、金、金合金、プラチナ、プラチナ合金、銅、銅合金、ステンレス鋼の中のいずれかからなることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の時計用文字板。
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