JP5622606B2 - プロピレン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、通常のポリプロピレンは、溶融張力、溶融粘弾性が低く、熱成型、発泡成形、ブロー成形などへの使用に制限が出る等の課題があった。
メタロセン触媒とは、広義には共役五員環配位子を少なくとも一個有する遷移金属化合物であり、プロピレン重合用としては架橋構造を有する配位子が一般に使用される。当初、アイソタクチックポリオレフィンが製造可能な錯体として見出されたエチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリドやエチレンビス(4,5,6,7‐テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開昭61−130314号公報)、シリレン基を架橋基として持つジメチルシリレンビス置換シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド(特開平1−301704号公報)、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド(特開平1−275609号公報)、シクロペンタジエニル化合物の架橋基の隣(2位−)に置換基をつけることにより立体規則性及び分子量をある程度改良したジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開平4−268307号公報)、さらに4位の位置にアリール基を導入して活性、立体規則性及び分子量をさらに改良したジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(特開平6−100579号公報)やジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)ジルコニウムジクロリド(特開平10−226712号公報)、さらに最近になって、4位アリール基の特定部位に特定の置換基を導入したジクロロ(1,1’−ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(3−クロロ4−t−ブチルフェニル)−4H−アズレニル))ハフニウム(特開2003−292518号公報)、2位の位置に嵩高いヘテロ置換基を導入した特開2002−194016号公報、特表2002−535339号公報、特開2004−2259号公報、特開2004−352707号公報等が開示されている。
これらは、主として触媒活性や得られるポリプロピレンの融点及び分子量の改良を目的としており、マクロマーや長鎖分岐を持つポリプロピレンの製造適性については、示唆されていない。
しかしながら、この公知の技術では、マクロマーの生成量とマクロマー共重合量が必ずしも充分ではなく、溶融物性改善の効果は、不十分なレベルである。
最近になって、2種のメタロセン錯体、具体的にはrac−SiMe2[2−Me−4−Ph−Ind]2ZrCl2とrac−SiMe2[2−Me−4−Ph−Ind]2HfCl2等の錯体を使用し、メチルアルミノキサン(MAO)を担持したシリカと組み合わせた触媒で、多段重合にて得られたプロピレン系重合体が比較的高い溶融張力を示すことが報告されている(特許文献8参照。)。
しかしながら、これらの方法は、いずれも実用化されておらず、工業的に、より簡便な手法で、溶融物性の改良が可能なプロピレン系重合体を製造する方法の開発が望まれている。
ところが、その溶融物性の改良されたプロピレン系重合体は、例えば、発泡成形に好適に用いることができるが、今後、さらに発泡倍率の高い成形体を製造するためには、さらに、分岐量の増大したプロピレン系重合体を得ることが望まれており、また、そのような重合体を効率よく製造する方法を見出すことが強く望まれている。
[A]:周期律表4族の遷移金属化合物である次の成分[A−1]及び[A−2]からそれぞれ選択される少なくとも二種の遷移金属化合物。但し、成分[A−1]と[A−2]との合計モル量に対する[A−1]のモル量の割合が0.20〜0.99である。
[A−1]一般式(a1)で表される化合物
[A−2]一般式(a2)で表される化合物
[B]:アルミニウムオキシ化合物[B−1]、上記遷移金属化合物[A]と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸[B−2]、固体酸微粒子[B−3]、およびイオン交換性層状珪酸塩[B−4]からなる化合物群から選ばれる少なくとも一種。
[C]:有機アルミニウム化合物。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、イオン交換性層状珪酸塩[B−4]がスメクタイト族であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、成分[A]および成分[B]、または成分[A]、成分[B]および成分[C]の存在下、オレフィンを接触させて、オレフィンを成分[B]に対し重量比で0.01〜100の範囲で予備重合した触媒を用いて、プロピレン重合を行うことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、重合プロセスが単段重合であることを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
そして、この製造方法により得られたポリマー(重合体)は、その特性により、溶融流動性や溶融張力が制御されており、物性と加工性のバランスに優れる長鎖分岐型のプロピレン重合体である。
以下、本発明のプロピレン系重合体の製法について、その製法に使用する触媒、重合工程、プロピレン系重合体の特徴等について、項目毎に詳細に説明する。
本発明の製法に用いられる触媒は、次の成分[A]〜成分[C]を含むことを必須とする。
(1)成分[A]
成分[A]としては、次の成分[A−1]及び[A−2]からそれぞれ選択される少なくとも二種の遷移金属化合物が用いられる。
すなわち、この場合、[A−1]から少なくとも1種類、[A−2]から少なくとも1種類選んだ、2種以上の遷移金属化合物を使用することを意味し、成分[A−1]と[A−2]から各々1種を用いることが好ましい。また、各々1種以上に加え、更に成分[A−1]や[A−2]以外の他のメタロセン化合物を併用することもできる。
成分[A−1]は、次の構造式(一般式)(a1)で表されるメタロセン化合物である。
また、R13およびR14は、窒素、酸素または硫黄を含有する炭素数6〜16の複素環基であってもよい。このような複素環基としては、好ましくは一般式(d)で表さられる置換基である。
R13およびR14としては、好ましくは両方もしくは片方が、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、3,5−ジ−t−ブチルフェニル基、4−ビフェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、又はフェナンスリル基であり、さらに好ましくはフェニル基、4−t−ブチルフェニル基または4−クロロフェニル基である。また、R13およびR14は、互いに同一である場合が合成上好ましい。
ここで炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基とは、炭素数1〜20のトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基である。
上記のQ11の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
(1)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)インデニル}]ハフニウム、
(2)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)インデニル}]ハフニウム、
(3)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)インデニル}]ハフニウム、
(4)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(5)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−チエニル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(6)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(7)ジクロロ[1,1’−ジフェニルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(8)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(9)ジクロロ[1,1’−ジメチルゲルミレンビス{2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(10)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(11)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−トリメチルシリル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(12)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウムジクロライド、
(14)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−ベンゾフリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(15)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フルフリル)−4−フェニルインデニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(18)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−トリフルオロメチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(19)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)インデニル}]ハフニウム、
(20)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(1−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(21)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(22)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)インデニル}]ハフニウム、
(23)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)インデニル}]ハフニウム、
(24)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(25)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(26)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)インデニル}]ハフニウム、
(27)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)インデニル}]ハフニウム、
(28)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(29)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)インデニル}]ハフニウム、
(30)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(2−フェナンスリル)インデニル}]ハフニウム、
(31)ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−(9−フェナンスリル)インデニル}]ハフニウム、
などを挙げることができる。
成分[A−2]は、次の一般式(a2)で表されるメタロセン化合物である。
具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル基である。
また、上記R22及びR24は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基であり、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、n−ヘキシル、フェニル等が挙げられ、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、t−ブチル、フェニルである。
X2およびY2は、補助配位子であり、成分(B)の助触媒と反応して、オレフィン重合能を有する活性なメタロセンを生成させる。
ここで炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリル基とは、炭素数1〜20のトリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基、トリアリールシリル基である。
上記のQ2の具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、1,2−エチレン、等のアルキレン基;ジフェニルメチレン等のアリールアルキレン基;シリレン基;メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジエチルシリレン、ジ(n−プロピル)シリレン、ジ(i−プロピル)シリレン、ジ(シクロヘキシル)シリレン等のアルキルシリレン基、メチル(フェニル)シリレン等の(アルキル)(アリール)シリレン基;ジフェニルシリレン等のアリールシリレン基;テトラメチルジシリレン等のアルキルオリゴシリレン基;ゲルミレン基;上記の2価の炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基のケイ素をゲルマニウムに置換したアルキルゲルミレン基;(アルキル)(アリール)ゲルミレン基;アリールゲルミレン基などを挙げることができる。
これらの中では、炭素数1〜20の炭化水素基を有するシリレン基、または、炭素数1〜20の炭化水素基を有するゲルミレン基が好ましく、アルキルシリレン基、アルキルゲルミレン基が特に好ましい。
(1)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(2)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(3−t−ブチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(3)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(3−フェニルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(4)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(3−(4−t−ブチルフェニル)シクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(5)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(6)ジクロロ{ジフェニルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(7)ジクロロ{ジメチルゲルミレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(8)ジクロロ{シラシクロペンチルビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(9)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(10)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(11)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(12)ジクロロ[ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−t−ブチルフェニル)シクロペンタジエニル}]ハフニウム、
(13)ジクロロ[ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)シクロペンタジエニル}]ハフニウム、
(14)ジクロロ[ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(2−ナフチル)シクロペンタジエニル}]ハフニウム、
(15)ジクロロ[ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−ビフェニル)シクロペンタジエニル}]ハフニウム、
(16)ジクロロ[ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(3,5−ジメチルフェニル)シクロペンタジエニル}]ハフニウム、
(17)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−t−ブチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(18)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
(19)ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジエチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム、
を挙げることができる。
成分[B]としては、アルミニウムオキシ化合物[B−1]、上記遷移金属化合物[A]と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸[B−2]、固体酸微粒子[B−3]、およびイオン交換性層状珪酸塩[B−4]からなる化合物群から選ばれる少なくとも一種が用いられる。
アルミニウムオキシ化合物[B−1]としては、具体的には次の一般式(3)、(4)又は(5)で表される化合物が挙げられる。
一般式(3)及び(4)で表される化合物は、アルモキサンとも呼ばれる化合物であって、これらの中では、メチルアルモキサン又はメチルイソブチルアルモキサンが好ましい。
上記のアルモキサンは、各群内および各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルモキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。
一般式(5)、(6)中、R52及びR61は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素残基またはハロゲン化炭化水素基を示す。
成分[B−2]は、前述した遷移金属化合物[A]と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸である。
具体的には、イオン性化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素等の有機ホウ素化合物のカチオンとの錯化物等が挙げられる。
なお、上記のルイス酸のある種のものは、成分[A]と反応して成分[A]をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物として把握することもできる。従って、上記のルイス酸およびイオン性化合物の両者に属する化合物は、何れか一方に属するものとする。微粒子状担体については後述する。
固体酸微粒子[B−3]としては、アルミナ、シリカ−アルミナ等の固体酸が挙げられる。
ここで、前述した[B−1]および[B−2]における微粒子状担体について説明する。
本発明においては、微粒子状担体は、その元素組成、化合物組成については、とくに限定されない。例えば、無機または有機の化合物から成る微粒子状担体が例示できる。無機担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ塩化マグネシウム、活性炭、無機珪酸塩等が挙げられる。あるいは、これらの混合物であってもよい。
これらの微粒子担体は、通常1μm〜5mm、好ましくは5μm〜1mm、更に好ましくは10μm〜200μmの平均粒径を有する。
成分[B−4]は、イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に珪酸塩と略記する)である。
本発明において、原料として使用する珪酸塩は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、かつ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英、クリストバライト等)が含まれることが多いが、それらを含んでもよい。珪酸塩の具体例としては、例えば、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている次のような層状珪酸塩が挙げられる。
酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造のAl、Fe、Mg、等の陽イオンの一部または全部を溶出させることができる。
酸処理で用いられる酸は、好ましくは塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸から選択される。処理に用いる塩類および酸は、2種以上であってもよい。塩類および酸による処理条件は、特には制限されないが、通常、塩類および酸濃度は、0.1〜50重量%、処理温度は室温〜沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択して、イオン交換性層状珪酸塩から成る群より選ばれた少なくとも一種の化合物を構成している物質の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、塩類および酸は、一般的には水溶液で用いられる。
本発明においては、塩類で処理される前の、イオン交換性層状珪酸塩の含有する交換可能な1族金属の陽イオンの40%以上、好ましくは60%以上を、下記に示す塩類より解離した陽イオンと、イオン交換することが好ましい。
アルカリ処理で用いられる処理剤としては、LiOH、NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Ba(OH)2などが例示される。
また、有機物処理に用いられる有機物は、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、トリフェニルホスホニウム、等が挙げられる。
さらに、有機物処理剤を構成する陰イオンとしては、塩類処理剤を構成する陰イオンとして例示した陰イオン以外にも、例えば、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
イオン交換性層状珪酸塩の吸着水および層間水の加熱処理方法は、特に制限されないが、層間水が残存しないように、また、構造破壊を生じないよう条件を選ぶことが必要である。加熱時間は0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、除去した後の成分[B]の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0重量%とした時、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、であることが好ましい。
イオン交換性層状珪酸塩は、触媒形成または触媒として使用する前に、後述する成分[C]で処理を行うことが可能で、好ましい。イオン交換性層状珪酸塩1gに対する成分[C]の使用量に制限は無いが、通常20mmol以下、好ましくは0.5mmol以上、10mmol以下で行う。処理温度や時間の制限は無く、処理温度は、通常0℃以上、70℃以下、処理時間は10分以上、3時間以下で行う。処理後に洗浄することも可能で、好ましい。溶媒は後述する予備重合やスラリー重合で使用する溶媒と同様の炭化水素溶媒を使用する。
ここで用いられる造粒法は、例えば攪拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられるが、市販品を利用することもできる。
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉の生成を抑制するためには、0.2MPa以上、特に好ましくは0.5MPa以上の圧縮破壊強度を有することが望ましい。このような粒子強度の場合には、特に予備重合を行う場合に、粒子性状改良効果が有効に発揮される。
本発明に係るプロピレン重合用触媒において、[B−1]アルミニウムオキシ化合物、[B−2]成分[A]と反応して成分[A]をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸、[B−3]固体酸微粒子、あるいは、[B−4]イオン交換性層状珪酸塩微粒子は、それぞれ単独に成分[B]として使用される他、これらの4成分を適宜組み合わせても、使用することができる。
成分[C]としては、有機アルミニウム化合物が用いられる。本発明においては、次の一般式:
AlR71 qZ3−q ・・・・(7)
で示される有機アルミニウム化合物が適当である。
本発明では、この式で表される化合物を単独で、複数種混合してあるいは併用して使用することができることは言うまでもない。この式中、R71は、炭素数1〜20の炭化水素基を示し、Zは、ハロゲン、水素、アルコキシ基、アミノ基を示す。qは0より大きくかつ3までの数である。R71としては、アルキル基が好ましく、また、Zは、それがハロゲンの場合には塩素が、アルコキシ基の場合には炭素数1〜8のアルコキシ基が、アミノ基の場合には炭素数1〜8のアミノ基が、好ましい。
これらのうち、好ましくは、q=3のトリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、R71が炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
本発明における触媒は、上記の成分[A]と成分[B]を(予備)重合槽内で、同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させることによって形成させることができる。
また、成分[A]と成分[B]を接触させる場合に、成分[C]を同時にもしくは連続的に、あるいは一度にもしくは複数回にわたって、接触させてもよい。特に、成分[A]の[A−1]または[A−2]において、X1かつY1、またはX2かつY2が炭素数1〜20の炭化水素基以外の、例えばハロゲン基の場合には、成分[C]を用いることが好ましい。
接触順序としては、合目的的な任意の組み合わせが可能であるが、特に好ましいものを各成分について示せば、次の通りである。
成分[C]を使用する場合は、成分[A]と成分[B]を接触させる前に、成分[A]と、あるいは成分[B]と、または成分[A]及び成分[B]の両方に成分[C]を接触させること、または、成分[A]と成分[B]を接触させるのと同時に成分[C]を接触させること、または、成分[A]と成分[B]を接触させた後に成分[C]を接触させることが可能であるが、好ましくは、成分[A]と成分[B]を接触させる前に、成分[C]といずれかに接触させる方法である。
各成分の接触は、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒中で行うのが普通である。接触温度は、特に限定されないが、−20℃から150℃の間で行うのが好ましい。
各成分を接触させた後、脂肪族炭化水素あるいは芳香族炭化水素溶媒にて洗浄することが可能である。
また、成分(A)に対する成分(C)の量は、遷移金属のモル比で、好ましくは0.01〜5×106、特に好ましくは0.1〜1×104、の範囲内が好ましい。
つまり、成分[A−1]からは、低分子量の末端ビニルマクロマーを生成し、成分[A−2]からは、一部マクロマーを共重合した高分子量体を生成する。
したがって、成分[A−1]の割合を変化させることで、マクロマー濃度を変化させるこができ、それにより分岐量を変えることができる。
より分岐量を増やすことにより、g’の低下した重合体を製造するためには、0.20以上が必要であり、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上、さらに好ましくは0.50以上であり、特に好ましくは0.70以上である。また、上限に関しては0.99以下であり、高い触媒活性で効率的に本発明の重合体を得るためには、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.93以下、さらに好ましくは0.90以下、特に好ましくは0.85以下の範囲である。
また、上記範囲で成分[A−1]を使用することにより、水素量に対する、平均分子量と触媒活性のバランスを調整することが可能である。
その理由としては、本重合を行った際に重合体粒子間で分岐成分を均一に分布させることができるためと考えている。反対に、予備重合を行わない場合には、条件によっては不均一性が顕著になることでゲルが生成してしまい、品質を損なうという懸念がある。
そこで予備重合するポリマー量は、成分[B]に対し重量比で、好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.1以上であり、上限は、経済性や取り扱いのためには100以下、さらに好ましくは50以下である。ここで成分[B]に対するポリマーの重量比のことを予備重合倍率と表現することもある。
オレフィンのフィード方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持するフィード方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせる等、任意の方法が可能である。予備重合温度、時間は、特に限定されないが、各々−20℃〜100℃、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合時に成分[C]を添加、又は追加することもできる。また、予備重合終了後に洗浄することも可能である。
なお、本発明で使用する触媒には、[A]〜[C]の成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、通常用いられるポリエチレン、ポリプロピレン等の重合体、シリカ、チタニア等の無機酸化物の固体等を添加してもよい。
重合様式は、前記成分[A]、成分[B]及び成分[C]を含むオレフィン重合用触媒とモノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用し得る。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる、所謂バルク法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合を行う方法も適用される。また、単段重合以外に、2段以上の多段重合することも可能である。
また、重合温度は、0℃以上150℃以下である。特に、バルク重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は、80℃以下が好ましく、更に好ましくは75℃以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、40℃以上が好ましく、更に好ましくは50℃以上である。また上限は100℃以下が好ましく、更に好ましくは90℃以下である。
さらに、気相重合を用いる場合には、1.0MPa以上が好ましく、更に好ましくは1.5MPa以上である。また上限は3.0MPa以下が好ましく、更に好ましくは2.5MPa以下である。
また、使用する水素の量を変化させることで、生成する重合体の平均分子量の他に、分子量分布、分子量分布の高分子量側への偏り、非常に高い分子量成分、分岐(量、長さ、分布)を制御することができ、そのことにより、歪硬化度、溶融張力、溶融延展性といった溶融物性を制御することができる。
この中では、本発明に係るプロピレン系重合体を溶融物性と触媒活性をバランスよく得るためには、エチレンを5モル%以下で用いるのが好ましい。特に、剛性の高い重合体を得るためには、重合体中に含まれるエチレンを1モル%以下になるように、エチレンを用いるのがよく、更に好ましくはプロピレン単独重合である。
マクロマーの生成は、β−メチル脱離と一般に呼ばれる特殊な連鎖移動反応により生成すると、考えており、本発明の特定の構造をもつ成分[A−1]を用いることにより、工業的に有効なバルク重合や気相重合によって製造が可能であることが分かってきた。
また、特定の構造をもつ成分[A−1]を用いることにより、水素存在下でもマクロマーの選択性が落ちないことが分かっている。
一方、より高分子量の重合体を生成する能力を有し、マクロマーの共重合する能力が高い、特定の構造をもつ成分[A−2]と組み合わせることにより、高分子量側の長鎖分岐が多く導入された目的のプロピレン系重合体の製造が可能となったと考えている。
本発明では、特定の構造をもつ成分[A−1]からβ−メチル脱離反応により末端がビニル構造をもつマクロマーが生成し、更に、特定の構造をもつ成分[A−2]によりそのマクロマーが共重合されることにより、長鎖分岐構造をもつポリマーが生成するという特徴を有する。
そのような特定の構造をもつ成分[A−1]と[A−2]に関しては、前記したように、本発明者らは、特開2009−108247号公報(前記特許文献9)、および特開2009−057542号公報(前記特許文献10)に示すように、[A−2]として、ビスインデン構造をもつ錯体、およびビスアズレン構造をもつ錯体を使用する方法を見出している。
したがって、本発明で製造できるプロピレン系重合体は、長鎖分岐が多く導入された重合体であることを特徴とする。また、長鎖分岐が多く導入されることにより、溶融物性が更に向上して、各種成形に有利となることが推察できる。
本発明においては、下記に示す3D−GPC測定から算出する分岐指数(g’)を用いて、長鎖分岐量の評価を行った。
本明細書において、3D−GPCとは、3つの検出器が接続されたGPC装置をいう。かかる3つの検出器は、示差屈折計(RI)、粘度検出器(Viscometer)及び多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)である。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置として、Waters社のAlliance GPCV2000を用いた。
また、光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(MALLS)Wyatt Technology社のDAWN−Eを用いた。
検出器は、MALLS、RI、Viscometerの順で接続した。移動相溶媒は、1,2,4−trichlorobenzene(酸化防止剤のIrganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。流量は1mL/分である。カラムは、東ソー社 GMHHR−H(S) HTを2本連結して用いた。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとした。注入量(サンプルループ容量)は0.2175mLである。
MALLSから得られる絶対分子量(M)、慣性二乗半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を求めるにあたっては、MALLS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)を利用し、以下の文献を参考にして計算を行った。
1.Developments in polymer characterization, vol.4. Essex: Applied Science; 1984. Chapter1.
2.Polymer, 45, 6495−6505(2004)
3.Macromolecules, 33, 2424−2436(2000)
4.Macromolecules, 33, 6945−6952(2000)
分岐指数(g’)は、サンプルを上記Viscometerで測定して得られる極限粘度(ηbranch)と、別途、線状ポリマーを測定して得られる極限粘度(ηlin)との比(ηbranch/ηlin)として、算出する。
ポリマー分子に長鎖分岐が導入されると、同じ分子量の線状のポリマー分子と比較して、慣性半径が小さくなる。慣性半径が小さくなると、極限粘度が小さくなることから、長鎖分岐が導入されるに従い、同じ分子量の線形ポリマーの極限粘度(ηlin)に対する分岐ポリマーの極限粘度(ηbranch)の比(ηbranch/ηlin)は小さくなっていく。
したがって、分岐指数(g’=ηbranch/ηlin)が1より小さい値になる場合には、分岐が導入されていることを意味し、その値が小さくなるに従い、導入されている長鎖分岐が増大していくことを意味する。
図1からわかるように、実施例1/比較例1とも、共重合錯体[A−2]が主に生成する分子量領域である100万(logM=6)において、分岐指数(g’)が1以下になっており、これは、長鎖分岐がその分子量領域に導入されていることを、明示している。中でも、実施例1では、分岐指数(g’)が0.74であり、長鎖分岐が多く導入されていることがわかる。
したがって、本発明によるプロピレン系重合体は、分岐指数(g’)が分子量(M)が100万のところで、0.82以下であることを特徴とし、さらには0.80以下であることを特徴とし、特には0.75以下であることを特徴とする。
本発明のプロピレン系重合体は、分岐量が増大しているために、溶融物性が顕著に改良される。すなわち、高い溶融張力を持つという特徴を有する。溶融張力の指標として、以下の測定方法で測定する溶融張力(MT)と、伸長粘度の測定における歪硬化度(λmax)で表すことができる。
溶融張力(MT)の測定方法について説明する。
東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、下記の条件で樹脂を紐状に押し出して、ローラーに巻き取っていった時にプーリーに検出される張力を溶融張力(MT)とする。
キャピラリー:直径2.1mm
シリンダー径:9.6mm
シリンダー押出速度:10mm/分
巻き取り速度:4.0m/分
温度:190℃
ここで、MTの値が大きい方が、溶融張力が高いことを意味する。
本発明のプロピレン系重合体は、分子量分布を広げ分岐を導入することにより、溶融張力が改善されており、したがって、MTは、60g以上であることが好ましい。
歪硬化度(λmax)は、溶融時強度を表す指標であり、この値が大きいと、溶融張力が向上する効果がある。その結果、例えば、ブロー成形の時に偏肉がおきにくい。また、発泡成形を行ったときに、独立気泡率を高くできる。
したがって、この歪硬化度は、20.0以上であることが好ましい。
装置:Rheometorics社製 Ares
冶具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
測定温度:180℃
歪み速度:0.1/sec
試験片の作成:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mm、のシートを作成する。
歪み速度:0.1/secの場合の伸長粘度を、横軸に時間t(秒)、縦軸に伸長粘度ηE(Pa・秒)を両対数グラフでプロットする。その両対数グラフ上で歪み硬化を起こす直前の粘度を直線で近似し、歪量が4.0となるまでの伸長粘度ηEの最大値(ηmax)を求め、また、その時間までの近似直線上の粘度をηlinとする。
図3は、伸長粘度のプロット図の一例である。ηmax/ηlinを、λmaxと定義し、歪硬化度の指標とする。
JIS K6758のポリプロピレン試験方法のメルトフローレート(試験条件:230℃、荷重2.16kgf)に従って、測定した。単位はg/10分である。
重量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって得られるものであるが、その測定法、測定機器の詳細は、以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
なお、得られたクロマトグラムのベースラインと区間は、図2のように行う。
また、GPC測定で得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー社製の以下の銘柄である。
銘柄:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
上記本明細書記載の方法で行った。
(1)成分[A−1]の合成:
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:
(1−1)4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの合成:
500mlのガラス製反応容器に、4−i−プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4−ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に4−(4−i−プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO200mlを加え、ここにN−ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p−トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、2−メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME100mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2−ブロモ−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン19.8gg(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。−70℃に冷却し、1−メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn−ブチルリチウム−n−ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス−メタノール浴で−70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン−ヘキサンで再結晶を行い、ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についての1H−NMRによる同定値を以下に記す。
1H−NMR(C6D6)同定結果:
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
rac−ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウムの合成は、特開平1−319489号公報に記載の方法にしたがって、実施した。
(3−1)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
セパラブルフラスコ中で蒸留水2264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)4Lを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーを蒸留水4000g加えた後にろ過したところケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ上固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5〜6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理スメクタイト220gを得た。
この化学処理スメクタイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
その後、触媒成分として使用する前に、200℃減圧乾燥を5時間実施して、以下の触媒調製で使用した。
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上記で化学処理したイオン交換性層状珪酸塩10gを入れ、ヘプタンを66mL加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を34mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで洗浄(残液率1/100まで)し、全容量を50mLとした。
その後、トリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.60mL)を加え、次に、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−i−プロピルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.105mmol)のトルエン溶液(21mL)を加え、更に5分後にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.26mL)を加えた後、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ{ジメチルシリレンビス(2,4−ジメチルシクロペンタジエニル)}ハフニウム(0.045mmol)のトルエン(9.0mL)溶液を加えてスラリーとしたものを加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後ヘプタンを420mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃に安定させた後にプロピレンを10g/時の速度でフィードし2時間、40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃で1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒17.2gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.58であった。
3Lオートクレーブに加熱下窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(144mg/mL)2.86mLを加え、液体プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。
その後、上記で合成した予備重合触媒を、予備重合ポリマーを除いた重量で200mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。
その結果、280gの重合体が得られた。得られた重合体(ポリマー)の分析結果を表1に纏めた。また、3D−GPC測定の結果を図1に示す。
(1)錯体合成
(1−1)rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11―240909号公報の実施例1に記載の方法と同様に、実施した。
rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウムの合成は、特開2009−57542号公報に記載の方法にしたがって、実施した。
3つ口フラスコ(容積1L)中に、実施例1で合成したイオン交換性層状珪酸塩10gを入れ、ヘプタンを66mL加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を34mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで洗浄(残液率1/100まで)し、全容量を50mLとした。
その後、トリイソブチルアルミニウム(0.42mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.60mL)を加え、次に別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−インデニル}]ハフニウム(0.105mmol)のトルエン溶液(21mL)を加え、更に5分後にトリイソブチルアルミニウム(0.18mmol:濃度140mg/mLのヘプタン溶液を0.26mL)を加えた後、別のフラスコ(容積200mL)に調整していた、rac−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル}]ハフニウム(0.045mmol)のトルエン(3.0mL)溶液を加えてスラリーとしたものを加え、60分室温で攪拌し反応させた。その後ヘプタンを170mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃に安定させた後にプロピレンを5g/時の速度でフィードし2時間、40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、40℃で1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、上記デカンテーションにより残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度144mg/mLのヘプタン溶液を8.5mL)を加えて10分攪拌した。
この固体を2時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒28.7gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.87であった。
尚、比較例1は、本発明者らによる前記特許文献10の実施例を追試したものである。
3Lオートクレーブに加熱下窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却した。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(144mg/mL)2.86mLを加え、水素を70Nml、次いで液体プロピレン750gを導入した後、70℃まで昇温した。
その後、上記で合成した予備重合触媒を、予備重合ポリマーを除いた重量で100mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送し、重合を開始した。70℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止した。
その結果、339gの重合体が得られた。分析結果を表1に纏めた。また、3D−GPC測定の結果を図1に示す。
本発明の特定の2種の錯体を含む触媒を用いた実施例1と、既知の2種の錯体を用いた比較例1の3D−GPCの結果を比較すると、実施例1の場合の方が発泡特性に有用な高分子量領域で、例えば分子量(M)が100万(logM=6)付近の分岐指数(g’)が低い値になっていることがわかる。これは、実施例1が比較例1より分岐量が増大していることを示しており、このことから実施例1のポリマーは、比較例のポリマーよりも溶融物性が改良されていると、考察できる。
Claims (8)
- 少なくとも下記[A]〜[C]に示す成分を含む触媒の存在下に、プロピレン重合を行うことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
[A]:周期律表4族の遷移金属化合物である次の成分[A−1]及び[A−2]からそれぞれ選択される少なくとも二種の遷移金属化合物。但し、成分[A−1]と[A−2]との合計モル量に対する[A−1]のモル量の割合が0.20〜0.99である。
[A−1]一般式(a1)で表される化合物
[A−2]一般式(a2)で表される化合物
[B]:アルミニウムオキシ化合物[B−1]、上記遷移金属化合物[A]と反応してカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸[B−2]、固体酸微粒子[B−3]、およびイオン交換性層状珪酸塩[B−4]からなる化合物群から選ばれる少なくとも一種。
[C]:有機アルミニウム化合物。 - 成分[B]がイオン交換性層状珪酸塩[B−4]であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- イオン交換性層状珪酸塩[B−4]がスメクタイト族であることを特徴とする請求項2に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- 成分[A−2]のM2がハフニウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- 成分[A]および成分[B]、または成分[A]、成分[B]および成分[C]の存在下、オレフィンを接触させて、オレフィンを成分[B]に対し重量比で0.01〜100の範囲で予備重合した触媒を用いて、プロピレン重合を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- プロピレン重合は、プロピレンを溶媒として用いるバルク重合、またはプロピレンをガス状に保つ気相重合で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- 重合プロセスが単段重合であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
- 分子量(M)が100万(logM=6)における分岐指数(g’)が0.82以下である重合体を製造することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
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