JP5621254B2 - 含油廃水の処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、含油廃水の処理方法に関し、詳しくは、有機凝結剤と高分子凝集剤を使用する含油廃水の処理方法に関する。
自動車製造工場、製鐵所、紙パルプ製造業、クリーニング、砂利産業、その他の化学工場等で発生する廃水の凝集処理としては、一般的に、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等アルミ系ないし鉄系の無機凝集剤を添加した後に更に高分子凝集剤を添加して凝集フロックを生成させ、次いで、凝集沈殿又は凝集浮上法で処理する方法が採用されている。そして、浄化された処理水は、河川や下水に放流されるのが一般的である。
ところで、放流水質の規制強化に伴い、処理装置の改良や廃水処理方法の改善により、水質の向上が図られており、無機凝集剤添加量の増加が不可欠となっている。ところが、無機凝集剤の使用量を増加させると、薬品コストの増加、発生汚泥量の増加並びに発生汚泥処理コストが増大することになる。また、廃水中には色々なコロイド物質及び溶解性有機物が含まれる為、廃水の種類によっては単に無機凝集剤の添加量を増やしても処理水の水質に不安が残る場合がある。
上記のような状況下で処理水の水質を維持・向上しつつ、無機凝集剤使用量の低減を目的にカチオン性凝集剤の一種である有機凝結剤の適用が進められている。有機凝結剤は、分子内に多数のカチオン基を有する高分子電解質であるので、無機凝集剤と同様に被処理水中の懸濁物質の荷電を中和する目的で使用される。しかも、有機凝結剤は、無機凝集剤よりもカチオンの電荷密度が高いために、その凝結作用は無機凝集剤よりはるかに大きいという特徴を持っている。また、有機凝結剤は懸濁物質を中和するだけでなく、負に帯電しているフミン酸等の溶解物質と反応して不溶性塩を形成する作用があり色度及びCODの減少効果も期待される。
現在使用されている有機凝結剤の代表的なものとしては、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体等低分子量、強カチオン密度の水溶性ポリマーが挙げられる。更に、新規な有機凝結剤として色々な重合体及び廃水処理方法が提案されている。
例えば、固有粘度0.002〜0.5dl/gのアルキルアミン−エピクロロヒドリン縮合物、固有粘度0.01〜0.5dl/gのポリジメチルジアリルアンモニウムハライド及び固有粘度0.05〜1.0dl/gのポリジメチルアミノアルキル(メタ)アクリレートの内、何れかの荷電調整剤を添加した後に高分子凝集剤を使用して凝集処理する脱墨排水の処理方法(特許文献1)、無機凝集剤とポリメタアクリル酸エステル系のカチオン高分子凝集剤及びアニオン系高分子凝集剤を使用する処理方法(特許文献2)が提案されている。
しかしながら、上記の何れの方法も含油廃水に適用した場合には次のような問題がある。すなわち、上記の前者の方法における荷電調整剤は、フロックが小さく、凝集効果が良好とは言えない。なお、脱墨廃水の場合に優れた凝集効果が奏されるのは、脱墨廃水に含まれる繊維分が凝集助剤として作用し凝集効果を増しているものと考えられる。また、上記の後者の方法に従って高分子量のカチオン高分子凝集剤の使用より、凝集効果が増してフロックは大きく分離性は良好になるものの、処理水の油分等の水質が不十分である。
特開平10−118660号公報 特開2004−249182号公報
従って、廃水の凝集処理において使用される有機凝集剤に関しては、(1)無機凝集剤の使用量をより削減できること、(2)良好な凝集フロックを形成し、固液分離性に優れること、(3)良好な処理水質(COD、油分、SS等)が得られること、(4)実装置における適正な反応条件の設定が容易で、安定していること、(5)処理コストがより低く出来ること等が求められている。
本発明者らは、上記実情に鑑み、カチオン性を有する種々の水溶性ポリマーを使用して種々検討を重ねた結果、特定の種類の有機凝結剤と高分子凝集剤により含油廃水を凝集処理するならば良好な水質を得ることが出来るとの知見を得、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の要旨は、含油廃水にジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩を60〜100モル%含有するジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩モノマー単独或いはノニオン性モノマーとの共重合物であり且つ固有粘度が1.0〜3.0dl/gである重合体から成る有機凝結剤を添加し、次いで、アニオン性、カチオン性或いは両性高分子凝集剤を添加し、生成した凝集フロックを浮上分離することを特徴とする含油廃水の処理方法に存する。
本発明の処理方法によれば、無機凝集剤を添加しない、或いは少量の添加量により、良好な凝集フロックを生成し、良好な水質の処理水を得ることが出来る。特に、処理水中の油分を削減することが可能になる。更に、汚泥発生量がされるとことに加え、加圧脱水における脱水性が向上し、汚泥圧入速度の向上と脱水ケーキ含水率が低下し、トータルの廃水処理コストが大幅に低減する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で対象となる含油廃水としては、洗濯廃水、石油精製工場廃水、油田廃水、製鉄所の圧延工程廃水等が例示される。これら含油廃水中に含まれる油分は、10〜3,000mg/lが一般的である。本発明の処理方法は、油分50〜1,000mg/l含油廃水に好適であるが、油分量は限定されるものではない。
本発明において有機凝結剤として使用する重合体は、カチオン性の水溶性ポリマーであり、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩モノマー単独或いはノニオン性モノマーとの共重合物である。また、ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩必須成分として含めば他のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートモノマー成分を共重合させても構わない。ノニオン性のモノマー単位としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらの中ではアクリルアミドが好ましい。
上記の重合体(カチオン性の水溶性ポリマー)におけるジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の含有量は60〜100モル%であるが、好ましくは80〜100モル%である。ジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩の含有量が60モル%未満の場合は、処理水の油分除去率が低下する。なお、上記の重合体(カチオン性の水溶性ポリマー)の重合方法としては、沈殿重合、塊状重合、分散重合、水溶液重合等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
また、上記の重合体(カチオン性の水溶性ポリマー)の分子量は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃で測定した固有粘度として、1.0〜3.0dl/gであるが、好ましくは1.5〜2.5dl/gである。固有粘度が1.0dl/g未満の場合は、凝集力が弱くなり処理水の油分除去率が低下し、3.0dl/g超過の場合は、反応性が悪くなり凝集フロックは粗大になるが、処理水の油分除去率は低下する。
本発明においては、有機凝結剤の粘性の低下や反応性の向上のために固体酸を添加することが出来る。固体酸としては、スルファミン酸、酸性亜硫酸ソーダ等が一般的に使用される。
また、本発明においては、上記の有機凝結剤に他の有機凝結剤を混合して2種以上の有機凝結剤を使用することが出来る。この場合、他の有機凝結剤としては、以下の一般式(I)で表されるジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート系ポリマーが好ましいが、他の組成の有機凝結剤を使用しても構わない。他の組成の有機凝結剤としては、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体等が例示される。
Figure 0005621254
一般式(I)中、R及びRは炭素数1〜4のアルキル基であり、それぞれ同一であっても、異なってもよい。RはHまたはアルキル基またはベンジル基であり、(Xは、陰イオンである。
本発明で使用する高分子凝集剤は、特に制限がなく、アニオン性、カチオン性或いは両性の何れの高分子凝集剤であってもよい。アニオン性高分子凝集剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリルアミドとアクリル酸ソーダの共重合物、2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸の重合物またはアクリルアミド等との共重合物等が挙げられる。カチオン性高分子凝集剤としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩とアクリルアミドとの共重合物が挙げられる。また、両性高分子凝集剤としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル4級塩とアクリルアミド及びアクリル酸との共重合物が挙げられる。
本発明においては、含油廃水に有機凝結剤を添加し、次いで、高分子凝集剤を添加する。有機凝結剤より先に高分子凝集剤を添加した場合は良好な処理性能が得られない。通常、含油廃水に有機凝結剤を添加し、例えば30秒〜3分程度十分に攪拌混合し、その後に高分子凝集剤を添加する。
廃水の種類及び処理水の水質レベル等により無機凝集剤を併用する場合と併用せず有機凝結剤と高分子凝集剤で処理する場合がある。無機凝集剤を併用する場合、無機凝集剤は一般的に市販されてアルミ系ないし鉄系の無機凝集剤が使用される。
アルミ系無機凝集剤としては、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミが例示できる。また、鉄系の無機凝集剤としては、塩化第二鉄、ポリ硫酸鉄等が例示できる。
前記した各薬剤の添加は、それぞれ別々の槽を設置して機械攪拌下に行うのが好ましいが、廃水ライン中の廃水に有機凝結剤を添加して凝集槽に導いた後に高分子凝集剤を添加する方法或いは廃水ライン中の廃水に有機凝結剤とて高分子凝集剤を添加位置をずらして添加する方法も採用することも出来る。ライン混合の場合は十分な乱流状態であることが必要であり、不十分な場合にはラインミキサー等の設置も有効である。
各薬剤の添加量は、含油廃水中の含油量により変動するが、有機凝結剤の添加量は通常1〜100mg/lであり、高分子凝集剤の添加量は、通常0.1〜10mg/lである。任意成分の無機凝集剤の添加量は、通常50〜600mg/lである。なお、生成した凝集フロックの浮上分離は常法に従って行うことが出来る。
以下、本発明を実施例および比較例によって更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の諸例で採用した各測定方法は次の通りである。
(1)高分子凝集剤の固有粘度:
固有粘度は、1N硝酸ナトリウム水溶液中、温度30℃の条件で、ウベローデ希釈型毛細管粘度計を使用し、定法に基づき測定した。(高分子学会編,「新版高分子辞典」,朝倉書店,p.107)
(2)フロック径:
凝集フロックのフロック径は、目視により全体の平均を測定した。
(3)浮上性:
フロック径を測定した後、ビーカー中の廃水を20mlの注射器で20ml採取し、再び水面から5cm程度の高さから再び勢いよくビーカーに噴射する。水を噴射すると気泡が発生すると共に水流で拡散し凝集フロックに付着し浮上する。この操作を3回実施する。凝集力が弱いとフロックは破壊され、気泡が付着せずビーカーの底に沈降したり、水中件濁粒子(SS)として水中に浮遊する。1分間静置した後、浮上性を判定し、表面から3cmの深さより処理水を採取し、後述のSS及び油分を測定した。浮上性の判定は、評価方法の判定基準に従い判定し、良好な順に、優、良、可、不可とした。
(4)処理水のSS:
SSは工場廃水試験方法(JISK0102)に基づき測定した。
(5)処理水中の油分:
油分はn−ヘキサン抽出物法により工場廃水試験方法(JISK0102)に基づき測定した。
実施例1〜7及び比較例1〜5:
含油廃水としてD株式会社の洗濯工場廃水を採取して使用した。廃水の性状は、pH=10.3、SS=1,100mg/l、油分=1,050mg/lであった。
先ず、500mlのビーカーに廃水500ml採取し、表1に示す有機凝結剤を表2に示す条件で添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した。有機凝結剤は水に溶解して、0.1〜0.3質量%の水溶液として使用した。
次いで、表1に示す高分子凝集剤を表2に示す条件で添加し、100rpmの回転数で2分間攪拌し凝集フロックを形成させた。高分子凝集剤は水に溶解して、0.1〜0.3質量%の水溶液として使用した。凝集性能試験の結果を表2に示す。
実施例8:
実施例1において、廃水に無機凝集剤(バンド)を添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合し、その後に有機凝結剤を添加した以外は、実施例1と同様の試験条件で凝集性能試験を実施した。結果を表2に示す。なお、無機凝集剤は水で10倍に希釈して使用した。
比較例6及び7:
実施例1において、廃水に表2に示す条件で無機凝集剤(バンド)を添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合し、その後に、有機凝結剤を添加せずに高分子凝集剤を添加した以外は、実施例1と同様の試験条件で凝集性能試験を実施した。結果を表2に示す。なお、無機凝集剤は水で10倍に希釈して使用した。
実施例9〜11:
含油廃水としてT油田の油田廃水を採取し試験を実施した。廃水の性状はpH=8.1、SS=110mg/l、油分=80mg/lであった。
先ず、500mlのビーカーに廃水を500ml採取し、表1に示す有機凝結剤を表3に示す条件で添加し、150rpmの回転数で1分間攪拌、混合した。有機凝結剤は水に溶解して、0.1〜0.3質量%の水溶液として使用した。
次いで、表1に示す高分子凝集剤を表3に示す条件で添加し、100rpmの回転数で2分間攪拌し凝集フロックを形成させた。
前記と同様に凝集性能の評価を行った。結果を表3に示す。
比較例8:
ジメチルアミノエチルアクリレート系の有機凝結剤であるB4を使用し、実施例9〜11と同様の試験条件で凝集性能試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例9:
一般的に有機凝結剤として使用されているジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体であるK1を使用し、実施例9〜11と同様の試験条件で凝集性能試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例10:
表3に示す条件で無機凝集剤と高分子凝集剤を組み合わせて使用し、実施例9〜11と同様の試験条件で凝集性能試験を実施した。結果を表3に示す。
Figure 0005621254
Figure 0005621254
Figure 0005621254
表2及び表3に示す結果から次のことが分かる。
本発明によれば、実施例1〜11に示すように、良好な凝集性能を示し、良好な水質の処理水が得られた。特にジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩のホモポリマーを使用した実施例3〜5は非常に優れた効果を示した。また、若干の無機凝集剤を併用した実施例8も良好な凝集性能と処理水質を示した。
比較例1は、有機凝結剤の組成が本発明で規定する範囲より低いため、フロック径と浮上性は特に問題なかったが、処理水の油分が劣る結果であった。
比較例2は、有機凝結剤の固有粘度が本発明で規定する範囲より低いため、フロックが小さく、浮上性、処理水のSS、油分とも劣る結果であった。
比較例3は、有機凝結剤の固有粘度が本発明で規定する範囲より高いため、フロック径と浮上性には特に問題なかったが、処理水の油分が劣る結果であった。
比較例4及び8は、有機凝結剤としてジメチルアミノエチルアクリレート系のB4を使用したため、フロック径と浮上性には特に問題なかったが、処理水の油分が劣る結果であった。
比較例5及び9は、有機凝結剤として一般的に使用されているジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体であるK1を使用したため、フロックが小さく、浮上性、処理水のSS、油分とも大幅に劣る結果であった。
比較例6及び7並びに10は、無機凝集剤と高分子凝集剤の組み合わせで実施した結果である。そのため、無機凝集剤の所定量の添加量で同程度のフロックが生成し、フロック径と浮上性には特に問題なかったが、処理水の油分が劣る結果であった。

Claims (1)

  1. 含油廃水にジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩を60〜100モル%含有するジメチルアミノエチルメタクリレート塩化メチル4級塩モノマー単独或いはノニオン性モノマーとの共重合物であり且つ固有粘度が1.0〜3.0dl/gである重合体から成る有機凝結剤を添加し、次いで、アニオン性、カチオン性或いは両性高分子凝集剤を添加し、生成した凝集フロックを浮上分離することを特徴とする含油廃水の処理方法。
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