JP5618674B2 - 鉄道橋合成構造および合成化工法 - Google Patents
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Description
また、長年の間に路線に沿って都市化が進んだり人々の環境に対する要求が変化したりして、既設の鉄道橋においても騒音対策が重要な問題になってきた。
なお、車両の運行を停止させることなく、既設の鋼桁を撤去して新しい鋼桁と取り替える方法を開示する文献は見出せなかった。
この方法は、鋼鉄道橋のバラストを入れ替えるときに、最下層に遮音マットを導入すればよいので、比較的短い線路閉鎖時間を取ればよい。ただし、特許文献2には、遮音マットの消音効果や寿命についての具体的な開示がない。
すなわち、本発明の鉄道橋合成構造は、下フランジを持った鋼桁を有する鉄道橋において、ゴムラテックスモルタルを被覆した鋼桁と、FRPパネルの端部を下フランジに固定して形成した底板と、上記鋼桁と上記底板で囲まれた空間に速硬軽量コンクリートを打設して形成されたコンクリート床版とを備えることにより、鋼・コンクリート合成桁を形成したことを特徴とする。
固化した速硬軽量コンクリートの中に、格子状の鉄筋が配置されていてもよい。
さらに、本発明の構成では、騒音の発生源となる鋼桁がコンクリート床版と一体化するため、音や振動を発生させるのにより大きなエネルギーを要し、また、発生する音波の周波数が低下するので、騒音レベルが一層低下する。
また、FRPチャンネルは、そのフランジの部分に穴を開けたり溝床面に突起を形成したりしたものであることが好ましい。これらの穴や突起により、硬化した速硬軽量コンクリートの外形に突起や凹みを形成させて、フランジ部や溝床面の凹凸と係合させることにより、FRPパネルと速硬軽量コンクリートとが互いにずれないようにすることができる。
FRPチャンネルのフランジ同士および鋼桁の下フランジとFRPパネル端部は、接着剤を使用して接合しても良い。また、チャンネルのフランジ同士の接合を助けるために、埋殺バネ金具あるいはステープルを用いることができる。さらに、FRPパネルの端部と下フランジの接合を助けるために埋殺L型部材を用いても良い。
また、鉄筋は、鋼桁に囲まれた領域に持ち込むことができる大きさに形成された格子状部材を、当該領域に持ち込んで、FRPチャンネルのフランジの上、あるいはその上方に配置するようにしても良い。
なお、格子状の鉄筋は、コンクリートのひび割れ防止に大きな効果がある。
図1は本発明の1実施例の鉄道橋合成構造を説明する断面図、図2は本実施例の鉄道橋合成構造の内部構造を説明する一部断面平面図、図3は本実施例に使用する型枠の構成を説明する斜視図、図4は本実施例の鉄道橋合成構造の端部を表示する断面図、図5は本実施例の鉄道橋合成桁化工法を説明する工程図である。
また、図6〜9は、本実施例の鉄道橋合成桁化工法の効果を示すグラフである。
また、本実施例の鉄道橋合成構造は、本発明の1実施例に係る合成桁化工法により車両の運行を妨げずに形成することができ、合成桁化構造の特性とゴムラテックスモルタルの特性とに基づいて耐用年数を大幅に増大し、騒音を大きく抑制することができる。
既設の軌道支持構造は、1対の鋼製の主桁1を跨いで枕木3が載置され、枕木3の上に1対のレール6が固定されるものである。1対の主桁1の間には適宜の間隔で鋼製の横桁2が設けられていて、安定な鋼桁支持構造が形成されている。主桁1には、下端に下フランジ4、上端に上フランジ5が形成されている。
試験体は、主桁1の間隔約1.5m、軌道軸方向の支間長約3.7mで、横桁2により軌道軸方向に3つの部分に仕切られている。また、主桁1の高さ約325mm、主桁1の鋼板の厚さ約15mm、主桁1の上フランジ5の幅135mm、下フランジ4の幅約155mmである。
FRP製チャンネル20は、繊維強化プラスチックで形成されたチャンネルで、軽量で強いばかりでなく、防錆塗装を必要としないので、施工や保守における経済性も優れる。特に、ガラス繊維強化プラスチックは、軽く、強く、腐食せず、また、引抜き成型が可能なため、チャンネルの製造が容易などの利点がある。
チャンネル20は、取り扱いと製造の容易さを考慮して、できるだけ形状と寸法を統一することが好ましい。本実施例では、基本の形状を、幅310mm、長さ1445mm、フランジ21の高さ90mmとし、現場の状況に従って他の寸法のものを加えるようにしたが、チャンネル20の形状は適宜決めて良いことは言うまでもない。
現場における接着は、型枠用接着剤24が固まりチャンネルのフランジ21同士が接合するまで接着部分がずれたりしないようにするため、埋殺バネ金具25やステープル26で接着部分を固定しておくことが好ましい。埋殺バネ金具25やステープル26は、接着固定後も外さず、速硬軽量コンクリート中に埋め込んでおけばよい。
なお、フランジ21の貫通孔22は、隣のチャンネル20のフランジの孔と同じ位置に配置して、フランジ21が接着されるときに、接着されたフランジ同士で貫通孔22の一部が連通して、フランジ21で仕切られた速鋼軽量コンクリート14が貫通孔22の部分で連続するようにしても良い。
チャンネル20の端面下面が主桁1の下フランジ4の上面に接着剤27で接着され固定されて、型枠12が主桁1と横桁で囲まれた空間の底板となる。なお、型枠12を主桁1の下フランジ4に設置し、接着剤27が固まるまでずれないように保持するためのL型部材28が使われていてもよい。L型部材28は、接着固定後も外す必要はなく、速硬軽量コンクリート中に埋め込んでおけばよい。
速硬軽量コンクリートを使うことにより、たとえば夜間の鉄道車両運行休止時間内で十分に固まるので、強度不足でコンクリートが崩壊することを恐れて車両の運行を停止するなどの必要が無い。また、通常のコンクリートより軽量なので、床版の死荷重増分量が低減する。
ゴムラテックスモルタルは、たとえば、セメント、砂、混和剤からなるゴムラテックスパウダー1757kg/m3とSBR(スチレンブタジェンゴム)エマルジョン264kg/m3を配合したものである。あるいは、たとえば、ポルトランドセメントの重量1に対して、4号珪砂1.5、ゴムラテックス(SBR混和材)0.35、収縮防止剤0.02の配合で得ることができる。
施工中に鋼桁が振動すると、一旦付着したゴムラテックスモルタルが落剥する可能性があるので、夜間の運行休止時間中に施工することが好ましい。吹き付け条件を調整することにより、ゴムラテックスモルタルの施工は短時間で完了させることができる。
型枠12は、図2に示すように、主桁間隔を埋める長さを有する複数のチャンネル20を並設して互いにフランジ21同士を接着してパネルの形に構成される。
互いに接着される前のチャンネル20は、たとえば、幅310mm、フランジ高さ95mm、長さ1450mm程度、厚さ5mmの寸法を持つFRPチャンネルで、主桁1と横桁2で囲まれた空間の底の開口、あるいは枕木3の設置された上側の開口から挿入することができる。
この型枠設置作業(S3)は、チャンネル等を桁下面より搬入するなど軌道側への干渉を制限すれば、昼間の間合い作業とすることができる。また、夜間の車両運行が途切れた時間帯に行えば、高い作業性を得ることができる。
網鉄筋13は、型枠12を設置する前に、枕木3などを利用して上から吊して配置するなど、施工上の工夫が期待される。
主桁間隔約1.5m、支間長約3.7mのI型鋼桁を対象とした、型枠設置作業(S3)と網鉄筋設置作業(S4)は、合わせてほぼ1時間で完了した。
こうして、鉄筋入り軽量コンクリートで形成されたコンクリート床版と既設のI型鋼桁が合成された、鋼・コンクリート合成桁を有する鋼鉄道橋が構成される。
なお、図6〜8のグラフにおいて、合成後の理論値は、コンクリート床版を全幅有効で完全合成できたとして得た値である。
結果は、理論値と実測値が良く一致しており、合成桁化した後の変位は鋼桁のみの場合に比較して、約1.3倍の剛性向上を果たしている。
図7によると、下フランジ4においても、合成桁化により剛性が増大することが分かる。ただし、荷重が大きくなると、下フランジ4の剛性の増加量が相対的に低下する傾向が見られる。
また、図8によると、支間中央のたわみや下フランジ4の歪みほど顕著でないものの、上フランジ5でも合成桁化による剛性向上の傾向が確認できる。
さらに、上記試験における計測結果を検討すると、鋼・コンクリート合成桁化により、横桁方向の剛性が向上して応力集中が緩和し各桁の応力が均一化して、剛性値増大による効果以上の延命化が可能になることが分かった。
本実施例の鉄道橋合成構造の騒音抑制効果を確認するため、実際に使用されていたI型鋼桁について本実施例の鉄道橋合成桁化工法により形成した合成桁化構造、すなわち図2に示した試験体の鋼桁を対象として、模擬的に騒音の減衰状況を測定した。
図9は、桁腹板中央に設けた加速度計の出力をFFT(高速フーリエ変換)分析器で解析した結果を示す。縦軸に1/3オクトーブバンド内の騒音レベル(dB)、横軸に1/3オクトーブバンドの中心周波数(Hz)を示す。鋼鉄道橋の構造物音は125〜2000Hzで卓越するので、グラフの横軸はこの範囲を中心に示すように選択した。
オールパス(AP)値も、125〜2000Hzの範囲内で算出している。
図9には、鋼・コンクリート合成桁化前の鋼桁についての測定値と合成桁化後の鋼桁についての測定値を比較できるように示している。
なお、上記説明において、各種成分についてその組成例、各種処理おいてその手順例を挙げているが、これらは具体的に実施した例の一部を参考例として挙げたものに過ぎず、特許請求の範囲の記載に対して成分や処理を制限的に規定するものでないことは言うまでもない。
したがって、本発明の鉄道橋合成構造および合成桁化工法は、既設の鋼鉄道橋の改修をするときに、十分に活用されるべきものである。
2 横桁
3 枕木
4 下フランジ
5 上フランジ
6 レール
11 ゴムラテックスモルタル
12 型枠
13 網鉄筋
14 速硬軽量コンクリート
20 チャンネル
21 フランジ
22 丸孔
23 突起
24 型枠用接着剤
25 埋殺バネ金具
26 ステープル
27 接着剤
28 L型部材
Claims (9)
- 横桁と下フランジを持った主桁とを備えた鋼桁の上に渡した枕木の上にレールを敷いた鋼鉄道橋において、ゴムラテックスモルタルで被覆した前記鋼桁と、FRP(繊維強化プラスチック)パネルの端部を前記フランジに固定して形成した底板と、前記鋼桁と前記底板で囲まれた枡形の空間に所定の深さで速硬軽量コンクリートを打設して形成されたコンクリート床版とを備えることにより、鋼・コンクリート合成桁を形成した鉄道橋合成構造。
- 前記空間の底板はコンクリート型枠で形成される、請求項1記載の鉄道橋合成構造。
- 前記FRPパネルは、並設したFRPチャンネルをチャンネルのフランジ同士で接着してパネルに形成したことを特徴とする、請求項1または2記載の鉄道橋合成構造。
- 前記FRPは、強化繊維としてガラス繊維を用いた、請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄道橋合成構造。
- 前記FRPは、ガラス繊維により強化した不飽和ポリエステル樹脂である、請求項4記載の鉄道橋合成構造。
- 前記FRPパネルの端部は前記下フランジの上面に固定される、請求項1から5のいずれか1項に記載の鉄道橋合成構造。
- 横桁と下フランジを持った主桁とを備えた鋼桁の上に渡した枕木の上にレールを敷いた鋼鉄道橋に対して、該鋼桁をゴムラテックスモルタルで被覆する工程と、FRPチャンネルを前記鋼桁に囲まれた空間に取り込み、該FRPチャンネルを並設してチャンネルのフランジ同士を接合し、該FRPチャンネルの端部を前記下フランジに固定して底板とする工程と、前記鋼桁と前記底板で囲まれた枡形の空間に所定の深さで速硬軽量コンクリートを打設する工程とを備え、鋼桁に囲まれたコンクリート床版を形成することにより、鋼・コンクリート合成桁を形成する鉄道橋合成化工法。
- 前記チャンネルのフランジ同士を接着剤で接合すると共に、接合を助けるために埋殺バネ金具またはステープルを用いて前記チャンネルのフランジ同士を圧着することを特徴とする、請求項7記載の鉄道橋合成化工法。
- 前記FRPチャンネルの端部を接着剤で前記下フランジに固定すると共に、固定の補助のためにL型部材を用いて前記FRPチャンネルの端部を前記下フランジに固定することを特徴とする、請求項7または8に記載の鉄道橋合成化工法。
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