JP5617318B2 - 熱間鋼スラブの幅圧下用金型および幅圧下方法 - Google Patents

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Description

本発明は、板幅プレス装置による熱間鋼スラブの幅圧下において、幅圧下用金型の熱損傷を低減して金型寿命を増大させるとともに、熱延鋼帯の表面品質向上を可能とする熱間鋼スラブの幅圧下用金型および幅圧下方法に関するものである。
熱間鋼スラブの幅変更手段として、連続鋳造プロセスにて製造された鋼スラブを温度が低下しないうちに、あるいは一旦温度が低下した後に、加熱炉に投入して所定の温度まで加熱した状態にて、該熱間鋼スラブの板幅方向に相対峙して設置された一対の金型にて熱間鋼スラブを板幅方向に間欠的に圧下する板幅プレス装置が用いられている。
この板幅プレス装置による幅圧下では、通常、900〜2000mm程度の幅の熱間鋼スラブに対して最大300〜350mm程度の幅圧下が行われており、連続鋳造にて同一幅に鋳造されたスラブより異なる幅の鋼板製品の製造を可能としている。
これにより、連続鋳造プロセスでの幅変更回数の低減、熱間圧延プロセスでのスケジュールフリー圧延の拡大、コイル単重の増大など、鋼板製造プロセスの生産性向上や合理化に大きく寄与しており、そのメリットは板幅プレス装置による幅圧下能力が大きいほど拡大する。
通常、板幅プレス装置の金型は、一対の片方の一例を図3に示すように、安価なダクタイル鋳鉄や、SKDやSKTといった熱間工具鋼等にて一体物として製作され、熱間鋼スラブを所定トン数だけ幅圧下したのちに抜き出し、表面を改削して大きなクラック等の損傷を取り除いて再使用されている。そして、初期形状より所定の改削量に達した時点にて一体物のまま廃却されている。
しかしながら、板幅プレス装置による幅圧下量を増大すると、幅圧下時に金型に入る熱量が増大するため、金型温度が大きく上昇することが不可避となる。通常、熱間圧延ラインでは鋳造ラインよりスラブを直送した後、あるいは加熱炉にて1000〜1250℃程度に加熱した後、粗圧延の前に板幅プレス装置による幅圧下を実施しており、このような温度のスラブに大きな幅圧下を加えた場合には、金型表面温度は瞬間的に800℃程度にまで上昇する。また、加熱炉から出て1000℃以上の高温になっている1本のスラブを全長にわたり幅圧下するためには、間欠的に20サイクル程度の幅圧下(20〜30秒程度)を要するため、金型内部温度の上昇も著しく、金型材の強度低下によって金型表層の損耗が非常に激しくなる。
このため、通常、板幅プレス装置には金型冷却用のノズルが具備され、適宜、外部より金型表面を冷却することにより、過度の温度上昇を抑制している(例えば、特許文献1)。
しかしながら、高温となった金型表面に冷却水を噴射した場合、急激な温度低下による熱収縮により金型表層近傍には大きな引張応力が発生し、これらの加熱、冷却サイクルの繰り返しによって板幅プレスの金型は極度の熱疲労条件下にて使用されている。
このため、金型表層にヒートクラックが発生することが不可避であり、一旦発生した金型表層のクラックは幅圧下による応力振幅、そして加熱冷却による熱応力振幅により一層拡大し、過酷な場合にはクラックが連鎖して局所的に金型が欠け落ちるトラブルが発生している。そして、局所的に表層が欠け落ちた金型にてスラブの幅圧下を継続実施した場合、金型表面の凹凸がスラブ側面に転写し、その凹凸が圧延によって鋼板表面に回り込み、結果として鋼板製品の表面欠陥となることもある。
一方、金型冷却水の飛散により、スラブ表面、特に板幅方向のエッジ角部周辺における温度低下を生じさせることから、局所的な延性の低下、あるいは材質によってはオーステナイト組織からフェライト組織への変態による局所的な軟化が発生し、幅圧下によるスラブ表面割れや局所的な凹凸変形を生じさせることがある。このような状態のスラブを粗圧延、仕上圧延に供した場合、表面割れ部の拡大、局所的な凹凸部の倒れこみ等の現象が発生し、鋼板製品の板幅エッジ近辺に長手方向の線状欠陥が発生することがある。
このようなことから、特許文献1では、幅圧下中は金型を緩冷却し、当該スラブの幅圧下終了後、次スラブの圧下を開始するまでの間に金型の強冷却を行うことを開示している。
また、あらかじめワイヤー放電加工等によって金型表面にスリット加工を施し、スラブとの接触による加熱と金型冷却によって発生する熱応力を緩和した金型(例えば、特許文献2)、金型圧下面の特にクラックが多発する領域(スラブ進行方向入側の平行部と傾斜部の境界付近)に耐クラック性の高い合金鋼を部分的に肉盛した金型(例えば、特許文献3)等が開示されている。
その他、金型を3層構造とし、中間層に断熱材を組み込んで金型外層(金型と接触する部分)の温度とスラブ温度との差を小さくし、熱衝撃を緩和する金型が開示されている(例えば、特許文献4)。
特開昭63−5837号公報 特開2004−306119号公報 特開2004−17076号公報 特開2000−202561号公報 特開平10−156402号公報 特公平5−47611号公報 特開2002−60907号公報 特開2005−330583号公報
しかし、前記した従来技術(特許文献1〜4に開示の技術)は、各々以下のような問題点を有していた。
まず、特許文献1に開示されている技術では、幅圧下中も金型緩冷却を実施していることから、例えば極低炭素鋼のようにオーステナイト組織からフェライト組織への変態温度が高い材料では、スラブエッジ角部周辺の温度低下によって軟化が生じ、幅圧下による局所的な凹凸変形を生じさせる危険性が大きい。
このため、例えば、特許文献5では、少なくとも板幅プレス装置による幅圧下中は金型に冷却水を噴射せず、当該スラブの幅圧下終了後、次スラブの圧下を開始するまでの間のみ冷却を実施することが提案されている。
しかしながら、特許文献5の技術では、スラブの圧延ピッチを早めて生産性の高い操業を行った場合、スラブ間での金型冷却だけでは不十分で、大量生産によって金型表面温度が順次上昇し、結果としてヒートクラックが発生しやすいという問題点があった。
また、特許文献2に開示されている技術では、熱応力緩和のために金型表面にスリット加工を施しているものの、本発明者らの検討では、スリットのような細溝の底部(ノッチ部)では、加熱冷却サイクルにて大きな熱応力が発生しやすく、かつヒートクラックがスリット間を連鎖した場合には容易に欠け落ちが発生しやすいという問題点を有していることを見出した。
また、特許文献3に開示されている技術では、金型表面の熱損傷の大きな領域、すなわちスラブ進行方向入側の平行部と傾斜部との境界近辺に耐クラック性の高い合金鋼を部分的に肉盛していることから、熱応力による金型損傷は大幅に改善されるものの、合金鋼の肉盛溶接作業とその後の機械加工による表面の仕上加工に多大の時間を必要とすることから、熱延ラインの高生産性を維持するためには数多くの金型セットを保有しなければならないという問題点がある。
そして、特許文献4に開示されている技術では、中間層に断熱材を組み込んで金型外層(金型と接触する部分)の温度とスラブ温度との差を小さくして熱衝撃を緩和することを目的としているが、本発明者らの検討によると、この技術では金型中間層が断熱されて外層材に熱が蓄積されることから、外層材の温度が上昇しすぎて強度が極度に低下するため、金型表面に大きな塑性流動が発生し、金型寿命が極端に短くなることが不可避であることを確認している。
本発明は、上述した従来技術(特許文献1〜5に開示の技術)の問題点を克服すべく鋭意検討を重ねてなされたものであり、板幅プレス装置の金型の表面損傷を防止して寿命を大幅に延長することにより、熱間圧延ラインの生産性の向上、金型損傷に起因する製品表面欠陥の発生防止、金型原単位の大幅改善等を可能とする、熱間鋼スラブの幅圧下用金型および幅圧下方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を重ね、熱損傷による寿命を劇的に改善することが可能である、熱間鋼スラブの幅圧下用金型と熱間鋼スラブの幅圧下方法を見出した。
すなわち、上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
[1]熱間鋼スラブの板幅方向に相対峙して設置され、熱間鋼スラブを板幅方向に間欠的に圧下する幅圧下用金型であり、スラブ圧下面より、外層、中間層、内層の3層構造からなり、金型中間層の内部、または/および、金型中間層と金型内層との境界に、金型の外部より冷却水を供給、循環、排出させる複数の水冷孔を有することを特徴とする熱間鋼スラブの幅圧下用金型。
[2]前記[1]に記載の熱間鋼スラブの幅圧下用金型を用いたスラブの幅圧下方法であり、当該スラブの幅圧下の途中において、または/および、当該スラブの幅圧下の終了後から次スラブの幅圧下を開始するまでの間において、前記水冷孔に冷却水を循環させて金型中間層の冷却を行うことを特徴とする熱間鋼スラブの幅圧下方法。
本発明によれば、板幅プレス装置による熱間鋼スラブの幅圧下において、幅圧下用金型の熱損傷を低減して金型寿命を増大させるとともに、熱延鋼帯の表面品質向上、金型原単位の向上等をもたらすことが可能となる。
すなわち、本発明においては、スラブ幅圧下数の累積にともなう金型中間層の温度上昇を低減し、金型外層に入熱した熱量をより効率的に金型内部に拡散させることが可能となる。そして、金型外層の温度上昇を大幅に低減することが可能であり、かつスラブ幅圧下中においても内部水冷方式にて金型冷却が可能であることから、金型の外部水冷方式を前提としてなされた特許文献5の技術にて課題になると考えられる高生産性操業下でのヒートクラックの発生を防ぐことが可能である。
本発明の実施形態1における熱間鋼スラブの幅圧下用金型一対の片方を示す図である。 本発明の実施形態1における熱間鋼スラブの幅圧下用金型一対の片方を示す図である。 従来の一体構造の熱間鋼スラブの幅圧下用金型一対の片方を示す図である。
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態1における熱間鋼スラブの幅圧下用金型F1の一対の片方の構造を示す図であり、図2は、本発明の実施形態2における熱間鋼スラブの幅圧下用金型F2の一対の片方の構造を示す図である。図1、図2に示すように、この実施形態1、2における熱間鋼スラブの幅圧下用金型F1、F2は、いずれも外層1、中間層2、内層3から構成されている。
ちなみに、図3に示したように、従来、熱間鋼スラブの幅圧下用金型Zはダクタイル鋳鉄やSKDやSKTといった熱間工具鋼等にて一体物として製作され、使用後には一体物として廃却されている。
しかしながら、本発明者らの調査によると、ヒートクラックにて損傷を受けているのは金型圧下面(スラブ圧下面)6から50〜100mm深さ程度までの範囲であり、金型材の大部分は無駄に廃却されてしまっているのが通常である。
これに対して、この実施形態1、2における熱間鋼スラブの幅圧下用金型(複層金型)F1、F2では、熱間鋼スラブとの接触によって最も損傷の激しい外層1を独立させることにより、外層1の損傷によって寿命と判断した場合には外層1のみを交換すればよく、中間層2と内層3は継続して使用することが可能である。
以下、この複層金型F1、F2の特徴を大幅に向上させるため、外層1、中間層2、内層3に望ましい材料特性について説明する。
まず、複層金型F1、F2の外層1への適用材として、従来より使用されている熱間工具鋼(鍛造用合金工具鋼SKTや熱間ダイス用合金工具鋼SKD等)を用いてもよいが、高温強度の高い耐熱合金鋼の適用が好ましい。
これは、金型表層近辺の加熱冷却サイクルでの温度振幅を低減するため、外部からの金型冷却水の使用は必要最小限とすることが重要であり、この観点から外層1には高い高温強度を有する材料が好適であるためである。
従来、熱間プレス用金型材としてNi基耐熱合金等が開発されており(例えば、特許文献6、7)、例えば、これらの材料をこの実施形態1、2による複層金型F1、F2の外層1に適用すればよい。
また、この実施形態1、2では外層1の厚み(スラブ幅方向の厚み)を特に規定するものではないが、一般に耐熱合金鋼の熱伝導率は20〜30W/(m・K)と低いことから、金型表層に急峻な温度分布がつきやすいため、外層1の厚さは50mm程度以下(好ましくは30mm以下)として中間層2への熱拡散を促進することが好ましい。
次に、複層金型F1、F2の中間層2への適用材としては、熱伝導性の高い材料が好適であり、銅系合金、あるいはアルミ系合金等の材料が好適である。
板幅プレス装置による幅圧下では、幅圧下中に中間層2付近の領域に加わる機械的な応力はそれほど大きくないことから、中間層2に用いる材料の強度は最低でも鋳鉄並みであれば十分である。この実施形態1、2では、強度と熱伝導性の高さの観点から銅系合金、あるいはアルミ系合金に着目して鋭意検討を行った結果、例えばCrを含有したCu−Cr合金などが好適であることを見出した。一例として、特許文献8にて開示されているCu−Cr合金では、Cr含有量と製造条件によってその特性が変化するものの、熱伝導率は134〜350W/(m・K)であることが開示されており、外層1に用いる耐熱合金鋼の10倍程度と非常に大きな熱拡散性能を有しているものである。
なお、この実施形態1、2では中間層2の厚み(スラブ幅方向の厚み)を特に規定するものではないが、金型製作費や熱拡散性能に応じ、適宜、適切な厚みを設定すればよい。
一方、この実施形態1、2では内層3に用いる材料は特に限定されるものではなく、例えば、一般の機械構造用鋼や鋳鉄など、安価な材料を用いればよい。
そして、この実施形態1における複層金型F1では、図1に示すように、中間層2の内部に金型F1の外から冷却水を供給、循環、排出させるために、中間層2の厚み中間位置近辺に複数の水冷孔4を有している。
同様に、この実施形態2における複層金型F2では、図2に示すように、中間層2と内層3との境界に金型F2の外から冷却水を供給、循環、排出させるために、内層3の表面に凹溝加工による複数の水冷孔(水冷溝)5を有している。
このように、複層金型F1、F2の内部に冷却水を供給、循環、排出させる(以後、内部水冷と呼ぶ)のは、熱伝導率の大きな中間層2の温度上昇を低減することによって効率良く外層1から中間層2へ抜熱するためである。
なお、図1、2では、金型長手方向(スラブ進行方向)の全長にわたって水冷孔4、5を配置した例を示しているが、一般に、板幅プレス装置の金型ではスラブ進行方向入側の平行部と傾斜部の境界付近での熱損傷が著しいことから、各ラインでの金型損傷の形態に応じ、適宜、水冷孔4、5の配置を決定すればよい。
そして、複層金型F1、F2の内部水冷は、当該スラブの幅圧下の途中(バー内)において、または、当該スラブの幅圧下の終了後から次スラブの幅圧下を開始するまでの間(バー間)において、あるいは、その両期間(バー内およびバー間)において、スラブの圧延ピッチに応じて、適宜、水冷孔4、5に冷却水を循環させて中間層2の冷却を行うようにすればよい。
ここで、外層1と中間層2、および、中間層2と内層3は冶金的に接合する必要はなく、例えば、3層(外層1、中間層2、内層3)を貫通するボルトによって締結するなどして構成すればよい。
従来の金型Zは一体物であることから、急峻な温度分布によって発生する熱歪が拘束しあうことによって大きな熱応力が発生していたが、この実施形態1、2による複層金型F1、F2では冶金的な接合を行わないことから、各層間の境界にて熱歪の拘束が著しく低減され、結果として熱疲労による応力振幅が小さくなって金型損傷が劇的に改善される効果も有している。
また、外層1の損耗が激しくなった場合には、従来の金型Zに比べ、外層1は小型軽量で済むことから、あらかじめ製作済みのものと交換すればよく、短時間での修復が可能であり、従来のように金型表面の改削加工に時間がかかるために数多くの金型セットを保有して交換しつつ幅プレスする必要がない。そして、中間層2と内層3は継続して使用することが可能であることから、金型を一体物として廃棄していた従来技術に比べ、大幅な金型原単位の改善が可能である。
なお、実施形態1の幅圧下用金型F1と実施形態2の幅圧下用金型F2とを組み合わせて、中間層2の厚み中間位置近辺に複数の水冷孔4を設けるとともに、内層3の表面に凹溝加工による複数の水冷孔(水冷溝)5を設けるようにしてもよい。
本発明の効果について、表1に示した実施例に基づいて説明する。なお、以下に示す熱伝導率は常温における値である。
本発明によるスラブ幅圧下用金型(本発明例)として、上記の本発明の実施形態1に基づいて2種類の金型を準備し、長期間にわたる熱間鋼スラブの幅圧下試験を実施した。
まず、本発明例1として、外層にNi基耐熱合金SUH660(熱伝導率15W/(m・K))、中間層にCu−Cr合金(熱伝導率200W/(m・K))、内層に機械構造用鋼S45C(熱伝導率50W/(m・K))を用いた。
また、本発明例2として、外層にNi基耐熱合金SUH660(熱伝導率15W/(m・K))、中間層に熱間ダイス用合金工具鋼SKD62(熱伝導率20W/(m・K))、内層に機械構造用鋼S45C(熱伝導率50W/(m・K))を用いた。
なお、本発明例1、2ともに、金型の内部水冷は、バー内、バー間のいずれも実施した。そして、バー内においては金型表面を冷却するための外部からの冷却は一切実施せず、バー間においては弱冷条件にて外部からの冷却を実施した。
一方、比較例1として、従来から使用されているダクタイル鋳鉄(熱伝導率17W/(m・K))の一体構造金型を準備し、同様に熱間鋼スラブの幅圧下試験を実施した。
また、比較例2として、従来から使用されているSKD62(熱伝導率20W/(m・K))の一体構造金型を準備し、同様に熱間鋼スラブの幅圧下試験を実施した。
なお、比較例1、2では、従来通り、バー内では幅圧下間にて金型表面の弱冷を実施するとともに、バー間では金型表面の強冷却を実施した。
そして、金型熱損傷の評価は、まず、スラブ重量にして約1万トンの幅圧下を実施した後の表面状態を目視で確認し、目視で表面亀裂が認められない場合を○、本数によらず長さ5cm未満の亀裂の発生が認められた場合を△、本数によらず長さ5cm以上の亀裂が認められた場合を×とした。
その結果、比較例1(ダクタイル鋳鉄の一体金型)では、既に亀裂が亀甲状となり始めており、5cm以上の長さのものも複数本発生していた。また、比較例2(SKD62の一体金型)では、長さは5cm未満ではあるが、多数の亀裂の発生が認められた。
これに対して、本発明例1、2では、いずれもスラブ重量にして1万トン程度の幅圧下量では、外層表面に亀裂の発生は認められなかった。
さらに、適宜、金型の表面状態を確認しながら試験を継続したところ、比較例1(ダクタイル鋳鉄一体金型)では、スラブ重量にして約5万トンにて、比較例2(SKD62一体金型)では、スラブ重量にして約7万トンにて、それぞれ長さ5cm以上の大亀裂が多数発生していることが認められたため、金型交換寿命と判断した。
これに対して、本発明例1、2では、長さ5cm以上の亀裂はほとんど見られなかったため、目視にて摩耗による金型の表面凹凸が顕著となった状態を金型交換寿命と判断することとし、本発明例1では、スラブ重量にして約24万トンにて、本発明例2では、スラブ重量にして約12万トンにて、交換寿命と判断した。
この結果、本発明例1、2では、比較例1、2に対して約2〜4倍程度の交換寿命となり、金型の長寿命化が可能であることが確認できた。
Figure 0005617318
F1 熱間鋼スラブの幅圧下用金型(複層金型)の一対の片方
F2 熱間鋼スラブの幅圧下用金型(複層金型)の一対の片方
1 外層
2 中間層
3 内層
4 水冷孔
5 水冷孔(水冷溝)
6 金型圧下面(スラブ圧下面)
Z 熱間鋼スラブの幅圧下用金型(一体構造金型)の一対の片方

Claims (2)

  1. 熱間鋼スラブの板幅方向に相対峙して設置され、熱間鋼スラブを板幅方向に間欠的に圧下する幅圧下用金型であり、スラブ圧下面より、耐熱合金を用いた外層、熱伝導性の高い銅系合金あるいはアルミ系合金を用いた中間層、一般の機械構造用鋼を用いた内層の3層構造からなり、金型中間層の内部、または/および、金型中間層と金型内層との境界に、金型の外部より冷却水を供給、循環、排出させる複数の水冷孔を有することを特徴とする熱間鋼スラブの幅圧下用金型。
  2. 請求項1に記載の熱間鋼スラブの幅圧下用金型を用いたスラブの幅圧下方法であり、当該スラブの幅圧下の途中において、または/および、当該スラブの幅圧下の終了後から次スラブの幅圧下を開始するまでの間において、前記水冷孔に冷却水を循環させて金型中間層の冷却を行うことを特徴とする熱間鋼スラブの幅圧下方法。
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