JP5617314B2 - 車両の運動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、運転者が障害物等を回避する際に、制動力制御によって緊急回避性能を向上する車両の運動制御装置に関する。
特許文献1には、運転者が障害物等を回避するため操舵操作(ステアリング操作)を行った場合に、車輪の制動力を利用して車両の進行方向を速やかに変更できるようにする車両の制動力制御装置を提供することを目的として、緊急回避操舵操作が検出されたときに操舵操作方向への車両の進行方向変化を車輪ブレーキの制動力によって発生させ、車両のヨーレイトを所定時間積分して得られる車両の進行方向変化量が敷居値に達したときに制動力制御を終了することが記載されている。
さらに、路面摩擦係数の増加に応じて制動力の発生量が増加するように、制動力発生量が路面摩擦係数に応じて補正され、車両が横滑りを起こし難い高路面摩擦係数路の走行中には、大きな制動力により大きなヨーモーメントを発生させて障害物の回避を確実に行うことが記載されている。
特許文献2には、衝突危険の発生に対応する自動制動に際して、路面状況の変動や自動制動中の運転者の操舵操作等にかかわらず安定した車両走行制御を実施するため、車両を減速するべきであるかどうかを判断し、減速するべきであると判断した場合に、路面摩擦係数に基づいて推定される推定最大制動力よりも所定割合だけ小さく設定された制動力での自動制動を行うことが記載されている。
特許第3784436号公報 特開2004−189075号公報
例えば、路面摩擦係数を検出する方法としては、加速度(前後加速度、横加速度)の信号が用いられる。この場合、車輪の発生力(前後力、横力)が限界(摩擦限界)に達して後、路面摩擦係数の検出が初めて可能となる。摩擦限界に到達して後に得られる路面摩擦係数を用いて上記制動制御が実行された場合、十分な制御効果を発揮できない場合がある。カメラ等で路面性状を検出して、車輪が摩擦限界に達する前に路面摩擦係数を検出する方法も存在するが、路面摩擦係数の検出精度は十分ではなく、装置全体が高価となる問題も存在する。
本発明の目的は、運転者が障害物等を回避する緊急操舵において、路面の摩擦係数を用いることなく、路面状態に応じた好適な制動力制御を実行できる車両の運動制御装置を提供することである。
本発明に係る車両の運動制御装置は、制動手段(MBR)と、緊急操舵取得手段(MKQ)と、制御手段(CTL)と、車輪速度取得手段(VWA)と、スリップ抑制手段(SLP)とを備える。制動手段(MBR)は、車両の車輪(WH[**])に制動トルクを付与する。緊急操舵取得手段(MKQ)は、前記車両の操舵状態が緊急操舵である(Kqs=1)か、否か(Kqs=0)を取得する。制御手段(CTL)は、前記緊急操舵取得手段(MKQ)が、前記緊急操舵であること(Kqs=1)を取得した場合において、前記制動手段(MBR)を介して、前記車輪に付与される制動トルク(Pwt[**],Pwu[**],Pwa[**])を増加する。車輪速度取得手段(VWA)は、前記車輪(WH[**])の回転速度である車輪速度(Vwa[**])を取得する。スリップ抑制手段(SLP)は、前記車輪速度(Vwa[**])に基づいて、前記車輪(WH[**])の過大な前後スリップを抑制する。
そして、前記制御手段(CTL)は、前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において内側の前輪(WH[fi])に前記スリップ抑制制御が実行される場合に、前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において外側の前輪(WH[fo])に対する前記制動トルク(Pwt[fo],Pwu[fo],Pwa[fo])の増加量を制限する制限制御を行うように構成される。
また、前記制御手段(CTL)は、前記緊急操舵によって変動する前記車輪の接地荷重(Fz[**])を、前記緊急操舵であること(Kqs=1)が取得された場合に適用される予め設定された関係(所定値fz1,実横加速度Gya、或いは、計算横加速度Gyeに基づく演算マップ)に基づいて予測し、前記接地荷重(Fz[**])に基づいて、前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において内側の前輪(WH[fi])に前記スリップ抑制制御が実行され、且つ、前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において外側の前輪(WH[fo])に前記スリップ抑制制御が実行されない値に、前記制動トルク(Pwp[**],Pwq[**],Pwv[**],Pwa[**])を増加するように構成されてもよい。
さらに、前記制御手段(CTL)は、前記スリップ抑制制御が行われる以前において、前記外側の前輪における前記制動トルク(Pwt[fo],Pwu[fo],Pwp[fo],Pwq[fo],Pwv[fo],Pwa[fo])と、前記内側の前輪における前記制動トルク(Pwt[fi],Pwu[fi],Pwp[fi],Pwq[fi],Pwv[fi],Pwa[fi])とを等しい増加量をもって増加するように構成され得る。
本発明に係る車両の運動制御装置において、前記制御手段(CTL)は、前記車輪のうちで後輪(WH[r*])に対する前記制動トルク(Pwt[r*],Pwu[r*],Pwa[r*])の時間変化量を、前記車輪のうちで前輪(WH[f*])に対する前記制動トルク(Pwt[f*],Pwu[f*],Pwa[f*])の時間変化量よりも小さくするように構成される。また、前記制御手段(CTL)は、前記車輪のうちで前輪(WH[f*])に対する前記制動トルク(Pwt[f*],Pwu[f*],Pwa[f*])を増加し、且つ、前記車輪のうちで後輪(WH[r*])に対する前記制動トルク(Pwt[r*],Pwu[r*],Pwa[r*])を保持するように構成され得る。
本発明に係る車両の運動制御装置は、操舵速度取得手段(DSA)を備え、前記車両の操舵操作部材(SW)の操舵速度(dSa)を取得する。そして、前記緊急操舵取得手段(MKQ)は、前記操舵速度(dSa)に基づいて前記緊急操舵であること(Kqs=1)を取得する。具体的には、前記緊急操舵取得手段(MKQ)は、前記操舵速度(dSa)が所定速度(所定値dsa1)以上の場合において、前記緊急操舵であること(Kqs=1)を取得する。
本発明に係る車両の運動制御装置は、旋回量取得手段(TCA)を備え、前記車両の旋回状態の程度を表す旋回量(Tca)を取得する。そして、前記緊急操舵取得手段(MKQ)は、前記旋回量(Tca)基づいて前記緊急操舵であること(Kqs=1)を取得することが望ましい。具体的には、前記緊急操舵取得手段(MKQ)は、前記旋回量(Tca)が所定旋回量(所定値tca1)以上の場合において、前記緊急操舵であること(Kqs=1)を取得する。
本発明に係る車両の運動制御装置は、相対距離取得手段(DOB)と車速取得手段(VXA)とを備える。相対距離取得手段(DOB)は、前記車両と該車両の前方の障害物との間の相対距離(Dob)を取得する。車速取得手段(VXA)は、前記車両の走行速度(Vxa)を取得する。そして、前記緊急操舵取得手段(MKQ)は、前記相対距離(Dob)、及び、前記走行速度(Vxa)に基づいて前記緊急操舵であること(Kqs=1)を取得することが望ましい。
本発明に係る車両の運動制御装置は、制動操作量取得手段(BSA)を備え、前記車両の運転者によって操作される制動操作部材(BP)の制動操作量(Bsa)を取得する。そして、前記制御手段(CTL)は、前記制動操作量(Bsa)が所定操作量(所定値bsa1)以下の場合において、前記制動トルク(Pwt[**],Pwu[**],Pwp[**],Pwq[**],Pwv[**],Pwa[**])を増加し、且つ、前記制動操作量(Bsa)が所定操作量(bsa1)よりも大きい場合において、前記制動トルク(Pwt[**],Pwu[**],Pwp[**],Pwq[**],Pwv[**],Pwa[**])を保持するように構成され得る。
本発明は上述のように構成されているので、以下の効果を奏する。
車輪の発生力は車輪スリップによって発生するため、車輪が摩擦限界に達したか否かは、前後スリップ量(車輪の回転方向のスリップ)に現れる。車両の旋回運動に伴う接地荷重移動の影響によって、外輪(接地荷重が増加)よりも内輪(接地荷重が減少)の方が、早期に摩擦限界に到達する。また、車両の旋回運動は、前輪に横力が発生することで開始されるため、緊急回避においては、前輪の発生力が支配的である。以上のことから、内前輪が摩擦限界に達したとき(即ち、内前輪にスリップ抑制制御が実行されたとき)に、外前輪の制動トルクの増加量が抑制(減少)されることによって、緊急操舵に必要な前輪の横力が確保されると共に、十分な車両減速が得られる。具体的には、車両の緊急回避においては、走行移動距離(前後方向に進む距離)に対して横移動距離(横方向に移動する距離)が確保される必要があるが、車輪の制動力と横力とのトレードオフにおいて車輪発生力が適正に調整され得る。その結果、短い走行移動距離で十分な横移動距離が確保されると共に、効果的に車両が減速され得る。
また、緊急回避状態における接地荷重移動量は事前に把握が可能である。そのため、予め設定された関係(所定値fz1,実際の横加速度Gya、或いは、計算横加速度Gyeに基づく演算マップ)に基づいて各輪の接地荷重を予測し、予測された接地荷重に基づいて、制動トルク(Pwt[**],Pwu[**],Pwa[**])を内前輪にはスリップ抑制制御が実行され、且つ、外前輪にはスリップ抑制制御が実行されない値にまで増加するように構成されるため、上記と同様に、短い走行移動距離(前後移動距離)で十分な横移動距離が確保され得る。さらに、車両の走行速度を効果的に減少できる。
そして、スリップ抑制制御が実行される時点までは、左右の前輪において同一の制動トルクが与えられるように構成され得る。制動トルク増加が、通常制動(運転者の操作に応じて制動トルクが増加される)と同様であるため、制御実行時の違和感が抑制され得る。
急操舵と制動が同時に行われる場合、車両のふらつきが発生する場合がある。特に、自動的な制動が行われている場合、このふらつきは運転者への違和感となる。後輪制動トルクの時間変化量(単位時間当りの増加量)が、前輪制動トルクの時間変化量よりも小さくされることによって、後輪横力が確保されて、車両のふらつきが抑制され得る。同様に、制動トルクの増加が前輪のみにて行われるように構成されるため、後輪の横力が確保されて、進路変更時の車両ふらつきが抑制され得る。
緊急的な操舵操作の判定において、操舵速度の条件に旋回量の条件が付加されるため、より確実な緊急操舵判定が行われ得る。さらに、前方障害物との相対距離等の情報が付加されるため、より確実な緊急操舵判定が行われ得る。
運転者が制動操作を行っている場合には、既に車輪に制動トルクが与えられているため、制動制御が然程必要ではない。制動操作量が所定値bsa1以下の場合(例えば、bsa1=0であって制動操作が行われていない場合)にのみ、制動トルク増加が行われるため、不必要な制動トルク増加が抑制され得る。
本発明の実施形態に係る車両の運動制御装置を備えた車両の全体構成を示す図である。 図1に示すブレーキアクチュエータBRKの全体構成を示す図である。 障害物等を緊急的に回避する場合の緊急回避挙動について説明する図である。 本実施形態における車両運動制御装置の演算処理例を示す機能ブロック図である。 緊急操舵取得手段MKQでの緊急操舵状態の判定演算について説明するためのフロー図である。 スリップ抑制手段SLPについて説明するための機能ブロック図である。 制限制御演算ブロックLMTの実施形態について、作用・効果を説明するための時系列線図である。 前後配分演算ブロックFRHの実施形態について、作用・効果を説明するための制動トルクの前後配分線図である。 前後配分演算ブロックFRHの他の実施形態について、作用・効果を説明するための時系列線図である。 本実施形態における車両運動制御装置の他の演算処理例を示す機能ブロック図である。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の運動制御装置(「本装置」という)を備えた車両の全体構成を示す図である。
なお、各種記号等の末尾に付された添字[**]は、各種記号等が4輪のうちの何れに関するものであるかを示す。「f」は前輪、「r」は後輪、「m」は車両進行方向に対して右側車輪、「h」は左側車輪、「o」は旋回方向に対して外側車輪(外輪)、「i」は内側車輪(内輪)を示す。したがって、「fh」は左前輪、「fm」は右前輪、「rh」は左後輪、「rm」は右後輪を示す。また、「fo」は旋回外側前輪(外前輪)、「fi」は旋回内側前輪(内前輪)、「ro」は旋回外側後輪(外後輪)、「ri」は旋回内側後輪(内後輪)を示す。
また、車両の旋回方向には右方向と左方向の場合がある。それらは一般的には正負の符号が付され、例えば左方向が正符号として表され、右方向が負符号として表される。さらに、車両の加速・減速も、一般的には正負の符号が付され、例えば、加速が正符号として表され、減速が負符号として表される。しかし、値の大小関係、或いは、値の増加・減少を説明する際にその符号を考慮すると非常に煩雑となる。そのため、特に限定がない場合には、絶対値の大小関係、絶対値の増加・減少を表す。また、所定値は正の値とする。
車両には、車輪WH[**]の回転速度である車輪速度Vwa[**]を検出する車輪速度センサWS[**]と、ステアリングホイールSWの(車両の直進走行に対応する操舵装置の中立位置「0」からの)回転角度θswを検出するステアリングホイール角センサSAと、操向車輪(前輪)の操舵角δfaを検出する前輪舵角センサFSと、運転者がステアリングホイールSWを操作する際のトルクTswを検出する操舵トルクセンサSTと、車両に作用する実際のヨーレイトYraを検出するヨーレイトセンサYRと、車体前後方向における前後加速度Gxaを検出する前後加速度センサGXと、車体横方向における横加速度Gyaを検出する横加速度センサGYと、ホイールシリンダWC[**]の制動液圧Pwa[**]を検出するホイールシリンダ圧力センサPW[**]と、エンジンEGの回転速度Neaを検出するエンジン回転速度センサNEと、エンジンのスロットル弁の開度Tsaを検出するスロットル位置センサTSが備えられる。
そして、運転者の運転操作を検出する手段として、運転者の加速操作部材(例えば、アクセルペダル)APの操作量Asaを検出する加速操作量センサASと、運転者の制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPの操作量Bsaを検出する制動操作量センサBSと、変速操作部材SFのシフト位置Hsaを検出するシフト位置センサHSとが備えられている。
また、車両には、制動液圧を制御するブレーキアクチュエータBRKと、スロットル弁を制御するスロットルアクチュエータTHと、燃料の噴射を制御する燃料噴射アクチュエータFIと、変速を制御する自動変速機ATとが備えられている。
加えて、車両には、上述の各種アクチュエータ(BRK等)、及び上述の各種センサ(WS[**]等)と電気的に接続された電子制御ユニットECUが備えられている。電子制御ユニットECUは、相互に通信バスCBで接続された、複数の独立した電子制御ユニットECU(ECUb,ECUs,ECUe,ECUa)から構成されたマイクロコンピュータである。電子制御ユニットECU内の各系の電子制御ユニット(ECUb等)は、専用の制御プログラムをそれぞれ実行する。各種センサの信号(センサ値)、及び、各電子制御ユニット(ECUb等)内で演算される信号(内部演算値)は、通信バスCBを介して共有される。
本装置の演算処理は、電子制御ユニットECU内に備えられる。例えば、本装置の演算処理は、ブレーキアクチュエータBRKを制御するブレーキ系電子制御ユニットECUb内にプログラムされている。ブレーキ系電子制御ユニットECUbでは、車輪速度センサWS[**]、ヨーレイトセンサYR、横加速度センサGY等からの信号に基づいて、アンチスキッド制御(ABS制御)、トラクション制御(TCS制御)等が実行される。また、車輪速度センサWS[**]によって検出された各車輪の車輪速度Vwa[**]に基づいて、周知の方法によって、車両の走行速度(車速)Vxaが演算される。
操舵系電子制御ユニットECUsでは、操舵トルクセンサST等からの信号に基づいて、電動パワーステアリング制御(EPS制御)が実行される。エンジン系電子制御ユニットECUeでは、加速操作量センサAS等からの信号Asaに基づいて、スロットルアクチュエータTH、燃料噴射アクチュエータFIの制御が実行される。トランスミッション系電子制御ユニットECUaでは、自動変速機ATの変速比の制御が実行される。
ブレーキアクチュエータBRK(制動手段MBRの一部に相当)は、複数の電磁弁(液圧調整弁)、液圧ポンプ、電気モータ等を備えた周知の構成を有している。ブレーキ制御の非実行時では、ブレーキアクチュエータBRKは、運転者による制動操作部材BPの操作に応じた制動液圧を各車輪のホイールシリンダWC[**]にそれぞれ供給し、各車輪に対して制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作に応じた制動トルクを与える。アンチスキッド制御(ABS制御)、トラクション制御(TCS制御)、或いは、車両のアンダステア、オーバステアを抑制する車両安定性制御(ESC制御)等のブレーキ制御の実行時には、ブレーキアクチュエータBRKは、ブレーキペダルBPの操作とは独立してホイールシリンダWC[**]毎の制動液圧を制御し、制動トルクを車輪毎に調整できる。
各車輪には、制動手段MBRとして、周知のホイールシリンダWC[**]、ブレーキキャリパBC[**]、ブレーキパッドPD[**]、及び、ブレーキロータRT[**]が備えられる。ブレーキキャリパBC[**]に設けられたホイールシリンダWC[**]に制動液圧が与えられることにより、ブレーキパッドPD[**]がブレーキロータRT[**]に押付けられ、その摩擦力によって、各車輪に制動トルクが与えられる。なお、制動トルクの制御は、制動液圧によるものに限らず、電気ブレーキ装置を利用して行うことも可能である。
車両には、前方監視装置ZPが備えられている。前方監視装置ZPは、前方監視用のレーダセンサRS、カメラ(前方監視カメラ)CM、及び、電子制御ユニットECUzで構成されている。
前方監視装置ZP(電子制御ユニットECUz)は、電子制御ユニットECUと、電気的に接続される。電子制御ユニットECUzは、レーダセンサRS、及び、カメラ(前方監視カメラ)CMと電気的に接続されている。レーダセンサRSは、車両前方の障害物(例えば、先行車両)に向けて、車幅方向の所定角度範囲に、レーザ光(或いは、ミリ波等の電波)をスキャン照射し、その反射を受光する。前方監視用電子制御ユニットECUzは、その反射に基づいて、障害物の有無、障害物が存在する角度、及び障害物までの距離を検出する。カメラCMは、車両前方の映像を取得する。前方監視用電子制御ユニットECUzは、カメラCMからの映像に基づいて、車両前方の障害物(例えば、先行車両)の有無、障害物までの距離を演算する。
図2は、ブレーキアクチュエータBRKの全体構成を示す図である。運転者が制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPを踏み込むと、倍力装置VBにて踏力が倍力され、マスタシリンダMCに設けられたマスタピストンが押される。これにより、マスタピストンによって区画される第1室と第2室とに同じ圧力のマスタシリンダ圧Pmcが発生する。マスタシリンダ圧Pmcは、ブレーキアクチュエータBRKを通じて各車輪WH[**]のホイールシリンダWC[**]に与えられる。
ブレーキアクチュエータBRKは、マスタシリンダMCの第1室に接続される第1配管系統HP1と、マスタシリンダMCの第2室に接続される第2配管系統HP2とを有している。第1配管系統HP1は、左前輪WH[fh]と右後輪WH[rm]に加えられる制動液圧を制御する。第2配管系統HP2は、右前輪WH[fm]と左後輪WH[rh]に加えられる制動液圧を制御する。第1配管系統HP1と第2配管系統HP2とは、同様の構成であるため、以下では第1配管系統HP1についてのみ説明し、第2配管系統HP2についての説明は省略される。図2に示す構成は、ダイアゴナル配管の構成であるが、ブレーキの配管構成は、前後配管でもよい。
第1配管系統HP1は、制動液圧(ホイールシリンダ内の液圧)Pw[fh],Pw[rm]を発生させる管路LAを備える。この管路LAには、連通状態と差圧状態に制御できる第1差圧制御弁SS1が備えられる。そして、マスタシリンダ圧Pmcが、左前輪WH[fh]に備えられたホイールシリンダWC[fh]、及び、右後輪WH[rm]に備えられたホイールシリンダWC[rm]に伝達される。運転者がブレーキペダルBPの操作を行う通常ブレーキ時(ブレーキ制御が実行されていないとき)には、この第1差圧制御弁SS1は連通状態となるように弁位置が開状態に調整される。第1差圧制御弁SS1に通電されると、弁位置が閉状態に調整され、第1差圧制御弁SS1が差圧状態とされる。
管路LAは、第1差圧制御弁SS1よりもホイールシリンダWC[fh],WC[rm]の側において、2つの管路LA[fh],LA[rm]に分岐する。管路LA[fh]にはホイールシリンダWC[fh]への制動液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁SZ[fh]が備えられる。管路LA[rm]にはホイールシリンダWC[rm]への制動液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁SZ[rm]が備えられる。第1、及び、第2増圧制御弁SZ[fh],SZ[rm]は、連通・遮断状態を制御できる2位置の電磁弁により構成される。第1、及び、第2増圧制御弁SZ[fh],SZ[rm]は、供給される電流が「0」のとき(非通電時)には連通状態(開状態)となり、電流が流されるとき(通電時)に遮断状態(閉状態)に制御される。第1、及び、第2増圧制御弁SZ[fh],SZ[rm]は、所謂ノーマルオープン型である。
管路LBは、第1、及び、第2増圧制御弁SZ[fh],SZ[rm]、及び、ホイールシリンダWC[fh],WC[rm]の間と調圧リザーバR1とを結ぶ減圧用の管路である。管路LBには、連通・遮断状態を制御できる2位置の電磁弁により構成される第1減圧制御弁SG[fh]と第2減圧制御弁SG[rm]とが設けられる。第1、及び、第2減圧制御弁SG[fh],SG[rm]は、非通電時には閉状態となり、通電時には開状態となる。これらは、所謂ノーマルクローズ型である。
調圧リザーバR1と管路LAとの間には、管路LCが配設される。管路LCには、液圧ポンプOP1が設けられる。液圧ポンプOP1によって、ブレーキ液が調圧リザーバR1からを吸入され、マスタシリンダMC、或いは、ホイールシリンダWC[fh],WC[rm]に向けて吐出される。液圧ポンプOP1は、電気モータMTによって駆動される。調圧リザーバR1とマスタシリンダMCの間には管路LDが設けられている。車両安定性制御やトラクション制御等の自動加圧が行われるとき、液圧ポンプOP1によってブレーキ液が管路LDを通してマスタシリンダMCから吸入され、管路LA[fh],LA[rm]に吐出される。これにより、ブレーキ液がホイールシリンダWC[fh],WC[rm]に供給され、対象となる車輪のホイールシリンダWC[**]の制動液圧が増大され、制動トルクが与えられる。
図3を参照して、運転者が操舵操作部材(例えば、ステアリングホイール)SWを操作して、車両前方の障害物等を回避する緊急回避挙動について説明する。
図3(a)は、緊急回避挙動を説明するための模式図である。車速Vxoにて走行中に、車両前方に幅Hbの障害物OBがあり、この障害物OBを回避するために、力Fv(車体に作用する車輪全体の力であって、制動力Fxと横力Fyとの合力)が、車両に作用する場合を考える。ここで、車両が障害物OBに衝突することなく回避し得る距離をKdとする。発生可能な最大力Fvは、車両の重量と路面摩擦係数で決まる車輪の摩擦円FC上に存在する。力Fvの作用する方向を、車両の減速方向(緊急回避前の車両の進行方向である前後方向に対して逆向き方向)を「0度」として、角度Ka(力の方向)で表す。即ち、車輪の摩擦円FCによって上限値が制限される制動力Fxと横力Fyとのトレードオフ関係が、合力Fvの方向Kaによって表現される。合力方向Kaが0度である場合には、車両には制動力のみが作用し(Fv=Fx,Fy=0)、合力方向Kaが90度である場合には、車両には横力のみが作用する(Fv=Fy,Fx=0)。
図3(b)は、同一の車速Vxoにおいて角度Kaを0度から90度まで変化させた場合の回避距離Kdと回避速度Kvとの関係を示す。ここで、回避距離Kdは障害物OBを回避するために必要な最短距離であり、回避速度Kvは車両が障害物OBに最も近接した際の車両速度である。合力方向Kaが「0度」から所定値ka1までの範囲においては、回避距離Kdは車両が障害物OBの手前で停止できる距離kd1である。合力方向Kaが所定値ka1を超える場合は、車両が障害物OBの側方を通過する。そして、合力方向Kaの増加に従い回避距離Kdは減少していく。合力方向Kaが所定値ka2以上の範囲では、回避距離Kdは概ね飽和し、所定距離kd2となる。
車両の回避性能が時間に対する横移動量の大小で評価されるならば、制動力が発生されず、横力のみで緊急回避が行われることが最適条件となる。しかしながら、車両の緊急回避挙動では、「最短距離にて障害物を避ける」ことが必要であり、車両の進行距離(前後方向に進む移動量で、以下では前後移動量という)に対する横方向の移動量(以下では横移動量という)の大小にて回避性能が評価されることが必要である。このように考えると、上述の合力方向Kaが所定値ka2から「90度」までが適正な範囲となる。さらに、回避距離の条件に車両速度の条件(車両が最も減速される条件)が付加されると、合力方向Kaが所定値ka2であることが、緊急回避挙動における最適条件となる。具体的には、所定値ka2は45度から60度の範囲にある。
図4は、本実施形態における車両の運動制御装置の演算処理例を示す機能ブロック図である。なお、各種記号等の末尾に付された添字[**]は、各種記号等が4輪のうちの何れかに関するものであるかを示す。「f」は前輪、「r」は後輪、「m」は車両進行方向に対して右側車輪、「h」は左側車輪、「o」は旋回方向に対して外側車輪(外輪)、「i」は内側車輪(内輪)を示す。したがって、「fh」は左前輪、「fm」は右前輪、「rh」は左後輪、「rm」は右後輪を示す。また、「fo」は旋回外側前輪(外前輪)、「fi」は旋回内側前輪(内前輪)、「ro」は旋回外側後輪(外後輪)、「ri」は旋回内側後輪(内後輪)を示す。また、車両の旋回方向には右方向と左方向の場合がある。それらは一般的には正負の符号が付され、例えば左方向が正符号として表され、右方向が負符号として表される。さらに、車両の加速・減速も、一般的には正負の符号が付され、例えば、加速が正符号として表され、減速が負符号として表される。しかし、値の大小関係、或いは、値の増加・減少を説明する際にその符号を考慮すると非常に煩雑となる。そのため、特に限定がない場合には、絶対値の大小関係、絶対値の増加・減少を表し、所定値は正の値とする。
緊急操舵取得演算ブロック(緊急操舵取得手段に相当)MKQにて、車両の操舵状態が緊急回避にあるか否かを表す緊急操舵状態Kqsが取得される。緊急操舵状態Kqsは、通信バスCBを介して得られるセンサ値、及び/又は、他のシステムにおける内部演算値に基づいて演算される。例えば、緊急操舵状態Kqsは制御フラグ(演算処理の判定結果を表す信号)として演算される。Kqs=0は判定結果が「緊急操舵(緊急回避操舵)ではない」ことを表し、Kqs=1は判定結果が「緊急操舵(緊急回避操舵)である」ことを表す。具体的には、緊急操舵取得演算ブロックMKQは、操舵量取得演算ブロックSAA、操舵速度取得演算ブロックDSA、旋回量取得演算ブロックTCA、相対距離取得演算ブロックDOB、及び、車両速度取得演算ブロックVXAによって構成される。これらにて演算される操舵量Saa、操舵速度dSa、旋回量Tca、相対距離Dob、及び、車両速度Vxaは、通信バスCBを介して得られるセンサ値、及び/又は、他のシステムにおける内部演算値に基づいて演算される。また、緊急操舵取得演算ブロックMKQにて、緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側、及び、外側は、操舵量Saa、及び、旋回量Tcaのうちの少なくとも1つに基づいて決定される。
操舵量取得演算ブロックSAAにて、操舵量(例えば、操舵角)Saaが取得される。具体的には、操舵量Saaは、ステアリングホイール角度センサSAによって検出される信号(ステアリングホイールSWの回転角度であるステアリングホイール角度θsw)に基づいて演算される。また、前輪舵角センサFSによって検出される前輪舵角δfaに基づいて演算され得る。即ち、操舵量(操舵角)Saaは、ステアリングホイール角度θsw、及び、前輪舵角δfaのうちの少なくとも一方に基づいて演算され得る。操舵速度取得演算ブロック(操舵速度取得手段に相当)DSAにて、操舵操作部材SWの操作速度である操舵速度(例えば、操舵角速度)dSaが取得される。操舵速度dSaは、操舵量Saaを時間微分して演算され得る。
旋回量取得演算ブロック(旋回量取得手段に相当)TCAにて、車両の旋回状態の程度(大きさ)を表す状態量である旋回量Tcaが取得される。具体的には、横加速度センサGYによって検出される横加速度Gyaに基づいて演算される。また、ヨーレイトセンサYRによって検出されるヨーレイトYraに基づいて演算され得る。
相対距離取得演算ブロック(相対距離取得手段に相当)DOBにて、車両と障害物までの距離である相対距離Dobが取得される。具体的には、前方監視装置ZPのレーダセンサRS、及び、前方監視カメラCMのうちの少なくとも1つによって取得される相対距離(車両から障害物までの距離)に基づいて演算される。
車両速度取得演算ブロック(車速取得手段に相当)VXAにて、車両の走行速度である車速Vxaが取得される。車両速度Vxaは、後述する車輪速度取得演算ブロックVWAの検出結果Vwa[**]に基づいて演算され得る。緊急操舵取得演算ブロックMKQでは、相対距離Dob及び車両速度Vxaに基づいて、車両と障害物OBとの相対的な速度(車両が障害物OBに近づいていく速度であり、相対速度という)Vobが演算される。さらに、相対速度Vob、及び、相対距離Dobに基づいて、現在の相対速度Vobが維持された場合に車両と障害物とが衝突するまでに要する時間(衝突時間という)Ttcが演算される。
緊急操舵取得演算ブロックMKQにて、操舵速度dSaが所定速度(所定値)dsa1以上の場合において、緊急操舵であること(Kqs=1)が演算される。さらに、操舵速度の条件に加えて、旋回量Tcaが所定旋回量(所定値)tca1以上の場合において、緊急操舵であること(Kqs=1)が演算され得る。また、操舵速度の条件、或いは、旋回量の条件に加えて、相対速度Vob、及び、相対距離Dobに基づいて演算された衝突時間Ttcが所定時間(所定値)ttc1以下の場合において、緊急操舵であること(Kqs=1)が演算されてもよい。複数の条件に基づいて緊急操舵が判定されるため、確実な判定が行われ得る。緊急操舵取得演算ブロックMKQにおける緊急操舵状態Kqsの詳細については後述する。
緊急操舵状態Kqsは、緊急操舵であるか否かを表す制御フラグとして演算されるが、制御フラグに代えて、緊急操舵状態の程度(大きさ)を表す状態量として演算され得る。操舵速度dSaが所定速度dsa1未満の場合には、Kqs=0(緊急操舵ではない状態)が演算され、操舵速度dSaが所定速度dsa1以上では操舵速度dSaの増加にしたがって緊急操舵状態Kqsが増加するように演算され得る。また、衝突時間Ttcが所定時間ttc1以上の場合には、Kqs=0(緊急操舵ではない状態)が演算され、衝突時間Ttcが所定時間ttc1未満では衝突時間Ttcの減少にしたがって緊急操舵状態Kqsが増加するように演算され得る。
車輪速度取得演算ブロック(車輪速度取得手段に相当)VWAにて、各車輪の回転速度(車輪速度)Vwa[**]が取得される。制動操作量取得演算ブロック(制動操作量取得手段に相当)BSAにて、運転者によって操作される車両の制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPの操作量Bsaが取得される。車輪速度Vwa[**]、及び、制動操作量Bsaは、通信バスCBを介して得られるセンサ値、及び/又は、他システムにおける内部演算値に基づいて演算される。
目標制動トルク演算ブロック(制御手段に相当)CTLにて、緊急操舵状態Kqsに基づいて各車輪の目標制動トルクPwu[**]が演算される。目標制動トルク演算ブロックCTLは、規範量演算ブロックPWO、前後配分演算ブロックFRH、制限制御演算ブロックLMT、及び、加算ブロックSUMによって構成される。規範量演算ブロックPWOでは、目標制動トルクの規範量Pwo[**]が演算される。前後配分演算ブロックFRHでは、制動トルク規範量Pwo[**]に基づいて、制動トルクの前後配分が考慮されて、目標制動トルクPwt[**]が演算される。さらに、制限制御演算ブロックLMTでは、内前輪WH[fi]にスリップ抑制制御が実行されることを条件に、前後配分演算ブロックFRHにて演算された目標制動トルクPwt[fo]が調整される。そして、加算ブロックSUMにて、運転者の制動操作によって発生する制動トルクPwd[**]に対して目標制動トルクPwt[**]が加えられて、最終的な目標制動トルクPwu[**]が演算される。なお、制動トルクPwd[**]は、制動操作量Bsaに基づいて演算され得る。例えば、マスタシリンダMC内の圧力Pmcが検出され、マスタシリンダ圧Pmcに基づいて、制動トルクPwd[**]が演算され得る。
規範量演算ブロックPWOでは、Kqs=0(非緊急操舵)の場合には、Pwo[**]=0とされて、制動トルクの増加は行われない。この場合、車両は運転者の減速操作によってのみ減速される。Kqs=1(緊急操舵が識別されたとき)の場合には、制動トルク規範量Pwo[**]は予め設定された所定値pwo1に決定される。
緊急操舵状態Kqsが、制御フラグに代えて、緊急操舵の程度を表す状態量(緊急操舵状態量)として演算される場合には、Kqs=0の場合には、同様にPwo[**]=0と演算される。そして、緊急操舵状態Kqsの増加にしたがって制動トルク規範量Pwo[**]が増加するように、予め設定された演算マップ(図示せず)に基づいて演算され得る。
規範量演算ブロックPWOにて、制動操作量Bsaが所定操作量(所定値)bsa1以下の場合において、制動トルク規範量Pwo[**]が増加されるが、制動操作量Bsaが所定操作量bsa1よりも大きい場合において、制動トルク規範量Pwo[**]が「0」とされ得る。したがって、制動操作量Bsaが所定操作量bsa1よりも大きい場合には、緊急操舵による制動トルク増加が行われない。ここで、所定操作量bsa1は、制動操作部材BPが操作されていない状態に相当する値(bsa1=0)に設定され得る。
前後配分演算ブロックFRHにて、規範量演算ブロックPWOにて演算される制動トルク規範量Pwo[**]に基づいて、前輪の目標制動トルクPwt[f*]、及び、後輪の目標制動トルクPwt[r*]が演算される。緊急操舵状態での運転者の制動操作とは独立した制動トルク増加において、前輪制動トルクに対する後輪制動トルクの比率(前後比率という)が、運転者が制動操作を行う通常制動の場合の前後配分比率Ko(「1」より小さい一定値)に比較して、小さくなるように調整される。例えば、前輪においてはPwt[f*]=Pwo[f*]と演算され、後輪においてはPwt[r*]=Kp・Pwo[r*]によって演算される。ここで、Kpは係数であり、値Koより小さい(Kp<Ko)。後述するように、制動トルクは、通常制動時(制御による制動トルク増加が行われず、運転者の操作のみによって制動トルク増加が行われる場合)には特性Cnoに沿って増加し、緊急操舵時(緊急操舵が判定されて自動的に制動トルク増加が行われる場合)には特性Cnoよりも小さい前後比率Kp(0≦Kp<Ko)を有する特性Ckq(Ckq1,Ckq2,Ckq3,Ckq4)に従って増加する。また、前輪制動トルクは増加されるが、後輪制動トルクは緊急操舵が判定される前の値を保持するように演算され得る(Pwt=Pwo[f*]、Pwt[r*]=0)。なお、左右車輪(即ち、緊急操舵状態において内輪と外輪)には同量の制動トルクが増加される。
制限制御演算ブロックLMTにて、後述するスリップ抑制制御演算ブロックSLPからの信号(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側前輪(内前輪)にスリップ抑制制御が実行されたことを表す制御フラグ)Fslp[fi]に基づいて、緊急操舵に対応する車両の旋回運動における外側前輪(外前輪)の目標制動トルクPwt[fo]の増加量が制限(減少)される。緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側、及び、外側は、操舵量Saa、及び、旋回量Tcaのうちの少なくとも1つに基づいて車両の旋回方向が演算されて決定される。制御フラグFslp[fi]が「0(スリップ抑制制御の非実行)」から「1(スリップ抑制制御の実行)」に切り替わる時点で、内前輪の目標制動トルクPwt[fo]の時間に対する増加量(増加勾配)に制限が設けられる。さらに、制御フラグFslp[fi]が切り替わる時点での目標制動トルクPwt[fo](或いは、Pwa[fo])に基づいて上限値pwm(例えば、制御フラグFslp[fi]が切り替わる時点の目標制動トルクPwt[fo](或いは、Pwa[fo])に所定係数を乗じた値)が設けられ得る。
スリップ抑制制御演算ブロックSLPにてスリップ抑制制御(アンチスキッド制御)が実行されていない場合、目標制動トルク演算ブロックCTLからは前後配分演算ブロックFRHにて前後配分された結果である目標制動トルクPwt[**]が出力される。スリップ抑制制御演算ブロックSLPにて内前輪WH[fi]にスリップ抑制制御が実行されている場合には、外前輪WH[fo]に対して制動トルク増加量が抑制された目標制動トルクPwt[fo]が制限制御演算ブロックLMTから出力され、それ以外の車輪に対しては前後配分演算ブロックFRHからの目標制動トルクPwt[**]がそのまま出力される。
加算ブロックSUMにて、運転者の制動操作によって発生する制動トルクPwd[**]に対して目標制動トルクPwt[**]が加えられて、目標制動トルクPwu[**]が演算される。運転者が制動操作を行っていない場合は、Pwd[**]=0であるため、目標制動トルク演算ブロックCTLからはPwu[**]として目標制動トルクPwt[**]が出力される。運転者の制動操作によって生じる制動トルクPwd[**]に対して、緊急操舵による制動トルクPwu[**]が増加される。
スリップ抑制制御演算ブロック(スリップ抑制手段に相当)SLPにて、車輪速度取得演算ブロックVWAにて取得される車輪速度Vwa[**]に基づいて、前後スリップ(車輪の回転方向のスリップ)が演算され、過大な前後スリップを抑制するスリップ抑制制御が車輪毎に実行される。スリップ抑制制御演算ブロックSLPにて実行されるスリップ抑制制御の詳細については後述する。スリップ抑制制御演算ブロックSLPにてスリップ抑制制御が実行される車輪については、加算後の目標制動トルクPwu[**]が調整されて、目標制動トルクPws[**]が演算され、スリップ抑制制御演算ブロックSLPから出力される。スリップ抑制制御が実行されない車輪については、目標制動トルクPwu[**]がそのまま目標制動トルクPws[**]として出力される。また、スリップ抑制制御演算ブロックSLPから、内前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回方向における内側の前輪)にスリップ抑制制御(アンチスキッド制御)が実行されたことを表す信号である制御フラグFslp[fi]が制限制御演算ブロックLMTに送信される。
制動手段MBRにて、調整後の目標制動トルクPws[**]に基づいて、ブレーキアクチュエータBRKの駆動手段(例えば、液圧ポンプ駆動用の電気モータ、ソレノイドバルブの駆動手段)が制御され、車輪の制動トルクが増加される。運転者が制動操作部材BPを操作している場合には、その操作量に応じた制動トルクに、緊急操舵による制動トルクが加えられる。運転者が制動操作を行っていない場合には、緊急操舵によって、制動トルクが「0」から増加される。
制動トルクの実際値Pwa[**]を検出するセンサ(例えば、圧力センサPW[**])を車輪に備え得る。目標値Pws[**]と実際値Pwa[**]とに基づいて、実際値Pwa[**]が目標値Pws[**]に一致するように、駆動手段が制御され得る。
図5は、緊急操舵取得手段(緊急操舵取得演算ブロック)MKQでの緊急操舵状態の判定演算について説明するためのフロー図である。ここで、緊急操舵状態Kqsは、「0」が非緊急操舵を表し、「1」が緊急操舵を表す制御フラグとして演算される。
先ず、ステップS110にて、初期化が行われる。ここで、緊急操舵状態Kqsは初期値である「0」とされる。S120にて、センサ値、及び/又は、他システムの内部演算値が読み込まれる。S130にて、上述の各状態量(dSa等)が演算される。
次に、判定ステップS140,S150,S160,S170にて、操舵状態が緊急操舵であるか否かの判定が行われる。S140にて、操舵速度(例えば、操舵角速度)dSaが所定速度dsa1以上であるかが判定される。ステップS140にて肯定判定(Yes)がなされると、演算処理はステップS150に進む。S150にて、操舵量(例えば、操舵角)Saaが所定量saa1以上であるかが判定される。ステップS150にて肯定判定(Yes)がなされると、演算処理はステップS160に進む。S160にて、旋回量(例えば、横加速度)Tcaが所定旋回量tca1未満であるかが判定される。ステップS160にて肯定判定(Yes)がなされると、演算処理はステップS170に進む。S170にて、衝突時間Ttcが所定時間ttc1未満であるかが判定される。ステップS170にて肯定判定(Yes)がなされると、演算処理はステップS180に進む。そして、S180にて操舵状態が緊急操舵であることが判定され、緊急操舵状態(例えば、制御フラグ)Kqsが「0(非緊急操舵)」から「1(緊急操舵)」に切り替えられる。
判定ステップS140,S150,S160,S170の何れかにて、否定判定(No)がなされると、演算処理はステップS190に進み、緊急操舵ではない状態(Kqs=0)が維持される。ここで、判定ステップS150,S160,S170のうちの少なくとも1つは省略され得る。
なお、緊急操舵状態Kqsが制御フラグとして演算されることに代えて、緊急操舵状態Kqsが緊急操舵の程度(大きさ)を表す状態量として演算され得る。この場合、操舵速度dSaの増加にしたがって緊急操舵状態Kqsが増加するように演算され、衝突時間Ttcの減少にしたがって緊急操舵状態Kqsが増加するように演算され得る。
図6は、スリップ抑制手段(スリップ抑制制御演算ブロック)SLPの詳細について説明するための機能ブロック図である。
車体速度演算ブロックVSOでは、各輪の車輪速度Vwa[**]に基づいて、公知の方法で車体速度Vsoが演算される。車輪加速度演算ブロックDVWでは、各輪の車輪速度Vwa[**]に基づいて、公知の方法で車輪加速度dVw[**]が演算される。
各輪制御モード演算ブロックMODでは、各車輪のスリップ抑制制御(アンチスキッド制御)の制御モードが決定され、最終的な目標制動トルクPws[**]が演算される。制御モードは、目標制動トルクPwt[**]を調整するために決定される。制御モードには、制動トルクが増加される「増加モード(制御マップでは「増加」で表示)」、及び、制動トルクが減少される「減少モード(制御マップでは「減少」で表示)」がある。
車体速度Vsoから所定値sp1,sp2がそれぞれ減算されて、スリップ抑制制御の基準速度(しきい値)van,vahがそれぞれ演算される。所定値sp1,sp2は、前後スリップにおけるしきい値van,vahを決定するための予め設定された前後スリップ速度であり、sp1<sp2の関係がある。前後スリップ演算として、車輪速度Vwa[**]が、基準速度van,vahと比較される。さらに、車輪加速度dVw[**]が基準加速度(しきい値)ga1,ga2と比較される。基準加速度ga1,ga2は予め設定された所定値であり、ga1<ga2の関係がある。各輪制御モード演算ブロックMOD内に示す制御マップが参照され、それらの大小関係に基づいて制御モードが選択される。例えば、車輪速度Vwa[**]が基準速度van以上、且つ、基準速度vah未満であり、車輪加速度dVw[**]が基準加速度ga1未満である場合には、制動トルクが減少される「減少モード」が選択される。
「減少モード」が選択される場合には、目標制動トルクPwu[**]、或いは、目標制動トルクPws[**]の演算処理における前回値が減少するように調整されて目標制動トルクPws[**]が演算される。また、「増加モード」が選択される場合には、目標制動トルクPws[**]の前回値から増加するように調整されて目標制動トルクPws[**]が演算される。
各輪制御モード演算ブロックMODは、内前輪の制御サイクルにおいて初めて「減少モード」が選択されるとき(即ち、内前輪WH[fi]にスリップ抑制制御が開始される時点)に、制御フラグFslp[fi]が、「0(スリップ抑制制御が非実行)」から「1(スリップ抑制制御が実行)」に切り替えられ、目標制動トルク演算ブロックCTLに送信される。目標制動トルク演算ブロックCTL内の制限制御演算ブロックLMTにて、制御フラグFslp[fi]に基づいて、制動トルクの増加量が抑制(制限)される。
図7は、制限制御演算ブロックLMTについての実施形態の作用・効果を説明するための時系列線図である。
運転者が制動操作部材BPを操作して制動トルクpw0が付与されている状態において、時間t0にて緊急操舵が判別されて制動トルク増加が開始される。時間t1までは、2つの前輪WH[f*]に対して同量の制動トルクが加えられる。制動トルクpw1に達した時点で、内前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側の前輪)WH[fi]にスリップ抑制制御(アンチスキッド制御)が実行される(波形Chiを参照)。内前輪のスリップ抑制制御の実行を表す信号(例えば、制御フラグFslp[fi])に基づいて外前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における外側の前輪)WH[fo]の制動トルク増加量が抑制(減少)される。緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側、及び、外側は、操舵量Saa、及び、旋回量Tcaのうちの少なくとも1つに基づいて演算される。スリップ抑制制御の非実行時には、目標制動トルクPwu[fo](結果として、実際の制動トルクPwa[fo])は破線で表す特性Choにて増加されるが、内前輪にスリップ抑制制御が開始されたことを表す制御フラグFslp[fi]の信号を受けて、特性Choに比較して制動トルクの増加量が制限された特性Chpをもって目標制動トルクPwu[fo](結果として、Pwa[fo])は増加される。即ち、時間に対する制動トルクの増加量(増加勾配)が減少(制限)される。このとき、併せて、上限値pwmが決定されて、目標制動トルクPwu[fo](結果として、実制動トルクPwa[fo])が上限値pwm以下となるように制限され得る(波形Chmを参照)。ここで、上限値pwmは値pw1に基づいて決定され得る。なお、運転者が制動操作部材BPを操作していない場合には、制動トルクは「0」から増加される。
車輪の前後スリップ(車輪の回転速度と車体速度との偏差)は路面摩擦係数の影響を受けるため、スリップ抑制制御が開始されたことは、内前輪が路面の摩擦限界に到達したことを表している。この時点で、外前輪の制動トルク増加が制限(制動トルクの増加量の減少)されることで、効果的に車両が減速され、必要な前輪の横力が確保され得る。さらに、左右前輪間での制動トルク差によって車両のヨーイング運動の発生が助長される。即ち、最短距離(車両進行方向の距離)にて障害物を避けると共に、最も車両が減速される状態(合力方向Kaが所定値ka2近傍にある状態)が生み出され得る。
図8は、前後配分演算ブロックFRHに関する実施形態について作用・効果を説明するための制動トルクの前後配分線図である。
運転者の制動操作によって制動トルクが増加される通常制動の場合(緊急操舵による制動トルク増加は行われない場合)には、前輪制動トルクに対する後輪制動トルクの比率(前後比率という)において所定の比率Ko(一定値)をもって前後輪の制動トルクが増加される。即ち、前後輪制動トルクが特性Cnoに沿って増加される。例えば、運転者の制動操作によって、前後輪の制動トルクが点Xの状態にあるときに緊急操舵が判定されると、通常制動時の前後比率Koに比べて小さい前後比率Kpをもつ特性Ckq1に沿って制動トルクが増加される。また、特性Ckq2にて示すように、緊急操舵によって前輪の制動トルクが増加され、後輪の制動トルクが(緊急操舵判定前の状態に)保持され得る。この場合、緊急操舵による制動トルク増加は前輪においてのみ行われる。
同様に、運転者が制動操作を行っていない場合においても、通常制動時の前後比率特性Cno(前後比率Ko)よりも相対的に前後比率が小さい特性(前後比率Kp)Ckq3に沿って制動トルクの増加が行われる。後輪制動トルクが保持される場合(即ち、後輪制動トルクの増加が行われず、「0」に維持される場合)には、特性Ckq4に沿って制動トルクが増加される。
急操舵と制動が同時に行われる場合、車両挙動の変化(例えば、車両のふらつき)が発生する場合がある。運転者自身の操作によって車両挙動変化が引き起こされる場合には、運転者はその変化に対して然程違和を感じ難い。しかし、運転者の制動操作とは独立して制動トルクが増加される場合(即ち、自動で制動トルクが増加される場合)には挙動変化に対して違和を感じ易い。そのため、制御によって自動的に制動トルクが増加されるときには、前後比率(前輪制動トルクの増加量に対する後輪制動トルクの増加量)が通常制動時に比較して小さい値に調整されて、車両の安定性が向上される。
図9は、前後配分演算ブロックFRHに関する他の実施形態について作用・効果を説明するための時系列線図である。上述では、運転者への違和感を抑制するため、前輪制動トルクの増加量に対する後輪制動トルクの増加量である前後比率が、緊急操舵判別時に通常制動時よりも相対的に小さくされることを説明したが、ここでは、特に、動的な前後比率の補償について説明する。
運転者が制動操作部材BPを操作して制動トルクpv0が付与されている状態において、時間u0にて緊急操舵が判別されて制動トルク増加が開始される。緊急操舵による自動的な制動トルク増加において、前輪の制動トルクの時間変化量Kfよりも後輪の制動トルクの時間変化量Krが小さくされる。後輪の制動トルク時間変化量Krは、「0」とされ得る。即ち、緊急操舵によって前輪制動トルクが増加され、後輪制動トルクがpv0に保持される(緊急操舵によって後輪制動トルクが増加されない)。なお、運転者が制動操作部材BPを操作していない場合には、制動トルクは「0」から増加される。
上述と同様に、自動制動が行われている場合の挙動変化は運転者への違和感となる。後輪制動トルクの時間変化量(単位時間当りの増加量)が、前輪制動トルクの時間変化量よりも小さくされることによって、動的にも後輪横力が確保されて、車両ふらつきが抑制され得る。また、制動トルクの増加が前輪のみにて行われるように構成されると、後輪の横力が十分に確保されて、進路変更時の車両ふらつきが抑制され得る。
図10は、本実施形態における車両の運動制御装置に関する他の演算処理例を示す機能ブロック図である。図4と同様である演算処理については説明を省略し、異なる箇所についてのみ説明する。
図4の演算処理では、スリップ抑制制御が実行されたことをトリガに外前輪の制動トルク増加量が制限されて、図3(b)に示すKa≒ka2の状態が生成されるが、緊急操舵状態における車両横方向の接地荷重移動量は予め予測可能であるため、図10の演算処理では、この影響が考慮されて制動トルク増加量が決定される。
目標制動トルク演算ブロック(制御手段に相当)CTL内の規範量演算ブロックPWPにて、緊急操舵が取得された場合(Kqs=1)に適用される予め設定された関係に基づいて、緊急操舵によって変動する車輪の接地荷重Fz[**]が予測される。この予め設定された関係においては、緊急操舵が判定されたときに、外前輪の接地荷重が予め設定された所定荷重(定数)fz1[fo]とされ、内前輪の接地荷重が予め設定された所定荷重(定数)fz1[fi](<fz1[fo])とされる。予測(決定)された接地荷重fz1[f*]に基づいて、緊急操舵に対応する車両の旋回運動において外前輪WH[fo]の制動トルク規範量Pwp[fo]、及び、内前輪WH[fi]の制動トルク規範量Pwp[fi]が演算される。緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側、及び、外側は、操舵量Saa、及び、旋回量Tcaのうちの少なくとも1つに基づいて演算される。接地荷重fz1[f*]に基づいて制動トルク規範量Pwp[fo]の上限量Pwz[fo]、及び、制動トルク規範量Pwp[fi]の上限量Pwz[**]が決定されて、制動トルク規範量Pwp[fo],Pwp[fi]が順次上限量Pwz[f*]にまで増加するように演算される。なお、規範量Pwp[f*]は上限量Pwz[f*]を超過しない範囲で演算される。
また、操舵量取得演算ブロックSAAにて演算される操舵量Saa、及び、旋回量取得演算ブロックTCAにて演算される旋回量Tcaのうちの少なくとも1つと、緊急操舵が取得された場合(Kqs=1)に適用される予め設定された関係(演算マップ)とに基づいて外前輪の接地荷重Fz[fo]、及び、内前輪の接地荷重Fz[fi]が予測され得る。前記演算マップの特性においては、操舵量Saa(或いは、操舵量Saaに基づいて演算される計算横加速度Gye),旋回量Tca(例えば、横加速度センサGYによって検出される実際の横加速度Gya)の増加に従って、外前輪の接地荷重Fz[fo]は増加し、内前輪の接地荷重Fz[fi]は減少する。
予測された接地荷重Fz[f*]に基づいて、緊急操舵に対応する車両の旋回運動において外前輪WH[fo]の制動トルク規範量Pwp[fo]、及び、内前輪WH[fi]の制動トルク規範量Pwp[fi]が演算される。緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側、及び、外側は、操舵量Saa、及び、旋回量Tcaのうちの少なくとも1つに基づいて演算される。接地荷重Fz[f*]に基づいて制動トルク規範量Pwp[fo]の上限量Pwz[fo]、及び、制動トルク規範量Pwp[fi]の上限量Pwz[**]が決定されて、制動トルク規範量Pwp[fo],Pwp[fi]が順次上限量Pwz[f*]にまで増加するように演算される。なお、規範量Pwp[f*]は上限量Pwz[f*]を超過しない範囲で演算される。
外前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における外側の前輪)WH[fo]の制動トルク上限量Pwz[fo]は、接地荷重Fz[fo]の60〜80%の制動力に相当する値(=(0.6〜0.8)・Fz[fo]・Rt)に決定される。また、内前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側の前輪)WH[fi]の制動トルク上限量Pwz[fi]は、接地荷重Fz[fi]の100〜120%の制動力に相当する値(=(1.0〜1.2)・Fz[fi]・Rt)に決定される。ここで、Rtはタイヤの有効半径である。外前輪及び内前輪の制動トルク規範量Pwp[fo],Pwp[fi]は、上限値Pwz[fi](<Pwz[fo])に達するまでは、同量で増加され得る。
前後配分演算ブロックPWQにて、上述の前後配分演算ブロックFRHと同様に、制動トルク規範量Pwp[**]が調整されて、目標制動トルクPwq[**]が演算される。調整後の後輪目標制動トルクPwq[r*]は制動トルク規範量Pwp[r*]から減少されることによって演算され、調整後の前輪目標制動トルクPwq[f*]は制動トルク規範量Pwp[f*]と等しい値に演算され得る。
選択演算ブロックSLCにて、調整後の目標制動トルクPwq[**]と、運転者の制動操作による制動トルクPwd[**]とが比較されて、大きい方の値が目標制動トルクPwv[**]としてスリップ抑制制御演算ブロックSLPに出力される。選択後の目標制動トルクPwv[**]の演算には、予め設定された関係によって推定された接地荷重Fz[f*]に基づいて決定された上限量Pwz[f*]が考慮され、目標制動トルクPwv[**]は、最終的に上限量Pwz[f*]にまで増加される。内前輪の制動トルク規範量Pwp[fi]はスリップ抑制制御が実行される制動トルク量(接地荷重の1〜1.2倍に相当)に決定される。また、外前輪の制動トルク規範量Pwp[fo]はスリップ抑制制御が実行されない制動トルク量(接地荷重の0.6〜0.8倍に相当)に決定されている。結果として、内前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における外側の前輪)にはスリップ抑制制御が実行され、外前輪(緊急操舵に対応する車両の旋回運動における内側の前輪)にはスリップ抑制制御が実行されない。なお、制動トルク規範量Pwp[f*]は、内前輪にスリップ抑制制御が行われる以前においては、等しい増加量をもって増加され得る。
緊急回避状態(緊急操舵)における接地荷重移動量は事前に把握が可能である。したがって、緊急操舵時の前輪接地荷重は、緊急操舵であることが取得された場合に適用される予め設定された関係(所定値fz1[f*],実際の横加速度Gya、或いは、計算横加速度Gyeに基づく演算マップ)に基づいて予測され得る。予測された接地荷重に基づいて、内前輪にはスリップ抑制制御が実行され、且つ、外前輪にはスリップ抑制制御が実行されない値にまで、制動トルク(Pwt[**],Pwu[**],Pwa[**])が増加するように構成されるため、上記と同様に、短い走行移動距離(前後移動距離)で横移動距離が確保されると共に、十分な車両減速が得られる。
WH[**]…車輪、MBR…制動手段、SW…操舵操作部材、MKQ…緊急操舵取得手段、SAA…操舵量取得手段、DSA…操舵速度取得手段、VWA…車輪速度取得手段、CTL…制御手段、SLP…スリップ抑制手段、VXA…車速取得手段、DOB…相対距離取得手段、BP…制動操作部材、BSA…制動操作量取得手段

Claims (7)

  1. 車両の車輪に制動トルクを付与する制動手段と、
    前記車両の操舵状態が緊急操舵であるか、否かを取得する緊急操舵取得手段と、
    前記緊急操舵取得手段が前記緊急操舵であることを取得した場合において、前記制動手段を介して、前記車輪に付与される制動トルクを増加する制御手段とを備える車両の運動制御装置であって、
    前記車輪の回転速度である車輪速度を取得する車輪速度取得手段と、
    前記車輪速度に基づいて、前記車輪の過大な前後スリップを抑制するスリップ抑制制御を前記車輪毎に実行するスリップ抑制手段とを備え、
    前記制御手段は、
    前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において内側の前輪に前記スリップ抑制制御が実行される場合に、前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において外側の前輪に対する前記制動トルクの時間に対する増加勾配を減少して、前記緊急操舵に対応する前記車両の旋回運動において外側の前輪に対する前記制動トルクを増加する制限制御を行うことを特徴とする車両の運動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の運動制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記スリップ抑制制御が行われる以前において、前記外側の前輪における前記制動トルクと、前記内側の前輪における前記制動トルクとを等しい増加量をもって増加することを特徴とする車両の運動制御装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記車輪のうちで後輪に対する前記制動トルクの時間変化量を、前記車輪のうちで前輪に対する前記制動トルクの時間変化量よりも小さくすることを特徴とする車両の運動制御装置。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の車両の運動制御装置において、
    前記制御手段は、
    前記車輪のうちで前輪に対する前記制動トルクを増加すると共に
    前記車輪のうちで後輪に対する前記制動トルクを保持することを特徴とする車両の運動制御装置。
  5. 請求項1乃至請求項に記載の車両の運動制御装置であって、
    前記車両の操舵操作部材の操舵速度を取得する操舵速度取得手段を備え、
    前記緊急操舵取得手段は、前記操舵速度に基づいて前記緊急操舵であることを取得することを特徴とする車両の運動制御装置。
  6. 請求項に記載の車両の運動制御装置であって、
    前記車両の旋回状態の程度を表す旋回量を取得する旋回量取得手段を備え、
    前記緊急操舵取得手段は、前記旋回量基づいて前記緊急操舵であることを取得することを特徴とする車両の運動制御装置。
  7. 請求項又は請求項に記載の車両の運動制御装置であって、
    前記車両と該車両の前方の障害物との間の相対距離を取得する相対距離取得手段と、
    前記車両の走行速度を取得する車速取得手段とを備え、
    前記緊急操舵取得手段は、
    前記相対距離、及び、前記走行速度に基づいて前記緊急操舵であることを取得することを特徴とする車両の運動制御装置。
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