以下、本発明に係るX線測定装置、試料搬送装置及びトレーを実施形態に基づいて説明する。なお、本発明がこの実施形態に限定されないことはもちろんである。また、これ以降の説明では図面を参照するが、その図面では特徴的な部分を分かり易く示すために実際のものとは異なった比率で構成要素を示す場合がある。
図1、図2及び図3は本発明に係るX線測定装置の一実施形態を示している。本実施形態のX線測定装置は、半導体装置の基板であるウエハの特性、例えば膜厚、密度、結晶性、反り等を分析するために必要となるX線像を得るためのX線測定を行うものとする。測定対象である所定サイズのウエハが規定試料である。
ここに示すX線測定装置1は、X線の漏洩を防止する防X線カバー2と、防X線カバー2の外部に設けられた複数(本実施形態では2個)の試料室3a,3bとを有している。試料室3aと試料室3bは互いに隣接している。防X線カバー2の内部には、X線測定系4と、試料搬送装置6と、試料位置調整装置7とが設けられている。
試料室3aは、閉位置にある立方体形状又は直方体形状の箱体である試料カバー8aによって区画されている空間領域である。試料室3bは、閉位置にある立方体形状又は直方体形状の箱体である試料カバー8bによって区画されている空間領域である。試料カバー8a,8bは、透明、半透明又は不透明で、一定の板厚のプラスチックによって形成されている。
試料カバー8a,8bは、それぞれ、下端のヒンジ部9a,9bを中心として正面から見て左右方向へ回転移動可能であり、図1に示す閉位置と図2に示す開位置との間で回転移動できる。符号10は試料カバー8a,8bを回転移動させる際に作業者が把持する取っ手を示している。
X線測定系4は、試料を支持する試料支持台12と、試料支持台12に対する一方の側に配設されていてX線管11を含んでいる入射光学系と、試料支持台12に対する他方の側に配設されていてX線検出器13を含んでいる受光光学系とを有している。入射光学系は、X線管11以外の適宜のX線光学要素、例えば発散スリット、ソーラスリット、モノクロメータ等から選択される少なくとも1つの要素を必要に応じて含むことができる。
受光光学系は、X線検出器13以外に、散乱スリット、受光スリット、ソーラスリット、モノクロメータ等から選択される少なくとも1つの要素を含むことができる。入射光学系、試料支持台12及び受光光学系は図示しないゴニオメータ(測角器)に支持されている。ゴニオメータは、試料支持台12に対する入射光学系の角度及び試料支持台12に対する受光光学系の角度を測角する。
X線管11はその内部に、例えば、通電によって熱電子を放出するフィラメントすなわち陰極(図示せず)と、陰極に対向して配置されたターゲットすなわち対陰極(図示せず)とを有している。通電により陰極から放出された電子束が対陰極の表面に衝突した領域からX線が放射される。この領域がX線焦点である。強度の強いX線が必要な場合はターゲットとしてロータターゲット(回転対陰極)が用いられる。
X線焦点は、通常、一方向に長い形状であり、X線焦点から放射されるX線をX線焦点の長手側から取り出したX線はその断面形状が長方形状であり、いわゆるラインフォーカスのX線ビームとなる。一方、X線焦点から放射されるX線をX線焦点の短手側から取り出したX線はその断面形状が円形又は矩形のドット状であり、いわゆるポイントフォーカスのX線ビームとなる。本実施形態では測定の種類に応じてラインフォーカス又はポイントフォーカスのX線ビームを選択して使用する。
符号Fはターゲット上のX線焦点を示しており、これがX線を発生するX線源として機能している。X線管11のX線出射窓27にはX線シャッタ28が設けられている。X線シャッタ28は通電によって開閉し、開状態でX線を通過させ、閉状態でX線の通過を遮断する。
X線検出器13は、X線を検出してその強度に応じた信号を出力するX線光学要素である。本実施形態では、X線によって励起されるフォトンを直接に電気信号に変換して出力する構成のピクセルを複数個、2次元的にアレイ化して成るフォトンカウンティング型ピクセル2次元X線検出器(すなわち、パルス計数型ピクセルアレイ2次元検出器)を用いるものとする。もちろん、その他の2次元X線検出器、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)2次元X線検出器や、その他の1次元X線検出器や、その他の0次元X線検出器等を用いても良い。
試料支持台12は、図4において、規定試料である薄い円形状のウエハ14a及び14bを位置移動しないように固定保持するものである。符号16はウエハの内部の結晶方位に対して一定の位置関係を持つように形成された方位指標であるオリエンテーション・フラット、いわゆるオリフラである。オリフラに替えて切欠きであるノッチを形成することもある。本実施形態の試料支持台12は、直径6インチのウエハ14aと直径4インチのウエハ14bの2種類を個別的に支持できるようになっている。
試料支持台12は、円板形状の基台17と、基台17の上面から突出している円板形状の突出部である受け部18と、基台17の外周側面から半径方向に突出している複数(本実施形態では4個のアーム19とを有している。受け部18の上面には、中心位置に第1の空気吸引孔としての1個の空気吸引孔21が設けられ、円周方向に等角度間隔で複数(本実施形態では6個)の空気吸引孔22が設けられている。
基台17及び受け部18の内部には空気取込み口23に通じる空気通路(図示せず)が設けられており、上記の空気吸引孔21及び22はその空気通路につながっている。空気取込み口23にホースを連結し、そのホースを通して吸引ポンプによって空気を吸引すれば、空気吸引孔21及び22から空気を吸引できる。この空気吸引により、受け部18の上面においてウエハ14a又は14bを吸着して位置移動しないように固定保持できる。
大きい方の6インチウエハ14aは、その中心部が受け部18によって吸着固定保持され、その外周縁部が4つのアーム19の先端の突出部19aによって受けられる。小さい方の4インチウエハ14bは、その中心部が受け部18によって吸着されて固定保持され、その外周縁部が受け部18の半径方向の外側へ所定幅だけリング状に張り出す。
試料支持台12は、全体構成の平面図である図3において、2次元平行移動装置26の上に設けられている。2次元平行移動装置26は試料支持台12を水平面内(図3の紙面と平行な面内)で平行移動させる。これにより、試料支持台12上に固定されている試料、すなわちウエハの所望の領域をX線照射位置へ持ち運ぶことができる。試料支持台12は、必要に応じて、面内回転機構及び/又は傾斜移動機構によって支持することもできる。
X線測定系4は、X線源Fから出射したX線を試料支持台12上に置かれた試料、すなわちウエハ14a又は14bに照射する。そして、ウエハからX線が出た場合には、そのX線をX線検出器13によって検出する。X線の角度と強度とによってX線像が求められ、このX線像を分析することにより、ウエハの特性、例えば膜厚、密度、結晶性、反り等が求められる。
試料位置調整装置7は、図3に示すように、回転子29を有している。回転子29は図3の紙面に対して直交する方向に延びている軸線X0を中心として任意の角度で回転移動できる。試料であるウエハ14a又は14bを回転子29の上面に載せた状態でその回転子29を回転させながら光学的にオリフラを検出することにより、ウエハ14a又は14bをそのオリフラが常に一定の方向を向くように、すなわちウエハ14a又は14bの方位が常に一定の方向を向くように調整できる。
試料搬送装置6は、図5に示すように、パルスモータ、サーボモータ等といった回転角度を制御可能な電動モータを動力源としている駆動部31と、駆動部31の出力軸31aに固定された第1回転アーム32と、第1回転アーム32内に設けられたパルスモータ、サーボモータ等といった回転角度を制御可能な電動モータ33と、電動モータ33の出力軸に固定された第2回転アーム34と、第2回転アーム34内に設けられたパルスモータ、サーボモータ等といった回転角度を制御可能な電動モータ36と、電動モータ36の出力軸に固定された試料保持用アーム37と、を有している。
第1回転アーム32は駆動部31の出力軸31aを中心として任意の角度だけ回転できる。第2回転アーム34は電動モータ33の出力軸を中心として任意の角度だけ回転できる。試料保持用アーム37は電動モータ36の出力軸を中心として任意の角度だけ回転できる。出力軸31aは図5の上下方向へ昇降移動でき、これにより試料保持用アーム37の上下位置を調節することができる。各アームの回転移動及び試料保持用アーム37の昇降移動により、試料保持用アーム37に載せた試料等を、互いに離れていて且つ高低差を持っている複数の場所の間で搬送できる。
試料保持用アーム37の先端は2つの枝部分、すなわち分岐部37aに分けられた形状となっており、2つの枝部分37aに挟まれた空間部分は、図4の受け部18を挿入すなわち挟むことができる形状及び大きさとなっている。従って、小さなウエハ14bが受け部18の上面に載せられている状態で、2つの枝部分37aが受け部18を挟む位置まで試料保持用アーム37を試料支持台12の上方位置へ差し入れ、さらに試料保持用アーム37を上方へ移動させることにより、受け部18の外側へ張り出しているウエハ14bの外周縁部を試料保持用アーム37の2つの枝部分37aによって受け取ることができる。
大きなウエハ14aと同じ形状のトレー72に支持された(すなわち、載せられた)試料15は、その大きさが受け部18の外径よりも小さくなっており、アーム37の枝部分37aによって持ち上げることができない試料であるので、規定外試料である。
試料保持用アーム37の枝部分37aの先端部には第4の空気吸引孔としての空気吸引孔38が開けられている。また、試料保持用アーム37の内部には空気吸引孔38に通じる空気通路が設けられている。また、その空気通路は図示しないホースを通じて吸引ポンプにつながっている。吸引ポンプによって空気を吸引すれば、空気吸引孔38から空気を吸引でき、枝部分37a上に載せられたウエハ14a又は14bをこの空気吸引によって固定保持することができる。この固定保持により、試料保持用アーム37を高速で平行移動させた場合でも、ウエハ14a,14bが試料保持用アーム37上で滑り移動することを防止できる。
図3において、試料搬送装置6の第1回転アーム32を昇降移動させ、さらに当該第1回転アーム32、第2回転アーム34及び試料保持用アーム37を個別に必要な角度だけ回転させることにより、試料保持用アーム37の先端部分37aを、試料室3a,3b、試料支持台12及び試料位置調整装置7の各要素の間で自由に平行移動させることができる。この試料保持用アーム37の平行移動により、先端部分37a上に載せたウエハ14a,14bを所望の場所へ搬送できる。なお、試料搬送装置6の具体的な構成は、これ以外の構成とすることもできる。
図2及び図3において、試料室3a,3bのそれぞれの内部に、カセット台41a,41bと、ロック装置42a,42bとが設けられている。カセット台41a及び41bの上に、それぞれ、6インチ用カセット43a及び4インチ用カセット43bが載せられている。もちろん、両方のカセット台41a及び41bに6インチ用カセット43aを載せても良いし、両方のカセット台41a及び41bに4インチ用カセット43bを載せるようにしても良い。
図6(a)は6インチ用カセット43a又は4インチ用カセット43bの背面図である。図6(b)は6インチ用カセット43a又は4インチ用カセット43bの前面図である。6インチ用カセット43aと4インチ用カセット43bは互いに相似形であり、大きさが違うだけなので、図6(a)、(b)では両者の大きさの違いを無視して形状だけを示している。
カセット43a,43bはプラスチックの射出成形によって形成されている。カセット43a,43bの内部には、試料である6インチウエハ14a又は4インチウエハ14bをその外周縁部分で支持するための受け部としての複数の棚用突起すなわち棚部材44が形成されている。1つの棚部材44によって1枚のウエハ14a,14bが支持され、例えば1つのカセットで25枚のウエハを支持できるように設定されている。測定を行うにあたっては、カセット43a,43bの上から下へ向かって番号1〜25がウエハ番号として個々のウエハに付与される。測定条件のデータは、測定者によって個々のウエハ番号ごとに設定される。
本実施形態では、図6のカセット43a,43bの棚部材44に載せることができる形状及び大きさのウエハであって、図4の試料支持台12の受け部18によって支持できる形状及び大きさのウエハを規定試料ということにする。すなわち、6インチウエハ14a及び4インチウエハ14bはいずれも規定試料である。4インチから6インチの間のサイズのウエハがあるならば、それも対応したサイズのカセットに収納でき、しかも図4の試料支持台12の受け部18に載せることができるので、規定試料に該当する。
他方、図4において、受け部18の外径と同じか、それよりも小さい径のウエハ又は他の物質は、試料保持用アーム37の先端枝部分37aによって支持することができないので規定試料ではなく、規定外試料である。また、大きさ的には受け部18よりも大きいが形状が円、矩形等といった定形でなく規則性の無い不定形な試料は、カセットの棚部材44(図6参照)に載ることもできないし、試料保持用アーム37の先端枝部分37aに載ることもできないので、規定外試料である。
規定試料は何等の支障なく、図3において、試料搬送装置6によってカセット43a,43b、試料位置調整装置7、試料支持台12の間で搬送できる。しかし、規定外試料は、それを収納できるカセットが無いか、試料搬送装置6によって搬送することができないか、あるいは、試料支持台12の受け部に載せることができない。
図7は一方のカセット台41aを拡大して示している。他方のカセット台41bの構成はこのカセット台41aの構成と同じである。カセット台41aには、位置決め用の複数の突起ブロック46と、カセット43a,43bが置かれていることを検知するための複数のセンサ47とが設けられている。センサ47はバネ等といった弾性要素に付勢されて上方へ突出している接触子を備えている。この接触子がカセット43a,43bの底辺によって押し下げられたことをセンサ47が検知することにより、カセット43a,43bの存在が検知される。
図8に示すように、6インチ用カセット43a及び4インチ用カセット43bは位置決め用の突起ブロック46によって図示のようにカセット台41a,41b上で位置決めされる。そして、カセット43a,43bがカセット台41a,41b上に置かれると、それらのカセット43a,43bがセンサ47によって検知される。
図2において、ロック装置42a,42bは後述するコンピュータからの指令に従って動作して、ロック状態又はアンロック状態のいずれかの状態をとることができる。試料カバー8a,8bが閉状態(図1参照)にあるときにロック装置42a,42bがロック状態にあると、閉状態の試料カバー8a,8bが開かないように固定、すなわちロックされる。他方、ロック装置42a,42bがアンロック状態にあると、作業者は試料カバー8a,8bを図2に示すように開くことができる。
X線測定系4によって1つのウエハに関して測定が行われているとき、そのウエハが収納されていたカセット43a又は43bは試料カバー8a又は8bによって覆われており、その試料カバー8a又は8bはロック装置42a又は42bによってロック状態に固定されて開くことができないようになっている。これにより、測定中のウエハが所属しているカセット内に収納されている複数のウエハのいずれかが交換されたり、ウエハに何等かの加工が加えられたり、いずれかのウエハが抜き取られたり、といった測定の信頼性を低下させる行為がウエハに加えられることを未然に防止できる。
なお、ロック装置42a,42bが設けられていなかったり、設けられていてもそれらが故障したりしている場合には、測定対象となっているカセット43a,43bを覆っている試料カバー8a,8bをロックできない。そのため、カセット43a,43b内のウエハ14a,14bに、測定の信頼性を低下させる行為が加えられるおそれがある。
例えば、カセット43a,43bは前面からだけしかウエハを交換できないので、このカセット43a,43bを試料室3a,3bから取り出さない限り、ウエハ14a,14bをカセット43a,43bから抜き取ることができない。従って、ロック装置42a,42bが壊れて正常に動作しなくなったときには、ウエハの交換があったか否かを検知するために、カセットが取り出されたかどうかの検査が重要になる。
このことに関し、本実施形態では、センサ47によってカセット43a,43bを検知しているので、ウエハに何等かの行為を加えるためにカセット43a,43bが持ち上げられたときには、そのことがセンサ47によって検知される。この検知により測定の信頼性が低下していると判断することができ、場合によってはそのことをディスプレイ等に表示して注意を促すこともできる。
図2、図3及び図7において、試料室3a,3bに対応した防X線カバー2の壁部に開口51が設けられている。そして、この開口51を開閉するための試料室シャッタ52が設けられている。この試料室シャッタ52は昇降ロッド53の上端に固定されている。昇降ロッド53は、下部ボックス54の内部に収納されている昇降駆動装置56によって駆動されて、自身の軸線方向へ昇降移動する。この昇降移動に従って試料室シャッタ52が昇降移動する。
試料室シャッタ52が上方位置に置かれていると、防X線カバー2の開口51が閉じられている。これにより、X線が外部へ漏えいすることが防止される。試料室シャッタ52が図7の矢印Aで示すように下方へ降下移動すると、開口51が開き、防X線カバー2の内部の測定室と試料室3a,3bとが空間的につながる。この状態で、図3において、試料搬送装置6の試料保持用アーム37の平行移動により、試料であるウエハ14a,14bをカセット43a,43bから抜き取って防X線カバー2の内部へ運んだり、あるいはX線測定系4の試料支持台12からウエハを取り上げてカセット43a,43bへ戻すことができる。
図9は、本実施形態のX線測定装置で用いられている制御系の一例の主要部を示している。本実施形態では、制御手段としてのCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)61と、記憶手段としてのメモリ62と、インターフェース63,64とを含んでいるコンピュータによって図2に示した各種の機器要素の動作が制御される。このコンピュータは、例えば図2に示すX線測定装置1の近傍に設置されたテーブルの上に設置され、測定者によって操作される。
メモリ62は、半導体メモリによって構成された内部メモリや、ハードディスク等といった外部メモリ等によって構成されている。このメモリ62には、X線測定を機能的に実現するための測定プログラム66や、測定結果のデータを記憶するための記憶領域である測定結果ファイル67や、測定のための条件を記憶するための記憶領域である測定条件ファイル68や、測定を行っているウエハの番号を記憶しておくための記憶領域であるウエハNo記憶領域69等が設定されている。
CPU61の入力ポートには、キーボード、マウス等といった入力装置71と、図7のカセット検知用のセンサ47と、図2のX線検出器13が接続されている。CPU61の出力ポートには、図3のX線測定系4を構成する各種のX線光学要素と、試料搬送装置6と、試料位置調整装置7と、図2の試料室シャッタ52のための昇降駆動装置56と、X線シャッタ28と、カバーロック装置42a,42bと、画像表示装置であるディスプレイ45が接続されている。
以下、図10、図11、図12、図13に示すフローチャートを用いて、本実施形態のX線測定装置の動作を説明する。本実施形態のX線測定装置1の制御系は、1つのカセットの中に収納された複数のウエハに対して自動的に連続してX線測定を行う制御モードである主測定モードと、主測定モードに従って測定を行っている途中に他のカセットに対する測定を割り込んで実行させる制御モードである割込み測定モードとの2つの制御モードを有している。
主測定モードは、左右いずれかの試料室3a又は3bに置かれたカセットに収納されている複数のウエハに対してX線測定を自動的に1つずつ連続して行う制御モードである。割込み測定モードは、一方の試料室3a又は3bに置かれたカセットに対して主測定モードが実行されている状態で、さらに他方の試料室3b又は3aに他のカセットを置くことにより、そのカセットに対して主測定モードに優先して行われる制御モードである。
本実施形態では、説明を簡単にするために、図2の左側のカセット台41aに載せられたカセットに収納された規定試料、例えば6インチウエハや4インチウエハに対して主測定を実行する。そして一方、右側のカセット台41bに載せられたカセットに収納された規定外試料に対して割込み測定を実行するものとする。規定外試料は、例えば図4に示すように、試料保持用アーム37の先端枝部分37aによって支持できないほどに小さい試料15である。
本実施形態では、規定外試料の測定を可能とするために、図14に示すトレー72を使用する。トレー72は、図4に示した規定試料である大きいウエハ14aと同じ形状及び大きさの器具である。トレー72は、図15に示すように、円形状の枠板73の底部に円形状の型板74を嵌めこむことによって形成されている。トレー72の外周面の一部には、ウエハ14aのオリフラ16に相当する平坦面76が形成されている。枠板73及び型板74は、共に、セラミックスや、帯電処理のコーティングが施された金属等によって形成されている。
枠板73の円形の中心部分に貫通開口77aが設けられている。そして、その近傍に第2の貫通開口78が設けられている。型板74の円形の中心部分に貫通開口77bが設けられている。貫通開口77bの近傍に断面凹形状である線分状の溝79が形成されている。そして、溝79の両端部に第3の貫通開口80,80が設けられている。型板74を枠板73の底部に嵌め込んで固着すると、図14(a)に示すトレー72が形成される。
図14(b)はトレー72の円形の中心を通るC−C線に従った断面図である。図14(c)は図15の型板74の溝79に沿ったD−D線に従った断面図である。D−D線は中心部のC−C断面線からずれている断面線である。図14(b)に示すように、トレー72の中心部分には、枠板73の貫通開口77aと型板74の貫通開口77bとが連続して貫通孔77が形成されている。
図14(c)に示すように、貫通孔77から少しずれた断面部分に、枠板73の第2の貫通開口78、型板74の線分溝79、及び第3の貫通開口80が位置している。線分溝79は、第3の貫通開口80と第2の貫通開口78とを結ぶ気体通路として機能する。
以下、主測定モード及び割込み測定モードの各測定モードを個別に説明する。なお、以降の説明では、簡単のため、X線測定装置1の正面から見て左側の試料室3aに置かれたカセットをカセット1と呼び、右側の試料室3bに置かれたカセットをカセット2と呼ぶことにする。
(主測定モード)
まず、測定者は、図6において、測定を希望する規定試料である複数の6インチウエハ14a又は4インチウエハ14bを、それぞれ、6インチ用カセット43a又は4インチ用カセット43bへ収納する。本実施形態では、最大で25枚のウエハをカセットの内部に収納できる。
その後、測定者はウエハ14a又は14bを収納したカセット43a又は43bを、図2の試料室3a内のカセット台41aの上に置き、さらに試料カバー8aを閉じる。こうして左側に置かれたカセット43a,43bがカセット1である。なお、本実施形態では左側の試料室3aに置かれたカセット、すなわちカセット1に対してだけ主測定を行うものとするが、それに代えて、カセット2に対しても主測定を行うようにプログラムすることができることは、もちろんである。
図9の制御系が起動すると、CPU61は自動的に主測定モードを選択して実行する。CPU61は、図10のステップS01で装置全体の初期設定を行い、ステップS02で入力画面を表示する。入力画面は、例えば図16に示す画面である。
図8のセンサ47によって試料室3a内に置かれたカセット1が検知されると、ステップS03〜ステップS06においてカセット1及びカセット2に関する画面表示が行われ、例えば図16に矢印Q1で示すように、カセット1が置かれていることが表示される。なお、試料室3b内にカセット2が置かれている場合には、カセット2について「投入」の表示が行われる。測定者は、カセット1タブ81をクリックしてカセット1に関するメニュー画面を表示することにより、試料室3aに置かれたカセット1に関して種々の設定を行うことができる。なお、カセット2タブ82は、後述する割込み測定モードに関する設定を行うためのタブである。
測定者は、カセット1のメニューにおいてNo.1〜No.25の試料番号ボタン83の中から、カセット1に収納したウエハの試料番号と同じ番号をクリックした上で、それらのウエハごとに測定条件を入力する。なお、全選択ボタンをクリックして、一括して全試料に対して同じ条件設定をすることもできる。測定者は、測定条件の入力を終了した後、測定の開始を希望するときに、図16の測定開始ボタン84をクリックする。
上記の測定条件としては、例えば、試料に対するX線の入射角度や、試料に対するX線の入射位置や、スリット、モノクロメータ等といったX線光学要素を使用するか使用しないか、等がある。測定条件の入力方法としては、測定者が図9の入力装置71を通して1つ1つの入力項目に関して入力を行う方法がある。また、図9の測定プログラム66は使用頻度の高いいくつかの入力項目の組み合わせを予め決定してある測定条件モデルを有しており、測定者はそれらのモデルのうちから希望するものを選択するという方法で測定条件の入力を行うこともできる。
測定者によって測定条件の入力が行われると、CPU61は図10のステップS07でその入力を確認し、さらにステップS08において、図9の測定条件ファイル68に試料番号ごとに測定条件を記憶する。その後、ステップS09で測定開始ボタン(図16の符号84)がクリックされたかどうかをチェックする。
測定開始が指示されていれば、CPU61はステップS10で図1のカセット1側の試料カバー8aをロック装置42aによってロックして開かないようにする。このロックにより、カセット1に対して測定がおこなわれている間、測定者又は第三者(測定者等という)はカセット1を外部へ取り出すことができず、従って、カセット1内のウエハを他のウエハと交換することができず、これにより、測定の信頼性を高く維持することができる。
CPU61は、次に、ステップS11で、図1のX線シャッタ28を閉じ、図2の試料室シャッタ52を開く。さらに、ステップS12において、カセット1内のウエハに対して所定の処理を行う。具体的には、図1の試料搬送装置6を用いてカセット1から番号の若いウエハ、例えばNo.1のウエハを取り出し、そのウエハを試料位置調整装置7まで搬送し、図3の回転子29の上に載せる。試料位置調整装置7は光学的手法によりウエハのオリフラを検知して、そのオリフラが常に一定の位置となるように、すなわちウエハの結晶方位が常に一定方向を向くように、ウエハの位置を回転子29の回転によって調整する。
ウエハの方位調整が終了すると、試料搬送装置6はウエハを試料支持台12まで搬送し、そのウエハを試料支持台12の上に置く。試料支持台12は空気吸引によりウエハをしっかりと保持する。ウエハは既に試料位置調整装置7によって方位調整が成されているので、試料支持台12上に置かれたウエハのX線測定系のX線光軸に対する結晶方位は常に一定である。
その後、CPU61は、ステップS13において、試料室シャッタ52を閉じ、X線シャッタ28を開き、ステップS14において、試料支持台12上のウエハ、すなわちカセット1から取り出したウエハに対して、測定者によって指示された測定条件に従ってX線測定を実行する。この測定中、CPU61は、ステップS15において、図8のセンサ47を用いてカセット1がカセット台41a上に存在しているか否かを監視する。この監視は、カセット1がカセット台41a上から取り外されたか否かを監視するものである。
本実施形態では、図1において、試料カバー8aがロック装置42aによってロックされるので、カセット1が測定中にカセット台41aから取り外されるという事態は、基本的には起こり得ない。しかしながら、何等かの緊急事態により、カセット1が意に反してカセット台41aから取り外されるという事態が起こる可能性は否定できない。それ故、センサ47を用いてカセット1の監視を行っているものである。
センサ47がカセット1を検出しなかった場合には、その旨を図9のディスプレイ45の画面上に表示する等して、カセット1が外部へ取り出されてカセット1内のウエハが交換されている可能性があることの注意を測定者に喚起する。
以上のようにして図1のX線測定系4によって測定が行われている間、測定結果のデータはステップS16において、図9の測定結果ファイル67に順次に記憶されてゆく。そして、試料支持台12上の1つのウエハに対して所定のX線測定が終了すると、図11のステップS17においてそのことが確認され、ステップS18で試料室シャッタ52が開かれ、ステップS19でそのウエハが試料搬送装置6によってカセット1へ戻される。
ステップS20は、図16においてカセット1タブ81のメニュー内の中断ボタン85がクリックされたか否かをチェックするステップである。この中断ボタン85は、測定者が主測定に代えて割込み測定を行うことを希望するときにクリックされるボタンである。今説明している主測定だけを行う場合には、この中断ボタン85はクリックされないので、ステップS20では「NO」と判断され、フローは図13のステップS47→図10のS11へ進み、カセット1内の次の試料番号のウエハに対してX線測定が自動的に連続して行われる。
こうしてカセット1内の全てのウエハ、例えばNo.25までの全てのウエハに対してのX線測定が終了すると、図13のステップS47で「YES」と判断され、試料室シャッタ52を開き(ステップS48)、ウエハをカセット1へ戻し(ステップS49)、その後、制御フローのエンドとなる。以上により、図1の左側の試料室3a内に置かれたカセット1内の複数のウエハに対して自動的で連続した測定、すなわち主測定が行われ、個々のウエハに関する測定結果、すなわちX線回折像のデータが図9の測定結果ファイル67の中にウエハごとに蓄積される。
(割込み測定モード)
次に、割込み測定モードについて説明する。
この割込み測定モードは、ある測定者の指示に従って主測定モードに則って測定が行なわれているときに、同じ測定者又は別の測定者が主測定モードに従った測定を一次中断して、異なるカセットに対してX線測定を別個に行うものである。本実施形態では、4インチウエハや6インチウエハ等といった規定試料ではなく、より小さい物質や不定形の物質等といった規定外試料に対して右側の試料室3bを使って割込み測定を実行するものとする。
主測定モードと同じ測定者又は別の測定者が割込み測定モードを実行したいと希望する場合、測定者は、まず、図21に示すように割込み測定をしたいと考えている規定外試料15をトレー72の中央部分に、具体的には貫通孔77及び第2の貫通開口78を塞ぐように設置する。規定外試料15は図4の試料支持台12の受け部18の外径よりも小さい物質である。規定外試料15が複数有る場合は、複数のトレー72に規定外試料15を1つずつ載せる。
測定者は、このようにして規定外試料15を載せたトレー72を、主測定モードに係るカセット(図1の左側の試料室3aに置かれているカセット1)とは別のカセットに収納する。そして、そのカセットを図2の右側の試料室3b内のカセット台41b上に置く。このように右側の試料室3b内に置かれたカセットがカセット2である。本実施形態ではトレー72の形状及び大きさは図4の6インチウエハ14aと同じとなっているので、割込み測定用のカセット2は主測定用のカセット1と同じ形状及び大きさのものである。
次に、測定者は、図17の入力画面に対して、矢印Q2のようにカセット1タブをクリックしてカセット1に対するメニューを開き、さらに矢印Q3のように中断ボタンをクリックする。これは、カセット1に対するX線測定を一時的に中断することを指示する操作である。
次に、測定者は、図18において、矢印Q4のようにカセット2タブをクリックしてカセット2に対するメニューを開き、試料番号ボタン83から個々の試料番号を指定しながら、各試料番号に対する測定条件を設定する。そして、割込み測定を行いたいタイミングが到来したときに矢印Q5のように測定開始ボタンをクリックする。
測定者は、割込み測定モードを選択した場合、それまで行っていた主測定を止めてしまうか、あるいは、割込み測定を終了した後に主測定を再開するか、の2通りのいずれかを選択できる。主測定の再開を希望する場合には、図19に矢印Q6で示すようにカセット2に対して割込み測定を行っているときに、矢印Q7に示すように、カセット1タブをクリックしてカセット1のメニューを表示させた上で、矢印Q8に示すように、測定開始ボタンをクリックする。この操作により、カセット2に対して割込み測定が行われている間に、その割込み測定後に主測定を再開することの予約が行われる。
図9のCPU61は、図11のステップS20において、図17の中断ボタン(矢印Q3)がクリックされたかどうかをチェックする。これは、測定者が割込み測定モードを選択したか否かをチェックすることである。測定者によって中断ボタンがクリックされていると、ステップS20で「YES」と判定され、カセット1に対して行われていた主測定がステップS21で中断される。そして、図18に矢印Q9で示すように、主測定(カセット1)が中断されたことが画面上に表示される。
そして、測定者が割込み測定のためにカセット2内のウエハに対して測定条件を入力した場合(図18参照)には、ステップS22で「YES」と判断され、そして入力された測定条件がステップS23で図9の測定条件ファイル68に記憶される。さらに、図18においてカセット2のメニュー画面で測定開始ボタンが矢印Q5のようにクリックされると、図11のステップS24で「YES」と判断される。
すると、CPU61は、ステップS25において、それまで主測定を行っていたカセット1に所属するウエハに続く次の試料番号をウエハNo記憶領域69に記憶する。次に、CPU61は、図1において、カセット2を覆っている試料カバー8bをロック装置42bによってロックして開かないように保持する(ステップS26)。これは、割込み測定が行われている間に、カセット2内のウエハに意に反して加工が加えられたり、損傷が加えられたり、他のウエハと交換されたりすることを防止するための措置である。
次に、ステップS27において、割込み測定を希望しているカセット2内のトレー72を試料支持台12へ搬送する。具体的には、まず、図21(a)に示すように、カセット2の中に収納されているトレー72の下方に試料保持用アーム37の先端枝部分37aを挿入する。この場合には、図21(b)に示すように、枝部分37aに設けた第4の空気吸引孔38がトレー72の下面(すなわち、試料を受ける面と反対側の面)の第3の貫通孔80に位置的に一致するように挿入される。
この状態で、吸引ポンプを作動して試料保持用アーム37の第4の空気吸引孔38から空気を吸引する。すると、トレー72内の溝79(すなわち気体通路)を介して、トレー72の上面(すなわち、試料を受ける面)の第2の貫通開口78から吸気吸引が行われる。この空気吸引により、規定外試料15が空気吸引されてトレー72に固着する。
次に、図3において、右側の試料室3bに置かれたカセット2から図21(b)のトレー72が試料保持用アーム37によって引き抜かれ、必要に応じて試料位置調整装置7へ搬送されて平坦面76を基準して位置調整が行われる。その後、試料保持用アーム37は図22(a)に示すように、規定外試料15を支持しているトレー72を試料支持台12の受け部18へ搬送する。最終的には、図22(b)に示すように、トレー72の貫通孔77が受け部18の第1の空気吸引孔21に位置的に一致する状態となるように、トレー72が搬送される。
この状態で空気取込み口23を介して空気が吸引され、受け部18の周縁部分の空気吸引孔22から空気が吸引されてトレー72が受け部18上に固着される。さらに、受け部18の中心部の第1の空気吸引孔21及びそれに連通するトレー72の貫通孔77から空気が引かれ、この空気吸引により規定外試料15が吸引されてトレー72に固着する。この後、試料保持用アーム37が試料支持台12から抜き出される。こうして、規定外試料15が図3のX線測定系4内の所定の試料位置に配置される。
次に、CPU61は、図12のステップS28で、図3の試料室シャッタ52を閉じた後、トレー72上の規定外試料15に対してX線測定を行う(ステップS29)。そして、測定結果を測定結果ファイル67に規定外試料ごとに記憶する(ステップS31)。そのX線測定の間、ステップS30において、カセット2が抜き取られたか否かを念のためにチェックする。念のためというのは、カセット2を覆うカバー8bはロックされていて開かないようになっているので、基本的にはカセット2は測定者等によって持ち上げられない状態にあるからである。ステップS31においてカセット2の取り上げをチェックすることにより、カセット2内のウエハが交換されたり、傷つけられたりすることにより、測定の信頼性が低下することを防止できる。
次に、CPU61は、カセット2に対して割込み測定を行っている間に測定者によってカセット1に対する測定再開の指示があったかどうか、すなわちカセット1についての続きの測定が予約されたかどうか(図19参照)を、ステップS32においてチェックする。測定再開の指示があった場合には、ステップS33で再開フラグに「1」を立てる。
次に、1個の試料についてのX線測定が終わるたびに、カセット2内の試料が順々にX線測定に供される(ステップS34で「YES」→ステップS35→ステップS36→ステップS37で「No」→ステップS27)。そして、カセット2内の全ての試料について割込み測定が完了すると(ステップS37で「YES」)、ステップS38でカセット2を覆っている試料カバー8b(図1参照)のロックを解除して、試料カバー8bを自由に開けることができる状態にする。
次に、CPU61は、ステップS39で再開フラグをチェックして「1」が立っていれば(ステップS39で「YES」)、測定者によってカセット1に対する主測定を再開するものと判断して、ステップS25で記憶された次に主測定すべきウエハ番号をメモリから読出し(ステップS40)、さらに当該ウエハ番号に対応する測定条件をステップS41においてメモリから読出して、カセット1に対する測定を再開する準備をする。
次に、ステップS42において、再開に係る主測定の対象となるウエハをカセット1から取り出し、ステップS43で試料室シャッタ52を閉じ、さらにステップS44において、そのウエハに対して測定条件の最初から測定を再開し、ステップS46で測定結果をメモリに記憶する。なお、本実施形態では、1個のウエハの測定が終了した後に中断の有無のチェックをすることにしたが、ウエハの測定の途中で中断の有無をチェックすることも可能である。この場合は、カセット1に対する主測定の中断時、ウエハに対しては既にある程度の測定が行われていたので、ステップS44において測定条件の最初から測定を再開すると、ある範囲で測定が重複することになるが、重複したデータはいずれかを削除したり、上書き保存する。
割込み測定が終了して、主測定が再開されたことは、図20に矢印Q10及びQ11で示すように、ディスプレイの画面上に表示される。
割込み測定の終了後に再開されたカセット1に対する主測定の間、ステップS45において、カセット1が抜き取られたか否かを念のためにチェックする。これにより、カセット1内のウエハが交換されたり、傷つけられたりすることにより、測定の信頼性が低下することを防止する。再開後の主測定は、カセット1内の全てのウエハについての測定が終わったときに終了する(ステップS47で「YES」)。
以上のように、本実施形態のX線測定装置においては、カセット43a,43bを置くための場所が防X線カバーの外側に設けられているので、カセットを置く場所が防X線カバーの内部に設けられている場合に比べて、割込み測定を行おうとしているカセットを容易に所定の場所におくことができ、それ故、簡単な操作だけで割込み測定を行うことができる。
また、本実施形態では、図2において、カセット43aを覆う試料カバー8aを設け、カセット43bを覆う試料カバー8bを設けた。さらに、閉じられた状態のカセット43a及び43bを、それぞれ、ロック装置42a及び42bによってロック状態、すなわち開かない状態に保持することにした。これらのため、測定者や第三者が測定中にカセットを手で持つことを禁止できる。このことは、ウエハすなわち試料に対して主測定や割込み測定を行っているときに、測定者等がカセットを持ち出してその中にあるウエハを他のウエハと交換することを禁止にしているということである。このため、本実施形態によれば、主測定に対して割込み測定を行うに際して、主測定の信頼性及び割込み測定の信頼性の両方を確保できるということである。
また、本実施形態では、図4のトレー72上に規定外試料15を載せて測定に供するようにしたので、カセットに適合しない形状の試料15をX線測定することが可能になった。
しかも、図21の試料保持用アーム37に空気吸引孔38を設け、トレー72に空気取込み用開口80、気体通路79及び吸引用開口78を設け、アーム側孔38とトレー側開口80を位置的に一致させることにしたので、アーム37によってトレー72を搬送する間、トレー72及びその上の試料15を空気吸引によってアーム37にしっかりと保持できる。
また、図22のトレー72に貫通孔77を設け、試料支持台12の受け部18に第1の空気吸引孔21を設け、受け部18の周縁部に設けた空気吸引孔22によってトレー72を吸引して支持する際には、トレーの貫通孔77と試料支持台12の空気吸引孔21とを位置的に一致させることにしたので、X線測定を行っている間、トレー72及びその上の試料15を空気吸引によって試料支持台12にしっかりと保持できる。
(変形例)
図24は、規定外試料15(図4参照)を載せるための図14に示したトレー72を改変して形成されたトレー72Cを示している。このトレー72Cが図14のトレー72と異なる点は、枠板73の試料を受ける面に試料の位置決め用の凹部85を設けたことである。この凹部85は、平面的に見て、貫通開口77a及び第2の貫通開口78を含む領域に設けられている。
この凹部85の平面形状は、規定外試料15と相似形であって、規定外試料15よりもわずかに大きい形状となっている。また、凹部85の深さは、規定外試料15の厚さよりも浅くなっている。トレー72Cにおいて凹部85を設けたこと以外は図14のトレー72と同じであり、同じ要素については同じ符号を付して示すことにして、その説明を省略する。
このトレー72Cを用いる場合、測定者は測定に先立って規定外試料15を凹部85の中に収容する。これにより、トレー72Cをカセット43a,43b(図6参照)に設置し、さらにそのカセット43a,43bを図2のカセット台41a,41bに設置するまでの間、規定外試料15がトレー72Cの上で大きく動いたり、トレー72Cから落下したりしないように、凹部85によって保持できる。
(その他の実施形態)
以上、好ましい実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はその実施形態に限定されるものでなく、請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々に改変できる。
例えば、上記実施形態では試料として、規定試料として6インチウエハ及び4インチウエハの2種類を考慮したが、規定試料のサイズはそれらに限られない。
また、試料はウエハに限られず、他の任意の物質を試料とすることができる。但しその場合には、試料を収納するカセットの構成を試料に合わせる必要がある。
上記実施形態では、2つの試料室を設けたが、試料室を3つ以上設けることも可能である。
上記実施形態では、X線測定装置1の正面から見て左側の試料室3aに置かれたカセット43a又は43bをカセット1と称し、右側の試料室3bに置かれたカセット43a又は43bをカセット2と称し、カセット1に対して主測定を行い、カセット2に対して割込み測定を行った。しかしながら、カセット2に対して主測定を行い、カセット1に対して割込み測定を行うことも可能である。もちろん、割込み測定を行うことなく、主測定だけで測定が終了することもある。
上記実施形態では、カセット2に対する割込み測定モードの実行の後にカセット1に対する主測定モードを再開するとき、ウエハNo記憶領域69に記憶されている試料番号に基づいて主測定モードを当該試料に対して初めから演算することにした。しかしながらこれに代えて、割込み測定が指示されるまでに主測定によって求められた測定結果を記憶しておいて、割込み測定の終了後に主測定を再開する際には、中断する前に得られた測定結果以降の測定結果を中断後の主測定によって求めるようにしても良い。
上記実施形態では、図2の左側の試料室3aに置かれたカセット1に対して主測定を行うようにプログラムする場合を例示した。しかしながら、これに代えて、例えば図2の左側の試料室3aにカセット1が置かれておらず右側の試料室3bにカセット2が置かれているだけの場合は、カセット2に対して主測定を行うようにプログラムすることもできる。
上記の実施形態では、図2の左側の試料室3aに置かれたカセット1に対して主測定を行い、右側の試料室3bに置かれたカセット2に対して割込み測定を行うという制御を行う場合を例示した。しかしながら、これに代えて、カセット1及びカセット2の両方に対して連続して主測定を行い、その途中のいずれかの時点でカセット1又はカセット2を別の割込み測定用のカセットに交換して割込み測定を行い、割込み測定の終了後には割込み測定用のカセットを主測定用のカセット1又はカセット2に再び交換し、主測定を継続して実行するようにプログラムすることもできる。
上記実施形態では、割込み測定を行う試料を規定外試料とし、この規定外試料をトレーに載せて測定を行うものとした。しかしながらこれに代えて、主測定を行う試料を規定外試料とし、これをトレーに載せて測定を行うこともできる。
上記実施形態では、図14に示したように、トレー72の中心部に貫通孔77を設け、この貫通孔77からの空気吸引により、トレー72に載せられた試料を固着して保持するようにした。しかしながら、これに代えて、図23に示すトレー72Aのように、図14の貫通孔77を設けることを止め、トレー72Aの試料を受ける面内に規定外試料よりもわずかに大きな凹部85を、例えばザグリ加工によって設けることもできる。
この実施形態では、アーム37によってトレー72を搬送する場合には第2の開口78からの空気吸引によって規定外試料の位置ズレや落下を確実に防止する。一方、規定外試料を試料支持台12に載せてX線測定を行う際には、規定外試料を空気吸引により固着するのではなく、凹部85を用いて位置ズレしないように位置決めする。なお、凹部85は規定外試料の形状と相似形に形成することが望ましく、例えば規定外試料が規定寸法よりも小さいウエハである場合は、凹部85はウエハ形状に形成される。
上記実施形態では、図4に示したように、規定外試料15を載せるためのトレー72を、規定試料であるオリフラ又はノッチ付の半導体ウエハ14a,14bと同じ形状とした。しかしながら、トレー72の形状は、カセット43a,43b(図6参照)に装着でき、試料支持台12の受け部18(図4参照)に載せることができ、しかもアーム37で搬送可能な形状であれば、それ以外の任意の形状とすることができる。例えば、角型形状とすることができる。
上記実施形態では、図14及び図15に示したように、枠板73と型板74との2つの部品の組み合わせによって規定試料であるウエハと同じ形状のトレー72を構成した。しかしながら、これに代えて、図25に示すように、外形形状が規定試料であるウエハと同じ形状である型板75と、小型の付加部材86との2つの部品の組み合わせによってトレー72Bを構成することもできる。
型板75は試料を載せる側の面(図の上側の面)と反対側の面(図の下側の面)にザグリ加工によって形成された細長い長円形状の凹部87を有している。中心部の貫通開口77の近傍に別の貫通開口78が設けられており、この貫通開口78は細長い溝である上記の凹部87につながっている。
付加部材86は、型板75に形成した溝状凹部87の内部に嵌め込まれる形状を有している。付加部材86は、細長い長円形状の凹部88を有しており、この凹部88が図15の実施形態における気体通路用の溝79として機能する。凹部88の両端部には、第3の貫通開口80が設けられている。付加部材86を型板75の溝状凹部87へ嵌め込むことにより、図14に示したトレー72と外観的に同じ形状のトレー72Bが作製される。