以下に、本発明に係る車両の変速指示システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
[実施例]
本発明に係る車両の制御システムの実施例を図1から図7に基づいて説明する。
本発明に係る制御システムの適用対象たる車両とは、機械エネルギを動力とする機械動力源と電気エネルギを変換した機械エネルギを動力とする電気動力源とを備え、機械動力源の動力のみを用いたエンジン走行モードと、電気動力源の動力のみを用いた複数のEV走行モードと、機械動力源及び電気動力源の双方の動力を用いたハイブリッド走行モードと、を運転者が手動で切り替えることの可能なハイブリッド車両である。
最初に、このハイブリッド車両の一例について図1を用いて説明する。この図1の符号1は、本実施例のハイブリッド車両を示す。
このハイブリッド車両1は、機械動力源として、出力軸(クランクシャフト)11から機械的な動力(エンジントルク)を出力するエンジン10を備える。そのエンジン10としては、内燃機関や外燃機関等が考えられる。このエンジン10は、その動作がエンジン用の電子制御装置(以下、「エンジンECU」という。)101によって制御される。このエンジン10には、エンジンECU101によって始動時に駆動制御されるスタータモータ12が設けられている。ここでは、そのエンジンECU101と後述するハイブリッドECU100のエンジン制御に係る機能とによってエンジン制御装置(機械動力源制御装置)が構成される。
また、このハイブリッド車両1は、電気動力源として、モータ、力行駆動可能なジェネレータ又は力行及び回生の双方の駆動が可能なモータ/ジェネレータを備える。ここでは、モータ/ジェネレータ20を例に挙げて説明する。このモータ/ジェネレータ20は、例えば永久磁石型交流同期電動機として構成されたものであり、その動作がモータ/ジェネレータ用の電子制御装置(以下、「モータ/ジェネレータECU」という。)102によって制御される。ここでは、そのモータ/ジェネレータECU102と後述するハイブリッドECU100のモータ/ジェネレータ制御に係る機能とによってモータ/ジェネレータ制御装置(電気動力源制御装置)が構成される。力行駆動時には、モータ(電動機)として機能して、二次電池25とインバータ26を介して供給された電気エネルギを機械エネルギに変換し、回転軸21から機械的な動力(モータ力行トルク)を出力する。一方、回生駆動時には、ジェネレータ(発電機)として機能して、回転軸21から機械的な動力(モータ回生トルク)が入力された際に機械エネルギを電気エネルギに変換し、インバータ26を介して電力として二次電池25に蓄える。
このハイブリッド車両1には、その二次電池25の充電状態(SOC:state of charge)を検出する電池監視ユニット27が設けられている。その電池監視ユニット27は、検出した二次電池25の充電状態に係る信号(換言するならば、残存容量量(SOC量)に関する信号)をモータ/ジェネレータECU102に送信する。そのモータ/ジェネレータECU102は、その信号に基づいて二次電池25の充電状態の判定を行い、その二次電池25の充電の要否を判定する。
また、このハイブリッド車両1は、有段の手動変速機30等からなる動力伝達装置を備えている。その動力伝達装置は、エンジン10やモータ/ジェネレータ20の動力(エンジントルクやモータ力行トルク)を駆動力として駆動輪WL,WRに伝えるものである。
手動変速機30には、エンジントルクが入力される入力軸41と、この入力軸41に対して間隔を空けて平行に配置され、駆動輪WL,WR側にトルクを出力する出力軸42と、が設けられている。
その入力軸41には、クラッチ50を介してエンジントルクが入力される。そのクラッチ50は、エンジン10の出力軸11と入力軸41とを係合させる係合状態と、その出力軸11と入力軸41とを係合状態から解放(非係合)させる解放状態(非係合状態)と、の切り替えができるように構成された例えば摩擦クラッチ装置である。ここで言う係合状態とは、その出力軸11と入力軸41との間でのトルクの伝達が可能な状態のことであり、解放状態(非係合状態)とは、その出力軸11と入力軸41との間でのトルクの伝達が行えない状態のことである。このクラッチ50は、その係合状態と解放状態の切り替え動作が運転者のクラッチペダル51の操作に従いリンク機構やワイヤー等を介して機械的に行われるものである。
本実施例においては、その出力軸42にモータ/ジェネレータ20の回転軸21を連結する。従って、そのモータ/ジェネレータ20を力行駆動させたときには、モータ力行トルクが出力軸42を介して手動変速機30に伝わる。これに対して、このモータ/ジェネレータ20を回生駆動させたときには、その出力軸42からの出力トルクがモータ/ジェネレータ20のロータに伝達される。
更に、ここで例示する手動変速機30は、前進5段、後退1段の変速段を有するものであって、前進用の変速段として第1速ギア段31,第2速ギア段32,第3速ギア段33,第4速ギア段34及び第5速ギア段35を備え、且つ、後退用の変速段として後退ギア段39を備えている。前進用の変速段は、変速比が第1速ギア段31,第2速ギア段32,第3速ギア段33,第4速ギア段34,第5速ギア段35の順に小さくなるよう構成している。尚、図1の手動変速機30はその構成を簡易的に説明したものであり、各変速段の配置については、必ずしも図1の態様になるとは限らない。
本実施例の動力伝達装置においては、クラッチ50を係合状態にすることで、入力軸41に入力されたエンジントルクが各変速段(ギア段31〜35,39)の内の何れか1つで変速されて出力軸42に伝わる。また、この動力伝達装置においては、モータ力行トルクが出力軸42に伝わる。この動力伝達装置においては、その出力軸42から出力されたトルクが最終減速機構61で減速され、差動機構62を介して駆動力として駆動輪WL,WRに伝達される。
ここで、第1速ギア段31は、互いに噛み合い状態にある第1速ドライブギア31aと第1速ドリブンギア31bの歯車対で構成する。その第1速ドライブギア31aは、入力軸41上に配置される一方、第1速ドリブンギア31bは、出力軸42上に配置される。第2速ギア段32から第5速ギア段35についても、第1速ギア段31と同様の第2速ドライブギア32a〜第5速ドライブギア35aと第2速ドリブンギア32b〜第5速ドリブンギア35bを有する。
一方、後退ギア段39については、後退ドライブギア39aと後退ドリブンギア39bと後退中間ギア39cとで構成する。その後退ドライブギア39aは、入力軸41上に配置され、後退ドリブンギア39bは、出力軸42上に配置される。また、後退中間ギア39cは、後退ドライブギア39a及び後退ドリブンギア39bと噛み合い状態にあり、回転軸43上に配置される。
この手動変速機30の構成においては、各変速段のドライブギアの内の何れかが入力軸41と一体になって回転するように配設される一方、残りのドライブギアが入力軸41に対して相対回転するように配設される。また、各変速段のドリブンギアは、その内の何れかが出力軸42と一体になって回転するように配設される一方、残りが出力軸42に対して相対回転するように配設される。
また、入力軸41や出力軸42には、運転者の変速操作に従って軸線方向に移動するスリーブ(図示略)が配設されている。入力軸41上のスリーブは、その入力軸41と相対回転可能な2つの変速段の各ドライブギアの間に配置される。一方、出力軸42上のスリーブは、その出力軸42と相対回転可能な2つの変速段の各ドリブンギアの間に配置される。このスリーブは、変速操作装置71を運転者が操作した際に、その変速操作装置71に連結されている図示しないリンク機構やフォークを介して軸線方向への移動を行う。そして、移動後のスリーブは、移動された方向に位置する相対回転可能なドライブギアやドリブンギアを入力軸41や出力軸42と一体回転させる。この手動変速機30においては、そのスリーブが運転者の変速操作装置71の変速操作に対応した方向に移動し、これによりその変速操作に応じた変速段への切り替え又はニュートラル状態(つまり入力軸41と出力軸42との間でトルクの伝達が行えない状態)への切り替えが実行される。
その変速操作装置71は、図2に示す如く、運転者が変速操作する際に使用するシフトレバー71a、このシフトレバー71aを夫々の変速段毎にガイドする所謂シフトゲージ71b、上記のリンク機構やフォーク等を備えている。図2は、手動変速機30をニュートラル状態に操作するときのシフトレバー71aの位置を示している。尚、この図2のシフトゲージ71b上の「1〜5」と「R」は、夫々に第1速ギア段31〜第5速ギア段35と後退ギア段39の変速位置(セレクト位置)を示している。
このハイブリッド車両1においては、その走行モードとして、エンジン走行モードと2種類のEV走行モードとハイブリッド走行モードとが少なくとも用意されている。
このハイブリッド車両1では、シフトレバー71aがシフトゲージ71b上の変速位置1〜5,Rの内の何れかに位置しているときに、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードが選択される。
一方、このハイブリッド車両1においては、EV走行モードが選択されるときに運転者によって操作されるEV走行モード切替装置を利用する。ここでは、そのEV走行モード切替装置としての機能を変速操作装置71にもたせることにする。つまり、本実施例の変速操作装置71は、運転者に手動変速機30の変速段を切り替えさせるだけでなく、運転者がEV走行モードに切り替える際のEV走行モード切替装置としての機能も兼ね備えている。例えば、この変速操作装置71は、変速位置1〜5,Rと同様のシフトレバー71aのセレクト位置であって、第1EV走行モードに切り替える為の第1EV走行モード選択位置EV1と、第2EV走行モードに切り替える為の第2EV走行モード選択位置EV2と、をシフトゲージ71b上に備えている。本実施例のハイブリッド車両1においては、シフトレバー71aが図3に示す如く第1EV走行モード選択位置EV1へと操作された際に、走行モードが第1EV走行モードとなる。これと同じように、シフトレバー71aが第2EV走行モード選択位置EV2へと操作されたときには、走行モードが第2EV走行モードとなる。このハイブリッド車両1においては、シフトレバー71aが第1EV走行モード選択位置EV1又は第2EV走行モード選択位置EV2へと操作されたときに、手動変速機30がスリーブ等によってニュートラル状態になる。
その変速操作装置71には、シフトレバー71aが第1EV走行モード選択位置EV1に位置しているのか否か又は第2EV走行モード選択位置EV2に位置しているのか否かを検出するEV走行モード選択位置検出部72が設けられている。このEV走行モード選択位置検出部72とは、例えば、シフトレバー71aが第1EV走行モード選択位置EV1又は第2EV走行モード選択位置EV2にあることを検出可能な位置情報検出センサ等であり、シフトレバー71aが第1EV走行モード選択位置EV1にある又は第2EV走行モード選択位置EV2にあるとの判断を可能にする。このEV走行モード選択位置検出部72の検出信号は、車両全体の動作を統括的に制御する電子制御装置(以下、「ハイブリッドECU」という。)100に送信される。
そのハイブリッドECU100は、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102との間で夫々に各種センサの検出信号や制御指令等の情報の授受ができる。本実施例においては、少なくともそのハイブリッドECU100、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102が車両の制御システムの構成要件となっている。
また、この変速操作装置71は、シフトレバー71aがシフトゲージ71b上のどの変速位置1〜5,Rにあるのかについて、つまり運転者がどの変速段を選択したのか否かを検出する変速位置検出部73を備えている。その変速位置検出部73は、例えば、シフトレバー71aがどの変速位置1〜5,Rにあるのかを検出可能な位置情報検出センサ等を利用すればよい。その検出信号は、ハイブリッドECU100に送られる。このハイブリッドECU100は、その検出信号に基づいて、運転者の選択した変速段、現状の変速段を判断する。尚、ここでは、便宜上、その変速位置検出部73をEV走行モード選択位置検出部72とは別のものとして例示したが、これらを1つに統合したシフトレバー位置検出部(図示略)に置き換えてもよい。ここで、そのハイブリッドECU100には、この技術分野にて知られている周知の技術を利用して、エンジントルクや車輪速度等から現在の変速段を推定させてもよい。
シフトレバー71aが変速位置1〜5,Rに操作されている場合、ハイブリッドECU100は、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードの内の何れか一方を選択する。例えば、このハイブリッドECU100は、設定した運転者の駆動要求(要求駆動力)、モータ/ジェネレータECU102から送られてきた二次電池25の充電状態の情報(SOC量)、車両走行状態の情報(図示しない車両横加速度検出装置により検出された車両横加速度、車輪スリップ検出装置により検出された駆動輪WL,WRのスリップ状態等の情報)に基づいて、エンジン走行モードとハイブリッド走行モードの切り替えを行う。
ハイブリッドECU100は、エンジン走行モードを選択した場合、エンジントルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102に制御指令を送る。この場合には、エンジンECU101への制御指令として、例えば現状の変速段又は変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクの情報が送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン10の燃料噴射量等の制御を行う。一方、モータ/ジェネレータECU102には、モータ/ジェネレータ20をモータとしてもジェネレータとしても動作させないよう制御指令を送る。
これに対して、このハイブリッドECU100は、ハイブリッド走行モードを選択した場合、エンジントルクとモータ/ジェネレータ20のモータ又はジェネレータとしての出力で要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102に制御指令を送る。この場合、エンジントルクとモータ力行トルクの双方を用いるときには、エンジンECU101とモータ/ジェネレータECU102への制御指令として、例えば現状の変速段又は変速操作後の変速段でその要求駆動力を満足させるエンジントルクとモータ力行トルクの情報が夫々に送信される。これにより、そのエンジンECU101は、そのエンジントルクを発生させるようにエンジン10の制御を行い、モータ/ジェネレータECU102は、そのモータ力行トルクを発生させるようにモータ/ジェネレータ20への給電量を制御する。また、モータ/ジェネレータ20で電力の回生を行わせるときには、モータ/ジェネレータECU102に対してモータ/ジェネレータ20をジェネレータとして動作させるよう制御指令を送る。その際、例えば、エンジンECU101には、モータ回生トルクの分だけ増加させたエンジントルクの情報が送られる。
また、シフトレバー71aが第1EV走行モード選択位置EV1又は第2EV走行モード選択位置EV2に操作されている場合、ハイブリッドECU100は、モータ力行トルクのみで要求駆動力を発生させるように、エンジンECU101及びモータ/ジェネレータECU102に制御指令を送る。この場合には、モータ/ジェネレータECU102への制御指令として、その要求駆動力を満足させるモータ力行トルクの情報が送信される。ここで、本実施例においては、第1EV走行モードが発進時等の低速時に使用され、第2EV走行モードが中車速以上の定常走行時に使用されるように設定されている。これが為、第1EV走行モード(EV1)は、図4に示す如く、低車速域において発進に要する大きなEV走行の車両加速度aevを発生させることが可能な出力特性となるように設定されている。一方、第2EV走行モード(EV2)は、図4に示す如く、中車速以上(特に中車速)の定常走行を可能にするEV走行の車両加速度aev、つまり中車速以上で車速を維持できる程度の低車速域よりも小さな車両加速度aevを発生させることが可能な出力特性となるように設定されている。要求駆動力を満足させるモータ力行トルクは、選択された第1EV走行モード又は第2EV走行モードの出力特性に基づいて設定される。ところで、手動変速機30がニュートラル状態のときにエンジン10が動いていると、燃費を悪化させてしまうので、エンジンECU101には、燃費を向上させるべく、エンジン10の動作を停止させる制御指令を送る。更に、この第1又は第2のEV走行モードにおいては、運転者がアクセルペダル75から足を離したとき又はブレーキ操作等でハイブリッド車両1の減速要求を行ったときに、モータ/ジェネレータECU102に対して回生制動できるよう制御指令を送らせてもよい。
本実施例のハイブリッド車両1においては、運転者によるクラッチ50の操作と変速操作装置71の操作を契機にして、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードと第1EV走行モードと第2EV走行モードとの間の切り替えが実行される。つまり、本実施例のクラッチ50、クラッチペダル51及び変速操作装置71は、運転者に走行モードを手動で選択させる為の走行モード選択装置であるとも云える。運転者は、エンジン走行モード又はハイブリッド走行モードから第1又は第2のEV走行モードへと切り替える際、クラッチ50の解放操作、シフトレバー71aの変速位置1〜5から第1EV走行モード選択位置EV1又は第2EV走行モード選択位置EV2への操作、クラッチ50の係合操作を順に行う。その際、ハイブリッドECU100の受信する検出信号は、変速位置検出部73の検出信号からEV走行モード選択位置検出部72の検出信号に変わる。一方、第1又は第2のEV走行モードからエンジン走行モード又はハイブリッド走行モードへと切り替える際には、クラッチ50の解放操作、第1EV走行モード選択位置EV1又は第2EV走行モード選択位置EV2からシフトレバー71aの変速位置1〜5への操作、クラッチ50の係合操作が順に行われる。その際にハイブリッドECU100の受信する検出信号は、EV走行モード選択位置検出部72の検出信号から変速位置検出部73の検出信号に変わる。
ところで、二次電池25の出力制限Woutは、電池状態(二次電池25の温度やSOC量)から一意に決められている。本実施例においては、その出力制限Woutを第1EV走行モードと第2EV走行モードに対して一律に適用するのではなく、夫々のEV走行モード毎に出力制限を設定する。
ここで、この例示では、第1EV走行モードと第2EV走行モードが図4に示す出力特性を持っている。これが為、車両発進性能と燃費性能とを比較考量すると、このハイブリッド車両1は、エンジン走行モードで発進させるよりも第1EV走行モードで発進させる方が良好な燃費性能を得ることができる。一方、第2EV走行モードは、中車速以上の定常走行時、つまり道路環境の見通しの良い巡航時での使用が想定される。これが為、このハイブリッド車両1は、エンジン走行モードで軽負荷運転させるよりも第2EV走行モードで走行させる方が良好な燃費性能を得ることができる。但し、夫々の車速域においてエンジン走行モードから第1EV走行モード又は第2EV走行モードへと置き換えたときの燃費の向上代を観ると、その向上代は、定常走行時に第2EV走行モードへと置き換えたときよりも、発進時に第1EV走行モードへと置き換えたときの方が大きい。従って、燃費性能の観点からは、第2EV走行モードよりも第1EV走行モードの使用に制限が掛かり難いことの方が望ましい。
また、このハイブリッド車両1においては、燃費性能の点からも発進時に第1EV走行モードを選択する可能性が高いが、第1EV走行モードの使用が制限されることによって、運転者がエンジン走行モードに切り替えなければ発進できない可能性がある。これに対して、このハイブリッド車両1は、第2EV走行モードの使用が制限されたとしても、直ちに車両が停止するわけではなく、また、第2EV走行モードの車両加速度aevが小さいので大きな車両減速度が発生するわけでもない。従って、運転者の車両操作性の観点からは、第1EV走行モードの使用を制限される方が第2EV走行モードの使用を制限されるよりも他の走行モードへの切り替え操作を強いられる可能性が高く、運転者に煩わしさを与え易い。
これらの理由から、このハイブリッド車両1においては、第1EV走行モードの出力制限Woutev1を第2EV走行モードの出力制限Woutev2よりも大きくし(Woutev1>Woutev2)、第2EV走行モードよりも第1EV走行モードの使用に制限が掛かり難くする。つまり、ここでは、二次電池25の出力を第2EV走行モードよりも第1EV走行モードに対して優先的に割り当てるようにする。その第1及び第2のEV走行モードの出力制限Woutev1,Woutev2は、運転者の車両操作性と第1及び第2のEV走行モードの夫々の燃費性能の大小関係とを考慮して、予め定めた設計値として設定する。この出力制限Woutev1,Woutev2は、二次電池25の出力制限Wout以下に設定する。
ここで、このハイブリッド車両1においては、二次電池25の電池状態に拘わらず、第1EV走行モードでの車両発進性能を確保しておくことが望ましい。また、二次電池25のSOC量が多いほど、二次電池25の出力制限Woutが緩やかになるので、第2EV走行モードの出力制限Woutev2を大きくしてもよい。一方、低SOC量のときには、二次電池25の出力制限Wout自体が厳しくなるので、車両発進性能の確保を優先させるべく、二次電池25の出力制限Woutを第1EV走行モードの出力制限Woutev1に対して優先的に割り当てることが好ましい。これらの点を考慮して、ここでは、図5に示す係数Kev1,Kev2を予め設定しておく。第1EV走行モードの出力制限Woutev1は、その係数Kev1と二次電池25の出力制限Woutを用いた下記の式1で演算でき、第2EV走行モードの出力制限Woutev2は、その係数Kev2と二次電池25の出力制限Woutを用いた下記の式2で演算できる。
Woutev1=Wout*Kev1 … (1)
Woutev2=Wout*Kev2 … (2)
第1EV走行モードの出力制限Woutev1は、SOC量に関係なく係数Kev1(=1)に設定している。一方、第2EV走行モードの係数Kev2は、1よりも小さく、且つ、SOC量が低いほど小さく設定している。特に、低SOC量(例えばハイブリッドシステムの動作に最低限必要とされるSOC量又は同程度のSOC量)のときには、第2EV走行モードの係数Kev2を0に設定している。このハイブリッド車両1においては、SOC量に拘わらず二次電池25の出力が第1EV走行モードに対して優先的に割り当てられるので、第1EV走行モードからエンジン走行モードやハイブリッド走行モードへの切り替え操作を運転者に強いる頻度を減らすことができ、運転者に煩わしさを与える可能性を減らすことができる。また、低SOC量のときには、二次電池25の出力を第2EV走行モードで使用させないので、第1EV走行モードでの車両発進性能を確保できる。
ここでは係数Kev1,Kev2をSOC量に応じた値として設定しているが、その係数Kev1,Kev2は、二次電池25の温度を考慮してもよい。例えば、車両発進性能を得るべく第1EV走行モードの係数Kev1(=1)は二次電池25の温度で変化させないが、第2EV走行モードの係数Kev2については、その温度が低いほど図5の例示よりも小さくする。
また、ここでは、第1及び第2のEV走行モードの出力制限Woutev1,Woutev2を上述したような設計値(固定値)としている。しかしながら、第1EV走行モードと第2EV走行モードの実際の使用形態は、必ずしも設計段階で設定した通りになるとは限らず、運転者や走行環境等に応じて変わる。例えば、第1EV走行モードと第2EV走行モードの出力特性が図4の例示の如きものの場合、市街地では、郊外での走行に対して、停車と発進の繰り返しが多くなるので、車両発進性能と燃費性能の両立が可能な第1EV走行モードの選択頻度が増える。一方、郊外では、市街地での走行に対して、中車速以上で定常走行される可能性が高くなるので、第2EV走行モードの選択時間が長くなる。そこで、その第1及び第2のEV走行モードの出力制限Woutev1,Woutev2は、運転者による実際のEV走行モードの使用形態に応じて変更できるようにしてもよい。
ハイブリッドECU100には、運転者による実際のEV走行モードの使用形態を把握させ、その使用形態に基づいて、多用されているEV走行モードほど出力制限を緩く設定させる。その際、出力制限を際限なく緩くしてしまうと、二次電池25の劣化を招いてしまう可能性がある。故に、予め定めてある一定の範囲内でのみ出力制限Woutev1,Woutev2の幅を変更できるようにしておき、出力制限Woutev1,Woutev2の変更に伴う二次電池25の劣化度合いへの影響を無くす又は抑えるようにすることが望ましい。
具体的には、運転者による実際のEV走行モードの使用形態を第1及び第2のEV走行モードにおける夫々の選択頻度、選択時間及び消費エネルギ(二次電池25の電力消費量に相当)に基づき把握し、その選択頻度等に基づいて係数Kev1,Kev2を補正する。
例えば、ハイブリッドECU100は、図6のフローチャートに示すように、走行中か否かを判定し(ステップST1)、走行中でなければ本演算処理を一旦終わらせる。一方、走行中であれば、ハイブリッドECU100は、運転者による走行モードの選択が第1EV走行モードの選択であるのか否かを判定する(ステップST2)。
ハイブリッドECU100は、第1EV走行モードへの選択の場合、第1EV走行モードの累積選択時間Tev1、累積選択回数Cev1及び累積消費エネルギEev1を演算する(ステップST3〜ST5)。累積選択時間Tev1、累積選択回数Cev1及び累積消費エネルギEev1は、初めて第1EV走行モードが選択された時点を起算点として積算する。ここで、係数Kev1がリセットされたときには、リセット後に初めて第1EV走行モードが選択された時点を起算点とする。その第1EV走行モードが選択された時点は、第1EV走行モード選択位置EV1への操作後、クラッチ50の係合操作を終えた時点とする。
一方、ハイブリッドECU100は、第1EV走行モードへの選択ではないと判定した場合、運転者による走行モードの選択が第2EV走行モードの選択であるのか否かを判定する(ステップST6)。そして、第2EV走行モードへの選択の場合、ハイブリッドECU100は、第1EV走行モードが選択されたときと同様にして、第2EV走行モードの累積選択時間Tev2、累積選択回数Cev2及び累積消費エネルギEev2を演算する(ステップST7〜ST9)。
ハイブリッドECU100は、第1EV走行モードの累積選択時間Tev1、累積選択回数Cev1及び累積消費エネルギEev1と、第2EV走行モードの累積選択時間Tev2、累積選択回数Cev2及び累積消費エネルギEev2と、に基づいて、第1EV走行モードの係数Kev1と第2EV走行モードの係数Kev2とを演算する(ステップST10)。
Kev1=f1(Kev1−old、Tev1、Tev2、Cev1、Cev2、Eev1、Eev2)
…(3)
Kev2=f2(Kev2−old、Tev1、Tev2、Cev1、Cev2、Eev1、Eev2)
…(4)
式3のKev1−oldは現在の第1EV走行モードの係数であり、式4のKev2−oldは現在の第2EV走行モードの係数である。ここで、関数f1,f2は、係数Kev1,Kev2が「Kev−min<Kev*<Kev−max(*=1or2)」の範囲内で更新されるものとする。そのKev−minとKev−maxは、前述した出力制限Woutev1,Woutev2の幅の変更が可能な範囲の下限と上限を定める為のものである。また、その関数f1,f2は、Kev1が1に更新されるならば(Kev1=1)、Kev2が1よりも小さくなるように更新され(Kev2<1)、Kev2が1に更新されるならば(Kev2=1)、Kev1が1よりも小さくなるように更新されるものとする(Kev1<1)。
その関数f1,f2は、例えば、或る特定のEV走行モードを使いたいという運転者の意思を優先させるのであれば、累積選択時間Tev1,Tev2や累積選択回数Cev1,Cev2の重みを累積消費エネルギEev1,Eev2の重みよりも大きくし、燃費性能の向上を優先させるのであれば、累積選択時間Tev1,Tev2や累積選択回数Cev1,Cev2の重みよりも累積消費エネルギEev1,Eev2の重みを大きくするように設定すればよい。また、関数f1,f2は、その運転者の意思と燃費性能とを各々に適した状態で両立させるべく、累積選択時間Tev1,Tev2、累積選択回数Cev1,Cev2及び累積消費エネルギEev1,Eev2の重み付けを設定してもよい。
更に、関数f1,f2は、例えば、SOC量に拘わらず一律の大きさや割合で現在の第1及び第2のEV走行モードの係数Kev1−old,Kev2−oldを補正するよう設定されたものでもよく、SOC量が低いほど補正の幅を狭めるよう設定されたものでもよい。後者の場合、例えば図4の例示では、低SOC量のときに第1EV走行モードの使用の制限が大幅に厳しくなり、且つ、第2EV走行モードの使用の制限が大幅に緩まる可能性を排除できる。
このステップST10においては、第1EV走行モードへの選択の場合、新たな第1EV走行モードの累積選択時間Tev1、累積選択回数Cev1及び累積消費エネルギEev1と、現在の第2EV走行モードの累積選択時間Tev2、累積選択回数Cev2及び累積消費エネルギEev2と、に基づいて、ハイブリッドECU100の記憶装置から読み込んだ現在の第1及び第2のEV走行モードの係数Kev1−old,Kev2−oldを補正する。また、第2EV走行モードへの選択の場合には、現在の第1EV走行モードの累積選択時間Tev1、累積選択回数Cev1及び累積消費エネルギEev1と、新たな第2EV走行モードの累積選択時間Tev2、累積選択回数Cev2及び累積消費エネルギEev2と、に基づいて、現在の第1及び第2のEV走行モードの係数Kev1−old,Kev2−oldを補正する。これらに対して、第1EV走行モードや第2EV走行モードが選択されなければ、つまりステップST6で第2EV走行モードへの選択ではないと判定された場合には、全ての累積選択時間Tev1等に変化がないので、ステップST10において、現在の第1及び第2のEV走行モードの係数Kev1−old,Kev2−oldをそのまま新たな係数Kev1,Kev2にする。
その新しい係数Kev1,Kev2は、例えばハイブリッドECU100の記憶装置に記憶させ、前の係数Kev1−old,Kev2−oldと置き換える。この更新された係数Kev1,Kev2は、イグニッションがオフになってからも保持させ続ける。但し、運転者が変わることでのずれも考えられる。これが為、例えばイグニッションキー毎に運転者のシートポジション等を記憶させておく技術が適用されている車両の場合には、その記憶情報の1つとして係数Kev1,Kev2を含めてもよい。これにより、より適切に運転者の煩わしさを抑えることができる。
このように、運転者のEV走行モードの使用形態を考慮に入れることで、運転者が多用するEV走行モードであるほど出力制限Woutev1,Woutev2を緩く、運転者に使われないEV走行モードであるほど出力制限Woutev1,Woutev2を厳しくすることができる。従って、このハイブリッド車両1においては、運転者が多用するEV走行モードから別の走行モードへの切り替え操作を運転者に強いる頻度を減らすことができ、運転者に煩わしさを与える可能性を減らすことができる。また、図4の例示では、市街地走行時に第1EV走行モードの使用の制限が緩くなるので、運転者の車両操作性を悪化させることなく、車両発進性能を保ちつつ燃費性能を向上させることができる。一方、例えば市街地から郊外に移動した際には、運転者の使用形態に応じた係数Kev1,Kev2の学習によって第2EV走行モードの使用の制限が緩くなるので、運転者の車両操作性を悪化させることなく、燃費性能を向上させることができる。
更に、例えば、第1EV走行モードが燃費性能に優れた出力特性(所謂エコモードに相当)であり、第2EV走行モードが走行性能に優れた出力特性(所謂スポーツモードに相当)である場合、運転者は、自らの嗜好等に応じて第1EV走行モードと第2EV走行モードの選択の頻度や時間を変える。これが為、このような場合でも、運転者の使用形態に応じて係数Kev1,Kev2を学習させることによって、運転者が多用するEV走行モードから別の走行モードへの切り替え操作を運転者に強いる頻度を減らし、運転者に煩わしさを与える可能性を減らすことができる。
次に、EV走行モードが所定の走行環境に適した出力特性を有する場合もあれば、実際に使用可能なEV走行モードが走行環境で分けられている場合もある。このような場合には、運転者によるEV走行モードの使用形態を判別せずとも、運転者に選択されるであろうEV走行モード又は運転者に選択されないであろうEV走行モードを今現在の走行環境に基づいて推定できる。従って、EV走行モードが所定の走行環境に適した出力特性を有する場合には、自車がその所定の走行環境のときに、その所定の走行環境に適したEV走行モードの出力制限を最大で解除されるまで緩めてもよい。また、実際に使用可能なEV走行モードが走行環境で分けられている場合には、走行環境毎の各EV走行モードの使用される可能性を考慮し、現在の走行環境に基づいてEV走行モードの出力制限を最大で解除されるまで緩めてもよい。具体的に、所定のEV走行モード以外のEV走行モードが運転者に選択されない自車の走行環境のときには、その所定のEV走行モードの出力制限を最大で解除されるまで緩める。更に、所定の走行環境が所定期間以上続いているので、その所定の走行環境に適した出力特性を有するEV走行モード以外のEV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合には、その所定の走行環境に適した出力特性を有するEV走行モードの出力制限を最大で解除されるまで緩める。
具体的に、ここでは、走行環境毎に2つのEV走行モード(第1EV走行モードと第2EV走行モード)が設定されているものとして例示する。尚、3つ以上のEV走行モードが設定されている場合には、夫々の走行環境毎に以下の演算処理を行えばよい。
ハイブリッドECU100は、図7のフローチャートに示すように、自車の走行環境が第1EV走行モードに適したものであるのか否かを判定する(ステップST11)。第1EV走行モードに適した走行環境であるとの判定が為される場合とは、現在の自車の走行環境が第1EV走行モードに適したものである場合、第2EV走行モードが運転者に選択されない走行環境の場合、第1EV走行モードに適した走行環境が所定期間以上続いているので、第2EV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合である。その場合には、第1EV走行モードが運転者に選択される可能性は高く、第2EV走行モードが選択される可能性は低いからである。
第1EV走行モードに適した走行環境であるとの判定の場合、ハイブリッドECU100は、その走行環境に適した第1EV走行モードの今の係数Kev1が1よりも小さいのか否かを判定する(ステップST12)。
そして、このハイブリッドECU100は、その係数Kev1が1よりも小さいと判定した場合(つまり第1EV走行モードの出力制限Woutev1が二次電池25の出力制限Woutよりも低い場合)、その係数Kev1を1に変更して(ステップST13)、二次電池25の出力制限Woutがそのまま第1EV走行モードの出力制限Woutev1となるようにする。これにより、その際には、第1EV走行モードの出力制限Woutev1(第1EV走行モードの使用の制限)が解除されるので、二次電池25の出力制限Woutの範囲内で第1EV走行モードを最大限利用できるようになる。故に、このときには、運転者が多用するであろう第1EV走行モードから別の走行モードへの切り替え操作を運転者に強いる頻度が減り、運転者に煩わしさを与える可能性が減る。
一方、このハイブリッドECU100は、その係数Kev1が1よりも小さくない、つまり係数Kev1が1であると判定した場合、既に二次電池25の出力制限Woutにまで第1EV走行モードの出力制限Woutev1が緩められているので、その係数Kev1をそのまま利用する。このときには、第1EV走行モードの出力制限Woutev1(第1EV走行モードの使用の制限)が既に解除されているので、二次電池25の出力制限Woutの範囲内で第1EV走行モードを最大限利用できる状態になっており、別の走行モードへの切り替え操作という煩わしさを抑えた良好な車両操作性が運転者に提供されている。
また、第1EV走行モードに適した走行環境でないとの判定の場合、ハイブリッドECU100には、これを以て自車の走行環境が第2EV走行モードに適していると判断させてもよいが、ここでは自車の走行環境が第2EV走行モードに適したものであるのか否か判定させる(ステップST14)。第2EV走行モードに適した走行環境であるとの判定が為される場合とは、現在の自車の走行環境が第2EV走行モードに適したものである場合、第1EV走行モードが運転者に選択されない走行環境の場合、第2EV走行モードに適した走行環境が所定期間以上続いているので、第1EV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合である。その場合には、第2EV走行モードが運転者に選択される可能性は高く、第1EV走行モードが選択される可能性は低いからである。
第2EV走行モードに適した走行環境であるとの判定の場合、ハイブリッドECU100には、その走行環境に適した第2EV走行モードの今の係数Kev2が1よりも小さいのか否かを判定する(ステップST15)。
そして、このハイブリッドECU100は、その係数Kev2が1よりも小さいと判定した場合(つまり第2EV走行モードの出力制限Woutev2が二次電池25の出力制限Woutよりも低い場合)、その係数Kev2を1に変更して(ステップST16)、二次電池25の出力制限Woutがそのまま第2EV走行モードの出力制限Woutev2となるようにする。これにより、その際には、第2EV走行モードの出力制限Woutev2(第2EV走行モードの使用の制限)が解除されるので、二次電池25の出力制限Woutの範囲内で第2EV走行モードを最大限利用できるようになる。故に、このときには、運転者が多用するであろう第2EV走行モードから別の走行モードへの切り替え操作を運転者に強いる頻度が減り、運転者に煩わしさを与える可能性が減る。
一方、このハイブリッドECU100は、その係数Kev2が1よりも小さくない、つまり係数Kev2が1であると判定した場合、既に二次電池25の出力制限Woutにまで第2EV走行モードの出力制限Woutev1が緩められているので、その係数Kev2をそのまま利用する。このときには、第2EV走行モードの出力制限Woutev2(第2EV走行モードの使用の制限)が既に解除されているので、二次電池25の出力制限Woutの範囲内で第2EV走行モードを最大限利用できる状態になっており、別の走行モードへの切り替え操作という煩わしさを抑えた良好な車両操作性が運転者に提供されている。
尚、自車の走行環境が第1EV走行モードにも第2EV走行モードにも適していないと判定された場合には、本演算処理を一旦終わらせて、ステップST11に戻す。
ここで、その走行環境としては、自車の車速域、自車の走行路や走行路の状態等が挙げられる。
例えば、これまで説明してきたように、図4の例示では、低車速域に適した出力特性を有する第1EV走行モードと、中車速域以上に適した出力特性を有する第2EV走行モードと、が設定されている。これが為、図4の如き出力特性では、何れのEV走行モードが運転者に選択される可能性が高く、何れのEV走行モードが運転者に選択される可能性が低いのかを現在の車速(車速センサや車輪速センサ等の車速検出装置81で検出)に基づいて推定できる。
ハイブリッドECU100は、現在の車速が低車速域の場合、第2EV走行モードが運転者に選択されない車速域の場合、低車速域での走行が所定期間以上続いているので、第2EV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合に、ステップST11で自車の走行環境が第1EV走行モードに適したものであると判定する。この場合のステップST11では、自車の現在の車速が第1EV走行モードに適した低車速域であると判定される。ここで、このときの所定期間は、例えば、空いている道路において発進から中車速域に到達するまでの時間よりも長い時間を設定する。それより長い時間を経ても車速が中車速域まで達しなければ、例えば渋滞路でのノロノロ走行が行われていると推定できるからである。その到達時間は、運転者毎に異なるので、過去の走行履歴に基づいて学習させてもよい。
現在の車速が低車速域のときには、第1EV走行モードの出力制限Woutev1が二次電池25の出力制限Woutよりも低ければ、その出力制限Woutev1が解除される。これにより、ハイブリッド車両1は、車両発進性能や低車速走行性能、燃費性能に優れる第1EV走行モードを運転者に選択させ続けることができるで、良好な運転者の車両操作性を保ちつつ、燃費性能に優れた車両発進や低速走行が可能になる。尚、係数Kev1が既に1の場合には、その係数Kev1が変更されないので、良好な運転者の車両操作性、燃費性能に優れた車両発進や低速走行を維持できる。
一方、このハイブリッドECU100は、現在の車速が中車速域以上の場合、第1EV走行モードが運転者に選択されない車速域の場合、中車速域以上での走行が所定期間以上続いているので、第1EV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合、ステップST14で自車の走行環境が第2EV走行モードに適したものであると判定する。この場合のステップST14では、自車の現在の車速が第2EV走行モードに適した中車速域以上であると判定される。ここで、このときの所定期間は、数秒間や数分間等の時間を設定すればよく、二次電池25の出力制限Woutが低いほど短く設定して、早い段階で第2EV走行モードの出力制限Woutev2を解除させることが好ましい。
現在の車速が中車速域以上のときには、第2EV走行モードの出力制限Woutev2が二次電池25の出力制限Woutよりも低ければ、その出力制限Woutev2が解除される。これにより、ハイブリッド車両1は、燃費性能に優れる第1EV走行モードを運転者に選択させ続けることができるで、良好な運転者の車両操作性を保ちつつ、燃費性能を高めることができる。尚、係数Kev2が既に1の場合には、その係数Kev2が変更されないので、良好な運転者の車両操作性、燃費性能に優れた中車速域以上の走行を維持できる。
また、自車の走行路や走行路の状態に基づいた出力制限Woutev1,Woutev2の変更について例示する。例えば、第1EV走行モードの出力特性を中低速走行に適したものとし、第2EV走行モードの出力特性を高速走行に適したものとする。この場合、高速道路の走行中は、中低速走行が行われない又は中低速走行が行われる可能性が低いとの判断が可能な高速走行域の走行環境にあると云える。一方、渋滞時や、高速道路以外の道路、急勾配の登坂路又は交差点内の走行中は、高速走行が行われない又は高速走行が行われる可能性が低いとの判断が可能な中低速走行域の走行環境にあると云える。これらの走行環境の判別は、周知の装置により実行可能であり、例えば、カーナビゲーションシステム82における自車位置情報、地図情報及び渋滞情報を利用して行えばよい。また、勾配については、車両前後加速度センサ83の情報を利用してもよい。
ハイブリッドECU100は、現在の走行路が高速道路以外の道路、急勾配の登坂路又は交差点内の場合、現在の走行路の状態が渋滞の場合、第2EV走行モードが運転者に選択されない走行路や走行路の状態の場合、高速道路以外の道路若しくは急勾配の登坂路における走行又は渋滞状態が所定期間以上続いているので、第2EV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合に、ステップST11で自車の走行環境が第1EV走行モードに適したものであると判定する。この場合のステップST11では、自車の現在の走行路や走行路の状態が第1EV走行モードに適した中低速走行域であると判定される。ここで、このときの所定期間は、数秒間や数分間等の時間を設定すればよく、二次電池25の出力制限Woutが低いほど短く設定して、早い段階で第1EV走行モードの出力制限Woutev1を解除させることが好ましい。
自車の現在の走行路や走行路の状態が中低速走行域のときには、第1EV走行モードの出力制限Woutev1が二次電池25の出力制限Woutよりも低ければ、その出力制限Woutev1が解除される。これにより、ハイブリッド車両1は、良好な運転者の車両操作性を保ちつつ、渋滞時等の中低速走行域における燃費性能を向上させることができる。尚、係数Kev1が既に1の場合には、その係数Kev1が変更されないので、良好な運転者の車両操作性、中低速走行域における良好な燃費性能を維持できる。
一方、このハイブリッドECU100は、現在の走行路が高速道路の場合、第1EV走行モードが運転者に選択されない走行路や走行路の状態の場合、高速道路での走行が所定期間以上続いているので、第1EV走行モードが運転者に選択されないと推定された場合、ステップST14で自車の走行環境が第2EV走行モードに適したものであると判定する。この場合のステップST14では、自車の現在の走行路や走行路の状態が第2EV走行モードに適した高速走行域であると判定される。ここで、このときの所定期間は、数秒間や数分間等の時間を設定すればよく、二次電池25の出力制限Woutが低いほど短く設定して、早い段階で第2EV走行モードの出力制限Woutev2を解除させることが好ましい。
自車の現在の走行路や走行路の状態が高速走行域のときには、第2EV走行モードの出力制限Woutev2が二次電池25の出力制限Woutよりも低ければ、その出力制限Woutev2が解除される。これにより、ハイブリッド車両1は、良好な運転者の車両操作性を保ちつつ、高速走行域における燃費性能を向上させることができる。尚、係数Kev2が既に1の場合には、その係数Kev2が変更されないので、良好な運転者の車両操作性、高速走行域における良好な燃費性能を維持できる。